記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2007.12.23 照明の妙

 記念館の木々は落葉し、本格的な冬になりました。午後5時を過ぎると、夜の暗闇が辺りを覆いはじめます。それでもスタッフは、いつもと変わることなく働いています。
 ご来館下さったお客様は、展示を観たり、カフェでコーヒーを飲んだりと、思い思いに楽しんでいかれるのですが、そんな楽しみ方の一つには、中村好文さんが設計なさった建築を味わうことも挙げられると思います。焼き杉で覆われた外観や、中庭を囲む回廊も、ミュージアムを楽しむ一つのエッセンスだと我々スタッフは考えています。

 暗くなると、中庭にはライトが点きます。季節や時間帯によって様々に表情が変わる回廊は見ていて飽きることがありませんが、なかでも間接照明に浮かび上がる風景は、柔らかく幻想的な世界を現出させます。

20071223b.jpg 12月には、新たに正面玄関の前にもライトアップ用の照明を設置しました。
 外側が黒で覆われている記念館は、ライトを浴びると陰影が強調されて、いつも見ている我々でさえ印象の違いに驚きます。
 冬は寒くて日が短いので、なかなか外出する気が起こらないかもしれませんが、陽が落ちて一味違った記念館を味わえる絶好の季節でもあります。暖かい服装で、ぜひ一度足を運んで見て下さい。

学芸員:浅利

2007.12.13 カフェのイラスト

20071213a.jpg 青々としていた中庭は冬模様に衣替えをし、カフェから眺める景色は、夏とはまた違った味わいをだしてくれています。
 カフェに入ると、真っ先に目に飛び込んでくるのが、23年前、映画『タンポポ』の製作時に伊丹さんが描かれた出演者の方のデッサンです。
 この絵には、みなさん驚かれるのですが、洋服のしわやラーメンの湯気など、本当に細かいところまで丁寧に描かれています。
 「本当に伊丹さんが描いたの?」と疑われるお客様も多いですが、当館の館長代行が実際描いている現場に立ち会っていましたので、間違いなく伊丹さんが描いたものです。

  20071213b.jpg その横に飾ってある、お父さんの伊丹万作さんの描いた、張り子の犬の絵や、次男万平さんの描いた企画展示室の顔出しパネルにもなっている『お葬式』のポスターなど見てると、親子代々、絵の才能のある血筋なんだなと感じさせられます。
 常設展示室の方でも才能あふれる伊丹さんのデッサンがたくさん展示されていますので、ぜひご覧くださいませ。
 伊丹さんの絵に触発され、先日カフェで、一生懸命中庭の風景画を描いている方がいらっしゃいました。とても微笑ましい光景でした。

スタッフ:

2007.11.12 記念館での番組収録

20071112a.jpg 11月8日(金)、ここ伊丹十三記念館でNHKの番組収録が行われました。出演は、山本晋也監督、渡辺俊雄さん、そして宮本館長の3名。
 年末に、NHK BSの「衛星映画劇場」で伊丹映画の内の「女シリーズ」(『マルサの女』『マルサの女2』『ミンボーの女』『スーパーの女』『マルタイの女』)が毎日(!)順を追って放映され、期間中の5日間は、毎回 放映作品にちなんだ新たなお話が聞けるという趣向です。
 いつもは、「静」の印象のある企画展示室がこの日は心なしか華やぎ、「生」の様相をかもし出し、スタジオに早変わりしました。
 撮影が行なわれたのは、(一度ご来館いただいたお客様なら思い出していただけるでしょうか?)お葬式のセット前、監督のカメラが据えられている辺り。
 いつもだったら私たちは、一視聴者としてテレビの前で、山本監督、渡辺さん、宮本館長の3人のおしゃべりする姿を見たり、3人のトークを楽しんだりするわけですよね。実際の現場を見てみると、この3人の向かいでいろんな仕事、役割の方々がチームワークよくキビキビと動かれていました。番組が作り上げられていく様子をほんの一部分ですが垣間見ることの出来、撮影現場の空気を体感しました。
 この放映を機会に是非、伊丹映画をリアルタイムで見ていない世代の方にも存分に楽しんでいただきたいと思います。そして、映画を見て、「この映画の監督 伊丹十三って、どんな人だったんだろう?」とちょこっと思ったら気軽に、記念館に足を運んでみてください。
 年末は12月28日(金)まで、年明けは1月2日(水)から開館しています。初詣かたがたどうぞご来館ください。

スタッフ:多胡

放映に関する情報
チャンネル:NHK BS2
日時とタイトル:
12月25日(火) 20:30? 『マルサの女』
12月26日(水) 20:30? 『マルサの女2』
12月27日(木) 20:30? 『ミンボーの女』
12月28日(金) 20:30? 『スーパーの女』
12月29日(土) 21:00? 『マルタイの女』

