こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2022.09.19 第14回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました【その2】
先週に引き続きまして、贈呈式の模様をお伝えいたします。
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選考委員である中村好文さんの素晴らしい祝辞に続きまして、正賞の盾と、副賞の賞金100万円の贈呈が行われました。
正賞(盾)の贈呈 選考委員・平松洋子さんより
平松洋子さんからは贈呈と共に
「小池一子さん。長きに渡って、たくさんの才能そして
みんなを照らしてくださってありがとうございます」
というお言葉もございました。
副賞(賞金)の贈呈 宮本信子館長より
「おめでとうございます」「ありがとうございます」と
言葉を交わしている小池一子さんと宮本信子館長【※】
そして、受賞者・小池一子さんのスピーチです!
受賞者・小池一子さんのスピーチ
受賞者スピーチをする小池一子さん
● 伊丹十三賞の受賞の連絡を受けたときのこと
この賞のお知らせを頂いたときに、はっと思って、まず選考委員の方たちのお顔を本当にはっきり思い浮かべました。で、伸坊さんとか、好文さんとかって、ファーストネームで呼ばせていただく大事な友達、お知り合いといいますか、私が尊敬する方たち。それからずっと素敵で、拝見している宮本さん。映画で本当に私の憧れの監督の周防さん。そういう方たちが、何をやっているのかが分かんないような私の仕事に目を向けてくだすったっていうことが、本当に有難くて。しばらく5人の方のお顔を想っていたんですね。
それから、頂いた理由というのが、続けてきた仕事。もうあっという間に半世紀も、それ以上経っちゃっておりますけれども。その中で一緒に仕事をして来た人たちの顔、それがまた、わーっと浮かんできて、しばらく呆然とした時間がありました。その方たちへの感謝っていうのを、表現しきれないぐらい仕事の中でいろんな時間を過ごさせていただいたっていうふうに思っています。
受賞者スピーチをする小池一子さん【※】
● キュレーターという仕事
表現したいっていうことは誰にでもあると思うんですけど。私、子供の時に自分は絵が描けないっていう、すごいトラウマを持った子だったんですよね。姉たちがすごくうまく描けるのに、私は、それがうまいと思う絵のようなものが描けないっていうことがあって。
でも、その、なにしろビジュアルな表現っていうものですね、絵とか、アート、デザイン。芸術のすごいものとか...そういうものに憧れていたので。
中学の時に、素敵な日本画の先生だったんですけど。美術の先生がいらして、その方とお話をするのが好きだったんですよ。それでみんなは描いているんだけど私は描かないでいて、それで先生も本当にうんうんって良く聞いてくださるし、返事もしてくださって。
それであるとき、ちょっと明治神宮の菖蒲園に、素晴らしい菖蒲が咲きそろったから、「これはスケッチ旅行で、みんなで行きたいんですけど」と言ったら、「いいんじゃない」っておっしゃって。それで、じゃあ企画させてくださいって言って、あるスケッチ旅行を、旅行というか、経堂の学校でしたから。小さな女学校なんですけど、スケッチ旅行をしたんですね。私はその時、みんなの時間を聞くとか用意をしていましたけど......、描けるんですよ。
それで、みんなの絵を持って帰って。その時の期末の成績簿に、美術の項目に5かなんかあって、わあ!っと思って。
私は好きな、憧れている世界にいまアプローチして良いのかと思って。
なぜキュレーターの仕事をしているかって言われたときには割合話すエピソードなんですけれども。
そんなようなことで、憧れているものに近づく方法っていうのはいろいろあるんだなぁ、と思ってきました。
アーティスト、アートディレクター、デザイナー......そうゆうビジュアル表現をなさる方への憧れっていうのは一番、自分が世界中で一番強いと思っているんですけれども、その方たちと仕事ができるんだっていうことがここまで来た一つの理由だと思います。
受賞者スピーチをする小池一子さん【※】
● 真昼の月
アーティスト・デザイナーは太陽。私は昼間の空に白く浮かんでいる月みたいなもんだなぁ、なんて。そんなことを言うのもおかしいんですけども思っています。
ただ、月には星がいっぱい周りにいるんですよね。太陽はひとりぼっちで。で、私は月もいいなぁなんて思っています。
私は、私の星の何人かの方たち、ここに来てくださってて、本当に嬉しいんですね。みんなまだ仕事をしている人たちなので、ウェビナーで見てくれるっていうこともあるんですけれども、本当に支えていただいてありがとうございましたっていう事を申し上げたいんです。
● 太陽のひとり、三宅一生さん
