記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2022.07.04 ガイドブック

 

2022年も半分が過ぎ去り、すっかり夏本番のような気温ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

全国的に猛暑の日々が続いておりますので、熱中症などになりませんよう、何卒お身体を大事になさってください。

 

 

ここ数日、記念館の受付に座っておりますと、耳元に虫の羽音がまとわりつくことが多くなりました。掴もうとしても、叩こうとしても、こちらをあざ笑うかのように逃げ続ける蚊を見て、脳裏に浮かんだのは『女たちよ!』の中で伊丹さんが書いていたエッセイです。

 

 そろそろ蚊が多くなってきた。

 五月、六月の蚊は、まだあんまり人間に馴れていないからとるのも楽であるが、これが八月、九月になるともういけない。人間の攻撃の、あらゆる裏表を知りつくした、老巧なやつらだけが生き残って跳梁をほしいままにする。

 パン!パン!と蚊に向かって打つ拍手がことごとく空振りに終って、ついには手のひらがじんじんと腫れぼったくなってしまう。

(『女たちよ!』より「蚊」 p.96)

 

実に、何度も頷きたくなるエッセイです。7月初旬にも関わらず既に手練れが!と思いながら、蚊に苦戦を強いられていると、多くの人と同じように伊丹さんも蚊を煩わしく感じていたのだな、と親近感が沸きました。

 

 

 

さて、本日お話しさせていただくのは、記念館のガイドブックについてです。

 

伊丹十三記念館では、常設展示室に13のコーナーが設けられておりますが、こちらのガイドブックではそれぞれのコーナーの展示品や、展示にまつわるエッセイを収録しております。

ご購入くださる皆さまは、記念館の展示を気に入ってくださった方、ご友人などに記念館を紹介してくださる方、遠方に住んでおり記念館に来るのが難しいお知り合いなどに送ってくださる方など、色々な方がいらっしゃいます。

 

多くのお客様が手に取ってくださるこのガイドブックは、記念館でしか手に入らない物です。そんなガイドブックの、私なりのおすすめさせていただきたい理由が3つございます。

 

1つ目はそのコンパクトさ。文庫本のサイズと変わらないので、伊丹さんの著書の文庫本と一緒に本棚に納めることが出来ます。470ページ弱と分厚いので、持ち運びには多少不便かもしれませんが、その分ボリュームはしっかり。かなり見ごたえのあるガイドブックです。

 

 

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文庫本と並べても馴染みます

 

 

 

2つ目は、伊丹さんと交流のあった方々から見た、伊丹十三という人についてのエピソードが収録されているところです。従兄弟であるギタリストの荘村清志さんや、展示室に入ってすぐの「やあ、いらっしゃい」と笑っている伊丹さんの写真を撮った浅井慎平さん、伊丹さんが精神分析に傾倒するきっかけとなった『ものぐさ精神分析』の著者である岸田秀さんなど、合わせて16のエピソードを読むことが出来ます。

 

 

エッセイ.png

様々な角度から伊丹さんを知ることが出来ます

 

 

3つ目は、実物と見比べることが出来るところです。

展示品が多く収録されているガイドブックは、写真が充実しております。1点目と少し重なってしまうのですが、手のひらに収まるサイズですので、ガイドブックを片手に展示品を見ることが出来るのです。伊丹さんが愛用していたギターやバイオリン、食器やレコーダーなど、様々なものの細部を確かめることができ、展示室ではご紹介しきれないエピソードや伊丹さん自身のエッセイと共にご覧いただけます。

 

 

ギター.png

伊丹さんが愛用していたギター

 

 

 

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金継ぎをして大切に使っていた大皿

 

 

 

 

 

鞄.png伊丹さんがイラストで描いていたズックもご覧いただけます

 

 

私個人の感覚なのですが、多くの美術館の図録は大判のものが多く、家に飾っておくだけになってしまいがちな気がします。この記念館のガイドブックを初めて手にしたとき、このサイズ感がとても素敵だな、と思ったので、魅力が少しでも伝わっていれば幸いです。記念館以外の場所でも読むことが出来るガイドブックですが、是非、展示室の中や、読み物として使ってみてはいかがでしょうか。

 

スタッフ:橘