記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2024.05.27 『開館17周年記念収蔵庫ツアー』開催いたしました

17周年ネタが続いてまことに恐縮――
2024年5月15日は、伊丹十三記念館の17回目の開館記念日でした。

記念館が地球上に誕生してから太陽の周りを17周!
なかなかに感慨深いものがありますが、私たちがこうして一日一日活動を重ねていけるのは、何を措いてもお客様方のおかげであります。心よりお礼申しあげます。

というわけで、開館記念日に先立ち、4月19日(金)・20(土)・21日(日)の3日間、各日2回の計6回、定員各回4名様、ささやかながら感謝の「収蔵庫ツアー」を開催いたしました。

記念館の収蔵庫の2階には"展示風収蔵"になっているコーナーがございまして、直筆の原稿・原画、衣類、食器などの愛用品や書籍が収められています。
それらの収蔵品に関する伊丹十三ならではのエピソードを交えながら、1時間ご見学いただく催しが「収蔵庫ツアー」です。

20240527_17th tour_1.JPGこんな感じでご案内しています。こちらの写真は、
「伊丹十三とインターネット」について説明中の図。
ツアー3日目、4月21日(日)午前の回にご参加の皆様です。

開館1周年から周年記念イベントとして開催し続け、すっかり定番化していた収蔵庫ツアーが途切れたのは、13周年だった2020年。例の、新型コロナウィルスの大流行のときでした。
「コロナめ~、よりにもよって"十三"周年を妨害するとは!!」と恨めしいやら悲しいやらの思いをしたものですが、14周年も15周年も16周年も開催できず......今年、やっと復活できました。なんと5年ぶりの開催!

久しぶりの収蔵庫ツアーだと意識し過ぎたせいか、いつもとは違う緊張に見舞われましたが、終始、参加者の皆様のあたたかい眼差しに背中を押していただき、全日程を完走することができました。

お客様方から頂戴したご感想と、ご紹介した収蔵品の写真ででレポートさせていただきます。

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個性的なイメージが強かったのですが、今回、とても家庭的な面も感じられて身近に感じました。地元に住んで前々から気になっていたのですが、やっと来られて幸せな時間でした。ありがとうございました。

原画や自筆の原稿に感動しました。勝手に神経質そうな字を書かれるのかと思っておりましたが、意外とチャーミングな字で驚きました。また、伊丹さんの審美眼にかなったものをとことん使いこまれるところが印象に残りました。

20240527_17th tour_2.jpgエッセイ「ブーツ」テキスト部分の原稿
(『ぼくの伯父さん』所収)

とても楽しいツアーでした。この記念館を訪れたのは16年ぶりくらいですが、あらためて、伊丹さんの才能とセンスの良さを感じました。詳しく説明してくださって、ありがとうございました。宮本館長さんにも、ぜひお会いしたいです。

あまり見ることのない収蔵品を見ることができ、楽しく過ごせました。伊丹十三さんの在りし日のことがしのばれます。昔のこと、自分の若い頃をなつかしく思い出しました。

収蔵庫ツアーの事、初めて知って参加しました。当時の事をなつかしく思い出すとともに、もっと作品を残してほしかったなあと思いました。そして今の時代に生きていらっしゃったらどんな作品を作ってくれたろうと思いました。

伊丹さんの映画作品をもっと鑑賞したかったです。ありがとうございます。

20240527_17th tour_3.jpg愛用した甲州印伝グッズのひとつ
青海波文様の信玄袋

1つ1つのものに、伊丹さんのこだわりが感じられて面白かったです。細かい質問にも笑顔で答えていただきありがとうございました! ガイドさんの伊丹十三愛も伝わりました。

自分が職としているデザインに通ずること、参考になることがたくさんあって楽しかったです。

映画人としての伊丹さんしか存じあげてなかったので、もう少し予備知識を携えて参加すべきでした。次回までに色んな事を勉強して参りたいです。詳細で熱いご説明をありがとうございました。

