こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2022.12.26 12月の伊丹十三記念館の様子と、伊丹十三 全10作品4Kデジタルリマスター版のテレビ放送
記念館便りをご覧のみなさまこんにちは。
本日は、今年最後の記念館の開館日です。記念館便りの更新も今年最後となります。
今年も伊丹十三記念館の12月は慌ただしく過ぎ去っていきました。
松山では珍しく雪が積もったり...
回廊の屋根の角っこに...
ちょっとだけ積もった雪。
ほぼ日手帳も入れ替えたり...
植木に寒肥も施しました。
見た目にはわかりにくいですが、実は施肥後の桂
わたくしごとですが、伊丹十三デザインの2023年の「ほぼ日手帳weeks」も使用しはじめ、毎日手に取るたびに幸せな気分になっています。(ほぼ日手帳weeksは12月から使えます)
伊丹十三デザインのほぼ日手帳
いよいよ使い始めました
そんな12月の伊丹十三記念館です。
さて、わたくしは来年を迎えるにあたって今から楽しみにしていることがあります。
先日の 記念館便り でも少しご報告させていただいた通り、日本映画専門チャンネルで「伊丹十三 全10作品 4Kデジタルリマスター版」が放送されるのです。
初回は2023年1月8日(日)ひる1時スタートです。
作品は、伊丹十三映画監督デビュー作の『お葬式』です。
詳しくはこちらから 日本映画専門チャンネル
今年、サン・セバスティアン国際映画祭や台北金馬映画祭で上映された4Kデジタルリマスター版・伊丹十三監督作品が、なんとテレビで観られます!
みなさまどうぞお見逃しなく!
最後になりましたが、本年も伊丹十三記念館をご愛顧いただき誠にありがとうございました。スタッフ一同心より感謝申し上げます。2023年もよろしくお願いいたします。みなさま良いお年をお迎えください。
2023年は1月2日(月)10時より開館いたします。
1月3日(火)は火曜日ですが、お正月につき開館いたします。
(両日 最終入館16時30分、閉館17時)
1月4日(水)より通常開館いたします。
スタッフ:川又
2022.12.19 山茶花と時雨
ここ最近......そうですね、数か月ほど前から、目に映じた風物をきっかけに、歌が思い出されるようになりました。
ふと心に浮かぶのはなぜか四季折々の童謡が多くて、例えば秋のうちは『まっかな秋』や『紅葉(もみじ)』、『村祭り』などなど、私の脳内ジュークボックスから懐かしい曲の数々が流れてきたものです。
子供の頃はただただ無邪気に歌うばかりでしたが、今になって口ずさんでみると歌詞やメロディの風情に気付き、しみじみとした思いで心がいっぱいになることもあります。年齢ゆえの現象なのでしょうか。
「そういえば秋の童謡と真冬の童謡はたくさんあるけど、今頃の、秋から冬にかけての季節の歌って、あんまり覚えてないなぁ」と考えていたつい先日、通勤途中の道端で脳内ジュークボックスが作動――
記念館のすぐ近く、国道33号線沿いの調剤薬局の前で
♪さざんかさざんかさいたみち~
ハイ。『たきび』(の二番)ですね。
何とはなしに検索してみましたら、作詞者・巽聖歌(たつみ せいか/1905-73)氏は岩手県のご出身なんだそうです。あら~、同郷の方の作品だったとは!
♪しもやけおててがもうかゆい
のところなどは、かじかんだ手指が温まるとき独特の痒み! あの感覚がよみがえってきてムズムズするほどです。
イヤハヤ絶妙な歌だったのだと感じ入りますが、今どきのチビっ子たちには「シモヤケって何?」かもしれませんね。(あ、現代は「そもそもタキビって何?」な子が多いかも...)
「老いたくない老けたくない」と詮無い願いを抱きがちな四十路の半ばの私でも、「年を重ねてこそ感じられること、興味がわいて理解でき、楽しめることがある」と思えるのは、なかなかにいいものです。
若いうちからそれができていればもっとよかったのでしょうけれど、しかたありません、過去は過去として、この冬の我が脳内ジュークボックスに期待したいと思います。
と、いうふうに、山茶花も咲いて本格的な冬を迎えつつある松山でございますが、冬らしく澄みきった晴天の日は少なく、今年は何だか曇りがち。しかも、時雨が多いような気がします。
こんなほんの少しの青空でも超貴重!
「今年はやけに時雨れるなあ。松山の初冬のお天気って毎年こんなだったっけ?」と冴えない天気を侘しく思う一方、「いや待てよ......これまでは時雨を気に留めていなかっただけなのかも......時雨に物思うようになったから、多いように感じるのかも......これまた年齢ゆえのことなのでは」と考えたりもする今日この頃です。
その点、松尾芭蕉先生はさすがであります。
元禄5(1692)年、門人邸での句会に招かれ発句して曰く――
けふばかり 人も年よれ 初時雨
「時雨の寂びた味わいは老境に達してこそ理解できるもの。今日は
折角の初時雨、若い皆さんも年寄り気分で味わってみてはいかがかな」
といったところでしょうか。
企画展示室の「併設小企画『伊丹万作の人と仕事』」では、伊丹万作が我が子たちのために手作りした、いろはがるたの実物を展示・季節ごとに入れ替えしています。(複製は全札を常時展示しています。)
47句の芭蕉の句のセレクトも、読み札の字・取り札の絵も、万作によるものなんですよ。
写真の「けふばかり~」は、現在8組お出ししている冬の句のかるたの1組。
日に日に募る寒さは少し憂鬱ですが、冬ならではの風情を展示室でどうぞご満喫ください。
<伊丹万作の手作りかるたについてはこちらもどうぞ!>
学芸員:中野
2022.12.12 おすすめの本
2022年も残すところ3週間ほどとなりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
記念館でも桂の木や山桜の葉が落ちてきて、すっかり冬の装いとなりました。
中庭の桂もほとんどの葉が落ちております
寒い日が続いておりますので、ご来館の際にはぜひ暖かい服装でご来館ください。
先日、ショップをご覧になっているお客様から「この中でおすすめの本はどれですか?」とお声掛けいただきました。どのような本をお求めなのかお伺いさせていただきますと、お客様は「一度も読んだことが無いから伊丹さんのエッセイを読んでみたい」とのことでしたので、伊丹さんの著書『ヨーロッパ退屈日記』をおすすめさせていただきました。
喜んでくださったお客様をお見送りし、その時あらためて「おすすめ」というものの難しさを感じました。
お客様からお声掛けいただく際に「ここでしか売っていないものはありますか?」「一番売れているのはどれですか?」「あのTシャツのイラストが載っている本はどれですか?」「読んだことのない本が読みたいのですが、○○のエッセイが載っていないのはどれですか?」と具体的にお話しくださる場合は該当するものをおすすめさせていただくのですが、ひとえに「おすすめ」となると少し迷ってしまいます。
記念館で販売している本の中でも、おすすめしたいポイントがそれぞれ異なるのです。
伊丹十三記念館ガイドブックや映画『お葬式』シナリオつき絵コンテノートは、記念館での限定販売ですので、ご来館の際にはぜひ手に取っていただきたい1冊です。
『ヨーロッパ退屈日記』や『女たちよ!』などの著書は、記念館の展示をご覧になった後に読むとより一層エッセイが面白く感じられます。グッズに使用されているイラストのエッセイを探しながら読むのもおすすめです。
『ぼくの伯父さん』は単行本未収録エッセイ集となっておりますので、伊丹さんの本を読んできてくださっているお客様にも楽しんでいただける1冊です。
『伊丹十三選集』は全三巻となっておりますが、それぞれ松家仁之さん、中村好文先生、池内万平さんが編者をされております。巻末にございます編者解説も必見です。
『主夫と生活』、『ポテト・ブック』は伊丹さんが翻訳をしており、言葉の端々に伊丹さんを感じることが出来ます。
この他にも、伊丹さんのエッセイストとしてのお仕事や生活について書かれている『伊丹十三の本』やMUJIBOOKS文庫『伊丹十三』などもございます。
ここまで書かせていただきました通り、記念館のショップでお買い求めいただけます本は全て「おすすめ」となっております。ご来館いただいた際には、スタッフに気兼ねなくお声掛けいただき、ぜひお求めの1冊やお気に入りの1冊を見つけていただけますと幸いです。
〈年末年始 休館・開館日のお知らせ〉
2022年12月27日(火)~2023年1月1日(日)は休館いたします。
2023年1月2日(月)、1月3日(火)は開館時間を10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきまして、1月4日(水)より通常開館いたします。
スタッフ:橘
2022.12.05 台湾・台北金馬映画祭
メディアなどで目にされた方もいらっしゃるかと思いますが――
台湾で行われた「台北金馬映画祭」で、伊丹さんの監督作品が回顧上映されました!
台北金馬映画祭・会場の様子
映画祭は台湾の首都・台北で現地時間の11月2日から20日の期間に開催。そこで上映されたのは、4Kデジタルリマスター化された監督作品・全10作品です。
4Kデジタルリマスターとは、主にフィルムなどで撮影された映画をデジタルデータにし、色や音質の補修・調整をする作業のことで、それによってよりきれいで見やすくなった映像で映画を観られるようになります。
10作品すべてを4Kデジタルリマスター化するという、一大プロジェクトを経て誕生した4Kデジタルリマスター版・伊丹十三監督作品が、この映画祭で一挙に上映されました。しかも、『タンポポ』を除く9作品が世界初上映だったそうです。
映画館の巨大スクリーンで観る伊丹監督作品...しかも高画質の映像ですから、本当に見応えがありますよね。
この映画祭には宮本信子館長も出席し、現地で記者会見や舞台挨拶を行いました。
記者会見に臨む宮本信子館長
台湾での上映について、「もし伊丹さんが生きていたら、10作品がきれいになってまとめて見ていただけるなんて、『僕は幸せだなあ』と言うと思います」と話した宮本信子館長。
『お葬式』『タンポポ』の製作秘話、伊丹さんとの様々なエピソードについて語り、『タンポポ』上映後には観客の方々とのQ&Aに参加しました。記者会見にも同席した玉置泰館長代行(伊丹監督全作品の製作に携わり、記念館の館長代行を務めています)とともに観客の方からの質問に答えるなど、会場は大変な盛り上がりだったそうです。
『お葬式』や『タンポポ』上映は満席、若い世代の方も大勢参加されたとか。
観客の方々とのQ&A
映画祭会場にて
また、同じくこの映画祭で、芦田愛菜さん・宮本信子館長出演の映画『メタモルフォーゼの縁側』が上映されました。11月11日には台湾での劇場公開もスタートしたそうです。
※『メタモルフォーゼの縁側』は、第14回TAMA映画賞・特別賞を受賞されました。
ご出演の皆さま、スタッフ・関係者の皆さま、本当におめでとうございます。
『メタモルフォーゼの縁側』ポスターパネルと
今回上映された伊丹監督作品の4Kデジタルリマスター版は、日本映画専門チャンネル、日本映画+時代劇 4Kで2023年1月より放送が予定されているそうです。ご興味のある方はぜひチェックしてみてくださいね。
※ 今回の記念館便りの写真はすべて、玉置泰館長代行より提供していただきました!
スタッフ:山岡
2022.11.28 白鷺
先日、お昼休みにお昼ご飯を買いに出かけて戻ってきましたところ、記念館の屋根の上に白鷺が二羽留まっているのを発見しました。「なんだか道後温泉本館みたいになっている!」と感動し、思わず撮影した次第です。
道後温泉本館の建物の屋根の上には、羽を広げた白鷺のオブジェが乗っているのをご存知ですか。(現在、道後温泉本館は改修工事中で愛媛県宇和島市を拠点に活動する画家・大竹伸朗氏のデザインしたテントで覆われているのですが、そのテントにも白鷺が描かれています。)
道後温泉には、脛に傷を負った白鷺が湯に足をつけていたところ、傷が治って元気に飛び立って行き、その後それを見ていた人間が入浴するようになった、という「白鷺の伝説」なるものがあり、白鷺は道後温泉のシンボルとして使われています。
ちなみに、伊丹十三記念館から道後温泉までは距離は5kmほど、車で20分から30分もあれば到着しますので、記念館へご来館の際には是非道後温泉へ、、、と言いますか、道後温泉へお越しの際は是非伊丹十三記念館へ足を延ばしてみてください。
生きている白鷺が屋根の上で休んでいるのをご覧いただけるかもしれません。
記念館の隣を流れる小野川でもよく見かけます。
ご来館の際には白鷺を探してみてください。
小野川には亀の姿も。
スタッフ:川又
2022.11.21 「トリセツを読む人」
ある同僚スタッフ――まあ、仮に"Kさん"としましょうか(一人しかいませんけど)――は、物事の捉え方とその表現がちょっと独特かつ的を得ていて面白いなあ、とかねがね思っておりました。例えば、クッキーやスコーンを食べて「小麦粉って美味しいですよね」とか。
「ポイントそこ!? でもたしかに~、ハハハ」と感心&笑わせてもらうことしばしば。
Kさんの観察眼は、当然、周囲の人間に対しても向けられているわけですが、彼女は慎み深い人なので、すぐさまベラベラしゃべるということはなくて、ある時、何気ない会話の流れの中でポロっと出てくるんですね、私への評価(?)が。
そして「へぇ、そういうとこ見てるんだ」「それは気づいてなかった」等々、中野が知らない中野を中野に教えてくれるのです。
数年前「中野さんって輪ゴムが好きですよね」と言われたのはなかなかに印象的で、心に深く刻まれています。(だって、輪ゴムそのものが好き嫌いの対象になるものだとは思わないじゃないですか!)
※なお、Kさん曰く「自分は輪ゴムが嫌いというわけではないが、なくとも生活できており必要と思ったこともないから買ったこともない」→「中野さんはよく輪ゴムを使っているし見当たらなければ探しているし箱買いまでする」→「輪ゴムが好きな人」と判定、とのことです。
つい先日は「中野さんはトリセツ(取扱説明書)を読むタイプ」との評価をいただき、「そりゃ読みますけど、それほどでは...隅から隅までってほどでは...」「世間の大多数の人々に比べれば、かなりちゃんと読むほうですよ!」と、そんな会話がなされたのですけれども、その2日後、新しい電気ケトルを購入し帰宅した私が第一にやったことと言えば......取扱説明書の熟読、でありました。
た、たしかに......読みますね、トリセツ......電気ケトル、かなり単純な家電なのに......
あ、もしかしてKさん、私が最近こんな本をフムフムと楽しんでいるのを察知していたのでしょうか――
(2021年10月・昭文社刊)
これは、元はというと昨年の帰省中に『岩手のトリセツ』を見つけて買い、「知ってるようで知らなかった故郷」に触れることができたので「このシリーズ面白いな~、愛媛版はまだ出てないのか~、刊行されたら買うぞ~」と心に決めていたものです。
※記念館記事掲載書籍ではありません、ご了承ください。念のため。
愛媛に住んでもうすぐ15年になる私でありますが、地形・地質、鉄道・舟運、産業・文化、その他いろいろの「そうだったのか!」が盛りだくさんで、少しずつ、味わうように読み進めています。何しろ、冒頭の地図4種だけでもずっと眺めていられるほどで......
