記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2017.05.22 開館10周年記念「ミニミニジャズライブ」を開催いたしました

2017年5月15日、伊丹十三記念館は開館10周年を迎えました!
このような大きな節目を無事に迎えることができましたのも、皆さまのおかげでございます。

本日は、開館記念日に開催したイベント「ミニミニジャズライブ」当日の模様をレポートさせていただきます。

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5周年と8周年の開館記念日に開催したライブと同様に、今回も会場は記念館の中庭回廊です。
こちらは、リハーサルの様子。

2017.0522_1.JPGご覧の通り晴天に恵まれて中庭の新緑も美しく、最高のコンディションでした。
今回は、宮本信子館長(ヴォーカル)の他に、いつも館長とライブをご一緒なさっている板垣光弘さん(キーボード)と吉木稔さん(ベース)というメンバー。
記念館のライブにベースの方をお迎えするのは、今回がはじめてでした。リハーサルがはじまる前、宮本館長が少しベースに触れていたのですが、その姿が素敵で、思わずカメラを向けてしまいました。

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とても良い音が響いていました!


――ライブは夕暮れ前の17時開演で、約100名のお客様にお越しいただきました。暑い中、入館整理券のために並んでくださった皆さま、誠にありがとうございました。

2017.0522_3.JPG中庭回廊を利用したフランクなスタイルのライブは、記念館ならでは


開演後、まずは宮本館長から皆さまにご挨拶。10年前の開館初日に長蛇の列ができたことや、テープカットの想い出をお話した後、館長はこう続けました。
「10周年を無事迎えまして。私も元気で、今は『ひよっこ』に出ておりますけども。(場内から拍手)ありがとうございます。嬉しいです!今の拍手(笑)。――今日は記念の日、伊丹十三の誕生日ですから。節目の日に、こうやって企画をしました」

2017.0522_4.JPG――そうなんです、この日は伊丹さんの84回目のお誕生日でもありました。お客様とご一緒にお祝いできましたことを、大変嬉しく存じております。館長からのご挨拶の後に、板垣さんと吉木さんにもご登場いただき、いよいよライブスタートです。


2017.0522_5.JPGキーボード・板垣光弘さん

2017.0522_6.JPGベース・吉木稔さん


「Fly me to the moon」ではじまり、ジャズのスタンダードナンバーが続きます。一緒に口ずさんでいらっしゃるお客様もいらっしゃいましたね。

曲の合間には、ベースの一番低い音をボーンと指ではじいて、その響きを楽しんだり、会場にいらしたお子さまに実際にベースに触れてもらったり、といったシーンもありました。

2017.0522_7.JPG個人的に、「ベースの音は、中庭にどんな風に響くのだろう」と楽しみにしていたのですが、厚みのある優しい低音が心地よく、中庭の雰囲気にピッタリでした。

今回お届けしたのは合計7曲。約35分間の、文字通り「ミニミニ」ライブではありましたが、伊丹さんとの想い出話や、伊丹十三賞についてのトークもあり、皆さま楽しんでくださっていましたね。

最後の曲は、宮本館長のライブではおなじみの「港町十三番地」です。会場は手拍子で大いに盛り上がり、曲の後の「わたし、港町十三番地が本当に好きで。"十三"ですからね!」という館長のことばとともに、ライブは終演いたしました。

2017.0522_8.JPGご来館いただいた皆さま、誠にありがとうございました!

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開館記念日当日、普段お世話になっているお取引先から素敵な贈り物をいただく、というサプライズもありました。少しご紹介させていただきますね。

こちらは、「Rico sweets & supply CO.」様からいただいた洋菓子・カヌレ。タワーになっているんです!

2017.0522_9.JPGとってもかわいらしいデザインで、お味も抜群でした。
普段、Rico sweets & supply CO. 様には、記念館内の入館者専用カフェ・タンポポにケーキをお届けいただいております。記念館の形を模したオリジナルチョコレートケーキなど3種類のケーキがあり、ご好評いただいています。

「一六本舗」様からは、デコレーションケーキと上生菓子をいただきました!


