僕はビックリ人間なのです。
異文化にぶつかってビックリするのが好きなんです。
代を先取りしたテーマと高い娯楽性を兼ね備えた映画作品を次々と世に送り出し、ヒットメーカーと呼ばれた映画監督・伊丹十三。創意の源は、常に「驚き」にあったそうです。
自ら称して曰く「僕はビックリ人間」。「異文化にぶつかってビックリするのが好きなんです」。
伊丹十三にかかると、海外の珍しい文物だけではなく、新しい視点をもたらしてくれるもの――書物や映像や人との会話、そして結婚生活や育児といった日常生活、時には伝統行事や流行などの身近な出来事も――すべてが「異文化体験」でした。
彼はそれらにいかに驚き、創造の糧としたか――読書・映画鑑賞・対談や取材に関する所蔵品を一堂に会して、伊丹十三の“ 感心力”をご紹介する展覧会です。
若かりし頃、知性派・国際派と呼ばれながらも
「もともと、わたくしは浅学にして菲才、どちらかといえば無内容な人間である」
「私は役に立つことをいろいろと知っている。そうしてその役に立つことを普及もしている。がしかし、これらはすべて人から教わったことばかりだ。私自身は――ほとんどまったく無内容な、空っぽの容れ物にすぎない」
と綴った伊丹十三でしたが、悩める時代を経て、いつしか積極的なビックリ人間となりました。
面白い事柄に出くわすとつい身を乗り出し、人々に伝えることを喜びとした伊丹十三のひらめきの種を、この展覧会でお楽しみいただけましたら幸いです。
読む( 伊丹十三の読書術)
「自分が世界の中に位置づけられない、自分の意味が分からない」…… |
主な展示品:伊丹十三の蔵書、直筆原稿、関連記事など |
観る( 伊丹十三の映画鑑賞術) 映画監督になると決意して以来、浴びるように映画を観て勉強したという伊丹十三。観客を魅了する「映画らしい映画」の実例をどのように吸収し自身の作品に生かしていったのか。ジョン・フォード、ヒッチコック、フェリーニ、小津、溝口、黒澤、ミュージカルに西部劇に犯罪映画――巨匠や名作から学んだシナリオ術・演出術について、鑑賞した映画の記録や集めた映画ソフト、映画制作日記をもとにご紹介します。 |
主な展示品:伊丹十三のビデオ・LD コレクション、直筆原稿など |
関連映像資料
小津安二郎『晩春』『麦秋』、ロベール・ブレッソン『抵抗』、ジョン・ヒューストン『アニー』を観ながら書き取ったノートの全ページをプロジェクター投影いたします。また、伊丹映画の撮影現場を捉えたメイキング映像では、映画論・演出論の実践ぶりをお楽しみいただけます。
訊く( 伊丹十三の取材術)
ドキュメンタリーの現場に足を踏み入れて、ハタと気付いた大問題――会話をもたせるのは何と大変なことか!「 いい話を聞くためには、いい質問をすることが絶対の条件である」との教訓を胸に、面白い話を引き出す力を鍛えていきました。その先には、聞き書きエッセイや対談など、文筆活動の新展開と充実もありました。専門家に話を聞くための予習メモ、取材中に書きとめたメモ、直筆原稿と録音テープなどで、感心の痕跡と作品化をご覧いただきます。 |
主な展示品:直筆メモ、対談・聞き書きエッセイの直筆原稿、関連記事など |
関連音声資料
伊丹十三が保管していたカセットテープから複製した音声資料をご用意しました。
子育てに勤しみながら精神分析に関する著書を次々と発表していた頃に出演したラジオ番組「一口ゼミナール」(TBSラジオ・1980年放送)は、伊丹十三の声で自身のルーツ・成長・展望が語られている、貴重な資料です。
お気に入りの道具たち
システム手帳、革の台本カバー、万年筆、シャープペンシルなどのアナログな記録ツール。アップルのノートパソコンやデジタル手帳といった最先端ツール。 |
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併設小企画
伊丹十三の父、伊丹万作(本名・池内義豊)もまた、有名な映画監督にして脚本家、文筆家でありました。伊丹十三は形見の品を大切に保管し、父が終生愛した松山に記念館を設立しようと計画していました。その予定地だった場所に、現在当館が建っています。 |
芭蕉俳句の手描きかるた |
その他、当コーナーでご覧いただける展示品
『無法松の一生』『天下太平記』などの直筆シナリオ / 写真資料 / 日記 / 妻への手描き帯 / 年表 他
記念館の展示・建物