記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2018.07.16 「新潮文庫の100冊」に選ばれました!

先日、入荷した書籍を粛々と検品中の山岡さん(グッズ担当)の横を通りかかりましたら、見慣れない色彩が目に飛び込んできました。

何やら、黄色い帯がついています。

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わあ、新潮社が毎年行っている夏のフェア・新潮文庫の100冊に伊丹十三の初エッセイ集『ヨーロッパ退屈日記』が選ばれたんですね! とっても嬉しいです!!

読書家には程遠い私でも、ラインナップを見ると、読んだことのある名作がそこかしこに......その中に『ヨーロッパ退屈日記』が加わっているとなれば、感激もひとしお。

近年、店主の厳選ぶりを楽しみながら本を探せる、お洒落でコンパクトなセレクト書店もずいぶん増えてきましたけれど、この季節、大きな書店のフロアの一角に、文庫本が揃いの帯をまとって並び、広告パネルが掲げられていると、条件反射的に読書欲をそそられます。出版各社の文庫フェアは、夏の風物詩として心身にしみついているところがありますね。

10代、20代の頃、夏のフェアがきっかけで手に取った本がいくつもあったことを思い返しつつ、『ヨーロッパ退屈日記』が今の若い方々の目にとまって、この一冊からどんどん世界を広げていってくださるといいな、生涯のお供にしていただけるといいな、と願っております。
もちろん、大人の方もぜひ。親御さんからお子さんへの贈り物にもぜひ。

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梅雨が明け、朝夕、記念館の庭ではセミの合唱が聞かれるようになりました。

このたびの大雨では、ご心配のお問い合わせもいただきましたが、幸いなことに被害はございませんでした。スタッフ全員、元気に勤務しております。
県内外で被害に遭われた方々への労りと応援を忘れずに、記念館はいつも通り開館して、お客様をお迎えしてまいります。ご来館を心よりお待ちしております。

学芸員:中野

2018.07.09 夏のおすすめグッズ

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
本日は、夏におすすめのグッズを3つご紹介させていただきます。
ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。

1) オリジナル手拭い

伊丹さんの描いたカチンコ柄をプリントした手拭いです。季節を問わずご好評いただいている商品ですが、夏場は特に多くのお客様が手拭いを手に取ってくださいます。暑い季節、ハンカチや扇子などと合わせてカバンに入れておくと重宝しそうですよね。

黒色、空色、白地にピンクの柄など色違いで3種類をご用意していますので、お好みに合わせて、お土産やご自分用にいかがでしょうか。

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2) オリジナルTシャツ

伊丹さんの描いたイラストを使ったTシャツです。色違い、デザイン違いなどありますが、このうち伊丹さんの著書『ヨーロッパ退屈日記』にある「スパゲッティの正しい食べ方」の挿絵がプリントされた赤地のTシャツは、昨年5月に迎えた開館10周年を記念して発売しました。同じデザインで黒色もあります。
著書『女たちよ!』にある「二日酔いの虫」がデザインされたTシャツも人気ですよ!

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3) 4711オーデコロン

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、「4711」はドイツのケルンで誕生した、世界で最も歴史のあるオーデコロンブランドです。200年以上世界中で愛され続けてきて、日本にも愛好家が多いのだとか。実は伊丹さんもこのオーデコロンを愛用していました。
上述の赤Tシャツと同じく開館10周年記念商品として販売を開始したこのオーデコロンは、爽やかなシトラス系の香りです。もちろんオールシーズンお使いいただけますが、「蒸し暑い時にすっきりできそう!」と購入される方も少なくありません。

香りは実際に店頭でお試しいただけますので、ご来館の際はぜひどうぞ。

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スタッフ:山岡

2018.07.02 記念館で伊丹映画を

かつて観た映画について思い返すとき、その映画を「どこで、どんなふうに観たのか」もセットで思い出すこと、ありませんか?

「近くの劇場では上映していない映画を観たくて、遠くの劇場まで電車で行った」とか、
「DVDを夏休みにまとめてレンタルして、クーラーの効いた部屋で友達と観た」とか。

記念館にお越しくださったお客様が伊丹映画を観た感想をスタッフにお話しくださるときも、「どこで、どんなふうに観たのか」に話が及ぶことがあります。それも大切な映画体験の一部なのですね。楽しくお話を聞かせていただいております。
皆さまは伊丹映画を、どこで、どんなふうにご覧になりましたか?