紙に書いてあるのはここまでなんですけれども、控室で平松洋子さんとお話してて、この服の話になったんですよ。これ、黒ですけど。ひとつ、私の太陽であった三宅一生さんが亡くなってしまって、喪の意味もあるんですね。コロナになって人が会えなくなって、だから三宅さんにもなんか電話ばっかり話してて会えてなかったので、あんまり他界されたって実感がなくて。で、いまもどこか地上にいるんでまた電話で話せるなんて思うようにしているんですけれども。
今日、こういう素晴らしい賞をいただくということになって。で、三宅さんの一番若手のチームの方たちが、この服、去年、この前のコレクションで発表されたパリコレクションで、その中の1点なんですね。これ、セパレーツなんです。下にジーンズはいているんですけど。そういうような素敵な贈り物をくださったので。
私の大好きなSFの作家のカート・ヴォネガットが、日本にアートディレクターズクラブの招待で来たんですよ。そしたら天に向かって「お父さ~ん!僕は日本のデザイナーたちに招かれて東京まで来ちゃったよ!」って大きな声で空に向かって言ったので、私もちょっと「一生さん!こんな若い人たちの仕事を残していただいているから私は大丈夫!」っていうことを言いたいなぁなんて思います。(場内拍手)
「紙に書いてあります」とおっしゃいながらも、
ほとんどご覧にならず、笑顔で会場の皆さまを見つめておられました
本当に今日はありがとうございました。
なんとも言葉が足りないぐらい大好きな4人の選考委員と宮本館長の賞でいただけたことを光栄に思います。(場内拍手)
ありがとうございました。
宮本信子館長のご挨拶
今日、この会場にいらしていただいておりますお客様。
そして、ウェビナーっていうんですか、なんていうんですか。リモートじゃないんですよね。そういうところで見ていただいているお客様、本当にありがとうございます。
そして小池さん、本当に...いえいえ、お座りになってください!
「お座りになってください!」「ハグしたいです!」「私もしたいです!」と
ハグが出来ない代わりに手を取り合おうとしている小池一子さんと宮本信子館長
ハグしたいと言って、二人で言っております。(場内笑い)本当におめでとうございます。
先日、古いむかしむかしの対談で、『感性時代』という雑誌で、伊丹さんと小池さんが対談をしてらっしゃいました、それを私、読ませていただきました。
もう本当になんか丁々発止って、打てば響くって...さっき中村さんも仰いましたけれども、そういう対談で。その楽しい会話がすっごいリズムを作っていて、うわぁ!すごいなぁ!って感動したことでした。本当にそれは私としては嬉しかったです。
ご挨拶をする宮本信子館長
そんな小池さん、これからもどうぞお身体大切になさって。そしてものすごく、もっともっと前に...もっともっと、月に向かって!(場内笑い)活躍していただいて、そして私たちを導いていただけたらどんなに良いことだろうと思っております。
本当に今日はおめでとうございました!(場内拍手)
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以上、贈呈式の様子をご紹介させていただきました。
小池一子さんのスピーチはいかがでしたでしょうか。
とても大きな喜びと感謝の思いがこもったスピーチに、ご来場の皆さまが聞き入っていらっしゃったのが心に残っております。歓談のお時間の間、小池さんと言葉を交わしている方は皆さま素敵な笑顔で、小池さんを中心に笑顔の輪が広がっているようでした。中村好文さんが祝辞でもおっしゃっていたように、小池さんの笑顔が人と人とをつないでいるのだと感じた贈呈式となりました。
皆さま、明るい笑顔の集合写真【※】
前回に引き続き、残念ながら祝賀パーティーを行うことは出来なかったのですが、ノンアルコールのお飲み物をご提供させていただき、歓談のお時間を取ることが出来ました。全て、関わってくださった方々の御協力によるものです。皆さまのお力により、和やかな雰囲気で式典を開催することが出来ました。
小池さん、選考委員の皆さま、ご来場くださった皆さま、ウェビナーにてご覧になってくださった皆さま、関係者の皆さまに厚く御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
ぜひ、今もなおアートやファッション、広告など様々な領域で最前線に立っておられる小池一子さんのお仕事に触れていただき、広がる出会いを楽しんでいただけましたら幸いです。
今後とも伊丹十三賞そして伊丹十三記念館をよろしくお願いいたします。
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【※】の写真は、撮影:池田晶紀さん(株式会社ゆかい)、
撮影協力:株式会社ほぼ日のみなさんです。
スタッフ:橘
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