昭文社ホールディングスHP内のサイトによりますと、「トリセツ」シリーズは "地元の方"向け(一般的な旅行ガイドとは真逆!)なのだそうです。
実際、「ちょっと知ってる」「だいたいの土地勘がある」のをベースに読んだ上で「知らなかった!!」となるのが楽しいのですが、「旅行先の自然の成り立ちや歴史の背景をあらかじめ知っておいたほうが、旅の深みが増すよね」という方の予習にも、大いに役立つことでしょう、オススメです。
記念館で、松山のあちらこちらで、ご旅行中と思しき方々をお見受けする機会が増えてきました。
予習シッカリ旅の方も、行き当たりバッタリ旅の方も、愛媛をご満喫くださいますように。もちろん、愛媛県にお住まいの皆様も。
名月や 池をめぐりて 夜もすがら
―併設小企画『伊丹万作の人と仕事』「手作り芭蕉かるた」より―
中秋の名月といえば大抵9月ですが、
11月、冴えた夜空に浮かぶ満月もイイですよね。
学芸員 : 中野
2022.11.14 メンバーズ会員様限定の秋の収蔵庫ツアーを開催いたしました
11月も半ばに差し掛かり、冬の気配が色濃くなって参りましたが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
陽が落ちるのも早くなりましたので、最近は閉館間近になると記念館がライトアップされるようになりました。
昼間とはまた違った雰囲気になるので、夕方頃ご来館のお客様には変わりゆく景色も楽しんでいただければと思います。
さて、本日の記念館便りでは11月2日から7日まで開催いたしました、メンバーズ会員様限定の秋の収蔵庫ツアーについてお話ししていきたいと思います。
記念館では、春と秋にメンバーズ会員様限定の収蔵庫ツアーを開催しております。コロナ禍ということもあり、開催を見送ってまいりましたツアーですが、この度2年ぶりに開催させていただくこととなりました。
収蔵庫ツアーは、普段お客様にご覧いただくことのできない収蔵庫を学芸員がご案内するツアーとなっております。収蔵庫と言いますと、様々な収蔵品が箱や専用のケースに入れられ、厳重に保管されている様子を想像される方も多いのではないでしょうか。
伊丹十三記念館では、収蔵庫の2階にいわゆる「収蔵庫展示」部分を設けておりまして、ツアー限定でお客様にご覧いただけるように整えてあるのです。伊丹さんが描いたイラストの原画や愛用品の数々、湯河原の自宅を再現したコーナーなど、伊丹さんのことをもっと深く知ることが出来る展示ばかりとなっております。
湯河原の自宅を再現したコーナー
こちらの湯河原の自宅を再現したコーナーでは、本や本棚の周りに置いてあるものは、湯河原にあった実物を記念館に持ち込んでいます。棚自体は新しく作ったものですが、湯河原の自宅の戸棚の扉や引き出しのサイズに合わせて作られており、実際に使用されていた扉や引き出しを見る事が出来ます。更には、テーブルと椅子も湯河原から記念館に持ってきた本物。壁と棚以外は全て本物を使用した、ツアーでも必見のコーナーとなっております。
記念館のスタッフになってから初めての収蔵庫ツアーということで、勉強も兼ねまして私も1組のメンバーズのお客様にご同行させていただきました。
メンバーズ会員の皆様は、記念館に何度も足を運んでくださっている方が多く、同行させていただいたお客様も、「あのエッセイの挿絵が!」「あの雑誌で見た愛用品が!」と充実した時間を過ごしておられました。
伊丹さんの蔵書をメモしてくださったり、映画に出て来た衣裳や小道具を実際に目にして「帰ってから映画を観なおします」とお話しくださったりと、お客様にとってもあらためて伊丹さんの魅力を知り、より伊丹さんの作品を楽しむきっかけとなったご様子でした。
伊丹さんを良く知ってくださっているメンバーズ会員様の熱心な質問から引き出されるエピソードも多く、会員の皆様にはぜひ体験していただきたいツアーとなっております。
ご入会いただいたその日から、1年間無料で何度でもご利用いただけるメンバーズカード。会員様限定の収蔵庫ツアーの他にも、宮本信子館長の出勤日のお知らせや記念館主催イベント時の優先的なご案内など、様々な特典もございます。下記のメンバーズご利用案内のページをご覧いただき、ご入会を検討いただけますと幸いです。
https://itami-kinenkan.jp/guidance/members.html
メンバーズカードには伊丹さんの可愛らしいイラストが
左側:灰色が3000円のカード、右側:白色が5000円のカードです
スタッフ:橘
2022.11.07 両方合わせてお楽しみください
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
すっかり秋めいてきましたね。ここ記念館では、桂の木や山桜に続いて、ヤマボウシも色づいてきました。
さて、「もっといろいろな伊丹さんについて知りたい」という方に特にご好評をいただいているショップの人気商品に、書籍『伊丹十三記念館ガイドブック』とDVD『13の顔を持つ男-伊丹十三の肖像』があります。
書籍とDVDという違いはあるものの、どちらも伊丹さんが持っていた「13の顔」が紹介されています。記念館便りをご覧の皆さまの中にも、読んだり視聴したりしてくださった方がいらっしゃるかもしれませんね。
DVD『13の顔を持つ男-伊丹十三の肖像』(税込3,300円)
この2つの商品は、どちらかだけでもじゅうぶんに楽しんでいただけますが――実は、同じ「13の顔」でもそれぞれで違う視点や表現で紹介されているので、両方をいっしょに読んだり観たりしていただくのも大変おすすめなのです!
例えば「イラストレーターの顔」。
DVDでは、『漫画讀本』のポスターに描かれたイラストなど、個性的なイラストが何点も映し出されます。そして、旅先でよくスケッチをしていたという伊丹さんが、絵を描くことの効用をこんなふうに語っている印象深い映像をご覧いただけます。
"スケッチをする何よりの効用は、否応なく、ものをはっきりと見定めなければならぬ、というところにある。漫然と眺めているとき、我々はいかに多くのことを見逃していることか。絵を描くのは、この際、言わばものをみる手段である。絵の出来不出来なんぞは初めから問題外である"
「遠くへ行きたい 明解・古座川図鑑」(1975年)ナレーションより
ガイドブックでは、そんな伊丹さんの緻密なデッサンやエッセイに添えられたユーモラスな線画などさまざまなイラストが掲載されています。
伊丹十三記念館ガイドブック
「六 イラストレーター」より
ちなみに、一番多く描かれていたのは飼われていた猫だったそうです。
上述のとおり、猫たちをよーく見ていたから、伊丹さんはあんなにもいきいきとした猫たちが描けたのだなぁと納得してしまいました。
もう一つ例を挙げると、「料理通の顔」として、ガイドブックでは、伊丹さんがこだわって選び、使っていた調理器具や食器、食にちなんだエッセイや書籍が紹介されています。
そして、伊丹さんの手料理を食べた方々が綴ったエピソードなどを読むと、料理通としての伊丹さん像が浮かび上がってきます。
DVDでは、そんな伊丹さんの料理人ぶりが記録されたCMが収録されていますので、観るとよりイメージが広がるのではないでしょうか。味の素マヨネーズの「チーズオムレツ編」と「タタミポテト編」(ともに1984年)では、手際よく調理する伊丹さんの姿がご覧いただけます(できた料理も大変美味しそうです!)。
味の素マヨネーズ「タタミポテト編」(1984年)
DVD『13の顔を持つ男-伊丹十三の肖像』より
ご興味のある方はぜひ、ガイドブックとDVD両方で、伊丹さんという人物により深く触れてみてください。どちらもオンラインショップで取り扱い中です!
スタッフ:山岡
2022.10.31 今年の秋の伊丹十三記念館の様子とほぼ日手帳
明日からはいよいよ11月です。
伊丹十三記念館のシンボルツリーの桂も少しずつ黄葉して参りました。桂は色づくと甘いキャラメルのような香りを放ちます。香りの成分の元は、葉に含まれるマルトールという物質で、これは食品添加物にも使われることがあるそうです。
新緑の頃も綺麗ですが、この時期の桂も見応えがあります。
外回りのヤマザクラは落葉もはじまりました。
先週、ガレージに展示している伊丹十三の最後の愛車・ベントレーの洗車を行いました。ご覧の通り綺麗になりました。
そんな秋の伊丹十三記念館です。
さて、ここのところ売店では、「ほぼ日手帳」をお手に取りご覧になる方も増えてきた様子です。9月の発売開始の際は「まだ来年のものを買うのはちょっと早いかな、、、」という雰囲気もありましたが、今年も残すところあと2か月。気に入ったカレンダーや手帳は早めに入手しておかなければ品切れになってしまうかもしれません。気になる方はどうぞお早めに。ご来館の際は売店にて是非お手に取ってご覧ください。
スタッフ:川又
2022.10.24 記念館スタッフ vs ルート検索!
朝の日だまりと帰り道の夕風が心地よい季節になりました。
全国旅行支援を利用して、土地土地の秋の風情をお楽しみの方もいらっしゃることでしょう。
通勤の自転車を漕ぐ時、背中に感じる
朝日の温もりがなんとも嬉しいこと!
秋といえば、落ち葉の季節でもあります...
嗚呼、掃いても掃いても...
えー、前回、「お客様との会話が勉強の機会になることが多々ある」というお話をさせていただきました。
が、そもそもがおしゃべり好きなもので、どんな話題であろうと、話しかけていただければ単純に嬉しい! そんな気持ちもございます。
しかし、この数年、お客様と言葉を交わす機会が激減しているような気がいたします。
新型コロナへの用心、というのが、今は第一の理由でしょうが、スマートフォンの普及や、便利なwebサイト・アプリの登場も、少なからず影響しているのではないかな、とも推察されます。ご時世ですね。
たとえば、そろそろ館を出ようとしているらしいお客様が、ロビーの椅子に腰かけて、スマホの画面とにらめっこしている、そんなお姿をよくお見かけするようになりました。
おそらく...交通手段をお調べなのではないかしら...土地勘のない旅先だと最適なルートを調べ当てるのって結構難しいのよね...
以前だったら「街のほうに行くバスの停留所はどこですか?」「JR松山駅への交通手段はありますか?」など、ご質問いただいているはずの場面...だった、ような...ムズムズ。
ま、わたくし、厚かましく生まれついておりますので、自分のほうから「ここからの交通手段をお探しでしたら、お手伝いしましょうか~? 次の目的地はどちらですか~?」と話しかけてしまうのですが。
「施設の人と話すなんて恥ずかしい」「面倒くさいからそっとしといて」と感じる方も中にはいらっしゃる、そのお気持ちも、分かります。(実のところ、私も外に出ると恥ずかしがりなもので...あれ? "おしゃべり好きで厚かましい恥ずかしがり屋"って、どういうことでしょう(笑))
でもね、土地勘のある人に聞いたほうが絶対に得なんです!
"Google先生"でもご存知ない道や、移動手段を住民は知っているのですから!
たとえばこれ、「伊丹十三記念館」と伊予鉄道の郊外電車・横河原線「いよ立花駅」との徒歩経路の検索結果なんですが...
↓
記念館の近くに「天山橋(あまやまばし)」停留所があり
伊予鉄バス(15分に1本/15・18番線)のご利用をお勧めしているので
いよ立花駅をご利用される方はそう多くない、とは思います、ハイ。
見た瞬間に「ナンジャコリャ!?」とのけぞりました。なぜかというと......
黒枠のところは「天山交差点」と言います。
北西の角にあるイオンスタイル松山店が目印です。
検索結果の経路が避けている「天山交差点」(上図の黒い囲み部分)、この交差点の下には地下道があって、そこを通れば、いよ立花駅と記念館はほぼ一直線、所要時間は15分弱ぐらいだからです。
(※1)地上の横断歩道は自転車専用です。
(※2)地下道との昇降は階段のみなので、車椅子の方や重いカートをお持ちの方には、検索結果通りのルートをお勧めします。
というわけで、ご来館くださるだけで大大大感謝なのでありますが、せっかくお出かけくださったからには、ぜひスタッフにお気軽にお声がけくださいね。
展示に関するご質問・ご感想も、喜んでお伺いいたします。
などなど考えていた最近のこと。
お客様から「ここの人たちはみんな、事務的な感じがなくて話しかけやすいのもイイですね」とのお言葉をいただきました。思いがけないポイントで高評価をいただいて、本当に、心から嬉しくて感激したことでした。
そんなわたくしの"来館者"としての経験談を最後に少々。
ある年の瀬、帰省のついでに郷里の某施設を訪ねた折――
そろそろ退館しようかと思い、受付の方に「そこのバス停の時刻表、あります?」と質問してみましたら、「あ、そういうのはないんです」とサラっと言われ、雪降り積もる北国の停留所に延々たたずみ続けることになり......自分で念入りに調べておくのが必要な場合もありますネ......悔恨の涙でツララをこさえたのでありました。
学芸員:中野
2022.10.13 こだわりの壁
朝晩と冷え込む日が増え、秋が深まっているのを感じますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
中庭の桂も少しずつ色づいてきました。葉から少し甘い香りがしております。
記念館にある多くの広報資料を整理する中で、建築についての特集を読む機会がございました。中村好文先生が設計をしてくださった記念館には、たくさんのこだわりが詰まっているのだとあらためて知ることとなりました。印象的な外観や、車庫、中庭などの他に、常設展示室の中にも手まわし式の閲覧台や引き出しなどの遊び心も感じられます。この常設展示室の中にもいくつかこだわりがあるのですが、今回はその中の一つである壁についてご紹介させていただきます
常設展示室は十三の名にちなみ、13のコーナーに分かれております。伊丹さんの仕事や人となりを知ることが出来る各コーナーの壁は、見比べてみると違う素材が使用されています。それぞれのテーマに沿った材質の壁と展示品との繋がりを見つけたとき、より一層この記念館が楽しめるものになっています。
皆様にはご来館の際に見つけて楽しんでいただきたいので、本日は13のコーナーの中から4つだけご紹介させていただきます。
まずご紹介するのは、七 料理通の壁です。こちらはキッチンを思わせる白いタイルとなっております。
展示をよく見てみると、伊丹さんの写真のキッチンの壁も白いタイルです。
こぼれ話にはなりますが、記念館の中にはもう1カ所、白いタイルを使った壁がございます。それがカフェの中のキッチンの壁です。ぜひ、七 料理通のコーナーの壁と見比べてみてください。
つぎに、八 乗り物マニアの壁は、かつての愛車ロータス・エランに合わせた車体塗装です。
『ヨーロッパ退屈日記』や『女たちよ!』にも登場する赤のロータス・エランは、伊丹さんの車遍歴の中でも印象深い車ではないでしょうか。残念ながらロータス・エランの実物はございませんが、この赤く塗装された壁を見ていると、伊丹さんの愛車に出会えたような気持ちになります。
伊丹さんの詳しい車遍歴につきましては、実は車庫にあるガラスの壁面に書かれております。
ベントレーを正面に見て、右側の壁の近く、手すりの少し下あたり。
このあたりに詳細がございますので、ぜひご来館の際にお確かめください。
十一 精神分析の壁は大理石でできており、そこには左右対称の模様が描かれております。
こちらの模様はロールシャッハテストを暗示しているそうです。ロールシャッハテストとは性格検査のひとつで、インクを垂らした模様が何に見えるかを述べ、その言語表現を分析することによって思考過程などを推定するのだとか。皆様はこの模様、何に見えますでしょうか。
ちなみに、ガラスには転写された生原稿もございます。
そして十三 映画監督には伊丹映画のフィルムが貼りこまれております。
至近距離で見ていただくと映画で観たあのシーンが...。
ひとつひとつじっくりご覧いただけましたら幸いです。
さて、ここまでいくつかのコーナーの壁についてご紹介させていただきました。ご来館の際には壁にも注目していただき、展示品との関係を探しながらご覧いただければ幸いです。
この度ご紹介させていただきました各コーナーの壁のお話は、2007年7月1日発売の『芸術新潮』、同年9月1日発売の『新建築』の特集に詳しく掲載されております。残念ながら雑誌の販売はしておりませんが、カフェ内にあるファイルに特集のページをまとめておりますので、他にも記念館のこだわりが気になる!という方はぜひお手に取ってご覧ください。
スタッフ:橘
2022.10.10 タンポポコーヒー
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
気温差のある日が続いています。体調を崩されませんよう、日々ご自愛くださいね。
さて暑さが和らいできた影響で、9月の終わり頃から、カフェ・タンポポではホットメニューのオーダーがじわじわ増えてきました。
そんなホットメニューのうち、定番中の定番・ホットコーヒーに次いで最近よくご注文いただくのが「タンポポコーヒー」なのですが、お客様の中には「タンポポコーヒーは初めて」という方も多くいらっしゃいます。「どんな飲み物ですか?」とよくお尋ねがありますので、少しご紹介しますね。
タンポポコーヒーはポーランドを発祥とし、その昔、当時大変貴重で高価だったコーヒーの代わりになる飲み物として、乾燥したタンポポの根っこを焙煎して作られたのがはじまりだそうです。
"コーヒー"という名前の通り、コーヒー豆を焙煎して作られるコーヒーと、見た目はそっくり!コーヒーと同じく、深みのある色です。
タンポポコーヒー
(ホットコーヒーと同時にご注文いただいた時は、
お客様に間違えてお出ししないよう気を付けています...)
別名タンポポ茶ともいわれ、実際にお飲みいただくと、コーヒー風味ではあるもののコーヒーとはまた少し違った、香ばしいお茶のようなかおりや味を楽しんでいただけると思います。
ちなみにお飲みになったお客様からは「コーヒーよりすっきりとした飲み口です」「くせがなくて飲みやすい」「まろやかな甘みがあります」といったお声をいただいています。
通常のコーヒーとの違いはノンカフェインであることです。カフェインを控えておられる方も安心してお飲みいただけます。また、体を温める効果がありますので、冷え性の方などにもおすすめです。
飲んだことがないという方は、カフェタンポポで挑戦してみくださいね。
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<記念館よりお知らせ>
伊丹十三記念館で伊丹監督映画作品を観る「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」。10月13日(木)はミンボー(民事介入暴力)専門の女性弁護士の活躍を描いた『ミンボーの女』(1992年)を上映予定です。
ご鑑賞が始めての方もそうでない方も、ご興味のある方はぜひ!