――ところで!伊丹十三記念館の展示室でも、伊丹映画を観ることができます。
毎日ではありませんが、毎月「十三日の十三時」から、常設展示室内の展示モニターで伊丹映画を1本ずつ上映しているのです。
※5月、8月をのぞく毎月13日(火曜日に当たる場合は翌14日)に開催しております。
 上映作品等、詳しくはこちらをご覧ください。

この「十三日十三時の伊丹映画上映」は2016年6月にスタートし、今年で3度目です。
展示用モニター(42インチ)でベンチ(15名程度)に座ってご覧いただく気軽なスタイルですので、通常の入館料のみでご鑑賞いただけます。
13日に、上映日であることを知らずにお越しくださったお客様の中には、「あ!いま上映しているんですね。観たことあるけれど、せっかくだからここでもう一度観ようかな」と、楽しんでくださる方もいらっしゃいます。

2018.0702_1.JPG上映スペース


皆さまも、記念館で伊丹映画をいかがでしょうか。一度観たことのある映画でも、あらたな場所で観ると、また別の思い出になることと存じます。

次回は7月13日(金)。『マルサの女』を上映いたします(8月は上映がありませんので、お気をつけください)。皆さまのご来館を、お待ちしております!



<カフェ・タンポポからのおしらせ>


7月より、記念館のカフェ・タンポポで期間限定ドリンク「豆乳ブルーベリー」をスタートいたしました。
ブルーベリーのあざやかな色とほのかな酸味がさわやかな、夏の人気メニューです。ぜひご賞味ください。

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スタッフ : 淺野

2018.06.25 コーヒー・ミル

伊丹十三記念館のカフェ・タンポポでお出しするホット・コーヒーは、必ずその日のうちに挽いた豆で淹れています。
というわけで、カフェ・タンポポには立派なコーヒー・ミルがあります。


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ところで、伊丹さんはコーヒー・ミルについて自身のエッセイで次の通り語っています。

「さてコーヒーを挽くにはコーヒー・ミルというものを使う。木の箱に鉄のハンドルがついていて、箱の上の蓋をあけてコーヒーの豆を入 れ、ハンドルをがりがり回すと挽かれたコーヒーが下の引出しにたまる。

~略~

大きさはさまざまで二人用くらいから、ずいぶん大きな大家族用みたいなのまである。電気で動くやつもあるが、自分の手で、ハンドルか ら伝わってくる豆の砕ける乾いた感触を味わうのが愉しいのである。

 日本人はずいぶんコーヒーをよく飲むし、また妙に銘柄やブレンドにうるさい人が多いわりにコーヒー・ミルを持っている人が少い。挽 きたてでないコーヒーをいかに論じてみても詮ないことと、私は思うのだが。

 そうして、最後にインスタント・コーヒーについては、世の中にそういうものがある、ということを知っているだけにとどめたい。世の 中には、そういうものを飲まなければならぬかわいそうな人たちがいるということを知っているだけにとどめたい。」


― 「女たちよ!」 乾いた音 ―


・・・と、コーヒー・ミルについてはさておきインスタント・コーヒーについては随分なことを言っている伊丹さんではありますが、実は インスタント・コーヒーも結構召し上がっていたそうですよ。伊丹さんのエッセイ「日本世間噺大系」の解説の中で伊丹さんと仲の良かっ た写真家の浅井愼平さんが書かれていました。

このように「あれ?エッセイで書いてたこととなんだか違う!伊丹さん!」というエピソー ドは他にもいくつか聞いたことがありますが、それはそれで人間味があっていいですよね。


 最後になりましたが、残念ながら記念館カフェ・タンポポのコーヒー・ミルは伊丹さんのおススメする手動のものではありませんが、ホ ット・コーヒーはハンドドリップで淹れており、とっても美味しく、カフェのお飲み物の中でも一番人気の商品です。ご注文に迷われたら 、是非!


