記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2021.12.27 伊丹十三記念館の年末年始


明日12月28日(火)から来年1月1日(土)までの5日間、伊丹十三記念館は年末年始でお休みいたします。

年始は1月2日(日)の朝10時より開館いたします。


1月2日(日)と1月3日(月)の2日間は最終入館の時間を通常よりも1時間早めて16時30分、閉館は17時とさせていただきます。


1月4日(火)は火曜日につき休館日となります。
1月5日(水)からは通常通りの営業となります。


ご旅行で松山に来られる方、帰省で松山に帰って来られる方、お正月には是非伊丹十三記念館にご来館ください。


また、1月2日(日)には、毎年恒例となっている宮本信子館長からの年始のご挨拶の記念館便りを更新いたします。宮本館長の記念館便りは年に二回程ですので、お見逃しのないようご覧下さい。



最後になりましたが、今年も伊丹十三記念館をご愛顧いただき、誠にありがとうございました。

来年もよろしくお願いいたします。

みなさま良い年をお迎えください。


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スタッフ:川又

2021.12.20 記念館ショップの陶器

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
2021年もあと10日余りとなり、時期的にいっそうお忙しい毎日をお過ごしの方も多いと思います。寒さも本格的になってまいりましたので、お身体にはくれぐれもお気をつけください。

さて、ここ記念館ショップの商品は、「伊丹十三記念館」ということで、伊丹さんや宮本館長、記念館にちなんだ商品を扱っています。
宮本館長が考案したオリジナルグッズ、伊丹さんが愛用したもの、伊丹さんや記念館に関連した書籍など関わり方はいろいろですが――その中に、小皿や箸置き、杯などの「陶器」があります。記念館ショップにある理由をお尋ねいただくことがありますので、少しご紹介させていただきますね。

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販売している陶器はすべて、伊丹さん一家とご縁のある陶芸家・岡本ゆうさんの作品です。

伊丹さん一家が、子育てのために移り住んだ神奈川県湯河原で親しくなったのが岡本さんのご両親(おふたりとも染色家でいらっしゃいます)でした。以来、現在に至るまでずっと家族ぐるみのお付き合いが続いているのだそう。岡本さんが丹精こめて作られた陶器を、宮本館長も日々愛用しています。
そんなご縁から、記念館ショップ「宮本信子のお気に入り」スペースに並んでいます!

岡本さんの陶器は、やわらかい色合いのものはもちろん、濃い色合いであってもどことなくやわらかい、あたたかい雰囲気のものばかりです。
お客様からは「シンプルでかわいいですね」などのお声をいただき、ご自宅用だけでなくちょっとしたお土産や贈り物としてお買い上げくださる方もいらっしゃいます。

現在ショップ店頭では「箸置き」「杯」「小皿」「手付き小鉢」をご覧いただけます。扇の形をした箸置きなどもこの度新たに加わりました!
ひとつひとつ手作りで、同じデザインでもそれぞれ少しずつ違う味わいがありますので、ご来館の際はぜひご覧ください。
取り扱いは記念館ショップ店頭のみですので、お見逃しなく!

20211220-2.jpg箸置き ★扇形と、隣の長めの箸置きはNew!

 

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20211220-4.jpg小皿と手付き小鉢 



スタッフ:山岡

2021.12.13 今年も記念館に届いた美味しいシュトーレン


2年4か月ぶりの宮本館長の出勤から10日ほど経過したある日・・・。

今年もまた記念館に嬉しいプレゼントが届きました。

館長出勤を終えたばかりの宮本信子館長から、記念館にクリスマスプレゼントの
シュトーレンです。


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シュトーレンとは、みなさまご存知とは思いますがドイツ発祥のクリスマス時期に食べるパン菓子です。
ナッツとドライフルーツと洋酒ですよ。
そんなの美味しいに決まっているじゃありませんか。
そして実際に美味しい。

コーヒーと一緒にいただいて、幸せな午後のひとときを過ごしました。


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さて、すっかり大人になったわたくしにとりまして、クリスマスというのは、ツリーを出したりケーキを予約したりプレゼントを準備したりと、忙しい年末になんてタスクの多い行事!
考えただけで若干疲れるイベントとなりつつあるのですが、
こうしていざ自分がプレゼントをもらう側の立場になると、ものすごく嬉しい。



クリスマスってやっぱりいいものだな、と再認識いたしました。



という訳で皆さまもどうか素敵なクリスマスをお過ごしください。


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【クリスマスツリーのオーナメント(黄色→)も

宮本館長からの歴代のクリスマスプレゼントです




スタッフ:川又

2021.12.06 宮本館長、出勤いたしました!

2021年も残すところあと1か月となった12月1日、宮本館長が伊丹十三記念館に出勤いたしました!

事前に出勤予定をチェックして来てくださった方、偶然にも館長出勤のタイミングでご来館くださった方などを、いつもどおり元気よく「いらっしゃいませ~!」とお迎えする宮本館長。
皆さま、楽しそうにお話されていました。

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お客様とパチリ!

そしてお客様をお迎えする以外にも、グッズ売り場を確認したり、

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テレビ番組の取材を受けたりと、館長業務にとにかく大忙し!の宮本館長でした。

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※ 取材に来てくださった、NHK情報番組「ひめポン!」の方々と。
 「ひめポン!」ホームページ内「ひめポン!動画」より、
 館長出勤の様子や宮本館長インタビューの映像をご覧いただけます。

動画はコチラ(動画掲載期間は2か月程度とのことです)

久しぶりの館長出勤を、宮本館長が心から楽しんでいる様子がうかがえました。
お客様にも良い時間を過ごしていただけたのでしたら、スタッフ一同大変嬉しく思います。ご来館くださった皆さま、本当にありがとうございました。

「次はいつ来られますか?」とさっそくのご質問もいただいています。次回はまだ未定ですが、決まり次第記念館のホームページ内「ニュース欄」でお知らせいたしますので、どうぞお楽しみに!

スタッフ:山岡

2021.11.29 12月1日、当館の宮本信子館長が伊丹十三記念館に出勤いたします


いよいよ今週です。
明後日です。

当館の宮本信子館長が2年4か月ぶりに記念館に出勤いたします!


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2019年8月以来の出勤です。


松山には2020年1月に愛媛国際映画祭のイベント出演等のため訪れていたのですが、その時はスケジュールの都合上、記念館への出勤はできませんでした。


いわゆる「コロナ前」は年に数回、スケジュールの合間を縫って松山に来て記念館に「出勤」し、館長業務を行っていた宮本館長でありますが、
この2年近くは皆さまご存知の通り、遠方から移動することはままならなず、松山に来ることすらできていなかったのです。


そうしてやっと今週、明後日、記念館へ出勤いたします。


師走の出勤に、「今年のうちに」という宮本館長の強い気持ちがうかがえます。


という訳で、みなさま12月1日(水)13時頃~15時頃は、ぜひ宮本館長に会いに記念館にご来館ください。

出勤の様子は近日記念館便りにてご報告させていただきますのでそちらもお楽しみに!



※状況により急遽予定を変更する可能性もございます。
誠に恐れ入りますが、何卒ご了承ください。
※感染症対策のため、握手はご遠慮いただきますようお願いいたします。
マスクをしてお写真はお撮りいただけます。


スタッフ:川又

2021.11.22 第13回 伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました【2】

先週に引き続きまして、贈呈式の模様をお伝えいたします。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

選考委員のお一人・周防正行さんからの素晴らしい祝辞に続きまして、正賞の盾と、副賞の賞金100万円の贈呈が行われました。

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正賞と副賞

正賞は選考委員の南伸坊さんから、副賞は宮本信子館長から、受賞者である清水ミチコさんへ。

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正賞の贈呈

 

20211122-tuika.jpg副賞の贈呈

そして今回の受賞者である、清水ミチコさんからのスピーチです!

受賞者・清水ミチコさんのスピーチ

" 今日は、伊丹十三賞をいただきまして、本当に心から感謝します。
また、お忙しいなかこんなにお集まりくださって、ありがとうございます。"

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受賞者スピーチをする清水さん

今回の受賞理由となった、YouTubeでの活動

" 私の表現する中身が、ゴールもないし、これが正解だっていうものもないものですから、今までも、笑いながらではあるんですけど、「このままでいいのかな」という一抹の不安を抱えながら歩いてきたようなところがあって。
コロナ禍において自分の仕事が激減しまして、ライブもないし、テレビもないということで――それで「自分は何をしたかったんだろうか」と考えたり、「そもそも表現したかったっけ」ということで自分なりに考えたんですね。


それでYouTubeという媒体があるということでやってみたら、いままでの自分の作品を出したり、昨日見た面白そうな政治家の声をトライして流したりするうちに、「そういえば自分はちっちゃい頃から、誰に頼まれるわけでもなく、自分の世界に入っていって誰かに耽溺するのがすごく好きだった」っていうことが明確になったんですね。"

●伊丹十三賞の受賞は「本当に嬉しかったです」

" だけど、こういう芸風なので、ひんしゅくを買うことはあっても何か賞をいただけるというのはすごくほど遠い存在だと思っていたので――この賞は本当にびっくりしたし、重みが、他の人とは違うと思うんですね。本当に嬉しかったです。ありがとうございました。

そして「これからも好きなことをやっていいよ」って言われたような気がしました。
なので、これから私ではなく「3人の人」からスピーチをしたいと思います(場内笑い・拍手)。"

● 清水さんによる " 3人 "のスピーチ

" 桃井かおりさん " より
「えっとさぁ、勘違いしないでいただきたいんだけど、この伊丹十三賞を受賞したのは清水ミチコなんかじゃなくて、あたしたちレパートリーのほうなわけ。
感謝とか謝罪とか、そういうことをしっかりしていただきたいのは、あたしたちのほうだから、そこのところ、よろしくお願いします。マスコミのみなさんもよろしく。」

" 瀬戸内寂聴さん " より
「はい皆さん、今日はね、ようこそいらっしゃいましたね。
振り返ってみますとね、今年もほとんど終わりでしょ。あと2か月も切ってしまったんですよ。あっという間でしょ。
そんなに忙しい中にね、皆さんようこそいらっしゃいました。ほんとにありがたいなと思っております。
清水ミチコさんもね、伊丹十三賞なんていう大きい賞をもらったわけですけれども、これに驕らずにね、自分に対して驕らない、そして賞金のほうは人に対して奢らないということで「おごらない」人生をね、まっとうしていただきたいなというふうに思っております。
本日はほんとうにおめでとうございました。そしてありがとうございました。」

" 小池百合子都知事 " より
「いまご紹介にあずかりました小池でございます。
このように区切ってお話するというポイントがございますけれども、審査員の皆さん、それから関係者の方々、お願いしたいことがありまして。今年令和3年ですよね(指で3を示す)、伊丹十三賞(同)、十三回目(同)ということで、3が三つ重なっているんですよね。
わたくしは、口を酸っぱくして『3密を避けて』というふうにお願い申し上げておりましたので、ぜひ次回からはこれを回避すべく、よろしくお願いいたします。東京都からの厚いお願いでございました。」


"ありがとうございました!" (場内拍手)

 


―――上記でそのお名前をご紹介させていただいた 
瀬戸内寂聴さんが、11月9日にご逝去されました。
謹んでお悔やみを申し上げますとともに、
心よりご冥福をお祈りいたします。


宮本信子館長あいさつ

" 楽しいスピーチ、ありがとうございました(場内拍手)。清水さん、本当におめでとうございます。

受賞発表のあと、いろんなところで(受賞について)お話してくださいまして、私本当にうれしかったです。ありがとうございます。

去年は、宮藤官九郎さんが受賞されましたけれども、何もできませんでした。本当に残念だったんですけれども...ですから私、宮藤さんがちょうど出演なさっていたPARCO劇場のロビーに行って、ロビーの中で、宮藤さんに正賞と副賞をお渡ししました。そんなことがありました。(その時の様子はこちら
でも今日は、リモートで、マスコミの皆さま関係者の皆さまと、密を避けてこうして贈呈式ができますことを本当に嬉しく思っております。

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あいさつをする宮本館長と、じっと聴き入る清水さん

清水さん、ますますのご活躍を、心からお祈りしております。
今日はまことにありがとうございました。おめでとうございます。"(場内拍手)

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清水さんならではのユーモアあふれるスピーチ、本当に素晴らしかったです!

今回、贈呈式後の祝賀パーティーは残念ながら行われませんでしたが、おかげさまで終始和やかな雰囲気のなか、式典を無事に終えることができました。

清水さん、選考委員の皆さん、関係者の皆さん、この度はまことにありがとうございました。

これからも、伊丹十三賞をよろしくお願いいたします。

スタッフ:山岡

2021.11.15 第13回 伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました【1】


11月2日(火)「国際文化会館」(東京都港区六本木)において、第13回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました。


1115-3.JPG【清水ミチコさんと選考委員4名と宮本信子館長】



記念すべき「第13回」目の伊丹十三賞をご受賞くださったのは皆さまご存知、清水ミチコさんです。

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例年、贈呈式にはたくさんの方をお呼びしておりますが、今回はコロナ禍の状況を鑑み一部の方を除いて無観客で開催し、式の模様は「Zoom ウェビナー」を通じてご希望の方にオンライン中継いたしました。


記念館便りでは、2回にわけてこの贈呈式の模様をレポートさせていただきます。まず、今週の記念館便りでは伊丹十三賞の周防正行選考委員からの素晴らしいご祝辞をご紹介させていただきます。






1115-1.JPG【ご祝辞を述べられる周防正行選考委員】




・・・・周防正行選考委員からの祝辞・・・・



【「喜んで受賞していただけるのだろうか?」という不安。】

受賞していただいて本当にありがとうございます。

伊丹十三賞で選考委員をやらしていただいてみんなでご受賞される方を決めた後に真っ先に思うのが「喜んで受賞していただけるだろうか」っていう不安なんです。

そういう気持ちになるっていうことは選考委員になって初めて知ったんです。

だから清水ミチコさんに玉置さんのほうから伊丹十三賞の受賞のお知らせをしたときに素直に喜んでいただけるものだろうかと。
玉置さんから「受賞していただけました」というのを聞くとほっとする、っていう。

だってある日突然「受賞されました」っていう報告があるわけですよね。
かなり驚かれるんじゃないかと。

(清水さん:「びっくりしました」)

そういうわけでありがとうございました、の後に、おめでとうございます。

(清水さん:「ありがとうございます」)



 【伊丹十三賞を選ぶポイントは「名付けようのないことをしている人」】

ただ、多分僕が受賞者の立場に立つと一体どうしてどうやって選ばれたんだろうと気になると思うんです。
気になります?

