記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2022.03.14 4711オーデコロン

ようやく春の兆しを感じられるようになりましたが、皆さまはどのようにお過ごしでしょうか。

 

先日、換気のために自室の小窓を開けたとき、部屋に満ちた匂いが随分と春めいていて驚きました。凍って乾いていた空気が柔らかくなり、水分を含んでいることが嬉しいです。

 

季節の変わり目になるたび、香りで思い出すことが多々あります。学生の頃の思い出を反芻しては鼻の奥がつんと痛むことも。俗にいうプルースト効果がはたらいていることは知っていても、人間の体は不思議だと首を傾げるばかりです。

 

香りといえば、特定の人や家の思い出と結びつくこともあると思います。友人の家に行きその家庭の匂いにそわそわしたり、祖父母の家に行った時にどこか懐かしさを感じたり、久しぶりに帰省した実家の匂いに安堵したり、皆さまも経験があることと存じます。

そして、特定の人のことを思い出す香りの中に、香水もあると思います。本日ご紹介したいのは、ショップでも販売している4711オーデコロンです。

 

 香水.png[4711オーデコロン]

 

4711オーデコロンは1792年にドイツ・ケルンで生まれたオーデコロンです。このオーデコロンは"アクア・ミラビリス(不思議な水)"と呼ばれておりました。爽やかなシトラスの香りをトップに、ラベンダーとローズのフローラルなミドルを経て、強いオレンジの香りを放つネローリへと変化する香水です。世界中で今もなお愛されるこの香水は、伊丹さんが愛用していたものでもあります。

生活のどのような場面で使われていたのかは想像の域を出ませんが、伊丹さんと関わりのあった方々の記憶に、この香りがある。そう考えると、残念ながら生前お会いできなかった私でも、この香りを嗅ぐことで、伊丹さんと街のどこかですれ違えたような気がします。

 

香水2.png

[紙に吹き付けて香りを試していただけます]

 

こちらのオーデコロンは、ショップ内で香りを試すこともできます。ぜひ、来館された際には伊丹さんのことに想いを馳せながら、香りを楽しんで頂ければ幸いです。

 

スタッフ:橘