記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2023.12.25 アンコール!

我が母は無類のあんこ好き。いえそれ以上、あんこ中毒者であります。

夜更けに突然「羊羹食べたい」「最中食べたい」「饅頭食べたい」と言い出します。あんこのお菓子を切らしている日には、禁断症状を起こして「ヤダ~、耐えられない食べたい食べたい~」などと身をよじって駄々をこねるのです。

秋のある日、ふと「あんこは足りているだろうか」と母の身が案ぜられて、愛媛のあんこ菓子(もちろん十三饅頭も!)をあれやこれやと買い集め、箱一杯に詰めて故郷へ送りましたところ、想像以上の大喜び。

送ったこちらも嬉しいじゃありませんか、少々得意な気分になり「"餡コール"いつでも承ります」と返信メールに書いて送り、数時間後、味の感想を聞こうと電話すると、第一声「餡コール! 餡コール!」の連呼を食らったのでありました。食べきる前から追加の要望とは、さすが中毒者。

先日、旨いと聞いたどら焼きを送ってみたばかりですが、この暮れの帰省は、わたくし、あんこ菓子の運び屋と化して北国・岩手へ向かいます。まあ、好みが分かっていると迷わなくて済むのは楽なんですけど......あんこって、重いんですよね......

20231225_manju.JPG20231225_manju box.JPG記念館グッズショップ随一の人気者・十三饅頭。
個包装7個入りで税込756円でございます。
記念館の建築を模したパッケージデザインは
旅の記念品にもお土産にも最適、"餡コール"間違いなし!

我が家のそんな裏話はさておきまして、ここからが本題。本当のアンコールをご紹介いたします。

伊丹映画全10作の4Kデジタルリマスター版を特集放送中の日本映画専門チャンネル【伊丹十三劇場4K】で「年末年始アンコール放送」をしてくださることになりました!!

2023年12月25日(月)~2024年1月3日(水)よる、おっと、今夜からスタートですね。
放送予定の詳細はチャンネル公式サイト内の番組表でお調べいただけますが、中野サンタが書き出して、リンクもつけて進ぜましょう。

12月25日(月) 22:15『大病人

12月26日(火) 21:50『静かな生活

12月27日(水) 21:40『あげまん

12月28日(木) 18:45『マルサの女
12月28日(木) 21:00『マルサの女2

12月29日(金) 22:00『タンポポ

12月30日(土) 21:35『お葬式

1月1日(月) 21:35『ミンボーの女

1月2日(火) 23:10『スーパーの女

1月3日(水) 23:00『マルタイの女

※12月28日(木) はマルサの女シリーズ2本連続放送、

12月31日(日)は放送はありません、ご注意ください。


※日本映画専門チャンネルはご契約の必要な有料チャンネルです。

受信環境によって様々な視聴方法がありますので、

詳細はチャンネル公式サイトのこちらのページをご覧ください。

20231225_itami4k_encore.jpg

というわけでみなさん、お名残り惜しゅうございますが、2023年の記念館便りは今日でおしまい。

記念館の年内の最終開館日は12月27日(水)でございます。

日頃のご愛顧に心より感謝申しあげますとともに、また来年もどうぞよろしくお願い申しあげます。どうか御身お大事に、メリークリスマス&よいお年を!

12月28日(木)~1月1日(月)は休館いたします。
1月2日(火)・3日(水)は開館時間を短縮し
10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきます。

学芸員:中野

2023.12.18 マンサクの植樹


11月29日(水)の開館前に、伊丹十三記念館の庭に「マンサク」の木を植樹いたしました。

マンサクとは、「マンサク科・マンサク属」の落葉小高木で、晩冬の寒いうちから黄色の花を咲かせ、いち早く春の訪れを告げる花木です。

今更ながら申しあげますと、伊丹さんのお父さんは「伊丹万作(まんさく)」さんです。
その上「マンサク」の木は昔伊丹さんのご自宅のお庭にも植えられていたことがあるということで、それら諸々のご縁からこの度記念館にマンサクの木を植えることになりました。

当初は庭の北の方に植えるということである程度話がついていたのですが、、、

s-IMG_5528.jpg

当日、話し合いの結果
せっかくなので正面の目立つ場所に植えることになりました。

s-IMG_55301.jpg
位置や向きを決定し、


s-IMG_5533.jpg
植木屋さんに作業を開始していただきました!

s-IMG_5540.jpg


s-IMG_5543.jpg
芝を剥がし・・・


s-IMG_5546.jpg
穴を掘り、、、


s-IMG_5548.jpg
植木を設置し、、、


s-IMG_5555.jpg
土を戻し、根鉢と土の間に水をたっぷりやります。


s-IMG_5565.jpg
最後、剥がした芝を戻して、、、


s-IMG_5580.jpg
植え付け完了です。


s-IMG_5589.jpg
という訳で、今年2023年、伊丹十三記念館には5月に植えた「ロウバイ」と今回植えた「マンサク」の2本の木が増え、より賑やかになりました。

s-IMG_5594.jpg
落葉樹ですので現時点ではあまり目立ってはおりませんが、春になれば可愛い花をつけてくれることと思います。その折にはまた記念館便りでご報告させていただきます。



ご来館の際には是非新入りの「ロウバイ」と「マンサク」をご覧ください。




スタッフ:川又

2023.12.11 フォンデュ

今年も残すところ20日ほどとなりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

なにかと忙しい年末年始、体調を崩さないように温かくしてお過ごしください。

 

冬も本番になり、陽が沈むのがグッと早くなりましたので、記念館では日没後からライトアップをしております。開館時間の間にライトアップしている記念館が見られるのは冬だけですので、ぜひ夕方からご来館のお客様は幻想的な記念館もお楽しみください。

 

s-IMG_5636.jpg日没後の記念館

 

s-IMG_5630.jpg中庭の桂もライトアップされています。

 

もうすぐそこまで迫った年の瀬ですが、皆さまは年末年始、何をお召し上がりになるでしょうか。年越しそば、おせち、お雑煮、ご家族で集まってお寿司やすき焼きなど、ご馳走をお召し上がりになるご家庭も多いことと存じます。

 

本日の記念館便りでは、伊丹さんのお宅のお正月料理についてのお話しです。『ぼくの伯父さん』のエッセイ、「正月料理」を見ると、少し変わったお正月料理が2つ紹介されています。そのうちの1つが、チーズのフォンデュです。

 

 わが家の正月料理が決定した。一つはフォンデュ。スイス料理である。簡単にいうなら、煮立てた白葡萄酒でチーズを溶かしちぎったフランスパンをつけては食べる、というだけの素朴な料理である。発明したのは牛飼いだろう。こいつが滅法うまい。寒い夜親しい友とこれを囲んで、プツプツ煮立つやつをパンにからめとっては口に運ぶと、腹の底から生きる力が沸いてくる。厳格なる自然食主義者の私も、この魅力には抗し難い。ベルンに五日滞在したときは、五日連続でフォンデュを食った。最後の夜などは二人前のフォンデュを食べおわってまだ足りず、さらに二人前注文して、ついにはそれも平らげてしまった。それほど「力」のある料理なのだ、フォンデュというのは。

 だから、そのフォンデュを、東京のとあるスーパーの片隅に発見したときの私の喜びをお察し願いたい。いやァ、おどろいたですねェ、あったんですよアナタ、フォンデュが。タイガー印とかいって二人前九百円というインスタント・フォンデュを私は発見してしまったのである。早速買い求めて試験してみると、こいつはイケル! スイスで食べるのと全く変わらない。「正月の料理はこれ」と、直ちに決定し、二十箱注文したら、嬉しいじゃありませんか、年末のせいか、九百円のフォンデュが七百四十円に値下げという、まるでボタ餅で、ほっぺたをなでられているような話なんだなァ。

(『ぼくの伯父さん』より「正月料理」)

 

なかなかお正月に食べることのないフォンデュですが、伊丹さんのお宅では定番のお正月料理のひとつだったそうです。

現在開催している企画展『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』では、お正月に使っていたといわれるフォンデュ用のお鍋と皿を展示しております。実物をご覧いただくと分かるのですが、こちらのフォンデュ用のお鍋はかなり大きめです。家族みんなでお腹いっぱい食べられそうな立派なお鍋で、見ているだけでもお腹が空いてきます。

s-IMG_5643.jpg企画展示室に展示中のフォンデュ用のお鍋と皿

深さも結構あるのですが、どれくらいチーズを使ったのでしょうか...?

 

ちなみに、『女たちよ!』の「固まったチーズ」でも、フォンデュのお話しが出てきます。こちらではフォンデュの詳しい作り方やスイスでのフォンデュに関する習慣も紹介されています。

 

 フォンデュというスイス料理がずいぶん普及してきたらしい。日本ではどういうものかフォンデュというと、肉のフォンデュが主流であって、チーズのフォンデュはあまり盛んでないらしいが、スイスでフォンデュといえばチーズのフォンデュをさす。このチーズのフォンデュについて少し説明しようか。

 チーズはもちろんスイス・チーズを使う。グリュイエールとか、エマンタルとかいう堅くてでっかいチーズを使うのである。グリュイエールとエマンタルをどういう割合で混ぜるかという点に関してはさまざまな議論があってなかなかにむつかしいのであるが、いずれにせよフォンデュの作り方の基本というのはこういうことである。

 すなわち、まず土鍋の底に大蒜をすりこんでおいて火にかけ、これに白葡萄酒を入れて煮立てる。そこへおろしたチーズを入れて、チーズが完全に溶けるまでかきまわし、次にいろいろなスパイスや、キルシュというお酒などを加える。

 これをぐつぐつ煮立っている状態で召し上がるわけだが、食べる時は長いフォークの先にトーストの小片をつけて、これをチーズに浸して食べる。トーストを鍋の中に落してしまったら、その人はみんなに一杯ずつのお酒をおごる習慣になっている。

(『女たちよ!』より「固まったチーズ」)

 

伊丹さんが「滅法うまい」というチーズのフォンデュ。最近では、飲食店で手軽に食べられたり、一人用のフォンデュセットもスーパーで買えるようになっておりますので、伊丹さんのエッセイを思い出しながらお召し上がりいただけたら幸いです。

 

s-IMG_5645.jpgフォンデュについてのエッセイが載った

『ぼくの伯父さん』と『女たちよ!』

 

さて、今週13日(水)は「毎月十三日は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の日です。年内最後の上映作品は『タンポポ』。皆さまのご来館をお待ちしております。映画を観た後は、企画展示室の映像コーナーにございます、瀧波ユカリさんの『タンポポ』の炒飯づくりのスライドショーもぜひご覧ください。

 

〈年末年始 休館・開館日のお知らせ〉

2023年12月28日(木)~2024年1月1日(月)は休館いたします。

(2023年12月26日(火)は通常通り休館いたします。)

2024年1月2日(火)、1月3日(水)は開館時間を10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきまして、1月4日(木)より通常開館いたします。

皆さまのご来館をお待ちしております。

 

学芸員:橘

2023.12.04 記念館ショップの書籍売り場

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
2023年も残すところ一カ月を切ってしまいました。お仕事で、学校で、ご家庭で、より一層忙しい日々をお過ごしの方も多いのではないでしょうか。朝晩だけでなく日中も冷え込んでまいりましたので、体調など崩されないようお気をつけくださいね。

20231204-1.jpg冬の中庭の様子です

 

さてもう1ヵ月ほど前のことになりますが、記念館ショップの書籍売り場で「伊丹さんが書いた本や関連本は、こんなにあるんですか!」と大変びっくりしていたお客様がいらっしゃいました。展示をご覧になって伊丹さんに興味を持ち、なにか本でも買って帰ろうか......と思ったところ、書籍売り場にずらりと並ぶ本を見て驚かれたのだそうです。

20231204-2.jpg

20231204-3.jpg書籍売り場(2枚とも)

 

記念館ショップでは、伊丹さんのエッセイや関連本(冊子)、記念館に関連したものを含め、20冊程を取り扱っています。伊丹さんの著書・関連本の中には残念ながら絶版になった本もありますが、復刊や増刷となったものや、新たに発売されたものもあるんですよ。

今年2023年でいうと、6月に『テレビマン伊丹十三の冒険』(東京大学出版会)『伊丹十三の台所』(つるとはな)が新たに発行され、10月には『伊丹十三の映画』(新潮社)が増刷・販売再開となりました。伊丹さんの持つ様々な " 顔 " のうち、「テレビマン」「料理通」「映画監督」にスポットをあてた本です。

※それぞれ記念館便りでご紹介していますので、よろしければそちらもお読みください。

20231204-4.jpg

左から、『テレビマン伊丹十三の冒険』
『伊丹十三の台所』
『伊丹十三の映画』

今もなお、こんなにたくさんの伊丹さんの著書や関連本が流通していて、それが新たに増えていくというのは、本当にすごいことだと思います。

ちなみに上述のお客様は「伊丹さんがエッセイを書いていたのを知らなかったので、読んでみます」ということで、『ヨーロッパ退屈日記』『女たちよ!』(ともに新潮文庫)をお買い上げくださいました。既に読み終えて、伊丹さんの別の本を読んでいらっしゃるかもしれませんね。

展示をご覧になって伊丹さんに少しでも興味を持たれた方は、そのまま書籍売り場をご覧いただき、気になる本を選んでみてください。

もちろん、記念館はショップのみのご利用も大歓迎です!本屋さんに行くのと同じように本を探しに記念館にお立ち寄りください。お待ちしております。

スタッフ:山岡


------ 伊丹十三記念館・年末年始のご案内 ------

 

12月27日(水)を2023年最後の開館日といたしまして
(12月26日は火曜日のため通常休館です)、
12月28日(木)から1月1日(月)まで記念館はお休みをいただきます。

2024年は1月2日(火)の朝10時より開館いたします。
記念館サイトTOPページにある、開館カレンダーも合わせてご覧ください。

https://itami-kinenkan.jp/index.html

2023.11.27 伊丹少年の自転車ライフ

秋の夕日はつるべ落とし、日暮れがずいぶんと早くなりました。

自転車通勤のわたくし、帰路は細心の注意を払い、緊張の連続を乗り越えて帰宅いたします。
主に幹線道路沿いを走りますので真っ暗ということはないのですが、対向の自転車や脇道から出てこようとしている車が"私を認識してくれているか"が確認しづらいのですよねぇ。

とくに、並走しながら向かってくる中高生の集団には毎度ドキドキさせられます。
「迷惑なのはさておいても、君たちが危険な目に遭っちゃうよ~」と思うものの、私も若い頃は不注意な愚か者だった覚えがあるので、諦めてこちらが避けるようにしております。
経験を積んで危険を想定できるようにならないと慎重さって身につかないものだろうし、しょうがないよね......と、避けた先に暗い色味の服装をしたお年寄りが歩いていたりしてヒヤッとすることもしばしば。ヤレヤレです。

先日も、4、5人の女子学生の自転車軍団がダンゴになってキャッキャと言いながらやってきました。おしゃべりに夢中な彼女たちは、対向の私に気付いていない模様。
こりゃあ一旦停まって生垣の隙間ででもやり過ごさないと本格的にマズそうだ――と思ったその時、女子学生軍団と私の間の暗闇の中から
「うぉら~~~!!」
と歩行者のおじさんの怒声が。

......おじさん、私までビックリしましたがな!
驚いた女子学生たちが散ったもんだから、かえってぶつかりそうになったし!
(あんな大声を咄嗟に出せるとは、よほど肝が据わった方なのでしょうか。だけどねぇ、黒い服で歩いていたおじさんのほうも、気付かれにくくて危険だと思うんですヨ......)

20231127_bike rack_c.JPGちなみに、記念館の駐輪スペースはベントレーガレージの裏側にございます。
8台分のスタンド、ぜひご利用くださいませ。

さて、松山で過ごした高校時代、伊丹少年の自転車ライフはどのようなものであったか、と申しますと、エッセイの中にこんなエピソードが書き残されています。

 私は――われわれの世代は誰でもそうだろうが――活字中毒である。なにしろ一刻も活字なしでは生活することができぬ。旅行に出る時など、結果的には二冊もあれば十分なところを、六冊も七冊も鞄に詰めねば不安でならない。風呂へはいるときですら三冊ぐらい持ってはいらねば心配である――え? 風呂? ええ、風呂でだって本を読みます。風呂の中だろうが、食事中だろうが、床屋で髪を刈られながらだろうが、町を歩きながらだろうが、ともかく常になんかかんか本を読んでいる。
 そういえば、昔は町を歩いている学生というのはたいがい歩きながら本を読んでいたものだが――みんな二宮金次郎だったものだが、この頃あんまり見かけませんね、本を読みながら町を歩いている人間っていうのは。もっとも、今の交通事情じゃ、そんなことやりたくでもできないだろうがネ......
 私なんかは高校が田舎だったからね。田圃の中を自転車で走りながら本を読んだものです。友達の家なんか遊びに行く時ネ、田舎のことだから、まあ、遠いところに住んでるやつがいるんだ、自転車で三十分も一時間もかかるようなとこにネ。そんなときには自転車を漕ぎながら本を読む。退屈だしねえ、どうせ野中の一本道だし、車が通るわけじゃなし......(後略)


「読書」『週刊文春』通巻652・1971年(連載チキューボシブブンカクダイズ) より
ぼくの伯父さん』(2017年つるとはな刊)所収

bokuoji.jpg

自転車を漕ぎながら読書!? それは曲芸の域では......
いや、しかし、伊丹さんが嬉々として挑みそうなことではあるな、という気もします。

でも、あくまでも1950年代当時の松山でのことですからね、自転車の方も自動車の方もバイクの方も、令和の皆様はどうか安全走行で、よろしくお願いいたしますね。

学芸員:中野

2023.11.20 NHK総合(愛媛)『ひめポン!』で企画展『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』をご紹介いただきました


11月15日(水)、NHK松山放送局が制作する夕方の情報番組『ひめポン!』(月曜~金曜 午後6時10分~)の番組内で、7月15日から開始している伊丹十三記念館の企画展『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』の様子をご紹介いただきました。


1120-1.JPG



「伊丹十三"食"の世界」と題し、NHK松山放送局のアナウンサーの永井 伸一さんが企画展をリポートしてくださいました。放送時間約9分間と、たっぷりと時間をかけて取り扱ってくださいました。永井さんのレポートは大変素晴らしく、とても興味を惹かれる内容になっており、加えてご案内役で登場する当館の橘学芸員の解説もわかりやすく、「食べたり、呑んだり、作ったり。」展の雰囲気や、伊丹さんの"食"に対するこだわりの世界を感じていただけることと思います。


この放送は現在も配信にてご覧いただけますので、愛媛県外にお住まいの方や、愛媛県内でご覧になられていない方は、是非配信にてご覧ください。

【配信をご覧いただく方法】

●「NHKプラス」から
NHKの番組をスマホやPCで見られる動画配信サービス「NHKプラス」において、11月22日(水)18時9分まで見逃し配信されています。


●『ひめポン!』番組HPから
NHKプラスでは1週間限定のところ、『ひめポン!』の番組HPでは、2ヶ月間視聴可能と、より長い期間ご覧いただけます。



スタッフ:川又

2023.11.13 メンバーズ会員さま限定、秋の収蔵庫ツアーを開催いたしました

秋らしい晴れの日が多く、観光日和が続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

私は朝晩の冷え込みに備え、少し早いですが冬用の毛布を出しました。

これから年末年始に向けて寒くなってまいりますので、皆さまお風邪など召されませんようにご自愛ください。

 

記念館では、11月の2日~5日にかけてメンバーズ会員さま限定・秋の収蔵庫ツアーを開催いたしました。本日の記念館便りでは、この度開催した収蔵庫ツアーについてご紹介させていただきます。

 

収蔵庫ツアーは、普段は公開をしていない収蔵庫を、学芸員がご案内するツアーとなっております。収蔵庫の2階にございます、展示室風に整えた収蔵庫展示をツアー限定でご覧いただけます。

イラスト原画や生原稿、愛用品の数々、湯河原の自宅のダイニングを再現したコーナーなど、伊丹さんについてより深く知っていただけるツアーとなっております。

メンバーズ会員さま限定でご応募いただけまして、春と秋の年2回行っております。

 

※一般のお客さまがご参加いただけます収蔵庫ツアーは、コロナ禍以前は開館記念日付近に開催しておりましたが、2020年から開催を見合わせております。

 

s-IMG_5482.jpg収蔵庫内の様子

 

s-IMG_5480.jpg湯河原のダイニングルームの再現コーナー

 

