こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2014.12.22 伊丹十三記念館の階段の手すりをご覧下さい。
こんにちは。 今年も残すところあとわずかとなりました。伊丹十三記念館でも、各自大掃除を始めました。 先日は、2階へ続く階段の手すりのワックスがけを行いました。
開館以来もうすぐ8年、毎日見て、使用していた手すりでありますが、この度ワックスがけを初めておこない、その美しさに驚愕しました。
まず、ひとつ驚いた事は、とにかく全て木でできているのです。特に一番驚いたのは、裏面に金属等がないところ!
イメージ的に裏に金属の板状のものがあって、その金属から溶接された柱の金属が出ているのだと思っていたのですが、裏部分にワックスを塗る際、金属の感触が無い為、「?」と思って目視で確認をした次第です。
そして、この曲線。
なんで木がこんなに自在に曲がっとるんじゃ!
と、独り言を言ってしまうほど「うねうね」に曲がっています。例えて言うなら水あめくらいのうねり具合です。
「芸術新潮」2007年7月号の中の小特集『中村好文設計の「伊丹十三記念館」開館』を見直してみますと、「木製でうねるような階段の手すりを作らせたら右に出るものはいない」と当館を手がけられた建築家中村好文さんが太鼓判を押す、横山浩司氏の作品だということです。
そして極めつけがこの手すりの端っこ。
猫の尻尾をイメージしているそうです。猫好きの伊丹十三さんへのオマージュだそうです。 遊び心~。
残念ながら場所的にこの手すりはお客様にお入り頂くことができないスペースにあり、実物をご覧頂くことはできませんが、画像でご覧頂ければと思いましたのでこの度ご紹介させて頂きました。 また、記念館内で新たな発見がありましたら、ご報告いたしますね。
さて、これが今年最後の記念館便りとなります。 最後になりましたが、どうぞみなさま良いお年をお迎えください!
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年末年始の開館予定
12月28日(日)~1月1日(木)は休館させていただきます。
1月2日(金)、3日(土)は開館時間を10時17時(最終入館16時30分)とさせていただきます。
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スタッフ:川又
2014.12.15 エッセイを読んで
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
早いもので、2014年もあと半月あまりとなりました。仕事や行事ごと、その他諸々で何かと気忙しい時期ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
さて、ここ記念館には、伊丹さんのエッセイのファンであるという方が多く来館されます。そんなお客様とお話をしていると、 「●●に載っていた○○を試してみた」というふうに、エッセイに書かれていることを実際にやってみたり、真似たりしたことがある方が、結構いらっしゃるようなのです。
お客様の体験談を少しご紹介しますと――以前、「いい具合に埃がつもるよう、1ヵ月間、車を車庫に入れっぱなしにして乗らなかった」という男性がいらっしゃいました。 このお客様が参考(?)にされたのは、「猫の足あと」(『女たちよ!』より)というエッセイです。記念館のアプローチ脇にある、ベントレーの車庫にも紹介されている文章ですので、 記憶にある方も多いかもしれません。
(前略)私が自分のロータス・エランを赤にしたのは、こいつなら赤でも目立たない、と思ったからでありますが、さらに念を入れるなら、この車はよごれっぱなしのほうがいい。埃や泥はもちろん、小さな引っかき傷や、軽いへこみも、そのままにしておいたほうがいい。
私の分類では、こいつは、雨具や履物の部類に属する。仕立ておろしのレインコートや、ま新しい靴というのが、どうにも気恥ずかしいものであると同様、車も、ある程度薄よごれた感じのほうが、私には乗り心地がいい。
ま、そういうわけで、私は自分のロータスを掃除しないことにしている。昨年の暮れには、ひと月ばかりガレージにいれっぱなしにしておいたから、実にいい具合に埃がつもって、その埃の上に猫の足あとなんかついて、ほとんど私の理想に近い、芸術的なよごれをみせるようになった。
私は、この埃の上に、指で絵を描こうと思った。そうだ!注連飾りの絵を描いて年始に出よう、と思った。(後略)
お客様は、もともとピカピカな車より、多少よごれている車のほうが乗りやすい性質だったとのことで、読んだ瞬間に伊丹さんに賛同されたそうです。そこで伊丹さんの理想に近い芸術的なよごれがどんな感じか見てみたくて、実践したのだと仰っていました。通勤に使われていた車だそうですので、1ヵ月もの間乗らずにやりくりするのは大変だったかと思いますが...。
ちなみに、1か月後、埃自体は「いい具合」につもったそうです。ただ、残念ながら近くに猫がおらず自然に足あとがつかなかったため、知り合いに連れてきてもらった飼い猫に車の上を歩いてもらったのだとか。
他にも、同じく『女たちよ!』にあるエッセイ「黒豆の正しい煮方」をみながら実際に作ってみた、というお話もうかがったことがあります。お正月準備をはじめるこれからの時期にぴったりですが、さすが伊丹さんというか、なんと作るのに2日かかる本格派!!
でも、お客様曰く、手間をかけたぶんとっても美味しかったのだそうですよ。
エッセイを読んだあとにも、こんな楽しみ方があるのですね。
興味を持たれた方は、師走の忙しい合間に、ちょっと伊丹さんのエッセイを開いてみるのはいいかがでしょうか。トライしてみたくなることが見つかるかもしれません。
スタッフ:山岡
2014.12.08 趣味
記念館の常設展示室には、「十三」の名前にちなんだ13の展示コーナーがあり、伊丹さんの「13の顔」をご紹介しています。どんなコーナーがあるのかといいますと、
「池内岳彦」「音楽愛好家」「商業デザイナー」「俳優」「エッセイスト」
「イラストレーター」「料理通」「乗り物マニア」「テレビマン」「猫好き」
「精神分析啓蒙家」「CM作家」「映画監督」
多岐にわたる仕事ぶりはもちろんのこと、趣味についてもご紹介しています。
その中の一つが「音楽愛好家」のコーナー。
伊丹さんが愛用していたギターやヴァイオリンも展示しています
「伊丹さん、幼い頃から自然にクラシック音楽に親しんでいたんだろうな。楽器のお稽古を始めるのも早かったのかな」などと想像してしまいそうですが、そうではなかったようなのです。
「音楽がわからない、という状態が随分永く続いたように思う」という書き出しではじまる伊丹さんのエッセイ(「古典音楽コンプレックス」『ヨーロッパ退屈日記』1965年)には、京都で過ごした小中学生の頃、クラシック音楽に耳を傾け音楽談義に興じる同級生たちを目の当たりにして、「古典音楽コンプレックス」を抱いたことが記されています。
友人たちの、音楽的教養は、小中学生としては、かなり例外的に老成していたものに違いない。
わたくしなんぞ、全く口をさしはさむ余地が無いのである。(中略)これは、育ちが悪いということだ、とわたくしは思ったのです。
「古典音楽コンプレックス」『ヨーロッパ退屈日記』(1965年)
小中学生のクラシック音楽談義――それは随分特殊なことだと思いますけれども、伊丹さんは「友達づきあいというのはつらいもの」とまで感じたのだそうです。
そんな伊丹さんですが、その後古典音楽コンプレックスを解消します。
その経緯を、三つの段階に分けて(!)細かく分析しているのですが、詳しくは、ぜひ『ヨーロッパ退屈日記』を読んでみてください。面白いですよ。
そのコンプレックス解消の過程でヴァイオリンを習い始め(21歳のとき)、やがては「楽器とはその人の終生の友」と表現するまでに。こうなると、まさに「音楽愛好家」ですね。
伊丹さんが「論理的な物の考え方」を学んだという
カール・フレッシュの「ヴァイオリン奏法」
――さて、早いもので今年ももう師走です。
この一年を振り返って、「年のはじめには、新たな気持ちで"趣味の上達"を目標に掲げていたはずなのに、結果はぜんぜん......」という方もいらっしゃると思います。
そんなときは、伊丹さんのこんな言葉を思い出してみてください。
わたくしは声を大にしていおう。楽器というものは愉しいものである、と。そうして楽器というものは三、四歳の頃から習い始めなければならない、というのは最も悪質なデマである、と。職業的演奏家を志すのならいざ知らず、自分で愉しむ程度のことなら何歳になってからでも遅くはないのだ。(中略)
深く楽器を愛する心と、そうして根気を持った人なら何の躊躇(ためら)うことがあろうか。思うに楽器とはその人の終生の友である。決して裏切ることのない友である。わたくしは心の底からそのように感じるのであります。
「最終楽章」『ヨーロッパ退屈日記』(1965年)
「楽器」をご自身の趣味やお稽古事に置き換えてみてください――少なからず励まされるところがありませんか?