2017.0522_10.JPG宮本館長と一六本舗の皆さま



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デコレーションケーキの上には、記念館にも展示している伊丹さんの愛車ベントレーが!

2017.0522_12.JPG上生菓子は、写真左から「タンポポ」「あげまん」「(映画撮影で使用する)カチンコ」という、伊丹映画にちなんだ特別デザインになっています。驚きました!

細やかなお心遣いに宮本館長も大感激。「デコレーションケーキは、お客様にも召し上がっていただきましょう!」という館長の想いから、カットしたものを、急遽館内のカフェ・タンポポをご利用のお客様にもお届けいたしました。皆さま、とっても喜んでくださいましたね。
普段、一六本舗様には記念館限定販売の『十三饅頭』を製造していただいており、カフェ・タンポポで召し上がっていただけるほか、グッズショップでお土産としてお買い求めいただけます。記念館の人気商品です。

素敵な贈り物を拝見しながら、記念館は多くの皆さまに支えていただいていることを、あらためて実感した一日でした。心より感謝申し上げます。

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ご来館くださるお客様、日頃よりお世話になっている皆さま、これからもご期待に添えるようスタッフ一同励んでまいりますので、11年目をスタートした伊丹十三記念館を、どうぞよろしくお願いいたします。

スタッフ: 淺野

2017.05.15 開館10周年!

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小さな小さな記念館ですけれど、
内容は充実していると思います。

中庭のベンチに座って空を見上げ、
風に吹かれる桂の木やタンポポを御覧下さいませ。

日常にはない静かで穏やかな時間を
お過ごしになれると思っております。

どうぞ、「伊丹十三の家」に遊びにいらして下さいませ。
『やぁ、いらっしゃい』の伊丹十三の声を
感じていただけたら~~私、とっても嬉しいです!
お待ちしております!

これからも、応援よろしくお願い申し上げます。

感謝
宮本信子

2017.05.08 ライブハウス伊丹十三記念館中庭へようこそ!!

来週の5月15日は伊丹十三記念館の開館10周年記念日です。記念すべきこの日は宮本信子館長の「ミニミニジャズライブ」が開催される予定です。

「ライブハウス武道館へようこそ!」というフレーズをご存知ですか。日本武道館でライブを行うアーティストがよく使うことで知られるフレーズです。この言葉を借りますと、このミニミニジャズライブは「ライブハウス伊丹十三記念館中庭へようこそ!」ということになります。ライブの会場はなんと記念館の中庭です。

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庭でライブ?!と思われる方もいらっしゃるかもしれませんね。しかしこれまでにも同様のスタイルのライブを過去2回開催したことがあるのですが、ご参加頂いたお客様からは大変ご好評を頂いております。ちなみに2回とも開館記念日の5月15日に開催したのですが、この季節の夕暮れ前の中庭は大変心地良く、そんな中庭でのライブはすごく素敵なのです。ちなみにこの「中庭でのライブ」の発案者は宮本館長です!

中庭回廊においてステンディングでご覧いただく、フランクなスタイルのライブです。今回も多くの方にご参加頂きたいのは山々なのですが、中庭という限られたスペースのため、定員を先着100名様とさせていただいております。ご参加には当日14時からお配りする整理券が必要となります。なお当日は展示観覧のみのご入館にも整理券が必要となりますのでご注意下さい。また、悪天候の場合は中止となる可能性もあります。ご了承下さい。その他にも注意事項が数点あります。詳細はこちらをご覧下さい。

宮本館長のジャズを聴きながら、記念館の開館10周年と伊丹さんの84回目のお誕生日を一緒にお祝いしませんか。素敵な時間をお過ごしいただけること間違いなしです。ぜひお越し下さい。

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スタッフ:川又

2017.05.01 記念館ショップからのお知らせ

いよいよ今月15日、伊丹十三記念館は開館10周年を迎えます。
そんな5月の記念館ショップから、皆さまにお知らせです。

◆10周年記念商品:4711オーデコロン販売開始!