8月から学芸員の肩書きをいただきましたので、この度の収蔵庫ツアーで初めて収蔵庫のご案内をさせていただきました。

至らぬ点も多く、先輩に助けていただきながらのご案内ではございましたが、なんとかご案内をすることが出来ました。皆さまからのご質問やお話で、私の方が勉強させていただくことも沢山あり、充実した時間となりました。

ご参加くださった皆さま、誠にありがとうございました。

 

今回ご参加くださった皆さまにお願いをさせていだきまして、収蔵庫ツアーのご感想をいただきました。皆さまのご感想の一部をご紹介させていただきます。

 

----------------------------------------------------

 

  • 膨大な伊丹十三氏の資料に圧倒。大ものから小ものまで、実に多彩でした。日常的なものへのこだわりの鋭さにもまた驚かされました。

 

  • l 収蔵庫ツアーはいつも伊丹さんのお宅におじゃまさせていただいている気持ちになります。今回はダイニングルームの本棚にあったお料理の本にはさんであったメモ等をみせていただいてより親近感を覚えました。

 

s-IMG_5488.jpgこちらの棚の料理本にメモが挟んであります。

 

  • 何度目かの訪問でしたが、その度に新たな発見があり、また、新たな品を拝見させていただき、伊丹十三という人の奥行きの深さをいつも感じています。生誕90年「早過ぎた自由人」だったのかな、という思いも抱きます。

 

  • 今回のツアーでは、伊丹さんのいろんな面を知るきっかけとなりました。それにしても、このような多方面に渡る才能の持ち主であった伊丹さんはすごい偉大な人だと感じ入りました。

 

s-IMG_5495.jpg愛用していたルイ・ヴィトンの鞄と印伝

 

 

  • 何度か足を運ぶ中で十三氏への興味が増していたところ、今回の収蔵庫ツアーに参加しました。イラスト原画コーナーで、画用紙に描かれた本物の原画に触れ、温もり、優しさを感じ、生き生きとしたタッチに驚きました。湯河原での家の生活から、家族と過ごす時間も大切にされていたこと、お子様への思いもよみとれました。また、私服や衣装など、こだわりも個性として十三氏ならではの味を感じました。1階では見ることのできないものを深く見せていただき、とても楽しい時間となりました。

 

  • 自分の好きな事への一途なこだわりと時代の流れにのり、新しいことを一早く取り入れる柔軟さ、その両方が同時に備わった方。そのバランスこそが伊丹さんなのだと思いました。昔から物を大切にとっておられたからこその収蔵庫ですね。

 

----------------------------------------------------------------------------

 

ご感想をくださった皆さま、誠にありがとうございました。

 

ご参加くださった皆さまが、伊丹さんを様々な媒体を通して知り、興味・関心・憧れなど、様々な思いを持ってくださっているお話をじっくりと伺えたことで、私自身、ツアー前よりも伊丹さんをずっと身近に感じられることが増えました。これからも日々、伊丹さんのことを知り、皆さまに魅力を発信できるように精進したく存じます。

 

s-IMG_5486.jpgショップで販売している4711も収蔵しております。

 

s-IMG_5484.jpg書き込みのある台本。

こちらは、伊丹さんが出演した映画『黒い十人の女』の台本です。

 

秋の収蔵庫ツアーのご紹介、いかがでしたでしょうか。

収蔵庫ツアーのご案内を定期的にさせていただいておりますメンバーズ会員は、随時募集中となっております。ぜひ、ご入会をご検討いただけますと幸いです。

 

収蔵庫ツアーの他にも、宮本信子館長の出勤日のお知らせや記念館主催イベント時の優先的なご案内など、様々な特典もございます。ぜひ、下記のメンバーズご利用案内のページをご覧ください。

 

https://itami-kinenkan.jp/guidance/members.html

 

学芸員:橘

2023.11.06 『伊丹十三の映画』販売再開しました!

記念館ホームページのニュース欄でお知らせしていますとおり、ここ記念館で、書籍『伊丹十三の映画』(新潮社)の販売を再開いたしました。

20231106-1.jpg20231106-2.jpg

 『伊丹十三の映画』
(2007年・「考える人」編集部編)

しばらくの間販売を中止していましたが、この度待望の増刷が叶い、また皆さまにこの本をお届けすることができるようになりました!
しかも、ここ伊丹十三記念館 " 限定 " での販売再開です!!

2007年5月、記念館のオープンと同じ頃に発売開始となった本ですので、記念館便りをご覧の皆さまの中には、すでに読んだことがある方やお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。

販売再開にあたりまして改めて内容(※)をご紹介させていただきますと----『伊丹十三の映画』は、伊丹さんが監督をつとめた映画作品、いわゆる"伊丹映画"に関わった方々のインタビューが収められている本です。

※内容は以前と同じですが、価格は今回の販売分より変更され
税込3,630円となっていますのでご注意ください。

一口に「伊丹映画に関わった」と言っても、関わり方はさまざまで、俳優、撮影、記録、編集、キャスティング、美術、音楽、製作、配給や宣伝などの事務方などなど――なんと総勢43名の方が、当時を思い出して伊丹さんや伊丹映画、その舞台裏を語っています。伊丹さんの映画への想いやこだわりがそれぞれの立場や役割の視点でつづられている、ひとつひとつが読み応えのあるインタビューです。
『伊丹十三の映画』はそれが一冊にまとめられている貴重な本で、読み進めるにつれてだんだんと「映画監督・伊丹十三」の姿が浮かび上がってくるんですよ。

また、この本には、伊丹さん自身のインタビューも収められています。今は絶版となっている書籍『「お葬式」日記』に掲載された、伊丹さんのロングインタビューの再録をお読みいただけます。
その中には、大変印象的な伊丹さんのこんな言葉も。

 

" われわれは映画を半分しか作れない。そして、残りの半分の完成を観客の配慮にゆだねるため、観客の自由に対して映画を作る、ということです。われわれの映画は、これからもさまざまな観客に出会い、各人の中でさまざまな形で完成されてゆくでしょう。私としては、それぞれの出会いが幸せなものであることを祈るのみです。"



伊丹映画をご覧になったことがある方には特におすすめの本です。もう一度映画を観返したくなりますよ!

記念館ショップ店頭とオンラインショップで販売中ですので、秋の夜長に本で、そしてもう一度映像で、ぜひ伊丹映画に浸ってみてくださいね。



20231106-3.jpg

スタッフ:山岡

2023.10.30 あきはゆふぐれ

このところ、14時を過ぎると早くも陽射しが黄味を帯び、16時頃には真西に向いたエントランスから館内に夕陽が差し込んできます。終わりゆく一日が惜しまれるような、なんだか寂しく侘しい気持ち......秋ですねえ。

20231030_yufugure1.JPG

 そんなある日、かの有名古典随筆をふっと思い出して、「ああ、"秋は夕暮"ってコレなのね!」と、突然、納得したのです。

秋は夕暮。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど飛びいそぐさへ、あはれなり。まいて、雁などの列ねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。

20231030_yufugure2.JPG20231030_yufugure3.JPG

清少納言の『枕草子』、有名な「春はあけぼの」で始まる第一段の一節ですね。

今どきはどうか分かりませんが、私が中高生の頃、名作古典文学の冒頭部分や名場面の丸暗記が奨励されたものです。いち早く覚えて暗唱してみせる同級生の得意顔を横目に「そんなものに取り組んでたまるか」とヘソを曲げていた可愛げのない生徒(の30年後が今のわたくしなのですが...)であっても、頭の片隅のどこかには何かしら引っかかっているようで、何かの折に「そういえば」と思い出したり、「ああ、分かる分かる」と深く頷いたり、そういうことがままあります。


年齢を重ねるって悪くないな、と感じることのひとつです。

日入り果てて、風の音、虫の音など、はた言ふべきにあらず。

20231030_yufugure4.JPG20231030_yufugure5.JPG

記念館の中庭でも、閉館間際になると、ひんやりと澄んだ空気、桂の葉が風に吹かれてカサコソとささやく音や、どこからともなく響いてくる虫の鳴き声をお楽しみいただけます。
古典文学にも通じる記念館の夕景、回廊の照明やライトアップとともにぜひご堪能ください。

ところで、「起死回生の勉強法」について伊丹さんはこんなふうに述べています――

 授業の内容、ことに理数科系統や語学の授業というものは、段階を追って進むことになっているから、最初の段階を理解せぬうちに授業が次へ進んでしまったらもういけない。
 なんにもわからぬ有耶無耶のうち、瞬く間に一学期くらいは過ぎてしまって、それからではもう最初からやりなおそうにも膨大なエネルギーを要するから、とても普通の子供には不可能という事態が出来してしまう。
 (中略)不幸にしていったん自分が授業に乗り遅れてしまったな、と気がついたときには、一体どうすればいいか。
 私は、自分の経験からしていうなら、進んで落第してしまうのが一番いいと考える。ま、騙されたと思って落第してごらん。そうして、この落第をフルに利用してごらん。学校は天国みたいになるから。

「落第のすすめ」『女たちよ』(1968年)より

――「落第をフルに利用」できるほどの生徒なら、そもそも「最初の段階」に「乗り遅れ」たりはしないのでは......とひそかに思わないでもありませんが、今になって「結構脳に残ってるもんだなあ」という経験をいたしますと、「あの頃もっとたくさん詰め込んでおけばよかった」との後悔がよぎるとかよぎらないとか......

ま、とりあえず~、と愛媛名物「いも炊き」をお腹に詰め込んで、我が秋は暮れゆくのであります。

20231030_imotaki.JPG"甘旨い"愛媛味のオツユに新鮮なサトイモ!
このテの料理、私は大量にこしらえてしまうので
近年は出来合いをスーパーで買うことにしています。

< お 知 ら せ >

好評開催中の企画展『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。』のスペシャル映像コーナーに、本日11月1日(水)、新作を追加いたします!
「伊丹レシピ、私流。」のモニターでは、各界著名人の方が伊丹作品で知った料理の自分流アレンジをスライドショーでご紹介しています。
新作スライドショーには、マンガ家・エッセイストとしてご活躍中の瀧波ユカリさんがご登場。伊丹作品について愛情たっぷりに考察しながら、映画『タンポポ』(1985年)で瀕死の母親がこしらえる「最期のチャーハン」を瀧波さん流のアレンジでご披露くださいます。

<10月30日(月)までの「伊丹レシピ、私流。」> ※翌10月31日(火)は休館日
  *木工家 三谷龍二のスパゲティ・カルボナーラ
<11月1日(水)からの「伊丹レシピ、私流。」(二本立てになります)>
  *木工家 三谷龍二のスパゲティ・カルボナーラ
  *マンガ家・エッセイスト 瀧波ユカリの最期のチャーハン

「伊丹レシピ、私流。」シリーズは、今後も新作の追加・入れ替えを行ってまいります。どうぞご期待ください!

学芸員:中野

2023.10.23 宮本信子館長が伊丹十三記念館に出勤いたしました


記念館便りをご覧の皆様こんにちは。

10月18日(水)と19日(木)の2日間、宮本信子館長が伊丹十三記念館に「出勤」いたしました。

2022年4月以来、1年半ぶりの出勤となりました。今回の出勤は10月に入ってから決定した関係で、告知から出勤までの期間が2週間程しかなかったのですが、今回も多くの方が宮本館長に会いに記念館にご来館くださいました。そんな2日間の様子を写真とともにご紹介させていただきます。

7月から開始の企画展『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」展』をチェックする宮本館長。「すごく良かった!」とのこと。お客様に「どうぞ、『うち』の台所を見て行ってください」とご案内していたのが印象的でした。


2310231.jpg2310232-2.jpg



宮本館長の出演した2011年公開の映画「阪急電車 片道15分の奇跡」のパンフレットをご持参のお客様も!

2310233-1.JPG

伊丹十三記念館  メンバーズカード会員  の方もご来館くださいました。(メンバーズ会員の皆様にはメールや郵便で館長出勤をご案内させていただています)

2310234.JPG

途中、取材も入りました。

2310235.JPG
多くの方がご来館くださり、記念撮影や歓談をされていました。

2310236.JPG2310237.JPG2310238.JPG

館長出勤は決定次第、伊丹十三記念館ホームページのニュース欄に載せるようにしておりますので、よろしければ時折チェックしてみてください。

また、記念館から直接、出勤の連絡が欲しい!という方は、是非、伊丹十三記念館  メンバーズ会員 のご入会もご検討ください。





スタッフ:川又

2023.10.16 

急激に気温が下がりはじめ、すっかり秋模様となりました今日この頃ですが、皆さまどのようにお過ごしでしょうか。

 

記念館では桂の葉の色が変わりはじめ、回廊を歩くとほんのりと甘い香りが漂っています。

 

s-IMG_5291.jpg 

 

s-IMG_5293.jpg少しずつ色づきはじめています。

 

回廊の陽だまりにいると、すっきりとした空気とほのかな温かさが身体に染みていくようです。ぜひ、秋を感じる記念館にご来館ください。

 

7月15日から始まった新企画展示『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』は、お楽しみいただけておりますでしょうか。

 

本日の記念館便りでは、「呑んだり、」のテーマの中から杯についてご紹介させていただきます。

 

伊丹さんはエッセイ「唇の感触」の中で次のような箇所がございます。

 

食器というものを、われわれは唇や舌で、知らず知らずのうちに味わっているわけで、たとえば同じビールを飲むにしても、ジョッキで飲むのと、薄手のグラスで飲むのとではずいぶん味わいが違う。

つまり、口に当る部分の厚みと、その厚みのアール、というか、曲率というか、つまり、厚みというのは口当りのいいように丸く角を落してありますわな。このアールが食器の口当りを決定する要因であると思われる。

(中略)

酒の場合も、いや、酒の場合はちょっとむつかしい。大ぶりのぐいのみで飲みたい、という気分の時もあるし、きょうは絶対に小ぶりの、薄手の伊万里の杯でなければならん、という日もある。

杯というもの、ついでにいうなら、家へ客がきて小宴を張る。この時、客全員に揃いの杯、というのはいかにも味気なく、野暮である、と思う。めいめい好みの杯を傾けるのでなければ、酒という気がしないのです、私は。

(『女たちよ!』より「唇の感触」p168~169)

 

こちらのエッセイの通り、酒器にもこだわりのあった伊丹さんは、色々な盃を使用しており、買うことも好きだったそうです。お酒を呑むときには、たくさんの盃を並べて「今日はこれ」と選んでいたのだとか。

 

「呑んだり、」のコーナーでは、猪口や盃をいくつも展示しております。厚みや形、模様まで様々ですので、どんなお酒をどの盃で呑んでいたのか、想像しながら見るのも楽しいです。

 

s-IMG_5303.jpg見ているだけで楽しいさまざまな盃たち

 

 

盃でご覧いただきたいのが、もう一つ。『再び女たちよ!』に収録されておりますエッセイ、「盃と箸袋」の挿絵の原画です。

 

 

s-IMG_5301.jpg

 

 

繊細な鉛筆画ですが、よくご注目いただきますと、展示している盃が描かれていることが分かります。

 

いちばん分かり易いものだけお伝えさせていただきますと、ちろりと一緒に展示されているこちらの猪口です。

 

s-IMG_5304.jpg 

 

京都のたる源のもので、お正月の宴会でよく使っていたものでした。ぬる燗のお酒を入れて飲むと、木の香りがお酒に移って美味しいのだそうで、香りも楽しんでいたのだそうです。

残りの盃はぜひ、展示品と見比べて探してみてください。イラストの緻密さをより感じていただけることと存じます。

 

さて、今週はついに館長出勤です!

 

宮本信子館長が、以下の日程でスタッフと一緒に皆さまをお迎えいたしますので、皆さまぜひご来館ください。

 

18日(水) 13時~15時

19日(木) 11時~13時

 

※状況により急遽予定を変更する可能性がございます。

※感染症対策のため、握手はご遠慮いただきますようお願いいたします。

 

スタッフ一同、皆さまのご来館をお待ちしております。

 

学芸員:橘

2023.10.09 ニュース欄より

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。すっかり秋めいてまいりました。
急な気温変化に加えて、夏の疲れも出る頃ですから、体調を崩されませんようどうぞご自愛くださいね。

さて、記念館サイトのTOPページにある「ニュース欄」では、伊丹さんや記念館に関するお知らせを随時掲載しています。記念館便りをご覧くださっている皆さまの中には、定期的に見てくださっている方もいらっしゃるかもしれません。

記念館から皆さまに向けて最初に情報を発信する場所ですから、ぜひぜひ、お時間のあるときにチェックをお願いいたします!

20231009-1.jpg赤マルの部分がニュース欄です

そんなアピールも兼ねまして、本日はこのニュース欄から、10月に関するお知らせを3つご案内させていただきます。

まず一つめ、現在のTOPニュースは――「宮本館長の出勤情報」です!

--------------------------------

20231009-2.jpg

 

10月18日(水)13時頃~15時頃まで
10月19日(木)11時頃~13時頃まで

 

※状況により急遽予定を変更する可能性がございます。
※感染症対策のため、握手はご遠慮いただきますようお願いいたします。

--------------------------------

当日は私たちスタッフと一緒に、ご来館のお客様をお迎えします!
皆さまお誘い合わせのうえ、ぜひ記念館にお越しください。スタッフ一同、心よりお待ちしております。

二つめは、「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」ということで、次回上映作品のお知らせです。10月13日(金)の13時より、記念館の常設展示室で『マルタイの女』(1997年)を上映いたします。

当日にお渡ししているオリジナルのミニ解説をご覧になりながら、ご自宅でご覧になるのとはまたちょっと違う雰囲気の中で、伊丹映画を楽しんでみるのはいかがでしょうか。初めて観る方も、これまで何度か観たことがあるという方も、ぜひ「伊丹十三」記念館で、『マルタイの女』をご堪能ください。

20231009-3.jpgオリジナルミニ解説


そして三つめは、日本映画専門チャンネルで放送中の「伊丹十三劇場4K」についてです。ニュース欄にあるリンク先をクリックしていただくと、日本映画専門チャンネルでの特設ページがご覧いただけます。


10月は『大病人』(1993年)と『静かな生活』(1995年)の2作品が放送予定ですので、ご興味のある方はチェックしてみてください!

10月14日(土)21:00 『大病人』(1993年)

10月28日(土)21:00 『静かな生活』(1995年)

今後も皆さまに最新情報をお届けしていきますので、ニュース欄をよろしくお願いいたします!


スタッフ:山岡

2023.10.02 9月の伊丹十三記念館


記念館便りをご覧のみなさまこんにちは。
いよいよ10月ですね。


20231002.JPG

記念館の庭では赤とんぼも飛ぶ季節になりました


9月の伊丹十三記念館の周辺では、いつになく様々な出来事がありましたので、これよりご紹介させていただきます。


① 【第15回伊丹十三賞 贈呈式の開催】
9月1日(金)、第15回伊丹十三賞  の  贈呈式   を開催し、三谷幸喜さんに伊丹十三賞をご受賞いただきました。

ニュースや新聞など様々なメディアに取り上げていただきましたので式の様子をご覧になられた方も多いかと多いかと思いますが、9月の2回にわたる記念館便りに加え、館長・宮本信子の「宮本信子オフィシャルサイト」内の「タンポポだより」をご覧いただくと、より一層、式の臨場感が伝わってくるかと存じますので、まだご覧になられていない方がいらっしゃいましたら、是非チェックしてみてください。


● 伊丹十三記念館 記念館便り
「第15回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました【その1】」

● 伊丹十三記念館 記念館便り
「第15回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました【その2】」

● 宮本信子オフィシャルサイト 「タンポポだより」
「・・・第15回伊丹十三賞贈呈式・・・」

先日、「ほぼ日」こと「ほぼ日刊イトイ新聞」でもレポートを掲載くださいました。

● ほぼ日刊イトイ新聞「ほぼ日ニュース
おめでとうございます、三谷幸喜さん!
第15回伊丹十三賞贈呈式に行ってきました。


是非ご覧くださいませ。


② 【中野学芸員の講演】
9月17日(土)に専修大学で開催された「日本映像学会第10回ドキュメンタリー・ドラマ研究会 今野勉著『テレビマン伊丹十三の冒険』出版記念 テレビメディアと伊丹十三」という会において、中野学芸員が「伊丹十三の仕事」をテーマに講演を行いました。

その模様も、先週の記念館便りで詳しくレポートしています。
● 伊丹十三記念館 記念館便り
「ガクゲイイン中野靖子の冒険」

是非ご覧ください。


③ 伊丹十三記念館 入館者数19万人突破
9月20日(水)、伊丹十三記念館の開館からの入館者数が19万人を突破いたしました!
コロナの影響もあり、18万人から19万人までの一万人の方にご来館いただくのに要した期間はこれまでで一番長かった...のですが、このたび無事19万人突破の運びとなりました。
これもこれまでにご来館くださったお客様、当館を応援してくださったみなさまのおかげでございます。
まことにありがとうございました。


今後とも伊丹十三記念館をよろしくお願いいたします。


 

スタッフ:川又

2023.09.25 『ガクゲイイン中野靖子の冒険』

9月17日(土)午後2時過ぎ、専修大学神田校舎10号館6階10061号室。


かつてない緊張に打ち震えつつ「松山の伊丹十三記念館からまいりました中野と申します」とご挨拶し、40人を超える方々、それから、尊敬してやまない演出家の今野勉さん――数々の傑作ドキュメンタリー番組で伊丹さんと仕事を共にした"盟友"今野さん――の前で、幅広い分野で活躍した伊丹さんの仕事に関するお話を始めました。

※ 今野勉さんについてはこちらもぜひ!

