こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2022.10.13 こだわりの壁
朝晩と冷え込む日が増え、秋が深まっているのを感じますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
中庭の桂も少しずつ色づいてきました。葉から少し甘い香りがしております。
記念館にある多くの広報資料を整理する中で、建築についての特集を読む機会がございました。中村好文先生が設計をしてくださった記念館には、たくさんのこだわりが詰まっているのだとあらためて知ることとなりました。印象的な外観や、車庫、中庭などの他に、常設展示室の中にも手まわし式の閲覧台や引き出しなどの遊び心も感じられます。この常設展示室の中にもいくつかこだわりがあるのですが、今回はその中の一つである壁についてご紹介させていただきます
常設展示室は十三の名にちなみ、13のコーナーに分かれております。伊丹さんの仕事や人となりを知ることが出来る各コーナーの壁は、見比べてみると違う素材が使用されています。それぞれのテーマに沿った材質の壁と展示品との繋がりを見つけたとき、より一層この記念館が楽しめるものになっています。
皆様にはご来館の際に見つけて楽しんでいただきたいので、本日は13のコーナーの中から4つだけご紹介させていただきます。
まずご紹介するのは、七 料理通の壁です。こちらはキッチンを思わせる白いタイルとなっております。
展示をよく見てみると、伊丹さんの写真のキッチンの壁も白いタイルです。
こぼれ話にはなりますが、記念館の中にはもう1カ所、白いタイルを使った壁がございます。それがカフェの中のキッチンの壁です。ぜひ、七 料理通のコーナーの壁と見比べてみてください。
つぎに、八 乗り物マニアの壁は、かつての愛車ロータス・エランに合わせた車体塗装です。
『ヨーロッパ退屈日記』や『女たちよ!』にも登場する赤のロータス・エランは、伊丹さんの車遍歴の中でも印象深い車ではないでしょうか。残念ながらロータス・エランの実物はございませんが、この赤く塗装された壁を見ていると、伊丹さんの愛車に出会えたような気持ちになります。
伊丹さんの詳しい車遍歴につきましては、実は車庫にあるガラスの壁面に書かれております。
ベントレーを正面に見て、右側の壁の近く、手すりの少し下あたり。
このあたりに詳細がございますので、ぜひご来館の際にお確かめください。
十一 精神分析の壁は大理石でできており、そこには左右対称の模様が描かれております。
こちらの模様はロールシャッハテストを暗示しているそうです。ロールシャッハテストとは性格検査のひとつで、インクを垂らした模様が何に見えるかを述べ、その言語表現を分析することによって思考過程などを推定するのだとか。皆様はこの模様、何に見えますでしょうか。
ちなみに、ガラスには転写された生原稿もございます。
そして十三 映画監督には伊丹映画のフィルムが貼りこまれております。
至近距離で見ていただくと映画で観たあのシーンが...。
ひとつひとつじっくりご覧いただけましたら幸いです。
さて、ここまでいくつかのコーナーの壁についてご紹介させていただきました。ご来館の際には壁にも注目していただき、展示品との関係を探しながらご覧いただければ幸いです。
この度ご紹介させていただきました各コーナーの壁のお話は、2007年7月1日発売の『芸術新潮』、同年9月1日発売の『新建築』の特集に詳しく掲載されております。残念ながら雑誌の販売はしておりませんが、カフェ内にあるファイルに特集のページをまとめておりますので、他にも記念館のこだわりが気になる!という方はぜひお手に取ってご覧ください。
スタッフ:橘
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