記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2017.03.20 伊丹十三記念館・開館10周年記念イベント

松山では、そこかしこに春の訪れを感じるようになりました。記念館前の川辺の菜の花が、元気いっぱいに咲いています。

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正面入口横のユキヤナギも、すっかり見頃になりました。

0320_b.JPG春本番が楽しみです。皆さまがお住まいの地域はいかがでしょうか。

さて、来る5月15日(月)、伊丹十三記念館は開館10周年を迎えます!
このような大きな節目を迎えられますのも皆さまのおかげと存じ、心より感謝申し上げます。当館では、皆さまへの感謝の気持ちを込めて、3つの開館10周年記念イベントを開催いたします。本日は、それぞれのイベントについてご案内させていただきます。


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(1) 4月2日(日)「無料開館」

開館10周年に先がけて、4月2日(日)は無料開館いたします。
「記念館に興味はあるけれど、まだ行ったことがなくて」という方はもちろん、「もう一度行ってみたい」という方も、ぜひいらしてください。普段から「記念館は●度目です」というお客さまはたくさんいらっしゃいまして、その目的もさまざまです。

「新しくなった企画展を観たくて」
「友人が松山に遊びに来ると、毎回おすすめの場所として案内しています」
「中庭の季節の移ろいを楽しみに」

等々、二度目、三度目ならではの記念館を楽しんでくださっています。

ひとりでも多くの皆さまに記念館を楽しんでいただきたく存じておりますので、お誘い合わせのうえお越しくださいませ。

(2) 5月12日(金)、13日(土)、14日(日)「収蔵庫ツアー」

記念館の収蔵庫には伊丹十三の愛用品や直筆原稿、イラスト原画、蔵書などが収められており、収蔵庫の2階部分は、それらを「展示風」に収蔵できる作りになっています。

0320_c.JPG収蔵庫の一角
湯河原にある伊丹さんの別荘のダイニングを再現しています


この、普段は公開していないスペースを学芸員がご案内いたしますのが「収蔵庫ツアー」です。毎年恒例の開館記念イベントとしてご好評いただいておりまして、「伊丹さんのことを、より身近に感じることができました」「また作品を観たくなりました」といったご感想をお寄せいただいております。

事前応募制(4月17日必着)で、応募が定員を超えた場合は抽選とさせていただきます。
応募方法・注意事項などの詳細はコチラをご覧ください。

伊丹さんを、より深く知っていただける絶好の機会ですので、奮ってご応募くださいませ。

(3) 5月15日(月)「ミニミニジャズライブ」

開館記念日当日の5月15日には、ジャズシンガーとしても知られる宮本信子館長による「ミニミニジャズライブ」をお届けいたします。
記念館の中庭を囲む回廊で、スタンディング(立ち見)でご覧いただくフランクなスタイルのライブです。

0320_d.jpg中庭回廊


開演時間は17時です。約35分間の「ミニミニ」ライブではありますが、夕暮れ前のひとときに、宮本館長の歌声をお楽しみいただけましたら幸いです。緑が美しい5月の中庭ならではの心地良さも感じていただけることと存じます。

当日は、伊丹さんの84回目のお誕生日でもあります。大切な記念日に皆様をお迎えできますことを、楽しみにしております。

ご参加いただくには、当日14時から配布する整理券が必要です(先着100名様)。
配布方法・注意事項などの詳細はコチラをご覧ください。
※中庭でのライブのため、悪天候の場合は中止となります。何卒ご了承くださいませ。


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スタッフ一同、開館10周年を迎えられますことを大変嬉しく存じております。
皆さまに楽しんでいただきたく存じておりますので、ぜひ開館10周年記念イベントにご参加くださいませ。お待ちしております。

スタッフ : 淺野

2017.03.13 伊丹映画と表現の自由

3月半ばになりました。
桂の葉はまだ出てきていませんが、芽吹いた枝先が赤く染まって「エネルギーがみなぎってきたぞ~~」と木が言っているみたいです。ちょっとワクワク。