一体何事かと言いますと、
日本映像学会第10回ドキュメンタリー・ドラマ研究会
今野勉著『テレビマン伊丹十三の冒険』出版記念 テレビメディアと伊丹十三
という、大変にめでたく、この上なく有難い会で「伊丹十三の仕事」をテーマに講演する機会を頂戴したのです。なんと光栄なことでしょうか。

20230925_ddken_0.jpg慣れぬPowerPointでド真剣に作ったタイトルです

研究会は三部構成で、
・第一部
 上映『欧州より愛を込めて』『遠くへ行きたい 伊那谷の冬』『天皇の世紀 福井の夜』
・第二部
 講演「伊丹十三の仕事」(中野)
・第三部
 パネルセッション
 (今野勉さん・コメンテーター/法政大 藤田真文教授・中野、司会/静岡大 丸山友美講師)

 

と午前中から夕方までたっぷり。とっても贅沢なプログラムでありました。

今野勉さん&伊丹さんによる傑作テレビ番組の映像・講演・討論・質疑で、今野さんのご新著と作品への理解をより深めましょう、という集まりであったわけ、です、が......

白状いたしますれば、講演のご依頼をいただいた当初、「こっ、こここ今野さんの前で伊丹さんについて語る...ってこと...です...よね......ワタシにはそんな根性ありません! どうしたらいいんですかどうしたらいいんですか~~~」と半ベソで同僚たちに泣きついたものです。
(私が今野さんの大ファンであることを知っている同僚たちは「よかったじゃないですか~」「楽しんできてください!」と笑顔で励ましてくれました。でも、内心では「どうせ引き受けるんだから黙って受け入れればいいのに」と呆れていたにちがいありません。みなさんいつもごめんなさい。)

それやこれやの最中にも「割り当てられた1時間で『伊丹十三の仕事』をどのようにお伝えすることができるだろうか」と考え始めていたのですが、思案した末の結論は「当然ながら"全てを順に詳細に"は無理」ということ。"ナントカの考え休むに似たり"、まさに至言ですね。

そこで、まず、伊丹さんの経歴の中で現在最も知られているであろう「映画監督としての仕事」からご紹介することにしました。脚本監督作品10本の特徴を一番に挙げるとするなら「日本人論」であります。
その点をご説明した後、「映画監督という職業にいたるまでの経緯」と「伊丹十三の日本人論はどのように形成されていったのか」についてお話ししていく、というのが本論の構成。

ポイントにしようと私が考えたのは、3点。
「幅広い活動の理由」「テレビとの出会い」「父・伊丹万作の存在」、です。

20230925_ddken_1.JPG講演中のわたくし。
テレビ・メディア研究者や学生さんが多く集まった会場には
ITM伊丹記念財団役員の方々、お久しぶりの方々のお姿も――

【1】映画監督デビューまでにデザイン・エッセイ・テレビドキュメンタリー・テレビCM・精神分析、と幅広い表現活動を経た伊丹十三ですが、「多才」「何でもできる人」とひとことにと語られることには、長い間、違和感がありました。
その違和感の元を"逆転"させて「時代や年齢に応じて浮かんだ問題意識をテーマとする時、最善の創造活動を実現するためにテーマに適した表現方法・分野を常に模索していた(その結果が多分野にわたる活躍となった)」と捉え直してみると、それぞれの分野における伊丹十三の創意工夫と収穫がより顕著に見えてくるように思われます、ということを、伊丹さんの経歴を概観しながらひもといていきました。

【2】それから「ドキュメンタリー番組のロケで多くの旅を経験したことによって、独自の日本人と日本人社会の歴史への認識を深めていき、また、今野さんをはじめとするテレビマンユニオンの方々との番組作りの場でジャンルの枷を超える自由な表現を学んだ」というお話。
これを、直筆のナレーション原稿やメモなどの番組制作資料、単行本に収録されなかったエッセイとともにご紹介できたのは、記念館ができたときに伊丹さんの直筆資料をご寄贈くださった今野さん、"とにかく物を捨てずに取っておく人"(宮本館長談)だった伊丹さんのおかげであります。

【3】そして最後に、「テレビでの活躍後、精神分析を学び、遅咲きの映画監督となった背景には、"まわり道をせざるを得なかった事情"があった」ことにもふれさせていただきました。
"まわり道"の根底には、父・伊丹万作を少年期に喪ったこと、その父が偉大な映画人であったことに由来する憎しみに近い感情、内面での父との葛藤があったと考えています。その秘めた苦しみに気付いた伊丹十三は、日本人である自身の内に根付いた問題の解明の道を精神分析に求め、学びに励んで乗り越えるにいたったのですが、心の中の父と和解するに至るとともに、創造活動の柔軟性もより高まっていきました。そうした流れがあり、1984年、51歳で映画監督デビューを果たし――最終的には父の功績を顕彰するに至った――という経緯を、新聞や雑誌インタビューでの発言、伊丹万作五十回忌でのスピーチなどなどをもとに詳しくお伝え――
――したかったのですが、終盤はかなり駆け足でまとめさせていただくことになってしまい、それなのに持ち時間を超過してしまい、ご聴講の皆様、研究会の皆様には大変失礼いたしました。

(研究会参加者で「ここのところ、もっと詳しく説明して欲しかった」と思ってくださった方がいらしたなら、ぜひ記念館HP内のこちらのページやこちらのページをご参照くださいませ)

と、いうようなことを考えての私の講演は、拙い話しぶりと覚束ない運びで終ってしまいましたが、このたびの研究会を機に考えたこと・経験させていただいたことは、私にとってはまたとない冒険でありました。

20230925_kuromon.JPG冒険ついでに研究会会場の専修大学のシンボル"黒門"をパチリ。
(朝日直撃で赤っぽい色味になっていますが実際はもっと黒いんですよ!)
1885年の神田移転から1903年までの明治時代の「専修学校」の正門で、
創立130周年を記念して2010年に復元されたものだそうです。

そして今、『テレビマン伊丹十三の冒険』を再び手に取り、「今野さんたちや伊丹さんが愛する"自由"とはどういうものだろう」と考え続けています。

力尽くで舌鋒鋭く闘って勝ち取る自由もありましょうが――

「当たり前」の発想レベルが"ジャンルの枷の内側"にある人は不自由なまま。
自分たちが伝えたいことをよりよく伝える表現のため、そして受け手のため、"ジャンルの枷"をヒョイとはずし、さまざまな条件や状況に応じて新しい「当たり前」を当たり前のように発想できる人たちは自由でいられる。

きっとそういう"軽やか"な自由ということなのだろうな。
それは私のような者にも可能だろうか。
などなど、考えに耽りながら、やっと秋めいてきた松山で空を眺める今日この頃です。

最初こそドキュメンタリーのロケに戸惑った伊丹さんが徐々に勘どころを獲得し、水を得た魚のように躍動し、ついには羽根まで生やして羽ばたくかのように日本人と日本人社会の歴史を自在に捉えることができるようになっていった――その過程は記念館の『旅の時代』展でご紹介したところでもありますが、今野さんの『テレビマン伊丹十三の冒険』では、ご記憶・ご経験・資料に基づいてさらに克明に記述されていて、ジャンルを問わず自由を求める人々へのヒントに満ちています。自由をめぐる痛快冒険譚、未読の方はぜひぜひお手に取ってみてください。


(叙事詩的に最初から通して読んで面白く、かつ、どこから読んでも面白くてツマミ読みをも許してくれるのが、この本のすごいところ。学術書の気難しさはどこにもありません。どなた様でもどうぞお気軽に!とお勧めいたします。)

すばらしいご本を世に送り出し、研究会のパネルセッションでは惜しみなくお話をお聞かせくださった今野さん、お声をかけてくださった研究会メンバーの皆様、ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました。

20230925_ddken_2.JPGパネルセッションにて、幸福感にひたりながら今野さんに質問中のわたくし(右奥)。
左から、司会の丸山友美先生、今野勉さん、コメンテーター藤田真文先生。
藤田先生、丸山先生の丹念なご準備ぶりも、大変勉強になりました。

学芸員:中野

2023.09.18 第15回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました【その2】

先週に引き続きまして、贈呈式の模様をお伝えいたします。

 

----------------------------------------------------------------------------------

 

選考委員である南伸坊さんの祝辞に続きまして、正賞の盾と、副賞の賞金100万円の贈呈が行われました。

 

正賞(盾)の贈呈 選考委員・中村好文さんより

 

 

 

s-_DSC9548.jpgタキシードに身を包んだ三谷さんの横で、

中村さんは「服装のバランスがちょっと悪かったかな~って思うんですけれども」と

会場の笑いを誘いました。

歴代の受賞者の中でも蝶ネクタイは三谷さんが初めてでした、という会話も。

 

 

 

副賞(賞金)の贈呈 宮本信子館長より

 

s-_DSC9558.jpg「おめでとうございます」「ありがとうございます」と言葉を交わし、

館長の茶目っ気たっぷりな「落とさないように」の言葉で和やかな雰囲気に。

 

 

そして、受賞者・三谷幸喜さんのスピーチです!

 

受賞者・三谷幸喜さんのスピーチ

 

 

s-_DSC9568.jpgスピーチを行う三谷幸喜さん

 

●伊丹さんとの出会い

30年以上前になると思うんですけれども、赤坂にすごく美味しいドライカレーとかぼちゃプリンのお店がありまして、そこに僕は何回か通っていたんですが、そのお店の隅っこのテーブルでいつも書き物をされていたのが伊丹十三さんでした。

 

僕は伊丹さんのエッセイも大好きだったし、映画もすごくファンだったので、これはちょっと挨拶しなきゃいけないと思いまして。全く面識は当然ないんですけれども、伊丹さんのところに行って、僕はまだ大学生だったと思うんですけれどもご挨拶させていただいて「映画の大ファンです」って話をしました。

 

伊丹さんは、こんな訳も分からない若輩者が突然話しかけてきて、たぶん驚かれたんだろうと思うんだけれども、すごく優しく接してくださって「どうもありがとう。ところで、僕の映画のどういうところが好きなの?」っていうふうに言われました。

 

そこまで考えてなかったので(場内笑)すごく焦ったのを覚えています。

 

伊丹さんは、僕らのような下の世代の若い人間の言葉にも、すごく耳を傾けてくれる方でした。

 

●伊丹さんとのエピソード

 

『ショー・マスト・ゴー・オン』という舞台をやったときに、伊丹さんが宮本さんと来てくださって、終わった後に食事がしたいとおっしゃってくださって中華料理をご馳走になりました。

 

すごく面白かったと、この作品のどこがこんなにおもしろいのかということを、とくとくと話してくださって...僕は当然緊張していたんで、全く耳に入ってこなかったというのを覚えております。(場内笑)

 

それから『ラヂオの時間』という初めて僕が映画を作ったときにも、伊丹さんは現場に足を運んでくださって僕の横でずっと見てくださっていました。伊丹さんがおっしゃっていたのは「映画というのはスクリーンに映っているものが全てなんだ。だから君はずっとモニターだけを観ていなさい」そういうふうに伊丹さんは教えてくださいました。

 

伊丹さんのお家にも何度かうかがって、まだ完成していない伊丹さんの映画を、粗編集の状態だったんですが、見せていただいて「感想を言いなさい」というふうに。

 

そう言えるもんじゃないんですけれども...(笑) 思ったことを話しました。

 

本当に伊丹さんは人の話をとてもよく聞いてくださる方だったなというふうに思います。

 

s-_DSC9576.jpg 

 

●大河ドラマでの足利義昭役

 

それから月日がたって大河ドラマの『功名が辻』という作品があったのですが、僕は足利義昭の役で出演しております。

 

大石静さんが本を書かれて、大石さんの推薦だったんですけれども、なんで役者でもない僕が足利義昭をやったかというと伊丹十三さんがやっぱり大河ドラマの『国盗り物語』という作品で足利義昭をやっていたんですよ。

 

僕はその義昭がもう大好きで。小学生のころだったんですね、僕が見たの。義昭といえばそれからもう伊丹さんしか考えられないくらい、それぐらいもうジャストフィットしたキャスティングで。だからその同じ役をやるということがすごく嬉しくて。

 

しかもその『功名が辻』というのは司馬遼太郎さんが原作で、伊丹さんがやられた『国盗り物語』も司馬遼太郎さんが原作で。

台本を読むとですね、伊丹さんが言ったセリフと同じようなセリフが出てくるんですよ。

 

これはもう伊丹ファンとしてはやらない訳にはいかないと思って引き受けたんですけれども。

 

撮影の時にですね、「信長は何をやっておるのだ」というセリフがあるんですね。足利義昭は信長に対してすごく敵意を持っているシーンで...。まぁ、二人に何があったかはちょっと皆さんには、個人的に調べてもらって(場内笑)はしょりますけれども。

 

「信長は何をやっておるのだ」というセリフを僕は言ったんですけれども。

本番でNGが出まして、プロデューサーがやってきて「三谷さん、いま"のぶながは"とおっしゃっていたんですが"のながは"にしてください」と。ちょっとアクセントが違うらしいんですね。

 

「分かりました」と言ったんですけれども、僕の中では『国盗り物語』では、伊丹さんは絶対"のぶながは"って言ってたんですけれども。

 

「"のぶながは"何をやっておるのだ」。

 

だから伊丹ファンとしては"のながは"って言いたくないんですよ。

""にアクセントをどうしても付けたくないんで、ちょっと抵抗しまして。

 

一応またテイク2になったときにも「"のぶながは"何をやっておるのだ」って言ったらまたブーってなって。(場内笑)

 

「ごめんなさい、今また"のぶながは"って言ったんですけれども、"のながは"でお願いします。時代考証的にも"のなが"じゃないとダメなんです。」というふうに言われたんですが、僕は「いや伊丹さんはたぶん"のぶながは"って言ってたんで」と言いたいんですけれどもちょっと言える感じじゃなくて。(場内笑)

 

伊丹さんは全然スタッフでもなんでもないんで、我慢しなきゃいけなくて。でもテイク3になったときにまた「"のぶながは"何をやっておるのだ」。またブーッとなりまして、「お願いですから、"のなが"で...」(場内笑)

 

で、もう伊丹さんに心の中で「ごめんなさい」って謝りつつ、心では"のぶなが"と言いながら"のなが"と言う、そういう難しい手法を取りまして、その場を切り抜けたというのを覚えております。

 

僕は伊丹さんが大好きです。だから、伊丹さんの名前のついたこの賞をいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。

 

今僕は映画を4年ぶりに撮っています。現場ではモニターを見てそこから目を離さないようにしています。若いスタッフには必ず耳を傾けるようにしています。

伊丹さん、どうもありがとうございました。

(場内拍手)

 

宮本信子館長のご挨拶

 

今日はお暑い中大勢のお客様にいらしていただきまして、本当にありがとうございます。

もう昔々の話なんですけど、伊丹さんはある時期、三谷さんと本当に濃密な時間を過ごしました。若くて才能のある三谷さんから刺激を受けて、そしてものすごく楽しそうに嬉しそうに話していた姿を私、覚えております。

 

それからもう何十年経ちました。

 

 

s-_DSC9601.jpgご挨拶をする宮本信子館長

 

 

今日は、この賞のおかげで三谷さんとまた再会することが出来て、伊丹さんも本当に喜んでいると思います。三谷さんおめでとうございました。(場内拍手)

 

記念館にいらしたら、伊丹さんの家みたいなものですので、ぜひ遊びにいらしてください。そしたら、なんて伊丹さんは嬉しいんだろうなぁって思います。

ありがとうございます。

 

では、第15回伊丹十三賞、三谷幸喜さま、これからのますますのご活躍をお祈りいたしまして、そして何度も言っても良いです、おめでとうございますと乾杯をしたいと思います。

 

乾杯!(乾杯後、場内拍手)

 

 

s-_DSC9622.jpgかんぱーい!

 

s-_DSC9630.jpg笑顔で乾杯をする三谷さんと宮本館長

 

----------------------------------------------------------------------------------

 

以上、贈呈式の様子をご紹介させていただきました。

 

s-_DSC9672.jpg左から周防正行さん、南伸坊さん、宮本信子館長、

三谷幸喜さん、平松洋子さん、中村好文さん

 

三谷さんのスピーチの間、会場で何度も笑いが起こり、ご来場の皆さまはとても楽しそうにスピーチを聞いていらっしゃいました。伊丹さんとの出会いやエピソードについてお話しくださり、伊丹さんのことを本当に大好きでいてくださっていることが伝わってくる温かいスピーチでした。この度の受賞を大変喜んでくださっているのがひしひしと感じられる時間となりました。

式典後には、ノンアルコールのお飲み物をご提供させていただきまして、ご歓談の時間を設けさせていただきました。和やかな雰囲気で皆さま歓談のお時間を過ごしておられました。

 

s-IMG_1930.jpgご歓談の時間での1枚。

三谷幸喜さん、第1回受賞者・糸井重里さん、第14回受賞者・小池一子さん

選考委員の皆さま、宮本信子館長

皆さまとっても良い笑顔です!

 

s-_DSC9719.jpgお庭で撮影した集合写真

 

三谷さん、選考委員の皆さま、ご来場くださった皆さま、YouTube配信にてご覧くださった皆さま、関係者の皆さまに厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

 

スピーチでもお話がありましたとおり、三谷さんは最新映画作品の撮影をしている最中とのこと、これからの三谷さんのご活躍にもぜひご注目ください。

そして、今後とも、伊丹十三賞をよろしくお願いいたします。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

今回の記念館便りの写真は、撮影:池田晶紀さん(株式会社ゆかい)、

撮影協力:株式会社ほぼ日のみなさんです。

 

学芸員:橘さくら

2023.09.11 第15回伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました【その1】

各メディアで報じていただきましたのでご存知の方も多いと思いますが、去る9月1日(金)、国際文化会館で伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました。

2230911-a.jpg

贈呈式直前のステージ

 

20230911-b.jpg会場入り口


第15回を数える伊丹十三賞の受賞者は、脚本家・三谷幸喜さんです(プロフィールや受賞者コメントなどの詳細はこちらをご覧ください)。

photo.jpg

三谷幸喜さん

記念館便りでは、今週と来週の2回に分けて贈呈式の様子をレポートさせていただきます。

 

---------------------------

贈呈式は、進行役を務める玉置泰館長代行の挨拶に始まり、この度の受賞者・三谷さんと受賞理由が紹介されました。その受賞理由は

「つねに企みをもちながら、脚本、演出、エッセイ、コメンテーターなどの仕事に取り組み、独自の境地を切り拓いた予測不能の才能にたいして。」です。

続いて選考委員の4名と宮本信子館長の紹介があり、選考委員のおひとり・南伸坊さんから祝辞が贈られました。

祝辞・選考委員の南伸坊さんより

三谷さん、伊丹十三賞おめでとうございます。そしてありがとうございます。これでまた、伊丹十三賞がさらにひと回り大きくなりました。

私は三谷さんに、これまでもいろいろなシチュエーションで笑わせていただきました。私は笑うことが大好きなので、笑わせてくれる人が大好きです。

ドラマで、エッセイで、インタビューや対談の受け答えで、テレビのコメンテーターとして。あるいは映画の宣伝のときでさえ、三谷さんは、どんなときにも工夫して必ず面白いことを言って笑わせてくださいます。

素晴らしい! ――ことです。(場内笑)

20230911-a.jpg

祝辞を贈る南伸坊さん

 

笑うっていうのはなんでこんなに楽しいのか。面白いっていうのはどういうことなのでしょうか。

私たちは、わかりきった話はつまらないです。同じ冗談を続けて何度もされると少しムッとします。かといって、難しくて立派なわからない話も面白くないです。
わからないからです。

私たちはどんなときに面白いと思い、笑うでしょうか。私が思うには、すでにわかっていると思っていたことが覆されるときだと思います。言い換えると、わかっていたことをわかり直したときに脳みそが喜ぶのではないか。わかっていたことをわかり直して、深くわかる。笑っているとき、私たちは何らかの発見をしているのではないでしょうか。その喜びが、笑いになっているのではないか、と私は思います。

「我々はごくくだらないことで笑っている」と思う方もおられるでしょう。「ごくくだらないことは、発見ではないだろう」と、私は思いません。
「なんだかよくわからないことでも我々は笑う」と思う方もおられるでしょう。「なんだかよくわからないのでは、そもそも発見ではないだろう」と、私は思いません。

すぐにはわからない発見が我々にはあると思います。むしろ、もっともらしくて誰もがすぐ了解できるようなことではない、よくわからない発見が、少しずつ積み重なっていく――ようなことがあるのではないか。だから私は、どんな " くうだらない " ような笑いの話も、実は何らかの発見を伴っているのではないかと考えているのです。


_DSC9518.jpg" 笑うこと " について話す南さん【※】


とにかく私たちは笑うことが大好きで、笑わせてくれる人が大好きです。三谷さん、これからも、みんなを、私を笑わせてください。よろしくお願いいたします。(場内笑)

伊丹さんもきっと喜んでおられると、私は思います。
おめでとうございます。(場内拍手)


---------------------------

南さんの祝辞を、ところどころ「ウン、ウン」と頷きながら熱心に聞いておられた三谷さん。

「笑わせてくれる人が大好き」という、祝辞の中に2回登場したこの " 笑わせてくれる人 " である三谷さんは、続く受賞者スピーチでユーモアあふれるお話を披露してくださいました。
そんな三谷さんのスピーチ等々、続きは来週をお楽しみに!

