記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2019.11.11 映画『お葬式』をより楽しむ

「この日、この時間に合わせて来館しました」という嬉しいお言葉もいただく「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」

明後日の「十三」日は、伊丹十三の初映画監督作品である映画『お葬式』(1984年11月公開)を上映いたします。

上映は常設展示室にある42インチのモニターで、ベンチに座って気楽にご鑑賞いただくスタイル。追加料金はなしで通常入館料(大人お一人800円、高大学生お一人500円)でご覧いただけます。観たことがないという方はもちろん、観たことがある方も、当日はぜひ他の展示と合わせてお楽しみください!

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また、『お葬式』の上映をより深く楽しみたいなぁ、という方におすすめなのが、映画『お葬式』パンフレットのスクラップブックと、書籍『映画「お葬式」シナリオつき絵コンテノート』です。

お気に入りの映画があると、パンフレットを読んでその映画についてもっと知りたい、もっと楽しみたいと思うことがありますよね。『お葬式』をご覧になって(もちろん観る前でも!)そんなふうに思われるお客様にお読みいただけるよう、企画展示室にはその日上映する映画のパンフレットのスクラップブックをご用意しています。
映画を観る前、もしくは観た後など、お好きなタイミングで読んでみてください。

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そして『映画「お葬式」シナリオつき絵コンテノート』は、映画撮影にあたって伊丹さんが描いた膨大な絵コンテをシナリオとともに収録した1冊です。絵コンテは300枚以上ですから、文庫サイズながらも読み応えのある分厚さになっています!印象に残ったシーンやお気に入りのシーンを、映像とはまた違った視点で楽しむことができますので、こちらもおすすめですよ。

ご興味のある方はぜひどうぞ!

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スタッフ:山岡

2019.11.04 伊丹さんのイラストと実物を見比べてみると...

伊丹さんは身の回りのものをよく描き、そのイラストを自身のエッセイの挿絵にすることも多かったようですが、それらの品々のいくつかは実際に記念館内に展示されています。

こちらをご覧下さい。


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このイラストは伊丹さんのエッセイ「ヨーロッパ退屈日記」の挿絵なのでご存知の方も多いかもしれませんね。



これは伊丹さんの愛用していた「レモン搾り器」を描いたものなのですが、このイラストの元となったレモン搾り器は記念館の常設展示室に展示されています。

こちらです。


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ちなみにちょっと気になって画像を拡大して観察してみたところ、羽根の右側の鱗みたいな部分と羽根の左側の線の部分ですが、イラストと実物を比較して、数や配置がほぼ同じでした。

誰に答え合わせをされるものでもないと言うのに、細かい部分も適当に描いたりしないのですね。


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このレモン搾り器の他にも「あのエッセイのあの挿絵」の元となった伊丹さんの愛用品を記念館にはいくつか展示してあります。

ご来館の際には探して、イラストと実物を見比べてみて下さいね。


スタッフ:川又

2019.10.28 自然食と『タンポポ』

先日お米をいただきました。刈りたて精米したての新米です。
炊きあがりのツヤ、湯気の甘い香り、ひと粒ひと粒の弾力に、感謝と喜びで胸がいっぱいになりました。秋ですねぇ。(もちろんお腹もいっぱいになりました。白いごはん大好きです!)

20191028_rplant.jpgよほどのマチナカ以外では、住宅街でも
田んぼがそこここにある松山です。

ラーメンを中心とするさまざまな食べ物と、食欲に駆られて生きる人々が続々と登場する映画『タンポポ』(1985年)は、皆様それぞれに好きなシーン、エピソードがおありのようで

「チャーハンのシーンは強烈」

「分かる、カマンベールは押したくなる」

「いやいや、インパクトで生卵のシーンにまさるものなし」

「やっぱりオムライスでしょ」

「鴨南~天ぷら蕎麦~おしるこ~」

「腸詰めになったヤマイモにわさび醤油、食べてみたいよね」

などなど、いろんな方々のお気に入りポイントを伺うのも楽しい作品です。

私はと申しますと、根っから白飯党でございますので、タンポポさんの朝食を「たまらん」場面として挙げさせていただきたいと思います。

おひつからお茶碗へよそわれるごはん、感じよく煮崩れた豆腐のお味噌汁、卵黄とともにかきまぜられる納豆、ぬか床から引っぱり出されたばかりのニンジンとキュウリ。

ゴローさんは焼き海苔にご飯とほぐしたアジの干物をのせ、手巻きにしてパクリ。ターボーも不器用に真似てモグモグ――


自分も画面の中に入っていって、その場に加わりたくなる食卓だなぁと、いつ見ても思います。
そうだ、今日は干物を買って帰ることにいたしましょう。

ところで、『タンポポ』を作った頃の伊丹十三は、実は、美食とは距離をおき、自然食の生活を送っていました。
子育てのために1970年代半ばから取り組むようになり、ごはんは玄米、肉は控えて蛋白質は魚と大豆、白く精製された食品はダメ、砂糖も白いのはダメ、小麦粉もダメ、牛乳ではなく豆乳を、という徹底ぶりだったそうです。