停滞気味の趣味やお稽古を「来年こそは、あきらめずにがんばるぞ!」という気持ちにさせてくれる言葉かなと思い、ご紹介させていただきました。
記念館の常設展示室「音楽愛好家」のコーナーも、ぜひご覧くださいませ。
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【年末年始のお知らせ】
12月28日(日)~1月1日(木)は休館させていただきます。
1月2日(金)、3日(土)は開館時間を10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきます。
スタッフ:淺野
2014.12.01 『ポテト・ブック』復刊!!
『主夫と生活』(アノニマ・スタジオ)に続いて、『ポテト・ブック』(河出書房新社)が復刊され、記念館のグッズショップでも販売を開始いたしました。
『ポテト・ブック』も『主夫と生活』同様、元はアメリカのベストセラーで、伊丹十三が翻訳を手がけています(アメリカでは1973年、日本では1976年出版)。
長らく絶版になっていて、記念館のお客様からも「どうしたら手に入りますか?」とのお声がとくに多かった訳書が、しかも2冊ほぼ同時に復刊されるとは、嬉しい限りです。
復刊への道のりがどういうものか、出版素人の私には想像するしかありませんが、熱い思いをもって企画してくださったにちがいない出版社のみなさまにお礼申しあげます。
左が1976年の『ポテト・ブック』(ブックマン社)、右が復刊版。
矢吹申彦さんの表紙イラスト、サイズ、中のページもすべて同じ、完全復刻です!
※復刊版には矢吹さんのすばらしいエッセイが加えられています※
ところで、ちょっぴり気になっていることが。
いえ、心配しているのではなくて、ひそかに興味を抱いてるってことなんですけれど、『ポテト・ブック』って書店ではどのコーナーに陳列されるんでしょうか??
なにせレシピ――伊丹十三風に申しあげるならレセピー――がオードブル――伊丹十三風に申しあげるならオール・ドゥーブル――からお菓子にいたるまで、なんとなんと98種もおさめられているのですから、立派な料理本と言えます。「言えます」も何も、腰帯にそう書いてありますし、訳者まえがきの冒頭にも「アメリカからやってきた料理の本であります」とあるんですけどね。
でも、「決してただの料理の本とは思ってないんです」とも。
この本は、そもそもは、アメリカのとある私立学校が奨学基金を作るために出版したもので、「わが校はポテト畑にあるから」という理由でじゃがいもがテーマになったんだそうです。
だからといって、じゃがいもだけでまるまる一冊の本ができあがってしまううえにベストセラーになるなんて、アメリカ社会におけるじゃがいもの重要性・スター性は日本におけるお米やお豆腐を超えるかもしれません......それでね、伊丹さんの言うには、
私はこの本を訳しながら、片っ端から作ってみましたよ。作っちゃぁ女房子供に食べさせた。これは楽しかったですね。ポテト料理というのは、安直でいながら、しかも想像力を刺戟するところがいいんです。つまり、今までせいぜい、じゃがいもの煮ころがしや、挽き肉とじゃがいもを甘辛く煮たやつや、マーケットのポテト・サラダや、肉屋で買ってくる冷えたコロッケや、どちらかといえば夢のない、いかにもお惣菜風の扱いでしかなかったポテトの彼方に、突如として、広広とした新大陸が出現したんです。ポテト料理とともに、牧畜文化が、大規模農業が、そして、それを生み出した生活のゆとりが、私の周辺に漂ってくると思われた......
『ポテト・ブック』訳者まえがきより
日本でもごくありふれた野菜のじゃがいもですが、そういう「誰もがあたり前だと思っているもの」をとっかかりにして、ものごとの本質にせまりながら広い世界を語ってしまうという方法、伊丹十三の著書やテレビや映画と同じですね。伊丹さん、訳しながらニコニコしてたんだろうなぁ。
ということで、「じゃがいもの料理本を買ってきたつもりがアメリカ文化・西洋文化が詰まってた!」という驚きも楽しめる本、それが『ポテト・ブック』なのです。
(「えっ、バターをそんなに入れるの!?オーブンで1時間半も!?これだから西洋人の料理は......」っていうようなことも含めてネ。)
さあ、全国の書店さんは、この本をお店のどこに並べるのでしょうか。店員さんのセンスによっては社会学系の書棚に......!?
店頭検索機を使わずに探してみるのも面白そうです。
【オマケ】
カバーを外して"ムキ身"にしてもほとんど同じ!
なんとすさまじい完全復刻ぶりでしょうか~! 脱帽!!
学芸員:中野
2014.11.24 第6回伊丹十三賞 受賞記念トークショーを開催いたしました
「こんばんは、ようこそいらしていただきました。
――今回のこのトークショーは、応募してくださった方が2,954人、当選倍率3.28倍。
皆さま、おめでとうございます!」
いつも変わらぬ元気な声で皆さまにご挨拶をする宮本館長
11月12日(水)に松山市総合コミュニティセンターで開催したトークショーは、案内役・宮本信子館長のこんなご挨拶から始まりました。
伊丹十三賞も今年で早6回目。今回のトークショーは、「第6回伊丹十三賞」をリリー・フランキーさんにご受賞いただいたことを記念するイベントでした。
題して「第6回伊丹十三賞 受賞記念 リリー・フランキー × 周防正行 トークショー」
トークテーマは「いかにしてリリー・フランキーになったのか」
伊丹十三賞・選考委員のおひとりでいらっしゃる周防監督が聞き手となって、リリー・フランキーさんという存在の謎に迫るという、大変豪華な内容でした。
冒頭の宮本館長のご挨拶にあります通り、定員を大幅に上回るご応募を頂戴しておりましたので、落選なさった皆さまには大変申し訳なく存じております。
後日、当サイトにトークショーの採録ページを設けます。トークショー全文の掲載を予定しておりますので、楽しみにお待ちいただけましたら幸いです。
本日は、スタッフ・淺野のレポートとして、当日の様子をお届けさせていただきます。
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まずはトークショーの冒頭。
「第6回伊丹十三賞」をリリーさんにご受賞いただいたことについて、周防監督が、選考委員の視点から次のように振り返ってくださいました。
伊丹十三賞は、贈賞年の前年に発表された作品等の業績を授賞対象としていますが、「その年のその作品だけではなくて、その人が、どういうことをどういう風にやってきたのか」にもこだわっていて、「その人」が大事なのだと。確かに過去の受賞者の皆さまにあてはまりますね。
さらに映画監督としてのお立場から、俳優としてのリリーさんのことを、「この人に出演を頼めるような世界を僕は用意できるだろうか、と考えた初めての人」とおっしゃり、「今まで感じたことのない魅力をリリーさんの中に見た」ことが、「伊丹十三賞を受賞していただきたいと思った理由」だったとご説明くださいました。
周防監督がリリーさんに感じた魅力が、リリーさんという稀有な存在に対する「謎」になり、「いかにしてリリー・フランキーになったのか」という今回のトークテーマに繋がっていたんですね。
「聞き手は初めて」 とおっしゃる周防監督
そんな周防監督のお話にじっと聴き入るリリーさん。実は学生の頃から伊丹さんに憧れていたそうで、今回の受賞は「今まで考えていたことを肯定していただけたようですごく嬉しい」とのこと。
トークショーの場所となった松山については、「松山は文学の街というか、ものを書いたりする人間にはちょっと敷居が高いというか......そういうところで自分の話をするのは恐縮ですね」とおっしゃっていました。
周防監督に「質問は何でも大丈夫です」と事前にお伝えしたというリリーさん
受賞のお話に続いて、周防監督はリリーさんに「人生最初の記憶」が何であったかを尋ねます。
子どもの頃から順を追って話を進めながら、「いかにしてリリー・フランキーになったのか」が語られていくという流れで、自然とリリーさんの世界に引き込まれていきました。
ちなみにリリーさんの「最初の記憶」は、ご著書『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』でもおなじみのエピソード(お土産の焼き鳥をお父さんに無理やり食べさせられる話)だったのですが、その時の感覚まで具体的にお話しくださるので、あらためておもしろかったです!