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

【※】の写真は、撮影:池田晶紀さん(株式会社ゆかい)、
撮影協力:株式会社ほぼ日のみなさんです。

スタッフ:山岡

2023.09.04 新しい理髪師

残暑とは名ばかりの大変暑い日が続いておりますが皆さまはいかがお過ごしでしょうか。

 

記念館では夏休みの間、お子様連れのご家族や、久しぶりに松山に帰省された親戚同士、ご旅行でのグループなど、たくさんの方がご来館くださり、皆さまが新しい企画展示を楽しんでくださいました。

 

さて、記念館にはオリジナルグッズを販売しているショップがございます。新しい企画展示が始まりまして、「最近、なんだかこれが売れるな...」と思いましたのが、ゴム印です。中でも、"新しい理髪師"のゴム印を特に見るようになりました。

"新しい理髪師"とは、書籍『女たちよ!』の中にある「鬚を剃った魚の話」の挿絵で、猫が剃刀をといでいるところを描いたものです。

 

s-DSC_5039.jpg新しい理髪師のゴム印

 

人気のあるエッセイですが、何故最近お客様がよくお買い上げくださるのだろうかと不思議に思っておりましたところ、とあるお客様が「展示室の中で見て気に入ったんです」とお話しくださいました。

たしかに、こちらの挿絵は企画展示室で原画をご覧いただくことができます。壁面のプリントには白いエプロンをして椅子に座っている魚がプリントされています。もともとユニークな絵を描く伊丹さんですが、その中でも特に皆さまの目に止まり、気に入っていただけるようです。

 

s-DSC_5042.jpg「鬚を剃った魚の話」挿絵原画

 

 

s-DSC_5043.jpg壁面プリントの白いエプロンをした魚

 

 

イラストを気に入っていただけた方にはぜひ、エッセイも読んでいただきたい!

ということで、「鬚を剃った魚の話」から、こちらの挿絵について書かれている箇所をご紹介させていただきます。

 

 

 ある時、彼がごく不思議そうな顔で、これはなんだという。見ると手に「削り節」の箱を持っている。

 つまりそれは固く干しかためたマッカレルを機械で削ったものさ、と説明すると彼はいきなり気が狂ったように笑い出した。

「だって、この箱には鬚を剃った魚と書いてあるぜ」

 そういってますます笑い転げるのである。私も仕方なく少し笑ったが、つまりこういうことなのだ。

英語で、鉋の削り屑を「シェイヴィング」という。鉋で削ることを「シェイヴ」という。それ故に――と鰹節屋の大学生の息子は考えたに違いないのだ――削られた魚は「シェイヴド・フィッシュ」であるに違いない、と。

語学において三段論法を適用する過ちはここにある。「シェイヴド・フィッシュ」はあくまでも鬚を剃った魚であって「削り節」にはならない。

強いていえば「フィッシュ・シェイヴイング」でもあろうか。これでも魚の鬚剃り、という印象を免れない。

「シェイヴド・フィッシュ」は彼によほど強い印象を与えたに違いない。彼は私に「シェイヴド・フィッシュ」の絵を描いてくれと子供のようにせがむのであった。

 仕方なく、私は大きな魚が白いエプロンをして理髪店の椅子にかけている絵を描いてやった。魚は小さな眼で天井のほうを見ている。あるいはうたた寝をしているのかも知れぬ。そうして手前のほうには白い上っ張りを着て、鼻のまわりが妙に黒い、顔の長い猫が革砥で剃刀をといでいるのだ。

 なんとなく不吉な気配のみなぎる、気味の悪い絵ができあがった。彼は大いに喜んで、この絵に「新しい理髪師」という題をつけた。

(『女たちよ!』より「鬚を剃った魚の話」p42-44)

 

削り節の箱に書かれた「シェイヴド・フィッシュ」から生まれたエッセイと挿絵、お楽しみいただけましたでしょうか。挿絵の原画は新企画展にて展示されておりますのでぜひご来館の際にはご注目ください。

また、冒頭にご紹介させていただきましたゴム印はオンラインショップでも取り扱っております。その他にも絵柄がたくさんございますのでお好きなものを見つけてみてください。

 

去る9月1日に東京・国際文化会館にて第15回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました。

式典の模様のレポートは、来週・再来週の2週に分けて更新させていただきます。

お楽しみに!

 

 

s-IMG_5079.jpg

 

学芸員:橘さくら

2023.08.28 マグネットもおすすめです

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

8月23日は二十四節気でいう「処暑」でした。厳しい暑さが峠を越す頃だそうですが、昼間はまだ気温の高い日が続いています。朝晩の気温差が大きくなってくる時期でもありますので、お体にはお気をつけてお過ごしください。

さて、記念館では新企画展『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』展が始まり、同時に記念館のショップでは、書籍『伊丹十三の台所』(つるとはな)の販売を開始しました。
企画展と書籍を合わせてお楽しみいただくと、「食べること、作ること」を楽しむ伊丹さんをより堪能できると思います。ぜひ両方をご覧になってみてくださいね。

ところで、記念館のショップには『伊丹十三の台所』以外にも、新企画展をご覧になった方におすすめの商品があります。
記念館オリジナルグッズの一つ、マグネットです。

20230828-2.jpg

ショップのマグネット売り場。
税込330円/個で販売中です。

企画展に合わせて作られた...というわけではないのですが、冷蔵庫に簡単なメモやチラシなどを貼るもの、というマグネットのイメージから、プリントされているのは「食」に関する伊丹エッセイの挿絵となったイラストばかりなのです。もちろん、伊丹さん自身が描いたものです。

20230828-3.jpg

マグネット全5種類。
詳細はコチラ

 

そして、このマグネットのイラストは企画展示スペースの壁面にもプリントされていて、新企画展の中でもご覧いただくことができるんです(同じ壁面には上記以外の伊丹さんのイラストもあります。ぜひ現地でご覧ください)。

20230828-1.jpg

新企画展の壁面

 

「伊丹十三記念館で新しい企画展を見てきたよ!」という記念にぴったりのマグネットを、ご来館の際は手に取ってみてくださいね。

スタッフ:山岡

2023.08.21 新企画展へのご感想は「みなさまの声」でチェックしてください


記念館便りをご覧の皆さまこんにちは。


伊丹十三記念館ホームページでは、記念館を訪れてくださった皆様に館の感想をお聞きし、当サイトをご覧の方々に、記念館の雰囲気の一端を感じていただこうというコーナー「みなさまの声」を毎週金曜日に更新しています。



みなさまの声は   こちら  から



7月15日から開始した新しい企画展『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」展』へのご感想もぞくぞくとお寄せいただいております。



当館の館長・宮本信子が建築家の中村好文先生に記念館建物の設計を依頼する際、「伊丹さんの家みたいにしてね」とお願いしたことは記念館便りでも何度かご紹介させていただいたかと思いますが、まさしくこの度の企画展は伊丹家の台所に遊びに来たような感覚で、「伊丹さんにそんなに詳しくない」とか「旅行で松山に来ただけ」という方にも、気負わずに楽しんでいただける展示ではないかと思います。



「みなさまの声」を拝見しても、そのようなご意見が目立ちます。



是非、気軽なお気持ちで新しい企画展を見にご来館くださったらと思います。そして「みなさまの声」にご意見いただけましたら幸いです。


s-「伊丹十三の台所」表紙(帯あり).jpg
「伊丹十三の台所」も絶賛発売中



スタッフ:川又

2023.08.14 デンマークの伊丹十三

みなさま、残暑お見舞い申しあげます。


イヤハヤ暑い、「スーパー・エルニーニョ」だの「フェーン現象」だのと言われると余計に暑い、日本中が暑いと聞くともはや八方塞がりの感......


その一方、朝夕の日差しの加減などから暑さが徐々に和らぎゆくのも感じる、今日この頃の松山です。

エー、前回、新企画展の開始とともに「常設展示室の『七 料理通』のコーナーもリニューアルしましたヨ」とお知らせ申しあげましたが、皆様、もうご覧くださいましたでしょうか?

20230717_permanentA.JPG「えっっ、変わってたの? 気付かなかった!」はナシですよ~~
受付でお渡しする解説とともに、じっくりご覧ください。

たまたま、と申しますと何ではございますけれども――今回はじめて展示にかけた伊丹十三の愛用品で、デンマーク製の生活用品がふたつあります。

どれがそうかはご来館の際に展示室でご覧いただきたいので今は詳細を控えさせていただきますが、お客様の中には「アラ、伊丹さん、北欧デザインがお好みだったのかしら?」とお思いになる方もいらっしゃるかもしれません。


特に好んだという確証はございませんが、素材を生かした平面と曲面の絶妙なバランス、シンプルでいながら飽かず眺めていられそうなフォルムのそれらは、いかにも伊丹さんが気に入りそうな姿をしているなァ、と感じます。

で、特別に好んだかの確証はないなりに、伊丹さんとデンマークのかかわりをご紹介いたしますと、TVシリーズ『世界の学校』(全3回/1975年10月-76年3月/朝日放送)でデンマークの学校における性教育を取材したのが大きな契機であったと言えましょう。

この番組での経験はエッセイにもなっていまして、次のように書き残されています。

(まことにおおらかでオープンな性教育の授業風景の描写に続いて――)

 なんでも実地に見てみないとわからぬものだと思ったのは、性教育は、子供たちにとって、当然のことながら、まず親の物語なのである。そうして、それが同時に、なぜ自分がこの世にあるかということへの答えになっている。これはなかなか大変なことである。子供が親の性を知るということは、タテマエとしての親の消滅を意味する。親子関係の根底に横たわるうそがとっぱらわれ、親の権威が消滅してしまうと、親は当然、一個の赤裸々な人間として子供と向かい合うという結果にならざるをえない。性教育は、実に社会を根底から変えるような副次的な効果を持つのである。

(中略)デンマークの性教育を見ていて感動的なのは、先生も生徒も非常に自然だということである。性について話していながら、道学的なところが一切ない。陰湿な点、犯罪めいた点、話してはならぬことを話しているという雰囲気が一切ない。
 先生は、まるでスポーツ選手のように、フットワークも軽々と教室中を動きまわる。生徒たちも先生の名を呼び捨てである。全体に、管理する者とされる者という雰囲気がまるでない。教師対生徒という上下関係とは全く別なところで信頼が成り立っているように思われる。おそらく、遠い昔、デンマークの先生は、権威を捨てて自由と平等をとったのだろう。管理を捨ててコミュニケーションと友情をとったのだろう。


「デンマークの性教育」『ぼくの伯父さん』(つるとはな)より

1970年代の初めからテレビドキュメンタリーに携わるようになった伊丹十三の取材先は、70年代半ばには海外にも及ぶようになり、行く先々で日本社会の変テコさを痛感しきりであったようです。


上に引用したエッセイでは「日本では、いかに管理されやすい人間をつくるかが教育の最大の目的であり、学校は、いきおい管理社会のヒナ型とならざるをえない。学校の授業もまた『出席をとる』という、実に、この上なく管理的な作業から出発する」とも書かれています。


修業期間にある子供が身近にいない私には、今の日本の学校教育がどのようであるか、幾分かは変わることができたのか、具体的なところは分からないのですが、新学期が近付くにつれつらい気持ちに陥る子供のいない社会になるように、一市民として努めてまいりたいと思います。

20230814_haguro tombo.JPG川や林に近い記念館にはいろんな虫がやってきます。
黒い姿・ヒラヒラとした飛び方がエレガントなこちらのトンボは
「ハグロトンボ」というそうです。他地方からご来館くださるお客様には
このような四国・愛媛の自然もお楽しみいただけましたら嬉しいです。

学芸員:中野

2023.08.07 オーブン付きガスコンロ

8月に入り、大変暑い日が続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。ほんの少しの時間でも、太陽の光を浴びているだけで体調不良になりそうな日々ですので、皆さま熱中症には十分ご注意くださいませ。

 

私ごとではございますが、8月1日より学芸員の肩書きをいただきました。まだまだ至らぬ点も多く、勉強の日々ではございますが、少しでも早く専門的な知識を吸収し、皆さまのお役に立てるよう精進してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

 

7月15日よりスタートいたしました新企画展示『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』、ご覧になった方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

新聞やテレビで新企画展示について取り上げていただき、7月中は「新聞で見ました!」「昨日のニュースで見ました!」とお声掛けくださるお客様がたくさんいらっしゃいました。

 

s-IMG_4841.jpg展示室入口のタイトル

 

食をテーマにしている今回の企画展示では、伊丹さんが実際に使っていた愛用品が「食べたり、」「呑んだり、」「作ったり」のコーナーに分けて、数多く展示されています。うつわやカトラリー・調理器具の他、イラストの原画や生原稿、映像資料なども展示されていて、ボリュームのある企画展示となっております。くわしくはぜひこちらのページをご覧ください。

 

見どころ満載の新企画展示となっておりますが、今回の記念館便りでは展示品の中でもかなり大物にあたります、オーブン付きガスコンロをご紹介させていただきます。こちらのガスコンロはアメリカのマジックシェフ社のもので、4口コンロの下にオーブンが付いている代物です。

 

s-IMG_4962.jpg

s-IMG_4956.jpg4口のガスコンロ

 

 

s-IMG_4957.jpgオーブンの扉部分

 

「どこかで見たことがあるような......」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。こちらは1973年に移り住んだ湯河原の自宅で実際に使用されていたガスコンロです。湯河原で撮影されたCMや映画に映り込んでいたものですので、そちらでご覧になった方が多いと思われます。

 


s-osoushiki.jpg映画『お葬式』の冒頭、台所が映るシーン

少し見えにくいのですが、中央にあるのがガスコンロです。

 

当時でもオーブンの付いたガスコンロは珍しかったそうで、食にこだわる伊丹さんならではの展示品となっております。お客様に間近で見ていただけるのは初めてのことですので、お手を触れていただくことは出来ませんが、ぜひじっくりご覧いただけますと幸いです。

 

最後に、オーブンについてのお話が出てくるエッセイを2つご紹介させていただきます。(伊丹さんは、エッセイの中でオーブンを「オヴン」と表記するこだわりも見ることが出来ます。)

 

 さて、ロースト・ビーフから血をしたたらせるにはどうすればよいか。イギリスのある俳優からきいたこつを書いておく。

 順序を追っていうなら、ロースト・ビーフ用に縛った肉に、串でたくさん穴をあけ、小さく刻んだ大蒜をつめる。表面に塩、胡椒をふりかけ、マスタードの粉をすりこむ。次にサラダ・オイルをかけて、あらかじめ強火にしたオヴンに入れる。オヴンに入れる時間は肉の大きさによって異なるが、大切なのは最後の十五分間くらいの間、オヴンの扉を十センチばかり開けておくことである。

 これによって、外へ発散しようとしていた血が全部肉の中へ逆戻りするから(なぜかは知らぬ)うまい具合いに「血のしたたるような」ロースト・ビーフができあがるのである。

(『女たちよ!』より「血よ、したたれ!」)

 

 料理は今やできあがろうとしている。人数分のお皿を温いオヴンにほうりこむ。テーブルにテーブル・クロスをしく。ナイフとフォークを並べる。ナプキンを置く。――サア皆サン、席ニツイテクダサイーーパンとバターと葡萄酒とグラスを出す。台所へひきかえしてオヴンから温いお皿を出し料理をつぐ。――およそ料理をしたことのある人ならだれでも知っているだろう、心の浮き立つような一瞬である。

(『女たちよ!』より「温められた皿」)

 

オーブンを使用していたことが伺えるエッセイを2つをご紹介させていただきました。展示されているオーブン付きガスコンロは、『女たちよ!』の出版よりも後に湯河原に導入されたものですので、実際にこのオーブンの付きガスコンロを使用して書かれたエッセイではないのですが、少しでも雰囲気を感じていただけますと幸いです。

 

映画に映っていたもの、エッセイに書かれていたものが実際に展示され、一つの展示品をいろいろな角度から楽しむことが出来る今回の企画展示。ぜひこの夏休みを利用してご来館ください。

 

※8月15日は火曜日ですが、お盆期間ですので通常開館しております。

詳しくは開館カレンダーをご覧ください。

 

学芸員:橘

2023.07.31 期間限定メニューはじめました

記念館便りをご覧の皆さま、暑中お見舞い申し上げます。
毎日毎日本当に厳しい暑さが続きますね!くれぐれもお体を大切にしてお過ごしください。

0731-1.jpg夏の中庭の桂。
少なくとも10匹以上の蝉がとまっていて、
暑さにも負けず大合唱していました

 

さて、ここ伊丹十三記念館では、臨時休館明けの「7月15日からスタートしたもの」がいくつかあります。

伊丹さんの生誕90年を記念した特別な企画展『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』展が始まり、伊丹さんに関連した新刊2冊――『テレビマン伊丹十三の冒険 テレビは映画より面白い?』(東京大学出版会)『伊丹十三の台所』(つるとはな)――を記念館ショップで販売するようになりました。

それぞれ記念館便りでもご紹介させていただきましたが、記念館のカフェ・タンポポでは同じく7月15日から「豆乳ブルーベリー」が始まりましたので、こちらもお知らせいたしますね!