スタッフ:川又

2018.06.18 「アレ」のある記念館

『ぼくの伯父さん』(つるとはな)の発売から半年が経ちました。
記念館グッズショップでのご好評ぶりから、全国の書店やインターネットでもたくさん売れているだろうな、と想像しています。
一気に読んだ方、ちょっとずつ読んだ方、往年の伊丹エッセイファンも初めての方も、思い思いに"四半世紀ぶりの新刊"を味わってくださったのではないでしょうか。

bokuoji.jpg記念館HPのオンラインショップでも扱っております!

さて、これまでの伊丹十三の著書がそうであったように、この"新刊"もまた、お読みいただいてから記念館へお越しいただきますと、「エッセイに書かれていたアレがある!」というお楽しみがございます。

たとえば、手書きテキストと挿絵が一体になった、愉快なスタイルのエッセイ「スーツケース」の原稿原画。「急須」の挿絵の"モデル"の実物。「丼めし」は挿絵の原画も実物も展示しています。「傘」は、取り寄せ販売の見本をグッズショップにディスプレイしております。

これらのほかに、『ぼくの伯父さん』ではビジュアルが紹介されていないもので、記念館で「アレはこういうものだったのね!」と知っていただける、ぜひご覧いただきたい展示品があります。

所収の一篇「父、万作のかるた」というエッセイに、こんなことが書かれています。

――父がこのカルタを描いたのは昭和十八年ですから、まだ日本が戦争に勝っていた頃だと思います。年の暮れになって突然父がカルタを作ると宣言して製作にとりかかった。
(中略)このカルタで随分遊びましたね。私も妹も、このカルタに出てくる芭蕉の俳句を全部憶えております。勿論、それが父の狙いだったんでしょうがね。
 で、実を申しますと、それ以来三十年、私はこのカルタを見たことがなかった。ある人が父から貰い受けてずっと所有していたんです。それが、その人の好意で、二年ばかり前に突然私のところに返されてきた。
 これはびっくりしましたねえ。まず、その力量に圧倒されましたね、私は。そしてまた、その絵や字の裏に流れている、なんともいえぬ人間の好さ、高さですね、これはもう参りましたね。ああ、ここまで行ってる人だったか、という思いがありましたね。
 父がこれを作った時、四十四歳くらいだったわけですから、考えてみれば私はそろそろ同じ年齢に達しようとしているわけでしょう。こりゃ考えますねえ、だって、これを描けるようになるには、また別の一生を必要とするようなものですよ、このカルタは――

『ぼくの伯父さん』をお読みになって、「挿絵も写真図版もないけど、どんなカルタなのかしら」と思った方、いらっしゃいませんか?
このエッセイの初出は、いろはかるたを特集したムック本『別冊太陽』No.9(平凡社、1974年11月)。すべての絵札がグラビアページに掲載されていました。それで文中「このカルタ」と記されているのです。

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「このカルタ」は、伊丹十三が書いているように、子供たちのために伊丹万作が手作りしたのですが、少し補足させていただきますと、伊丹万作が「あるカルタを裏返して」手作りしたものでした。
元は、子供トナリグミカルタという市販の玩具で、「ツクレ ツヨイ ダイトウア」など、軍国主義教育を目的とした標語がいくつも見受けられます。こんなもので我が子が遊ぶなんて!と憂えた万作が、自ら選んだ芭蕉の俳句と、それに対応する絵をすべての札の裏面に描いた、というわけです。
不治の病(結核)で長く生きられそうにない、世の中は戦争一色、そういうときでも譲れないことがある......幼子への思い、芸術家としての反骨心から生み出されたカルタなんですね。

現在、カルタは記念館に収蔵されておりまして、併設小企画「伊丹万作の人と仕事」に
*暦に応じた季語の読み札・絵札(実物 / 季節ごとに8組)
*このカルタを使って伊丹十三が作った一六タルトのCMシリーズ
*すべての読み札・絵札の両面の複製
を展示しています。

karuta2018summer.jpg夏の句のカルタ8組。「さみだれを~」や
「しづかさや~」など、お馴染みの句もあります。

karuta_c.jpgこちらは複製の壁面展示。
上2段が万作手作りの芭蕉カルタ。
下2段が子供トナリグミカルタです。

「伊丹万作の人と仕事」は展示順路の最後のコーナーです。
展示室2部屋の小さな記念館ですが、あますところなく、じっくりとご鑑賞くださいませ。

学芸員:中野