記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2021.02.15 オトシモノの正体

秋から春先にかけての朝、外回りのお掃除をしておりますと、こんなものが落ちていることがあります。

20210215chinaberry_sheed.JPG

駐車場の南西の角のところにバラバラと、ピスタチオみたいな質感で、大きさは枝豆一粒ぐらいのものが、多い時は......そうですね、30個以上。

初めて見たとき、すなわち、記念館に勤めはじめて間もない頃から「何かの木の実の種かな」「鳥の"オトシモノ"なんだろうな」「掃いても掃いても毎日これだけ落ちているのなら、たいそう美味しいのに違いない」と思ってはいたのですが、正体をつきとめられぬまま十数年――

恥ずかしながら最近やっと、たまたま手に取った鳥類図鑑でセンダンの種だと知りました。
センダンの実は、ムクドリやヒヨドリの好物なんだそうですね。(残念ながら、我々人間が食べると食中毒を起こして落命することもあるらしいです。)そういえば、それらしき鳥を庭や周辺でよく見かけます。

当然、センダンの木がこの辺りにあるということなのですが、名を知っているだけで姿は知らず、重ね重ねの恥ずかしながら、どんな木なのやら。
ぜひ見てみたく思っていましたら、これまた最近、記念館から2キロほど北の石手川緑地で発見しました。

「今日は鳥の声がにぎやかだな」「オヤ、あの木の下、何かの実がたくさん落ちてるぞ」とよくよく見ますと......

20210215chinaberry_2.JPG「これ、図鑑で見たヤツ!」

 

20210215chinaberry_1.JPG枝にも実がいっぱい。センダンの木っておっきいんですねぇ。
ここだけの話、月に3度は通るエリアなのに気づいてませんでした(笑)

と、記念館とあまり関係のないことを書き連ねてしまいましたが......旅行やお出かけに慎重にならざるを得ない今の状況、名所を訪ねて珍しいものを眺めたり食べたりするというような行楽的な体験はなかなかできませんけれど、遠出もできず人にも会えず、いつも同じところに身を置いて、同じことを繰り返す生活の中でこそ、ちょっとした出来事や変化に敏感に反応できたり、うまくすると長年の疑問が解けてちょっと嬉しかったり、そんなこともありますね、という一例でございました。

何度も読んだ本や見たことある映画の、いつもとは違うポイントで感銘を受ける、なんていうことも、もちろん大いにあるでしょう。
今はご来館の難しい方も、ぜひ本や映画で伊丹十三の世界に繰り返し触れていただいて、心身とも健やかにお過ごしいただきたいと願っています。(もちろんもちろん、ご来館も大歓迎です!)

どうか皆様、お元気に春をお迎えくださいますように。

学芸員:中野