その後も、ひとつひとつ丁寧に周防監督が質問を重ねていきます。
リリーさんの答えは軽妙で、会場には笑いが絶えません。
この日ご用意したソファー、実は映画『お葬式』でセットとして使用されたものです
会場への搬入は大変でしたが、革製の落ち着いた雰囲気がお二人にぴったりでした
リリーさんがお仕事を始められる頃までのお話がじっくりと語られたのですが、そのあたりのお二人のかけ合いは、ぜひ会話のままお読みいただきたく存じます。鋭意書き起こし中ですので、採録ページの完成を今しばらくお待ちください。
約1時間半のトークショーはあまりにも楽しくて、あっという間でした。
終演前、リリーさんはこの日のトークを振り返りながら、聞き手の周防監督について、「お医者さまみたいに、人に喋らせる何かがありますね」とおっしゃっていました。聞き手役は初めてだったという周防監督ですが、リリーさんは終始リラックスしてお話しできたようです。
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レポートの最後に、個人的にとても印象に残った部分をご紹介させていただきますね。
トークショー当日、リリーさんは周防監督・宮本館長とご一緒に記念館にお立ち寄りくださったのですが、そこでご覧になった「ある展示品」についてトークショーの中でお話しくださったんです。
企画展に展示している「伊丹さんが旅先から宮本館長に宛てた手紙」についてです。
「旅路より」のコーナーに展示しています
――家族への手紙というプライベートなものにも関わらず、イラスト入りでとても丁寧に、手を抜かずに書かれていることに触れてくださり、「日々こうじゃないと、いきなり仕事で精度をあげるのは無理」で、良いものを作る方法は、「本当に丁寧に、こまかく、諦めずに作り続ける。それしかない」とお話しくださいました。周防監督もうなずいていらっしゃいました。
また、伊丹監督と周防監督、ともにご夫婦で映画を作っていることにも触れ、「一番能力が出るパートナーだったんだなっていうのが、あの手紙一枚でもわかりました。そしてたぶん、そういう人に巡り合える人生っていうのが豊かな人生」――そんな風に思われたのだそうです。
続けて、記念館で桂の樹(並んだ二つの幹が伊丹さんと宮本館長を象徴している中庭の樹)を見たことにも話が及びました。「この樹を眺めながらプロポーズする人がいる」という宮本館長の説明を聴いて、「(パートナーと)関係性を築けていたら、この樹を見てプロポーズする気持ちはわかる」とおっしゃるリリーさん。
リリーさんの言葉で記念館のことを語っていただけて、とても嬉しかったです。
記念館の中庭で桂の樹を見るリリーさんと宮本館長
あらためましてリリーさん、周防監督、素晴らしいトークショーをありがとうございました。
会場にお越しくださった皆さま、そしてご応募くださった皆さまにも心より御礼申し上げます。
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【宮本館長が出勤致しました】
トークショーの翌日、宮本館長が記念館に出勤いたしました!ほんの一部ですが、お写真のご紹介です。
「トークショーをきっかけに、記念館に来たくなったので来ました」という方もいらっしゃいました。大変嬉しく存じております。
ご来館くださったすべての皆さま、ありがとうございました。
スタッフ:淺野
2014.11.17 「ことり」に伊丹十三記念館リーフレットを設置して頂きました!
松山の人間なら誰でも知っていると言っても過言ではない人気のうどん屋さんがあります。「ことり」という鍋焼きうどんのお店です。
この度、伊丹十三記念館のリーフレットを置いていただけることになりました。 人気のお店だし、他のお店のパンフレットとか見たことがないし、難しいかな?と思いながら勇気を出して電話をしたところ、快くOKして下さいました。「宮本さんも来て下さるから!」と。実は、宮本館長は「ことり」の常連さんなのです。
銀天街という、松山の街の中心部にあるアーケードを少しだけ脇道に入ったところに、ひっそりとお店があります。
ひっそりとしているのは外観だけで、中に入ると平日でもお客さんでいっぱいで、満席がほとんど。「相席」も日常。
そして、その日準備した麺が無くなると、お店は閉店します。
また、注文も会計も独特です。 まず、席につきます。壁にかかったメニューを見て、注文をします。 ちなみに、メニューは「鍋焼うどん」と「いなりすし」の二品のみ。
商品が運ばれてきます。運んできてくれた店員さんに、直接お金を払います。伝票等はありません。
だしが甘くて、やわらかい麺のおうどんです。ちなみに、松山の料理は全体的に甘いんだそうです。他の土地から来た人によく言われます。 いつ行っても変わらない味で、「ほっ」とします。
記念館のリーフレットは入ってすぐの場所に設置して下さいました。
私がお店を訪れ、リーフレットをお店の方にお渡しし、おうどんを注文し、食べ終わって帰るころにはなんと設置がほぼ終わっていたのであります。
仕事が早いです。これが繁盛の秘訣でしょうか。
もしお店に行かれた方は記念館のリーフレットをチェックして見て下さい。
スタッフ:川又
2014.11.10 『宮本信子のお気に入り』
記念館グッズショップで、『宮本信子のお気に入り』グッズの取り扱いを始めました!
宮本館長が日々好んで使っているもの、お気に入りのものを紹介したり販売したりするスペースです。今回ご紹介するのは、陶器の小皿、手付き小鉢、角皿、箸置きです。
【『宮本信子のお気に入り』スペース】
製作者は陶芸家・岡本ゆうさん。その陶器を、宮本館長も日々愛用しています。
ゆうさんとのご縁を少しご紹介しますと...子育てのために神奈川県湯河原に引っ越した伊丹さんご一家は、そこで染色家の岡本隆志さん・紘子さんご夫妻(ゆうさんのご両親)と知り合います。以来約40年、家族ぐるみのお付き合いを続けているそうです。
ゆうさんは島根県布志名焼舩木窯・舩木研兒氏に薫陶を受けられ、現在は神奈川県真鶴町で作陶されています。
手作りの陶器はやわらかく優しい色合いで、あたたかい雰囲気のものばかり。実際にご覧になったお客様からも「シンプルでかわいらしい」とのお声をいただいています。
【↓上から順に小皿、角皿、手付き小鉢、箸置きです】
販売は記念館内ショップでのみ行っております(オンラインショップでの取り扱いはありません)。
記念館にお越しの際は、ぜひ手に取ってご覧になってくださいね。
そして...そのお隣には、宮本館長手作りの品も2点ご紹介しています。
【館長手作り品(販売は行っておりません)】
一つは、岡本ゆうさんと一緒に、宮本館長がはじめて作った「箸置き」(写真左)。桂の葉やパスタをイメージしたものなど色々ございます。
もう一つは「鍋つかみ」です(写真右)。何度も洗濯してガサガサになってしまったお気に入りのタオル地のハンカチを、宮本館長が「いそいそと」「チクチク」縫って鍋つかみにしたものです。洗うこともできて、とっても重宝するのだとか。
こちらも記念館ショップでのみご覧いただけます!