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花粉症の方にはつらい季節と存じますが、前庭や中庭の四季折々の眺めをお楽しみいただけましたら嬉しいです。

さて、本日3月13日(月)13時からの「十三日の十三時」で、伊丹映画10作品が一巡します。

今月の作品『マルタイの女』(1997年)は、ある有名女優が、殺人事件を目撃したことから身辺保護の対象者"マルタイ"となって、数々のピンチを乗り越えていくドラマチックな監督第10作。アクションあり、サスペンスあり、豪華絢爛な舞台公演のシーンあり、伊丹映画では初の「刑事もの」です。

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『マルタイの女』が監督自身のマルタイ生活(※)から生まれた作品であることはよく知られていて、身辺保護を受けながらプロフェッショナルの仕事ぶりを間近に観察して「ホウ、面白い」「プロというのはすごいものだネ」と大いに感心したのであろうと思われるエピソードが随所に見られます。

※監督第6作『ミンボーの女』が公開された1992年5月。伊丹十三が帰宅したところを暴漢に襲われ、左頬と左手を切られるという事件が発生。一流ホテルがヤクザを撃退するまでを描いた作品に不満を持った暴力団員の犯行でした。この事件により、伊丹・宮本夫妻は約1年半にわたって身辺保護を受ける生活を送りました。

非日常的な実体験をもとにしたディティールの面白さは、笑いと学びを同時に楽しめる伊丹映画ならではの娯楽性につながっていますが、マルタイ経験から5年をかけて構想されたこの作品には、「面白いから」ということだけでなく、ある真剣な思いもこめられていました。

事件に関して、また暴力事件や表現の自由に関して、多くの方方がわがことのように勇気ある怒りの声をあげてくださったのが実に感動的で、心揺さぶられる思いをいたしました。苦境にある人間を支えてくれるものが、何よりも人人の理解と支持である、ということを今さらの如く教えられた思いです。この教えは、今後の私の映画作りに反映し続けてゆくことになるでしょう。<事件に対するお見舞いへのお礼状(1992年)より>

映画『マルタイの女』は、勇気ある証人と、命をかけて彼女を守る刑事たちの、愛と感動の物語です。民主主義社会を守るためには、われわれは暴力団やカルトをはじめ、われわれの自由や言論を封殺しようとするあらゆるテロリズムと戦わねばなりません。そのためには一般市民の理解と協力、わけても、テロ行為の目撃者の勇気ある証言が是非とも必要になってくるのです。われわれが自然なものとして享受している自由や安全は、実は、市民一人一人の勇気と知恵と努力によって、育てられ、守られていくものであることを『マルタイの女』は教えてくれるでしょう。<『マルタイの女』劇場パンフレット(1997年)より>

"ミンボー事件"のときに励ましてくれた人たち、守ってくれた人たち、勇気をもって証言してくれた人たちへの感謝と、表現者としての決意から生み出された映画、というわけです。

それにしても......こうして20年前の伊丹監督の言葉を読んでみると、人間の自由や安全を脅かすものは時代によって姿を変えるらしいこと、それだけに「表現の自由」も議論のやまない問題であり続けていることを感じます。
表現する側の人だけでなく受け手の側も、自由でいること、自由を育て守ることをしっかり意識していかないといけませんね。(つまんない映画ばっかりになったら困るもの!)

「十三日の十三時」は、来年度も、第1作『お葬式』から『マルタイの女』まで、毎月1本ご覧いただけます(5月・8月は開催いたしませんのでご了承ください)。2周目となりますが、思いを新たにしてお客様をお迎えしたいと思いますので、ぜひお越しくださいませ。
自由な気持ちで伊丹映画をお楽しみいただけましたら幸いです。

学芸員:中野

2017.03.06 親と子供

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

先週、記念館入り口横のユキヤナギが白い花をつけました。朝晩の冷え込みは続いていますが、少しずつ春らしくなってきているようですね。季節の変わり目でもありますので、体調等崩されませんよう、皆さまどうぞお気をつけください。