20191028_pcooker.jpg【収蔵庫より】伊丹家で使われていた圧力鍋。
玄米もこの鍋で炊かれたことでしょう。

質素な食生活をストイックに続けていたからこそ、世の中をあらためて見渡してみたときに、食べ物(殊にラーメン)に夢中になる人間たちのこと、人々を夢中にさせる食べ物のことが興味深く感じられて『タンポポ』という作品が発想されたのでしょうね。

この伊丹家の自然食ライフは、ほどなくして終わりを迎えることになったそうなのですが......少し意外でちょっと笑える経緯があったようです。
詳しくは『伊丹十三選集』第3巻(岩波書店)の巻末解説でご次男・万平さんがユーモアを込めて回想してくださっていますので、ぜひお読みくださいませ。

学芸員:中野

2019.10.21 体を温める飲み物

朝晩は寒いくらいに冷え込むようになってきました。体を温める飲み物や食べ物がほしくなる季節ですね。

体を温める食材といえば生姜がよく知られています。
ここ記念館のカフェ・タンポポでも、記念館オリジナルの生姜シロップを使ったホットメニュー――しょうが湯(と十三饅頭のセット)、ソイジンジャー、しょうが紅茶――は、飲むと体がぽかぽかすると、寒い季節には特にご好評をいただいています。

本日はもう一つ、その生姜メニュー以外の"体を温める"飲み物として、「タンポポコーヒー」をご紹介します。

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「どんな飲み物ですか?」とお客様からご質問をいただくことの多い「タンポポコーヒー」は、タンポポの根っこから作られている飲み物です。
可愛らしい花を咲かせるタンポポですが、地面の中では意外と(?)たくましく、ごぼうのようなしっかりとした根を張っていて、これを干して乾燥させ、焙煎して作られるのがタンポポコーヒーです。見た目はコーヒーそのものですが、香ばしいお茶のような味がします。

ノンカフェインのため妊婦さんなどカフェインを控えている方にも安心して飲んでいただけますが、加えて "体を温める" 働きもあるそうなんです!
食べ物や飲み物について、体を温めるものを「陽性食品」、体を冷やすものを「陰性食品」とする分類の仕方があって、タンポポコーヒーは「陽性食品」にあたるのだとか。体が冷えがちなこれからの季節にぴったりの飲み物です。

ご来館の際はぜひお試しくださいませ。

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タンポポコーヒー

スタッフ:山岡

2019.10.14 伊丹十三の住まい

雑誌『メンズプレシャス』2019秋号で、またまた伊丹十三をご紹介いただいています。

ファッション&ライフスタイル特集「紳士の食卓または食いしん坊の美学」のインタビューに宮本館長が登場して、伊丹さんの食の選び方を振り返っているのですが、「食べ物の話なのに、住まいや庭へのこだわりぶりにも話題が広がるところが伊丹さんらしいなあ」と面白く読みました。館長、貴重なお話ありがとうございました!
皆様も、書店で見かけたらぜひお手に取ってみてくださいね。

「で、伊丹さんはどんな家に住んでたの? 知りたいな見てみたいな~」という方もいらっしゃることでしょう。そんな方には、まず、監督デビュー作の『お葬式』(1984年)をご覧いただくことをお勧めいたします。
湯河原の家が撮影のメイン・ロケーションになっていますから、映画の中に伊丹十三が暮らした空間がたっぷり収められています。

(※来月の「十三日の十三時」は『お葬式』でございます。11月13日(水)13時、お待ちしております!)

それから、記念館にお越しいただきました際には、展示しているCM映像もよーーくご覧ください。伊丹十三が手がけたテレビコマーシャルには、湯河原の家で撮影されたものが実はたくさんあるのです。


現在の企画展でご紹介している一六タルトCM(字幕付き)からいくつか例を挙げますと――

16cm_seisekihen_t.png成績篇(書斎)

16cm_tearaihen_t2.png手洗い篇(書斎)
※成績篇と逆のアングルですね

16cm_hitokire_t.png「タルトひと切れ」(2階の一室)

16cm_donaishitanzo_t.png「どないしたんぞ」(庭)

――というように、伊丹十三は、自身の作品、表現活動のために自邸をたびたび使っているわけですが、ひっくり返して考えてみると、自分の好きな物に囲まれる空間を築いてそこに身を置くこと、そういう人物でいること自体が、伊丹さんにとっては表現だったのでしょう。

西友、ナショナル冷蔵庫、味の素マヨネーズのCMにも湯河原の家で撮影されたものが数々ありまして、記念館限定販売のDVD『13の顔を持つ男』でもご覧いただけます。

住まいの様子がここまで多くの映像で残っている人って、他にはなかなかいない気がします。そんなところも含めて、記念館と伊丹十三の作品いろいろ、お楽しみくださいませ!

学芸員:中野