開館10周年を記念して、記念館ショップ店頭にて4711オーデコロンの販売を開始しました。

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「4711」とは、世界で最も歴史のあるオーデコロンブランドです。1792年にドイツのケルンで「不思議な水」として誕生し、この不思議な水が「オーデコロン(ケルンの水)」の名で広まって、オーデコロンの名前の由来になったと言われています。

200年以上経った今もなお多くの人々に愛されるこのオーデコロンを、伊丹さんも愛用していました。記念館の収蔵庫にも収められていますので、これまで収蔵庫ツアーに参加いただいた方の中には、ご記憶の方もいらっしゃるかもしれませんね。

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このたび取り扱いを始めた「4711オーデコロン ナチュラルスプレ ー」は使いやすいスプレータイプ。上品で、すっきりと爽やかなシトラスの香りです。ショップ店頭ではサンプルをご用意していますので、記念館にお越しの際はぜひお試しくださいませ。(オンラインショップでの取り扱いはございません。)

◆「マルサの女2」缶バッジプレゼント!(対象期間5月1日~5月31日)

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上でご紹介した4711オーデコロンと、一足早く今年1月から販売を開始した、同じく10周年記念商品の赤Tシャツ。対象期間中にこのいずれか、または両方をお買い上げの方に「マルサの女2」缶バッジをプレゼントいたします。20個限定です!
記念館ショップでは伊丹さんのイラストや写真をデザインしたオリジナル缶バッジを販売していますが、服だけでなくバックや帽子につけたり、コルクボードに飾ってインテリアにしたりするのにも利用できる缶バッジは、一年を通してショップの人気商品です。しかも!この缶バッジは非売品で販売は行っていませんので、この機会にぜひどうぞ。

◆金榮堂ブックカバープレゼント!(対象期間5月1日~5月31日)

毎年ご好評いただいている、金榮堂ブックカバープレゼントを今年も行います!
惜しまれながら1997年に閉店した北九州小倉の老舗書店・金榮堂(きんえいどう)。背中に猫を乗せて読書をする男性、入浴しながら読書をする男性が描かれたこの金榮堂のブックカバーイラストは、伊丹さんがデザインしたものです。
金榮堂が閉店した後は「幻のブックカバー」となっていましたが、金榮堂書皮復刻製作委員会よりご提供いただいた復刻版ブックカバーを、期間中、対象商品(※)をお買い上げの方にプレゼントいたします。

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※対象 商品:伊丹十三記念館ガイドブック/映画『お葬式』シナリオつき絵コンテノート/伊丹万作エッセイ集/伊丹十三の本/伊丹十三の映画(オンラインショップも対象です!)

スタッフ:山岡

2017.04.24 第9回 伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました

第9回伊丹十三賞を星野源さんにお贈りする贈呈式を、国際文化会館で開催いたしました。

00_9th.jpg左から、選考委員・周防正行さん、宮本信子館長、
受賞者・星野源さん、選考委員・南伸坊さん、選考委員・中村好文さん

 

4月17日(月)。天気予報を見て、何日も前から心配していた空模様......松山空港からの午前の便で追い越した雨雲が、16時頃、東京へやってきてしまったのですが......

01_9th_garden01.jpg01_9th_garden02.jpg記念の集合写真、お庭で撮りたかったですね......(☆)

それでも、お足元の悪い中、たくさんの方がご来場くださって、伊丹十三賞を祝ってくださいました。とても嬉しかった一日をレポートさせていただきます。

02_9th.jpgお客様と取材の方々で満員です。
ステージが遠いこと......(

すでに多くのメディアで詳しく報じていただいた贈呈式ですが、最後までどうぞお付き合いくださいませ。

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祝辞 選考委員・南伸坊さんより

第1回の贈呈式では、伊丹さん・糸井重里さんから若い人たちへたのしい連鎖が続いていくことを祝福してくださり、第5回の贈呈式では"本人術"で池上彰さんになったときのことを交えてご祝辞を述べてくださった南さん。さて今回は――

星野源さん、伊丹十三賞受賞おめでとうございます。そして、ありがとうございます。受賞してくださって、贈呈式にもご出席いただきました。

私たちは伊丹十三さんが大好きで、それは、伊丹さんの作るものがいつも新しくて、おもしろくて、たのしませてくださったからなのですが、その伊丹さんの仕事をいつまでも忘れてほしくないし、たのしんでほしい。そして、伊丹さんのことをずっとみなさんに覚えていてほしい、という気持ちで、この賞はスタートしたのでした。