ご来館をお待ちしております。
スタッフ:山岡
2022.10.03 ほぼ日手帳
先月の記念館便りでもお知らせしましたが、伊丹十三の描いたイラストでデザインされた「ほぼ日手帳weeks『mon oncle(モノンクル)』」の販売が開始されて1ヶ月が経過しました。
伊丹十三記念館のショップでも好評をいただいており、先日追加発注をいたしました。
事前にどのような手帳になるかというのはある程度知ってはいたのですが、実際に初めて手帳を見た際にはあまりに素敵な出来上がりに驚きました。
何度か記念館便りにも書いたことがありますが、記念館では長年ほぼ日手帳を愛用しており、何よりほぼ日手帳のファンである我々記念館スタッフとしては「伊丹さんのイラストでデザインされたほぼ日手帳ができる」という話を耳にした時点から完成を大変楽しみにしていました。そんな期待値をはるかに超えてくるほぼ日のみなさんのお仕事に本当に感動しています。
背表紙も
裏表紙もお洒落です
ショップに見本を置いていますのでご来館の際には是非お手に取ってご覧ください。間違いなく欲しくなってしまうと思います。
もちろん、ほぼ日のサイトでも販売されています。
記念館へのご来館が難しい方は是非こちらから。
https://www.1101.com/store/techo/ja/2023/pc/detail_cover/wb23_itami/
weeksもほぼ日手帳オリジナルと同じ薄くて丈夫な紙「トモエリバー」が使われています
スタッフ:川又
2022.09.26 UDCMスマートシティスクールに参加させていただきました
皆様、どうもこんにちは。しばらくぶりに記念館便りを担当させていただきます、中野です。
わけあってご無沙汰いたしましたが、またたびたび登場させていただきますので、よろしくお願いいたします。
2022年9月22日(木)夕暮れ時の記念館。
虹がウッスラと出ているの、見えますか?
さて、少し前のことになりますが、松山アーバンデザインセンターの講座に、トークゲストとして参加させていただきました。
松山アーバンデザインセンター、略してUDCM。
ヨコ文字が物々しく思われる名称ですが、その活動内容は、松山市内や愛媛県内にお住まいの方であれば、何かしらご存知のはず。
たとえば、「老若男女のための広場がマチナカにできて、子連れ家族にも好評」「気軽に腰掛けられる憩いのスペースが商店街にできた」「花園町通り(松山市駅前から堀端までの商店街)が快適になった」といったニュースを見聞きした、あるいは、実際に利用して街の変化を体感した、ということが、きっとおありだと思います。
UDCMの活動の中には「参加型のまちづくり学習プログラム」も含まれていまして、"スマートシティスクール"という講座が年度ごとにテーマを変えて開かれています。
今年度のテーマは「地域ミュージアムを創る」だそうで、4回行われるレクチャーのうちの3回目に、市内の博物館3館の学芸員がトークゲストとして呼ばれたわけですが――
――"アーバン"..."デザイン"..."スマート"...どれにも縁遠い自分に務まるのか、大いなる不安を抱きつつ、光栄なご依頼だとお受けすることにしましたら、頂戴したお題のひとつがすごかった。
「学芸員としての日頃のお仕事は?」
え~っと、「学芸員として」ですか......あれ? いつも何してたっけ、私。(他のゲストの方も同じことを思ったそうで、後で聞いて笑いました。)
シンプルかつストレートに本質を問われた感じで、一瞬、ポカンとしてしまったのです。
ひとことで言えば、学芸員とは「博物館の専門職員」なのですが、「博物館」(の定義)も多様化の時代にある現状もあいまって、「学芸員のお仕事って何だ」「そもそも博物館とは」という問いが、頭の中にぐるぐると渦巻きました。
結局、当日は「収蔵・展示の環境の保全」「館にあるもの(収蔵品)の調査」「館にないもので収蔵すべきものの探訪・収集」「勉強」といったような、ひととおりの事柄をとにかく一生懸命お話しするに留まりましたけれど、他館の学芸員の方のお話も大変参考になり、「"伊丹十三記念館の学芸員"の特徴を挙げるならば、お客様方に接して学ばせていただくことがたくさんあって、それがその後の仕事の肥やしになっている、ということだなぁ」と、来し方のあれこれが感慨深く思い返されたことでした。
そして、今さらながら浮き彫りになった"問い"については、長期的な課題として今後も考え続けていきたいと思いました。
と、いうような得難い経験をさせていただいて数日後。
展示室の見回りをしていましたら、とあるお客様からお声をかけていただきました。
「私、伊丹さんの映画は何本か観ていて、映画監督としてのお姿が印象に残っているんですけど、そのほかのことはよく知らなくて......本当にいろいろなさった方だったんですねえ、ビックリしました。あ、私が勉強不足なだけなのに、ビックリだなんてすみません!」
子どもの頃からコレですものね...
(小学6年生のときのノート『昆蟲』)
そりゃ、ビックリなさって当然だと思います。
それを伺った私の口からは、ほぼ無意識のうちに、フォローのつもりでも何でもなく、こんな言葉が出ていました。
「いいんですいいんです、ビックリしていただくための記念館ですから」
Q. 博物館とは何か
A. ビックリする場である
――うーむ、なかなか、イイのではないでしょうか??
またもや、お客様から学ばせていただきました。
今後ともどうぞよろしくお願い申しあげます。
企画展示室・併設小企画『伊丹万作の人と仕事』コーナーの
「手作り芭蕉かるた」は秋の句の札を展示中です。
行く秋や 手をひろげたる 栗のいが ―― 皆様、よい秋を!
学芸員:中野
2022.09.19 第14回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました【その2】
先週に引き続きまして、贈呈式の模様をお伝えいたします。
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選考委員である中村好文さんの素晴らしい祝辞に続きまして、正賞の盾と、副賞の賞金100万円の贈呈が行われました。
正賞(盾)の贈呈 選考委員・平松洋子さんより
平松洋子さんからは贈呈と共に
「小池一子さん。長きに渡って、たくさんの才能そして
みんなを照らしてくださってありがとうございます」
というお言葉もございました。
副賞(賞金)の贈呈 宮本信子館長より
「おめでとうございます」「ありがとうございます」と
言葉を交わしている小池一子さんと宮本信子館長【※】
そして、受賞者・小池一子さんのスピーチです!
受賞者・小池一子さんのスピーチ
受賞者スピーチをする小池一子さん
● 伊丹十三賞の受賞の連絡を受けたときのこと
この賞のお知らせを頂いたときに、はっと思って、まず選考委員の方たちのお顔を本当にはっきり思い浮かべました。で、伸坊さんとか、好文さんとかって、ファーストネームで呼ばせていただく大事な友達、お知り合いといいますか、私が尊敬する方たち。それからずっと素敵で、拝見している宮本さん。映画で本当に私の憧れの監督の周防さん。そういう方たちが、何をやっているのかが分かんないような私の仕事に目を向けてくだすったっていうことが、本当に有難くて。しばらく5人の方のお顔を想っていたんですね。
それから、頂いた理由というのが、続けてきた仕事。もうあっという間に半世紀も、それ以上経っちゃっておりますけれども。その中で一緒に仕事をして来た人たちの顔、それがまた、わーっと浮かんできて、しばらく呆然とした時間がありました。その方たちへの感謝っていうのを、表現しきれないぐらい仕事の中でいろんな時間を過ごさせていただいたっていうふうに思っています。
受賞者スピーチをする小池一子さん【※】
● キュレーターという仕事
表現したいっていうことは誰にでもあると思うんですけど。私、子供の時に自分は絵が描けないっていう、すごいトラウマを持った子だったんですよね。姉たちがすごくうまく描けるのに、私は、それがうまいと思う絵のようなものが描けないっていうことがあって。
でも、その、なにしろビジュアルな表現っていうものですね、絵とか、アート、デザイン。芸術のすごいものとか...そういうものに憧れていたので。
中学の時に、素敵な日本画の先生だったんですけど。美術の先生がいらして、その方とお話をするのが好きだったんですよ。それでみんなは描いているんだけど私は描かないでいて、それで先生も本当にうんうんって良く聞いてくださるし、返事もしてくださって。
それであるとき、ちょっと明治神宮の菖蒲園に、素晴らしい菖蒲が咲きそろったから、「これはスケッチ旅行で、みんなで行きたいんですけど」と言ったら、「いいんじゃない」っておっしゃって。それで、じゃあ企画させてくださいって言って、あるスケッチ旅行を、旅行というか、経堂の学校でしたから。小さな女学校なんですけど、スケッチ旅行をしたんですね。私はその時、みんなの時間を聞くとか用意をしていましたけど......、描けるんですよ。
それで、みんなの絵を持って帰って。その時の期末の成績簿に、美術の項目に5かなんかあって、わあ!っと思って。
私は好きな、憧れている世界にいまアプローチして良いのかと思って。
なぜキュレーターの仕事をしているかって言われたときには割合話すエピソードなんですけれども。
そんなようなことで、憧れているものに近づく方法っていうのはいろいろあるんだなぁ、と思ってきました。
アーティスト、アートディレクター、デザイナー......そうゆうビジュアル表現をなさる方への憧れっていうのは一番、自分が世界中で一番強いと思っているんですけれども、その方たちと仕事ができるんだっていうことがここまで来た一つの理由だと思います。
受賞者スピーチをする小池一子さん【※】
● 真昼の月
アーティスト・デザイナーは太陽。私は昼間の空に白く浮かんでいる月みたいなもんだなぁ、なんて。そんなことを言うのもおかしいんですけども思っています。
ただ、月には星がいっぱい周りにいるんですよね。太陽はひとりぼっちで。で、私は月もいいなぁなんて思っています。
私は、私の星の何人かの方たち、ここに来てくださってて、本当に嬉しいんですね。みんなまだ仕事をしている人たちなので、ウェビナーで見てくれるっていうこともあるんですけれども、本当に支えていただいてありがとうございましたっていう事を申し上げたいんです。
● 太陽のひとり、三宅一生さん
紙に書いてあるのはここまでなんですけれども、控室で平松洋子さんとお話してて、この服の話になったんですよ。これ、黒ですけど。ひとつ、私の太陽であった三宅一生さんが亡くなってしまって、喪の意味もあるんですね。コロナになって人が会えなくなって、だから三宅さんにもなんか電話ばっかり話してて会えてなかったので、あんまり他界されたって実感がなくて。で、いまもどこか地上にいるんでまた電話で話せるなんて思うようにしているんですけれども。
今日、こういう素晴らしい賞をいただくということになって。で、三宅さんの一番若手のチームの方たちが、この服、去年、この前のコレクションで発表されたパリコレクションで、その中の1点なんですね。これ、セパレーツなんです。下にジーンズはいているんですけど。そういうような素敵な贈り物をくださったので。
私の大好きなSFの作家のカート・ヴォネガットが、日本にアートディレクターズクラブの招待で来たんですよ。そしたら天に向かって「お父さ~ん!僕は日本のデザイナーたちに招かれて東京まで来ちゃったよ!」って大きな声で空に向かって言ったので、私もちょっと「一生さん!こんな若い人たちの仕事を残していただいているから私は大丈夫!」っていうことを言いたいなぁなんて思います。(場内拍手)
「紙に書いてあります」とおっしゃいながらも、
ほとんどご覧にならず、笑顔で会場の皆さまを見つめておられました
本当に今日はありがとうございました。
なんとも言葉が足りないぐらい大好きな4人の選考委員と宮本館長の賞でいただけたことを光栄に思います。(場内拍手)
ありがとうございました。
宮本信子館長のご挨拶
今日、この会場にいらしていただいておりますお客様。
そして、ウェビナーっていうんですか、なんていうんですか。リモートじゃないんですよね。そういうところで見ていただいているお客様、本当にありがとうございます。
そして小池さん、本当に...いえいえ、お座りになってください!
「お座りになってください!」「ハグしたいです!」「私もしたいです!」と
ハグが出来ない代わりに手を取り合おうとしている小池一子さんと宮本信子館長
ハグしたいと言って、二人で言っております。(場内笑い)本当におめでとうございます。
先日、古いむかしむかしの対談で、『感性時代』という雑誌で、伊丹さんと小池さんが対談をしてらっしゃいました、それを私、読ませていただきました。
もう本当になんか丁々発止って、打てば響くって...さっき中村さんも仰いましたけれども、そういう対談で。その楽しい会話がすっごいリズムを作っていて、うわぁ!すごいなぁ!って感動したことでした。本当にそれは私としては嬉しかったです。
ご挨拶をする宮本信子館長
そんな小池さん、これからもどうぞお身体大切になさって。そしてものすごく、もっともっと前に...もっともっと、月に向かって!(場内笑い)活躍していただいて、そして私たちを導いていただけたらどんなに良いことだろうと思っております。
本当に今日はおめでとうございました!(場内拍手)
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以上、贈呈式の様子をご紹介させていただきました。
小池一子さんのスピーチはいかがでしたでしょうか。
とても大きな喜びと感謝の思いがこもったスピーチに、ご来場の皆さまが聞き入っていらっしゃったのが心に残っております。歓談のお時間の間、小池さんと言葉を交わしている方は皆さま素敵な笑顔で、小池さんを中心に笑顔の輪が広がっているようでした。中村好文さんが祝辞でもおっしゃっていたように、小池さんの笑顔が人と人とをつないでいるのだと感じた贈呈式となりました。
皆さま、明るい笑顔の集合写真【※】
前回に引き続き、残念ながら祝賀パーティーを行うことは出来なかったのですが、ノンアルコールのお飲み物をご提供させていただき、歓談のお時間を取ることが出来ました。全て、関わってくださった方々の御協力によるものです。皆さまのお力により、和やかな雰囲気で式典を開催することが出来ました。
小池さん、選考委員の皆さま、ご来場くださった皆さま、ウェビナーにてご覧になってくださった皆さま、関係者の皆さまに厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
ぜひ、今もなおアートやファッション、広告など様々な領域で最前線に立っておられる小池一子さんのお仕事に触れていただき、広がる出会いを楽しんでいただけましたら幸いです。
今後とも伊丹十三賞そして伊丹十三記念館をよろしくお願いいたします。
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【※】の写真は、撮影:池田晶紀さん(株式会社ゆかい)、
撮影協力:株式会社ほぼ日のみなさんです。
スタッフ:橘
2022.09.12 第14回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました【その1】
メディアなどで目にされた方がおられるかもしれませんが、9月5日(月)、東京都港区六本木の国際文化会館におきまして、第14回伊丹十三賞の贈呈式が行われました。
小池一子さんと選考委員4名と宮本信子館長【※】
このたび伊丹十三賞を受賞されたのは、クリエイティブ・ディレクターとしてご活躍中の小池一子(こいけ かずこ)さん。
撮影:藤塚光政
記念館便りでは、今週と次週の2回に分けて式の模様をレポートさせていただきます!