0728-2.jpg

豆乳ブルーベリー(税込700円)

豆乳ブルーベリーは、毎年夏に始める期間限定メニューです。

ブルーベリーと豆乳をミックスしたシンプルなドリンクで、ロンググラスに注いだ紫色のドリンクの上にミントの葉っぱを添えてお出しします。
ほどよく合わさったブルーベリーの酸味と豆乳のまろやかさをお楽しみいただけますよ。

ありがたくも毎年大変ご好評をいただいていて、今年も、さっそく飲んでくださった方から「おいしい!」とのお声をいただいています。

ご来館の際はぜひご賞味くださいませ。

スタッフ:山岡

2023.07.24 第15回伊丹十三賞の受賞者が決定いたしました


みなさんこんにちは。

7月13日(木)、第15回の伊丹十三賞の受賞者を発表いたしました。
第15回の伊丹十三賞は、脚本家の三谷幸喜(みたに・こうき)さんにご受賞いただくこととなりました。


230724.jpg

【三谷幸喜さんプロフィール】
1961年、東京都出身。
日本大学藝術学部演劇学科在学中の1983年に「劇団東京サンシャインボーイズ」を結成。
「振り返れば奴がいる」(1993)で初の連続ドラマ脚本を担当。その後、「古畑任三郎」シリーズ(1994~)、「王様のレストラン」(1995)などが次々と大ヒットを記録。
1994年に人気絶頂期の劇団は30年の充電期間に突入。以降はプロデュース公演形式で数多くの作・演出舞台を発表している。
また、「ラヂオの時間」(1997)から「記憶にございません!」(2019)に至るまで、脚本・監督を務めた映画は海外でも人気を博している。
2022年には、「新選組!」(2004)、「真田丸」(2016)に続く3作目のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を手がけ大きな話題を集めた。



【授賞理由】
つねに企みをもちながら、脚本、演出、エッセイ、コメンテーターなどの仕事に取り組み、独自の境地を切り拓いた予測不能の才能にたいして。
伊丹十三賞選考委員会



【受賞者コメント】
どんなジャンルの仕事でも、「笑い」の要素を大事にし、常に人に楽しんで貰いたいと思ってやってきました。そして、ものごとを一面ではなく、様々な観点から見ることの大切さも忘れないようにしてきました。それって、すべて伊丹さんから教えて頂いたことなんです。
伊丹十三さんと出会えたことは僕の何よりも宝物です。僕の三分の二は伊丹さんから教わったもので出来ていると言ってもいいくらい。今回、こんな素敵な賞を頂いて、ちょっとだけ伊丹さんに褒めて頂いたようで、感謝の思いで胸がいっぱいです。



※伊丹十三賞概要や歴代の受賞者はこちらから↓
 https://itami-kinenkan.jp/award/index.html


※特設ページも是非ご覧ください。↓
 https://itami-kinenkan.jp/award/award15.html



さて、ここでそもそも「伊丹十三賞」って何??という方に、伊丹十三賞についてご説明させていただきます。


伊丹十三賞とは伊丹十三記念館の運営母体である「公益財団法人ITM伊丹記念財団」から、毎年、" あらゆる文化活動に興味を持ちつづけ、新しい才能にも敏感であった伊丹十三が、「これはネ、たいしたもんだと唸りましたね」と呟きながら膝を叩いたであろう人と作品 " に贈らせていただいている賞です。



贈呈式は9月1日を予定しています。
贈呈式の模様は後日、記念館便りにてレポートさせていただきますのでお楽しみに。







スタッフ:川又

2023.07.17 『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』

「みんなで"おじさん"になろう!」を隠しスローガンとして立ち上げた企画展Ⅵ『おじさんのススメ シェアの達人・伊丹十三から若い人たちへ』展、おかげ様で6月26日(月)をもって無事に閉幕いたしました。


会期中、西日本豪雨や新型コロナウイルスの流行など試練もあった展覧会でしたが、『おじさん』展にご来館くださった27,466名のお客様方、お力添えくださった方々に心よりお礼申しあげます。まことにありがとうございました。

20230717_tesshu.JPG最終日、閉館3時間後には見事にカラッポに...
終ってしまうとあっけないものですネ...

展示替え工事のための臨時休館期間を経て、7月15日(土)に始まった新しい企画展は、題して『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』。


私生活でも表現活動においても、人間の根幹を支える「食」に深い関心を持ち続けた伊丹十三が「食べること、呑むこと、つくること」をどのようにたのしんできたのか――稀代のエッセイスト・映画監督が追い求めた「おいしさ」の舞台裏をたっぶりと探る展覧会です。

伊丹十三生誕90年記念の特別な展覧会として、企画・構成は、記念館設計者で大の伊丹ファンである建築家の中村好文さん("イタミスト"という言葉まで作って自称!)、そして、伊丹エッセイの文庫の復刊・伊丹十三に関する書籍(『伊丹十三の本』『伊丹十三の映画』『ぼくの伯父さん』『伊丹十三の台所』)の刊行に携わった松家仁之さんが共同で行ってくださいました。

20230717_tabetari.JPGまるっと様変わり! 展示デザインと
展示品セレクトも by 中村好文さん、です!

宮本館長とご次男・池内万平さんの全面協力も得て実現した、豪華メンバーによる濃厚な企画展、多くの方にご覧いただけるよう5年間の開催を予定しております。
長い会期となりますので、展示のお楽しみポイントは今後じっくりご紹介していきますね。

20230717_coverage.JPG開展前日の7月14日には内覧会を開催、
県内の新聞・テレビ・ラジオの皆様が
ご取材・ご見学にお越しくださいました。

満腹必至あるいは腹ペコ必至の企画展『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』、皆様のお越しをスタッフ一同お待ちしております。


「5年もやるなら今度でいいや~」と思ったそこのアナタ!光陰矢の如しと申しますから、お見逃しのないようご注意くださいませね。

それから、常設展「七 料理通」のコーナーの展示品が企画展のほうへ多数"出張"しましたので、新たな展示品を追加いたしました。こちらもどうぞお楽しみください。

20230717_permanentB.JPGBefore

20230717_permanentA.JPGAfter

学芸員:中野

2023.07.10 『伊丹十三の台所』発売

7月に入り、本格的な暑さになってまいりましたが、皆さまどのようにお過ごしでしょうか。

 

さて、先週に続きまして、本日も出版書籍のご紹介です。記念館でも販売しております『ぼくの伯父さん』を刊行している出版社つるとはなより、新刊『伊丹十三の台所』が6月30日(日)に発売されました!

(つるとはなホームページ内、『伊丹十三の台所』のご案内はこちら

 

 

s-「伊丹十三の台所」表紙(帯あり).jpg

 

 

記念館の常設展示室でもご紹介しております通り、伊丹さんは13の顔のうちのひとつに「料理通」という顔を持っていました。食べることも作ることも楽しんでいた「料理通」の伊丹さんのことを、より深く知ることの出来る内容の書籍となっております。

 

 

s-IMG_4783.jpg

 

伊丹さんが実際に使用していた愛用品がカラー写真で多数掲載されており、記念館で収蔵しておりますお皿や調理器具、急須や徳利など写真でじっくりご覧いただけます。愛用品をより楽しむことの出来るエッセイやエピソードも収録され、このエッセイの挿絵は実際に伊丹さんが愛用していたのか...!という発見も出来ます。

 

また、こちらの書籍には、伊丹さんがエッセイの中で紹介していた料理のレシピも収録されています。料理を実際に作った写真も収録されており、見ているだけでお腹が空いてしまうほど美味しそうな写真が満載です。料理の作り手は伊丹さんに影響を受けた方や、伊丹さんとご縁のあった方で、皆さまのインタビューも掲載されています。

伊丹さんの食に関する話題が盛りだくさんの宮本信子館長のインタビューもあり、ボリューム満点の1冊となっております。

 

食べることや作ること、お酒を吞むことを楽しんでいた、ひとりの「生活者」としての伊丹さんをより身近に感じていただけるかと思います。

 

s-IMG_4780.jpg

 

記念館では、臨時休館明けの7月15日(土)よりショップにて販売を開始いたします。ご来館の際にはぜひお手に取っていただき、ご覧いただけますと幸いです。

 

7月15日(土)より、新しい本の発売、新しい企画展の開始と、新しいことずくめの記念館となっております。皆様のご来館をスタッフ一同お待ちしております。

 

スタッフ:橘

2023.07.03 『テレビマン伊丹十三の冒険』 発売開始!

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

記念館はただいま臨時休館中ですが、この記念館便りは通常通り更新させていただきますので、どうぞよろしくお願いします。

さて本日は、つい先日発売が開始されたばかりの、伊丹さんに関する本についてご紹介いたします。

6月28日(ほんの5日前!)、東京大学出版会より、単行本『テレビマン伊丹十三の冒険 テレビは映画より面白い?』が発売されました。

9784130530323m.jpg

そのタイトルにある通り、伊丹さんが持っていた多くの「顔」のひとつ、「テレビマンの伊丹さん」について書かれている本です。

著者は今野勉(こんの・つとむ)さん。テレビ番組制作プロダクション・テレビマンユニオンの創立メンバーのおひとりであり、現在は最高顧問をされています。

旅番組『遠くへ行きたい』、歴史ドキュメンタリー『天皇の世紀』、ドキュメンタリー・ドラマ『欧州から愛をこめて』......など、伊丹さんといっしょに数々の番組の制作に携わった方です。この『テレビマン伊丹十三の冒険』では、そんな " 盟友 " である今野さんの視点で「テレビマンの伊丹さん」の姿が綴られています。

また、この本の執筆にあたり、今野さんは多くの番組映像――例えば上述の『遠くへ行きたい』『天皇の世紀』など――から伊丹さんの語りを文字に起こし、本を読まれる方が伊丹さんの「語りかけ」を体感できるようにされたそうです。掲載された書き起こしを読むことで、その時の伊丹さんや現場の雰囲気などがより感じられるのではないでしょうか。

実は記念館もご縁があり、2017年4月に開催された第8回伊丹十三賞の受賞記念イベントで、今野さんは、受賞者である是枝裕和さんと「伊丹十三とテレビ」というテーマで対談をしてくださいました。その時の模様もこの本に収められているんですよ。

記念館では、臨時休館明けの7月15日より販売を開始いたします。本はもう記念館に届いていて、ショップで皆さまにお目にかかるのを待っています!
ご来館の際はぜひお手に取ってご覧ください。

0703-1.jpg

0703-2.jpg

スタッフ:山岡

2023.06.26 蝋梅の植樹


記念館便りをご覧の皆さまこんにちは。
去る5月30日、松山が梅雨入りした翌日に、伊丹十三記念館の庭に蝋梅(ロウバイ)を植樹いたしました。

蝋梅とは、この辺りでは、ちょうどお正月ごろに黄色い花を咲かせる落葉樹です。
その名の通り、蝋で作ったような質感の花が咲きます。
雨の中、トラックの荷台に乗せられ、全長3、4メートル程ある立派な蝋梅が記念館に到着しました。

s-IMG_4435.jpg

植え付けする位置は伊丹十三記念館の設計を手掛けて下さった中村好文先生と、当館の宮本信子館長の二人が以前来館した際に相談し、決まっていたのです。

記念館の玄関のすぐ正面の南側の場所です。現場で細かい位置や向きを決定しました。


s-IMG_4451.jpg
遠くからも確認をして決定したのち、


s-IMG_4448.jpg
その場所の土を掘り起こして


s-IMG_4462.jpg
s-IMG_4466.jpg
掘った穴の底には水はけを良くするパーライトを敷き詰めます。


s-IMG_4468.jpg
そうして、掘り起こした土に土壌改良効果のあるバーク堆肥を混ぜ...


s-IMG_4469.jpg
その後、掘った穴に蝋梅を入れ...


s-IMG_4475.jpg
バーク堆肥と混ぜた土を戻し...


s-IMG_4480.jpgs-IMG_4500.jpg
無事、植樹が完了しました。

s-IMG_4527.jpg
ちなみに植樹の1時間ほど前の記念館。


s-IMG_4396.jpg
植樹後の記念館。


s-IMG_4528.jpg

全体で見ると、植えたばかりとは思えない、16年前からここにあったような佇まいです。

足元も表面の芝をまるでパズルのように綺麗に元に戻してくださっており、違和感0です。


s-IMG_4537.jpg

後日、晴れた日の蝋梅。


s-IMG_4551.jpg

実もついててかわいいです。


s-IMG_4575.jpg



蝋梅の花言葉は「先導」「先見」「慈しみ」「優しい心」「愛情」「慈愛」「ゆかしさ」だそうです。花が咲く冬が来るのが楽しみです。
ご来館の際には新入りの蝋梅も是非ご覧ください。





6月27日(火)から7月14日(金)まで、
伊丹十三記念館は 臨時休館 いたします。





スタッフ:川又

2023.06.19 企画展の終了と臨時休館につきまして

あれはたしか記念館の裏手で、先週末のことだったでしょうか――
私の頭上を一匹の虫がバタバタと飛んで行くのを見て「ああ、セミだな」と思いました。「気の早いこと、まだ梅雨も明けないうちからセミの合唱を聞かされるのか」とも。
しかしそれから声は聞かれず......ハテ、あれをセミと思ったのは見間違いだったのか、ウッカリと早すぎる羽化をやらかしてしまった一匹のセミとの、たまさかの邂逅であったのか......

毎年夏、館の庭じゅうの木に「セミの縦列駐車」がこしらえられるのは、ひそかな記念館の風物詩。ですが、2階建ての建築の真ん真ん中にある中庭の桂までもがセミでいっぱいになるのは不思議でなりません。セミって案外と高く飛べるものなんでしょうかねえ。

20200817_cicada.JPGこちらはセミの"羽化ラッシュ"の模様です
(2020年7月下旬・記念館の中庭にて)

さて皆さん、ニュース欄や開館カレンダーでご案内しておりますが、本日はあらためて重大なお知らせを申しあげます。

「男も女も1億総おじさん化!」を目標に続けてきた『おじさんのススメ ― シェアの達人・伊丹十三から若い人たちへ ―』展、ちょうど1週間後の6月26日(月)が最終日となります。

「おじさんとは何ぞや」「おじさんになることの素晴らしさ」をまだご存知ない方、まだ「おじさん化」できていない方、「おじさん度」がまだちょっと足りていない方――稀代のおじさん・伊丹十三に学ぶことができるのは、あと1週間でございますよ。
ぜひぜひ、ぜ・ひ、会期中にお越しくださいませ!!

『おじさん』展を終了後は、6月27日(火)から7月14日(金)まで全館臨時休館の期間を頂戴いたしまして、次期企画展への展示替え工事を行わせていただきます。

「展示替え」と聞いて思い浮かべるのは、色々なドキドキワクワクもさることながら、終了した展覧会の陳列資料を撤去して空になった部屋に立った時の、目が回るほどの焦燥感です。

たとえば、『旅の時代』展を終えて――

exhibitionroom_13.jpg

tesshu1208.JPG

こんなふうに企画展示室がカラっぽになったときも、

その次の『ビックリ人間』展を終えて――

bikkuri_ex2015.jpg

tesshu1208.JPG

再び企画展示室がカラッポになったときも、
この部屋をまた展示品でいっぱいにしなくてはならないとは!!
自分の構想した展示空間に仕上げるなんてことが果たして可能なのだろうか!!
と心の臓がバクバクしたものでした。

現在の『おじさんのススメ』展

20230619_ojisan_ex.JPG

も、終わればまたカラッポになるわけですが、今回はもっとバクバクしております......

なにしろ、今ある展示台も壁面も全撤去(あ、併設小企画「伊丹万作の人と仕事」コーナーは残ります、ご安心ください)、これまで以上にカラッポにして次の展覧会を作ることになっているのです。

ということは、ですよ、7月15日(土)からはガラリと様変わりした企画展示室をお楽しみいただけるようになる、ということ――そうなるように、鋭意準備を進めております。
(が、主催館の学芸員としては、半ば更地のようになった企画展示室の景色を見るのがちょっぴり楽しみなような...怖いような......)

次期企画展の詳細は追ってお知らせいたします。ゴージャスなお知らせになること必至、お楽しみにお待ちくださいませ!

わたくしは心臓を鍛えるべく、ハツを食べて頑張ります――!

学芸員:中野

2023.06.12 洗車

6月も3週目、四国地方は梅雨真っ只中となっておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 

記念館では先週、ベントレーの洗車を行いました。普段から埃や虫を払ってはおりますが、カーシャンプーを使用しての洗車は汚れがしっかり落ちるのでとても綺麗になります。ワックスもかけて艶々になったベントレー。ご来館の際は是非ご注目ください。

 

 

 

s-IMG_4583.jpg洗車したベントレー

 

 

s-IMG_4584.jpgエンブレムもぴかぴかです

 

 

 

定期的に洗車をしておりますベントレーですが、その度に思い出してしまうエッセイがございます。それは、ガレージにも書かれております、「猫の足あと」です。

 

s-IMG_4592.jpgガレージに書かれているエッセイ

 

 

 

 私がロータス・エランを赤にしたのは、こいつなら赤でも目立たない、と思ったからでありますが、さらに念を入れるなら、この車はよごれっぱなしのほうがいい。埃や泥はもちろん、小さな引っかき傷や、軽いへこみも、そのままにしておいたほうがいい。

 私の分類では、こいつは、雨具や履物の部類に属する。仕立ておろしのレインコートや、ま新しい靴というのが、どうにも気恥ずかしいものであると同様、車も、ある程度薄よごれた感じのほうが、私には乗り心地がいい。

 ま、そういうわけで、私は自分のロータスを掃除しないことにしている。昨年の暮には、ひと月ばかりガレージにいれっぱなしにしておいたから、実にいい具合いに埃がつもって、その埃の上に猫の足あとなんかついて、ほとんど私の理想に近い、芸術的なよごれをみせるようになった。

 私は、この埃の上に、指で絵を描こうと思った。そうだ!注連飾りの絵を描いて年始に出よう、と思った。

(『女たちよ!』より「猫の足あと」p203~204)

 

 

ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、伊丹さんは汚れた状態の車が好きだったそうです。猫の足あとがつくほど埃がつもっていることを、「ほとんど私の理想に近い、芸術的なよごれ」と称したくらいですから、このエッセイのロータス・エランはよほど気に入った状態だったのでしょう。

そして、このエッセイにはまだまだ続きがあるのです。

 

 

 ところが、だめだったのだな、これが。大晦日の午後、ガレージの扉をあけてみて、私は愕然となった。だれかがガレージを掃除したらしい。すっかり洗いきよめられた、すがすがしいガレージの中に、これまたぴかぴかに磨き上げられた赤いロータスが置いてあった。

 心なき業にこそ! 私は、今またロータスの埃が積もるのを待っている。

 だから、正月になってから、まだ一度も車に乗っていない。

(『女たちよ!』より「猫の足あと」p204)

 

 

なんと、洗車して綺麗になった車には乗らなくなってしまったのです!

エッセイの中では赤のロータス・エラン、記念館で展示しているのは黒のベントレーと、色も車種も全く違うのですが、洗車をしていると「あぁ、こんなに綺麗になってしまったら、伊丹さんは埃が積もるまで乗らないんだろうな...」だなんて考えてしまいます。

 

 

s-IMG_4593.jpg洗車の際はガレージの床まで洗います

伊丹さんのいう「洗いきよめられた」状態です

 

 

 

それでも、洗車をした車体は艶々していて、とても綺麗で...。やっぱり、お客様にはぴかぴかの状態でご覧いただきたいと思うのです。心の中で伊丹さんに謝り倒しながら洗車したベントレー。記念館で実際にベントレーをご覧いただいた際には、エッセイも一緒に思い起こしていただけますと幸いです。

 

 

 

s-IMG_4595.jpg企画展示室出口付近にございます

『ミンボーの女』プログラム

 

 

 

さて、今週は「記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の開催がございます。今月は13日が火曜日で休館日のため、翌日14日の水曜日の開催となります。常設展示室にて13時より『ミンボーの女』を上映いたしますので、ぜひご覧ください。

皆さまのご来館をお待ちしております。

 スタッフ:橘

2023.06.05 ご来館の記念に

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

先月5月15日の開館記念日に、宮本信子館長の開館記念メッセージをこの記念館便りに掲載いたしました。

「5月15日・伊丹十三記念館は16周年を迎えました!」

お客様から「宮本館長のメッセージ読みました!16周年おめでとうございます」と、直に嬉しいお言葉をいただくということもありましたが、そのメッセージの中にこんな言葉があります。

" 私はなかなか行けませんが、何より楽しみにしておりますのが
「みなさまの声」です。
パソコンの文字に挨拶をし、
ありがとう!と返事をしています~~~(笑)大きな声で~~~(笑)"

この「みなさまの声」について、少しご紹介させていただきますね。

記念館を訪れてくださった皆さまに記念館の感想をお聞きし、記念館サイトをご覧の方々に記念館の雰囲気の一端を感じていただけるよう、サイト内に設けられたコーナーのことです。TOPページからアクセスしてご覧いただけます。

0605_1.pngTOPページ右上のところをクリックしてください。

 

 

0605_2.png

「みなさまの声」コーナー

 

スタッフがお渡しする「みなさまの声」用紙に記入していただき、記念館のカメラで撮ったお客様のお写真(撮影・掲載許可をいただいたお客様に限ります)、もしくは伊丹さんの描いた猫のイラストと並べてご紹介しています。
記念館便りをご覧の皆さまの中にも、書いたことがあるという方がいらっしゃるかもしれませんね。

0605_3.jpg「みなさまの声」記入用紙

お寄せいただくお言葉は本当にいろいろで、展示、建物、中庭、カフェで感じたこと、来館したきっかけ、どのように伊丹さんを知ったか――中には伊丹さんを実際に見かけたり話したりしたことがあるなど、伊丹さんに関するちょっとしたエピソードを書いてくださる方もいらっしゃいます。

スタッフがお声がけして書いていただくことが多いのですが、「みなさまの声」のことをもともとご存知で「ぜひ書きたい!」と逆にお申し出いただくこともあります。
皆さまが書いてくださった「みなさまの声」が、別の方の来館のきっかけになることも少なくないんですよ。大変嬉しい " 口コミ " です!

