記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2023.04.17 2023年度も!「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」

陽光きらめく日あり、花冷えの日あり、春風にクシャミの止まらぬ日もあり――新年度が到来いたしました。みなさまいかがお過ごしですか?

わたくしは「この季節になるたびに思うことなんだけど......スギ花粉より黄砂のほうが堪えるなぁ......」とため息まじりの毎日を過ごしております。毎年恒例の四月病(笑)。

さて、前回担当した「記念館便り」では、伊丹映画の放送および全国の映画館での上映情報をお知らせさせていただきましたが、記念館はと申しますと、「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」を2023年度も開催しております。

今年の実施順は「"女シリーズ"をまず5本 → 女シリーズ以外の作品を公開年順に5本」です。

20230417_1313_2023.jpg日程や各作品の情報など、詳しくはHPで!

7・8月を除く月の13日(休館日の火曜にあたる場合は翌14日・水曜日)の13時にお越しくださいましたら、ご入館料だけで展示と伊丹映画1本をお楽しみいただけます。

次回は5月13日(土)13時から、『マルサの女2』(1988)をお目にかけます!

税金を"取る側"の主人公の活躍で大ヒットした『マルサの女』(1987)に続く伊丹映画唯一のシリーズ化作品。そして、監督自身が「『しまった、面白い映画を作りすぎた。また税金をごっそり持ってかれるぞ!』という心境です(笑)」とチラシやプログラムでコメントしたほどのエンターテインメント税金ムービー。
脱税者を追い詰める国税査察官の板倉亮子と仲間たちvs宗教法人を隠れ蓑に大金を貯め込んでいく地上げ屋の巨魁・鬼沢一平とその一味。あの手この手の両者の対決をご覧になりたい方は、5月13日(土)の13時、伊丹十三記念館の常設展示室にご集合くださいね~~

20230417_marusa2.jpg

――ところで、先日、20代の同僚との会話の中で『マルサの女2』について、こんなやりとりがありました。

同僚「初めて(DVDで)観たとき、観始めて数分のところで『え~っと、"地上げ"...?』ってなって再生止めました」

中野「ん? ん? それは一体...どういうこと?」

同僚「ですから、"地上げ"が何なのか分からないまま先に進んじゃいけないと思って、一時停止して調べたんです」

中野「え!? "地上げ"を知らなかった、ってこと!?」

同僚「あ、そうです」

ああ......地上げ......あのバブルの頃、ワタシのような子供でさえ何となく理解していたものだった、ような......(遠い目)

生誕90年・没後26年、伊丹十三を知らない世代が増えている、そして、これからどんどん増え続ける、というのは記念館の活動の大きな課題でありますが――そうか、そうきたか――そうですよね。
「ある社会情勢について誰もが知ってることを前提に『面白いですよ!』と作品をお目にかけるだけでは足りないんだ」と痛感した出来事でありました。

2023年度、若人の力を頼みにしつつすがりつつ、「新しい攻め方」の策略を練って過ごして参りたいと思います。
今年度もどうぞよろしくお願い申しあげます!

学芸員:中野