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昨年に続きコロナ禍での開催ということで、zoomウェビナーでのオンライン中継も行われた今回の贈呈式。
やや心配された天候も、当日はこのとおり、青空が広がる良いお天気となりました。
庭園にて
式典は主催者挨拶からはじまり、受賞者小池さん、4名の伊丹十三賞選考委員、宮本信子館長の紹介が行われたのち、選考委員のおひとり・中村好文さんから祝辞が贈られました。
祝辞 選考委員・中村好文さん
小池一子さん、この度は第14回伊丹十三賞受賞おめでとうございます。
----ここまでしか覚えてないので(笑)、(この後は用意した祝辞を)読ませていただきます。
祝辞を述べられる中村好文選考委員
伊丹十三賞は、これまでに13人の受賞者がいらっしゃいますが、小池さんはその中でも一番年上で、年齢的にはちょうど伊丹十三さんの妹分にあたります。いまも現役のクリエイティブ・ディレクターとして活躍されている小池さんに伊丹十三賞を贈呈できること、選考委員のひとりとして、心から喜ばしく、また誇らしく思っています。
賞の選考にあたって、僕たち4人の選考委員には伊丹十三賞準備委員会から事前に候補者に関する資料が送られてくるのですが、小池さんに関する資料は『美術/中間子 小池一子の現場』という本と『小池一子 はじまりの種をみつける』という2冊の本でした。
●「これも小池さんの企画だったのか」
そしてその本を読み始めた途端、僕自身が過去から現在に至るまでに大きな刺激を受け、鼓舞された雑誌、広告、展覧会、イベント、書物などのことが次々に脳裏に浮かびました。
そして、そのひとつひとつのシーンを思い浮かべるたびに、「ああ、これも小池さんの企画だったのか」とか「あ、これも小池さんの仕事だったのか」とか「えぇ、この時も?」という具合に気付かされて、あらためて小池さんのお仕事の間口の広さ、質の高さ、影響力の大きさを再認識することになりました。そして、感心したり、感嘆したりすることしきりでした。
本の中には、"企画を出して実現しなかったものはなかった"という言葉もあり、小柄でチャーミングな小池さんを、思わず見上げるような気持になったりしました。といいつつ、僕が感嘆し、感心したのはそれだけではありません。
本の中に次々に登場する三宅一生さん、田中一光さん、石岡瑛子さん、川久保玲さん、倉俣史朗さん、安藤忠雄さん、磯崎新さん、杉本貴志さん、などなど、ファッション界、デザイン界、建築界において名立たるプランナーの面々と小池さんが二人三脚で、すばらしい仕事をされてきたことに想いを馳せ、人知れず羨望のため息を漏らしたのでした。
小池さんの長い年月にわたる目ざましい活動と、多岐にわたる業績の数々は、どんなに讃えても、讃えすぎるということはないと思います。
さて、ここで不思議に思うのは、小池さんはなぜこのような資質と才能にあふれたクリエイターたちと肩を並べ、対等に仕事ができたのだろう、ということです。
もちろん、小池さん自身が才能に恵まれ、感性豊かなだけでなく、クリエイターが内に秘めている可能性や能力を最大限に引き出す天分があるに違いありません。
そして何よりも、クリエイターたちから絶大な信頼を寄せられていたからだということを忘れるわけにはいきません。
でも、「本当にそれだけだったのだろうか」という思いが、あるいは疑問が、簡単にはぬぐえません。
じっと聞き入る小池さん、選考委員、宮本信子館長【※】
●「なんて笑顔のいい人なんだろう」
ここでわたくし事ですが、小池さんとのささやかなおつきあいについて話したいと思います。
8年ほど前、僕は「金沢21世紀美術館」で小屋の展覧会を開きました。そしてその会期中に、中庭に展示した小屋の前で、小池さんと対談させてもらったことがありました。その時は「物を粗末にしない簡素な暮らし」をテーマに話し合ったのですが、対談のあとあとまで僕の印象に残ったのは、話の合間合間に小池さんが見せてくれた、素敵な笑顔でした。「なんて笑顔のいい人なんだろう」と思ったのです。つまり、笑顔に魅了されたわけす。
そしてそれから数年後、今度は目白通りの洋風居酒屋の前で連れだって歩道を歩いていらした小池さんとケン・フランケルさんにばったり出会いました。その時僕は友人たちとそのお店で食事をしようとして、店の前にたたずんでいたのですが、偶然お二人にお目にかかれたことが嬉しくて、ごく軽い調子で「よかったら、一緒に食事しませんか」とお誘いしました。もちろんダメ元のお誘いでした。ところが小池さんは困った様子も見せず、ちらりとケン・フランケルさんのお顔を見たあとで、こちらを振り返ってにっこり笑い、「あ、いいわね」と仰いました。そして、お二人そろって食事に付き合ってくれたのです。
その時の笑顔と、打てば響く即断即決の反応を忘れることができません。
ここでもう一度先ほどの話題に戻しますが、小池さんが、本の中では「太陽のような人たち」と呼んでいた三宅一生さんや田中一光さんたちと対等に仕事ができた背景には、実はこの笑顔が、一役も二役も買っていたに違いないと僕は推察しています。
小池さんの笑顔は人の気持ちを明るくし、和ませてくれる笑顔であり、どんなことであれ相手をその気にさせずにいられない、特別な魔力と説得力のある笑顔といっても良いと思います。
小池さんのご本の中に"私を媒介として人と人をつなげることを大切にしてきました"という一節がありましたが、小池さんの笑顔が、人と人の心をつなげる、かすがいの役割を果たしていたのだと僕は確信しています。
●「伊丹さんはきっと、顔をほころばせて喜んでくれたのではないかと思います」
今回の受賞者が小池一子さんだったということを、伊丹十三さんに報告したら、伊丹さんはきっと「あぁ、それは良い人を選んだね」と、ポンと膝をたたき、顔をほころばせて喜んでくれたのではないかと思います。
というわけで、僕としては、他の選考委員の皆さんの承諾は後ほど取りつけることにして(笑)、今回の伊丹十三賞を、小池さんの数々の輝かしい業績に対してだけでなく、小池さんの " 輝かしい笑顔 " に対して贈りたいと思います。
小池さんのクリエイティブ・ディレクターとしての、今後のますますの機会に期待し、いつまでもお元気で、僕たちの見上げる存在でいてくださるよう小池さんにお願いして、僕の祝辞を締め切りたいと思います。
小池さん、この度の受賞、誠におめでとうございます。(場内拍手)
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中村好文さんの素晴らしい祝辞、いかがでしたでしょうか。
お話の中で何度も「笑顔」という言葉が登場しましたが、この贈呈式でも、小池さんはステキな笑顔をたくさん見せてくださいました。
次週は、そんな小池さんの受賞者スピーチ等々、引き続き式の模様をお届けいたします。お楽しみに!
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【※】の写真は、撮影:池田晶紀さん(株式会社ゆかい)、
撮影協力:株式会社ほぼ日のみなさんです。
スタッフ:山岡
2022.09.05 mon oncle
昼間の暑さはそのままに、朝晩は随分と冷えこんできて、すっかり秋の匂いがする季節になってまいりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。体調を崩しやすい季節ですので、何卒ご自愛ください。
さて、本日は記念館のグッズショップにて、新たに販売する商品についてご紹介いたします。
それがこちら
ほぼ日手帳!
ほぼ日手帳とは、第1回伊丹十三賞を受賞してくださった糸井重里さんが運営をされている、株式会社ほぼ日から販売されている手帳です。かく言う記念館でも日々のスケジュールの管理に1日1ページの文庫本サイズを使用しております。
そんなほぼ日手帳の2023年度のラインナップに、伊丹さんのデザインの週間手帳が仲間入りをしました。
名前は「mon oncle」
このmon oncle(モノンクル)という言葉は、フランス語で「ぼくのおじさん」。伊丹さんが編集長を務めた精神分析に関する雑誌の名前でもあります。
手帳の装丁は、著書『ヨーロッパ退屈日記』の挿絵があしらわれており、シックで使いやすいデザイン。サイズは文庫本と比べて少し長いくらいで、『ヨーロッパ退屈日記』と並べてみるとこんな感じです。厚みは『ヨーロッパ退屈日記』の3分の2ほどで、ちょうど長財布くらいとなっております。
表紙に描かれているイラストの中でも、左上の鳥の形のレモン搾り器は、記念館のグッズでも良く取り入れられているイラストです。『ヨーロッパ退屈日記』の中の「ミモザ」(p.79)にて描かれるイラストは、クリアファイルやマグネット、シールなどにも使用されております。書籍やほぼ日手帳と一緒に揃えてご使用されるのもおすすめです。
金色で箔押しされている「'23」の文字は、伊丹万作全集を作る際、伊丹さんがレタリングした明朝体です。
また、裏表紙は「スパゲッティの正しい」(p.228)食べ方のイラスト。白地に黒で描かれたイラストが映える、シンプルなデザインとなっております。
その他にも使用されているイラストはございますが、ぜひ『ヨーロッパ退屈日記』の中から探してみてください。
スケジュール帳は、書き込むほど日々の中に根付き、思いついたことや日々の出来事を書き込むうちに、生活の一部になっていくものだと思います。
伊丹さんのほぼ日手帳が、皆様の2023年の一部になってくだされば幸いです。
お値段は2,970円(税込)。記念館では見本もご用意しておりますので、ご来館の際はぜひ手に取ってご覧になってください。ご自分でのご使用の他にも、『ヨーロッパ退屈日記』や記念館のグッズと合わせてプレゼントにするのもおすすめです。
スタッフ:橘
2022.08.29 乗り物マニア
こちらは伊丹十三記念館に展示している伊丹十三最後の愛車ベントレーです。
伊丹さんはこのベントレーを手に入れる際、「人生最後の車だから、この車(ベントレー)が欲しい」と家族に相談し、購入したというエピソードがあります。
そのベントレーを展示しているガレージには、若いころに所有していた「ロータス・エラン」について書かれたエッセイが表示されています。
「私が自分のロータス・エランを赤にしたのは、こいつなら赤でも目立たない、と思ったからでありますが、さらに念を入れるなら、この車はよごれっぱなしのほうがいい。埃や泥はもちろん、小さな引っかき傷や、軽いへこみも、そのままにしておいたほうがいい。
私の分類では、こいつは、雨具や履物の部類に属する。仕立ておろしのレインコートや、ま新しい靴というのが、どうにも気恥ずかしいものであると同様、車も、ある程度薄よごれた感じのほうが、私には乗り心地がいい。
ま、そういうわけで、私は自分のロータスを掃除しないことにしている。昨年の暮れには、ひと月ばかりガレージにいれっぱなしにしておいたから、実にいい具合に埃がつもって、その埃の上に猫の足あとなんかついて、ほとんど私の理想に近い、芸術的なよごれをみせるようになった。
私は、この埃の上に、指で絵を描こうと思った。そうだ!注連飾りの絵を描いて年始に出よう、と思った。」
「女たちよ!」より
このロータス・エランを購入する際にも、実はベントレーと同様、エピソードがあります。それについて書かれた伊丹さんのエッセイ、その名も「ロータス・エランのために」をご紹介いたします。
「わたくしがロンドンへ発つにあたって、一つ、実にくだらないことを、心にきめてきた。つまり、もし、この役が貰えたら、何が何でもロータス・エランを買ってやろうと思ったのです。
ロータス・エランは英国のスポーツ・カーだ。排気量は一六〇〇ccと小さいが、二〇〇キロ近い最高速度を持つ。しかも、スタートして一〇〇キロに達するに要する時間が何秒だと思う。たったの七秒という、実にどうにも気違いじみた車なのです。
ところで役が貰える、ということはどういうことか。勿論、ピーター・オトゥール、ジェイムス・メイスン、クルト・ユルゲンス、イライ・ウォラック、ジャック・ホーキンス、それに日本の斎藤達雄さんなんかと入り乱れて、しかもリチャード・ブルックスの監督のもとに、七〇ミリの仕事をするという、俳優にとって、これだけでも夢のような名誉だ。だが、それだけではない。役が貰えるということは、このロータス・エランを買って、なおかつ二人口が一年やそこら楽に食えるだけのものを余す収入を意味するのです。」
「ヨーロッパ退屈日記」「ロータス・エランのために」より
この「七〇ミリの仕事」というのは1965年に制作された『ロード・ジム』という映画で、伊丹さんは見事、「役を貰い」、赤いロータス・エランを購入したという訳です。
ベントレー同様、ロータス・エランにも、購入に際して深い思い入れがあったことがわかりますね。
このようにして手に入れたロータス・エランに、前述の通り、埃をつもらせて楽しんでいたというのが何とも伊丹さんらしいですね。
十三の名前にちなんだ「13の顔」の中のひとつ「乗り物マニア」と呼ぶにふさわしいマニアっぷりです。
「女たちよ!」ご購入は こちら から
「ヨーロッパ退屈日記」ご購入は こちら から
ご来館の際には、「乗り物マニア」だった伊丹さんが愛した最後の愛車ベントレーをお見逃しなくご覧ください。
スタッフ:川又
2022.08.22 暑い夏におすすめのドリンク
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
今年も暑い暑いお盆となりましたが、皆さまはどのようにお過ごしだったでしょうか。
さて記念館のカフェ・タンポポでは、ペリエ(天然炭酸水)を使ったドリンクをご提供しています。
冬場もご注文いただける通年メニューではありますが、暑い時期にオーダーしていただくことが多く、今年も8月入ってからじわじわと注文が増えてまいりました。特に、気温も高かった今年のお盆には、ペリエを使ったメニューを好まれた方が多かったようです。
まだまだ続きそうな蒸し暑い夏に、さわやかな飲み口のドリンクはいかがでしょうか――ということで本日はカフェのペリエメニューをご紹介しますね。
カフェ・タンポポで提供しているペリエを使ったメニューは3種類あります。
ゆずジャムと手作りのしょうがシロップをそれぞれペリエで割った「ゆずペリエ」「ジンジャーペリエ」。ジンジャーペリエには、甘く煮込んだ生姜を細かく刻んだものを加えています。そして、ゆずジャムと生姜シロップの両方をミックスしてペリエで割った「ゆずジンジャーペリエ」があります。
よく混ぜて飲んでいただき、ペリエ本来のきめ細かい炭酸と合わせてお楽しみいただきたいメニューです。
ゆずジンジャーペリエ
夏に人気の理由としては、飲み口の爽快さでしょうか。「さっぱりしていておいしい!」というお声をよくうかがいます。
身体にまとわりつくような暑さの中、「飲んでシャキっとしたい!」という時におすすめです。
上にのせたミントの葉っぱで見た目にもさわやかです。
明日23日は処暑。
暑さが終わるころ...だそうですが、残念ながらまだ気温の高さは続きそうです。
ご来館の際は、カフェ・タンポポでアイスドリンクを飲みながら、ひと涼みしてくださいね。
スタッフ:山岡
2022.08.15 中庭
8月も半ば、いまだ猛暑日が続いておりますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今月は夏休みに入られた学生の方がご来館くださることも多く、中にはノートを片手に展示室をご覧になっている小中学生の方もいらっしゃいました。カフェで親御様と休憩を取りながら、熱心にノートに向かっている方を見ると、微笑ましくて自然と笑顔になってしまいます。
さて、本日は記念館の中庭についてお話しをさせていただきます。
記念館の中でも印象的な空間であり、ご来館くださるお客様から「とても素敵ですね」と言っていただけることが多い場所でもあります。
日々、中庭を通っております私も、とてもお気に入りの場所です。
記念館のリーフレットを開いていただくと、宮本信子館長のお言葉が書かれております。
ある昼下がり。中庭の草の上に、腹這いになっている人がいる。どうやら本を読んでいるようだ――。そばにシャンパンのグラス。
近づいてみると、ナント、「伊丹十三!」そして、「やぁ、いらっしゃい!」。少しニヤリと笑って言った。続けて、彼はまた、言う。「楽しんでいって!けっこう面白い所だよ、ここは――。記念館としては旨くいったネ。僕も気に入ってるんだよ。まぁ......ごゆっくり......いやぁ――(頭を掻く)よかったら、また、来てネ!」
「伊丹十三記念館」は、隅々まで伊丹十三が感じられる、あたたかくて、気さくで、見ごたえのある記念館です。
記念館のリーフレット
イラストは中村好文先生です
展示室を入ってすぐの大型モニターでも流れております、館長のご挨拶の中にもこの「中庭で腹這いになっている伊丹さん」の姿は語られております。13のコーナーと企画展示室を見てから中庭に出てみると、本当に伊丹さんが寝転んでいる姿を見れるような気がすることも。お客様からもたびたび「本当に伊丹さんが中庭にいる気がしました」と中庭について話していただき、嬉しく思います。
中庭で立派に育っている桂
記念館便りでもよくご紹介をさせていただく、中庭の桂は開館当時からここにあります。季節の移り変わりだけではなく、一日の中でも違った姿を見せるこの桂は、根元から二つに分かれた双幹の形をなしております。まるで伊丹さんと宮本館長のお二人が寄り添っているように見える記念館のシンボルツリーです。
中庭を囲む回廊には、腰をかけて休めるようにベンチがとりつけてあります。ご来館くださるお客様のほとんどが座って景色を眺めてくださる場所です。みなさまの声のお写真を撮らせていただく際「どこでお撮りいたしましょうか」とお伺いすると、座ってくださる方が多い人気の場所でもあります。
そんな中庭を望む大きなガラスに、可愛らしい模様が入っているのをご存知でしょうか。
受付側、カフェ側のどちらにもついておりますこちらは、映画『タンポポ』の主人公タンポポがお店を改装した時に掲げた看板の絵柄です。写真では伝わりにくいのですが、色味は薄いグレーとなっており、景色によく馴染んでおります。
等間隔に並ぶタンポポ
可愛らしい模様はお客様からも評判がよく、中庭の桂の木も一緒に映していらっしゃるお客様も多いです。
ここ最近、中庭を歩いている小さなお客様
ハクセキレイというのだそうです
スタッフが横を通っても飛び立たない時もあるくらい人に慣れてきました
季節によって姿を変える中庭。秋はもう少し先ですが、これからだんだんと葉が色づいていきます。ご来館くださった際は、中庭でもゆっくりした時間をお過ごしいただければ幸いです。
スタッフ:橘
2022.08.08 炊飯器を使わない炊飯のはなし
最近、土鍋や圧力鍋などを使い、炊飯器を使わずお米を炊く人が増えてきているようです。
SNS等でそのような情報をよく見かけるようになってきました。
わたくしも鍋での炊飯を始めてから1年半が経ちます。
きっかけは、軽い気持ちで鍋でご飯を炊いてみたことからです。
ある時期から自宅の炊飯器がどうも美味しくご飯を炊けなくなってきているということに気が付き、調べてみたところ、ご飯が美味しく炊けなくなるのは炊飯器の寿命のサインでもあるということがわかりました。
そこで、新しい炊飯器を購入すべくリサーチする過程で、冒頭のとおり鍋での炊飯の情報をたくさん見かけ、「じゃあ一度試しに鍋で炊いてみるか」となった次第です。
使った鍋はどの家庭にもあるような、ごく普通のステンレス多層鍋です。
想像していたより随分簡単に、随分美味しくご飯を炊くことができました。
あまりに簡単で、美味しく、特に不便も感じず1年半が経過し、今に至るという状況です。
前置きが長くなってしまいましたが、ここで、伊丹十三のエッセイ「女たちよ!」から炊飯に関するエッセイ「おこげ」を紹介いたします。
伊丹さんの子供時代の情景が目に浮かぶようです。
飯盒で炊いたご飯が食べたくなってきますよ。
「近頃の都会の子供たちはおこげというものを知らない。食べたことがない、というより存在そのものを知らない。
自動炊飯器のおかげで、今や御飯の出来不出来というものはなくなってしまった。不出来がないと同時に上出来もどこかへいってしまった。これは淋しいことである。
われわれの子供時分には学校で遠足にいくと、昼飯はてんでに飯盒で炊いた。三、四人がグループになって、河原で石で竈を作り木の枝を渡して飯盒をならべて火にかける。飯盒の蓋の上には必ず石をのっけて重しをすることになっていた。
炊上りは音でそれと知れる。こつこつと堅い音がしてくれば炊上りである。炊き上ったら飯盒を火から降ろして、しばらくひっくり返しておかねばならぬ。上から下まで満遍なく蒸らすためであろう。日本中のだれでも知っているコツであった。
さて、炊上りだ。おこげを作らずに真っ白く炊き上げたやつは大得意だ。おこげを作って、あとでお茶漬なんかしてるやつも得意そうである。真っ黒なおこげを作ったやつは、やっぱり得意そうにみんなに見せてまわっている。
でも、いくらまわりが真っ黒こげでも、中はふっくらとうまく炊けている。これが飯盒の不思議なところだ。百発百中である。
秋の空が高く澄んで、川面がきらきらと輝き、赤蜻蛉が飛び交う。どこからどうして川を渡ったのか、向こう岸の大きな岩の上で食べている連中もいる。「こんなにうまい御飯は食べたことがない」みんながみんな子供心にそう思うのであった。
御飯に関する限り、今の子供は不幸である。やっぱり御飯は瓦斯で炊くにしてもお釜で炊きたい。おかあさんが病気の時には、息子の太郎が健気にもおこげだらけの御飯を炊いてくれる。そういうものでありたい。」
「女たちよ!」ーおこげー
このように、伊丹さんもおススメされていますので、みなさんもよかったら、一度炊飯器を使わず炊飯することにチャレンジしてみてください。
もしかしたら、わたくしのようにそれ以降一度も炊飯器の出番がなくなるという方もいらっしゃるかもしれません。
停電時など何かしらのピンチの際にも役に立つ術になると思います。ぜひご検討ください。
噴きこぼれたら
火を止めてしばらく置いておくだけ・・・でとりあえず炊けます。
スタッフ:川又
2022.08.01 本を贈るときの "もうひとつ"
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
あと1週間ほどで「立秋」、暦の上では秋がはじまるのですが......そんな気配がほとんど感じられないくらい暑い日が続いていますね。
体調を崩されませんよう、日々気をつけてお過ごしください。
さて記念館のショップでは伊丹さんの著書を取り扱っていて、たくさんの方がお買い上げくださいます。
展示をご覧になって伊丹さんに興味を持ち、著書を読んでみようと思われる方が多いようですが、中にはすでに読んだことがあって、「友人にプレゼントする」「息子に読ませる」など他の方に贈って "おすすめ" するために本を買われる方もいらっしゃるんですよ。
先日も、そのような理由で『ヨーロッパ退屈日記』(新潮文庫)を買われた方がいらっしゃったのですが、そのお客様は「本と一緒に、もうひとつ何か渡したい」とのことで、マグネットをひとつお買い上げくださいました。
マグネットは『ヨーロッパ退屈日記』にあるエッセイ「スパゲッティの正しい食べ方」の挿絵イラストがプリントされたものです。
ご存じの方も多いと思いますが、伊丹さんの著書には伊丹さん自身が挿絵イラスト書いているものがあります。
記念館ショップにはそんなイラストを使用したオリジナルグッズがありますので、なるほど、該当の本を贈るときは、そんなグッズを一緒にお渡しするのも面白いですね!
