記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2022.02.21 猫

はじめまして。このたび、2月より記念館スタッフとなりました、橘さくらと申します。一日でも早く皆さまのお力になれますよう日々精進していきます。よろしくお願いいたします。

 

明日、2月22日は「猫の日」ですので、今回の記念館便りでは猫のお話をしたいと思います。

記念館では、伊丹十三の名にちなんで13のテーマに分かれた常設展示を行っております。その中に、"十 猫好き"というテーマがあります。伊丹さんは長く猫を飼っていましたが、著書『再び女たちよ!』の中で下記のように綴っておられます。

 

 私は猫を一匹飼っている。

 いや、この表現は正確ではない。私の気持ちの中では、猫は人間と対等の位置にある。日本語の便宜上「猫を一匹飼っている」と、書きはしても、私は、うちの猫のことを、一度も「一匹」と思ったこともなければ、また「飼っている」と感じたこともない。

 強いていうなら、私は、一人の猫と共に住んでいる、とでもいうべきだろう。

(『再び女たちよ!』より「猫」p.302)

 

共に暮らす猫の事をとても大切にしておられるのが窺える文章の一つです。

猫好きの方はお分かりになるかと思いますが、彼らは実に人間くさい生き物だと思っております。気にくわないことがあれば一端の人間のような表情をして我々に抗議し、適度な距離感を好み、実に自由です。

 

かくいう私も猫が好きで、幼い頃から一緒に暮らしたいと思っておりましたが、物心ついた時には重度の猫アレルギーでした。

そこで、ファインダーを通して猫との交流をするようになりました。カメラを持ってすれ違う際、ご挨拶の後にご機嫌を伺います。彼、もしくは彼女が逃げることなく一瞥をしたところで、初めて写真の許可が得られます。寒い季節には日向を、暑い季節には日陰を探しながら、しばしの交流をするのが趣味です。

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【尾道散策中に見つけた野良猫です】

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【香川県・小豆島での一枚です】

 

伊丹さんは猫が好きな理由について、下記のようにエッセイに書いています。

 

「どうして猫が好きなの?」

と、いわれても、それは困る。

 私が猫を好きなのは、なにか理由があってその結果好きだというのではない。理由などあれこれ考えるより以前に、すでに好きだという事実が厳存しているのであって、いわば好きだから好きだ、とでもいうよりしようがなかろう。

(『再び女たちよ!』より「わが思い出の猫猫」p.168)

 

猫好きであれば首が取れるほど頷いてしまう文章であり、伊丹さんの愛情の深さが伝わってくる、エッセイの中でも好きな文章の一つです。

 

伊丹さんが猫と共に写っている写真はどれも慈愛に満ちています。多数残っている絵の中にも猫の姿は存在し、香箱座りをしているであろう猫の滑らかな背や、「コロリ」をしている愛らしいしぐさ。生き生きとした表情に惚れ惚れします。

ぜひ、ご来館された際には伊丹さん直筆の絵をじっくりとごらんください。猫のイラストを使用したグッズも多数取り揃えております。また、ご紹介させていただいた『再び、女たちよ!』も館内ショップでのお取り扱いがございますので、お手に取ってくだされば幸いです。

 

立春とは名ばかりでまだまだ寒い日が続いておりますので、身体を冷やさぬようご自愛ください。

スタッフ:橘