準備委員会というのがあって、どういった人が伊丹十三賞にふさわしいかと、伊丹十三賞をいろいろバックアップしてくださるいろんな方から推薦があって、何人もの人、何人もの作品があがってきます。
4回準備委員会があってその中で清水ミチコさんを含めて6名の方が候補として選ばれました。
選考委員の4人が松家仁之さんの司会のもとに集まって、その6人の中のだれが一番伊丹十三賞にふさわしいかという議論をしていく。

そして1名を選びます。

そういう過程を経て今ここに。

いつもその議論に向かうときに、それぞれの人の作品も素晴らしいんですけれども、どなたが最も伊丹十三賞という名にふさわしいか。業績をあげられたんだろうか。

ご存知のように伊丹さんはデザイナー、イラストレータ、エッセイスト、俳優、映画監督、宣伝プロディーサーとしてもすごくその存在が大きかった。

まあ、それだけの分野で長く活躍して来られた人っていうのは、そうそう他にいらっしゃるわけがない。
で、選考の一番のポイントは伊丹さんが見たら「これはすごい」と思わず膝を叩く。喜ぶ。感嘆の声をあげる。そういう人やモノ、パフォーマンス、作品が伊丹十三賞を選ぶときのポイントになります。

で、もうひとつは、これは僕は強く思うんですけど「名付けようのないことをしている人。」
要するにいろんなジャンルがありますけれど、そのジャンル分けがなかなかできにくい人。新しいことを始める人。やっている人。それは今までの受賞者の顔ぶれを見ていただけると何となくわかっていただける。

逆に今までの受賞者の方をみて伊丹十三賞っていうのはどういうものかっていうのがもしかしたらわかってくるんじゃないか。



【こんなに近しく楽しませてくれていた人が候補の中にいる】

今回清水ミチコさんですけど、清水さんもモノマネ、女優、エッセイスト、ナレーターもやるし、テレビタレントとしてテレビのバラエティで活躍もされている。
本当に幅広く活躍されています。

だから、そのモノマネについてもただモノマネができるとか上手いじゃなくて、どう表現しているかっていうところでも、すごくユニークな活動をされている方。

本当にこんなに長く続くんだっていうくらい長きにわたって面白いことを続けて来られたわけですけれども。
その都度その都度いろんなふうに驚かせてくれている。っていうことがよくわかりました。

今回候補者の名前に 清水ミチコさんを見て、ドキッとして。

こんなに近しく楽しませてくれていた人が候補の中にいる。




【YouTubeっていう表現の場所で改めて清水ミチコさんがどれほど素晴らしいかどれほどすごいことをやっているか本当に印象付けられました】

長年活躍されてこられた清水さんに今どうして伊丹十三賞かっていうと、先ほど玉置さんからのお話しもありましたように、やっぱりYouTubeがすごく大きい。
そのYouTubeを始められたのが去年の4月ですかね。

本当にあのコロナ禍の中で、私自身も家に閉じこもることが増え、ものすごい閉塞感の中に生きていたんですけど、YouTubeを縦横無尽に展開される清水さんのパフォーマンスは本当に癒されるというか多くの人が元気づけられたと思います。
そのコロナ禍のなかで発見されたYouTubeっていう表現の場所で改めて清水ミチコさんがどれほど素晴らしいかどれほどすごいことをやっているか本当に印象付けられました。

これは伊丹十三賞を結び付けていく、無理やり結びつけるわけじゃないんですけれど例えば、小池百合子さんのモノマネに始まってそこにある鋭い批評精神だけどどっか柔らかいというか。
モノマネされた側が一体どう感じるんだろうか。
微妙な線。
非常にきわどく相手のふところに飛び込む面白さがある。

そこに展開される批評精神。



【世の中の人があまり気付いていない面白さを発見してそれをとことん楽しむ】

そしてついにモノマネを完成させる道をネタにしてしまう。
本当に伊丹さんと僕は映画製作のメイキングビデオで伊丹さんとは長く仕事をしたので、自分のやっていることを見せていく。
その過程を楽しむ。

そういうところでまた伊丹さんと近しいと思いましたし、世の中の人があまり気付いていない面白さを発見してそれをとことん楽しむ。
っていうところで本当に清水さんは伊丹さんと似ているなというふうに改めて思いました。

本当にそういうわけで改めて受賞していただきありがとうございました。
それではおめでとうございます!

これからも末永く面白がらせてください。




・・・周防正行選考委員からのご祝辞は以上でございます。

「これからも末永く面白がらせてください。」
清水さんにお贈りするにぴったりの言葉ですね。
そうです、私たちはずっとずっと長い間、清水さんに「面白がらせて」もらっていたんですね。
そのことを噛みしめることとなった、周防正行選考委員からの素晴らしいご祝辞をご紹介いたしました。


今週はここまでとなります。

来週の記念館便りでは、清水ミチコさんの受賞者スピーチを中心に贈呈式の模様をご紹介させていただきます。
お楽しみに!



スタッフ:川又

2021.11.08 セットメニュー

記念館便りをご覧のみなさま、こんにちは。

秋も深まってまいりました。記念館の庭木には既に落葉したものもありますが、入り口横のヤマボウシはちょうど今きれいに色づいています。

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さて、カフェを利用されるお客様から、オーダーの際に「セットメニューはありますか?」とよくお尋ねがあります(「セット」というと、いろいろ試せてちょっと嬉しいですよね!)。
本日は、カフェタンポポでオーダーしていただけるセットメニューをご紹介します。

まずは季節柄、温かい飲み物からご紹介しますと、梅こぶ茶やしょうが湯と十三饅頭をセットにした「しょうが湯&十三饅頭」と「梅こぶ茶&十三饅頭」(ともに税込500円)がございます。

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「しょうが湯&十三饅頭」セット。
中に、スライスしょうがをじっくりことこと
甘く煮込んだしょうがチップが入っています。

どちらも、これからの季節に飲みたくなる体があったまるメニューですよ。
大人気の十三饅頭は小ぶりの茶饅頭で、ちょっと何か食べたいな、という時にピッタリです。
伊丹さんの名前のついた十三饅頭を、お得なセットでぜひ召し上がってみてください。

そしてもうひとつ、アイスメニューのセットで、特に県外からの方に人気なのが「みかんジュース飲み比べセット」(税込700円)です。

カフェタンポポでは清見タンゴール、デコタンゴール、愛媛みかんの3種類のジュースをご用意していて、それぞれ単品でもご注文いただけますが(各税込600円)、これを一度に味わえてしまうのがこのセットです。

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よくお尋ねのある、グラスのサイズはこれくらいです。
(文庫本を置いてみました)

 

ご来館の際はぜひお試しください。

スタッフ:山岡

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<記念館よりお知らせ!その1>

テレビや新聞の報道でご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、11月2日(火)、受賞者・清水ミチコさんご出席のもと第13回伊丹十三賞の贈呈式が行われました!
後日、ホームページで式の模様などあらためてご紹介させていただきます。


<記念館よりお知らせ!その2>

おなじみ「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」、今月の作品は『タンポポ』です。
11月13日(土)の13時より常設展示室で上映いたしますので、ご興味のある方はぜひどうぞ!

2021.11.01 ほぼ日手帳


書店などの店頭には来年のカレンダーやスケジュール帳が並ぶ季節がやってきました。伊丹十三記念館では長年「ほぼ日手帳」を愛用しています。

ほぼ日手帳とは、私が説明するまでもありませんが一応ご説明させていただくと、第1回伊丹十三賞をご受賞なされた糸井重里さんが運営するウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で開発された手帳です。サイト内の「ほぼ日ストア」や一部店頭でも販売されています。

記念館ではネットワークでの情報の共有もしていますが、毎日のミーティングにおいてスタッフ全員で顔を見合わせて確認したいことや伝言などを自由に記入したり、リマインドのためにメモをしたりと、やはり紙ベースでスケジュール管理をするものも必要となり、そこで使用しているのがほぼ日手帳なのです。

ほぼ日手帳はとにかく使い勝手が素晴らしく良いのです。使われたことがある方ならおわかりかと思いますがとにかくストレスフリーなのです。1日1ページなのに手帳自体が厚すぎない。紙が薄いからです。紙が薄いけれど破れたりなどの心配は一切いりません。大変上質な丈夫な紙が使われているようです。

とにかく長年使っていて「あ~ここ気になるな~」と思うところが一つもないのです。
という訳で「来年は別の手帳にしよう」などと言い出すスタッフはおりません。

倉庫から引っ張り出してきた過去のほぼ日手帳の数々です。今年で7冊目。


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という訳で伊丹十三記念館では来年ももちろんほぼ日手帳を使わせていただきます。

もしも来年の手帳、どうしようかしらとお思いの方がいらっしゃいましたら、「ほぼ日手帳」をおススメいたします。

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自分が休みの日のページには連絡事項を書いておいたり・・・


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忙しい日もあれば・・・


1101-4.JPG和む日もあったり。


スタッフ:川又

2021.10.25 読書の秋と食欲の秋に

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
ついこの間まで「今日も暑いですね~」と挨拶のように口にしていたのですが、ここ数日は「寒いですね~」に変わってきてしまいました。冷房から暖房に早変わりです。
急な気温の変化に、皆さまどうぞご注意くださいね。


1025-1.jpg中庭の桂も秋めいてきました

つい先日のことですが、記念館ショップの本棚の前で「この本おすすめだよ!読書の秋と食欲の秋、両方楽しめてお得だよ!」と、伊丹さんの著書『女たちよ!』を手に、お連れ様に熱心にプレゼンをされているお客様がいらっしゃいました。


お客様がすすめていらした『女たちよ!』(新潮文庫)は、スパゲッティのおいしい召し上がり方から車の正しい運転方法まで "真っ当な大人になるにはどうしたらいいのか" 伊丹さんが実用的な答えを示しているエッセイですが、その中には料理通で知られた伊丹さんならではの、食や料理に関するエッセイがいくつも載っています。そのとおりに作ることのできる "レシピ" も書かれているのです。

例えば、「カルボナーラ」や「ダッグウッド・サンドウィッチ」の作り方がこんなふうに書かれています。

 スパゲッティを大きな鍋で、できるだけ大量のお湯で茹でる。スパゲッティはすかっとした歯ざわりが身上であるから決して茹ですぎてはならない。
 ベーコンを小さく切って、ベーコンが油と分離してかりかりになるまで炒め、これを油ごとあらかじめ暖めた大きな鉢に入れる。一人一個くらいの割りで卵をとき、その中に胡椒挽きで黒胡椒をがりがり挽いて入れる。
 さて、これで準備完了、仕上げは瞬間的である。すなわち、スパゲッティのお湯を手早く切り、まだ熱くて湯気の出てるやつを、ベーコンを入れた鉢にどっとあけ、卵をざぶりとかけてかきまわす、これでよい。
 卵が少なすぎると卵がそぼろ風に固まってうまくないから注意を要する。
 食べる時にはパルミジャーノというチーズを、スパゲッティが見えなくなるくらい振りかけて召し上れ。

「深夜の客」より

 

 

 サラダ菜、胡瓜、トマト、ロース・ハム、やわらかく作ったスクランブルド・エッグ、オイル・サーディン、バター、ジャム、マヨネーズ、マスタード、こういうものを食卓の上に賑ぎにぎしく取り揃えて、片っ端からパンにはさんで食べる。少くとも厚さ四、五センチのサンドウィッチを作って、行儀にかまわず食べる。

「ダッグウッドの悦び」より

確かに、このお客様のおっしゃる通り、読んで楽しめて、かつ実際に作って食べるとおいしいという、「読書の秋と食欲の秋、両方楽しめてお得」なエッセイですね!お連れ様も興味津々になってお買い上げくださいましたので、今頃いくつかの料理にチャレンジされているかもしれません。

『女たちよ!』には、この他にも食や料理に関するエッセイが何編も掲載されています。
秋の夜長に、ご興味のある方はぜひ読んでみてください。

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スタッフ:山岡

2021.10.18 アーティチョーク


先日、花屋で見つけて思わず買ってしまいました。アーティチョークの苗です。

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アーティチョークとは、伊丹十三が「ヨーロッパ退屈日記」で紹介していた野菜、といいますかハーブです。

伊丹十三はこのアーティチョークの蕾をおつまみとして食していたそうです。スーパー等でこの蕾が売っているのは見かけたこともありますが、苗を見たのは初めてだったのでよく調べもせず思わず勢いで買って帰ってしまいました。

だって「ヨーロッパ退屈日記」での伊丹さんのアーティチョークの説明がとても美味しそうだったからです。



「アーティショーというものがある。英語でいうとアーティチョークである。一見、緑色をした巨大な百合根の如きものであって、その、松傘風に重なった、鱗状の葉っぱの一つ一つは、肉の厚さや、先が針のようになっているところなど竜舌蘭の葉に似ている。」
 
「これを二十分ばかり茹で、次に冷蔵庫に入れて冷やすのである。これで調理は終り。
 小皿にオリーブ油を入れて、これにレモンを少々絞り、ブラック・ペパーをたっぷり、塩を少量振りかけてドレッシングを作る。
 食べ方、などといっても格別のことはない。アーティショーの葉っぱを、外側から順に一枚ずつむしってはドレッシングにつけて食べるのである。
 ただし食べるといっても、葉っぱの一番根元のところに少量の柔らかい肉があるだけだから、葉っぱの真中あたりを歯でくわえ、葉っぱの先端をつまんでしごくように引き抜くのである。
 こうして何十枚の葉っぱを順番に食べてゆくと、内側になるに従って、葉っぱはだんだん柔らかくなり、ついには殆どそのまま食べられるようになる。
 さて、葉っぱを全部むしってしまうと、お皿の形をした芯が残る。芯には細かい毛が密生しているが、これはつまんで引っ張れば一団となって簡単にはがれるから、むしり取って捨てる。この芯がまたうまいね。しかもこの芯に至るまでの行程が、どんなに急いでも十分や二十分はかかるから、こんな愉しい食べ物はまたとあるまい。わたくしは、マドリッドでアパートを借りてから毎日二つか三つずつ食べ続け、多い時には一日七つも食べたのである。
 どんな味がするかっていうと、そうですねえ、一等近いものはそら豆じゃないかな。」


―『ヨーロッパ退屈日記』「おつまみ」-


1018-2.jpg【ヨーロッパ退屈日記の挿絵】


ね。思わず苗を買って育ててしまいたくなる文章でしょう?