新しい仲間を加え、グッズショップも一層にぎやかになりました。皆さまのお越しを、スタッフ一同心よりお待ちしております。
スタッフ:山岡
2014.11.03 おじさん普及活動の進捗状況につきまして
『文化愛媛』第73号(10月10日発行)に伊丹十三に関する小文を寄稿させていただきました。
「戦後愛媛の才人群像―その感性、信念―」という特集記事のうちのひとつです。
松山に転居してきた高校時代を出発点に、父である伊丹万作への思いが変化していった過程(なんと30年間を原稿用紙約6枚に超圧縮!)を紹介しています。
ご依頼のお電話をいただいたとき「伊丹さんは身近な人にも昔語りはしなかったそうですし、文章にもあまり残していませんし、このご要望にお応えできるか甚だ不安です~~~伊丹さん自身も口にしなかったことを私が書くなんて~~~」などとグダグダ言ってしまったのですが、ご担当の方の「伊丹さんはこの企画に欠かせない存在なんです」、「県内の各高校にも納めていますのでごく若い方もお読みになります」とのお言葉にコロリ。トライしてみることにしました。
「"おじさん"としての伊丹十三を若い方々に普及したい」、「日本人の正しい"おじさん"化を促進したい」というのが私の職務上の一大テーマでありますから、これはきっとチャンスに違いない、と思ったのです。
(伊丹十三的「おじさんの定義」はコチラでご確認ください。)
と言っても、「みんなの思い出のカッコいい伊丹さん」というのではなく、むしろその逆の一面、「故郷とは」「親子とは」とモヤモヤし続けたことについて書いたので、伊丹さんをご存知の方は意外にお思いになるかもしれません。
でも、そういうことこそ、読んでくださる方の中でいつか何かが芽吹く種になるのではないかな、なるといいな、と願っています。
前回の企画展『父と子―伊丹十三が語る父・伊丹万作の人と芸術―』をとおして感じたことのまとめにもなり、いい機会をいただいたことに感謝しています。
(企画展の趣旨や展示内容について書くことは、始まる前には解説文や紹介文などたくさんあるのですが、終ってしまうとじっくり振り返るいとまはなかなかないものなんですよね!)
私が担当した伊丹十三のほか、安西徹雄さん(英文学者・演出家)、岩浪洋三さん(ジャズ評論家)、天野祐吉さん(コラムニスト)、久世竜さん(殺陣師)、真鍋博さん(イラストレーター)の生涯・功績・人物像が紹介されています。
愛媛県内の書店・図書館でお手に取っていただけるそうですので、お見かけになられましたらぜひ。
学芸員:中野
2014.10.27 仕事のできないカメラマン
突然ですがここで、伊丹さんの映画初監督作品『お葬式』の中でわたくしが一番好きなシーンをご紹介します。
お葬式も終盤に差し掛かり、棺桶に蓋をして釘を打というという、故人との最後のお別れの時にも拘らず、大滝秀治さん演じる雨宮正吉がその様子を様々な注文をつけながらカメラで撮影をするシーンです。正吉からの不自然でわざとらしい指示に対して、一同何故だか、素直に従います。みんなで棺桶を囲み、合掌のポーズでカメラ目線をしているシーンが印象的です。伊丹さんの脚本を拝見しますと、「一同、催眠術にかかった如く、晴れやかな顔で指示に従う。」とあります。
さて、伊丹さんはこのお葬式の公開と同じ年に発売されたエッセイ「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!」の中で、「仕事のできない」カメラマンに関して、「実力のない者に限って注文が多い」と記しています。仕事のできないカメラマンは撮影の際、散らかった机の上の書物を小綺麗に片付けてみたり、持参したバラを活けてみたり、伊丹さんや家族にポーズや目線の指示を出してみたり、挙句「向うの山の方でも指さしてください」などと様々な注文を出してきたそうです。なんともわざとらしい写真が撮れそうですね。
きっとこれらの「仕事のできない」カメラマンとの出会いがこのシーンのヒントになったのでは、と私は思うのですが、いかがでしょうか。伊丹さん。
ちなみにここで紹介したお葬式の絵コンテは、「映画『お葬式』シナリオつき絵コンテノート」にて全編掲載されています。興味のある方は是非どうぞ。
スタッフ:川又
2014.10.20 ホットメニューご紹介
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。 ここ何日かですっかり秋めいてきました。特に朝晩が冷え込みますので、皆さま、お風邪など召されませんようくれぐれもご注意くださいね。
さて、寒くなると恋しくなる温かい飲み物。 本日はカフェタンポポのホットメニューをご紹介します。手作りのオリジナルしょうがシロップを使ったしょうがメニューは年間を通してご好評いただいていますが、 体を温めるしょうがの効能から、特に寒い季節にはホットのしょうがメニューが大人気です。
まず、「しょうが湯&十三饅頭セット」。しょうが湯でぽかぽか温まりながら 十三饅頭をほお張れるセットです。しょうが湯には、スライスしたしょうがを甘く煮込んだ、しょうがチップを 浮かべています。
続いて「しょうが紅茶」です。紅茶にしょうがシロップを加えたものですが、ここ記念館でこの紅茶を初めて飲んだ時、 想像以上にしょうがと紅茶が合っていてびっくり(?)したのを覚えています。飲むと体がぽかぽかしますよ~!
【しょうが紅茶。色もキレイです】
そしてもうひとつ、ソイジンジャー(豆乳しょうが)です。 良質なタンパク質や脂質を含んでカロリーが低く、悪玉コレステロールを下げる効果もある豆乳。その豆乳としょうが...聞いただけで体によさそうです! 最後にシナモンをひとふりしてテーブルにお出ししていますので、ぜひ香りもお楽しみください。
【ソイジンジャー。ホットのしょうがメニューには、しょうがチ ップをお付けしています】
他にも、定番中の定番・ホットコーヒーはもちろんのこと、 タンポポの根を焙煎粗挽して作ったノンカフェインの「タンポポコーヒー」もおすすめです。 十三饅頭や、記念館オリジナルのケーキと一緒に、ぜひどうぞ!
