内岳彦くんの小学校1年生のときの絵を思い出してください。伊丹十三の絵の才能は年を経るにしたがって、さらに磨きがかかりました。伊丹エッセイのもうひとつの大きな魅力は、文章にそえられた本人によるイラストレーション。『女たちよ!』には少しデフォルメされたユーモラスな線画が、『再び女たちよ!』には鉛筆による緻密なデッサンが、文章と響き会うように描かれて、本の魅力を二重のものにしていました。
文藝春秋の人気雑誌『漫画読本』の車内吊りポスターに描かれた伊丹十三のイラストレーションは、1970年に急死した伝説のイラストレーター伊坂芳太良(通称Pero)にも影響を与えた、と言われています(その絵の一部は『ヨーロッパ退屈日記』にも収録されています)。
ところが、そんなイラストレーションの多くは、画用紙やスケッチブックではなく、原稿用紙を裏返して、そこに濃い鉛筆を使って描かれていたのでした。
記念館の展示・建物