ところで、買ったあとに気づいたのですが、かなり葉がトゲトゲしています。
それもそのはず、アーティチョークはアザミの仲間だそうです。
しかも成長すると葉は直径1メートルほどになるとか、ならないとか。

何はともあれ、収穫に向けてプランターに植えてみました。


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オリーブオイルとレモンとブラック・ペパーとお塩でオシャレに愉しくアーティチョークを食べられる日はくるのでしょうか。

収穫できましたら、記念館便りにてご報告させていただきますので、期待してお待ちください!


スタッフ:川又

2021.10.11 チラシ裏面

あさって「十三」日は、「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の日です。

今回は伊丹さんの映画監督デビュー作品「お葬式」を上映いたしますので、ご興味のある方、お時間のある方はぜひご鑑賞にお越しくださいね。

詳細はコチラをクリック

さて、記念館には伊丹さんの映画が好き・興味がある、という方はたくさんお越しくださいますが、そんな方に見ていただきたいのが、常設展示室「十三 映画監督」のコーナーにある可動式パネル展示台です。


自分で動かして(めくって?)みることができる80センチ×60センチのパネルは、一方の面は映画のポスター、そしてもう一方はその映画のチラシ裏面になっています。

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可動式パネル展示台

 

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映画「お葬式」チラシ裏面

見ごたえのあるポスターはもちろんなのですが、合わせてじっくりお読みいただきたいのが、反対側のチラシ裏面。
思わず観てみたくなるように映画が紹介されていて、当時、このチラシ(の裏)をみて実際に映画館に行かれた方がたくさんいらっしゃったんだろうなぁ...と思います。

例えば今回の「お葬式」のチラシ裏面ではこんなふうに。

伊丹監督のクランク・インの弁。
「私の目的はただ一つ。映画らしい映画を作りたい、ただそれだけです。
この作品の中では、葬式というふるさとの儀式の中に突然投げこまれた都会人たちの滑稽にして悲惨な混乱ぶりを涙と笑いのうちに描きたい。幸い脚本は評判よく、また最高のキャスティング、最高のスタッフ編成ができたので監督としてはみんなの仕事ぶりをただ眺めていればよいのではないか。」

実際に、伊丹映画は未視聴というお客様から「チラシ裏面やパンフレット(企画展示室でご覧いただけます。時期により作品は異なります)を見たら、映画を観たくなりました」とお声がけいただいたこともあるんですよ。
もちろん、観たことがある方も十分面白く読んでいただけると思います。

今ではなかなか目にする機会も少ないと思いますので、ご来館の際はぜひお見逃しなく!

スタッフ:山岡

2021.10.04 伊丹さんが愛用していた調味料


先日、常設展示室の展示台の消毒をしながら、展示されている伊丹さんの「厚焼玉子」のレシピをぼんやり眺めておりました。
そうしましたら、その厚焼玉子のレシピの中に「味の素」という文字を発見しました。

伊丹さんは「味の素マヨネーズ」のコマーシャルに長く出演しており、展示室内でも、売店の店頭で常時流しているDVD「13の顔を持つ男」の中でも、もう何度となく伊丹さんの声で「味の素」と耳にしています。

しかし、お仕事とまったく関係のない完全に自分のためのメモです。
字も人に見せるための字ではないようです。

そんな超プライベートなメモの中に「味の素」の文字を発見すると
「あ、伊丹さんも味の素使うんだ~」
と、何だか改めて驚き、そしてしみじみしました。

きっと伊丹さんのことですから試行錯誤を重ねて出来上がったレシピなのでしょう。
その中に、「味の素」。
「うま味調味料」なんて書きません。
「味の素」です、「味の素」。

わかりますよ伊丹さん、味の素を入れると何でも美味しくなるんですよね~。


記念館にはこのように、ふと、仕事の顔や外に向けた顔ではなく、普通に生活していた一人の人としての伊丹さんの素の部分が垣間見えるところがあります。

皆様もご来館の際には発見して、しみじみして下さいませ。

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厚焼玉子のレシピをよく見ると


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ほら!味の素。



スタッフ:川又

2021.09.27 車の運転

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
記念館の庭木はまだまだ緑が目立ちますが、中には色づき始めているものもあって、秋が近づいてきているなぁと感じます。

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ほんのりと

 

さて本日9月27日は「女性ドライバーの日」だそうですね。
1917年に日本ではじめて女性が自動車の運転免許を取得したことに由来するとか。

私の運転免許取得日がたまたま1日違いの9月26日ということもあって、以前友人との雑談で知って以来、ちょっと印象に残っている日です。

日常的に運転するようになってずいぶん経ち、免許取り立ての、最初の頃のようなぎこちなさや拙さは多少なりとも減っている...とは思うのですが、その反面、良くない意味での慣れからくる " ひやっとした瞬間 " がたまにできてしまいます。
その度に「気をつけて運転しなくては」と猛省するのですが、そんなときに読み返したい伊丹さんのこんな文章がありますので、一部ご紹介しますね。
運転するときの心構えや乗り方が書かれています。

 

"  妹へ、
 とうとう免許をとったそうで、まずはおめでとう。
 忠告、といってもあまり口はばったいこともいえないが、自分がパトロール・カーになったつもりで運転してみてはどうだろう。
 自分は絶対違反していない、という確信から生まれる精神的な安定感、これが運転にゆとりをあたえるのです。"

「大英帝国の説得力」『ヨーロッパ退屈日記』より

 

" すなわち、どんなにゆとりのある場合でも正しい姿勢を崩してはならぬのだ。なぜなら、正しい姿勢のもつ真の意味は、突発的なできごとに即座に対処することができるという点にある。だから、自分の運転に責任を持つ人間は、必然的に正しい姿勢をとらざるを得ないのだ。
(中略)
 さて、いまさら申し上げることもあるまいが、自動車というものは危険物であります。これを扱うに当って、男たるもの、どんなに自分自身に厳しくあろうとも、厳しすぎるということはない。いわんや、いいかげんな気紛れや、でたらめは許せないのであります。
 たとえば、運転のさいの履物一つにしても、最も運転しやすい、正しい履物を選ぶべきである。底革の滑りやすい靴や、脱げやすい草履で運転することは断じて許せないのであります。
 これがすなわち「自動車の運転におけるヒューマニズム」というものである。
 そうして、われわれは、巧みに運転する前に、品格と節度のある運転を志そうではないか。"

「スポーツ・カーの正しい運転法」『女たちよ!』より

初めて読んだとき、当時、家族をはじめとするベテランドライバーの人たちから「ゆったりとした姿勢で、落ち着いて丁寧に運転しなさい」と繰り返し言われたことを思い出しました。
運転して何年も経つとこんなことを言ってもらえる機会も少なくなりますから、初心にかえって丁寧な運転を心がけられるよう、折に触れて読み返さなければ!と思う文章です。

ご興味のある方はぜひ読んでみてくださいね。

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オンラインショップでも取り扱っています

スタッフ:山岡

2021.09.20 ぼくの伯父さん


もう10年以上前に記念館にご来館くださったお客様からお伺いした話があります。

その女性は当時高校生だった伊丹さんのご近所にお住まいだったそうで、実際に何度も伊丹さんを見かけたことがあるそうです。
その女性がおっしゃるには、伊丹さんは当時よく本を読みながらその辺を歩いていたそうです。
「こんな感じでね~」と、本を読みながら歩く伊丹さんのマネをしてくださいました。
二宮金次郎よりは背筋をすっと伸ばした状態でサササッと歩く様子が、映画のメイキング映像などで見る伊丹さんの歩き姿と似ていて、大変納得したことを覚えています。


それから10年近く経ってから、「ぼくの伯父さん」(つるとはな)を読んでおりましたら、その証言を裏付ける文章を発見しましたのでご紹介します。



「私はーーーわれわれの世代は誰でもそうだろうがーーー活字中毒である。なにしろ一刻も活字なしでは生活することができぬ。」



「風呂の中だろうが、食事中だろうが、床屋で髪を刈られながらだろうが、町を歩きながらだろうが、ともかく常になんかかんか本を読んでいる。」



「私なんかは高校が田舎だったからね、田圃の中を自転車で走りながら本を読んだものです。友達の家なんか遊びに行く時ネ、田舎のことだから、まあ、遠いところに住んでるやつがいるんだ、自転車で三十分も一時間もかかるようなとこにネ。そんな時には自転車を漕ぎながら本を読む。退屈だしねえ、どうせ野中の一本道だし、車が通るわけじゃなし...」


―「ぼくの伯父さん」(つるとはな)―




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まさしく、「町を歩きながら」、と本人も書いていますね。

そして「高校が田舎だった」とありますが、まさしく松山のことですね。
松山の街を自転車で走っていたんですね。
伊丹さんは 一六タルト のコマーシャルがヒットして、その縁で松山に仕事でよく来るようになったそうですが、高校時代に自転車であちこち行っていたならば、もしかしたら、空港からの車中、松山の街を眺めて「懐かしいな~」などと思っていたかもしれません。
車の中で、活字を読んでいなければの話ですが...

皆さまも松山に来られた際には、街全体を「伊丹さんが多感な頃を過ごした街」だと思って眺めていただければ、より趣が増すことと思います。



さて、この「ぼくの伯父さん」は伊丹さんの没後20年、2017年に発売された単行本未収録エッセイ集です。
みなさんの知らなかった伊丹さんに、会えるかもしれません。
私のように「ああ、前にこういう話聞いたな~」と話が繋がることもあるかもしれません。
伊丹さんファンで当時出版された単行本はもう全部持っているという方などにも、ぜひおすすめいたします。


スタッフ:川又

2021.09.13 メンテナンス作業をしやすく

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

本日は、ご来館のお客様より「あれは何ですか?」「登れるんですか?」とご質問をいただくことのある、こちらの設備(下記写真)について少しご案内します。

常設展示室のちょうど真ん中くらいに設置された螺旋階段と、それがつながっている天井にかかった黒い足場です。

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常設展示室入り口から

 

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別の角度から

これは何かといいますと、高所の作業がしやすいように設けられた、メンテナンス用のブリッジです。照明交換や手回し式イラスト展示台のメンテナンスなどが必要になった時、螺旋階段を使って、作業する人が簡単に登っていくことができるようになっています。
記念館を設計した中村好文先生が、展示作業やメンテナンスなどの  "  裏方 " 作業を行いやすいよう、いろいろと工夫してくださったんですね。

(この階段とブリッジは、室内のしつらえに合ったデザインということもあって、登ってみたい、上から見てみたいとお声をいただくこともあるのですが、安全上、お客様にはお入りいただけない場所です。申し訳ございません!)

他にも、常設展示室の展示コーナーの後ろ側(お客様からは見えないスペースになります)にはメンテナンス用の通路が設けられていて、展示や照明器具の取り換えが背後から容易にできるようになっています。

残念ながらお客様は体感できない設備・エリアではありますが、このような裏方作業への配慮も、皆さまに楽しんでいただける展示につながるのだと思います。
そんな記念館の展示を、ご来館の際はじっくりご堪能ください。

スタッフ:山岡

2021.09.06 伊丹十三の映画監督デビュー


伊丹十三が映画監督デビューをしたのは、51歳のときです。

それまでは、俳優、CM作家、エッセイスト、テレビマンなど様々な分野で活躍し結果を残していました。
しかし、いくら見事な経歴の持ち主だからと言って、必ず映画監督として成功するとは言い切れません。
残念ながら有名人の「映画撮影に挑戦して結果、大赤字」というエピソードは正直よく耳にする話であります。
蓋を開けてみるまではわからないということですね。


そう考えると伊丹さん本人の「映画を撮る」という決断も確かにすごいことですが、伊丹さんの映画監督デビューを支えた周りの人々にはより頭が下がる思いがいたします。


「あなたは伊丹万作の息子なんだから、映画監督になるべき人物よ。1本でいいから映画を撮ってちょうだい!」と言って伊丹さんを鼓舞した当館の宮本信子館長。


そして映画撮影にかかる大金の多くを準備した玉置泰館長代行。


『お葬式』の後も続く伊丹さんの映画監督としての成功を知っているので、この伊丹さんの監督デビューを支えた人々の行動について、わかっているつもりで実際にはピンときていなかった部分があったと感じています。


なかなかできるものではありませんよね。


先日拝見した山田洋次監督の『キネマの神様』で主人公ゴウが映画初監督作品に挑むシーンを観ながら、映画そっちのけでそんなことを考えていたわたくしでございます。



この伊丹さんの映画監督デビューにまつわるエピソードについては先日の 記念館便り にて新潮社発売の「伊丹十三の映画」とほぼ日の「伊丹十三特集」をご紹介いたしましたが、伊丹十三記念館限定で販売されているDVD『13の顔を持つ男』にも宮本信子館長や玉置泰館長代行のインタビューがありましたのでよろしければ是非ご覧ください。
映像をご覧いただければ、より伝わるものがあるかと思います。


20210906.jpg「13の顔を持つ男」



「13の顔を持つ男」 は こちら

「伊丹十三の映画」(新潮社)は  こちら

ほぼ日刊イトイ新聞 玉置泰館長代行のインタビューは こちら






スタッフ:川又

2021.08.30 夏を感じるエッセイ

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

明日で8月も終わりですが、厳しい暑さが続くなど夏はまだ終わらないようですね。

そこで本日は、まだ続きそうな「夏」を連想する伊丹さんのエッセイを少しご紹介させていただきます。ご興味のある方はぜひ読んでみてください。

 

まずは「うちわ」です。

夏らしいデザインのうちわはそれだけで季節感があって、「夏だな~」と感じさせてくれるアイテムですよね!私の家の中にもあちこちに置いてあって、エアコンや扇風機と併用しながら使っています。

 

この「うちわ」、あおぐと涼しいですよね。

これをもう一歩踏み込んで、「なぜ涼しいのか」ということを、伊丹さんがエッセイ「ウチワデアオグトドウシテ涼シイノ?」で説明しています。

 

"さて、そこで、うちわであおぐとどうして涼しいのか。風がくる前の皮膚の状態を考えてみると、皮膚からは絶えず水分が蒸発している。すなわち皮膚に接している空気はいくぶん飽和状態に近い状態におかれると考えていいでしょう。つまりわれわれの皮膚は湿っぽい空気に包まれているわけですね。

