丹十三が商品とともに登場する。それはそれだけで、ひとつのドキュメンタリーになっていました。ふつうのCMとは空気が違う、と思った瞬間、伊丹十三がみずからの手で書いた台詞を、伊丹十三自身が語り出す。たとえば西友のコマーシャル。
「僕の考えじゃ、女の人っていうのは、付き合いの天才だと思うわけです。そりゃなんたって、お腹の中に赤ん坊を10ヶ月も入れているわけですから、人間関係の根本っていうものを押さえているわけです。だもんだから、お中元なんてことになると、これはもう圧倒的に女房の方がうまいわけ。佐藤さんに素麺とか、森さんに畳イワシとかね。相手の喜ぶものってのが、パッとわかっちゃうわけです。しかも安いものでさ」
このモノローグ手法のCMは、エッセイスト・伊丹十三と俳優・伊丹十三がそれぞれの魅力を引き立てあって初めて成立するものでした。同じ手法で行ったのが、松山の銘菓「一六タルト」のCM。「もんたかや。まあ一六のタルトでもお上がりや。ほて成績はどうじゃったんぞ」松山弁だけで語られるこのCMは、県内で大ヒットし、伊丹ブームを巻き起こしたそうです。
「もんたかや」
愛媛のお菓子「一六タルト」のテレビCMを制作した際の草案。全編が伊予弁によって語られているという斬新な企画でした。 |
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いちから制作に関わる
神奈川県湯河原の別宅を撮影場所として使用していることが多かったせいか、家族と共演するのが味の素CMの特徴になっていました。 |
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記念館の展示・建物