どんなエッセイのイラストか確かめながら読んでいただくのもいいのではないでしょうか。
そんな場合のおすすめは、上記のお客様が買われたマグネットのほか、缶バッジ、ゴム印です。文庫よりも小さくて、お客様曰く「ちょっと気の利いた "おまけ" 」のようですよね。
『女たちよ!』(新潮文庫)をお渡しするときでしたら、エッセイ「ハリーズ・バーにて」のイラストをプリントしたマグネットやゴム印、エッセイ「二日酔いの虫」イラストの缶バッジやゴム印などがありますよ。
「ハリーズ・バーにて」
「二日酔いの虫」より
全部の著書ではありませんが、イラストがグッズ化されている著書をプレゼントするときは、ぜひご検討くださいませ。
スタッフ:山岡
2022.07.23 かき氷
7月も下旬に入り、学生の方々は夏休みに入られた頃でしょうか。
記念館では中庭や玄関口にある木々から、にぎやかな蝉の声が聞こえてきております。
先日ご来館くださったご家族の方で、お子様が興味津々に蝉の観察をしておられました。木の葉の裏に残った空蝉まで観察されており、夏真っ盛りだな、と感じました。
葉の裏に器用についている抜け殻。中庭の桂で探してみてください。
さて、本日7月25日は「かき氷の日」だそうです。日本かき氷協会の方が制定したものだそうで、7(な)2(ツー)5(ご)でかき氷のかつての名前「なつごおり」(夏氷)の語呂合せだとか。(加えて、1933年7月25日に日本最高気温を記録したことも所以だそうです。近年、この最高気温は更新されたとのこと)
伊丹さんの著書、『女たちよ!』の中には下記のようなかき氷についてのエッセイが収録されています。
ヴェニスのサン・マルコ広場を初めて見た時の私の印象は、恥をいうなら、ここで氷を売ったらさぞ儲かるだろう、というものであった。氷というのは、あの手廻し式氷削り機でもって、しょりしょりとやる、あの氷のことである。
高校の頃、私は氷のことを「ナガ」と呼んでいた。学校の近くの氷屋の旗が、氷という字の点の打ち方を間違って「永」という字になっていたのである。
つまり、氷屋というのは、肝腎の氷という字を永と書き誤るような、そういうだめな男が、親類からなにがしかの金を出してもらって店を持つ、そういう時に恰好のものであったのかもしれぬ。
ともあれ、私たちはよく「ナガ」を食べた。私たちの田舎では、氷を先に削って、あとから、あの色つきの砂糖水をかける。赤いのがイチゴ、黄色がレモン、緑がメロン、白いのはミゾレ、とかスイとかいった。スイとはどういう意味か、定かではない。
容れ物は、ごく安物の、偽のカット・グラスの、つまりイボイボのあるガラスの器である。これにまたいかにも似つかわしいアルミのスプーンがつく。
(『女たちよ!』より「ナガ」 p.229)
最近はさらさらの雪のようなかき氷や、牛乳からつくったかき氷、たくさんのフルーツが盛ってあるかき氷と、様々な種類のかき氷を目にすることが増えてきました。
数年前の夏に食べたマンゴーのかき氷です
かく言う私も、ここ数年の写真を見返していると見栄えするかき氷の写真しか残っていなかったのですが、「かき氷」と聞いて思い出すのは、もっぱら紙カップにスプーンストローがついてくる、お祭りで売られているものです。夜市や花火大会であの粗い粒の残る氷を頬張ったとき、「今年も夏が来たんだなぁ」と感じておりました。
同じく『女たちよ!』の中で、伊丹さんはこのようにも書かれております。
アイスクリームというよりは、もっとジャリジャリしてシャーベットに近い、ほら、昔汽車の駅で売っていた、あれができると思うんだよ。
私はアイスクリームはあれに限ると思う。あのサッパリしたところが実に夏の味わいではないか。やはり凍らした菓子、という感じがなくてはおもしろくない。
(『女たちよ!』より「凍らした菓子」 p.238)
かき氷の話と合わせて読むと、なんだか夏はさっぱりした味の、じゃりじゃりしたシャーベットのようなアイスクリームか、手廻しの氷削り機でつくったかき氷が食べたくなってきます。伊丹さんが書かれたエッセイの中でも、特に夏を感じられるエッセイだと思います。
まだまだ暑い日が続きます。遠くに行くのは難しい今、エッセイを読み、冷たいかき氷やアイスクリームを食べて、夏を感じていただけたら幸いです。
スタッフ:橘
2022.07.18 第14回 伊丹十三賞 受賞者決定のお知らせ
この度、第14回伊丹十三賞の受賞者が決定いたしました。
第14回の伊丹十三賞は・・・
クリエイティブ・ディレクターの 小池 一子 (こいけ かずこ)さんがご受賞くださいました。
撮影:藤塚光政
小池一子さん プロフィール
1936 年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業。クリエイティブ・ディレクター。1980 年「無印良品」創設に携わり、以来アドバイザリーボードを務める。1983 年にオルタナティブ・スペース「佐賀町エキジビット・スペース」を創設・主宰し、多くの現代美術家を国内外に紹介(~2000 年)。2022 年には初の個展となる「オルタナティブ!小池一子展アートとデザインの やわらかな運動」を3331 Arts Chiyoda にて開催。近著に『小池一子 はじまりの種をみつける』(2021 年、平凡社)。令和 2 年度文化庁長官表彰。武蔵野美術大学名誉教授。
「ファッション、広告、デザイン、アートなど多岐にわたる領域で、半世紀以上、最前線に立ちつづけ、今もなお多くの才能を送り出すクリエイティブ・ディレクターとしての活動に。」対してお贈りいたしました。
この度のご受賞にあたり、小池一子さんよりコメントをいただきましたのでご紹介いたします。
「伊丹十三さんに憧れていた私です。このような賞を頂くなど思ってもいませんでしたので、ただ感謝、感激です。そういえば伊丹さんは私の仕事の一つ、キュレーターの役割にいち早く興味をもってくださったのでした。
小池 一子」
こんなに喜んでいただけるなんて、こちらこそ、感謝、感激です。
さて、いただいたプロフィールにもあります通り、小池一子さんは、『無印良品』の創設に携われた方です。
わたくしは小池一子さんの肩書の「クリエイティブ・ディレクター」という職業にはあまり馴染みが無かったのですが、『無印良品』と言われると、自宅でも記念館でもありとあらゆる商品を愛用させていただいており、距離がぐっと縮まる気持ちがいたしました。
同じように感じられた方も多いのではないでしょうか。
さて、話は少し変わりますが、伊丹十三の初監督作品の『お葬式』(1984年)のプログラムには広告が3つ入っています。
その3つの広告のうちの1つが『無印良品』の広告です。
こちらが『お葬式』のプログラム。
いわゆる「表3」に載っている広告が『無印良品』の広告です。
この『無印良品』の広告のキャッチコピー「色のまんま。」は小池一子さんが手がけられたものだそうです。
ご縁を感じずにはいられませんね。
『お葬式』の公開は今から38年前です。そんなに前から実はこんなに近くにいらした方に伊丹十三賞をご受賞いただけるということで、改めて大変嬉しく存じます。
さて、ここでそもそも「伊丹十三賞」って何??という方に、伊丹十三賞についてご説明いたします。
伊丹十三賞とは伊丹十三記念館の運営母体である「公益財団法人ITM伊丹記念財団」から、毎年" あらゆる文化活動に興味を持ちつづけ、新しい才能にも敏感であった伊丹十三が、「これはネ、たいしたもんだと唸りましたね」と呟きながら膝を叩いたであろう人と作品 " に贈らせていただいている賞です。
第13回の伊丹十三賞の贈呈式において選考委員の周防正行監督が祝賀スピーチの中で
「今までの受賞者の方を見て、伊丹十三賞っていうのはどういうものかっていうのが、もしかしたらわかってくるんじゃないか。」
とお話しくださいました。
今回、第14回を小池一子さんにご受賞いただいたことで、「伊丹十三賞」の輪郭がより一層はっきりしてきたのではないでしょうか。
よろしければ歴代の受賞者や特設ページもこの機会に是非ご覧ください。
※伊丹十三賞概要や歴代の受賞者はこちらから↓
https://itami-kinenkan.jp/award/index.html
※特設ページも是非ご覧ください。↓
https://itami-kinenkan.jp/award/award14.html
無印良品の書籍「MUJI BOOKS」からも
「人と物 8 伊丹十三」定価500円(税抜き)が出版されています。
(全国の「MUJI BOOKS」と伊丹十三記念館ショップにて販売中)
スタッフ:川又
2022.07.11 豆乳ブルーベリー開始と次回の映画上映
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
厳しい暑さが続いています。体調など、より一層ご注意のうえ日々お過ごしくださいね。
さて、カフェ・タンポポでは今年も「豆乳ブルーベリー」がスタートしました。
紫色のドリンクに、緑のミントの葉っぱをのせた期間限定メニューです。
このメニューを開始すると、夏が来たなぁ...と思います。
豆乳とブルーベリーをミックスしたシンプルなドリンクですが、ほどよい甘味と酸味を楽しんでいただけます。世代を問わずご好評いただいている人気メニューですので、この時期ご来館いただいた時はご賞味くださいませ。
そしてもう一つ、明後日13日は、恒例となりました「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の日です。
今年度4回目となる今回は、1988年に公開された「マルサの女2」を上映します。
「あの板倉亮子がマルサカットの寝癖頭を振り立てて帰ってくる!!」という映画ポスターのフレーズにあるとおり、前年1987年に公開され大ヒットした「マルサの女」の続編となる作品です。
初めての方はもちろん、観たことがあるという方も、ぜひご鑑賞にお越しください。
スタッフ一同、皆さまのご来館をお待ちしております!
