記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2023.01.09 お正月の料理

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

遅ればせながら、新年あけましておめでとうございます。
本年も、伊丹十三記念館を何卒よろしくお願いいたします。

※宮本信子館長からの「新年のご挨拶」もぜひご覧ください!

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さて皆さまはこのお正月、「黒豆」を召し上がったでしょうか?
諸説あるようですが、「まめまめしく元気に働く」ということで、健康長寿の縁起物としてお正月のおせち料理にかかせない一品といわれています。この黒豆について、伊丹さんが "日本一の黒豆ができる " という煮方をエッセイの中で紹介しているのをご存じでしょうか。

昨年12月下旬に来られたお客様の中に、「来年のお正月のおせちで、伊丹さんが紹介していた黒豆にチャレンジします!」という方がおられたので、少しだけご紹介させていただきますね。

 さて、そこで黒豆の正しい煮方でありますが、これにはさまざまな説がある。今ここに述べようとするのは、私の京都の宿における流儀でありますが、これはさしてむつかしいものではない。二日間だけ真剣にとりくめば日本一の黒豆ができるのだから、読者よ、どうかその労をいとわないでもらいたい。

 それでは、第一日目について記す。(後略)

「黒豆の正しい煮方」『女たちよ!』(新潮文庫)より

......ここまででお分かりかと思いますが、紹介されている黒豆の煮方は、なんと2日をかけて作るというもの。エッセイの続きでは、一日目、二日目の作業が紹介されています。
料理通で知られた伊丹さんが紹介する作り方、ということで本格的ですね!上述のお客様も「家族も楽しみにしてるから、年末に頑張ります!」と大変張り切ってらっしゃいました。
このお正月、ご家族で楽しく話をされながら召し上がられたのだと思います。

もう一つお正月に関係するエッセイを紹介しますと――お正月料理といえばおせちやお雑煮などが真っ先に浮かぶ方が多いかと思うのですが、伊丹さんのお正月料理は、エッセイ「正月料理」によるとフォンデュと粕汁であったようです。


 我が家の正月料理が決定した。
 一つはフォンデュ。スイス料理である。簡単にいうなら、煮立てた白葡萄酒でチーズを溶かしちぎったフランスパンをつけては食べる、というだけの素朴な料理である。発明したのは牛飼いだろう。こいつが滅法うまい。寒い夜親しい友とこれを囲んで、ブツブツ煮立つやつをパンにからめとっては口に運ぶと、腹の底から生きる力が沸いてくる。厳格なる自然食主義者の私も、この魅力には攻し難い。

 (中略)

 もうひと品、いってみようか。
 この間、菊正宗の工場からテレビ中継するということがあり、そのとき、おみやげに大量の酒粕をいただいた。その酒粕を睨んでいるうちに、粕汁を作ってみたいという欲望がむらむらと沸き起こったのである。早速魚屋に電話して新巻きの頭を二つばかり取り寄せて調理にかかる。そのとき、圧力鍋を使ったのが勝利の原因であった。私は玄米食者であるから当然圧力鍋を持っている。この圧力鍋で鮭の頭を三十分ほど煮て、粕汁へぶち込んだ。
 ひと口食べてみて、女房が「アレッ」と言った。私も「オッ」と叫んだ。うまいのである。まさに「ほっぺたが落ちそう」という味なのである。

「正月料理」『ぼくの伯父さん』(つるとはな)より

こちらもおいしそうですね!ご家族とおいしそうに食べる伊丹さんの姿が浮かんでくるようです。ご興味のある方はエッセイを読んでみてください。『女たちよ!』『ぼくの伯父さん』ともにオンラインショップで販売中です。

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<記念館よりお知らせ>

12月はお休みさせていただいた「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」。1月13日(金)は、13時より『静かな生活』(1995年)を上映させていただきます。

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ご鑑賞が始めての方もそうでない方も、お時間おありでしたらぜひどうぞ!
スタッフ一同お待ちしております。

スタッフ:山岡