記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2025.10.20 第17回伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました [2]

先週に引き続きまして、贈呈式の模様をお伝えいたします。

いよいよ、受賞者・山田五郎さんのスピーチです!
山田さんは、この度の受賞を「三重に嬉しい受賞になりました」とお話しくださいました。


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受賞者・山田五郎さんのスピーチ


皆さんどうも、今日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
この度、私がこの伊丹十三賞というものを頂戴することになったわけなんですが、南伸坊さんから「大変嬉しい」という言葉がありましたけれども、私も、大変に喜んでおります。

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【※】

私の人生、賞罰とはまるで無縁な66年間の人生でございました。
今までにもらった賞というのは、大学のマスコミ関係者の人がマスコミ関係で活躍した人に贈る『コムソフィア賞』と、友だちのみうらじゅんが、その年に一番よく飲んだ友だちに贈る『みうらじゅん賞』という。
この二つしか受賞したことがない私に、伊丹十三賞という身に余る賞が贈られるようになって、長生きはするもんだなと思っております。

【若い頃「こういう大人になりたい」と思っていた人の名前を冠した賞をいただいたのが嬉しい】

ことのほか嬉しかったのは、この伊丹十三賞という賞は、「伊丹十三」という人――私どもが学生時代からリアルタイムでその活躍を観て来た人なんですね。
その洒脱なエッセイに感心したり、グラフィックに感心したり、あるいは80年代に『mon oncle』(モノンクル)という雑誌を出しておられたりとか。
その後映画を撮られたりという、そういうご活躍を目の当たりにして、面白い人だなと。
若い頃なんかは、「こういう大人になりたいな」というふうに思ったんですね。

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【※】

だから、雑誌のタイトルに使われたモノンクル、ぼくのおじさん――まさに我々の世代にとって伊丹十三という人は、いろんな、学校で教わらないことを教えてくれるモノンクル、お洒落なおじさんだったわけです。
その人の名前を冠した賞をいただいたというのが、とても嬉しい。

芥川賞、直木賞だといっても、生前の芥川龍之介を知りませんし、直木三十五に至っては著作を一冊も読んだことはないわけですよ。(場内笑)
それに比べて、伊丹十三の仕事っていうのは我々たっぷり見てきて、その伊丹十三賞をいただけたということが本当に嬉しいです。

【みんなで一緒に作り上げてきたYouTubeの番組が評価され、一緒に喜ぶことができる仲間がいるということがとても嬉しい】

そして、その授賞理由にYouTubeの番組を選んでいただいたということがとても嬉しいです。

あの番組は、実はコロナ禍にできまして。
私はBS日テレで『ぶらぶら美術・博物館』という展覧会を紹介する番組をやっていたんですけれども、コロナで展覧会がぜんぶ廃止になっちゃって。
私も困ったけれども、番組を作っている制作会社も困ったということになりまして。
そこにおります、当時ADだったワダが企画書を書いて、YouTubeで番組をやることになって。
私はYouTubeのことなんかさっぱりわかりませんから、こんなことをやって何になるんだろうと思いながら始めて。

最初の頃は観る人もいなくて、ワダのご両親が一日中回しっぱなしにして閲覧数を稼ぐっていう。(場内笑)それでも100もいかないわけですよ。
...ということから始まって、それがいま70万人だかになりました。(2025年10月20日現在、チャンネル登録者数は74.8万人)

70万という数字は、私が雑誌編集をしていた時にも達成したことのない数字なんです。自分が担当した雑誌で一番売れたのはたしか62万部なんですね。
まさかここで70万という数字を達成するとは思いませんでした。

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数もさることながら、先ほどの伸坊さんのスピーチのように「あ、こんなによく観てくれてる人がいるんだ」ということに驚いております。
そういう、わたし一人の力じゃなくて、東阪企画という制作会社なんですけれど、そこのスタッフみんなで一緒に作り上げてきたYouTubeの番組が評価された。
つまり、一緒に喜ぶことができる仲間がいるっていうことがとても嬉しいです。

 

【伊丹さんは絵の神童。絵を紹介するYouTube番組を評価されたことが嬉しい】

今回受賞した時に、記念館から『13の顔を持つ男』というDVDと、伊丹十三さんの業績を紹介する本をいただいて、改めて見直したんです。

僭越ながら私が改めて思ったのは、伊丹十三という人は、何よりもまず絵の神童だったと思うんですね。
セザンヌと違って、小さい頃から抜群に絵がうまいんですよ。
絵を描くっていうことは見ることでもあるから、観察眼に繋がって、ああいう洒脱なエッセイや、最終的にその才能の全てを映画というところに集約していったんだなと改めて思いました。
絵の神童である伊丹十三の賞をもらった、絵を紹介するYouTubeの番組を評価されてもらったということが、三番目に嬉しい点です。

そんなこんなで、三重に嬉しい受賞になりました。
宮本信子館長、選考委員のみなさん、ありがとうございます。
そしてお集まりのみなさん、今日はどうも本当にありがとうございます。(場内拍手)


宮本信子館長のご挨拶

今日はお忙しい中、本当にたくさんの方にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
改めまして、山田五郎さん、本当におめでとうございました。(場内拍手)

受賞のコメントに、「最高の励ましをいただきました」というお言葉が山田さんからございまして、私はちょっと、胸が熱くなりました。

いやいやこちらこそ、もらっていただいて本当に嬉しく、ありがたいと思いました。
ありがとうございました。(場内拍手)

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【※】

山田五郎さんの、このおめでたい受賞に乾杯をします。
そして、山田さんと奥様の礼子さんに、エールを送りたいと思います。

乾杯! (乾杯後、場内拍手)

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【※】左から周防正行さん、酒井順子さん、山田五郎さん、
宮本信子館長、南伸坊さん

 

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【※】正賞・盾を持ってニッコリ

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以上、贈呈式の様子をご紹介させていただきました。

このあとお庭で集合写真の撮影が行われ、お飲み物・軽食をご用意したご歓談の時間となりました。

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【※】お庭にて

今回の受賞について「嬉しい」と何度も口にされていた山田さんのスピーチ、いかがでしたでしょうか。

そんな山田さんを中心に、贈呈式は終始和やかな、それでいてあちこちから楽しそうな話し声の聞こえる、いい式典となりました。

改めまして、山田五郎さん、選考委員の皆さま、ご来場くださった皆さま、関係者の皆さまに心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

今後とも、伊丹十三賞をよろしくお願いいたします。


............というところで毎回レポートを終わらせていただくのですが、今年はなんとですね、お伝えしてきた贈呈式の模様などをYouTubeでご覧いただくことができます!

山田五郎さんと一緒に、今回の授賞理由にもなったYouTube番組を作り上げてこられたスタッフの皆さまが、多くの方々に式典の様子がご覧いただけるよう作成してくださいました。ニュース欄でもご紹介していますので既にご覧になった方もおられると思いますが、まだの方はぜひご覧くださいね。

『山田五郎 オトナの教養講座』(←こちらをクリック)


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【※】の写真は、撮影:池田晶紀さん(株式会社ゆかい)、

撮影協力:株式会社ほぼ日のみなさんです。

スタッフ:山岡