スタッフ:山岡
2022.07.04 ガイドブック
2022年も半分が過ぎ去り、すっかり夏本番のような気温ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
全国的に猛暑の日々が続いておりますので、熱中症などになりませんよう、何卒お身体を大事になさってください。
ここ数日、記念館の受付に座っておりますと、耳元に虫の羽音がまとわりつくことが多くなりました。掴もうとしても、叩こうとしても、こちらをあざ笑うかのように逃げ続ける蚊を見て、脳裏に浮かんだのは『女たちよ!』の中で伊丹さんが書いていたエッセイです。
そろそろ蚊が多くなってきた。
五月、六月の蚊は、まだあんまり人間に馴れていないからとるのも楽であるが、これが八月、九月になるともういけない。人間の攻撃の、あらゆる裏表を知りつくした、老巧なやつらだけが生き残って跳梁をほしいままにする。
パン!パン!と蚊に向かって打つ拍手がことごとく空振りに終って、ついには手のひらがじんじんと腫れぼったくなってしまう。
(『女たちよ!』より「蚊」 p.96)
実に、何度も頷きたくなるエッセイです。7月初旬にも関わらず既に手練れが!と思いながら、蚊に苦戦を強いられていると、多くの人と同じように伊丹さんも蚊を煩わしく感じていたのだな、と親近感が沸きました。
さて、本日お話しさせていただくのは、記念館のガイドブックについてです。
伊丹十三記念館では、常設展示室に13のコーナーが設けられておりますが、こちらのガイドブックではそれぞれのコーナーの展示品や、展示にまつわるエッセイを収録しております。
ご購入くださる皆さまは、記念館の展示を気に入ってくださった方、ご友人などに記念館を紹介してくださる方、遠方に住んでおり記念館に来るのが難しいお知り合いなどに送ってくださる方など、色々な方がいらっしゃいます。
多くのお客様が手に取ってくださるこのガイドブックは、記念館でしか手に入らない物です。そんなガイドブックの、私なりのおすすめさせていただきたい理由が3つございます。
1つ目はそのコンパクトさ。文庫本のサイズと変わらないので、伊丹さんの著書の文庫本と一緒に本棚に納めることが出来ます。470ページ弱と分厚いので、持ち運びには多少不便かもしれませんが、その分ボリュームはしっかり。かなり見ごたえのあるガイドブックです。
文庫本と並べても馴染みます
2つ目は、伊丹さんと交流のあった方々から見た、伊丹十三という人についてのエピソードが収録されているところです。従兄弟であるギタリストの荘村清志さんや、展示室に入ってすぐの「やあ、いらっしゃい」と笑っている伊丹さんの写真を撮った浅井慎平さん、伊丹さんが精神分析に傾倒するきっかけとなった『ものぐさ精神分析』の著者である岸田秀さんなど、合わせて16のエピソードを読むことが出来ます。
様々な角度から伊丹さんを知ることが出来ます
3つ目は、実物と見比べることが出来るところです。
展示品が多く収録されているガイドブックは、写真が充実しております。1点目と少し重なってしまうのですが、手のひらに収まるサイズですので、ガイドブックを片手に展示品を見ることが出来るのです。伊丹さんが愛用していたギターやバイオリン、食器やレコーダーなど、様々なものの細部を確かめることができ、展示室ではご紹介しきれないエピソードや伊丹さん自身のエッセイと共にご覧いただけます。
伊丹さんが愛用していたギター
金継ぎをして大切に使っていた大皿
伊丹さんがイラストで描いていたズックもご覧いただけます
私個人の感覚なのですが、多くの美術館の図録は大判のものが多く、家に飾っておくだけになってしまいがちな気がします。この記念館のガイドブックを初めて手にしたとき、このサイズ感がとても素敵だな、と思ったので、魅力が少しでも伝わっていれば幸いです。記念館以外の場所でも読むことが出来るガイドブックですが、是非、展示室の中や、読み物として使ってみてはいかがでしょうか。
スタッフ:橘
2022.06.27 これさえあれば
突然ですが皆さま、『夢中』になっていることはありますか。
「これさえあれば」というものです。
わたくしはあります。現在「サトイモ科」の植物に夢中です。
【サトイモ科の植物は成長が早く、育て甲斐があります】
それはさておき、夢中になれることがあるって素晴らしいですよね。
夢中になっている人というのは、見ているだけでも気持ちが良いものです。
そんな素敵な人ばかりが出ている素敵な映画を観てまいりました。
「メタモルフォーゼの縁側」です。
みなさまご存知の通り、当館の宮本信子館長が出演しています。
館長演じる「雪さん」と芦田愛菜さん演じる「うらら」の歳の差を越えた友情のお話です。
そしてエンディングでは芦田愛菜さんと宮本館長がこの映画にぴったりの主題歌、
T字路sの「これさえあれば」をデュエットしているのです。
観終わったあとには前向きに、そして二人の友情になんとも温かい気持ちになれる映画です。
そしてそんな心に二人の歌声が沁みます。
大変おすすめいたしますので、皆さまも機会がありましたら是非ご覧ください。
スタッフ:川又
2022.06.20 伊予弁のCM
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
四国も先週13日に梅雨入りしました。これから気温もどんどん上がってきますので、体調にはくれぐれもお気をつけくださいね。
さて、少し前の話になりますが、4~5歳くらいの男の子が、お父さん・お母さんに向かって「もんたかや」と何度も口にしているところを見かけました(ちなみに「もんたかや」は伊予弁で、「戻ったのかい」という意味です)。
ここ記念館でお客様から特にご好評をいただいている展示のひとつに、「伊丹十三による正調松山弁シリーズ 一六タルトCMセレクション」があります。
一六タルトのCMに伊丹さん自身が出演し、昔ながらの伊予弁で語りかけてくる――という映像なのですが、どうやら男の子はCMで伊丹さんが口にした伊予弁を気に入り、ご両親にさっそく披露していたようです。
お父さんが愛媛のご出身だそうで「聞いたことがあるな、懐かしいなぁと思いながら一緒にみていたら、息子が面白がって伊予弁を覚えてしまいました」と話されていました。一番のお気に入りが「もんたかや」だったとか。
小さなお子さんが口にされるとまた違って聞こえて、なんとも微笑ましい光景でした。
愛媛ご出身というお客様は、CM中の言葉を耳にしたことがある、覚えているという方が多いようです。ご覧になったきっかけに、お連れ様やご家族と話題にしてみても面白いかもしれませんね。
企画展示室でご覧いただけるこの映像は、伊丹さんが手がけた一六タルトのCMの中から、7篇をご紹介。伊予弁で語られていますが、伊予弁をご存じない方でも意味が分かるよう「標準語の字幕つき」です!
視聴コーナー
CM映像
記念館にお越しの際はぜひご覧ください。
スタッフ:山岡
2022.06.13 ポストカード
梅雨入り前にも関わらず、湿気が多くじめじめとした暑い日が増えておりますが、皆さまお変わりございませんでしょうか。
さて、本日はポストカードについてお話しさせていただきたいと思います。
様々な使い道のあるポストカードですが、皆さまはどのように使われていますか?
友人は美術館で気に入った作品を額縁に入れ、毎月変えながら部屋に飾っているそうです。私は旅先の風景のものを買い、旅行の内容について書き入れて保管しています。誕生日やちょっとしたプレゼントに入れるようなカードとして使用するなども伺ったことがあります。記念館の外観のポストカードを購入くださる方の中には、ご友人に記念館を紹介するため、という方も。
記念館で販売しているポストカードの使用方法として是非おすすめしたいのが、以前記念館便りでご紹介させていただいた、映画ポスターが描かれたものに、映画の感想を書くというものです。
普通の美術館にはなかなか置いていない、映画ポスターが描かれたポストカードは、伊丹十三監督10作品全て揃っております。ポストカードの裏面は上下2段に分かれており、一度観た際に片方のスペースを開けておけば、また観返したときに書き加えることが可能です。また、映画の見どころを書き込んで友人におすすめすることも出来ます。
セット販売もしております
本日は13日ですので、毎月恒例となっております、「十三日十三時 映画の日」を開催いたします。
13時から、常設展示室入ってすぐの大型モニターにて『マルサの女』を上映いたしますので、記念館で映画をご覧になった後、ポストカードに感想を書いてみるのはいかがでしょうか。
ポストカードを見て思い出すのが、以前、記念館のポストカードセットをご購入くださったお客様とお話しさせていただいたことです。長い手紙を書くのが苦手だとおっしゃったその方は、家族や友人に近況を伝える時、一枚ずつ記念館のポストカードを使っているそうでした。こまめに連絡を取っていることが自分でも把握できて良いのだそうで、近年はなかなか会えない人も増えたから、時間をあまりかけられなくても手紙を書くことに意味があるともおっしゃっておりました。
お客様のお話を伺い、手紙どころか年賀状を書くことも数年前から辞めているのをとても反省いたしました。親しい人に思いやりを持って手紙を書くことは、SNSでのやりとりが急速に増えた現代においても大事なものだなと再確認いたしました。
近々、友人や家族にポストカードを使って手紙を書き、伊丹さんの映画もおすすめしていきたいです。
スタッフ:橘
2022.06.06 6月の伊丹十三記念館の様子とガレージの「8」
6月に入りましたが、松山の梅雨入りはもう少し先の様子です。
今月もご覧の通り伊丹十三記念館のシンボルツリーの桂は元気です。
桂の足元には「ひこばえ」の姿も。
調べてみますと、桂は積極的にひこばえを作る種のようです。
どうりで記念館正面の庭の桂の足元にも、ものすごい量のひこばえが。
そんな6月の伊丹十三記念館です。
さて、こちらは伊丹十三最後の愛車、ベントレーです。
このベントレーのガレージは道路からも目立つ部分に「8」という表示が。
ちなみにこの「8」というのは、常設展示室を伊丹十三の名前にちなんだ13個のコーナーから紹介しており、その八番が「乗り物マニア」のコーナーであることころからきています。
ところで、この「8」、近づいてよーく見てみると、、、
おわかりになります??どこかで見た事があるような素材ですね。
そうです。
ガレージの床材と同じ「縞鋼板(しまこうはん)」、「チェッカープレート」と呼ばれる素材で作られています。
このように、伊丹十三記念館には細部にわたり「伊丹十三の家」にふさわしい「遊び心」が散りばめられています。ご来館の際はお見逃しのないよう、建物を隅々までチェックしてみてください。
スタッフ:川又
2022.05.30 いろいろなイラストをお楽しみください
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
だいぶ気温が上がってきましたね!外出されるときなど暑さ対策をしっかりなさってお出かけください。
さて、イラストレーターとしても活躍した伊丹さん。
ここ記念館にはそんな伊丹さんが描いたイラストを多数展示しているのですが、それらをご覧になったお客様から「これ、ぜんぶ同じ人(=伊丹さん)が描いたんですか?」と尋ねられることがあります。
確かに言われてみると、ユーモラスな線画や緻密に描かれた素描など、展示しているだけでもいろいろなイラストがあります。使っている道具も、筆であったり鉛筆であったりと様々です。
エッセイの挿絵として掲載されたイラストに限ってみても、こんなに感じが違うんですよ。
『ヨーロッパ退屈日記』(新潮社)の挿絵の原画
『女たちよ!』(新潮社)の挿絵の原画
『再び女たちよ!』(新潮社)の挿絵の原画
こんなにたくさんの描き方ができる、というだけでも大変感動するのですが、そのひとつひとつのイラストが味わい深いのは、やっぱり「伊丹さんならでは」ですね!ご来館の際はぜひいろいろなイラストを見比べてみてください。
ちなみに、そんな伊丹さんが一番多く描いたのは、飼われていた猫たちだったそうです。猫好きの伊丹さんらしいですね。
常設展示室の「十 猫好き」コーナでは、いろいろな手法で描かれた猫たちがご覧いただけますので、こちらもお見逃しなく!
常設展示室「十 猫好き」コーナー
スタッフ:山岡
2022.05.21 ズッパ・ディ・ヴェルドゥーラ
2022年5月15日、伊丹十三記念館の開館15周年を迎えました。
みなさまのご愛顧とお力添えに心よりお礼申し上げます。
5月15日に更新いたしました記念館便りにて、<宮本信子館長のメッセージ>を載せておりますので、まだご覧になっていない方がいらっしゃいましたら、ぜひご覧ください。
ちなみに、この開館記念日の最初のお客様は猫でした。自動ドアが勝手に開いたのかと思うと、入り口で焦げ茶色の猫が鋭い目をして中庭を見つめておりました。声を掛けるとすぐに立ち去ってしまったのですが、猫が好きだった伊丹さんの誕生日をお祝いに来たのかな、と少し嬉しくなりました。あっという間に立ち去ってしまい、その様子を写真でお伝え出来ないのが残念です。
段々と気温があがり、日中は汗ばむような季節になってまいりました。食欲が失われていくのに危機感を感じる中、読み返していたエッセイにとても良いものを見つけました。
『女たちよ!』より「スパゲッティの裏に伏兵あり」の中で紹介されているズッパ・ディ・ヴェルドゥーラです。
イタリア料理におけるズッパは、野菜をふんだんに使用したスープを指します。トマトソースで味をつけるもの、カボチャを使用するものなど、種類は様々ですが、作り方はそれほど変わりありません。以下は本文から抜粋した作り方です。
まず、野菜を賽の目に切る。野菜は普通じゃがいも、人参、玉葱、それにセロリを使う。スープ鍋で、細かく切ったベーコンを炒め、これに野菜を加えてざっとかきまわし、野菜が軟くならぬうちに水を加え、塩胡椒し、あとはとろとろと煮込むだけのことである。ただし、野菜の形がなくなってしまうまで煮てはよくない。やはりじゃがいもや人参の小さな賽の目がごろごろしていないとおもしろくないのである。
(『女たちよ!』より「スパゲッティの裏に伏兵あり」p.248)
とてもシンプルかつ野菜もたくさん取れるので、さっそく作ってみようと思い冷蔵庫を開けましたが、あいにくセロリが無かったのでキャベツにて代用しております。
まずは野菜たちを賽の目に。
次に細かく切ったベーコンを炒めます。
野菜を加えてざっとかきまわし、
塩胡椒で味をととのえて、とろとろと煮込む。
なかなか美味しそうなズッパ・ディ・ヴェルドゥーラが出来上がりました。
パルミジャーノというチーズをおろしたものを大匙三、四杯も振って食べるのであるが、熱くてよし冷くてよし、朝食によし、深夜飲みあきて、ちょっとひと休みという時によし、保存はきくし、こんな便利なものはない。
(『女たちよ!』より「スパゲッティの裏に伏兵あり」p.248)
どんなときにも役立ちそうなこのズッパ・ディ・ヴェルドゥーラ。ぜひ、これから暑くなる時期に、作ってみてはいかがでしょうか。
パルミジャーノ・レッジャーノを入れると、かなり本格的な味になります!
この『女たちよ!』の中には、挑戦してみたいと思うような料理がたくさん載っております。サラダ菜のサンドウィッチや手作りのドレッシング、スパゲッティなど。食卓にエッセイに出てくる料理が並ぶとき、伊丹さんの文章がより身近なものになるのではないかと私は思っております。
今回ご紹介しました『女たちよ!』は、記念館にて販売しております。オンラインショップでもお買い求めいただけますので、気になった方はぜひお手に取ってくだされば幸いです。
スタッフ:橘
2022.05.15 5月15日・伊丹十三記念館が15周年を迎えました!
若葉の色が綺麗で、まぶしいくらいですね。
今年のゴールデンウイークは、多くのお客様にいらしていただきました。
とても嬉しかったです!特別な思いを感じております。
やっと~~やっと~~(笑)よかった!
玉置さんから送られて来た記念館の写真を何度も見ました~~。
中庭の桂の木やタンポポも、なんだか嬉しそうでぇす~~!
5月15日は伊丹十三の誕生日。
「伊丹さん~~今年はよい誕生日になりましたネ~~
オメデトウ~~89歳~~!?(笑)」
よい季節です。
中庭のベンチに座って、桂の木をご覧下さいませ。
風が吹いて、揺れる葉を見ていると、ホントウに~~気持ちよくなります!
スタッフ一同、お待ち申し上げます。
皆々様、どうかお身体大切に御自愛下さいませ。
又~~今度はいつ松山に行けますか~~。
お目にかかれる日を楽しみにしております!
感謝
宮本信子
2022.05.09 5月の伊丹十三記念館の様子と伊丹十三記念館のロゴについて
来週、開館15周年を迎える伊丹十三記念館です。
開館月の5月の記念館は毎年すごくいい感じです。
シンボルツリーの桂が美しい時期だからでしょうか。
中庭の桂。今年も元気に芽吹きました。
落葉樹特有の薄い葉が美しい。
回廊のベンチに腰掛けて過ごすのも気持ちよい季節です。
さて、こちらはエントランス。
この玄関ポーチの庇とガラス部分には伊丹十三記念館のロゴが入っています。
この記念館のロゴ、実は・・・伊丹十三がレタリングした明朝体をもとにデザインされています。
どういうことかと申しますと、1961年に伊丹十三の父・万作の「伊丹万作全集」(筑摩書房)が刊行されました。
この全集の明朝体による題字のレタリングを手掛けたのは伊丹十三自身で、記念館のロゴの文字は、その「伊丹万作全集」のレタリングをもとにデザインされているという訳です。
「伊丹万作全集」は常設展示室でご覧いただけますので、ご来館の際はぜひお見逃しなくご覧ください。
スタッフ:川又
2022.05.02 次回「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」は『タンポポ』です
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
先月、芽吹いたばかりの中庭の桂を写真でご紹介しましたが、その後あっという間に葉っぱが大きくなっていき、木陰ができるくらいになりました。
風が吹くとみずみずしい若葉がさわさわと揺れて、見ているだけで気持ちがいいです。
さて、展示でコーナーが設けられるほど(常設展示室「料理通」コーナー)料理通であった伊丹さん。
調理方法や調理道具、食事の仕方など、伊丹さんが書いた料理や食に関するエッセイを読んだことがある方も多いと思いますが、5月13日の「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」では、そんな伊丹さんの監督映画作品から、「食」にちなんだ映画『タンポポ』を上映します!