そこへうちわの風が新しい乾燥した空気を送りこんでくる。すなわち皮膚に接する空気が乾いた空気と入れ替わるわけで、たちまち、皮膚からの蒸発はさかんになり、したがって皮膚は気化熱を奪われる。熱を奪われるからすなわち涼しい、とこういうことになるのであって、まさかみなさん、風が吹いて涼しいというのが、こんなややこしいことだとお思いにならなかったでしょう。"

「ウチワデアオグトドウシテ涼シイノ?」『問いつめられたパパとママの本』より

 

 

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同じく掲載されている

「夏ニナルトドウシテ暑イノ?」というエッセイも合わせてどうぞ

 

また、「氷」についてこんなエッセイも。

 

"高校の頃、私たちは氷のことを「ナガ」と呼んでいた。学校の近くの氷屋の旗が、氷という字の点の打ち方を間違って「永」という字になっていたのである。"

 

"ともあれ、私たちはよく「ナガ」を食べた。私たちの田舎では、氷を先に削って、あとから、あの色つきの砂糖水をかける。

赤いのがイチゴ、黄色がレモン、緑がメロン、白いのはミゾレ、とかスイとかいった。スイとはどういう意味か、定かではない。

容れ物は、ごく安物の、偽のカット・グラスの、つまりイボイボのあるガラスの器である。これにまたいかにも似つかわしいアルミのスプーンがつく。

このスプーンで氷を入念につつくと、氷が砂糖水に溶けて、ほんの一と握り霙状のものになってしまう。必ずそうやってから食べる人がいた。お前たち、そうやって山盛りの氷を食べてるつもりだろうが、ほんとの正体はこんなもんなんだぞ、というつもりだったのかもしれない。"

「ナガ」『女たちよ!』より

 

読むとしゃりしゃりした涼し気なかき氷が想像できて、夏に目を通したくなるエッセイの一つです。

 

ご紹介したもののほか、夏を感じるエッセイとして「蚊」(『女たちよ!』)、「花火」(『再び女たちよ!』)などもありますので、気になる方はぜひ読んでみてください。

 

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スタッフ:山岡

2021.08.23 「キネマの神様」を観て感じたこと


先日、松竹映画100周年記念作品である山田洋次監督の「キネマの神様」を観に映画館に行ってきました。
登場人物がみんな魅力的で、観終わったあと素直に「ああ、いい映画を観たな」としみじみ思える素晴らしい作品でした。


さて、この「キネマの神様」には、当館の宮本信子館長が沢田研二さん演じる主人公ゴウの妻・淑子役で出演しています。
スクリーンに映った淑子役の館長は普段の元気ハツラツな館長とは全く違った印象で、さすが女優だなあと、毎度のことながら感心させられました。


ところで、この「キネマの神様」というのは作中では主人公ゴウの幻の映画初監督作品のタイトルでもあります。
この、ゴウが初監督作品に挑むシーンを観ながら、私は当たり前といえば当たり前のことなのですが改めて感じたことがあります。


「世の中の全ての映画監督、どんなヒットメーカーにも大監督にも必ず初監督作品がある!」

・・・ということです。


そうです、もちろん伊丹十三にも初監督作品があります。皆様ご存知「お葬式」です。
結果としては見事な映画監督デビューを果たしたわけですが、そこに至るまでには伊丹さんにもゴウ同様、様々なドラマがあったようです。


この伊丹さんの映画監督デビューについてのエピソードは新潮社から発売されている「伊丹十三の映画」や、ほぼ日こと「ほぼ日刊イトイ新聞」に2010年に特集していただいた「伊丹十三特集」の宮本信子館長や玉置泰館長代行のインタビューなどに詳しく載っておりますので、ぜひご覧いただければと思います。




20210823.JPG【画像 伊丹十三の映画】


「伊丹十三の映画」(新潮社)は こちら

ほぼ日刊イトイ新聞 「伊丹十三特集」は こちら



最後に、どんな映画も映画館で観るのがより良いと思いますが、この「キネマの神様」はスクリーンで観ていただきたくなる理由があります。ぜひ映画館でご覧いただければと思います。



スタッフ:川又

2021.08.16 展示コーナーまるごとお楽しみください

すでにご存じの方も多いと思いますが、ここ伊丹十三記念館の常設展示室では、俳優、エッセイスト、イラストレーターなど「十三」のコーナーに分かれた展示で、多方面で活躍し深い見識を持っていた伊丹さん足跡をたどることができます。

※それぞれのコーナーのご紹介はコチラ

さて、この「十三」のコーナー。
一つ一つの趣が違うのはもちろんなのですが、よくよく見ると、展示品そのものだけでなく展示台のしつらえや仕上げにも、コーナーのテーマに沿った遊び心やユーモアがちりばめられているんです。

たとえば「十一 精神分析啓蒙家」コーナー。

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「十一 精神分析啓蒙家」のコーナー

雑誌「mononcle」やその手書き原稿などが展示されているのですが、上の写真でご覧いただけるように、コーナーの背景には大理石が使われています。
記念館の設計だけでなく展示にも携わった中村好文先生によると、大理石の模様は左右対称にしていて、これがロールシャッハテストになっているのだとか。ロールシャッハテストとは、左右対称のインクのしみが何に見えるかをという答えから性格や心理を分析する診断法なのだそうです。「精神分析啓蒙家」のコーナーならではの背景ですね!記念館にお越しの際は近くでご覧になってみてください。

他にも、「五 エッセイスト」コーナーの展示台の背景は拡大した伊丹さんの原稿だったり、「八 乗り物マニア」にある赤い曲面は
かつて伊丹さんの愛車だった赤のロータス・エランをイメージさせる車体塗装だったりします。展示をご覧になったことのある皆さまはお気づきになられたでしょうか。

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「八 乗り物マニア」のコーナー」

こんなふうに、さりげなく潜んでいる遊び心やユーモアを感じていただけたら、もっともっと伊丹十三記念館をお楽しみいただけることと思います。

展示をご覧になるときは、展示品以外のところも、気にして見てみてくださいね。

スタッフ:山岡

2021.08.09 伊丹さんが選んだ家具


企画展示室でいわゆる「テレビ台」として使用している家具があります。
伊丹さんが出演する一六タルトのコマーシャル映像を流しているモニターを置いているものです。
時折お客様から「あんな感じの家具が家に欲しいんですけど、どこに売っていますか??」などとお尋ねいただくことがあります。
ごめんなさい、わかりません。
なぜならばあのテレビ台は生前に伊丹さんが使っていたものだからです。

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伊丹十三の本」(新潮社)を見ておりましたら、伊丹さんが30代の頃と思われる自宅での写真にもこのテレビ台が写っていました。ということは伊丹さんが入手してからでも50年以上は経過しているのではないでしょうか。


さてこちら、伊丹さんも自宅でテレビ台として使用していたこともあるそうです。

記念館は「伊丹十三の家みたいにしてほしい!」という宮本館長から建築家の中村好文先生への依頼でデザインされ家具等もその基準で採用されていますが、実際に伊丹さんセレクトの家具でご覧いただけるものは企画展示室のテレビ台のみでございますので、ご来館の際にはお見逃しなくチェックしてください。


伊丹さんのセンスの良さがよりおわかりいただけることと思います。



スタッフ 川又

2021.08.02 第13回伊丹十三賞 受賞者決定のお知らせ

すでに報道などで見聞きされた方、また、この記念館サイトのトップページをご覧になった方はご存知かと思いますが――

この度、第13回伊丹十三賞の受賞者が決定し、タレントの清水ミチコさんに受賞いただけることとなりました!

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記念館サイトのトップページ

「伊丹十三賞」は、" あらゆる文化活動に興味を持ちつづけ、新しい才能にも敏感であった伊丹十三が、「これはネ、たいしたもんだと唸りましたね」と呟きながら膝を叩いたであろう人と作品 " に贈らせていただいている賞です。

※伊丹十三賞概要や歴代の受賞者はこちらから↓

 https://itami-kinenkan.jp/award/index.html

2009年の第1回にはじまり、第13回を数える今回受賞いただいたのが、テレビ、ラジオ、書籍、youtubeなどなど様々な媒体でご活躍中の清水ミチコさん。

授賞理由と受賞者コメントは以下のとおりです。
清水ミチコさんならではの、面白くて素晴らしい受賞者コメントをいただきました!

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【授賞理由】
 コロナの時代にYouTubeを使って活動の場を広げ、あたらしい笑いと驚きをつくりだした。 /伊丹十三賞選考委員会

【受賞者コメント】
賞をいただき、驚きました。心から感謝します。
日々、ただコツコツと静かにふざけていたことが認められたことは、何より励みになります。

吉報を電話で聞いた時は、「受賞したので、ここにいくらか振り込んでください」という詐欺かと思ってしまったことも、ここに告白いたします。

勝手ながら、私のレパートリーとさせてもらってきた皆さんのおかげでもあります。
心から御礼を申し上げます。
本当にありがとうございました。

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ご紹介した授賞理由や受賞者コメントは、プロフィールとともに特設ページでご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください!
https://www.itami-kinenkan.jp/award/award13.html

スタッフ:山岡

2021.07.26 伊丹さんの夏休み


松山は1週間ほど前に梅雨が明けました。そして夏休みも始まりました。

私は毎年夏休みの時期になると伊丹さんの子供時代の立派な研究や日記や観察ノートの数々について考えます。
ちょうど一年前の 「記念館便り」 にもそれらについて書いていたようです。
どんな風に夏休みを過ごして、あんなに立派な研究や観察ノートを仕上げていたのか気になりませんか?

伊丹さんが自身の小学校三年生の頃の夏休みの様子について書いた文章をご紹介します。



今、私は目を閉じると、小学校三年の夏休みにつかまえたミヤマクワガタの姿がありありと目に浮かぶ。幼なかった私の小さな手がそいつをひっくりかえすと、そいつの六つの小さな足が一斉に空中でもがいた。そのありさまがまざまざと目に浮かぶ。
私はそいつを「観察」し「研究」してノートを作る。ノートにセルロイドの下敷きを敷き、とんがった固い鉛筆で一心に書く。夏の昼下り、底抜けに明るい光の中で、カブトムシがかさこそと動く。
あれから私は何をしたろう。笹舟を水に浮かべて遊んだのかな。床屋へ行ったのかな。床屋はクリクリ坊主になった私の頭へ、ツンとしみる緑色の液体を振りかけたのかな。

ー『カブトムシの歌』「ぼくの伯父さん」(つるとはな)より



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小学三年生の伊丹さんが夢中になってクワガタの観察をする姿が目に浮かびますね。
立派な研究や観察ノートは人一倍の好奇心や探求心で仕上げられていたことがわかります。
何でもない日常が輝いた思い出になっている様子も印象的です。
この文章の後には実際に「三年ろ組」の伊丹さんのクワガタの研究内容も載っています。
立派な研究内容ですので、機会がありましたら是非ご覧ください。


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【こちらは同じ小学三年生のときの玉ねぎ観察日記】



という訳で、皆さまも伊丹さんに負けないくらいこの夏の良い思い出を作って下さい。


スタッフ:川又

2021.07.19 豆乳ブルーベリーはじめました

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
夏らしく、気温もどんどん上がってきました。さらに緑色を深めた中庭の桂の木には、特に天気のいい日などそこかしこに蝉がとまって、にぎやかな大合唱が聞こえてきます。

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そんな夏の中庭を眺めながらお寛ぎいただくカフェ・タンポポで、期間限定のメニュー・豆乳ブルーベリーがスタートいたしました!

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この時期になると登場する季節メニューですが、ありがたくも毎年多くのお客様にオーダーしていただく、大人気のドリンクです。

ブルーベリーの酸味と豆乳のまろやかさが程よくミックスされ、後味はすっきり。いかにも「ブルーベリー!」という紫色に、上にのせたミントの緑がちょっとしたアクセントとなって、見た目もさわやかですよ。

小さいお子様からご年配の方まで世代を問わずお楽しみいただけます。

この豆乳ブルーベリーのほか、6月7日の記念館便りで「これからのおすすめメニュー」をご紹介しています。
記念館にお越しの際は、ぜひお好みのドリンクと一緒にカフェ・タンポポでお寛ぎください。

スタッフ:山岡

2021.07.12 伊丹万作の手作りカルタ


伊丹十三記念館には伊丹十三の父・伊丹万作手作りの「芭蕉いろはカルタ」を展示しています。

伊丹万作が市販の軍国主義的な内容のカルタで遊ぶ子供たちを不憫に思い、その裏側に芭蕉の俳句と絵を描いて作ったものなのだそうです。

伊丹十三は子供の頃、実際にこのカルタでよく遊んだそうですが、大人になって三十年ぶりにこのカルタを見た際には大変驚いたそうです。




「これはびっくりしましたねえ。まず、その力量に圧倒されましたね、私は。そしてまた、その絵や字の裏に流れている、なんともいえぬ人間の好さ、高さですね、これはもう参りましたね。ああ、ここまで行ってる人だったか、という思いがありましたね。
 父がこれを作った時、四十四歳くらいだったわけですから、考えてみれば私はそろそろ同じ年齢に達しようとしてるわけでしょう。こりゃ考えますねえ、だって、これを描けるようになるには、また別の一生を必要とするようなものですよ、このカルタは。」

―「父、万作のかるた」『ぼくの伯父さん』(つるとはな)より


大人になると、子供の頃に見たものや景色が随分違って見えることって確かにありますが、大人になった伊丹十三にここまで言わせるってすごくないですか?

記念館企画展示室にはこの伊丹万作手作りのカルタの複製と、一部実物も展示しています。

これらをご覧いただきましたら、伊丹十三の言う通り力量に圧倒されるというのも確かにそうですが、伊丹万作の子供たちへの愛情や思いも伝わってくるかと思います。
ご来館の際にはお見逃しなくご覧ください。


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スタッフ:川又

2021.07.05 旅とは何か

7月になりました。
梅雨が明ければ夏本番、ということになります。

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この夏、旅行をしてもいいものか、どうか、悩んでおいでの方がたくさんいらっしゃることでしょう。

あるいは、旅行はまだまだ、帰省もまだまだ、と割り切っていながら、夏休みや年末年始、GWが近付くたびに「旅や遠出の計画を立てられないのはつまらないなあ」と心が萎れそうになり、それに耐えるので精一杯という方も多いことでしょう。

わたくしは、と申しますと、旅行というものにそれほど興味がないといいますか、むしろ「苦手」と自覚しているほうなので、旅に出られないこと自体にはさほど苦痛を感じないのですが、たとえば――

  • 伊丹さんが小さい頃に家族と行った、京都府立植物園
  • 辻留さんに教わったと『女たちよ!』に書かれている箸屋さん、四条堺町の市原箸店
  • 『小説より奇なり』の三島雅夫さんの談話に登場した、昔ながらのお菓子屋さんいろいろ
  • 『あげまん』のロケ撮影に使われた日枝神社

といった、「業務をかねて覗きに行ってみたいところリスト」が全然消化できない事態には、少々焦りを感じはじめております。


「次に東京に行ったらついでに」「次に関西に行ったらついでに」と思っていましたら、その「次」の機会が全然来なくなってしまいまして......