伊丹十三が手掛けた映画の資料や物がたくさん見られたので、とても貴重な経験をする事ができました。映画もまだ観られていないので、観てみたいです。

20240527_17th tour_4.jpgMacintosh PowerBook 5300ce
シナリオ執筆やレイアウト作業に大活躍

詳しく説明していただき有難うございました。伊丹さんはいろんな事に深く興味を持たれる方だとつくづく思いました。荘村清志さんと従兄弟だと知り良かったです。

衣食住すべてに伊丹さんの個性がつらぬかれています。改めて映画を見直し新たな発見をしたいと思います。ありがとうございました。

今回は珍しいものを紹介いただきありがとうございました。湯河原の部屋はリアルに再現されていて、見ごたえありました。ファッションのところもとてもよかったです。組み合わせしたものも見てみたいと思います。

中国服がよかった。ありがとうございました。

20240527_17th tour_5.jpg映画監督・伊丹十三の"トレードマーク"だった
オーダーメイドの中国服。刺子の半纏との重ね着

丁寧に解説していただいてとても楽しいツアーでした。衣類や原稿などから、伊丹さんの人となりがわかって良かったです。

とても素晴らしい内容で感動いたしました。また来たいです。

この度は、これほどまでに大変貴重な夢のようなひとときを過ごすことができ、一生の忘れられない経験となりました。伊丹さんが生きておられた時代を共に生きてきたひとつひとつのものが呼吸をしているように伊丹さんの人生と芸術を力強く支えていたこと、1つ1つを愛して大切に愛でておられた伊丹さんの生き様、周りの方々を愛しておられる姿と重なり、より深く、伊丹さんの映画、エッセイや作品、著書、俳優業、イラストetc...全ての芸術への尊敬と愛が強まりました。伊丹さんがご家族のみなさま、ご関係者のみなさまと共に大切に過ごしてきた日々の中で、収蔵されている品々を長く大切になさっておられたことをおもうと、目頭が熱くなるおもいがいたしました。拙い文章で大変恐縮ではございますが、いただいたこの想いと熱をまた自分の中で昇華していけるように、精進をすすめてまいりたいとおもいます。本当にありがとうございました。皆様日々健やかにお過ごしできますように。

20240527_17th tour_6.JPG湯河原の伊丹邸の一室を再現したコーナー
丸いテーブルは家族の食卓、本棚には本がビッシリ!

貴重な収蔵展示を見せていただき、感動しすぎて言葉にできないほどでした。伊丹十三さんの普段知る事ができない日常生活を感じられ、より深く魅力を知り、学芸員の中野さんの素敵な解説で本当にありがたく素敵な時間を過ごさせていただきました。

伊丹十三さんの人間性の豊かさ、スケールの大きさを痛感致しました。初の記念館見学、まことに有意義でした。又、説明の方がわかり易く話して下さって、時々の質問にも気軽に答えて下さって、道中、心豊かに見学できました。ありがとうございました。身内の者や友人にもPRし、同行させていただきます。

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名物イベントでも5年もお休みしてしまったから忘れられているんじゃ......との不安をよそに、多くの方がご応募くださって感激いたしました。
そして、募集してみると、「収蔵庫ツアーというイベントがあるのを始めて知りました」という方が案外多いことが分かり、そういう点でも「やっぱり開催することにしてよかったな」と思いました。

今回の収蔵庫ツアーは、ほぼ全ての回が抽選となりましたため、落選となった方、申し訳ございませんでした。
また来年4月に開催したいと思っておりますので、募集情報を公開する3月上旬頃、ホームページを覗いてみてくださいましたら幸甚です。

伊丹十三記念館のメンバーズカード会員制度では
ご優待特典として年2回収蔵庫をご見学いただける
会員様限定ツアーをご用意しております。

「開館して17年」とお伝えすると「え~、そんな風に見えない!」とビックリなさるお客様がたくさんいらっしゃいます。(自分が実年齢より若く見られる以上に嬉しいんですよねぇ(笑))

修繕にかかる費用は決してお安くありませんが、いつまでも若々しい記念館でいられるよう、また、スタッフも若々しさを維持しながら成長していけるよう、一同努めてまいります。
18年目もどうぞよろしくお願い申しあげます!