海外の方のファンも多いという、ラーメンを題材に選んだ伊丹さんの2作目の映画です。
観たことがある方も初めての方も、お時間ございましたらご鑑賞にお越しくださいね。
合わせて、『タンポポ』に関連した展示もお楽しみください。
常設展示室では映画ポスターのパネルとパネル大にしたチラシの裏面をご覧いただけます。
続く企画展示室には、映画パンフレット(スクラップブックにまとめたものです)があります。映画のキャスト・スタッフの方々の『タンポポ』にまつわるお話が載っていて、本編とはまた違ったところから『タンポポ』を楽しめると思います。
映画ポスターパネル
パネルのもう一方(チラシ裏面)
映画パンフレット
また、カフェ・タンポポには、『タンポポ』制作中に伊丹さんがシャープペンシルで描き、のちに映画ポスターにも起用されたキャストの方の似顔絵があります。
こちらもどうぞお見逃しなく。
『タンポポ』キャストの似顔絵
スタッフ:山岡
◆◆◆◆ お知らせ:5月3日(火)は開館します! ◆◆◆◆
明日5月3日は火曜日ですが、ゴールデンウィーク中ということで開館いたします。
お出かけの際はぜひお立ち寄りくださいませ。ご来館をお待ちしております。
2022.04.25 【第11回「伊丹十三賞」受賞記念 玉川奈々福 独演会】
【第11回「伊丹十三賞」受賞記念 玉川奈々福 独演会】
去る4月12日(火)、第11回伊丹十三賞受賞者である玉川奈々福さんをお招きし、独演会を開催いたしました。ご応募・ご来場くださったみなさま、誠にありがとうございました。当日は約400名のお客様がご来場くださり、たくさんの方にご鑑賞いただきました。
イベント当日の様子は こちら でもご覧いただけます。
本日の記念館便りでは、奈々福さんの記念館来訪、独演会の様子をお届けしたいと思います。
奈々福さんは、曲師の沢村美舟さん、お弟子さんの玉川奈みほさんと共に午前中に松山へ到着されました。朗らかで温かく、優しいお人柄がにじみ出ているようでした。独演会前のお忙しい時間帯にも関わらず、熱心に展示をご覧くださいました。
[資料を熱心にご覧くださっている様子]
ひとつひとつ文章や映像をご覧くださり、美舟さんや奈みほさんと「面白い」、「すごい」と話しておられました。
[「可愛い~」と猫のイラストを観ておられました]
[丁寧に文章を読んでくださっています]
カフェもご利用くださり、当館でも人気メニューのみかんジュース飲み比べセット、期間限定の豆乳イチゴをご注文くださいました。
[カフェでの1枚]
和気あいあいとしたご様子でグッズもご購入くださり、収蔵庫も見ていただきました。
[売店の様子]
[お葬式の企画展示にて使用した顔はめパネルを見るみなさま]
独演会は、松山市総合コミュニティセンターのキャメリアホールにて行いました。
[キャメリアホール入り口]
新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、座席は1席ずつ間隔を開けてご案内いたしました。
[座席]
[しつらえ]
演目は古典「仙台の鬼夫婦」、新作「金魚夢幻」の2本をご披露いただきました。
[古典 「仙台の鬼夫婦」にて]
初めて独演会に来られた方のために、演目に入る前に"浪曲とは何か"について詳しくご説明してくださいました。また、浪曲ならではの掛け声もご紹介くださいました。登場する際の「待ってました!」や、前口上あとの「たっぷり!」、演目が終わった後には「日本一!」と言うんだとか。ぜひ、気兼ねなく声を張れるようになりましたら、浪曲をご覧になる際は掛け声も楽しんでみてください。
浪曲が始まると、力強い唸りで圧倒され、細かく演じ分けられる男女の声や、目に浮かぶような情景に、あっという間に引き込まれました。伸びやかな声は、会場の外にいてもはっきりと聞こえるほどで、美しい語りでした。
[新作 「金魚夢幻」にて]
美船さんの息の合った合いの手も見どころで、浪花節にぴったりと寄り添う合三味線も素晴らしかったです。
[曲師の沢村美舟様]
お客様が思わず笑っておられる場面が多々あり、何度も割れんばかりの拍手が聞こえておりました。お客様がとても楽しんでくださった様子で、帰り際に「ありがとうございました」「楽しかったです」と口々に言ってくださったのが印象に残っております。浪曲の素晴らしさ、玉川奈々福様の素晴らしさを会場で感じていただけたのではないでしょうか。
また、会場に来ることが出来なかった方も、この記念館便りとイベントページにて、独演会の空気を少しでも感じていただけていれば幸いです。
これを機に、玉川奈々福様のブログやYouTubeチャンネルをご覧いただき、各地で開催される公演から、浪曲の魅力を追いかけてくださる方が増えることをお祈りしております。
最後となりましたが、ご応募・ご来場くださったみなさま、登壇くださった玉川奈々福様、沢村美舟様、舞台を支えてくださった玉川奈みほ様、松山市総合コミュニティセンターのみなさま、ITMグループのみなさまに深くお礼申し上げます。誠にありがとうございました。
今後とも伊丹十三賞そして伊丹十三記念館をよろしくお願いいたします。
スタッフ:橘
2022.04.18 第11回「伊丹十三賞」受賞記念 玉川奈々福独演会を開催いたしました/宮本信子館長が記念館に出勤いたしました
4月12日(火)、松山市総合コミュニティセンターにて 第11回「伊丹十三賞」受賞記念 玉川奈々福独演会を開催いたしました。
結論から申しあげますと、本当に素晴らしい、お客様、スタッフともに大満足の独演会となりました。
思い返せば、玉川奈々福さんに伊丹十三賞をご受賞いただいたのは2019年4月。現在が2022年4月ですから、丸3年前です。新型コロナウイルスの感染拡大等、諸々の事情による延期なども経て、この度ようやく実現の運びとなりました。
独演会の詳しい内容は、来週の記念館便りにてご報告させていただきます。
そして翌日の4月13日には、宮本信子館長が記念館に出勤いたしました。
12月の出勤から約4ヵ月。今回もご来館のみなさまとお話しをしたり、写真撮影をしたり、、、とあっという間の2時間となりました。次回の出勤も決まり次第記念館HPにて告知させていただきますので、みなさまお見逃しのないようチェックしてくださいませ。
シンボルツリー桂の健康状態も入念にチェック。
こちらは今回玉川奈々福さんにご使用いただいた、
かの有名なサンパチマイク(SONY-C38B)です。
漫才のセンターマイクに使用されていることで知られていますね。
大音量でも歪み感なく収音できる優秀なマイクです。
・・・と、知ったような口をきいてしまいましたが、
全て会場の舞台担当の方に教えていただいた情報です。
舞台のご担当のみなさま方には、右も左もわからない記念館スタッフに
一から細かく舞台上のことをご説明いただき、進行についてご指導いただきました。
そして一六、セブンスター、ネッツトヨタ愛媛のITMグループの皆さまも、
当日のサポートはもちろん、応募の手続きなどなど多大なるご協力をくださいました。
今回滞りなく独演会を進行することができたのは
多くの方々のご協力あってのことでした。
ご協力いただきました皆様、この度は誠にありがとうございました。
そして、玉川奈々福さん。この度はコロナ禍の松山に
素晴らしいエンターテイメントをご提供くださり、
本当にありがとうございました。
この場を借りてお礼申しあげます。
スタッフ:川又
2022.04.11 春の記念館よりお知らせ
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
すっかり暖かくなり、中庭の桂が一気に芽吹いてきました。
小さな葉っぱが可愛らしいです。
さて4月になり、記念館も新たな年度が始まりました。
そんな記念館から2つお知らせです。
1)2022年度も開催!「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」
伊丹さんの名前にちなみ、「十三」日の「十三」時から伊丹十三監督映画作品を上映する「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」。
2022年度も開催いたします!
スケジュール等詳細はコチラ↓↓
https://itami-kinenkan.jp/event/event_showing.html
さっそく明後日の4月13日に、2022年度第1回の映画が上映予定です。上映するのは、伊丹さんの映画監督デビュー作『お葬式』(1984年)。
ご覧になったことがある方もそうでない方も、お気軽に、常設展示室のベンチに座ってご覧になってくださいね。
企画展示室にある、映画パンフレットもお読みください
特に、4月13日は宮本館長が11時頃~13時頃で出勤予定です。
宮本館長に会いに来館されたあと、そのまま映画鑑賞――なんていかがでしょうか。
2)豆乳イチゴ、スタートいたしました
カフェ・タンポポで毎年この時期に期間限定でご提供する「豆乳イチゴ」。
今年もスタートいたしました!
春らしいピンク色のこのドリンクは、愛媛県産イチゴと豆乳をミックスしたメニューです。豆乳のまろやかさにイチゴの甘味・酸味が合わさり、さっぱりとした甘さで幅広い世代のお客様から「美味しいですね~」とご好評いただいています!
期間限定ですので、ご来館の際はぜひどうぞ。
スタッフ:山岡
2022.04.04 読書
あっという間に桜の花弁が開き、ものの数日で満開になるのを見ては春を感じる毎日ですが、みなさまお変わりはございませんでしょうか。
先日、もう十五年ほど追っている作家さんが新刊を出版され、発売とほぼ同時に本屋に駆け込みました。新刊を抱えて本屋を一回りしつつ物色していたとき、ふと伊丹さんが書かれたエッセイを思い出しました。
私が現在本屋に支払う金額は、毎月三万円から五万円くらいであろうか。一般の人人から較べれば相当に多額の金を使っていることにもなるし、それだけ私は本を買うことについては習熟してもいる筈なのだが、どうも私は、いまだに本屋にはいると迷いに迷ってしまう。
(中略)
一度欲しいと思った本は、大概いつか買うんだから、今ついでに買って積んでおけばいいんだが、どういうんでしょう、やっぱり本屋廻りっていうのは、素寒貧の学生時代についた癖のせいか、今だに私は本屋にはいるとなぜか一冊か二冊を撰び出そうとして悩みに悩んでしまうのである。
(『ぼくの伯父さん』より「本屋」 p.105)
伊丹さんほどではないのですが、本も本屋廻りも好きな私は、この「本屋」のエッセイにとても親近感が湧きます。学生時代よりも自由なお金が増えたはずなのに、一冊の本を買い足すかどうかでしばらく悩んでいたりします。金銭的な部分もありますが、自宅の本棚のスペースにも限りがあるので、ここでも迷いが生じます。本の置き場所は長年の課題です。
読書の仕方は人それぞれだと思うのですが、私は一時間以上の移動を含む旅行や、二泊以上どこかに行く場合は、必ず三冊ほど文庫本を鞄に入れています。移動中寝てしまったり、携帯を見ていたり、人と会話していたりしてほとんど見ないことも多いのですが、一冊だとどうしても心細く感じてしまいます。
『ぼくの伯父さん』の中で、伊丹さんは読書について次のように書かれております。
旅行に出る時など、結果的には二冊もあれば十分なところを、六冊も七冊も鞄に詰めねば不安でならない。風呂へはいる時ですら二冊ぐらい持ってはいらねば心配である
(『ぼくの伯父さん』より「読書」 p.100-101)
初めて読んだとき、共感のあまり唸ってしまった箇所の一つです。流石にお風呂に本を持ち込むことはないのですが。
松山に住み始めて感じたことの一つが、電車に乗っているとき多くの人が本を開いているということです。前まで住んでいた土地では、どの年代の方もスマホをのぞき込んでいることの方が多かったので、とても素敵だなと印象に残っております。
ぜひ、みなさまがいろんな場所で開く本の中に、伊丹さんの著書が加わればと思うばかりです。
記念館では桂の木も少しづつ葉が芽吹いてきました。タンポポも咲きはじめ、本格的な春の到来に心が浮き立つようです。初夏が迫るなか、つかの間の春を感じて日々過ごしていきたいと思います。
スタッフ:橘
2022.03.28 第11回「伊丹十三賞」受賞記念 玉川奈々福独演会まであと2週間です!
伊丹十三記念館に今年も春がやってきました。
【満開のユキヤナギ】
【毎年同じ場所に生えるつくし】
【芽吹き始めた桂】
この時期はウキウキして1日に何度となく庭に出て蕾を見たりしてしまいます。
以前植木屋さんに、春先、蕾が芽吹くころ植木にたっぷり水やりをすると木が元気になると教えていただいたので、水やりにも励んでいます。
さて、4月12日(火)開催の第11回「伊丹十三賞」受賞記念 玉川奈々福独演会 まで、残すところあと2週間ほどとなりました。
現在、スタッフ総出で独演会の準備を進めています。
ご応募も日々続々といただいています。
先着順ですので、ご希望の方は1日も早いお申し込みをおすすめいたします。
スーパー・セブンスター各店舗と伊丹十三記念館で「参加証」をお受け取りいただくか、
記念館ホームページからもお申し込みが可能です。
ホームページからのお申し込みは こちら
みなさまのご来場をスタッフ一同心よりお待ち申し上げております。
スタッフ 川又
2022.03.21 春の便り
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
本日は春分の日ですね。
松山では、ここ数日は少し寒さが戻ってきているのですが、3月第二週の週末から1週間ほどあたたかい日が続き、記念館の庭木や花が一気に春めいてまいりました。
写真で恐れ入りますが、春気分を少しでもご堪能ください。
ヒメツルニチニチソウ
トサミズキ
ユキヤナギ
山桜...はもう少し先のようです。
でも大分つぼみがふくらんできました。
また、カフェ・タンポポでは、3月に入ってから「アイスコーヒーはありますか?」とのお声をよくうかがうようになりました。冬場はホットメニューのご注文が多いので、上記のようなお尋ねや冷たいお飲み物のオーダーが増えてくると、「春だなぁ」と感じてしまいます。
そんな春の訪れを受けまして、カフェでは寒い時期はお休みしているアイスコーヒーとアイスティーのご提供を再開いたしました。
アイスドリンクには、他にもみかんジュースの飲み比べセットやペリエを使った人気メニューもございます。カフェにお立ち寄りの際は、お好きなドリンクをお楽しみくださいね。
アイスコーヒー
スタッフ:山岡
2022.03.14 4711オーデコロン
ようやく春の兆しを感じられるようになりましたが、皆さまはどのようにお過ごしでしょうか。
先日、換気のために自室の小窓を開けたとき、部屋に満ちた匂いが随分と春めいていて驚きました。凍って乾いていた空気が柔らかくなり、水分を含んでいることが嬉しいです。
季節の変わり目になるたび、香りで思い出すことが多々あります。学生の頃の思い出を反芻しては鼻の奥がつんと痛むことも。俗にいうプルースト効果がはたらいていることは知っていても、人間の体は不思議だと首を傾げるばかりです。
香りといえば、特定の人や家の思い出と結びつくこともあると思います。友人の家に行きその家庭の匂いにそわそわしたり、祖父母の家に行った時にどこか懐かしさを感じたり、久しぶりに帰省した実家の匂いに安堵したり、皆さまも経験があることと存じます。
そして、特定の人のことを思い出す香りの中に、香水もあると思います。本日ご紹介したいのは、ショップでも販売している4711オーデコロンです。
[4711オーデコロン]
4711オーデコロンは1792年にドイツ・ケルンで生まれたオーデコロンです。このオーデコロンは"アクア・ミラビリス(不思議な水)"と呼ばれておりました。爽やかなシトラスの香りをトップに、ラベンダーとローズのフローラルなミドルを経て、強いオレンジの香りを放つネローリへと変化する香水です。世界中で今もなお愛されるこの香水は、伊丹さんが愛用していたものでもあります。
生活のどのような場面で使われていたのかは想像の域を出ませんが、伊丹さんと関わりのあった方々の記憶に、この香りがある。そう考えると、残念ながら生前お会いできなかった私でも、この香りを嗅ぐことで、伊丹さんと街のどこかですれ違えたような気がします。
[紙に吹き付けて香りを試していただけます]
こちらのオーデコロンは、ショップ内で香りを試すこともできます。ぜひ、来館された際には伊丹さんのことに想いを馳せながら、香りを楽しんで頂ければ幸いです。
スタッフ:橘
2022.03.07 4月12日と13日
4月12日(火)開催予定の「第11回伊丹十三賞受賞記念 玉川奈々福独演会」の告知開始から1週間が経過しました。
現在ぞくぞくとご参加のご応募をいただいています。
先着順ですので、ご希望の方はお早めにお申し込みください。
スーパーセブンスター各店舗と伊丹十三記念館で「参加証」をお受け取りいただくか、記念館ホームページからもお申し込みが可能です。
ホームページからのお申し込みは→ こちら
そして、独演会の翌日4月13日(水)の11時ごろから13時ごろ、当館の宮本信子館長が記念館に出勤いたします!
当日は宮本館長に会いに、ぜひ伊丹十三記念館へお越しくださいませ。スタッフ一同、お待ちしています。
※状況により急遽予定を変更する可能性がございます
※感染症対応のため、握手はご遠慮いただきますようお願いいたします
※お写真はマスクをご着用のうえ、お撮りいただくことができます
【画像:トサミズキの蕾も開き始めました】
スタッフ:川又
2022.02.28 「第11回伊丹十三賞受賞記念 玉川奈々福 独演会」開催のお知らせ
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
本日は記念館主催イベント開催についてお知らせします。
第11回伊丹十三賞を受賞された玉川奈々福さんをお招きし、浪曲を披露いただく「第11回伊丹十三賞受賞記念 玉川奈々福 独演会」を開催することとなりました!