宮本館長はもちろんのこと、関係者・スタッフも楽しみにしている「みなさまの声」を、ご興味のある方はぜひご覧ください。
そしてご来館の際は、ぜひお客様のお声をお聞かせくださいね。

スタッフ:山岡

2023.05.29 桂とヤマボウシを剪定しました


記念館便りをご覧のみなさまこんにちは。
5月ももうすぐ終わりを迎えますが、今年も桂が綺麗です。

個人的には桂は伊丹十三記念館の開館月である5月が一年で一番綺麗だと思います。

2305291.JPG
さて、記念館では2週間ほど前、桂を含め4本の植木の剪定を行いました。
今回剪定したのは、中庭の桂と正面の庭の桂2本と、ヤマボウシです。

前回の剪定が2020年5月だったので、ちょうど3年ぶりの剪定となりました。

お陰様で綺麗に整いました。

2305292.JPGベントレーのガレージ付近の株立ちの桂。大量の「ひこばえ」で重たかった足元が...

2305293.JPG刈り取られ、さっぱりしました。


2305294.JPGビフォー 別角度から。

2305295.JPGアフター すっきり。

2305296.JPGヤマボウシにも、ところどころ徒長したような枝があり樹形が乱れておりましたが、、

2305297.JPG綺麗に整えられました。

2305298.JPG
正面からみても大変美しく仕上がっています。



中庭の桂も夏に向けて枯れ枝や混みあった枝を落とし、風通しが良くなりました。


2305299.JPG


ご来館の際には装いも新たに生まれ変わった木々の姿もご覧ください。





スタッフ:川又

2023.05.22 伊丹十三とキリスト教絵画

先週、所用あって岩手に帰省してきました。5月の下旬を岩手で過ごすのはいつ以来でしょうか。

社会人になってからは年末年始の枯山・雪山の風景ばかり(と、夏の盛りの風景を何度か)眺めていたので、郷里とはいえこの季節の自然の景はもの珍しく、東北新幹線およびバスの車窓に飽かず張り付くこと数時間。

20230522_iwateji.JPG左奥の山の斜面に花を咲かせた桐の木が
...って、見えませんよね(笑)

南部アカマツの林、桐の花、川岸にたたずむキジ......一度のバス乗車で「県の木」「県の花」「県の鳥」の3点セットを拝むことができたのは初めてで、ちょっと感動的な旅路でありましたし、それらに加えて、新緑を携えた白樺の木立、藤の花のフサフサ、ヤマツツジの可憐な彩り、水が入って青空と雲を映す田んぼ、何もかもが清冽かつ素朴でまばゆく、北国の初夏を堪能いたしました。

さて、今回のわたくしの所用と申しますのは、東方正教会の「パニヒダ」のご祈祷を賜るためでありまして、仏教でいうところの法事、と考えていただけばよいと思われますが、"糖飯(とうはん)"なるものをこしらえて参祷者に供する、といったような独特の風習があり――

20230522_touhan.JPG母の力作。ご参祷の皆様からご好評を頂戴して
心から嬉しそうにしておりました。

聖堂の中で甘く味付けした餅米のご飯を食す――やはりどうにも不思議な気分になるものでしたけれども、「お彼岸におはぎを食べるようなものかなあ」とモグモグし、「キリスト教が日本に根付くまで、他国では麦を用いるというこの糖飯のように、あれこれの事柄について、風土に適した様々の工夫がなされたのだろうなあ」などと想像しつつ、イコノスタシスやイコンの数々、蜜蝋の蝋燭の炎と燭台の装飾をしばし鑑賞したのでありました。

キリスト教美術と伊丹十三といえば、こんな一文があります。

 ともかく、すべてよろしいわけでありますが、わけても、イタリーという国は古寺巡礼の国なのだ。絵と教会の国なのだ。
 (中略)行く先々に絵がある。壁画がある。ジオットがある、ダヴィンチがある、ミケランジェロがある、ラファエロ、フラ・アンジェリコ、ティシアン、ティントレットがある。ベスト・メンバー時代きたる! という感じではありませんか。
もっとも、私が一等好きな画家は上記の中にはなく、シモーネ・マルティーニ、ピエロ・デラ・フランチェスカ、ピサネロ、ジェンティーレ・ベリーニ、この四人であります。
 何ゆえ、この四人が好きかというに、いや、わたくしは、絵に関しては全くの素人でありますからして、わたくしのイタリー絵画論なぞは実にインチキきわまるものであるかもしれん。しかし、わたくしとしては、次のように信じているわけだ。
 そこで、何ゆえ、この四人が好きかというに、この四人は、実にいい顔を描く、ということが一つあるな。
いい顔が描けるか描けないかということは、この時代の画家にとっては決定的なことであると思うのです。当時の絵というのは、いわば叙事詩のようなものであるから、まず必要なものは、具体的な描写でしょう。
 次に、あるエピソードを、どういう道具立ての中で物語るかという、つまり視覚化するかという、微に入り細をうがつ想像力が必要になってくるね。
 その点、同じテーマをいろんな画家が描いている、たとえばキリストの降誕とか、受胎告知なんか、これは比べてみると実に面白い。受胎告知の場合、たいがい、マリヤさまが椅子にかけていらっしゃる。右か左に、ひざまずく天使を配し、どこかに必ず百合の花があるわけですが、基本的にはそうなのですが、これは実に千差万別だね。舞台が妙にガランとして、回廊みたいなところだったり、あるいは部屋の中だったり、それにまた、その天使の羽根の生え工合、あるいは衣裳、そうだ、シモーネ・マルティーニのでは、天使の衣裳がタータン・チェックみたいな布地だったなあ。あれなんか、当時としては、実にハイカラな、高級な生地だったのでしょうねえ。

 

「キリストさまたちとマリヤさまたち」

ヨーロッパ退屈日記』(1965年)より

ほぅ...大天使ガブリエルがチェック柄の衣を......と興味がわいて調べてみますと......『聖女マルガリータと聖アンサヌスのいる受胎告知』(1333年)に尋ね当たり......

思わず「あっ!」と声を上げました。



20230522_Martini_Annunciazione.JPG
 
伊丹エッセイのファンの中には「ピーン」ときた方もいらっしゃるのではないでしょうか。伊丹十三賞や記念館のグッズの意匠に用いている"あのエッセイの、あの挿絵"は、このシモーネ・マルティーニの作品を"引用"したものだったようですねえ。

20230522_papamama_tenshi.JPG「天使ハドウシテハダカナノ?」
『問いつめられたパパとママの本』(1968年)より

伊丹十三の著書に登場する人名や作品名をたどってみると、思いがけない発見や「ウム、たしかにイイ!」と嬉しくなるものとの出会いがあります。

「エッセイのその先」も、伊丹ワールドの延長としてぜひどうぞお楽しみください。

学芸員:中野

2023.05.15 5月15日・伊丹十三記念館は16周年を迎えました!

5月15日・伊丹十三記念館は

 

16周年を迎えました!




         

  5月15日は伊丹十三の誕生日です。
  なんと、満90歳になりました!


  どんな日でも、どんな時間でも、
  伊丹さんはずーっと、「やぁ、いらっしゃい」~~と、
  お客様をお迎えしております(笑)


  館内で御覧になっていらっしゃるお客様の反応を楽しんでいる~~~(笑)
  クスクスと笑う声も聞いている~~~(笑)
  そんな気がしております。


  ゴールデンウイークには、多くのお客様にいらしていただき嬉しかったです!
  ありがとうございました。


  私はなかなか行けませんが、何より楽しみにしておりますのが
  「みなさまの声」です。
  パソコンの文字に挨拶をし、
  ありがとう!と返事をしています~~~(笑)大きな声で~~~(笑)


  松山においでたら(松山弁~です~ふっふっふ)
  是非、この記念館にも遊びにいらして下さいませ!
  中庭の桂の木も大きくなりました!見てほしいです~~!


  スタッフ一同、お待ち申しております!
  又、お逢いできますように~~。
  どうかお身体御自愛下さいませ。

        

感謝  

宮本信子

2023.05.08 「午前十時の映画祭13」にて伊丹さんの映画が上映されます

本日は大型連休が明けた月曜日、皆さま、今年のゴールデンウィークはいかがお過ごしでしたか。

記念館ではゴールデンウィークの間、全国から多くのお客様がご来館くださいました。

県内からお越しの方、広島県や香川県など近隣の県からお越しの方、静岡県や長野県など遠方からお越しの方もいらっしゃいました。

「何年も機会をずっと逃していたけど、ようやく来ることが出来ました」「旅行が難しい時期が長かったけど、やっと落ち着いてきたから来れました」と、とても嬉しそうにお話くださり、記念館を楽しんでくださっているお客様が多く、ご来館くださる皆さまから元気を貰ったようなゴールデンウィークでした。

 

さて、いよいよ今週12日(金)から「午前十時の映画祭13」にて『お葬式』、『マルサの女』が全国の映画館にて上映されます。

午前十時の映画祭13」は1年を通し、さまざまな傑作娯楽映画を上映する催しとなっておりまして、全国67劇場でご覧いただけます。各劇場はAとBのグループに分かれており、それぞれ上映期間と作品が異なりますので、お近くの劇場の該当グループをお確かめの上でご覧ください。

 

『お葬式』、『マルサの女』のどちらも映画祭初上映。そしてなんといっても4K版の上映です!こちらの2作品を劇場でご覧になったことがある方も、そうでない方も、より鮮明になった伊丹さんの映画をぜひ劇場でお楽しみください。

※劇場により設備の関係で4K上映ができない場合もあります。ご了承ください。

 

 

〈グループA〉

5月12日(金)~5月25日(木):『お葬式』

5月26日(金)~6月8日(木):『マルサの女』

 

〈グループB〉

5月12日(金)~5月25日(木):『マルサの女』

5月26日(金)~6月8日(木):『お葬式』

 

愛媛県内の上映館はシネマサンシャイン重信でございますので、グループBのスケジュール上映です。

※シネマサンシャイン重信では2K上映となります。

 

ちなみに、「午前十時の映画祭」という名称ですが、開映時間は限定されておらず、各劇場の判断で<午前中の上映開始>となっているそうです。鑑賞料金も異なるそうなので、劇場の公式サイトなどでご確認をお願いいたします。

 

 

s-IMG_4283.jpg記念館でパンフレットの配布もしておりますので

ぜひご覧ください

 

 

s-IMG_4280.jpg「記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の

2023年度スケジュールの配布もございます。

 

また、13日(土)は「記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の開催日です。伊丹十三記念館・常設展示室にて13時より、『マルサの女2』を上映いたします。

企画展示室終わりにございます『マルサの女2』のプログラムや、伊丹さん手描きの『マルサの女』ポスターのラフイメージなど、映画と合わせて楽しめる展示もたくさんございますので、ぜひご来館の際には注目してみてください。

皆さまのご来館をお待ちしております。

 

s-IMG_4284.jpg企画展示室終わりのプログラム

 

 

s-IMG_4285.jpg『マルサの女』ポスターのラフイメージ

 

日本映画専門チャンネルでも5月13日(土)21時から『スーパーの女』が放送されるなど、伊丹さんの映画をご覧いただけるチャンスがたくさんある5月第2週となっております。ぜひぜひ劇場で、記念館で、ご自宅で、伊丹さんの映画をご覧ください。

 

 

スタッフ:橘

2023.05.01 おすすめのお土産

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

29日からお休みを取られてゴールデンウィーク真っ最中という方、あるいは明後日からの5連休が本番という方もいらっしゃると思いますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

さてゴールデンウィークというと、ご旅行や帰省を機にご来館くださる方が多く、「お土産に何がおすすめですか?」と尋ねられることが少なくありません。

そこで本日は、昨年のゴールデンウィークで特にお買い上げが多かった記念館グッズについてご紹介させていただきます。

まずは定番中の定番、「十三饅頭」!

20230501-12.jpg十三饅頭

味、サイズ、パッケージに至るまで、宮本信子館長のこだわりがぎゅぎゅっと詰まった一品です。

甘さ控えめのあっさりとしたこし餡が入った十三饅頭は、ほおばりやすい一口サイズの茶饅頭で、ひとつひとつに押された「十三」の焼き印は実際に伊丹さんが書いた文字を焼き印にして押したものです。パッケージは記念館の建物を模していて、まさに"伊丹十三記念館ならでは"の限定販売品です!

20230501-11.jpg

オールシーズンご好評いただいている商品ですが、お土産にぴったりということで、ご来館の多いゴールデンウィークやお盆、お正月などに特にたくさんのお客様がお買い求めくださるんですよ。

また、同じく人気なのはポストカード。
映画ポスター、伊丹さんが描いたイラスト、伊丹さんや記念館の写真など、全23種類を販売中です。
単品だけでなくお得なセット販売もしていますので、お好きなデザインを選んだり、セット買いしたりしてみてください。


20230501-1.jpg

ポストカード売り場

 

20230501-2.jpg

ポストカードセット

伊丹さんのイラストをプリントしたマグネット、クリアファイルもご好評いただいています。

料理や調理器具にちなんだ伊丹さんのイラストがプリントされたマグネットは、冷蔵庫にくっつけるのにピッタリ。
クリアファイルは、お土産用だけでなくご自分で使う用としてもなかなか重宝いたします。
マグネットは5種類、クリアファイルはA4・A5サイズそれぞれ2種類ずつデザインがありますので、デザイン違い、サイズ違いで買われるのもおすすめです!

20230501-3.jpgマグネット5種類

20230501-4.jpgクリアファイルA4サイズ2種類、A5サイズ2種類

ご紹介した以外にも伊丹さんの著書や関連書籍、オリジナルグッズを中心に取り揃えていますので、お越しの際はぜひ記念館のショップをのぞいてみてください。

明日5月2日(火)はお休みさせていただきますが、5月3日~5月7日は通常どおり10時より開館し、皆さまをお迎えいたします。

皆さまのご来館を、スタッフ一同心よりお待ちしております!

スタッフ:山岡

2023.04.24 「第14回伊丹十三賞受賞記念 小池一子氏トークイベント『オルタナティブ・スピリット』」の「採録」を公開いたしました

記念館便りをご覧の皆さまこんにちは。



230424-2.JPG

今朝の中庭の桂


先月、  記念館便り    にてご報告させていただきました、

「第14回伊丹十三賞受賞記念 小池一子氏トークイベント『オルタナティブ・スピリット』」のトーク内容を書き起こしした、「採録」を先日公開いたしました。


このイベントは株式会社伊丹プロダクションに協賛していただき、伊丹十三記念館のカフェ・タンポポで行ったものです。


伊丹十三記念館のメンバーズ会員様限定のイベントでしたが、この度公開した採録でみなさまにイベントの様子をご覧いただくことができます。

是非、ちょっと覗いてみてください。

イベントの雰囲気も味わっていただけることと思います。





第14回伊丹十三賞受賞記念 小池一子氏トークイベント
『オルタナティブ・スピリット』

採録は 「こちら」 から。



230424-1.pngトップページも良い感じです

スタッフ:川又

2023.04.17 2023年度も!「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」

陽光きらめく日あり、花冷えの日あり、春風にクシャミの止まらぬ日もあり――新年度が到来いたしました。みなさまいかがお過ごしですか?

わたくしは「この季節になるたびに思うことなんだけど......スギ花粉より黄砂のほうが堪えるなぁ......」とため息まじりの毎日を過ごしております。毎年恒例の四月病(笑)。

さて、前回担当した「記念館便り」では、伊丹映画の放送および全国の映画館での上映情報をお知らせさせていただきましたが、記念館はと申しますと、「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」を2023年度も開催しております。

今年の実施順は「"女シリーズ"をまず5本 → 女シリーズ以外の作品を公開年順に5本」です。

20230417_1313_2023.jpg日程や各作品の情報など、詳しくはHPで!

7・8月を除く月の13日(休館日の火曜にあたる場合は翌14日・水曜日)の13時にお越しくださいましたら、ご入館料だけで展示と伊丹映画1本をお楽しみいただけます。

次回は5月13日(土)13時から、『マルサの女2』(1988)をお目にかけます!

税金を"取る側"の主人公の活躍で大ヒットした『マルサの女』(1987)に続く伊丹映画唯一のシリーズ化作品。そして、監督自身が「『しまった、面白い映画を作りすぎた。また税金をごっそり持ってかれるぞ!』という心境です(笑)」とチラシやプログラムでコメントしたほどのエンターテインメント税金ムービー。
脱税者を追い詰める国税査察官の板倉亮子と仲間たちvs宗教法人を隠れ蓑に大金を貯め込んでいく地上げ屋の巨魁・鬼沢一平とその一味。あの手この手の両者の対決をご覧になりたい方は、5月13日(土)の13時、伊丹十三記念館の常設展示室にご集合くださいね~~

20230417_marusa2.jpg

――ところで、先日、20代の同僚との会話の中で『マルサの女2』について、こんなやりとりがありました。

同僚「初めて(DVDで)観たとき、観始めて数分のところで『え~っと、"地上げ"...?』ってなって再生止めました」

中野「ん? ん? それは一体...どういうこと?」

同僚「ですから、"地上げ"が何なのか分からないまま先に進んじゃいけないと思って、一時停止して調べたんです」

中野「え!? "地上げ"を知らなかった、ってこと!?」

同僚「あ、そうです」

ああ......地上げ......あのバブルの頃、ワタシのような子供でさえ何となく理解していたものだった、ような......(遠い目)

生誕90年・没後26年、伊丹十三を知らない世代が増えている、そして、これからどんどん増え続ける、というのは記念館の活動の大きな課題でありますが――そうか、そうきたか――そうですよね。
「ある社会情勢について誰もが知ってることを前提に『面白いですよ!』と作品をお目にかけるだけでは足りないんだ」と痛感した出来事でありました。

2023年度、若人の力を頼みにしつつすがりつつ、「新しい攻め方」の策略を練って過ごして参りたいと思います。
今年度もどうぞよろしくお願い申しあげます!

学芸員:中野

2023.04.10 サンドイッチ

新年度が始まり1週間程が経ちましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

記念館では桂の木にたくさんの葉がついてきました。風に揺れる枝葉がとても綺麗で、カフェをご利用のお客様や回廊を歩いているお客様が、時間を忘れて眺めていることが増え、春だなぁと感じております。

 

 

s-IMG_4209.jpg中庭の桂

 

 

s-IMG_4214.jpg玄関前の様子

 

 

3月末から松山市の各所で桜が咲きはじめました。松山城や道後公園などに足を運んだところ、お花見をしている方々がたくさんいらっしゃいました。レジャーシートを広げてお弁当を食べている方々を見て、なんだか私もうずうずしてしまい、お休みの日に簡単なサンドイッチを持って近所へお花見に出かけました。

 

s-image1.jpg松山城の桜

 

 

s-image0-1.jpg満開にはすこし早かったですが、お天気に恵まれた日でした。

 

 

我が家のサンドイッチは、耳をつけたままの食パンを焼き、具をはさむだけの簡単なもので、どちらかというとホットサンドのようなサンドイッチが主流でした。お花見の日は、焼いた食パンにツナ、チーズ、レタスをたっぷり入れたものと、スクランブルエック、ハムを入れたものの2種類を持って行きました。(残念ながらサンドイッチの写真は撮り忘れてしまいました)

心地良い風と陽気の中でサンドイッチを食べている中、はた、と気付いたことがありました。今日は伊丹さんのエッセイ、「ダッグウッドの悦び」に登場する"サラダ菜のサンドウィッチ"を試す最高の機会だったのではないか...ということに。

 

そのエッセイがこちら。

 

 

 

 五つか六つの頃、私は一つの食べ物を発明した。すなわちサラダ菜のサンドウィッチである。うちの庭の小さな菜園からサラダ菜の葉っぱをちぎってきて、苺ジャムを塗りたくったパンにはさんで食べる。ただ、それだけのものであるが、このサンドウィッチがいかにうまいか。どう説明しても、みなさん半信半疑という顔でしか聞いてくださらないが、私は子供心にもサラダ菜と苺ジャムという取り合わせは絶妙であると思った。この考えはいまも変わらない。

 私はダッグウッドと同じで、サンドウィッチにはなんでもかでも詰め込むのが好きなほうである。ダッグウッドを知らぬ方はないと思うが、念のためにいうなら、ダッグウッドが、つまり漫画の主人公のダッグウッドが、深夜パジャマ姿で台所に起きだし、そのへんの食べ物をあらいざらい詰め込んで、およそ手風琴ほどもあるサンドウィッチを作る。満面笑みを浮かべて食いついたとたんに、サンドウィッチの中に紛れこんでいたハーモニカがピッと鳴って奥さんを起こしてしまう。すなわち大いにやりこめられる。と、まあこういう精神の漫画が戦後大いに流行したことがあって、以来、材料を一杯に詰め込んだ特大のサンドウィッチをダッグウッド・サンドウィッチといいならわすようになったのですね。

 いろんな料理に、飽き飽きして、なにを食べていいかわからない、という時にダッグウッド・サンドウィッチはまさに好適のものであります。

 サラダ菜、胡瓜、トマト、ロース・ハム、やわらかく作ったスクランブルド・エッグ、オイル・サーディン、バター、ジャム、マヨネーズ、マスタード、こういうものを食卓の上に賑ぎにぎしく取り揃えて、片っ端からパンにはさんで食べる。少くとも厚さ四、五センチのサンドウィッチを作って、行儀にかまわず食べる。これがダッグウッド・サンドウィッチの神髄であります。

 ただし、ロース・ハム、スクランブルド・エッグなんかは売れ足早く、すぐなくなってしまう。そういう時にぜひ試していただきたいのだ。私が五歳にして発明した、サラダ菜と苺ジャムのサンドイッチを。

(『女たちよ!』より「ダッグウッドの悦び」p173-p175)

 

 

 

エッセイを読んだときに、「この"サラダ菜のサンドウィッチ"は屋外で食べたら、もっと美味しくなりそう」と思い、お花見の時期を狙っていたことを手製のサンドイッチを食べながら思い出してしまったのです。ありあわせのもので作ったサンドイッチは、食材を片っ端からはさむという"ダックウッド・サンドウィッチ"に近いのですが、せっかくなら伊丹さんのおすすめの"サラダ菜のサンドウィッチ"も一緒に食べたかったのです。

桜が咲いているうちにもう一度お花見に行けばいいと考えておりましたが、予定や悪天候でなかなか行けぬまま今日に至ります。桜は散ってきてしまい残念ですが、夏まではもう少し時間があるのでピクニック日和に挑戦してみたいと思います。

皆さまも"サラダ菜のサンドウィッチ"、ぜひ試してみませんか?