2007.11.06 張り子の犬

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 伊丹十三記念館内カフェタンポポの壁に、1枚の絵が飾ってあります。「ハリコノイヌトトラガ、ナカヨクアソンデヰルトコロ。」と書かれたその絵は、伊丹十三の父で映画監督であった伊丹万作が、伊丹十三の誕生を記念して描いたものです。
 一般に犬はお産が軽いと言うことから、張り子の犬は安産と子育ての縁起物として知られています。
 「ヨーロッパ退屈日記」や「女たちよ!」などのエッセイからも伊丹十三のインテリぶりにはいつも驚かされていますが、この絵を見ていると、「子供の誕生を記念して絵を描くような父親に育てられるとこんな人物に育つのだなあ。」と納得させられてしまいます。
 張り子の犬は伊丹家に縁があるのか、伊丹十三も次男が産まれる際に知人から張り子の犬をもらっています。そのことは「張り子の犬」という題のエッセイに書かれています。そのエッセイに挿絵として使われた張り子の犬のデッサンは常設展示室内に展示してあります。是非ご覧下さいませ。

20071106b.jpg さて、そのイラストはポストカードや缶バッヂとして伊丹十三記念館のオリジナルグッズにも使われています。また、そのイラストをもとに作られた張り子の犬は、建築家の中村好文さんが職人に依頼して、一つ一つ手作業で仕上げられているものです。それらの商品は受付横のショップにおいてありますので、是非お立ち寄り下さい。

スタッフ:川又

2007.10.28 第一回主催イベント「『お葬式』上映とティーチイン」を行いました

20071028a.jpg 伊丹十三の映画は「面白い!」と思います。これは身贔屓になってしまいますけれど、私は現在の仕事に就く前から、伊丹映画を好きで見ていました。身近でありつつも意外な題材(葬儀の顛末『お葬式』、ラーメン『タンポポ』、税金『マルサの女』など)を取り上げ、分かりやすく、時にシニカルに、ユーモアを込めて描き出してくれます。
 そんな伊丹映画を見れば見るほど、「あの場面はどうやって撮影したのだろう?」「このシーンの狙いは何かな?」などと、より踏み込んで作品について知りたくなります。今回のイベントは、伊丹映画のスタッフをゲストに招き、『お葬式』を上映した後に映画作りの現場を語ってもらおうと言う企図から生まれました。
 ゲストの前田米造さんは伊丹作品10本のうち8本で撮影監督を務めています。玉置泰さんは伊丹作品10本すべてのプロデューサーです。伊丹十三の映画作りを知り尽くしている方々です。トークでは、『お葬式』が取られるまでの経緯、印象的だった伊丹監督の演出シーンなど関係者ならではエピソードをたくさんお話頂きました。
 「ティーチイン」というイベントの面白さは、トークだけでなくご来場のお客様がゲストに直接質問できるところにあります。質疑応答の際には、会場から多くの質問が前田さん、玉置さんに寄せられました。お二人の話に触発されたせいか、質問も専門的なものが多く、『お葬式』のスクリーンサイズに関する伊丹監督のこだわりや、特撮の方法など、まさに「映画作りの舞台裏」を垣間見ることが出来る内容だったと思います。
 第一回主催事業と言うことで、スタッフは緊張して臨みました。大きなトラブルもなくイベントを終えられたことに、今は安堵の胸を撫で下ろしています。イベントにご協力いただいた皆様、そして当日ご来場いただいた皆様、本当にありがとうございました。

学芸員:浅利

2007.10.24 中庭の桂の木

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 記念館から見上げる空は秋風の通り道が見えるかのように澄んでいます。
 はじめましてスタッフの種岡です。今日は私のお気に入りの場所のひとつ、中庭についてご紹介します。ゆったりとした空間が流れる中庭には記念館のシンボルツリー『桂』の樹があります。ハートのような形をした葉は、落葉するとなんとも甘いカラメルのような香りがします。スタッフの皆で「なんで枯葉なのに?こんない甘い香りなの?」って不思議がっています。食べてしまいたいくらい甘い香りがします。また建築家の中村好文さんが一生懸命に探してきてくださった中庭の『桂』は1本の樹から2幹が寄り添って立つ双樹なんです。「めずらしい!良く見つけてきましたね!」って来館された方々に言われます。皆さんお写真を撮っていかれます。
 (スタッフに声かけて頂ければお撮りしますのでお気軽にお声かけて下さいませ!)

20071024b.jpg 夕方になるにつれ中庭には電灯がともりはじめます。この時間にぜひ皆様に見て頂きたい空間です。あと、しとしと雨の日もまた良いんです。回廊をかこむ丸い石の列がピカピカ光って、、、「雨の日も素敵でしょっ」て言ってるみたいです。ぜひ記念館にいらした際には中庭のベンチでゆったりとした時間を過ごして頂ければ幸いです。

スタッフ:種岡

2007.10.01 リニューアルオープンしました!

20071001a.jpg 5月15日に開館して4ヶ月を過ぎましたが、この度ようやくホームページをリニューアルすることができました。伊丹十三記念館についてはもちろんのこと、伊丹十三の仕事について、より多くの方々に知っていただけるようにと、スタッフの間で検討を重ねてきました。リニューアル以後も、記念館オリジナルグッズのネット販売など、もっと便利に、そしてもっと魅力的な記念館運営に邁進していきたいと考えています。

 リニューアルに伴って、これからは記念館便りをお届けしていきます。記念館で働いていると、伊丹十三の仕事や人柄には驚かされることが多くあります。そんなスタッフの新鮮な報告として、職場での出来事や伊丹十三についての豆知識など、一味違った面白い情報を提供できたらと思っています。更新は月に1度か2度くらいの予定です。

  これからも伊丹十三記念館を宜しくお願いします!

学芸員:浅利