【季節のケーキ・いちじくのタルト。このたび「ブルーベリーとバナナのタルト」からバトンタッチしました!】
カフェをご利用いただいたお客様からは、 「中庭を眺めながらのんびりできました」という嬉しいお声もたくさん頂戴しています。 記念館にお越しの際は、カフェ・タンポポに、ほっとひと息つきにお立ち寄りくださいませ。
【カフェより中庭を望む】
スタッフ:山岡
2014.10.13 ガイドブック
記念館グッズショップの一角に、書籍を販売しているコーナーがあります。
伊丹さんのエッセイを中心に扱っています。ご覧の通りまるで書店のようで、私はこのスペースが気に入っています。その書籍コーナーから、本日は「伊丹十三記念館ガイドブック」をご紹介いたします。
――まずは、特徴的なその大きさについて。A6の文庫本サイズです。
文庫本『ヨーロッパ退屈日記』(写真左)と並べています
ガイドブックの表紙デザインは2タイプ(中身はどちらも同じです)
写真タイプ(写真中央)とイラストタイプ(写真右)
博物館や美術館のガイドブックは、比較的判型が大きいものが多いように思います。その点、「さぁ読もう」と意気込んで机に向かわなくてもどこでも開ける文庫本サイズの手軽さは、嬉しいですよね。
記念館にいらしてくださったお客さまの中にも、「帰りの電車の中で読めるね」とおっしゃりながら、お買い求めくださる方もいらっしゃいます。
――続いては、内容について。
この厚みをご覧ください。469ページ(!)あります。
伊丹さんの名前にちなみ、「十三」の章で構成されています。記念館の常設展示室のコーナー分類と同じ「十三」です。
まず、各章の導入文を読みますと「伊丹さんにそんな一面もあったのね」と興味をひかれます。そのあとは、図版と解説で理解を深めることができます。そして、ところどころに伊丹さんとゆかりのある方々の文章もあって――と、なかなか読み応えがあります。伊丹さんを知るための入り口として、良いかもしれませんね。
伊丹十三記念館オンラインショップでも取り扱っておりますので、まだ記念館にいらしたことのない方も、ぜひどうぞ。
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【記念館からのお知らせ】
9月12日より応募を受付けておりました「第6回伊丹十三賞受賞記念トークショー」は、本日(10月13日)中をもって募集を締め切らせていただきます。多数のご応募、まことにありがとうございました。
厳正な抽選を行ないまして、当選なさった方には10月下旬頃の予定で参加証を発送させていただきます(落選の方にはお知らせをお送りいたしませんので、ご了承くださいませ)。
スタッフ:淺野
2014.10.06 秋のおしらせ
秋涼の候、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
今日は秋らしい伊丹十三情報をふたつ、お届けいたします。
『主夫と生活』復刊
スーパーでお買い物をしておりますと、お使いで来たらしい男性がひどくマゴマゴしているのを見かけることがあります。いろいろの事情を推察して応援のまなざしをひそかに送りつつ、「私と同世代ぐらいに見えるのに、お使い程度の買い物もこなせない男の人がこんなにいるんじゃ、日本の共働き社会もまだまだね」と思ってしまったりするわけですが、哀れなほど困惑している男性の姿に上から目線で妙な優越感を覚えている私もまた、「家の中のことでは女のほうが上よね、ふふん」という「まだまだな日本」から抜け出せていないのだなぁ、と思います。
さて、今から40年ほど前のアメリカに一人の"専業主夫"が誕生しました。立ち上げた会社が軌道に乗りつつあった妻に代わって、三児のある家庭を切り盛りするために新聞社の職を辞したマイク・マグレディ氏です。人気コラムニストだったんだそうですよ。
得意だった"はず"の料理、煩雑きわまりない洗濯とアイロンがけ、絶望的に苦手な掃除、来客のもてなしに車の修理に子供の歯医者の送り迎え! 日々押し寄せる仕事の数々のみならず、家計を襲うインフレの波、「男は・女はこうあるべき」という社会の偏見と闘ったマグレディ氏の体験記"My Life as a Househusband"は日本語にも翻訳され、1983年、『主夫と生活』のタイトルで学陽書房から出版されました。
訳者は伊丹十三です。
1995年に文庫化されたのち長らく絶版になっていましたが、このたびアノニマ・スタジオによって復刊されることになりました。
イラストは故・長新太さん、デザインは佐村憲一さん。
31年前の初版と同じコンビによる新デザインの装幀です。
妻が"夫"となって稼ぎ、夫が"妻"となって育児と家事を受け持つ「交換生活」に一年間トライすることで、夫婦が自分自身と互いの役割について発見を重ね、「二人の稼ぎ手と二人のシュフもつ家族」として再出発するためにすばらしい契約を取り決める、という過程が綴られています。
「家事育児の分担」と言うは易し、自分の方が多く受け持っている、押しつけられている、と不満を感じている人はかなり多いことでしょう。(口外しないだけで、うまいこと押しつけたと舌を出しつつ申し訳なく思っている人もいるかもしれません。)
今の厳しいご時世で、マグレディ夫妻のような役割交換生活を現実に試してみるなんてことはほとんど不可能だと思いますが、「不承不承でも、思い込みを捨てて本気で取り組んだらどんどんよくなった実例があるらしい」という参考書として、この本を読んでみてはいかがでしょうか? ほんとうの家庭平和のきっかけが1,728円で手に入るなら......非常にお買い得ではないかと......お勧めいたします。
Amazonでは早くも予約受付中だそうです!
東京ステーションギャラリー
『ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい』展
続きましては展覧会。
東京駅丸の内北口の東京ステーションギャラリーで開催中の企画展『ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい』。
1970年代に展開された、かの有名な国鉄のキャンペーン「ディスカバー・ジャパン」をテーマとしたこの展覧会に伊丹さんが登場しています。
今年10月で放送開始から44年となるご長寿番組『遠くへ行きたい』の中から、伊丹十三が旅人として出演した名作「天が近い村」(1973年)を全編ノーカットで鑑賞できるそうです。(他の方のご出演回もダイジェスト映像で楽しめるそうです。)ほかにも、キャンペーン広告の驚くほどの斬新さや、それをめぐっての議論の熱さ、かつての旅の懐かしさ、いろんなエッセンスが詰まっています。
1971年のキャンペーンポスターをモチーフにした展覧会のメインイメージ。
オヤ......フム、赤い矢印があっちとこっちで逆になってますね。
図録は内容超充実、それぞれの印刷物の紙質選択もすごく凝ってます!
日本一の旅の拠点・東京駅で1970年代の日本の旅を旅することができるなんて、幾重にも入れ子になった展示で楽しさ倍増、さらに倍、ですね。
東京駅をご利用の方、お近くへいらっしゃる方は、お時間を確保してぜひどうぞ!
- 展覧会名:ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい
- 会場:東京ステーションギャラリー
- 会期:2014年9月13日(土)~11月9日(日) 月曜休館(祝日の場合は開館、翌火曜休館)
- 入館料:一般900円 高校・大学生700円 小・中学生400円
詳しくはこちら
(『遠くへ行きたい』をはじめとする伊丹さんの旅の仕事は当館の企画展でも展示中です。お待ちしておりますヨ。)
学芸員:中野
2014.09.29 伊丹十三記念館アイディア大賞
今月から新しいアルバイトさんがスタッフに加わりました。新しいスタッフというのは職場に新しい風を吹かせてくれます。何年も同じやり方でしていた業務について、思いつきもしなかったようなより良いアイディアを出してくれたりして、目から鱗が落ちることもたびたびです。
スタッフからは日々「こうしたらよいかも」「こんなのはどうかな?」と色々な提案が出て、それがどんどん取り込まれていき、今の記念館ができあがっています。
突然ですが、ここで私が勝手に選ぶ「伊丹十三記念館アイディア大賞」を発表します。
伊丹十三記念館アイディア大賞は・・・
カフェメニューの「みかんジュース飲み比べセット」です!
このメニューは開館当時にはありませんでしたが、記念館は観光地でもあり、みかんは愛媛県の特産物であるということで、当時カフェを担当していたスタッフが考案し、メニューに加わりました。
お陰様で大ヒット!
「その土地ならでは」を求めている、旅行中のお客様の満足度も高く、お写真撮影もダントツに多いメニューです。
シャンパングラスに入っているというのが見た目にもいいですよね。
次点で、「スタッフ専用の引き出し」です!