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まあ、今の世の中、旅行や外出に関して、何の鬱屈も感じずに生きていられる人はいませんよね......というわけで、ここでひとつ、旅の達人・伊丹十三による名言を。

旅をする心を持つ人にとっては、近所を散歩して、見知らぬ道にふいと踏み入ることすら旅であるだろう。

「おしゃべりな旅人」『JJ』1975年6月号より

ご参考になりましたら幸いです。
どなた様もご自愛くださいますように。

学芸員:中野

2021.06.28 伊丹さんのユーモラスなイラスト

記念館ショップのオリジナル商品には、イラストレーターの「顔」も持っていた伊丹さんのイラストを使った商品がたくさんあります。

伊丹さんならではの遊び心のあるユーモラスなイラストも多く、中には買い物をされているお客様から「何を描いたものですか?」と尋ねられることがあります。
そんなイラストについて、少しご紹介しますね。

まずはこの、Tシャツにプリントされたイラスト。

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男性がこめかみから何かを引っ張り出しています。
このイラストをみて「これは何をしているところ?」とお連れ様と話をしたり、スタッフに尋ねたりするお客様が少なからずいらっしゃいます。

このイラストは「二日酔いの虫」という伊丹さんのエッセイの挿絵ですが、何を描いているかというと――

「あのね、二日酔いのひどい時にさ、顳顬(こめかみ)んところに小さな腫れ物ができるんだよね。これが実に痒いんだな。痒いから掻き毟る。掻き毟るうちにだね、腫れ物が潰れるだろう。その潰れたところをよく見ると、なにか芯みたいなものがのぞいているじゃないか。ハハーンこいつだなと思ったから 、私はその芯をピンセットでつまんで、そおっと引っぱりましたね。すると出てくるんだよ、それが。ずるずると出てくるんだよ。紐みたいに、というか、干瓢みたいにというか、ともかく引っ張ればいくらでもずるずる出てくる」

「二日酔いの虫」『女たちよ!』(新潮社)より

――ということなのですが、さすがにイラストだけで想像するのは難しいですね!

また、同じく『女たちよ!』の別のエッセイにはこんなイラストも。

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写真はゴム印です。イラストを見て「ねずみですか?」と尋ねられることが多いのですが、実は「魚」を描いたものなんですよ。もう少し詳しく言うと、「大きな魚が白いエプロンをして理髪店の椅子にかけている」イラストなんです。

伊丹さんがどのような経緯でこのイラストを描いたのかについては、ぜひ『女たちよ!』に掲載されているエッセイ「鬚を剃った魚の話」を読んでみてください。

伊丹さんは今回ご紹介したような遊び心のあるもの、実物そっくりの緻密なものなど、本当に様々なイラストを描いています。そんなイラストを身近に感じていただける記念館のオリジナルグッズを、ご来館の際はぜひご覧くださいませ!オンラインショップものぞいてみてくださいね。

スタッフ:山岡

2021.06.21 『ポテト・ブック』の「ベイグド・ポテト」を作ってみました


ジャガイモの時期ですね。
本日は、ジャガイモの産地・北海道でジャガイモを作っている方々が「一番美味しい」と思うジャガイモの食べ方をご紹介します。
伊丹さんが翻訳を手掛けた、ジャガイモについての全てが載っている本、その名も『ポテト・ブック』の中で、伊丹さんがそのように紹介していた食べ方です。


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その食べ方とは・・・

『まず、ポテトを二つに切り、両方の切り口の中央をスプーンで丸く抉ります。できた窪みにバターを詰め、もう一度切り口をぴったり合せ、クッキング・フォイルでしっかり包んでから、ストーヴに乗せて焼くんだそうです。一種のベイクド・ポテトですが、地元の人たちにいわせるなら「これが世界で一番うまい食べ方」ということになります。』 

―『ポテト・ブック』(河出書房新社)より




まず、ポテトを二つに切り、中央を抉り、

0621-2.JPGできた窪みにバターを詰めて、

0621-3.JPG切り口をぴったり合わせて、

0621-4.JPGクッキング・フォイルでしっかり包んでから、

0621-5.JPGストーヴに乗せ...たいところですが季節柄無理なので代わりに鍋に乗せて、

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蓋をして焼くこと30分くらいでしょうか。
ホクホク感がちょっと伝わりづらいかもしれませんが、結構いい感じに焼き上がりました!バターは溶けてジャガイモに染みこんでいます。

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実に簡単で、素材がいきる食べ方だと思います。

『ポテト・ブック』にはこのような簡単な調理法から、玄人向けのレシピまで、とにかくジャガイモに関する様々な情報が載っています。1976年に出版されその後長らく絶版状態であったものの2014年に河出書房新社から復刊しました。記念館グッズショップでも取り扱っています。ジャガイモ好きの方にはぜひ一度読んでいただきたい本です。

ベイグド・ポテトも機会があれば作ってみてください。



スタッフ:川又

2021.06.14 定番の定番たるゆえん

子供の頃「ジュースを好む=子供(っぽい)」とみなされることを不満に感じたり、「大人はジュースを飲みたいと思わないものだ」と言われると「なんで?」と思ったりしたものですが、自分が大人になってフと気付くと、果汁・スポーツドリンク以外の清涼飲料水をほとんど摂らなくなっていました。

それでも時々無性に飲みたくなる、なくなったら困るなあ、と思う清涼飲料水はあって、その上位を挙げるなら、カルピスとコーラ、でしょうか。


とくに、ちょうど今頃の向暑の季節、真夏とはちょっと違う、独特な食欲不振や疲労にまいってしまうときがありますよね。そういうとき、自分の身体がカルピスやコーラを「飲みたーーい!!」と求めているのを感じます。ええ、なくなったら困るのです。

20210613_calpis.jpg今日の休憩のお供。
カルピスは限定フレーバーも楽しいですよね。
(「わりと試す派」です。)

伊丹十三は「コカコーラとカルピス」というそのものズバリな題名のエッセイをしたためて、この二つの飲み物をこんなふうに称えています。

 軽い飲み物についていうなら、私は日本のカルピス、そしてコカコーラ、この二つが断然群を抜いて偉いと思う。どこが偉いかというに、双方ともそれ以前にまったく存在しなかった新しい味を開発した。その点が実に偉いと思う。考えてもみたまえ。今カルピスというものがまったく存在しないとしてだよ、あなた、ああいう不可思議なるものを独創できるかね。なかなか思いつけるもんじゃありませんよ。コカコーラもこれに同じ。戦後初めてコカコーラを飲んだ時には色といい味といい、壜の色や形といい実に奇怪な陰気臭い飲み物だと思ったのを覚えている。
 私は新しい種類のソフト・ドリンクが出ると好奇心からつい飲んでみるのだが、やはりどうもこれという新作にはお目にかかれないようです。新しい飲み物は、何かこうデザインされた味、という感じがする。非常によく考えられ設計されてはいるのだが味のデザインにどこか無理があって、口の中でその設計を感じさせてしまうという気がする。天衣無縫という趣がない。
 その点カルピスとコカコーラの味はいかにも天然自然の感じにまでよくまとまっているのであって、たとえばもともと自然なものであるに決っている牛乳やオレンジ・ジュースと比べても、少しも不自然でない。(中略)
 カルピスもコカコーラも「いかにもありそうな」無理のない味のするところがいいのだと思う。

コカコーラとカルピス(『女たちよ!』文藝春秋・1968年)より

20210613_onnatachiyo.jpg上記エッセイ所収の新潮文庫版『女たちよ!』(税込605円)は

館内ショップ・オンラインショップで販売しております!

(岩波書店『伊丹十三選集』の第2巻にも収録されています)

コーラもカルピスも発売以来100年以上の歴史があり、今の私たちにとってはあって当たり前の存在。深く考えることもなく享受してきたのですが「個性的でありながら自然な味わいが素晴らしい」と言われると、「ウーム、確かに」と頷かずにはいられません。

「え、伊丹さんもコーラやカルピス飲むんだ、意外!」と思わせておいて、定番の定番たるゆえんを見抜いている、伊丹十三らしい一文――でも、書かれたのは今から50年以上前なんですよね。

伊丹十三が絶賛してから半世紀、個性的かつ天衣無縫な味のまま、定番であり続けているコーラとカルピス。その実力にひれ伏しながら、これからもおいしくいただこうと思います。

学芸員:中野

2021.06.07 カフェタンポポよりおすすめメニュー

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

気温が高くなってきて、半袖の服を着た方を見かけることが多くなってきました。
ここ記念館の庭木の緑も、3月や4月頃と比べると緑が深まってきたように感じます。

本日は、そんな夏のはじまりを迎えている記念館から、カフェタンポポのおすすめメニューをご案内しますね。

まずは定番中の定番、「アイスコーヒー」。
冬場はお休みしていましたが、気温の高まりとともに今年もスタートしました。
「暑い時にはよく冷えたコーヒーを楽しみたい!」という方を中心に、この季節はたくさんの方にオーダーしていただきます。
お客様の中には、グラスの中でくるくるとストローを回して「この氷の音がいいよね!」と仰る方も。確かに、グラスの中で氷が動くとカランコロンと音がして、それだけでも涼しげに感じますよね。

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アイスコーヒー

 

また、炭酸のさっぱり感を楽しみたい方にぴったりなのが「ジンジャーペリエ」「ゆずジンジャーペリエ」などのペリエ(炭酸水)を使ったメニューです。


「ジンジャーペリエ」はオリジナルの生姜シロップをペリエで割り、甘く煮こんだ生姜のみじん切りと合わせています。上に乗せたミントの葉っぱがアクセントとなって、見た目にもさわやか。すっきりとした後味で、世代を問わずご好評いただいています。
これにゆずジャムを加えた「ゆずジンジャーペリエ」も人気です!

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ゆずジンジャーペリエ

加えておすすめなのが「タンポポコーヒー」。
見た目はコーヒーそっくりの、タンポポの根っこを焙煎して作られた飲み物です。
このタンポポコーヒーには体を温める効果がありますので、冬場はもちろん、冷房などで体が冷えやすいこれからの季節にも実はおすすめなんです。ノンカフェインで、妊婦さんや、カフェインが苦手という方にもお飲みいただけます。
カフェタンポポのタンポポコーヒーはホットでお出しますので、夏だけど温かい飲み物が飲みたいという方もいかがでしょうか。

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タンポポコーヒー

じっくり展示をご覧になったあとは、ぜひカフェタンポポでゆっくりなさってくださいね。

スタッフ:山岡

2021.05.31 印伝

記念館グッズショップでは印伝(いんでん)を取り扱っています。印伝とは鹿革に漆で模様付けを行う技法で知られる甲州地方の伝統工芸品です。なぜ記念館のグッズショップで印伝の取り扱いをしているかというと、伊丹さんが印伝の愛用者だったからです。

「印傳屋 十三代上原勇七」さんのものです。

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私も印傳屋さんのお財布を使っています。あじさい柄です。

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実は、グッズショップの印伝を発注する際に、印傳屋さんのカタログで見かけたこのあじさいの柄に一目ぼれし、後日、個人でインターネットにて購入した次第です。1年ほど使っていますが、鹿革は軽く柔らかく、大変気に入っています。

現在、グッズショップの店頭にはこの同じあじさい柄の「小銭入れ」が並んでいます。

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かわいい。

伝統工芸品というと何となく古風なデザインのものをイメージする方も多いかと思いますが、印傳屋さんのサイトを拝見しましたところ、昔ながらの伝統的な模様に加え、常に新しい模様の開発がされているということです。ちなみに、伊丹さんはこちら「青海波(せいがいは)」がお気に入りだったそうです。記念館でももちろん取り扱っています。

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展示室内にも伊丹さんが愛用していたこの青海波のペンケースを展示しています。ご来館の際にはお見逃しなくご覧ください。

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【記念館近くの土手に咲いていたあじさいです。
松山では今まさにあじさいが見頃を迎えています。】


スタッフ:川又

2021.05.24 『お葬式』シーン16

5月15日は伊丹十三の誕生日にして開館記念日。おかげさまで14周年を迎えることができました。皆々様のご愛顧とお力添えに心よりお礼申しあげます。

開館記念日というと、初夏らしい好天に恵まれることが多かったように記憶しているのに、どうしたことか、去年・今年と2年連続の雨......

しかも、今年は梅雨入りの日となりました。統計史上、最も早い梅雨入りだとか。

そんなお天気もあいまって今年も静かな開館記念日となりましたが、記念日でなくとも今年でなくても、スタッフ一同ずっとお待ちしております。
状況よろしきまたの機会に、ぜひぜひお越しくださいませ。(宮本館長からの14周年メッセージもどうぞ!)


