記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2021.03.15 菜虫化蝶(なむしちょうとなる)

3月も半ばに入り、寒さもずいぶん緩んできました。
先日友人から届いた便りに「山笑う」の文字があり、「あぁほんとうに」とうなずきました。身近にある里山のあちこちで花が咲きはじめ、眠っていた山は確かに笑いはじめています。皆さまがお住いの地域はいかがでしょうか。

冬枯れの景色にも味わいがありますが、春を告げる花々が順々に開いていくよろこびと心弾む感覚は、寒さで縮こまった体と心をほぐしてくれるようでほんとうにありがたい、歳を重ねるごとにそう感じるようになりました。今年も、梅・万作・寒桜・木蓮・木瓜......移ろう花とともに春を実感しています。

先日、季節の変化を表す「七十二候」をなにげなく見ていましたら、毎年3月10日~14日頃は「桃始笑」、文字通り桃の花が咲きはじめるころとありました。七十二候は一年を72に分けてひと区切りを約5日とする短いものですが、天候や植物の移ろいをピンポイントで示してくれるのが楽しく、いまの時期はなんだろうとつい調べたくなります。
そういえば、わたしは今年まだ桃の花を見ていません。咲いている場所へ行ってみたいものです。

記念館の庭木からも春を感じます。こちらは、正面入り口前のユキヤナギとトサミズキ。

20210315_01.JPGユキヤナギ


20210315_02.JPGトサミズキ


どうぞ、展示とあわせて刻々と姿を変える庭木たちにも会いにいらしてくださいませ。折々の庭木の表情をご覧いただけることと存じます。

ところで、この記念館便りの公開日(3月15日)は七十二候では「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」、虫が蝶に羽化するころ。二十四節季でいう「啓蟄」の結びですね。
偶然にも、手紙に「山笑う」と記してくれた友人への返事に菜の花のそばを蝶が舞う絵葉書を選んだところでした。家庭菜園をなさる方からは、野菜の葉を食べてしまう菜虫はやっかいだと聞きますが、毎春あちこちの家庭菜園を舞う蝶の軽やかな姿に思わず目を奪われてしまうわたしです。


スタッフ : 淺野