受付に引き出しがたくさんあるのですが、各スタッフにつき1つ、専用の引き出しを設け、その中にそのスタッフへの伝言や、渡したい書類等を入れるという案です。
こちらも先程のみかんジュース飲み比べセットを考案したスタッフの提案ですが、それまでの「今日お休みの●○さんに伝えないといけないことがある。(でも明日私はお休みだから誰かに伝言を頼まないといけないわ~)」とか「事務所にいる●○さんに渡したい書類がある。(でも今は受付を離れられないから●○さんに会うまでこの書類持っていなければ~)」とかいう、「仕事が完結しない感」、「途中感」のモヤモヤが一気に解消された、素晴らしいアイディアです。
シフト勤務で、少人数運営で、サービス業ゆえに自由には持ち場を移動できない職場ゆえに、この「引き出しシステム」の有難さと言ったらありません。
ちなみに、私もいろいろと提案をして、「あたり」だと勝手に思っているものがいくつかあります。
(その何倍も「はずれ」がありますけど...)
ひとつはスタッフ間のミーティングの議事録を事前に準備しておくという提案です。
以前はミーティングを行う際、各自が議案や報告をミーティングの場で発表し、書記がそれらを全てまとめて議事録を作成していましたが、これがなかなか大変で、聞き漏らしたことを後で確認したり、途中で漢字やら正式名称やらを確認したり、と、負担が半端なかったのであります。
しかし、事前に各自が共通のデータに入力し、それを出力してミーティングに臨むと、耳で聞く情報だけでなく目で見る情報もあり、確認作業等が格段に減り、その上、議事録も加筆修正だけで済むので、大変効率がよくなりました。
ミーティングの時間も短縮され、大変良いアイディアだったと自画自賛しています。
これからも「あたりまえ」を疑いながら、いいアイディアを探しながら、仕事をしないと!と、新しいアルバイトさんとお話しをしながら、改めて感じた今日このごろです。
スタッフ:川又
2014.09.22 火災訓練を行いました
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
朝晩は特に肌寒く、また夏の疲れが出やすい時期ですが、皆さま元気でお過ごしでしょうか。
さて、先日、記念館で火災訓練を実施いたしました。
記念館ではこれまで何度も訓練を行っていますが、万が一の色々な場合に対応できるよう、その都度状況を変えて訓練しています。今回は「館内において、スタッフの目の届かないところで火災が発生した」状況を想定し、現場の確認や初期消火、避難誘導、消防署への通報などを行いました。
【警報場所を確認し、他スタッフに現場確認を指示する様子】
事前にスタッフそれぞれの役割分担を決め、流れをしっかりと確認したうえで訓練に臨みました。こういった流れの確認、イメージトレーニングが、いざという時に非常に大事になってくるのですね。
また、訓練には松山南消防署の消防士の方々、セコムテクノサービスの方に立ち会っていただき、消防士の方々には消火器の使い方をレクチャーしていただきました。
(「火事だ!」と周りに知らせながら消火器を準備。火元に近づきすぎない)
●消火器の一番上にある黄色のピンを抜く
↓
●消火器のホースを外して火の根元に向ける(薬剤は勢いよく出るため、ホースの先のほうを持つのがいいそうです)
↓
●上のレバーを強く握る(薬剤が出てきます)
以上が消火器の使い方です。とても大事な手順ですから、皆さまも覚えておかれるといいと思います。もしとっさに出てこない場合は、消火器本体にも使い方が分かりやすく表示されていますので、ご覧になってください。
【消火器の場所もしっかり確認】
【消火器の使い方をレクチャーする消防士さん】
火災が発生するような状況にならないのが一番ではありますが、万が一の時は落ち着いて行動できるよう日頃より訓練や準備をしっかりしておかなければ、と改めて感じる有意義な訓練でした。
最後になりましたが、松山南消防署およびセコムテクノサービスの皆さま、お忙しい中に訓練実施にご協力いただきありがとうございました。
お客様やスタッフの安全のため、訓練で学んだことをしっかり役立てていきたいと思います。
【ご協力ありがとうございました!】
スタッフ:山岡
2014.09.15 第6回伊丹十三賞 受賞記念イベント開催決定!
第6回伊丹十三賞 受賞記念イベントの開催が決定いたしました。
「今年の受賞記念イベントは?」と楽しみにしてくださっていた皆さま、お待たせいたしました!
【イベント概要】
タイトル:第6回伊丹十三賞受賞記念 リリー・フランキー × 周防正行 トークショー
日時:11月12日(水)19時開演
場所:松山市総合コミュニティセンター・キャメリアホール
登壇者:リリー・フランキー氏(第6回伊丹十三賞受賞者)、周防正行氏(伊丹十三賞選考委員)
テーマ:「いかにしてリリー・フランキーになったのか」
ご案内:伊丹十三記念館 館長 宮本信子
入場料:無料 【事前応募制・応募者多数の場合は抽選・応募締切10月13日(月)必着】
※応募方法など、詳しくはコチラをご覧ください。
トークショーのポスター
ITMグループ店頭などに掲示しています
「第6回伊丹十三賞」と「受賞記念イベント」について、簡単にご説明いたします。
リリー・フランキーさんが、イラストレーター・作家・俳優など、さまざまな分野でご活躍なさっていることは、みなさまご存知の通りです。そのリリーさんに、「さまざまなジャンルでリリー・フランキーという存在を確立し、自身をひとつの表現媒体にした独自の才能にたいして」、今春、第6回伊丹十三賞をお贈りいたしました(「伊丹十三賞」についてはコチラをご覧ください)。
贈呈式は4月に東京で開催いたしましたが、受賞記念イベントであるトークショーは、記念館の所在地である松山で開催いたします。
また、今回のトークショーには、受賞者であるリリーさんだけではなく、周防正行監督(伊丹十三賞選考委員)にもご登壇いただきます(周防監督といえば、9月13日に最新作『舞妓はレディ』が公開されたばかりですね!)。
周防監督は、4月に開催した第6回伊丹十三賞贈呈式のご祝辞で、リリーさんの受賞について、こんな風におっしゃられていました。
リリーさんは、『そして父になる』で数々の賞を受賞されました。「当然そうなるだろう」と、映画を観た直後から思っていました。
それは、役者をなりわいとしている人が数多くの賞に輝いたことを以て、「これでようやく一流の役者としてみとめられた」とか、あるいは「性格俳優などという、わかるようでわからない類(たぐい)の、"うまい役者"になった」とか、そういった事情とはちょっと違う匂いを感じました。
うまく言えないんですけど、「役者としてどうなったか」ということではなくて、「リリー・フランキーがリリー・フランキーとして映画の世界で存在することを、ようやくみんなが称えたんだ」っていう、そういう感じだったのかもしれません。
誤解を恐れずに言うと、リリーさんは永遠に役者になれない。いや、なるべきではない。ずっとリリー・フランキーでいるべきだ。そういうことなのかもしれません。
今までの伊丹十三賞の受賞者のみなさんをちょっと思い返していただければわかると思うんですが、誰一人として既成の概念で識別できる職業を持っている人はいませんでした。みなそれぞれが、"コピー・ライター"であるとか、"テレビタレント"であるとか、そういった肩書に収まらずに、まさに「その人本人のお名前こそが職業である」としか言いようのない人たちです。
リリー・フランキーさんにふさわしい肩書きがあるとしたら、それは"リリー・フランキー"っていうことなんだと思います。
僕の中で、リリー・フランキーさんに伊丹十三賞を受賞していただきたいと思った一番の理由がそれでした。
独自の存在感をお持ちのリリーさんを称えていらっしゃいます。そんな周防監督のご祝辞を受けたリリーさんは、
周防監督にあんなに褒めてもらえるなんて思ってもみませんでした。
と、とても嬉しそうに受賞者スピーチで仰っていました。
今回のトークショーでは、そんなお二人の対談を通して、稀有な存在であるリリーさんが「いかにしてリリー・フランキーになったのか」に迫ります。私たちスタッフも、どんなトークショーになるのか、今から楽しみです。
応募締切は10月13日(月)です(応募者多数の場合は、抽選になります)。
皆さまのご応募、お待ちしております!