さて、そういうわけで、雨に関連した話題をひとつ。
伊丹映画には印象的な雨の場面が数々ありますが、監督デビュー作の『お葬式』には"幻"となった雨のシーンが――というお話です。

映画の序盤、主人公の侘助・千鶴子夫妻が揃ってCM撮影に臨んでいる最中に、千鶴子の父・真吉の急逝を報せる電話が入ります。
千鶴子の両親の伊豆の住まいで葬儀を行うことに決めた後、撮影所から帰宅する道々の景色と夫婦の会話が「シーン16」として計画されていました。

本編で言うと、このシーンと

20210524_osoushiki1.png「おいおい、冗談じゃないよ。うちで葬式なんてたまんないぜ」
「三河で親戚の世話になって、気兼ねしながらやるのはいやなのよ、ばあちゃん。
それに、じいちゃんも伊豆が好きだったしね。ね、頼むわよ――」

このシーンの間にあたるところで、

20210524_osoushiki2.png雷雨の中、帰宅

20210524_osoushiki3.png侘助と千鶴子の家。
祖父の死を子供たちに伝える侘助の様子を
支度しながら鏡越しに見守る千鶴子

シナリオには、このように書かれています。


激しい雨。侘助のポルシェと里見のシティが、雨の田園風景の中をひた走る。
次第に市街地へ。
信号で止まる。側溝に溢れる水。傘の群れ。
雨に光る舗道。雨の中の子供たち。
侘助「子供たちはどうするかね」
千鶴子「連れていくしかないでしょ?」
侘助「連中もついに死んだ人を見るわけか」
千鶴子「見せないほうがいいかしら――私は見たことないわよ。だから恐くって。私、死んだ人見るの初めてなんですもの」
侘助「俺は親父が早く死んだからね、そういう意味じゃ、馴れてる」
車、人通りの多い商店街にさしかかっている。
灯ともし頃の商店街は買い物客で賑わい、妙に生き生きと懐かしい。
侘助のポルシェ、人の傘をかきわけるようにしてのろのろと進む。
侘助「子供たち、連れて行こう。死んだ人っていうのも一つの現実だからね、現実を現実として向かいあって悪いわけはない」
千鶴子「あなた、子供たちにちゃんと説明しなきゃ駄目よ」
車、閑静な住宅街に入ってゆく。

親を亡くした夫婦もまた親であり、突然の出来事に親としてどう振る舞うべきか悩む......二人の立場が初めて表されるはずだったこのシーン16は、撮影はされたものの、編集過程で惜しくも削られたのだそうです。


シナリオ段階で2時間を大きく超えることが分かっていながら敢えて書いたとおりに撮影し、つないでみてから刈り込んでいく、というやり方で作られているため、これ以外にも使われなかったシーンやカットはいろいろあったようでして......


ハイ、「撮ったのに使われなかったシーンが!?」「そんなの残念すぎる!!」と思ったそこのアナタに朗報。

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記念館オリジナル&限定販売の『映画「お葬式」シナリオつき絵コンテノート』(税込770円)には、そんな"幻"のシーンももれなく収録。ノーカットのシナリオと、全シーンにわたって準備されたという絵コンテを併せてお楽しみいただけます。

お家の中で雨音を聴きながら雨のシーンを"読む"、なかなかの風情と想像されます。
よろしければどうぞお試しくださいませ。

学芸員:中野

2021.05.15 5月15日・伊丹十三記念館は14周年を迎えました!




5月15日・伊丹十三記念館は

14周年を迎えました!




5月15日は伊丹十三の誕生日です。
亡くなって23年、、、生きていたら88歳~~米寿!

皆さまお変わりありませんでしょうか?大丈夫でしょうか?

心を落ち着かせ、バラの香りを胸一杯吸いますと、
まだ普通の日常がある......私は少しの幸せを思います。

もうすぐ!ワクチン接種する所まで辿り着いた!
少しずつよくなる~~絶対!
私は信じています。

今は松山に行けない!
まだ、記念館の受付に立ちお客様をお迎えできない!
ないことばかりで~~(笑) もう笑うことしかありません。

私は希望を持ちます~~もうすぐ~~行けます。

その時には、手がちぎれるくらい握手して~~(笑)
大いに写真撮影をいたしましょう~~ね!

記念館は細心の注意をしております。
桂の木も青々としていて、スックと立ち
風が吹くと葉っぱが喜んでいるようです。

スタッフ一同、お待ちしております。
是非お立ち寄り下さいませ~~。
そして、御自愛下さいますように~~。





感謝

宮本信子


2021.05.10 映画鑑賞の記録に

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

突然ですが、皆さまの中に、観た映画について記録をしている、という方はいらっしゃるでしょうか。
先日久しぶりに電話で話した友人がこの記録をつけていて(「読書日記」のように「映画日記」というのでしょうか)、そのつけ方がちょっと面白いなぁと思ったので、少しご紹介させていただこうと思います。

「記録をつける」というと、ノートや手帳、スマートフォンアプリなどを思い浮かべるのですが、その友人が記録をつけているものは「映画ポストカード」です。
映画のポスターやチラシ、出演俳優、キャラクターなどがプリントされたポストカードに、その映画を観た日付や状況、感想、好きなセリフなどを書きとめ、飾ったりファイルに綴ったりしているそうです。
ポストカードにこんな使い方があるのか~と感心しつつ、確かにそんな記録でしたら、あとになって自分で見てもわかりやすく、誰かと一緒にそのポストカードを見るのも楽しそうだなぁと思いました。
全部は難しいと思いますが、関連したポストカードがあってそれを入手できる映画であれば、そんな記録の仕方も面白いのではないでしょうか。

ご来館のお客様からよく「伊丹映画が観たく(観返したく)なりました」というお話をうかがいます。
記念館のショップでも、伊丹監督映画作品のポスターがプリントされたポストカード10種類を販売していますので、伊丹映画をご覧になった記録としてこのポストカードに「映画日記」を書いてみるのはいかがですか?

ショップ店頭では10作品それぞれのポストカードの単体やセットをお買い求めいただけます。セットについてはオンラインショップでも取り扱っていますので、ご興味を持たれた方はぜひお試しください。

20210510-1.jpg記念館ショップポストカード売り場

 

20210510-2.jpgポストカードセット(映画ポスター)

 

スタッフ:山岡

2021.05.03 ヤマボウシの魅力

今年もヤマボウシの花が咲き始めました。


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このヤマボウシは、春先に力強く芽吹くところも、その後白い花が咲くところも、紅葉の美しさも、落葉後の枝ぶりまで、1年を通してずっと美しいのです。美しくない時期が一瞬もない!今は上の方から順に花がついてきています。


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聞くところによりますと、植物には朝日が当たり、西日が当たらないという環境が良いそうですが、記念館のヤマボウシは、それと真逆、東側に建物があり朝日は当たらず、西側には遮るものがなく、日が沈むまで西日が当たり続けるという厳しい環境にいながらも、健気に頑張っています。


さて、いくらヤマボウシが美しいと言いましても、やはりシンボルツリーの桂をスルーするわけにはいきません。新緑の美しさには毎年惚れ惚れいたします。何度同じことを記念館便りに書いたかわかりませんが、毎年毎年感心いたします。葉の丸い形、葉が薄いところ、鮮やかな黄緑色、どれをとっても、とにかく美しい。


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一人でも多くの方に見ごろの木々たちをご覧頂きたいと思います。ご来館の際にはお見逃しなくご覧下さい。





スタッフ:川又

2021.04.26 灯台下暗し

快晴の4月中旬、「いざ出陣、もとい出勤!」と愛馬(ただの自転車)にうち跨った瞬間、アツアツになったサドルでお尻を焦がしかけました。
今年もまた、いつの間にか春は終わっていたようです。暑いですネ~

そういうわけで、近々、サッパリと過ごせる夏物の服を買いに行きたいと考えていたのですが、不要不急の外出の自粛が求められる状況に再びなった今、急を要するかと自問すれば「そうでもないな」と思われ、「まあいいか」と延期に延期を重ねておりますと、日に日に気温は上がっていくのでありまして――

フと見ると、あるじゃないですか。
マチナカへ出かけなくても、目の前に。

20200727_1.JPGIMG_7813 (300x200).jpg言わずもがなですが、記念館のグッズショップです

灯台下暗しとはまさにこのこと。

苦笑と喜び半々で、『スパゲッティを巻くスペースを作る』(税込3,250円)の黒を買い求めることにしました。(ちょっと古い記事ですが、絵柄の由来はコチラでどうぞ。)

『スパゲッティを巻くスペースを作る』シリーズ(黒・赤)と『猫三匹』(ネイビー)は薄手のTシャツ地を使っていますので、軽くて爽やかな着心地です。

新品だし涼しいし、サッパリとした、いい気分です!

※『二日酔の虫』シリーズ(白・黒)のほうは、これぞ定番Tシャツといった感じの、シッカリめの生地が使われています。

記念館オリジナルTシャツはオンラインショップでも全種類取り扱っていますので、ご遠方の方、お近くでもお出かけ我慢中の方、ぜひご利用くださいませ。

ただし、店頭・オンラインショップとも、在庫状況によって一時的に欠品することがございます。暑くなってくるこれからの季節、どうぞお早めに。


と、いうようなことを書いているうち、これを機会に全国の博物館施設のオリジナルTシャツを買い求めてみたくなってきました。
いつか行ってみたいと思っている博物館で、なるべく遠いところから順に......少しずつではありますが、(ささやかながら応援の気持ちもこめて)集めていきたいと思います。

学芸員:中野

2021.04.19 まえがき

皆さまは本を読むとき、「まえがき」は読まれますか?

「まえがき」は本編の前に書き添えられた文章で、伊丹さんの著書にも何冊かまえがきが書かれているものがあります。先日来られた伊丹さんのエッセイファンの女性が、最初に伊丹さんの著書を読もうと思ったきっかけがまえがきだったというお話をうかがいましたので、少しご紹介させていただきますね。

この女性が読まれたまえがきがこちら。『問いつめられたパパとママの本』(中公文庫)からご紹介します。

 一体これはなんの本だろう――そう思いながら本屋の店頭でこの頁を繰っていらっしゃる方があると思う。
 われわれ、だれしも本屋で本をパラパラめくりながら思うものです。
「どんなことが書いてあるのかな」
「おもしろいのかしら、ほんとうに」
「途中で飽きてほうり出すなんていやだもんなあ」
 そういう方に説明したいと思う。
 この本はおもしろい。いや、おもしろくなくては困るのです。
 この本を私は、生まれつき非科学的な人、つまりあなたのために書いた。
(中略)
 実用的にみるなら、また、この本は、ホラ、子供がよく親にいろんなことを訊くじゃありませんか、
「空ハナゼ青イノ?」
「オ月サマハ、ボクガ歩クトドウシテツイテクルノ?」
 そういう時に繙いていただきたい虎の巻でもある。
 子供の質問というのは、素朴で根源的であるだけに、難問であることが多いのであります。親のほうはハタと困ってしまう。
 そうして、こういう時の親の態度というのが大切なのですよ。実に大切だ。子供の心は染まりやすい。確信のない、ごまかしの返事をしたり、
「うるさいわねぇ。ママ、いま忙しいのよ、サ、いい子だからあっち行って遊んでらっしゃい」
 などと逃げをうつ。こういうことが積み重なると、折角の子供の好奇心の芽がどんどん摘みとられてしまって、遂には知識欲のまるで乏しい子供ができてしまう。そうなってしまってから、子供を塾なんぞへいれて、やいのやいの勉強しろったって、そりゃ子供が可哀そうだよ。向学心をひからびさせちゃったのはあなたなんだからね。

 子供の好奇心を、正しくいい方向に伸ばそうではありませんか。それは無限の可能性を秘めているみずみずしい知識の若木なのですから。
 そうして、そのためには――子供に問いつめられたパパとママよ、まずあなた自身が科学的な物の考え方を身につけるほかないと私は思う。知識に対する、憧れと畏れを身につけるほかないと私は思うのであります。

まさに本屋さんでこのまえがきを読み、購入を決めたとのこと。たしかに本編を読んでみたくなるまえがきですよね。お客様曰く「これを書いた人がどんな人か興味が湧いて」「どんなことが書かれているのかワクワクしながら頁をめくれそう」と思ったのが決め手だったそうです。

もうひとつ、『女たちよ!』(新潮文庫)のまえがきから一部ご紹介します。

 

 寿司屋で勘定を払う時、板の向こうにいる職人に金を渡すものではない。彼らは直接食べ物を扱っているのだから。このことを私は山口瞳さんにならった。
 包丁を持つ時には、柄のぎりぎり一杯前を握り、なおかつ人さし指を包丁の峰の上にのせるのが正しい。私はこのことを辻留さんにならった。
 そうして、正しく握った包丁で俎に向かう時、躰を斜にかまえて包丁を俎と直角に使う。これが俎に対して、また材料に対しての礼である。このことを私は築地の田村さんにならった。
(中略)
 と、いうようなわけで、私は役に立つことをいろいろと知っている。そうしてその役に立つことを普及もしている。がしかし、これらはすべて人から教わったことばかりだ。私自身は――ほとんどまったく無内容な、空っぽの容れ物にすぎない。

本編とはまた違ったところから書き手である伊丹さんのお人柄や考え方が垣間みられるようなまえがきと、本編を読むと、よりその一冊が楽しめると思います。未読の方はぜひ読んでみてくださいね。

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今回はまえがきについて引用してご紹介しましたが、上記の『問いつめられたパパとママの本』や、『ヨーロッパ退屈日記』(新潮文庫)には、伊丹さんの書いた「あとがき」も載っていますので、ご興味のある方はそちらもご覧になってみてください。

20210419-2.jpgおまけ:中庭の桂は新緑のきれいな季節です

スタッフ:山岡

2021.04.12 伊丹十三記念館に関する最新情報は「ニュース欄」をご覧ください



現在、伊丹十三記念館は通常通りのスケジュールで開館をしています。


今後もスケジュール通りの開館を予定しておりますが、もしも今後について何か変更が生じた場合には、すみやかにこの記念館ホームページの「ニュース欄」でお知らせさせていただきますので、気になる方は時折チェックしてみて下さい。


さて、記念館ホームページの「ニュース欄」ですが、場所はパソコン上で見るとこの右側の部分。

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スマートフォンで見ると、上から「ごあいさつ」



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その次に「開館カレンダー」と続き、その下に出てきます。


0412-3.jpgのサムネイル画像

ここで、記念館からの最新の情報を皆様にお届けしています。

宮本館長の来館予定やイベントの案内などを掲載していることもあります。


と言いましても、ここのところは中々そうもいかないというのが現状ではありますが...



ワクワクするような情報をお届けできる日々が、早く戻って来ますように!