 

s-IMG_4217.jpg『女たちよ!』と「ダッグウッドの悦び」のイラストを使用したマグネット

オンラインショップでも販売しております

 

さて、今週の木曜日は13日ですので、「毎月十三日は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の開催日です。2023年度の上映1作品目は『マルサの女』となっております。伊丹さんの映画の中でも特に人気の作品です。13日はぜひ記念館へご来館ください。

 

 

s-IMG_4218.jpg企画展示室の出口付近にあるプログラムもぜひご覧ください

 

 

スタッフ:橘

2023.04.03 期間限定メニューをスタートしました

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
すっかり春ですね!寒さも和らぎ、天気のいい日は外出したくなるような気持ちのいい季節になりました。お出かけやご旅行などでお近くに来られた際は、ぜひ記念館にもお立ち寄りくださいね。

0403.jpg中庭のタンポポも咲き始めました

さて4月に入りまして、記念館のカフェ・タンポポでは期間限定メニュー " 豆乳イチゴ " を開始いたしました。

0403-1.JPG

豆乳イチゴ

毎年この時期にご提供する期間限定メニュー・豆乳イチゴは、愛媛県産のイチゴと豆乳をミックスしたドリンクです。イチゴの甘みや酸味、豆乳のまろやかさが程よく合わさり、さっぱりとした甘さが特徴で、小さなお子様からご年配の方まで幅広い世代の皆さまにお飲みいただいています。
淡いピンクのドリンクに、上にのせたミントのグリーンがアクセントになって、見た目もさわやかですよ。

たくさんの方にご好評をいただいている人気のメニューですので、記念館にお越しの際はぜひご賞味くださいませ。

 

また、冬場はお休みしていたアイスコーヒー、アイスティーもご注文いただけるようになりました。

 

「暑い」というにはまだ少し早いですが、寒い冬が終わって気温が上がり始めるこの時期から、「アイスコーヒー/アイスティーはありますか?」とのお尋ねが増えてまいります。

こちらもぜひオーダーしてくださいね。ご利用をお待ちしております。

スタッフ:山岡

2023.03.27 3月の伊丹十三記念館の様子とオキザリスの植え付け


記念館便りをご覧の皆さまこんにちは。
暖かくなり、記念館の庭が一気に色付きはじめています。


0327-1.JPG

シンボルツリーの桂も芽吹き、小さな葉がつきはじめました。



0327-2.JPG0327-3.JPG

ヤマザクラも見ごろを迎えています。



0327-4.JPG

トサミズキも満開です。



0327-5.JPG0327-6.JPG

ユキヤナギは花が終わりはじめています。



0327-7.JPG0327-8.JPG

さて、わたくしは、先日、記念館の庭に「オキザリス」という花を植え付けました。
オキザリスとはカタバミの仲間です。


カタバミと言えば、厄介でお馴染みの雑草ですが、こんなにかわいい仲間がいたとは。確かに葉っぱはほぼカタバミの葉っぱです。でも花がとてもかわいいのです。


0327-10.JPG


0327-9.JPG



さて、どうしてここにきてオキザリスを植え付けたかと言いますと、宮本信子館長からのアドバイスを受けたからです。実はこの場所は、もともと植えていたアイビーが上手く育たず、日々、雑草と記念館スタッフとの闘いが繰り広げられていた場所なのですが、そのような場所にも負けない元気な花だからということで、オキザリスを植えてはどうかと宮本館長から提案があったのです。


根付いてくれることを願って水遣りに励みたいと思います。




0327-11.JPG





スタッフ:川又


2023.03.20 4Kリマスター版・伊丹映画!

日本映画専門チャンネルの『伊丹十三劇場』、お楽しみくださっていますか?
4Kデジタルリマスター版"オールメディア独占 & テレビ初放送"のプレミア放送ですよ~~!

20230320_nihoneiga55_itami4kss.jpg(日本映画専門チャンネルHPより)
『伊丹十三劇場は』このメイン・ヴィジュアルが目印です!

とPRしつつ白状してしまいますが、実はわたくし、個人的には「"4Kデジタルリマスター版"だからっていっても、ねぇ」と、あまり期待をしていなかったのです、あくまでも個人的に。

あ、2Kダウンコンバート放送だから、ということではなくってですね、ウチのテレビが未だに21型のブラウン管である、という超クラシカルな視聴環境に由来するフィーリングのせいでして、「映像がきれいになったって、こんなテレビじゃよく分からないんだろうなぁ」と。

そうして『伊丹十三劇場』の放送初日、「オツトメとして見ないわけにもいくまい」と気乗りのしないままフタを開けてみましたところ......
......いやあ、タマゲました。

「ウ、ウチのテレビで見てさえ、効果絶大と分かるリマスターぶり!!」

細部の変化までは分からないものの(←何しろ21型ブラウン管テレビですのでね...)、映像全体が明るくイキイキとして見えたのは、くすみが除去されたかのように鮮やかに、かつ適切に調整されたからでしょう

たった1カット見た途端に、画面から放たれる映画の生命力、観客を惹きつける力が格段に増しているのをまざまざと感じさせられました。
イヤハヤ、脱帽。平伏。合掌。

「かつて映画館で見た」「テレビで見た」「DVDを持っている」「ブルーレイを持っている」という方々、多くいらっしゃることと思いますが......まあそうおっしゃらず、ぜひこの『伊丹十三劇場』をご覧いただきまして、感動が新たになる経験にシビれていただきたい、と願っております。
次回放送の日時と作品は、3月25日(土)21:00~、『ミンボーの女』です!

と、ここでさらに朗報――このように、イキのよさを取り戻した伊丹映画をスクリーンでご覧いただける機会が到来しました!
全国の映画館で名作映画を2週間ごとにアレコレと楽しめる「午前10時の映画祭13」の上映作品に、『お葬式』『マルサの女』の4K版が選ばれたのです!!

※上映館の設備によっては2K版となる場合があるそうです。ご了承ください。

伊丹映画全10作品の4Kデジタルリマスター版の放送予定や台北金馬映画祭でのワールドプレミアの模様が報じられて以来、「日本の映画館では4K版はいつ見られるの?」「どこかで上映しないの?」というご質問をいただくようになっていましたので、このお知らせができることがとても嬉しいです。(「午前10時の映画祭"13"」なのも、密かに嬉しいです。うふ。)

20230320_am10fes13.JPGシネマサンシャイン重信さんから
パンフレットをたくさんいただきました。
記念館のロビーで設置・配布しています。

実施劇場はグループA・Bに分かれていますが、「伊丹十三生誕90年」として編成されていて、どちらのグループでも、伊丹十三の誕生日である5月15日の前後に予定されています。

<お葬式 (1984)>
・グループAの劇場
  2023/05/12(金)~05/25(木)
 ・グループBの劇場
  2023/05/26(金)~06/08(木)

<マルサの女 (1987)>
 ・グループAの劇場
  2023/05/26(金)~06/08(木)
 ・グループBの劇場
  2023/05/12(金)~05/25(木)

※お住まいのエリアの最寄り館のグループ・スケジュール・上映バージョンは、『午前10時の映画祭13』サイトおよび各館サイトでご確認ください。(愛媛県内の上映館は、グループBのシネマサンシャイン重信、2K上映です。)

ぜひ劇場へ足を運んで、鮮やかに甦った伊丹映画をスクリーンでご堪能ください。

そして、記念館の常設展示室・企画展示室では、『お葬式』『マルサの女』などの関連資料をご覧いただけます。

20230320_permanent13.JPGこちらは常設展示室「十三 映画監督」のコーナー。
制作資料の中の些細に見える情報にも
驚きや発見がいっぱい詰まっていますよ~

スクリーン上映と制作資料を併せて伊丹映画をお楽しみいただくチャンス。
皆様のご来館を、いつも以上に熱望して、お待ちしております。

・・・・・・・・・・

このたびの4Kリマスターは、伊丹組の撮影監督・前田米造さんが全体監修者として携わってくださった、伊丹監督の意図を誰よりも深く理解していた前田さんのご協力あってこそ質の高いリマスター作業を完遂することができた、と聞いております。
リマスター版の完成後、一昨年の2021年7月6日に85歳でご逝去された前田米造さんに、あらためて感謝とご冥福の祈りを捧げたいと思います。

学芸員:中野

2023.03.13 第14回伊丹十三賞受賞記念イベントを開催いたしました

3月も半ばになり、桜の開花予想が気になり始める今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 

記念館ではトサミズキやユキヤナギが咲きはじめました。

 

s-IMG_4151.jpg

s-IMG_4141.jpg

トサミズキ

 

 

s-IMG_4150.jpg 

s-IMG_4149.jpgユキヤナギ

こちらはすっかり見頃です

 

春の訪れを感じる記念館にぜひご来館ください。

 

 

さて、去る3月6日(月)、記念館は臨時休館をさせていただき、第14回伊丹十三賞受賞者である小池一子さんをお招きして伊丹十三賞受賞記念イベントを開催いたしました。

聞き手に佐村憲一さんをお招きしたトークイベント、「第14回伊丹十三賞受賞記念 小池一子氏トークイベント『オルタナティブ・スピリット』」です。

この度のイベントは、メンバーズカード会員様限定のご招待で開催させていただきました。ご応募・ご来場くださった皆さま、誠にありがとうございました。

 

本日の記念館便りではトークイベントの様子を皆さまにお届けさせていただきます。

 

 

イベントの登壇者は受賞者であるクリエイティブ・ディレクターの小池一子さんと、グラフィック・デザイナーの佐村憲一さんです。聞き手としてご登壇くださいました佐村憲一さんは、伊丹さんの映画10作品にグラフィックデザインで携わってくださった他、伊丹さんの著書や雑誌『mon oncle』のデザインを手がけ、小池さんとも親交が深い方です。そしてご挨拶は宮本信子館長。

開演すぐの3人でのミニトークの際は、皆さま和気あいあいとしたご様子で話しておられました。

 

s-IMG_3938.jpg佐村憲一さん、宮本信子館長、小池一子さん

会場の皆さまも自然と笑顔に

 

 

イベントは記念館内のカフェ・タンポポで行われました。開演は17時半。少し肌寒い夜でしたが、会場はご参加くださった皆さまの熱気で満ちていました。

 

1時間半にわたり「オルタナティブ」という言葉を中心に、小池一子さんがなさってきた幅広い活動やお仕事、活動を続けている中での想いなどをお話しくださいました。デザイナーやアーティストの方々との出会いや、佐賀町エキジビット・スペース創設にいたるまでのお話などをお伺いすることができました。

佐村さんは、小池さんが活動をしていた当時のアートやデザインの時代背景や、伊丹さんと小池さんの対談についてなど貴重なお話をしてくださいました。

 

 

s-IMG_4103.jpg小池一子さん

 

 

s-IMG_3945.jpg佐村憲一さん 

s-IMG_4098.jpg

s-IMG_3969.jpg会場の様子

 

s-IMG_4054.jpg月がとても綺麗でした

 

s-IMG_4121.jpgイベントの最後に、佐村さんより"あるもの"をご寄贈いただきました。

その"あるもの"とは......採録をお待ちください!

 

イベントの間、会場の皆さまはトークに聞き入っておられ、ユーモアのあるお話では会場で笑いが起こることも。イベントの終わりには、皆さまの温かい拍手が会場に響いておりました。

ご来場の皆さまからお帰りの際に「面白かった」「楽しかった」「貴重な話を聞くことが出来た」など、とても嬉しいお言葉をかけていただきました。

 

イベントの様子、いかがでしたでしょうか。

記念館便りでは当日の雰囲気をお伝えすることしか出来ませんでしたが、小池さんと佐村さんがお話しくださった詳しい内容につきましては、ホームページにて採録を公開させていただく予定です。採録が公開されましたら、あらためて皆さまにお伝えさせていただきますので、今しばらく採録の公開をお待ちいただけますと幸いです。

 

この度のイベントは、伊丹十三記念館のメンバーズカード会員様限定のイベントで、ご招待のお客様も含め25名様にご来場いただきました。

メンバーズにご入会いただきますと、会員様限定のイベントや収蔵庫ツアーへのご招待だけではなく、一般公募イベントへの優先的なご案内などもございます。下記のメンバーズカードご利用のページをご覧いただき、ご入会を検討いただけますと幸いです。

 

https://itami-kinenkan.jp/guidance/members.html

 

 

最後となりましたが、ご応募・ご来場くださった皆さま、登壇くださった小池一子様、佐村憲一様に深くお礼申し上げます。誠にありがとうございました。

 

今後とも伊丹十三賞そして伊丹十三記念館をよろしくお願いいたします。

 

スタッフ:橘

2023.03.06 チケットとリーフレット

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

本日3月6日は二十四節気のひとつ、「啓蟄」です。寒い冬を土の中で過ごしていた虫たちが春の訪れを感じ地上に出てくる――そんな様子を表していて、ひと雨ごとに暖かくなる頃だといわれています。
黄色やピンクなどいろいろな花も咲き始めて、日が経つごとに周囲がカラフルになっていく季節でもありますね。記念館の中庭では、3月に入りビンカミノール(ヒメツルニチニチソウ)の花が咲きました。

0306-1.jpg

ビンカミノール

 

さて、記念館にお越しくださったお客様に受付でチケット、リーフレット、常設展示室の展示品リストをお渡ししていますが、このうち、特にチケット、リーフレットを気に入ってくださる方がたくさんいらっしゃいます。ちょっとご紹介しますと――

来館されたことがある方はご存知だと思いますが、こちらがそのチケットとリーフレットです。

0306-2.jpg

左から、大人用チケット、学生さん用チケット、リーフレット

チケットはシンプルな黒色です。大人用、学生さん用の2つがあり、大人の方のチケットには伊丹さんの著書『女たちよ!』よりエッセイ「ハリーズ・バーにて」、高校生・大学生の方のチケットには著書『問いつめられたパパとママの本』よりエッセイ「ママハイツモオ化粧シテルノニドウシテ肌ガアレテルノ?」の挿絵イラスト(もちろん伊丹さんが描いたものです!)がプリントされています。

0306-3.jpg

そんな記念館ならではのデザインから、また、しっかりめの紙に印刷されていることもあって、長く取っておいてくださったり、栞として使ってくださったりする方も少なくないようです。


そしてリーフレットは、開くと宮本館長の素敵なメッセージが載っており、また、記念館を設計された中村好文先生の描いた館内の見取り図が載っています。

0306-4.jpg

開くと上方に宮本館長のメッセージ

0306-5.jpg

さらに開くと記念館の見取り図が現れます

大変ありがたいことに「素敵なリーフレットなのでお土産と一緒に渡したい」「よいところだったので、リーフレットを渡して人にすすめたい」とのお言葉をいただいて、リーフレットを追加でお渡しするお客様は少なくありません。
チケットはご入館料をいただいた時にお渡しするもののため、残念ながら余分にはお渡しできないのですが、リーフレットは追加のお渡しが可能です!ご要望いただきましたらスタッフも大変喜びますので、ご遠慮なくお知らせください。

リーフレットは、オンラインショップを利用された方に商品といっしょにお送りしており、また、愛媛観光で来られた方が立ち寄られる場所や宿泊施設などにも設置していただいています。
手に取れられたら、ぜひご覧になってみてくださいね。

スタッフ:山岡


********** 記念館よりお知らせ **********

本日3月6日(月)は、臨時休館させていただきます。

明日3月7日(火)は通常の休館日となり、
明後日8日(水)朝10時より平常開館させていただきます。


皆さまにはご迷惑をおかけいたしますが、何卒よろしくお願いいたします。

2023.02.27 ほぼ日手帳weeks「伊丹十三 mon oncle」には、4月はじまり版もあります


記念館便りをご覧の皆さまこんにちは。
日に日にあたたかくなってきますね。
つい先日年が明けたような気がしますが、もう今年も早2か月が過ぎ去ろうとしています。



0227-0.jpg記念館の横の小野川の土手には菜の花が


0227-1.JPGトサミズキも近くで見ると・・・

0227-2.JPG今日明日にも花が咲きそうです

0227-3.JPG

さて、わたくしは、手帳やスケジュール帳の類をここ何年も使っていなかったのですが、今年は伊丹十三デザインの「ほぼ日手帳weeks」を使っています。




0227-4.jpgほぼ日手帳 「伊丹十三 mon oncle」



1日1ページ仕様の「ほぼ日手帳」は記念館でも使用しており馴染みがあるものの、週刊手帳の「ほぼ日手帳weeks」を使うのは今年が初めてだったのです。しかし、weeksもさすがほぼ日手帳。軽くかさばらず、大変使い勝手が良いです。そして何より、この見た目の良さに、目に入る度、手に取る度、毎日何度も幸せな気持ちになるという効果があります。


0227-6.jpg0227-7.jpg0227-8.jpg0227-9.jpg


「もう今年も2か月も経ってしまったから、今更買う訳にはいかないわ」という方がいらっしゃいましたら、朗報です。
実は、ほぼ日手帳には「4月はじまり版」もあるのです。「伊丹十三 mon oncle」ももちろんあります。


年度はじめから心機一転したい方、年の初めに気に入った手帳を買い損なったという方に、ぜひおすすめいたします。



0227-5.jpg





ほぼ日手帳 weeks 「伊丹十三 mon oncle」のご購入は こちら から






スタッフ:川又

2023.02.20 前略、みかん県より

みーかんーのはーなーが~ さぁいてーいる~

あっ、すみません、今はみかんの「実」のほうの季節で、花の季節ではございませんね。スーパーの青果コーナーでツヤツヤと輝くみかん類を眺めていると『みかんの花咲く丘』(作詞:加藤省吾 / 作曲:海沼實)が口をついて出る癖がついてしまって......そんなわたくし、先ごろ、おかげ様で愛媛在住15周年を迎えました。

しかしながら実のことろ、みかんの花を見たことはまだないのです。それどころか、いつ咲くものなのか把握していない始末で、「あれ? そういえば、今年もまたみかんの花を見ずに終わってしまったぞ。いつ咲いてたんだろ?」「いつかは~」「今年こそは~」「来年こそは~」を繰り返してきたこの15年でありました。
白くて小さくて可憐な花々からは、とてもいい香りがするのだそうですよ。

と、このように、県民失格レベルで愛媛の風物に今なお無知な不肖中野ですが「みかんを腐らせず、しかも美味しくする方法」は会得しました。

「腐ったみかん」といえば、ミドルエイジの方々の多くが連想なさるであろう『3年B組金八先生』での例え話にもあるように、周りのみかんを次々に腐蝕させてゆく困ったさんです。が、それはあくまでも「箱の中」でのこと。
箱に押し込めていたのでは、そりゃあ、みかんも人間も腐ってしまって当たり前ですよねえ。

みかんを腐らせない秘訣は、「新聞紙の上にみかん同士がくっつかないように並べておく」この一点であります。さらに、皮にカビのついたものがあればキュッキュと拭いておくとなおよいでしょう。(案外、表面に付着しているだけで済んでいたりします)

そして、ホコリをかぶらないように上にも新聞紙をかけ、部屋の片隅に2ヶ月ほったらかしたみかんがこちら――

20230220unshumikan_1.JPG皮はゴワゴワのシワッシワになっていますが、
もっと萎びた見た目になっても全然イケます!