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星野さんは、伊丹さんの『タンポポ』(1985年)を「大好きです」と著書でふれられています。

『タンポポ』が大好きです。伊丹さんのエンターテインメントな作品が大好きです。でもその内側には異常なこだわりとラディカルな心がメラメラと燃えている感じがします。カッコいいです。(『働く男』より。単行本、マガジンハウス、2013年 / 文庫、文藝春秋、2015年)

と書かれています。うれしいです。

さらにうれしいことには、同じ本で、ハナ肇とクレージーキャッツについて、こんなふうにふれておられます。

クレージーキャッツの曲や映画を元にした『オヨビでない奴!』という、植木等さんも出ていたドラマを小学生のときにビデオに録って何度も何度も観てました。それがきっかけで中学生のときクレージーキャッツのCDを買い、それからどっぷり。そのドラマも、映画も、曲も、自分にとってバイブルです。(同じく『働く男』より)

とあります。私と、一緒です。(場内笑)

私も中学生のとき、植木等さんにめちゃくちゃ影響を受けました。
遠足のバスの中、まわってきたマイクで「スーダラ節」と「無責任一代男」を歌って大ウケしたんですが、一段落したところでバスガイドさんが「無責任は、いけませんね?」と一言入れたことにモーレツに腹が立ちました。「何も分かってない!」


中学生が受け取っていたのは、植木さんのたのしさでした。中学生が持っている真面目さや正義感と、そのたのしさはまったく矛盾していない。そのことがいちばん大事なことなのに。

大人になって、幸運にも、植木さんにお会いする機会がありました。私は急き込むように「私の本当の友達は、全員、植木さんに思想的影響を受けています」と言いました。植木さんは、すぐ「ああー、それはまことに責任を感じます」とおっしゃいました。隣で聞いていた桂文珍さんは大笑いでした。
でも、私は少し淋しかった。どれだけ植木さんにたのしませていただいたか。そのご恩をお伝えしたかったのに。もっと普通に「大ファンです」と言っとけばよかった、と後悔しました。

なぜ伊丹十三賞なのに、こんなに植木さんのことばっかり(場内笑)長々と話したのかというと、私はあまりにも植木さんが好きなので、プロアマを問わず、誰かが「スーダラ節」を歌っているのを聞くと、必ず不平を言っていました。「スーダラ節」は植木さんが歌わなくちゃあ、「スーダラ節」じゃないんだ! とまで思っていました。
私は、実は、音楽についてはまったく無教養なので、私が星野さんの音楽についてどのようなことを述べようと、まったく無意味なのですが、星野さんが「スーダラ節」を歌っているというのを聞いて、Youtube(場内笑)で探してみました。

04_9th.jpg南さんのお話のところどころに、とても自然に笑みをこぼす
星野さんの表情、とても嬉しく拝見しました。

驚きました。あの「スーダラ節」を、星野さんは、しんみり、歌っていました。
私は「この人は分かっているなあ!」と思いました。植木さんがこの曲を渡されたときにどれだけ悩んで、工夫をしたか。それを分かっている、と思いました。

そのあと、星野源さんがタモリさんと「スーダラ節」をクラボ......コラボ、言い慣れない言葉です(笑)、コラボした、という噂を聞いて、これもぜひ聴いてみたいと思って、必死に探しました。おじいさんだから、Youtubeとか、慣れない(場内笑)。

やっとたどり着いて、ビッックリしました。すごく、たのしい。「タモリを引き込んだ星野源が偉い!」と思ったところですが、これは呼び捨てです(笑)。

たのしい贈り物をくれる人を、私は尊敬します。
「芸術とは、たのしい記号である」と言ったのは、哲学者の鶴見俊輔さんです。
「伊丹さんのエンターテインメントな作品が大好きです」と言ったのは、星野源さんです。
星野さんのおっしゃりたかったのは、私の気持ちと一緒でしょう。