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さて3月から4月上旬にかけて、県外からのお客様の中には、子供さんが愛媛で進学・就職が決まり、その手続きのためにご家族またはご夫婦で愛媛に来られるという方が少なからずいらっしゃいます。
本日はそんなご家族から――特に親御さんから、「思わず涙が出ました」とのお声をいただく展示について、少しご紹介させていただきます。

 

「子供ノ誕生日ニ」   伊丹万作

 

岳彦 オメデトウ         
今日ハオマエノ誕生日ダネ
十年前ノ今日           
オマエガウマレタトキ
父ハ物置ニハイツテ       
郵便受ケヲツクツテイタ
ソノトキ父ハ嬉シサト       
心配ノアマリ
何ヲシテヨイカ          
自分ノスルコトガワカラナカツタノダヨ
スルトソノウチ          
突然オマエノ最初ノ声ガ
高ラカニ聞エテキタ
ソノ声ヲ父ハ一生忘レナイダロウ (後略)

これは、伊丹十三の父・伊丹万作が伊丹十三の10歳の誕生日に書いたものです。
当時病床にあった万作さんが息子に向けたこの言葉は、企画展「ビックリ人間 伊丹十三の吸収術」の一角にある「併設小企画 伊丹万作の人と仕事」で家族写真等と共に紹介されています。特に春のこの時期は、このコーナーをご覧になった上述のような親御さんから普段以上に「感動しました」といったお声をたくさんいただいているのです。
子供さんが何らかの節目を迎えるということで、より強く万作さんの言葉が印象に残ったり、子供さんが生まれてからこれまでのことを思い出すきっかけになったりするのだとか。
もちろん時期・年齢を問わず色々な方にご覧いただきたい展示です。ぜひ記念館で、父から子への想いを感じてみてください。

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<<宮本館長出勤のお知らせ>>

宮本館長の次回出勤が決定いたしました!お誘い合わせのうえ記念館にお越しくださいませ。

●4月9日(日)11時頃~13時頃
 ※当日の状況により、滞在時間等は変更になることがあります。

スタッフ:山岡

2017.02.27 「伊丹十三の言葉」

伊丹十三記念館には、公式twitterアカウント「伊丹十三の言葉(伊丹十三記念館)」(@juzo_itam)があります。
このアカウント、伊丹さんの著作からユニークなひとことを一日3回ツイートするbotなのですが、2017年2月現在、2,000人以上の方がフォローしてくださっています。記念館便りをご覧の皆様の中にも、フォローしてくださっている方がいらっしゃるかもしれませんね。

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記念館ウェブサイト・トップページの右下にある

「twitter」の文字をクリックしていただきますと
2つのアカウント「伊丹万作名言集」「伊丹十三の言葉」をご覧いただけます。


最近の「伊丹十三の言葉」から、リツイートやお気に入り登録をいただいているつぶやきを少しご紹介しますと――


「(編集とは)全体のバランスをとりつつ、快適なテンポを作り出すこと。見せるべきものはじっくりと見せながら、全体を現在進行形で押し切ること。(中略)材料という現実から出発して、架空の「最も映画らしい時間」というものを創り出すのだ。『「お葬式」日記』(1985)」

「カレー・ライスに使う御飯。あれはふっくらと炊けていて、しかも一粒一粒がくっつきあわずにぱらりとしていることが望ましい。だから私はカレーのための御飯を炊く時にはオリーヴ油を少し入れて炊くことにしている。『女たちよ!』(1968)」

「日本人というのは妙に工夫を凝らしたがる悪い癖がある。それをまたメーカーはよく知っているから、服でも車でも台所用品でも、なんだか知らんが妙なポケットがついたり、不必要な花模様がついたり、なにかこう小市民的に一工夫した奴を次次に捻り出してくる。『女たちよ!』(1968)」