剥いてみますと――

20230220unshumikan_2.JPG乾燥した表皮はパカッッとは剥けません。
表皮とくっついた房が破れやすくなっているので
傷つけないように慎重に剥いてくださいね。

中はまだまだジューシー!
そして、自然に水分が減ったぶん甘味が凝縮されていて「食べるみかんジュース」とでも言いましょうか、カフェでご提供しているみかんジュースみたいなおいしさです。

「放置みかん」「さらしみかん」......巧い名前は思いつきませんが、皆様もぜひお試しを。

さて、伊丹エッセイにもズバリ「蜜柑」というタイトルの一篇があります。

「伊丹さんと思しき人物(タレント)が神奈川県湯河原町のミカン作りの名人のもとを訪ねるTVドキュメンタリー」の体で書かれたエッセイで、その一部をご紹介しますと――

タレント いやあ、どうもありがとうございました。今日はすごくいい勉強しちゃったなあ......
名人 ハッハッハ、そうですか......ま、そんなわけでしてね、ミカン農家というのは、もっといい品種がほしいと思ってですね、それだけみんな一所懸命なんですね、もう全国夢中ですよ、値段高く売れる品種、うまい品種、これに今夢中です。
タレント ほんとですねえ......
名人 接木用のビニールテープが、今年売れたのが四十万本だそうですよ。それから、エヒメ県のミヤウチイヨカンって、新しいイヨカン――これの接いだホギ(穂木)が十五トンっていってましたよ。ホギの十五トンったら生易しいものじゃないですよね(ミカンの小枝を一本切り取って)ホギなんてのは、これだけのもんですからね。

 

『日本世間噺大系』(文藝春秋・1976年)「蜜柑」より
現在は新潮文庫『日本世間噺大系』に収録

sekenbanashi_shincho.jpg

文中、「エヒメ県のミヤウチイヨカンって、新しいイヨカン」とありますね。
この文章の初出が1975年の『話の特集』1月号ですから「へェ、宮内いよかんって昔々からメジャーだった品種のように思っていたけど、広まったのは案外最近なんだな」と驚きます。(※"最近"は個人の感想です。48年前を「最近」と思ってしまうあたりに自分の年齢を感じます...)

他にも「名人直伝・正しいミカンの剥き方」「おいしいミカンの選び方」「おいしいミカンを作るための摘果・剪定のコツ」「接木に名人などいない、キワメテ簡単、百発百中で小学生にもできる」などなど、身近なみかんの知られざる真実が盛りだくさんに綴られていて、ぜひお読みいただきたい一篇です。

話は戻って、みかんの花が咲く季節、調べてみますと5月頃だそうです。
今年こそ...今年こそ...この目で見て、匂いを嗅いで、そうだ 、忘れずに写真を撮って......この記念館便りでご報告するぞ!

――と誓う、16年目の愛媛生活でございます。今後ともどうぞよろしくお願いします。

学芸員:中野

2023.02.13 プログラム

暦の上では春を迎えましたが、未だに寒さの残る日々が続いております。皆さまいかがお過ごしでしょうか。

寒さが厳しいと思う反面、随分と日が長くなってきたと感じる事が増えました。真冬が過ぎたのを実感いたします。個人の体感なのですが、太陽が昇っている時間が長ければ長いほど、気持ちが晴れやかなことが多いです。夏は苦手ですが、待ち遠しくも感じます。

 

本日は13日ということで「毎月十三日は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」を13時より開催させていただきます。

 

ご来館くださったお客様に「どこで上映しているの?」という質問をよくいただくのですが、こちらの場所です。

 

 

s-IMG_3778.jpg

 

 

常設展示室に入ってすぐにあるモニターにて上映いたします。通常は館長からのご挨拶と映画の特報が流れているモニターです。

料金についてもご質問いただくのですが、入館料のみで映画をご覧いただけます。

 

2022年度の上映作品は、本日の『スーパーの女』を入れてあと2作品。次回は3月13日(月)、『マルタイの女』を上映いたします。13日にご来館くださるお客様はぜひご覧ください。

 

そして上映する映画と合わせてご覧いただきたいものがこちら。

 

s-IMG_3780.jpg

 

企画展示室の出口付近にございます映画のプログラムです。

 

s-IMG_3782.jpg

 

 

こちらは映画館で販売していたプログラムをコピーしたものが貼り付けられたスクラップブックなのですが、映画の日に上映する作品のプログラムを読むことが出来ます。

 

s-IMG_3783.jpg「毎月十三日の十三時は記念館(常設展示室)で

伊丹十三の映画を観よう!」というメモが目印です

 

 

こちらのプログラムでは出演者やスタッフのインタビュー、解説などが載っています。映画製作に至った理由や撮影中のエピソードなど様々な角度から映画を知ることが出来る資料です。伊丹さん自身の解説もございますので、作品ごとにご覧いただけますと映画をより楽しんでいただけます。

 

映画は見たことがあっても、プログラムは見たことがないというお客様も多いのではないでしょうか。本日の『スーパーの女』の上映が終わりますと、3月の上映に先駆けまして『マルタイの女』のプログラムが並びます。ぜひ記念館で映画の上映と合わせてご覧いただけますと幸いです。

 

スタッフ:橘

2023.02.06 豆乳メニュー

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

ここ松山では、先月の1月28日・29日・30日に「椿まつり」が行われました。
記念館便りでも何度かご紹介したことがありますが、記念館近くにある椿神社(つばきじんじゃ)で行われるこのおまつりは、「伊予路に春を呼ぶまつり」と言われ、毎年多くの参拝客でにぎわいます。椿まつりが開催される頃は冷え込みが厳しく、終わると温かくなる――とよく言われるのですが、今年も例にもれず、椿まつりを終えたここ数日は寒さが和らいできたように思います。

20230206-1.jpg

記念館前の川の土手には菜の花がちらほらと。

とはいえまだ寒さが続きそうだな...ということで、もうしばらく温かい飲み物が楽しめそうです。

カフェ・タンポポでも、冬場はホットドリンクのオーダーが中心で、ホットコーヒーやしょうが湯、タンポポコーヒーなどが人気ですが、豆乳を好まれる方にご好評をいただいているのが、豆乳を使ったメニューです。

ちょっとご紹介させていただきますと――カフェ・タンポポの豆乳メニューには豆乳コーヒー、豆乳紅茶、ソイジンジャーの3つがあります。

豆乳コーヒー、豆乳紅茶は濃い目のコーヒーや紅茶に豆乳を加えた飲み物で、豆乳コーヒーはカフェオレ風、豆乳紅茶はチャイ風です。ふだんミルクは入れないよ、という方も、いつものコーヒーや紅茶に豆乳のマイルドさをプラスして飲んでみるのはいかがでしょうか。

20230206-3.jpg豆乳コーヒー

 

そしてソイジンジャーは、温めた豆乳にオリジナルの生姜シロップを加えたものです。

20230206-2.JPG

ソイジンジャー

 

生姜に加えて、温めたまろやかな豆乳で体がじんわりあったかくなります。甘口のお飲み物がお好きな方には特におすすめですよ。上に少しふりかけたシナモンが香りのアクセントになっています。甘く煮込んだ生姜のスライスに砂糖をまぶしたチップも付けていますので、合わせて召し上がってくださいね。

寒いときは温かい飲み物がひときわ美味しく感じられます。
記念館にお越しの際はぜひフェ・タンポポにお立ち寄りのうえ、あたたまっていってください。


スタッフ:山岡

2023.01.30 寒波と朝顔


記念館便りをご覧の皆さまこんにちは。
先週は、松山もこの度の寒波で大変な寒さが続きました。
そんな先週、わが家では朝顔が芽を出しました。



0130-1.jpgこの鉢の根元から


0130-2.jpgなんと朝顔



この鉢は夏場外に出しており、秋ごろ室内に取り込んだものです。
こぼれ種から発芽したようです。
寒さ対策で部屋をいつも以上に暖めていたからでしょうか。




さて、私の中では朝顔といえば、伊丹さんです。
この伊丹さんの小学2年生の時の朝顔観察日記のインパクトがあまりに大きすぎたので。


gaido.jpg朝顔観察日記。小2でこのクオリティ。



夏がくる度、朝顔を見る=この朝顔観察日記を思い出して伊丹さんの子供時代に思いを馳せる、(そして記念館便りに書く)、という現象が起きているのですが、まさか冬にも起きるとは。


皆さまもご来館の際には、伊丹さんの大人になってからのたくさんの仕事とあわせて、子ども時代の作品の数々もぜひご覧ください。

きっと驚かれることと思います。伊丹十三記念館ガイドブックにもいろいろと載っていますのでこちらも是非チェックしてください。








0130-6.jpg朝顔と雪だるま




スタッフ:川又

2023.01.23 50年前に冬を待っていた少女

寒中お見舞い申しあげます――と型通りの時候の挨拶を申しあげてみますが、クリスマス前のあの厳しい冷え込みは何だったのか! と思うほど、あまり寒くない1月の松山です。

20230123_fukinotou.JPGちなみに、年末の帰省中、岩手もあまり寒くならず
母の庭のあちらこちらでフキノトウを見かけました。

「アンタ、暑いのが苦手なんだったら寒いのは好きか」と問われれば、答えはNO......
でも「寒い季節ならではの嬉しい感覚」は好きです。

例えば、冷たく冴えた朝の空気を鼻から吸い込むと、寝ぼけた脳にス~ンと沁みる感じ。
運動や食事の最中、手足の指先にあたたかい血がみなぎってくる感じ。
これらのちょっとした喜びが、どうも薄い気がするんですよねえ、今冬は。

などとウカウカしているところへ「最強寒波襲来!」のニュース。今週はビシビシと冷え込むそうじゃありませんか。皆様、寒さ対策・積雪対策のご準備はどうぞお早目&念入りに。

ということで、今回は「冬」で思い浮かぶ伊丹エッセイの一節をご紹介いたします。

(初夏の夜、自宅に招いた少女たちが無邪気に花火を楽しむ様子を眺め、彼女たちとは対照的な少女を見かけたことを回想する部分です――)

 私は二、三日前、原宿のレストランで見た少女を思い出した。あの少女も十七、八だった。男が一緒だった。男は私くらいの年恰好だった。二人の会話を、私は人を待ちながら、聞くともなしに聞いてしまったが、それは少女の最初の一と言が不思議だったからである。
「早く冬にならないかしら」
 少女はいった。まだ梅雨時で、空はどんよりと曇っていたのである。冬を思うには少し早すぎる。
「早く冬にならないかしら」
「冬になると、どうなってるのかね、われわれ」
「わからない」
「.........」
「冬、寒い中を胸を張って歩くのって、いいものよ」
「.........」

『再び女たちよ!』(1972年)「花火」より
現在は新潮文庫『再び女たちよ!』に収録

futatabi_bunko.jpg

ついつい意地悪オバサンの心境になって「妙に大人びた物言いしちゃってえ~」「若さゆえの背伸び、一過性の病みたいなものなんでしょ~」と思わなくもありませんが、「冬、寒い中を胸を張って歩くのって、いいものよ」には諸手を挙げて同意せずにはいられません。
「そうよね! アンタいいこと言うじゃないの! そんなヘドモドしたオヤジは置き去りにして、我が道をスタスタ歩んで行けばいいのよ!!」と加勢したい気分にすらなります。

ところで――
冬を待つ少女のエピソードが伊丹さんの創作でない、つまり、少女が実在の人物で、存命だとしたら......60代後半くらいになっているわけですね。この感性を失わずに大人になったのだろうか、幸せに暮らしているのだろうか、と考えてみたりも。
この原稿を書いていて「ああ、年月を経たエッセイには、そんな想像をかきたる性質もあるんだなあ」と気付かされました。

あ、そうそう。話は戻りますが、冬の楽しみをもうひとつ。
それは、落葉樹の葉が全部落ちて、樹木そのもののたたずまいを存分に眺められること。

館の南側に並ぶヤマザクラ四姉妹もこのとおり、冬仕様に――

20230123_yamazakura1.JPG
 

ん......?
オヤ、西(写真奥)から2番目の木の枝に何やら......

20230123_yamazakura2.JPG

あらまあ、鳥の巣が! いつの間にこさえられていたのでしょうか!?

寒い中ご来館くださいました際には、季節限定のこんな景色もどうぞお見逃しなく。

学芸員 : 中野

・・・・・お知らせ・・・・・

この冬、日本映画専門チャンネル「伊丹十三劇場」で伊丹十三脚本監督全10作の4Kデジタルリマスター版が放送されています。
オールメディア独占・テレビ初放送――つまり、今、最新版の伊丹映画を観られるのは日本映画専門チャンネルだけ!

2Kダウンコンバートでの放送ですが、リマスターによってグンと明るくクリアになった映像をお楽しみいただけます。放送スケジュールや視聴方法など、ぜひWebでご覧ください。

2023.01.16 

春先のように暖かい日もあり寒暖差の激しい日々ではございますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

私事ではございますが、松山に住み始めて初の年越しを経験いたしまして、元旦には椿神社に初詣に行ってまいりました。おみくじでは大吉を引き当てましたので、今年一年健康に頑張ることが出来そうです。

 

今回の記念館便りを書いている本日、松山ではしとしとと雨が降っております。雨の日となると外出が難しくなるかと思うのですが、記念館では天候に関わらず展示をゆっくりご覧になれますので、雨の日のご来館もおすすめです。雨の日の中庭は少し落ち着いた雰囲気で、雨音やペトリコールを楽しんでいただけます。

 

s-IMG_3733.jpg雨の日はカフェや回廊でお客様が景色に見入っているのを
拝見することが多いです

 

 

s-IMG_2877.jpg濡れて艶やかな石をじっと見ていると
なんだか自分も洗われているような気持ちになったりもします

 

さて、こんな雨を見ていて思い起こすのは、映画の中で雨が降っているシーンです。伊丹さんの映画の中でも印象的な場面が多い雨ですが、皆様はどのシーンが特に印象に残っていらっしゃるでしょうか。

 

『お葬式』での高速道路を走りながらサンドイッチを手渡すシーン。『タンポポ』でタンポポの店に初めてゴローたちが訪れるシーンや、白服の男が撃たれるシーン。『マルサの女』の権藤が愛人に廃棄させた証拠を、板倉亮子がゴミ捨て場で探すシーン。『静かな生活』でのイーヨーが意を決してマーちゃんを救うシーン。

 

 

s-osoushiki2.jpg『お葬式』よりサンドイッチを手渡した後のシーン

 

 

s-marusa.jpg『マルサの女』よりゴミ捨て場のシーン

 

 

注目しながら見てみると、伊丹さんの映画作品には頻繁に雨が登場していることが分かります。

 

雨のシーンの撮影に関する話が、『マルサの女をマルサする』にてご覧いただけます。

 

s-meikingu2.jpg『マルサの女をマルサする』より撮影風景

 

撮影初日からいきなり土砂降りの雨のシーンの撮影をする伊丹さん。雨というのはカメラに向かって逆光気味に光を当てないと光らないとのことで、撮影する際には雨を降らせる特殊機械部門だけでなく、カメラや照明などのスタッフが一丸となって撮影に臨む必要があるそうです。これから映画を撮影するスタッフをまとめあげるために、雨のシーンを最初に撮影するという伊丹さんの作戦だったようです。

 

同じメイキングの中で、伊丹さんは雨が好きだというナレーションがあります。映画の中でたびたび雨のシーンが出てくるのは、伊丹さん自身が雨を好きで撮影されていたのかもしれないですね。

雨の日にご来館の際には、映画の中の雨を思い出しながら記念館を楽しんでいただけますと幸いです。

 

スタッフ:橘

2023.01.09 お正月の料理

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。
本年も、伊丹十三記念館を何卒よろしくお願いいたします。

※宮本信子館長からの「新年のご挨拶」もぜひご覧ください!

20230109.jpg

さて皆さまはこのお正月、「黒豆」を召し上がったでしょうか?
諸説あるようですが、「まめまめしく元気に働く」ということで、健康長寿の縁起物としてお正月のおせち料理にかかせない一品といわれています。この黒豆について、伊丹さんが "日本一の黒豆ができる " という煮方をエッセイの中で紹介しているのをご存じでしょうか。

昨年12月下旬に来られたお客様の中に、「来年のお正月のおせちで、伊丹さんが紹介していた黒豆にチャレンジします!」という方がおられたので、少しだけご紹介させていただきますね。

 さて、そこで黒豆の正しい煮方でありますが、これにはさまざまな説がある。今ここに述べようとするのは、私の京都の宿における流儀でありますが、これはさしてむつかしいものではない。二日間だけ真剣にとりくめば日本一の黒豆ができるのだから、読者よ、どうかその労をいとわないでもらいたい。

 それでは、第一日目について記す。(後略)

「黒豆の正しい煮方」『女たちよ!』(新潮文庫)より

......ここまででお分かりかと思いますが、紹介されている黒豆の煮方は、なんと2日をかけて作るというもの。エッセイの続きでは、一日目、二日目の作業が紹介されています。
料理通で知られた伊丹さんが紹介する作り方、ということで本格的ですね!上述のお客様も「家族も楽しみにしてるから、年末に頑張ります!」と大変張り切ってらっしゃいました。
このお正月、ご家族で楽しく話をされながら召し上がられたのだと思います。

もう一つお正月に関係するエッセイを紹介しますと――お正月料理といえばおせちやお雑煮などが真っ先に浮かぶ方が多いかと思うのですが、伊丹さんのお正月料理は、エッセイ「正月料理」によるとフォンデュと粕汁であったようです。


 我が家の正月料理が決定した。
 一つはフォンデュ。スイス料理である。簡単にいうなら、煮立てた白葡萄酒でチーズを溶かしちぎったフランスパンをつけては食べる、というだけの素朴な料理である。発明したのは牛飼いだろう。こいつが滅法うまい。寒い夜親しい友とこれを囲んで、ブツブツ煮立つやつをパンにからめとっては口に運ぶと、腹の底から生きる力が沸いてくる。厳格なる自然食主義者の私も、この魅力には攻し難い。

 (中略)

 もうひと品、いってみようか。
 この間、菊正宗の工場からテレビ中継するということがあり、そのとき、おみやげに大量の酒粕をいただいた。その酒粕を睨んでいるうちに、粕汁を作ってみたいという欲望がむらむらと沸き起こったのである。早速魚屋に電話して新巻きの頭を二つばかり取り寄せて調理にかかる。そのとき、圧力鍋を使ったのが勝利の原因であった。私は玄米食者であるから当然圧力鍋を持っている。この圧力鍋で鮭の頭を三十分ほど煮て、粕汁へぶち込んだ。
 ひと口食べてみて、女房が「アレッ」と言った。私も「オッ」と叫んだ。うまいのである。まさに「ほっぺたが落ちそう」という味なのである。

「正月料理」『ぼくの伯父さん』(つるとはな)より

こちらもおいしそうですね!ご家族とおいしそうに食べる伊丹さんの姿が浮かんでくるようです。ご興味のある方はエッセイを読んでみてください。『女たちよ!』『ぼくの伯父さん』ともにオンラインショップで販売中です。

0109-1.jpg

--------------------------------------

<記念館よりお知らせ>

12月はお休みさせていただいた「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」。1月13日(金)は、13時より『静かな生活』(1995年)を上映させていただきます。

0109-2.png

ご鑑賞が始めての方もそうでない方も、お時間おありでしたらぜひどうぞ!
スタッフ一同お待ちしております。

スタッフ:山岡

2023.01.02 館長・宮本信子から新年のご挨拶


s-akeome 2023.jpg

tanpopo2.png

お正月早々、伊丹映画全10作品が、1月8日から
日本映画専門チャンネルで放映されます。
しかも4Kで~~! 皆、若いです~~(笑)若い!(笑)

この暗い重苦しい時、少しは伊丹映画で、
楽しく、前向きな気持になれるのでは~~
と思っております。

私も、早く見たいと~~!(笑)

今年も記念館に是非いらして下さいませ。
今年こそはと、おでかけ下さいませ。

スタッフ一同、心よりお待ちしております。

今年もよろしくお願い申し上げます

館長 宮本信子