新刊の『いのちの車窓から(KADOKAWA、2017年)、すばらしいです。『働く男』も『蘇える変態(マガジンハウス、2014年)もよかった。けど、最新刊が最高です。

星野源さん、おめでとう。おめでとうございます。それから、ありがとうございます。
私は、この賞の第1回の受賞者、糸井重里さんにも同じあいさつをしました。

たのしい贈り物をくれる人に私は感謝します。
たのしいから。

正賞(盾)贈呈 選考委員・周防正行さんより

受賞していただいてありがとうございます。
選考委員はこれが初めてで、これひとつしかやっていないのですが、選考会で、この人に賞をもらっていただきたい、と決めたあと、『選考委員ってこんなにドキドキするものなのか』と。そして、喜んで賞を受けていただくと『選考委員ってこんなにも嬉しいものなのか』と。そういうことを教えてくれたのが伊丹十三賞です。
今回も、受賞していただいて、ありがとうございます。
これからも楽しみにしています。

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副賞(賞金)贈呈 宮本館長より

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受賞者スピーチ 星野源さんより

敬愛する植木等さんの話題、鶴見俊輔さんの名言も飛び出した南さんのご祝辞を受けて、星野さんは、ご自身のお仕事について、そして、伊丹十三とこのたびのご受賞について、どんなお話をお聞かせくださるのでしょうか――星野さん、お願いします!!

このたびは、素晴らしい賞をいただきまして、本当にありがとうございます。今、お話を聞いていて、ものすごく、心臓から、胸の内から感動させていただいております。

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僕が小さい頃、たしか『マルサの女』(1987年)や『ミンボーの女』(1992年)がよくテレビで流れていて、それを観ていたんですが、20代の半ば頃に、もう一度観直してみたいなと思っていたら、ちょうどDVDボックスが出ました。
そのときが、大人になってからしっかり触れる伊丹さんの映画体験だったんですが、『タンポポ』(1985年)を観て、「なんておもしろいんだ」、「こんなにおもしろいんだ」と痛感して、そこから自分の中で伊丹さんブームが訪れ、エッセイを読んだり、映画を全部観たりしました。
その少しあとに出た『伊丹十三の本(「考える人」編集部編、新潮社、2005年)も読んで、『13の顔を持つ男(伊丹プロダクション・テレビマンユニオン、2007年)というDVDも観ました。てっきり映画監督だけだと思っていたんですが、本当にいろんな活動をされていることをそこで知って、すごくおもしろいなと思ったし、かっこいいなと思いました。

ちょっと話が長くなって申し訳ないんですが、自分は中学1年生の頃から演劇と音楽を始めて、高校3年生ぐらいに文章を書ける人間になりたいと思い、それぞれ勝手に活動を始めました。音楽と演技は学校の中で始めて、それがだんだんと仕事になり、そして文章は大人になってから始めて、それもだんだん仕事になりました。

その中で、芝居の現場に行くと「音楽の人でしょ」って言われ、そして、音楽の現場に行くと「芝居の人でしょ」と言われました。どの現場に行っても、あぶれてしまう感覚というか、自分の居場所というものがないなというふうに、ずっと思っていました。
それに加えて文章まで始めてしまったので、どこへ行っても「ひとつに絞らないの?」とか、「何が一番やりたいの?」と言っていただいたんですが、「植木等さんや、僕が小さい頃から憧れていた人たちは、あんなにいろんなことをやっているのに、なぜ、こんなにみんな、ひとつのものに絞ろう、絞ったほうが絶対にいい、って言うんだろう」と、個人的には感じていました。もちろん、二足の草鞋のように適当にやっていたのではだめだと思うんですが、どの仕事も本当に大好きで、「もう、こうしかできないな」って思っていたら、仕事になっていきました。
どこかのグループに属することに憧れてはいたんですけど、だいたいいつもちょっとはみ出してしまう。なんだかすごく淋しい思いをしていました。