20240527_7.jpg20240527_8.jpg改正博物館法における「登録博物館」の認定証とプレートをいただきました!
5月18日(土)「国際博物館の日」より、プレートをロビーに掲出しています。

学芸員:中野

2024.05.20 開館17周年


5月15日、伊丹十三記念館は開館17周年を迎えました。
17周年記念日には当館の宮本信子館長の記念館便りが更新されました。
ご覧いただけましたでしょうか。

宮本信子館長からのメッセージ

5月15日・伊丹十三記念館は17周年を迎えました!


メッセージ内の
「ついこの間のような~~、もうずっと昔のような~~(笑)」
この一文の通り、2007年5月のことをついこの間のようにも、もうずっと昔のことのようにも感じます。


最近では生前の伊丹さんをご存知ない世代の方のご来館も目立ち、月日の流れを感じるところです。


開館当初の中庭

0520-1.jpgのサムネイル画像


開館から17年が経過した現在の中庭

0520-2.jpgのサムネイル画像


開館当初の中庭の桂

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開館から17年が経過した現在の中庭の桂

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開館当初の伊丹十三記念館の外観

0520-5.jpgのサムネイル画像

開館から17年が経過した現在の伊丹十三記念館の外観

0520-6.jpgのサムネイル画像

写真を見比べてみると時は確実に経過しているようです。

今後とも伊丹十三記念館をよろしくお願いいたします。

スタッフ:川又

2024.05.15 5月15日・伊丹十三記念館は17周年を迎えました!

 

 

 

5月15日・伊丹十三記念館は


17周年を迎えました!


  

  5月の風が吹き抜ける中庭。
  大きく育った桂の木が気持ちよさそう~~。
  葉っぱと葉っぱが歌っているようです。

  

  17年前、開館日の当日を思い出していました。
  大勢のマスコミ関係の皆さんや、
  列を作って待っていらっしゃるお客様のお顔や笑い声など・・・。
  そして、受付のロビーでスタッフと円陣を組みました!

  

  ついこの間のような~~、もうずっと昔のような~~(笑)

  

  記念館を御覧になったお客様の声。
  「また来ます!楽しかった」「時間が足りない!」
  「よかった!友達にすすめます、絶対!」とか
  「こんなにいい記念館!続けるのは大変でしょうが、
  無くならないで下さい。応援しています!」

  

  嬉しいお言葉を頂いて本当に嬉しく思いました!
  お客様から励ましのお言葉をいただき最高です。
  ありがとうございました!

  

  スタッフ一同、お待ち申しております!
  又、お逢いできますように~~。
  どうかお身体御自愛下さいませ。
                 

感謝
宮本信子

2024.05.13 記念館便りは5月15日に更新させていただきます


5月13日の記念館便りはお休みさせていただきます。
次回、5月15日更新の記念館便りを是非ご覧ください。



伊丹十三記念館

2024.05.06 「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」

あっという間にゴールデンウィークも最終日となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 

 

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少しずつ気温も高くなり、ご来館くださるお客さまで半袖の服をお召しの方が増えてきたなと感じます。今年もかなり暑くなるとのこと、季節の変わり目に差し掛かってまいりましたので、皆さま何卒お身体を大事にお過ごしください。

 

 

s-IMG_6238.jpg回廊のベンチにいると風がとても気持ちのいい季節になりました

 

 

わたくし事なのですが、先月、年の離れた妹がついに大学生になりました。高校生の間は出来なかったバイトもはじめ、自由度が上がった生活を満喫しているようです。

 

そんな妹がまだまだ小さかった頃、「これは何?あれは?」と様々なものを聞かれることがありました。花や動物の名前を聞いてくるまでは良かったのですが、「お昼にお星さまが見えないの、なんで?」など問題自体が複雑化してくると、すぐに答えることが出来なくてとても困った記憶があります。

 

10年以上経って、妹からの質問攻めが多々あったことすら忘れた頃、『問いつめられたパパとママの本』を読みました。身の周りの疑問がわかりやすく説明されていて、妹がもっと小さい頃に出会いたかったな、としみじみ思ったことがございました。

 

 

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そして最近『問いつめられたパパとママの本』を見返している際に「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」を読んで、はるか昔に妹と同じようなやり取りをしたことを思い出しました。

 

