記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2021.07.12 伊丹万作の手作りカルタ


伊丹十三記念館には伊丹十三の父・伊丹万作手作りの「芭蕉いろはカルタ」を展示しています。

伊丹万作が市販の軍国主義的な内容のカルタで遊ぶ子供たちを不憫に思い、その裏側に芭蕉の俳句と絵を描いて作ったものなのだそうです。

伊丹十三は子供の頃、実際にこのカルタでよく遊んだそうですが、大人になって三十年ぶりにこのカルタを見た際には大変驚いたそうです。




「これはびっくりしましたねえ。まず、その力量に圧倒されましたね、私は。そしてまた、その絵や字の裏に流れている、なんともいえぬ人間の好さ、高さですね、これはもう参りましたね。ああ、ここまで行ってる人だったか、という思いがありましたね。
 父がこれを作った時、四十四歳くらいだったわけですから、考えてみれば私はそろそろ同じ年齢に達しようとしてるわけでしょう。こりゃ考えますねえ、だって、これを描けるようになるには、また別の一生を必要とするようなものですよ、このカルタは。」

―「父、万作のかるた」『ぼくの伯父さん』(つるとはな)より


大人になると、子供の頃に見たものや景色が随分違って見えることって確かにありますが、大人になった伊丹十三にここまで言わせるってすごくないですか?

記念館企画展示室にはこの伊丹万作手作りのカルタの複製と、一部実物も展示しています。

これらをご覧いただきましたら、伊丹十三の言う通り力量に圧倒されるというのも確かにそうですが、伊丹万作の子供たちへの愛情や思いも伝わってくるかと思います。
ご来館の際にはお見逃しなくご覧ください。


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スタッフ:川又