こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2023.04.10 サンドイッチ
新年度が始まり1週間程が経ちましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
記念館では桂の木にたくさんの葉がついてきました。風に揺れる枝葉がとても綺麗で、カフェをご利用のお客様や回廊を歩いているお客様が、時間を忘れて眺めていることが増え、春だなぁと感じております。
中庭の桂
玄関前の様子
3月末から松山市の各所で桜が咲きはじめました。松山城や道後公園などに足を運んだところ、お花見をしている方々がたくさんいらっしゃいました。レジャーシートを広げてお弁当を食べている方々を見て、なんだか私もうずうずしてしまい、お休みの日に簡単なサンドイッチを持って近所へお花見に出かけました。
松山城の桜
満開にはすこし早かったですが、お天気に恵まれた日でした。
我が家のサンドイッチは、耳をつけたままの食パンを焼き、具をはさむだけの簡単なもので、どちらかというとホットサンドのようなサンドイッチが主流でした。お花見の日は、焼いた食パンにツナ、チーズ、レタスをたっぷり入れたものと、スクランブルエック、ハムを入れたものの2種類を持って行きました。(残念ながらサンドイッチの写真は撮り忘れてしまいました)
心地良い風と陽気の中でサンドイッチを食べている中、はた、と気付いたことがありました。今日は伊丹さんのエッセイ、「ダッグウッドの悦び」に登場する"サラダ菜のサンドウィッチ"を試す最高の機会だったのではないか...ということに。
そのエッセイがこちら。
五つか六つの頃、私は一つの食べ物を発明した。すなわちサラダ菜のサンドウィッチである。うちの庭の小さな菜園からサラダ菜の葉っぱをちぎってきて、苺ジャムを塗りたくったパンにはさんで食べる。ただ、それだけのものであるが、このサンドウィッチがいかにうまいか。どう説明しても、みなさん半信半疑という顔でしか聞いてくださらないが、私は子供心にもサラダ菜と苺ジャムという取り合わせは絶妙であると思った。この考えはいまも変わらない。
私はダッグウッドと同じで、サンドウィッチにはなんでもかでも詰め込むのが好きなほうである。ダッグウッドを知らぬ方はないと思うが、念のためにいうなら、ダッグウッドが、つまり漫画の主人公のダッグウッドが、深夜パジャマ姿で台所に起きだし、そのへんの食べ物をあらいざらい詰め込んで、およそ手風琴ほどもあるサンドウィッチを作る。満面笑みを浮かべて食いついたとたんに、サンドウィッチの中に紛れこんでいたハーモニカがピッと鳴って奥さんを起こしてしまう。すなわち大いにやりこめられる。と、まあこういう精神の漫画が戦後大いに流行したことがあって、以来、材料を一杯に詰め込んだ特大のサンドウィッチをダッグウッド・サンドウィッチといいならわすようになったのですね。
いろんな料理に、飽き飽きして、なにを食べていいかわからない、という時にダッグウッド・サンドウィッチはまさに好適のものであります。
サラダ菜、胡瓜、トマト、ロース・ハム、やわらかく作ったスクランブルド・エッグ、オイル・サーディン、バター、ジャム、マヨネーズ、マスタード、こういうものを食卓の上に賑ぎにぎしく取り揃えて、片っ端からパンにはさんで食べる。少くとも厚さ四、五センチのサンドウィッチを作って、行儀にかまわず食べる。これがダッグウッド・サンドウィッチの神髄であります。
ただし、ロース・ハム、スクランブルド・エッグなんかは売れ足早く、すぐなくなってしまう。そういう時にぜひ試していただきたいのだ。私が五歳にして発明した、サラダ菜と苺ジャムのサンドイッチを。
(『女たちよ!』より「ダッグウッドの悦び」p173-p175)
エッセイを読んだときに、「この"サラダ菜のサンドウィッチ"は屋外で食べたら、もっと美味しくなりそう」と思い、お花見の時期を狙っていたことを手製のサンドイッチを食べながら思い出してしまったのです。ありあわせのもので作ったサンドイッチは、食材を片っ端からはさむという"ダックウッド・サンドウィッチ"に近いのですが、せっかくなら伊丹さんのおすすめの"サラダ菜のサンドウィッチ"も一緒に食べたかったのです。
桜が咲いているうちにもう一度お花見に行けばいいと考えておりましたが、予定や悪天候でなかなか行けぬまま今日に至ります。桜は散ってきてしまい残念ですが、夏まではもう少し時間があるのでピクニック日和に挑戦してみたいと思います。
皆さまも"サラダ菜のサンドウィッチ"、ぜひ試してみませんか?
『女たちよ!』と「ダッグウッドの悦び」のイラストを使用したマグネット
オンラインショップでも販売しております
さて、今週の木曜日は13日ですので、「毎月十三日は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の開催日です。2023年度の上映1作品目は『マルサの女』となっております。伊丹さんの映画の中でも特に人気の作品です。13日はぜひ記念館へご来館ください。
企画展示室の出口付近にあるプログラムもぜひご覧ください
スタッフ:橘
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