~記念館からのお知らせ~
トークショーの翌日に、宮本信子館長が出勤いたします!
日時:11月13日(木)11時頃~13時頃
※当日の状況により、滞在時間は変更になることがあります。
皆さま、ぜひ記念館にいらしてくださいね。
スタッフ:淺野
2014.09.08 イチゾーとジューゾー
今度、10月に出るある雑誌に拙文を載せていただくことになりまして、ゲラチェック、なるものをいたしました。
校正用に送られてきたゲラで自分の文章を確認するのは初めてではないのですが、今回、書いた内容とは全然関係のないところでとても驚いたことがあります。
自分の名前、なんて四角いんだろう!!
ということです。
フォントのせいもあるのかなぁ、とは思いますけどネ......
こうして眺めてみると、石に彫刻刀で彫るのに最適な名前、って感じ!!
名は体をあらわす、と言いますけれども、たしかに、自分の周りの人々は、それぞれの名前に合った雰囲気を持っている感じがします。ということは、私を知る人たちは「いかにも中野靖子っぽい」と思っているのでしょうか? だとしたら、どういう点でそう思っているのでしょうか? この角ばった字面のことでそう思っているということでしょうか......?
実は、このことは以前から気になっていて、友人に尋ねたことがあります。
何の気兼ねもいらないお酒の席だったにもかかわらず、友人は、何かひどく言いづらそうに「まぁ、うん、四角いっていうか、あー、鋭角的ではあるよね」と答えてくれました......それは「四角い」以上にキツいのでは......
さて。
伊丹さんといえば、「伊丹十三」「イタミジューゾー」「ITAMI JUZO」。
字面も響きも本人と名前がピターっと一致していて、他の名前は考えられないほどですが、これ、自分でつけた「芸名」なんですね。正確に言えば、「自分で改名した芸名」なのです。
1960年、俳優デビューするときに、所属映画会社・大映の永田雅一社長からもらった名前は「伊丹一三(いたみいちぞう)」。それを1967年に「十三」にしたわけです。
「マイナス(-・一)」を「プラス(+・十)」に転じるための改名だったと言われていますが、「そんな洒落みたいな理由だけで改名する人だろうか。本当はもっと別の意図がありそう」と、いささか疑問に思ってきました。
そんな私の念がやっと天に通じたと見え、図書館で思いがけず行き当った雑誌記事でもう少し詳しい事情が分かりました。
『現代』1967年6月特別号での遠藤周作さんとの対談によると、
- 自分には内向的なところがあるから、もう少し積極的に生きぬいてやろうと思って「一」より強そうな「十」に(姓名判断などではなく)自分の意志で変えた。
- 男に繊細な名前はいけない、「一三」は親しみにくい。
- 内向的な雰囲気があると、直情径行な人間の役、一本気な男の役がくるときに困る。
ということだったのだそうです。ナルホド。
左:ポケット文春版の『ヨーロッパ退屈日記』(1965年)
右:B6判の『ヨーロッパ退屈日記』(1974年)
同じ著書、当然同じ著者なのに、並べて見ると雰囲気はだいぶ違って見えます。
たとえば、ごく若い頃の伊丹さんが出演していた映画を観ると、スマートでいてちょっと神経質そうな響きの「イチゾー」は、それはそれで当時の伊丹さんには似合っていたと感じますが、看板を掛けかえることによって自分で自分を「ジューゾー」に変えていったのですね。自己プロデュースだったんだ、納得しました。
で、翻ってみるに自分の名前。
戸籍上の本名ですからそうそう変えられませんし、たまに「やたらと四角いなぁ」と思うだけで変えたいわけではないのですが、「丸っこい名前に変えていいですよ、お好きにどうぞ」と言われたとして、それで自分をどういうふうに方向づけたいか、という伊丹さんのようなビジョンもないんですよね。自分の名前を考えるのって、なかなか難しそうです。
ま、つけてもらった名前でも自分で考えた名前でも、マジメに一生懸命生きて、「いい名だ、なぜなら人物がいいからだ」って思われるようになるのが一番かな、と。おっと、ハードルを上げ過ぎて、雲より高い棒高跳びになってしまいました......修業、修業。
学芸員:中野
2014.09.01 みなさまの声
もうすぐ9月です。 お盆が過ぎると、朝夕が少しひんやりして、ああ、もうすぐ秋が来るのね、と感じます。
さて、秋と言えばいよいよ本格的な行楽シーズンですね。
旅の想い出に、伊丹十三記念館のホームページに出てみませんか??
毎週金曜日、記念館ではお客様方から頂戴した記念館へのご意見やご感想を、「みなさまの声」というコーナーにおいて掲載しています。
基本的には1週間に10組様お願いしております。
お写真とともに掲載しておりますが、お写真は、後姿とか、愛用品とか、お顔があまりはっきりわからないように、すごーく遠目にお写ししたりしたものでもOKです。もちろん、お写真無しでご意見だけでも構いません。 時には、お客様ご自身がイラストを描かれ、それを掲載させて頂くこともあります。
また、過去のみなさまの声を見ていますと、有名人が登場されていることもあります。
例えば今年の2月には、宮本館長から記念館を紹介されご来館下さった「さかなクン」さんがご登場下さっています。
ギョギョギョ~!!
びっくりで魚(ギョ)ざいます!
(さかなクンさんのみなさまの声はこちらから)
また、CM他様々な分野でご活躍のクリエイター・箭内道彦さんも先日、みなさまの声にご登場下さいました。
昨年、コラムニストの天野祐吉さんがお亡くなりになりましたが、今年8月、河出書房新社より「天野祐吉 経済大国に、野次を。」という本が発売されました。
この本のインタビュー記事の中で、箭内さんは伊丹十三記念館にご来館されたことに触れておられます。お名前を名乗られたわけではありませんでしたが、記念館スタッフの一人が箭内さんのご来館に気付き、天野祐吉さんの奥様にご連絡差し上げたところ、「通報」されたとユーモアを交えてお話下さっています。 そのご来館時にスタッフが箭内さんに「みなさまの声」をお願いしたのですが、快くお引き受け下さったというわけです。
(箭内道彦さんのみなさまの声はこちらから)
みなさまの声へご協力を頂けるお客様はお近くのスタッフまでお声掛けくださいましたら、用紙と筆記用具をお渡ししますので、どうぞお気軽にお声掛け下さい。
記念になること間違いなしです。
スタッフ:川又
2014.08.25 夏の読書
ある夏の日にカフェをご利用くださったお客様で「夏だけ読書家なんです」という方がいらっしゃいました。
今はもう社会人の息子さんが小学生だった頃、夏休みの読書感想文に四苦八苦していたのを見かねて、「ちょっとアドバイスでもしてやろう」と課題の本を読まれたそうです。「これが思いのほか面白かったんですよ。それからは息子の夏休みに、読書に付き合うのがすっかり楽しみになりまして」。その名残か、毎年夏になると無性に読書をしたくなり、ひと夏に何十冊も本を読まれるのだとか。伊丹さんの著書も大好きでよく読むんですよとおっしゃって、この日はアイスコーヒーを飲みながら、持参された『再び女たちよ!』(新潮文庫)を読んで1時間程カフェで過ごされていました。
【カフェ・タンポポのアイスコーヒーといっしょに】
暑さで疲れを感じやすいこの季節、ちょっと涼しい場所で、冷たい飲み物を傍らに置いて、本を読みながら静かな時間を過ごす。読書といえば秋をすぐイメージする私ですが、お客様の話を聞きながら、そんな夏のひと時もいいなと感じました。