08_9th.jpg丁寧に、真剣に、やわらかく、お話ししてくださいました。

そんな中、伊丹さんのいろんな顔を知ることによって「本当に好きなら、おもしろいと思ったことなら、何をやってもいいんだ」って思うようになりました。
受賞のときのコメントにも書いたように、伊丹さんが遠くから、ずーっと、灯台のように、サーチライトのように、灯りを照らしてくださっているんですけど、どうやってもそこには行けないようにできていて、僕の島と伊丹さんの島の間には大きな海が流れていて......それを追いかけようとした時期もあったんですが、その伊丹さんの活動を見ていて、だんだんと「そうじゃなくて、自分の場所を作れ。君は君の場所を作れ」と言われているような感覚がありました。

そして20代後半から、どこかに属するというよりも、「とにかく好きなこと、自分のやりたいことをやろう」、「一人前になりたい」、そういう気持ちでどの仕事もやっていたら、こんなに素晴らしい賞をいただくことができました。伊丹さんには「それが君の場所だよ」って言われているような気がして、すごく嬉しかったです。

僕が物心ついてから、伊丹さんが生でしゃべっているところをテレビ見た記憶はあんまりなくて、大人になってから、いろんなドキュメンタリーや番組などでしゃべっているのを拝見したり、エッセイの文を読んだりすることぐらいでしか、どんな人かを知ることはできなかったんですけど、作品を観ての伊丹さんの印象は「すごく自由な人だな」ということです。
伊丹さんは、自分の好きなものとか、おもしろいと思うことを、本当に素直に追い求めてる。突き詰めて、それをみんなに紹介したり実践することによって、周りの人がすごくたのしくなったり、日本という場所について、見ている人たちみんなが心を踊らせられたり、たのしいなと思ったり、気持ちがちょっと変わったりする。それってすごいことだなと思います。

そして、怒りや、憤りや、悲しみからも、自由だったような気がします。きっといろんなことがあったんだと思います。なのに、その怒りさえもおもしろいことに変えて、みんなに見せて、みんなが気分が悪くなるようなことではなくて、「すごくおもしろかった」っていう思いで劇場を出たりテレビのスイッチを切ったりする――そんな表現をする人はとてもとてもかっこいいと思います。僕は、そういう人にいつかなりたいな、とも思います。

先ほど(南伸坊さんから)お話のあった植木等さんも、とてもまじめな人で、「スーダラ節」を歌うのが本当は嫌だったけど、「あの歌詞は本当に人間の真理だから、堂々と歌っていいんだよ」とお父さんに言われて、歌うのを決意したと聞きました。植木さんは、そういうところも含めて、「自分は、本当はすごく明るい人間ではないけれど、たのしいものやおもしろいものを届けてもいいんだ」っていうふうに思わされたというか、「思っていいんだ」というふうにしてくれた、素晴らしい人です。

09_9th.jpg選考委員の皆さんもニコニコです

伊丹さんにも、植木さんにも、僕は直接お会いできなかったですけど、「そうやって自分が受け取ったものは、絶対に何らかの形でつながっていく」、「人は、死んでも、みんなが話題にしたり、つないでいったり、自分の栄養にして人に話したり表現したりすることによって、遺伝子はつながっていくものだ」と思っています。
僕も、そういう遺伝子を伊丹さんからもらっているので、自分の表現という形で、ちゃんと自分のフィルターを通した形で、つなげていけたらと思っております。

そして今日、『タンポポ』のドキュメンタリー(『伊丹十三の「タンポポ」撮影日記』、1986年)に出ていた玉置さん(公益財団法人ITM伊丹記念財団理事長、伊丹プロダクション社長)に初めてお会いして、宮本さんに「今度デート行きましょうね」と言っていただいて、なんというか、違う大陸だと思っていたんですけど、僕と伊丹さんの場所は本当に違う場所だと思っていたんですけど、こういう場所へ来させていただいて、直接お話しさせていただいて、「大陸は海の中でつながっていたな」と、すごく思います。

嬉しすぎて、今日はあまり寝れないと思います。このたびは受賞、本当に嬉しいです。ありがとうございました。

10_9th.jpg星野さん、こちらこそありがとうございました!