まだ妹は幼稚園に通っていた頃でした。動物の生態を紹介する番組で、動物の目が暗闇の中でも光っているのを見た妹が「目が光ってる!なんで?」と無邪気に聞いてきました。当時中学生だった私がどう答えたのかは覚えていないのですが、詳しい説明は出来ずに終わったのだけは覚えています。瞳に光が反射するからじゃないかなぁ、などと曖昧なことしか答えられませんでした。

 

伊丹さんはその答えを書いていてくださったので、本日は皆さまに「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」をご紹介させていただきたいと思います。

 

 眼の光る動物は、なにも犬と猫だけではないのであります。たとえば他の猫科の動物、すなわち、ヒョウ、トラ、ライオンなんかの眼もよく光るし、その他、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、タヌキ、キツネ、シカなんかも、みんな光るらしい。

 水棲動物では、ワニもすごく光るというし、魚では、サメの類も綺麗に光るという。

 では、なぜ光るかというに、それは、眼底の網膜の裏側に「光輝膜」(タペーツム・ルチドム)という、凹面の反射鏡の形をした膜があるためであるといわれる。

 では、タペーツム・ルチドムは、なぜ光るのでありましょうか。

 どうやら、タペーツム・ルチドムには蛍光性物質が含まれているらしい。ドイツのワイツェルという学者は、銀ギツネの眼を何百個も集めて、その眼からタペーツム・ルチドムを取り出して分析したのでありますが、その研究によると、タペーツム・ルチドムは亜鉛を多く含んでおったという。

 つまり、これは、現在流行の蛍光塗料において亜鉛が大きな役割を演じていることとよく合致するのであります。

 

(中略)

 

 つまり、夜光時計が光るのと原理は同じようなものです。

 つまり、タペーツム・ルチドムが蛍光性があるといっても、絶対の暗闇の中では光らない。あくまでも、あれは反射しているのでありますから、わずかでもよい、反射させるための光が必要であります。

 すなわち、微弱な光線が、外から猫の眼にはいると、それが網膜をとおって、タペーツム・ルチドムの蛍光性物質にあたってはねかえる。

 ところが、蛍光性物質の特徴はなにかというなら、波長の短い光を、波長の長い光に変える、つまり、もっとわかりやすくいうなら、見えにくい光線を、見えやすい光線に変えるのが蛍光性物質なのであります(これをストークスの法則という)。

つまり、夜の暗がりの、微弱な光線が、猫の眼にはいりますと、タペーツム・ルチドムによって、見えやすい光線に変えられて反射してくる、ということになりましょう。

しかもこれに加えて、われわれ人間の眼には、暗いところでは「暗順応」といって、極端な場合には一〇〇〇倍くらいも感度を増す、という性質があるのですね。つまり、タペーツム・ルチドムからの反射をますます強く感じる、ということになるわけだ。

(『問いつめられたパパとママの本』より「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」)

 

いかがでしたでしょうか。『問いつめられたパパとママの本』は『婦人公論』にて連載されていた「パパとママのなぜなぜ百科」をまとめた書籍です。残念ながら現在では新品を手に入れることは難しいのですが、専門家の話をわかりやすくユーモアを交えて書いてある大変面白い本ですのでぜひお読みいただきたい1冊です。

 

ちなみに、同じような問いかけをした妹本人に覚えているかと連絡を取りましたところ、質問すら綺麗さっぱり忘れられておりました。なんだか少し切ない気持ちになりました。

 

 

 

s-IMG_6235.jpg常設展示室、手まわし式イラスト閲覧台には

「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」の挿絵イラストがございます

 

 

さて、最近気温が高くなってまいりましたので、記念館ではTシャツをご購入くださるお客さまが増えてまいりました。

絵柄は三種類ありまして、一つは『女たちよ!』より「二日酔いの虫」、『ヨーロッパ退屈日記』より「スパゲッティの正しい食べ方」そして、今回ご紹介させていただきました『問いつめられたパパとママの本』より「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」の挿絵が使用されています。

 

 

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ネイビーの生地に濃い緑の線でイラストがプリントされた可愛らしいデザインとなっておりますので、今年の夏のお気に入りTシャツの1枚に仲間入りさせてみてはいかがでしょうか。

 

ちなみに、「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」の挿絵はTシャツの他にゴム印やシールにも使用されております。オンラインショップでお取り扱いのグッズもございますので、ぜひお買い求めください。

 

 

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学芸員:橘