<独演会 概要>
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日程:2022年4月12日(火)
時間:19時開演(開場18時15分)
会場:松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール
登壇者:玉川奈々福さん(浪曲師)、沢村美舟さん(曲師)
浪曲披露:古典「仙台の鬼夫婦」、新作「金魚夢幻」
参加料:無料 (※要参加証)
定員:先着500名
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詳細はこちら
玉川奈々福さん(浪曲師・曲師)
撮影:御堂義乘
【プロフィール】
1964年7月19日横浜市生まれ。
1995年7月二代目玉川福太郎に入門。三味線の修行をしていたが、師の勧めにより2001年より浪曲師としても活動。2004年「玉川福太郎の徹底天保水滸伝」全5回、2005年「玉川福太郎の浪曲英雄列伝」全5回をプロデュース。2006年12月、奈々福で名披露目。2017年から18年にかけ、「語り芸パースペクティブ」全11回を開催。さまざまな浪曲イベントをプロデュースする他、自作の新作浪曲や、長編浪曲も手掛け、他ジャンルの芸能・音楽との交流も多岐にわたって行う。平成30年度文化庁文化交流使として、中欧、中央アジアの計七か国で公演を行った。
「浪曲とは?」という方もいらっしゃると思いますので少しご紹介いたしますと、浪曲は別名「浪花節」(なにわぶし)とも言われる、明治時代初期に始まった伝統芸能のひとつです。「曲師」という、浪曲における三味線演奏者が奏でる三味線に合わせ、語り手である「浪曲師」が独特の節(ふし・歌う部分)と啖呵(たんか・登場人物の台詞を話す部分)で物語を進めていきます。
譜面などもない中で行われる語りの演芸ですから、浪曲師と曲師の生の掛け合いも、見どころ・聴きどころの一つではないでしょうか。
そんな浪曲の世界で日々活躍されている奈々福さんに「現代の観客のこころを動かす語りの芸と、浪曲にあらたな息を吹き込む卓越したプロデュース力に対して(伊丹十三賞選考委員会)」第11回伊丹十三賞をご受賞いただいたことから、今回の独演会を開催する運びとなりました。
奈々福さんの "ほとばしる浪花節 "を、皆さまにライブでお届けします!
浪曲になじみのある方はもちろん、そうでない方も、ぜひこの機会に浪曲の世界をお楽しみください。
※ご参加には、参加証のお受け取りorお申し込みが必要です。先着順となり定員に達し次第、配布・受付は終了いたしますので、ご希望の方はお早めに(参加方法などの詳細はこちら)。
スタッフ:山岡
2022.02.21 猫
はじめまして。このたび、2月より記念館スタッフとなりました、橘さくらと申します。一日でも早く皆さまのお力になれますよう日々精進していきます。よろしくお願いいたします。
明日、2月22日は「猫の日」ですので、今回の記念館便りでは猫のお話をしたいと思います。
記念館では、伊丹十三の名にちなんで13のテーマに分かれた常設展示を行っております。その中に、"十 猫好き"というテーマがあります。伊丹さんは長く猫を飼っていましたが、著書『再び女たちよ!』の中で下記のように綴っておられます。
私は猫を一匹飼っている。
いや、この表現は正確ではない。私の気持ちの中では、猫は人間と対等の位置にある。日本語の便宜上「猫を一匹飼っている」と、書きはしても、私は、うちの猫のことを、一度も「一匹」と思ったこともなければ、また「飼っている」と感じたこともない。
強いていうなら、私は、一人の猫と共に住んでいる、とでもいうべきだろう。
(『再び女たちよ!』より「猫」p.302)
共に暮らす猫の事をとても大切にしておられるのが窺える文章の一つです。
猫好きの方はお分かりになるかと思いますが、彼らは実に人間くさい生き物だと思っております。気にくわないことがあれば一端の人間のような表情をして我々に抗議し、適度な距離感を好み、実に自由です。
かくいう私も猫が好きで、幼い頃から一緒に暮らしたいと思っておりましたが、物心ついた時には重度の猫アレルギーでした。
そこで、ファインダーを通して猫との交流をするようになりました。カメラを持ってすれ違う際、ご挨拶の後にご機嫌を伺います。彼、もしくは彼女が逃げることなく一瞥をしたところで、初めて写真の許可が得られます。寒い季節には日向を、暑い季節には日陰を探しながら、しばしの交流をするのが趣味です。
【尾道散策中に見つけた野良猫です】
【香川県・小豆島での一枚です】
伊丹さんは猫が好きな理由について、下記のようにエッセイに書いています。
「どうして猫が好きなの?」
と、いわれても、それは困る。
私が猫を好きなのは、なにか理由があってその結果好きだというのではない。理由などあれこれ考えるより以前に、すでに好きだという事実が厳存しているのであって、いわば好きだから好きだ、とでもいうよりしようがなかろう。
(『再び女たちよ!』より「わが思い出の猫猫」p.168)
猫好きであれば首が取れるほど頷いてしまう文章であり、伊丹さんの愛情の深さが伝わってくる、エッセイの中でも好きな文章の一つです。
伊丹さんが猫と共に写っている写真はどれも慈愛に満ちています。多数残っている絵の中にも猫の姿は存在し、香箱座りをしているであろう猫の滑らかな背や、「コロリ」をしている愛らしいしぐさ。生き生きとした表情に惚れ惚れします。
ぜひ、ご来館された際には伊丹さん直筆の絵をじっくりとごらんください。猫のイラストを使用したグッズも多数取り揃えております。また、ご紹介させていただいた『再び、女たちよ!』も館内ショップでのお取り扱いがございますので、お手に取ってくだされば幸いです。
立春とは名ばかりでまだまだ寒い日が続いておりますので、身体を冷やさぬようご自愛ください。
スタッフ:橘
2022.02.14 伊丹さんが13歳のときに書いた文章
記念館便りにおいても度々ご紹介している伊丹さんの単行本未収録エッセイ集「ぼくの伯父さん」(つるとはな)ですが、最近この本を読んでいて改めて驚いたことがあります。
タイトルの通り、なんと伊丹さんが13歳のときに書いた文章も載っているのです。
ご存知でしたか?「父の思い出」というエッセイです。
この「父の思い出」は「ぼくの伯父さん」が発行される前にも読んだことがあり、若いころに書いた文章だというのは知っていましたが、巻末の年表を見てびっくり。
昭和22年1月、ということは伊丹さん若干13歳です。
昭和21年9月に伊丹さんの父親である伊丹万作が亡くなりました。
その翌年1月に出版された「映画藝術」という本の中で伊丹万作の追悼特集があったそうです。
その特集に寄稿したものだということです。
大変読みやすく、とにかく大人の伊丹さんが書いた文章と並んでいて全く違和感がなく、まさか13歳の伊丹さんの書いた文章だったとは。。。
伊丹さんが亡くなり20年の月日が経過してから発行されたこの「ぼくの伯父さん」ですが、中学生の伊丹さんの文章が読めるとは、そして広く皆さまにお読みいただけるとは。
一伊丹さんファンとして、そして伊丹十三記念館スタッフとして、改めて「ぼくの伯父さん」の出版に感謝した次第です。
機会があればぜひご覧ください。
スタッフ:川又
2022.02.07 椿まつり
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。寒い日が続きますね。
さて、2月3日から13日までの11日間、記念館から車で数分のところにある「椿神社」で、「椿まつり」が開催されています。
椿神社は正式名を伊豫豆比古命神社(いよずひこのみことじんじゃ)というのですが、通称「椿神社」もしくは「(お)椿さん」と呼ばれ、縁起開運、商売繁昌などの御利益があるそうです。
愛媛松山の方はご存知の方が多いと思いますが、毎年、この椿神社で旧暦の1月7日、8日、9日の3日間に行われるおまつりが「椿まつり」です。" 伊予路に春を呼ぶ " まつりとして親しまれていて、椿まつりが終わるとあたたかくなると言われています。
去年や今年は期間や時間等々、例年と異なる内容で開催されていますが、わたし自身松山市民ということもあり小さい頃から毎年訪れていまして、今年も、平日の昼下がりに参拝してまいりました。
記念館のこともしっかりとお祈りしつつ、以前別のスタッフも買ってきたことがあるという可愛らしいお守り「冨久椿(ふくつばき)」を頂いてきました。名前のとおり、" 冨久を招く縁起物 " だそうです。ほんわかした愛らしい笑顔で、見ているだけで和みます。
冨久椿
椿まつりの期間中は、ご来館のお客様の中に「お椿さんの帰りです」とか「このあと参拝に行きます」という方が必ず何組かおられます。お時間ございましたら、ぜひ記念館にもお立ち寄りくださいね。
2月4日は立春でした。春の始まりとされる日ですが、まだまだ風も冷たく、気温も低めです。これから参拝に行かれる方は風邪などひかれませんよう服装などにもお気をつけください。
スタッフ:山岡
2022.01.31 シンボルツリー桂のビフォー・アフター
伊丹十三記念館のシンボルツリーは桂の木です。
記念館のオープンが2007年5月。
桂を植え付けたのはオープンの数か月前の2007年の1月か2月ごろ、まさに今頃の時期だったようです。
先日、探しものをしていた際に植えられたばかりの桂の画像を見つけました。
オープン前、2007年2月の桂。回廊の角から。
そして・・・それからちょうど15年が経過した、現在2022年1月末の桂。同じ場所から。
左右に並べてみました。
こう見るとかなり成長しています。
そしてもう一枚。オープン前、2007年2月の桂。2階事務所から。
そして・・・現在2022年1月末の桂。こちらも同じ2階事務所から。
再度並べてみました。
やっぱり大きくなっています。
毎日眺めているとわかりづらいものですが、こうして比較してみると結構成長していますね。
来週にはこの桂含め、庭の植木のすべてに「寒肥」をする予定です。
寒い時期に土に有機肥料を施すことで、春、新芽を吹くころに土に栄養がいきわたり、結果、木にとって良い、というようなことらしいです。
最後に、オープン2日前、2007年5月13日の桂です。
この桂は長野県からやってきたと聞きましたが、今にして思うと、長距離移動や大きな環境の変化があったにもかかわらず美しく芽吹いていますね。
という訳で本日はシンボルツリーの桂の木の成長をご紹介させていただきました。
寒肥が効いて春にまた美しく芽吹くころ、記念館便りにて様子をお伝えいたします。お楽しみに!
スタッフ 川又
2022.01.24 観返し・読み返し
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
寒い日が続きますね。そんな中、記念館前を流れる川の土手には、菜の花が咲きはじめました。寒さに強い菜の花ならではです。色彩豊かとは言い難い時期ですので、明るい黄色が視界に入ると少しうれしくなります。
さて、記念館にお越しくださるお客様の中には伊丹さんの映画を観たり著書を読んだりしたことのある方が多くいらっしゃるのですが、つい先日、「数十年ぶりに伊丹さんのエッセイを読み返したばかり」という方が来館されました。
はじめて読んだのは学生の頃だそう。当時も今回も楽しく読まれたそうなのですが、前回と今回とでは読後感がちょっと違っていたそうです。
例えば、下記に引用するような、車の運転や乗り物に関するエッセイを読み直して――
さて、いまさら申し上げることもあるまいが、自動車というものは危険物でもあります。これを扱うに当って、男たるもの、どんなに自分自身に厳しくあろうとも、厳しすぎるということはない。いわんや、いいかげんな気紛れや、でたらめは許せないのであります。
たとえば、運転のさいの履物一つにしても、最も運転しやすい、正しい履物を選ぶべきである。底革の滑りやすい靴や、脱げやすい草履で運転することは断じて許せないのであります。
これがすなわち「自動車の運転におけるヒューマニズム」というものである。
そうして、われわれは、巧みに運転する前に、品格と節度のある運転を志そうではないか。
交差点で自分の前が右折車なんかで塞がれると、すぐに隣の列へ割り込もうとする人がある。というよりもむしろ日本人の九十九パーセントまでが左様である。
思うに車の運転とは、自分自身との絶え間のない闘いであります。人に迷惑をかけてはならぬ、ということは誰でも知っている。知っていながら割り込むというのは、これはすなわち自制心の欠如というものである。
隣の列がどんどん流れてゆくと、もう矢も楯もたまらない。なんだか莫大に損をしているような気になってくる、つまりその瞬間なのだ、運転者の品性が決定するのは。こういう時に、甘んじてその場に踏みとどまっていられるだけの、強い意志の力と、人間としての品位を持つか持たないか。これが、よい運転者と悪い運転者との永遠の別れ道となるのである。
「スポーツ・カーの正しい運転法」『女たちよ!』(新潮文庫)より
自分で運転したことがなかった学生の頃と違って、実体験を伴って読むと、共感したり考えさせられたりした事柄が多かったのだとか。
また、数年前にヨーロッパ旅行に行ったあとに『ヨーロッパ退屈日記』を読み返したときも、初読の時とはまた違う面白さがあったそうです。
他にも、「子育て中やそれがひと段落した後で、伊丹さんの子育てや教育に関するエッセイ再読すると、改めて読み応えを感じます」と仰る別のお客様もいらっしゃいました。
だいぶ前に伊丹さんの映画や著書に触れた方は、その後いろいろ経験されたり立場や環境が変わったりしていると思いますので、観返してみる、読み返してみると、前とは違った印象を受けて面白いかもしれませんね。ご興味のある方はぜひお試しください。
伊丹さんの著書
スタッフ:山岡
2022.01.17 伊丹十三記念館でできる防寒対策
最近ネットニュースで見かけた記事の話なのですが、とあるテレビ番組でアルピニストの野口健さんが共演者から防寒対策のコツを聞かれた際に、「しょうが湯を飲むこと」とお答えになられたそうです。
(他には「インナーにお金をかけること」ということなどもお答えになられたそうです。)
しょうが湯といえば伊丹十三記念館のカフェ・タンポポでも提供している人気メニューです。
「しょうがはからだを温める」とか、正直これまでに何度も聞いてきましたし、記念館便りでもスタッフの誰かしらが毎年この季節にそのようなことを書いているような気がしますが、プラシーボ効果的な側面もあるのでしょうか。
野口健さんに言われると説得力が急に増し、そのネットニュースを読んで以降、しょうが湯を飲む度、よりからだが温まる気がします。
カフェ・タンポポのしょうが湯は自家製です。
飲むと自分が記憶していた以上に美味しくて驚きます。
ただ甘いだけでなく、ピリッとするところがいいんですよね。
ご来館の際は、カフェ・タンポポにお立ち寄りいただき、是非しょうが湯で温まっていってください。
【画像:カフェ・タンポポの人気メニュー。
しょうが湯と十三饅頭のセット(税込500円)】
スタッフ:川又
2022.01.10 『ハシゴの上のごちそう about タンポポ』
記念館便りをご覧の皆さま、遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。
本年も、伊丹十三記念館をよろしくお願い申し上げます。
★宮本館長の新年の挨拶もぜひご覧ください。
https://itami-kinenkan.jp/tayori/2022/01/005082.html
さて、皆さまの中には伊丹さんの映画作品『タンポポ』をご覧になったことがある方が多いと思いますが、記念館ショップにおきまして、この『タンポポ』のファンブックの販売を開始しましたのでお知らせいたします。
タイトルは『PATU Fan×Zine vol.06 ハシゴの上のごちそう about タンポポ』(発行:「映画パンフは宇宙だ!(PATU)」)。
昨年11月より販売が開始され、この度、記念館のショップでも取り扱いをさせていただくこととなりました。
映画のパンフレットを少し小さめにしたような182mm×182mmのサイズで、表紙を含めた28ページの冊子には、ファンブックという観点から、映画から選んたあじわいのあるセリフやラーメンの食べ方、再現アレンジレシピ等『タンポポ』や伊丹さんに関するバラエティに富んだ内容が掲載されています。
そして、宮本館長が撮影時のエピソードや伊丹さんについて等々を語った、スペシャルインタビューもあります!
『タンポポ』ファンの方だけでなく、いろんな方が楽しめるのではないでしょうか。
価格は税込800円でショップ店頭でのみ販売中です。ご興味のある方はぜひ手に取ってご覧くださいね。
スタッフ:山岡
2022.01.02 館長・宮本信子から新年のご挨拶
新しい年を迎えました。
今年こそ、これ以上、何事もおこりませんように~~
祈るばかりです!
悪いことのあった後は、必ず次に良いことがある。
私は、そう信じております。
皆で乗り越えるしかありませんものネ。
なかなか苦しいこともあろうかと思います。
でも、心の余裕を持って、あるがままを見るつもりです。
次回また、記念館の受付でお待ちしております。
再会を喜びたいです~~(笑)
スタッフと共に、お待ちしております。
今年もよろしくお願い申し上げます。
館長 宮本信子