という訳で、これからも伊丹十三記念館のニュース欄もお見逃しなく、期待してご覧下さい。





スタッフ:川又

2021.04.05 無法松の一生

伊丹万作脚本作品『無法松の一生』(1943年・稲垣浩監督)のBlu-rayが発売されました。

これまでもDVDやサブスクリプション配信、テレビ放送や特集上映などで鑑賞可能だった『無法松の一生』ですが、今回のBlu-rayは4Kデジタル修復版。
さらに、特典映像として、この作品の"歴史"と修復のドキュメンタリー、戦後GHQの検閲によって切除されたシーンなども収録されているそうで、豪華コンテンツですねぇ。さすが、阪東妻三郎さんの生誕120年記念!(※GHQ切除シーンは2012年発売のDVDソフトにも収録されています)

「古い映画は、ちょっと傷んだ映像で見るほうが趣があっていい」という方もおられましょうが、デジタル修復された映像では、俳優の表情、殊に、視線が鮮明になっていて、ハッとさせられることがたびたびあります。「何度も見た作品のはずなのに、まなざしひとつから登場人物の心情を感じる度合いがこうも違うものか」と驚きつつ、作り手の意図が十分に伝わる(ような作品の状態維持)って重要なことなんだな、と深く感じ入る瞬間です。
「大らかで、かつ精妙」「高度に完成されてくると、ほとんど技術的研鑚の痕跡すらとどめないということを改めて知らされる」と伊丹十三が讃えた(「父と子」『女たちよ!男たちよ!子供たちよ!』より)阪妻さんの演技、入手次第、4Kデジタル修復版で堪能したいと思います。

この『無法松の一生』は、制作当時には日本の内務省の検閲によるフィルム切除(脚本の事前検閲もありました)、戦後はGHQの検閲によるフィルム切除を受けた、受難の作品であります。およそ18分もの欠損がありながら名作として高く評価され、今なお愛され続けているのですから、存在自体も大変にドラマチックな作品と言えますね。

そして、『無法松の一生』が"息の長い"作品となったことで、伊丹十三にはまた別の、作者の息子ならではのドラマチックな体験がもたらされたようです。
公開当時に映画館で見て以来、34年ぶりにテレビで再見して綴ったエッセイによりますと――

 私はこの映画を見て、いつしか坐り直していた。突然私は悟ったのである。「この映画は父の私に宛てた手紙であったのだ!」それがいきなり判ってしまった。
 父は私が三歳の頃結核に斃れ、以来、敗戦直後、死ぬまで病床にあった。父の最大の心残りは、息子の私であったろうと、今にして思う。自ら育てようにも、結核は伝染病である。子供を近づけることすら自制せねばならぬ。かといって自ら遠ざかるうち、子供は、あらまほしき状態から次第に逸脱してゆく。このじれったさはどんなものであったろう。時時、それでもたまりかねて、父が私を呼ぶ。叱責するためである。
「意志が弱い」
「集中力がない」
「気が弱い」
「根気がない」
「グズである」
「ハキハキせよ」
「オッチョコチョイ」
「調子に乗るな」
「計画性がない」
「注意力が散漫である」
 その父が、思いのすべてを托せる物語に出会った。「無法松の一生」である。
 ひとりの軍人が病死し、あとに美しい未亡人と幼い息子が残される。息子は、気が弱い。意志が弱い。グズである。ハキハキしない。注意力散漫である。
 この息子に、男らしさを、勇気を、意志の強さを、喧嘩の仕方を教えてくれるのが松五郎であった。松五郎こそ、父の私に対する夢でなくしてなんであったろう。

「父と子」『女たちよ!男たちよ!子供たちよ!』より

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エッセイ「父と子」収録の単行本・文庫『女たちよ!男たちよ!子供たちよ!』(1979年、84年・文藝春秋)は残念ながら絶版ですが、2018~19年に岩波書店から刊行された『伊丹十三選集』の第3巻に再録されています。
上に引用した文章の続きにある「私は、伊丹万作、松五郎路線と、ほぼ反対の方向に子供を育てつつある自分を発見する」という、実に伊丹さんらしいお話も含めて、ぜひどうぞ、お読みください。

学芸員:中野

2021.03.29 中庭のベンチ

先週、先々週と春の記念館をお届けしていますが、この時期、ご来館のお客様にお試しいただきたいのが「中庭の回廊にあるベンチに座ること」です。

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奥行きの浅い「PERCH BENCH(止まり木椅子)」と呼ばれるこのベンチは、記念館を設計された建築家・中村好文さんのデザイン。中庭をはさんで向かいあうように2つ設置されています。


座ると桂の木が自然と目に入るなどオールシーズンおすすめの場所ではあるのですが、特に今の時期――冬が終わり春を迎えるこの頃は、過ごしやすい気温も手伝って、おだやかな陽射しや吹く風が本当に心地よく感じられるんです。雨の日も、冬場と異なりどことなくやわらかい印象を受けます。


「日に日に」という言葉がぴったりなくらい、黄緑色の葉っぱが次々に芽吹く中庭の桂をご覧いただけるのもこの時期ならではです。タンポポも咲きはじめましたので、おひとりで、またはお連れ様と一緒にベンチに座って、ゆっくりと寛いでいただきたいなぁと思います。

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実際3月になってから、このベンチに腰掛けるお客様の姿を目にすることが多くなってきました。
記念館にお越しの際は、ぜひ座ってみてくださいね。

スタッフ:山岡

2021.03.22 春の伊丹十三記念館

3月17日の水曜日に出勤しましたら、ベントレーのガレージそばのヤマザクラが咲いていました。
15日の月曜日に見た時は咲いていなかったというのに。
そして19日の金曜日にはほぼ満開になっていました。
先週の記念館便りでもお伝えした通り、伊丹十三記念館にもいよいよ春がやってきました。

0322-1.JPG0322-2.JPGヤマザクラの足元には、所々赤ちゃんヤマザクラの姿も見えます。

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ユキヤナギも満開です。小さな白い花と葉の黄緑色がとにかく可愛い。

0322-4.JPGそして今年も、桂の下に、ユキヤナギ。

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そしてトサミズキの下にも、やっぱりユキヤナギ。

0322-6.JPG植えたのは一か所ですが、自力でどんどん陣地を増やしています。
しかしトサミズキの下のユキヤナギも、桂の下のユキヤナギも、あまりにも可愛すぎてどうも刈り取る気にはなりません。
私以外の記念館スタッフも同じ考えのようで、誰も刈り取る様子がありません。

「結局、美人は得をするようになっているんだわ」と、ユキヤナギを見ると感じます。

記念館の周りの土手の菜の花も見事です。

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皆様もご来館の際には美人のユキヤナギに、満開のヤマザクラ、菜の花、そして芽吹き始めたシンボルツリーの桂など、伊丹十三記念館の春をご堪能下さいませ。

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あと、つくしも生えていました。

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スタッフ:川又

2021.03.15 菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

3月も半ばに入り、寒さもずいぶん緩んできました。
先日友人から届いた便りに「山笑う」の文字があり、「あぁほんとうに」とうなずきました。身近にある里山のあちこちで花が咲きはじめ、眠っていた山は確かに笑いはじめています。皆さまがお住いの地域はいかがでしょうか。

冬枯れの景色にも味わいがありますが、春を告げる花々が順々に開いていくよろこびと心弾む感覚は、寒さで縮こまった体と心をほぐしてくれるようでほんとうにありがたい、歳を重ねるごとにそう感じるようになりました。今年も、梅・万作・寒桜・木蓮・木瓜......移ろう花とともに春を実感しています。

先日、季節の変化を表す「七十二候」をなにげなく見ていましたら、毎年3月10日~14日頃は「桃始笑」、文字通り桃の花が咲きはじめるころとありました。七十二候は一年を72に分けてひと区切りを約5日とする短いものですが、天候や植物の移ろいをピンポイントで示してくれるのが楽しく、いまの時期はなんだろうとつい調べたくなります。
そういえば、わたしは今年まだ桃の花を見ていません。咲いている場所へ行ってみたいものです。

記念館の庭木からも春を感じます。こちらは、正面入り口前のユキヤナギとトサミズキ。

20210315_01.JPGユキヤナギ


20210315_02.JPGトサミズキ


どうぞ、展示とあわせて刻々と姿を変える庭木たちにも会いにいらしてくださいませ。折々の庭木の表情をご覧いただけることと存じます。

ところで、この記念館便りの公開日(3月15日)は七十二候では「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」、虫が蝶に羽化するころ。二十四節季でいう「啓蟄」の結びですね。
偶然にも、手紙に「山笑う」と記してくれた友人への返事に菜の花のそばを蝶が舞う絵葉書を選んだところでした。家庭菜園をなさる方からは、野菜の葉を食べてしまう菜虫はやっかいだと聞きますが、毎春あちこちの家庭菜園を舞う蝶の軽やかな姿に思わず目を奪われてしまうわたしです。


スタッフ : 淺野

2021.03.08 アンソロジー

伊丹十三のエッセイを収録したアンソロジーが、2月、3月と立て続けに刊行されました。
作家の手料理』と『作家と猫』。どちらも平凡社からの刊行です。

『作家の手料理』のほうには「スパゲッティの正しい調理法」(『ヨーロッパ退屈日記』新潮文庫)、『作家と猫』には「わが思い出の猫猫」(『再び女たちよ!』新潮文庫)が、さまざまな作家の名エッセイとともに収録されています。

どちらも何かと取り上げていただくことの多いエッセイなので、伊丹十三の著書以外で読んだことあるよ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、ごく一部を抜粋してご紹介しますと――

 これは断じてスパゲッティではないのです。これをスパゲッティだという人は、銀座あたりにあるアメリカ人目当てのスーヴェニア・ショップに行ってもらわねばならぬ。そして絹のキモノ・ドレスとかいうものを買っていただく。そして、それを着て、ハイ・ヒールで街を歩いてもらおうじゃないか。わたくしはそう思います。
 しからば、真のスパゲッティとはどういうものなのか。

 

「スパゲッティの正しい調理法」『ヨーロッパ退屈日記』(1965)より

 猫の意識において、猫という種族は人間とまったく対等の種族なのである。いや、ことによると、猫は自分を人間であると思っているのかも知れぬ。
そういえば時に猫は、はしゃぎまわる小児のようであり、時に猫は、哲学的な瞑想に耽る老人のようでもある。

 

「わが思い出の猫猫」『再び女たちよ!』(1972)より

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ところで、エッセイのアンソロジーというと、学生の頃に本屋さんでよく見かけた、作品社の『日本の名随筆』シリーズ(1982-99年刊行)を思い出します。
最近あまり見なくなったように思いますが、なにしろ本巻・別巻で全200巻の一大シリーズ、統一されたデザインで書棚にズラリと並ぶ光景、背表紙の編者名は大作家ばかり。それはそれは迫力がありました。

心惹かれながらついに一冊も買えなかったんですけど、そんなことも含めて懐かしく、また、「もしや...」と調べてみましたら、伊丹十三のエッセイ「猫」と「鯉コク」の2篇がこのシリーズに収録されていました。テーマはそれぞれ『猫』(編者:阿部昭さん)と『肴』(編者:池波正太郎さん)。
そしてさらに調べますと、伊丹万作のエッセイも2篇、市川崑さん編『顔』と、天野祐吉さん編『広告』にありました。
ああ、やっぱり、あの時、少しずつでも手に取っていたら、もう少し早く――ほんの数年ではあるけれど、もう少し早く、伊丹万作・十三父子の文章に出会えていたのに。

一冊も買えなかった理由を思い返してみるに、書棚に鎮座する巨大シリーズにおそれをなした、とか、大人の読み物に思えた、とか、単なる懐具合ということもありますが、たぶん、一番には「アンソロジーって、おいしいとこ取りのツマミ食いみたいじゃない? それってちょっと虫がよすぎない?」というような考えが邪魔をしていたのだと思います。
若さゆえの潔癖症、と言えば通りがいいかもしれませんが......なんと愚かで損な考えかと悔やまれます。(20年前にタイムスリップして、当時の自分をトッちめたいですね!)

幾年月が過ぎて今、伊丹十三とさまざまな作家のエッセイが編み込まれたアンソロジーを読んで感じるのは「友達の家に遊びに行って、友達のお母さんのごはんをご馳走になる」のと非常に近い気持ちです。
「まったく知らない材料や調理法にビックリ、とかはなかったんだけど、自分ちではやらないお料理がいろいろあって、ちょっと世界が広がった」というあの感じ。つまり、楽しいではありませんか!
そればかりか、巻末の出典情報なんかも熟読したりして「次に本屋さんに行ったらこれ買うぞ」と、楽しみが数珠つなぎになるではありませんか!

そういうわけで、アンソロジーもおすすめです。書店でお見かけになられましたら、ぜひお手に取ってみてくださいませ。

※伊丹十三記念館のグッズショップおよびオンラインショップでは販売しておりません。何卒ご了承ください。

学芸員:中野

2021.03.01 イチゴのメニューのご案内

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
本日は、カフェ・タンポポよりイチゴのメニューをご案内いたします。


◆豆乳イチゴ

春に登場する期間限定の人気メニュー「豆乳イチゴ」。今年は本日3月1日よりスタートいたします!

愛媛県内産のイチゴに豆乳をミックスしたこのドリンクは、イチゴの甘みと酸味、豆乳のまろやかさが程よく合わさり、さっぱりした甘さで幅広い世代の方にご好評いただいています。ピンク色のドリンクにミントの葉っぱの緑がアクセントとなって、見た目にも可愛らしいメニューです。

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◆イチゴのタルト

時期により使う果物が変わる季節のケーキは、現在「イチゴのタルト」をお出ししています。イチゴがお好きな方はこの時期にぜひオーダーしてみてください。口当たりの良い甘さで食べやすく、小さめサイズですので、「ちょっと何か食べたいな」というときにもピッタリですよ。

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記念館にお越しの際はぜひカフェ・タンポポにお立ち寄りくださいませ。


スタッフ:山岡

2021.02.22 健康に痩せていよう


ダイエットに励んでいる知人がいます。

「隣町のショッピングセンターで買い物した後、家族が車で帰宅する中で自分だけ徒歩で帰ってきた」とか、「お酒は決めた量だけにしている」などという話を聞く度に、本当に偉いなあと感心します。


一方私はと言いますと、自分に甘くいろいろなことから目を背けて暮らしています。
最近の体重はわかりません。まず体重計が家にありません。



突然ですが、ここで問題です。

ふとりすぎの原因って何かご存知ですか?