――というように、内容はさまざまで、どれも伊丹さんらしい言葉です。

botアカウントというと、つぶやきのバリエーションが少ないものもありますが、「伊丹十三の言葉」は、いろんなことをつぶやきます。見るたびに、「印象的な言葉が、どうしてこんなにたくさんあるのだろう」と驚きます。
また、伊丹さんならではの語り口調がtwitterによく合っていて、既に知っている言葉でも、より身近に感じられるように思います。つい時間を忘れて見てしまいます。
というわけで、伊丹さんの著書はほとんど読んでいるという方にもおすすめです。皆さま、ぜひ一度ご覧になってみてくださいね。


≪カフェ・タンポポからのお知らせ≫


松山は、ようやく寒さが和らいでまいりました。カフェ・タンポポでは、季節のケーキを「いちごのタルト」にチェンジしております。

cake_0227.JPG一足先に春を感じていただけましたら幸いです。ぜひご賞味くださいませ。

スタッフ: 淺野

2017.02.20 大切なお知らせ 2

2月4日(土)から5日(日)にかけて日本映画専門チャンネルで放送された「24時間まるごと 伊丹十三の映画」、いかがでしたでしょうか?
伊丹十三特集はこれから長期にわたって放送していただく予定です。「24時間まるごと」を見逃してしまって地団駄踏んだ方も涙を流した方も、先週末から始まったレギュラー放送で、1作品ずつお楽しみください。

こんどの放送予定は――いいですか、メモのご用意はできましたか、大切なお知らせですからね、絶対絶対メモしておいてくださいね!!

3月11日(土)夜9時から
『タンポポ』
『タンポポ、ニューヨークへ行く』
『伊丹十三の「タンポポ」撮影日記』
の豪華三本立て!!

「24時間まるごと」のプログラムには入っていなかったメイキング『伊丹十三の「タンポポ」撮影日記』が加わって、いっそうにぎやかなタンポポ・スペシャルです。

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メモしましたか!? 録画の予約も「あとで」と言わずに今すぐ入れておいたほうがいいですよ!!

次回が二度目の放送となる『タンポポ、ニューヨークへ行く』は、このたびの北米リバイバルと30年前のアメリカでのヒットに関わった人、作品のファン、映画館のお客さんにインタビューして「アメリカ人は『タンポポ』をどう観るのか、どこをどう面白がるのか」を追ったドキュメンタリーです。

この番組を観ていて、インタビューに応じている方が、全員、愉快そうに『タンポポ』について語っていること、しかも、のびのびと、確信をもって語っていることに感銘を受けました。
前回、『タンポポ』について「一番好きな作品」と言ってくださる方がたくさんいると書きました。でも、実は「話の筋から逸れるシーンがたくさんあるから、作者が何を主張したいのか分からなくて戸惑う」とおっしゃる方が多い作品でもあるのです。

アメリカの人々が、それぞれの職業や経歴で培った見方に従って『タンポポ』を楽しみ、自由におしゃべりする様子を見ていて、「正しく"解釈"しなくちゃ、異国の映画だし」というような、委縮した態度や遠慮した表情がまったくなかったことは、痛快ですらありました。(そして、ついついミミッチクなりがちな自分の映画の見方を反省......)

伊丹十三は、J.P.サルトルの文学論を映画作りに"転用"して、こんなふうに語っています。

われわれは映画を半分しか作れない。そして、残りの半分の完成を観客の配慮にゆだねるため、観客の自由に対して映画を作る、ということです。(『「お葬式」日記』より)

『伊丹十三の「タンポポ」撮影日記』にも登場するフレーズですが、「"残り半分の完成"ってこういうこと、難しくないし、とても楽しいことですよ」と海の向こうの人々にお手本を示していただいて、映画というものの素晴らしさを再認識しました。

『タンポポ、ニューヨークへ行く』、ぜひご覧ください。

JPS_book.JPG≪伊丹十三による書き込みのあるサルトル全集≫
サルトルからの"転用"については、
企画展で詳しくご紹介しています。こちらもぜひ!

学芸員:中野