こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2021.10.18 アーティチョーク
先日、花屋で見つけて思わず買ってしまいました。アーティチョークの苗です。
アーティチョークとは、伊丹十三が「ヨーロッパ退屈日記」で紹介していた野菜、といいますかハーブです。
伊丹十三はこのアーティチョークの蕾をおつまみとして食していたそうです。スーパー等でこの蕾が売っているのは見かけたこともありますが、苗を見たのは初めてだったのでよく調べもせず思わず勢いで買って帰ってしまいました。
だって「ヨーロッパ退屈日記」での伊丹さんのアーティチョークの説明がとても美味しそうだったからです。
「アーティショーというものがある。英語でいうとアーティチョークである。一見、緑色をした巨大な百合根の如きものであって、その、松傘風に重なった、鱗状の葉っぱの一つ一つは、肉の厚さや、先が針のようになっているところなど竜舌蘭の葉に似ている。」
「これを二十分ばかり茹で、次に冷蔵庫に入れて冷やすのである。これで調理は終り。
小皿にオリーブ油を入れて、これにレモンを少々絞り、ブラック・ペパーをたっぷり、塩を少量振りかけてドレッシングを作る。
食べ方、などといっても格別のことはない。アーティショーの葉っぱを、外側から順に一枚ずつむしってはドレッシングにつけて食べるのである。
ただし食べるといっても、葉っぱの一番根元のところに少量の柔らかい肉があるだけだから、葉っぱの真中あたりを歯でくわえ、葉っぱの先端をつまんでしごくように引き抜くのである。
こうして何十枚の葉っぱを順番に食べてゆくと、内側になるに従って、葉っぱはだんだん柔らかくなり、ついには殆どそのまま食べられるようになる。
さて、葉っぱを全部むしってしまうと、お皿の形をした芯が残る。芯には細かい毛が密生しているが、これはつまんで引っ張れば一団となって簡単にはがれるから、むしり取って捨てる。この芯がまたうまいね。しかもこの芯に至るまでの行程が、どんなに急いでも十分や二十分はかかるから、こんな愉しい食べ物はまたとあるまい。わたくしは、マドリッドでアパートを借りてから毎日二つか三つずつ食べ続け、多い時には一日七つも食べたのである。
どんな味がするかっていうと、そうですねえ、一等近いものはそら豆じゃないかな。」
―『ヨーロッパ退屈日記』「おつまみ」-
ね。思わず苗を買って育ててしまいたくなる文章でしょう?
ところで、買ったあとに気づいたのですが、かなり葉がトゲトゲしています。
それもそのはず、アーティチョークはアザミの仲間だそうです。
しかも成長すると葉は直径1メートルほどになるとか、ならないとか。
何はともあれ、収穫に向けてプランターに植えてみました。
オリーブオイルとレモンとブラック・ペパーとお塩でオシャレに愉しくアーティチョークを食べられる日はくるのでしょうか。
収穫できましたら、記念館便りにてご報告させていただきますので、期待してお待ちください!
スタッフ:川又
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