正解はこちらです。



「ふとりすぎの原因は、十中八九、食べすぎであります。」

ートナリノケンチャンハドウシテアンナニフトッテルノ?-
『問いつめられたパパとママの本』より





先日、『問いつめられたパパとママの本』を読み返しておりましたら、目に飛び込んできました。
この直球すぎる伊丹さんの言葉が、深く刺さるのは何故でしょう。



ここでもう一つ、伊丹さんのエッセイの中で数年前に目にして以来、頭から離れない言葉がありますので、ご紹介いたします。



「肥った人はみんなそれまでに死んでしまうのです。痩せた人だけが生き残ってお年寄りになっているのです」

-食べものごときに過大な興味を持つな-
『ぼくの伯父さん』より




これは一体どういうことでしょう。この前後の文章も読んでみましょう。


八十とか九十とか、非常にお齢を召された方方、こういう方方は、まず例外なく、いわゆる鶴のように痩せておられるものです。
 あれは一体どういうわけか?
「やっぱりあれよね、齢とっちゃうと、みんなあんなふうに痩せちゃうのよね」
なんていってる女の子がいる。とんでもない話であります。そういうふうに自分に都合のいいようにばかり世の中を考えるもんじゃない。いいですか、あれはだね、


「肥った人はみんなそれまでに死んでしまうのです。痩せた人だけが生き残ってお年寄りになっているのです」


そういうことなんだなあ。
 どうも話が多少年寄じみてまいりますが、食べるということを真面目に考えるなら、どうしても健康ということを考えざるを得なくなる。
 まず健康であること。特に二十六歳以後において健康であること。そのためには肥りすぎてはいけないよ。健康に痩せていよう。そうして、痩せているためには、食べるものに対する妄執をなんとか断ち切らねばならぬ。料理なんていうことを云々するのは、そういう大覚悟が為されてから後の話です。

-食べものごときに過大な興味を持つな-
『ぼくの伯父さん』より



ということです。
一見、厳しい話のようでいて、途中に出てくる「まず健康であること。」とか「肥りすぎてはいけないよ。健康に痩せていよう。」などという言葉は優しさが含まれていて、ホロっときますね。



という訳で、そろそろ私も伊丹さんの言葉を胸に「大覚悟を為して」、現実と向き合いたいと思います。まずは体重計を買ってきましょうか。



先ほどご紹介した『問いつめられたパパとママの本』のエッセイでは、あの直球の一文のあとに、痩せるために食事を改良する方法が詳しく語られています。今一度、心して読み直したいと思います。



ご紹介した2冊のエッセイはオンラインショップでも取り扱っております。
宜しければご覧下さい。



「ぼくの伯父さん」は         こちら
「問いつめられたパパとママの本」は  こちら




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スタッフ:川又

2021.02.15 オトシモノの正体

秋から春先にかけての朝、外回りのお掃除をしておりますと、こんなものが落ちていることがあります。

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駐車場の南西の角のところにバラバラと、ピスタチオみたいな質感で、大きさは枝豆一粒ぐらいのものが、多い時は......そうですね、30個以上。

初めて見たとき、すなわち、記念館に勤めはじめて間もない頃から「何かの木の実の種かな」「鳥の"オトシモノ"なんだろうな」「掃いても掃いても毎日これだけ落ちているのなら、たいそう美味しいのに違いない」と思ってはいたのですが、正体をつきとめられぬまま十数年――

恥ずかしながら最近やっと、たまたま手に取った鳥類図鑑でセンダンの種だと知りました。
センダンの実は、ムクドリやヒヨドリの好物なんだそうですね。(残念ながら、我々人間が食べると食中毒を起こして落命することもあるらしいです。)そういえば、それらしき鳥を庭や周辺でよく見かけます。

当然、センダンの木がこの辺りにあるということなのですが、名を知っているだけで姿は知らず、重ね重ねの恥ずかしながら、どんな木なのやら。
ぜひ見てみたく思っていましたら、これまた最近、記念館から2キロほど北の石手川緑地で発見しました。

「今日は鳥の声がにぎやかだな」「オヤ、あの木の下、何かの実がたくさん落ちてるぞ」とよくよく見ますと......

20210215chinaberry_2.JPG「これ、図鑑で見たヤツ!」

 

20210215chinaberry_1.JPG枝にも実がいっぱい。センダンの木っておっきいんですねぇ。
ここだけの話、月に3度は通るエリアなのに気づいてませんでした(笑)

と、記念館とあまり関係のないことを書き連ねてしまいましたが......旅行やお出かけに慎重にならざるを得ない今の状況、名所を訪ねて珍しいものを眺めたり食べたりするというような行楽的な体験はなかなかできませんけれど、遠出もできず人にも会えず、いつも同じところに身を置いて、同じことを繰り返す生活の中でこそ、ちょっとした出来事や変化に敏感に反応できたり、うまくすると長年の疑問が解けてちょっと嬉しかったり、そんなこともありますね、という一例でございました。

何度も読んだ本や見たことある映画の、いつもとは違うポイントで感銘を受ける、なんていうことも、もちろん大いにあるでしょう。
今はご来館の難しい方も、ぜひ本や映画で伊丹十三の世界に繰り返し触れていただいて、心身とも健やかにお過ごしいただきたいと願っています。(もちろんもちろん、ご来館も大歓迎です!)

どうか皆様、お元気に春をお迎えくださいますように。

学芸員:中野

2021.02.08 伊丹さんの猫の絵

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
まだまだ肌寒さを感じる日が続きますが、立春を迎え、記念館の近くを流れる川の土手では菜の花が咲き始めています。

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さて、「猫好き」で知られる伊丹さんは、猫の絵をたくさん描いています。
鉛筆や筆で描いたもの、色をつけたもの...その絵をTシャツにプリントして家族や友人にプレゼントしたこともあったそうです。
一部の絵は記念館の常設展示室や、記念館のガイドブック等で紹介されていますので、ご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。

20210208-2.jpg常設展示室「十 猫好き」のコーナー

記念館のショップではそんな伊丹さんの猫の絵を使ったオリジナルグッズを販売しています。

猫好きで、かつイラストレーターとしても活躍した伊丹さんならではの猫の絵がプリントされたグッズは、伊丹さんと同じく猫好きの方はもちろんそうでない方にも「かわいい」「味わいがある」等などご好評をいただいているんですよ。お土産にもおすすめです!

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猫3匹が並んだTシャツ

20210208-4.jpgポストカード・缶バッジ・ゴム印

ショップ店頭、また、オンラインショップでもお求めいただけますので、ご興味のある方はぜひごチェックしてみてください。

スタッフ:山岡

2021.02.01 伊丹十三記念館ホームページを覗いてみて下さい

明日は2月2日ですが、『節分』なんだそうですね。
2月2日の節分は明治30年以来、124年ぶりだそうです。

ちなみに伊丹十三の父親・伊丹万作が生まれたのは明治33年で、121年前のことです。

124年前を「伊丹万作が生まれる3年前」と言い換えると、よりわかりやすくなったでしょうか?そうでもないですか?
個人的にはぐっと身近に感じられます。


伊丹十三記念館には展示室やカフェなどに、伊丹十三だけでなく、伊丹万作に関する品々も展示していて伊丹万作によって描かれた絵画や書かれた日記を日々目にしているからでしょうか。

みなさまにもすぐにそれらをご覧頂きたいのですが、このご時世ですからご移動が難しい方もいらっしゃるかもしれませんので、本日は「ご自宅で」「今すぐに」伊丹万作を感じて頂く方法をご紹介します!

この伊丹十三記念館ホームページに、伊丹万作に関するページがあるのです、皆さまご存知でしたか?


伊丹十三の父、伊丹万作について書かれたページはこちらから⇒  こちら


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写真も沢山、解説も詳しく大変読み応えがありますね。

その他、常設展企画展のページなどもすごく充実しているのでお勧め致します。



また自由に動ける世の中になりましたら、その時には是非ともご来館の上で「ホームページで見た」ものの実物をご覧頂き、伊丹十三だけでなく伊丹万作の仕事や人となり、そして伊丹十三記念館を感じて頂けましたら幸いでございます。


それまで少しの時間、豆まきなどもしつつ、伊丹十三記念館のホームページの色々なページも覗いてみてください。







スタッフ:川又

2021.01.25 寒い景色の作り方

寒中お見舞い申しあげます。皆様、お変わりありませんか。
この冬の寒さは、やけに心身にこたえるような気がします。でも、もうすぐ節分。2月2日が節分となる暦は明治30年以来だそうです。つまり、今年は1日早く春が来る...はず! 暖かくなるまでしのいでまいりましょうね。

さて、伊丹映画にも、寒さが骨身に染みてくるような、冬のシーンがいくつかございます。

映画における季節の演出は、その場面の雰囲気づくりに大いに関わるものであるとともに、時間の経過を視覚的にあらわすのにも有効な手段でありますが、冬らしさを表現したい場面だからといって寒い季節・寒い土地で撮影できるとは限りません。カメラを回すにあたっては、さまざまな工夫が凝らされているのです。

一例を挙げますに、『マルサの女』(1987年公開)、ファーストシーンのファーストカット。

雪の日。ひどく陰気な病院にロールスロイスが到着し、男が二人(山崎努さん・室田日出男さん)降りてくる......という場面――



20210125_marusa_1.png20210125_marusa_2.png20210125_marusa_3.png

――ここで病室の窓越しに見えている雪景色は「作り物」なんです。
降る雪は発泡スチロールの粒、地面に積もった雪は樹脂に起泡液を混ぜてコンプレッサーで敷きつめたもの、手すりと窓の桟に乗っているのは、なんと塩。ついでに言うと、窓の桟も美術スタッフの手作りだとか。

このシーンの撮影は、1986年11月17日、今は新国立劇場が建つ場所にあった「東京工業試験所の跡地」で行われました。
撮影現場に密着したメイキング『「マルサの女」をマルサする』(構成・演出:周防正行さん)で、その様子をちょっと覗いてみましょう。

20210125_marusamaking_1.png窓から見える範囲にだけ雪景色をこしらえます。
「塀で視界を遮れば、雪を積らせるのはその手前だけでOK」
というわけで、塀も作り物。しかもとっても部分的!

 

20210125_marusamaking_2.png「料理に近いネ、どっちかと言えば」と
手すりに塩をまぶす伊丹監督、の図。

監督自ら撮影の一部始終を記録した『「マルサの女」日記』(1987年・文藝春秋)を紐解きますと、この日の撮影準備についてはこんなふうに記されています。

 自分は窓のすぐ外の階段と手すり、そして窓枠に積った雪を塩で作る。やはり自然現象を手で作るのはとても無理だ。非常に難しい。助監督久保田、装飾石田登両君と、まるで細工物を作るように、息をつめて塩を積む。(中略)
 結局、全午前中を雪、その他の準備に費し、昼頃やっと本番。
 雪を降らし、窓をヤカンの湯気で曇らせ、遠くのビルの煙突にスモークを焚いて煙を出して(暖房の排気の湯気のつもりである)すかさず本番。

「とても無理」「難しい」と降参したかのような書きぶりの伊丹監督ですが、メイキングビデオでは、この作業に夢中になっている姿(超・楽しそう)、そして「ほとんど芸術の域に達してる」との自画自賛発言(超・嬉しそう)もバッチリ捉えられていました(笑)

ちなみに、主人公の勤務先「港町税務署」のシーンも、同じ東京工業試験所跡地で撮影されたのだそうですよ。"映画の中の世界"がいかに作られているか、本編で、メイキングで、どうぞお楽しみください。

※伊丹映画のメイキングビデオは、「伊丹十三 FILM COLLECTION Blu-ray BOX Ⅱ」(23,000円+税)の特典ディスクに収録されています。

学芸員 : 中野

2021.01.18 伊丹さんについて語られたお話

突然ですが、皆さまは伊丹さんについて語られたインタビューの映像を観たり、文章で読んだりしたことはありますでしょうか。

仕事で、私生活で、伊丹さんとご縁のあった方々が具体的なエピソードを交えて話す「伊丹さん」は、映画や著書などの作品を通してイメージする「伊丹さん」とは、また少し違った印象を受ける方が多いと思います。

本日はそんなお話を聞ける(読める)商品を、記念館ショップから2つご紹介させていただきますね。

まずは「DVD『13の顔を持つ男-伊丹十三の肖像』」。
伊丹さんの生涯を142分にわたって紹介しているこのDVDには、数々の貴重な資料映像とともに、伊丹さんとゆかりのある18名のインタビュー映像が収められています。
伊丹さんの同級生のお話や、仕事や趣味、人となりについてなど、より等身大の伊丹さんをイメージできるようなお話を聞くことができますよ。

※詳細はコチラをご覧ください。

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記念館ショップのDVDスペース

そして、特に伊丹映画を観たことがある方には書籍「伊丹十三の映画」(新潮社)もおすすめです。出演者、スタッフ、関係者など、伊丹映画に携わった総勢43名が、当時を思い出し伊丹さんや伊丹映画について語っています。
たくさんの方々の証言を通じて「映画監督・伊丹十三」が浮かび上がってくる、読み応えのある一冊です!

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「伊丹十三の映画」(新潮社)

「伊丹さんってこんな一面もあったのね」と、新しい発見があるかもしれません。

ご紹介したDVDや書籍はオンラインショップでお求めいただけますので、ご興味のある方はぜひどうぞ!

スタッフ:山岡

2021.01.11 あけましておめでとうございます


新年あけましておめでとうございます。

今年も伊丹十三記念館をどうぞ宜しくお願いいたします。

今年も例年通り1月2日より開館しています。


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そして毎年、1月2日には宮本信子館長の記念館便りを更新しています。

宮本館長の記念館便りは年に一回、二回程の更新ですので、もしもまだご覧頂いていない方がいらっしゃいましたら、お見逃しのないようご覧下さい。

さて、わたくしの今年のお正月はと言いますと、去年のお正月に中野学芸員が記念館便りで紹介していた「一六本舗」の「花びら餅」を買いに行ったのですが、一足遅かったようで販売が終了していました...その時に貰って食べたら大変美味しくて感動したのです。1年間楽しみにしていたのですが残念。

しかし、店内に新年にふさわしいナイスなネーミングの別のお菓子を見つけたので代わりに購入しました。伊予柑味のマドレーヌその名も「いーよかんしかしない」 柑橘の爽やかな味がとっても美味しかったです!


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【画像:パッケージもハッピーでポジティブな伊予柑マドレーヌ「いーよかんしかしない」】



という訳で、良い予感しかしない2021年も伊丹十三記念館をどうぞよろしくお願い申しあげます。





スタッフ:川又

2021.01.02 館長・宮本信子から新年のご挨拶




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今年もよろしくお願い申し上げます。


今の時期、私はなかなか松山に行けません。
いつかその日が来る事を願っております。


そして、受付に立ってお話ししたり、握手をしたり、
お写真を撮ったり~~(笑)
思いっきり笑ったりしたいですね。



私は暫く不在ですが、金曜日に更新される「みなさまの声」を
読むことをとっても楽しみにしております。


是非とも記念館に遊びにいらして下さいませ。


御来館をスタッフ一同、お待ち申し上げております。



              

館長 宮本信子