宮本館長よりご挨拶

星野さん。おめでとうございます。そして、ほんとうにありがとうございます。
星野さんが伊丹さんをよく知っていらして、そして、いろんなことを感じてくださってたっていうことをスピーチで伺って、まるで、本を読んでいるかのような、とても、すばらしいお言葉と、文章でした。

残念ながら、伊丹さんは、お若い人にはほとんど知られていません。例えば、領収書なんかをもらいますときに「伊丹プロダクション」と言いますと、その「伊丹」が若い方は書けない――「イトウの伊にジンタンの丹、というのはちょっと古いけど、タンチョウ(丹頂)ヅルの丹というともっと古いかしら」とそんなふうにも感じていて――「ああそうだ、世の中、時代っていうのは、こんなふうに進んで行くんだ」とは思っていましたけれども、今日、星野さんのお言葉をいただいて、まだ、知らない方にね、星野さんを介して、伊丹十三の人となりと、そして仕事を、少しずつでもいいから知っていただけたら、どんなに嬉しいかと思っています。

ほんとに、大きな大きな才能をお持ちの星野さんです。ますますのご活躍を......

......「今度、記念館にいらしてね、デートしましょうね!」ってさっき約束したのね、皆さんの前で。

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いつ実現するか分かりませんけど、近いうちに。そんなこともありました。
ますますのご活躍を期待しております。ありがとうございます、おめでとうございました!

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――いかがでしたでしょうか?

南さん、星野さん、宮本館長の言葉を聞いていたら、これまでの受賞者の皆さんからいただいた言葉や、選考委員の皆さんの祝辞、伊丹十三賞で印象に残っていること、感じてきたことが一気に思い出されて、ご来場のお客様たちが記念撮影のために準備をしていらっしゃる頃には、私は、頭の中の言葉の渦潮にぼうっとなっていました。

12_9th_m.jpg今年の集合写真はお部屋の中で撮影しました。
ほぼ日のみなさん、ご誘導ありがとうございました!

第9回まで開催して、歴代受賞者の顔ぶれはどんどん多彩になっていっています。どなたもとても個性的。でも、皆さんが、ご自身について、伊丹十三について、語ってくださったこと、その言葉にあらわれているお仕事ぶりやお人柄のうちには、受賞者全員に(そして、すべての「たのしい贈り物をくれる人」に)つながる共通項をたくさん見つけることができるな、と感じています。

たとえば、第1回受賞者の糸井重里さんは、「ほぼ日刊イトイ新聞」のトップページに"Only is not lonely. +LOVE"という言葉を掲げていらっしゃいます。
今回、9人目の受賞者となった星野源さんのエッセイを読んだり曲を聴いたりしているとき、伊丹十三賞のことはあまり意識していませんでしたが、「"Only is not lonely. +LOVE"の心意気をお持ちだな」と感じていました。そして、ふと「あ、これまでの受賞者は、みなさんそうだ」と気付きました。

こんな嬉しい"因数分解"ができる賞になることを、第1回の頃は想像できていませんでした。

13_9th_plaque.jpg伊丹十三賞 正賞の盾です。(

伊丹十三賞は「出会い」の賞です。
星野さんを通じて、たくさんの方が伊丹十三に出会ってくださったら嬉しく存じます。(初めてこのサイトにいらした方、ゆっくりしてってくださいね!)
そして、伊丹十三的な「たのしい」「おもしろい」の精神と、それを持つ方々を、この賞を通じて、広く紹介し続けたいと思います。

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さて、楽しい時間はあっという間ですね、お開きの時がやってきてしまいました。

館長~、お願いしまーーす! おっと、今年は三本締めですか!

かしこまりました、まいりましょうまいりましょう!

イヨ~ォ!!

14_9th.jpgヨッ!

14_9th02.jpgモウイッチョ!!

15_9th03.jpgやりきりました!!!

ご来場くださった皆様、ご協力くださった皆様に、心よりお礼申しあげます。
今回も、ありがとうございました。

―― たくさんの、たのしい写真に感謝 ――

撮影:池田晶紀さん(株式会社ゆかい
撮影協力:ほぼ日刊イトイ新聞乗組員のみなさん
印の写真のみ主催者撮影)

 

学芸員:中野