記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2024.05.06 「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」

あっという間にゴールデンウィークも最終日となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 

 

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少しずつ気温も高くなり、ご来館くださるお客さまで半袖の服をお召しの方が増えてきたなと感じます。今年もかなり暑くなるとのこと、季節の変わり目に差し掛かってまいりましたので、皆さま何卒お身体を大事にお過ごしください。

 

 

s-IMG_6238.jpg回廊のベンチにいると風がとても気持ちのいい季節になりました

 

 

わたくし事なのですが、先月、年の離れた妹がついに大学生になりました。高校生の間は出来なかったバイトもはじめ、自由度が上がった生活を満喫しているようです。

 

そんな妹がまだまだ小さかった頃、「これは何?あれは?」と様々なものを聞かれることがありました。花や動物の名前を聞いてくるまでは良かったのですが、「お昼にお星さまが見えないの、なんで?」など問題自体が複雑化してくると、すぐに答えることが出来なくてとても困った記憶があります。

 

10年以上経って、妹からの質問攻めが多々あったことすら忘れた頃、『問いつめられたパパとママの本』を読みました。身の周りの疑問がわかりやすく説明されていて、妹がもっと小さい頃に出会いたかったな、としみじみ思ったことがございました。

 

 

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そして最近『問いつめられたパパとママの本』を見返している際に「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」を読んで、はるか昔に妹と同じようなやり取りをしたことを思い出しました。

 

まだ妹は幼稚園に通っていた頃でした。動物の生態を紹介する番組で、動物の目が暗闇の中でも光っているのを見た妹が「目が光ってる!なんで?」と無邪気に聞いてきました。当時中学生だった私がどう答えたのかは覚えていないのですが、詳しい説明は出来ずに終わったのだけは覚えています。瞳に光が反射するからじゃないかなぁ、などと曖昧なことしか答えられませんでした。

 

伊丹さんはその答えを書いていてくださったので、本日は皆さまに「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」をご紹介させていただきたいと思います。

 

 眼の光る動物は、なにも犬と猫だけではないのであります。たとえば他の猫科の動物、すなわち、ヒョウ、トラ、ライオンなんかの眼もよく光るし、その他、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジ、タヌキ、キツネ、シカなんかも、みんな光るらしい。

 水棲動物では、ワニもすごく光るというし、魚では、サメの類も綺麗に光るという。

 では、なぜ光るかというに、それは、眼底の網膜の裏側に「光輝膜」(タペーツム・ルチドム)という、凹面の反射鏡の形をした膜があるためであるといわれる。

 では、タペーツム・ルチドムは、なぜ光るのでありましょうか。

 どうやら、タペーツム・ルチドムには蛍光性物質が含まれているらしい。ドイツのワイツェルという学者は、銀ギツネの眼を何百個も集めて、その眼からタペーツム・ルチドムを取り出して分析したのでありますが、その研究によると、タペーツム・ルチドムは亜鉛を多く含んでおったという。

 つまり、これは、現在流行の蛍光塗料において亜鉛が大きな役割を演じていることとよく合致するのであります。

 

(中略)

 

 つまり、夜光時計が光るのと原理は同じようなものです。

 つまり、タペーツム・ルチドムが蛍光性があるといっても、絶対の暗闇の中では光らない。あくまでも、あれは反射しているのでありますから、わずかでもよい、反射させるための光が必要であります。

 すなわち、微弱な光線が、外から猫の眼にはいると、それが網膜をとおって、タペーツム・ルチドムの蛍光性物質にあたってはねかえる。

 ところが、蛍光性物質の特徴はなにかというなら、波長の短い光を、波長の長い光に変える、つまり、もっとわかりやすくいうなら、見えにくい光線を、見えやすい光線に変えるのが蛍光性物質なのであります(これをストークスの法則という)。

つまり、夜の暗がりの、微弱な光線が、猫の眼にはいりますと、タペーツム・ルチドムによって、見えやすい光線に変えられて反射してくる、ということになりましょう。

しかもこれに加えて、われわれ人間の眼には、暗いところでは「暗順応」といって、極端な場合には一〇〇〇倍くらいも感度を増す、という性質があるのですね。つまり、タペーツム・ルチドムからの反射をますます強く感じる、ということになるわけだ。

(『問いつめられたパパとママの本』より「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」)

 

いかがでしたでしょうか。『問いつめられたパパとママの本』は『婦人公論』にて連載されていた「パパとママのなぜなぜ百科」をまとめた書籍です。残念ながら現在では新品を手に入れることは難しいのですが、専門家の話をわかりやすくユーモアを交えて書いてある大変面白い本ですのでぜひお読みいただきたい1冊です。

 

ちなみに、同じような問いかけをした妹本人に覚えているかと連絡を取りましたところ、質問すら綺麗さっぱり忘れられておりました。なんだか少し切ない気持ちになりました。

 

 

 

s-IMG_6235.jpg常設展示室、手まわし式イラスト閲覧台には

「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」の挿絵イラストがございます

 

 

さて、最近気温が高くなってまいりましたので、記念館ではTシャツをご購入くださるお客さまが増えてまいりました。

絵柄は三種類ありまして、一つは『女たちよ!』より「二日酔いの虫」、『ヨーロッパ退屈日記』より「スパゲッティの正しい食べ方」そして、今回ご紹介させていただきました『問いつめられたパパとママの本』より「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」の挿絵が使用されています。

 

 

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ネイビーの生地に濃い緑の線でイラストがプリントされた可愛らしいデザインとなっておりますので、今年の夏のお気に入りTシャツの1枚に仲間入りさせてみてはいかがでしょうか。

 

ちなみに、「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」の挿絵はTシャツの他にゴム印やシールにも使用されております。オンラインショップでお取り扱いのグッズもございますので、ぜひお買い求めください。

 

 

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学芸員:橘