カフェ・タンポポには、読み物として記念館ガイドブックなど本を何冊か置いており、どなたでもご自由にお読みいただけます。また、グッズショップでも伊丹さんの著書をはじめ読み応えのある本を販売しております。
お気に入りの1冊になるかもしれない本を、記念館にお越しの際はぜひ手にとってみてくださいね。
【カフェのラック。ご自由にお読みください】
8月も残すところあと1週間となりました。最後に、上述のお客様も読まれていた『再び女たちよ!』から、夏の風物詩のひとつ「花火」がタイトルのエッセイを一部ご紹介いたします。
(前略)歩いてみると縁日なんてものは相変わらず気分の出るものですねえ。綿飴屋がある。金魚屋がある。盆栽屋がある。だれが買うのか知らんが、小さな亀なんか金盥に入れて売っていたりなんかする。そうして――ああ、すっかり忘れていたなあ、そうそう、こんなものがあったっけ――花火!花火を売っている屋台を私は発見したのである。
しかし花火というものも変わらないねえ。あの、日本の玩具特有の紫や桃色や緑や黄の染料の色はどうだろう。妙に毒毒しく、そのくせ、うらぶれた、沈んだ色合いはどうだろう。
桃色の軸に、汚れた銀色の火薬を塗りつけた「電気花火」がある。紫や白や赤、黄、緑の斜めの縞模様の「線香花火」がある。線香花火を、くるりと輪にしたような「鼠花火」がある。太い筒で「落下傘」なんていう花火がある。打ち上げると、紙のパラシュートがゆらゆらと降りてくる、あれです。
私は、花火の前に、まるで夢見心地で立っていた。なにかこう、落ちぶれた肉親にでも会ったような、懐かしさと、遣瀬無さに包まれて、私は呆然と立っていた。(後略)
(『再び女たちよ!』-花火―)
スタッフ:山岡
2014.08.18 宮本信子館長が出勤いたしました
8月13日・14日、宮本信子館長が出勤いたしました。当日の様子をお写真でご紹介いたします。
記念館サイトを毎週欠かさずチェックしてくださっている方や、メンバーズカード会員の方々、夏休みの宿題を兼ねてお越しくださったお嬢さんも......!他にもさまざまなお客様が各地からご来館くださいました。皆さま、ほんとうにありがとうございました。夏の良い思い出になりましたでしょうか。
――夏の思い出といえば、子どもの頃の「夏休みの宿題」が思い浮かびます。ドリルに日記、作文、自由研究......そうそう、「俳句を詠む」という宿題もあったように記憶していますが、これは松山ならではでしょうか。
記念館の常設展示室「池内岳彦」のコーナーには、大切に保管されていた伊丹さんの小・中学校時代の観察日記や絵、作文が展示されています。
その中から、小学校三年生の時の作文の一節をご紹介いたしましょう。
「水泳遠足」
七月二十七、八兩日は、夏季心身鍛錬の爲、三、四年が先生に連れられて、眞野へ水泳遠足に行った。七時十分三條集合、七時半發の濱大津行急行に乘った。
早く水へは入りたい心でいっぱいの僕は、ふだん「随分早いなあ」と思って眺めてゐた急行が、今日はなんだかのろのろとしてゐるやうに思はれて、僕のからだは自然に前の方へ前の方へとつき出て行って、僕の心が電車よりも先に走ってゐるやうな気がした。
夏休みの1コマでしょうか。これを小学校三年生で書いたとは、たいへんな文才ですよね。字もとっても綺麗なんです。ご覧ください。
素晴らしいですよね。そして何より、「子どもの頃の自分は、宿題・課題に、こんなに前向きに取り組めていただろうか」と感じ入ってしまうのです。伊丹さんの作文、子どもにありがちな「イヤイヤ取り組んだ感じ」がないですよね。
夏休みも後半です。皆さんもぜひ展示室でご覧になってみてください。きっと心に残るものがあると思いますよ。
スタッフ:淺野
2014.08.11 「おじさん」願望
最近、初めて美容院で白髪を染めました。
「ああ、この先は、一生、白髪なのか」
「あきらめない限り、染める面倒に煩わされ続けないといけないのか」
「黒い髪が自然に生えてくることは二度とないのか」
美容師さんの薬剤の準備を待つ間、(自分で注文したくせに)いかにも白髪染めを受け入れたくなさそうな、わがムクレ顔を鏡の中に見て、なかなかにもの悲しい気持ちでした。
生まれたときから「人生列車」というものに乗っているとしたら、20代の半ばから、頼んでいないのに、切符のグレードアップもしていないのに、普通列車がひとりでに快速になり、急行になり、「おばさん国」の国境付近で突如特急になった、そんな気分です。
「えっ、何駅飛ばすのよ! 停めてよ!! 降ろしてよーーー!!!」
「お客様、一度乗ったら降りられない、人生列車とはそういうものです。はい、パスポート出してください」
おばさん国への入国スタンプを押されても、このように、まだダダをこねていたいワタクシですが、「おじさん」にはなってみたいのです。いやっ、「おじさんは白髪なんて気にしなくっていいじゃーん」なんて乱暴なことは考えておりません。
おおっぴらに、おしぼりで顔をぐいぐい拭きたい、ビールを飲んで「ゲフぅ~」って言いたい、つまようじで歯の隙間をホジホジしたい、好きな球団がボロ負けしたらフテ寝したい、っていうわけでもありません。
あのね、伊丹十三によれば、「おじさん」とは、そういうことではなくて、こういうことらしいのです。
僕は、おじさんというのはなんだか嬉しい存在だな、と思うんですね。ちょっと気が楽になるようなね、そんなイメージがあるわけです。
少年である僕がいるとする。僕は両親が押しつけてくる価値観や物の考え方に閉じこめられている。生まれた時から閉じこめられているから、閉じこめられているということも気づかずにおりますけれども、でもなんだか毎日がうっとおしい。
そんなところに、ある日ふらっとやってきて、両親の価値観に風穴をあけてくれる存在、それがおじさんなんですね。
おじさんと話したあとはなんだか世界が違ったふうに見えてくる、そういうのがおじさんである。
どうです? いいこと言うでしょ? おじさんになりたくなったでしょ?
この文章、かなりの伊丹十三マニアでも、お読みになったことがないと思います。なぜなら、雑誌『モノンクル』【mon oncle=ボクの・おじさんの意】の広告案内パンフレット(「今度こんな雑誌を作るので広告を載せませんか?」という営業用)に掲載された趣旨説明の文章で、伊丹十三の著書には収録されていないからです。
パンフレットの全ページを大きく引き伸ばしてパネルにし、
現在開催中の企画展で全文お読みいただけるようにいたしました。
遊び人でやや無責任な感じだけど、本を沢山読んでいて若い僕の心をわかろうとしてくれ、僕と親が喧嘩したら、必ず僕の側に立ってくれるだようような、そんな存在が、まあ、おじさんというイメージなんですが。
思えば、伊丹十三の夢というかライフワークというか、生涯の楽しみは「みんなのおじさんであること」だったような気がします。
そして、この境地にいたる前、伊丹さんが聞き書きエッセイや対談、テレビドキュメンタリーで出会った人々は、いろんな道のプロも、学者も思想家も、伊丹さんにとっての「おじさん」だったのにちがいありません。
いいなぁ、おじさん。ああ、どうにかして私もおじさんになれないものかなぁ。
と悩んでいる――そんな女が自分以外にもいると勝手に想定してスミマセン――そこのアナタ、伊丹十三の映画をぜひご覧になってください。
『マルサの女』の亮子、『ミンボーの女』のまひる、『スーパーの女』の花子......伊丹映画では、おばさんの姿をした「おじさん」が大活躍して、何かにがんじがらめになっている人の心に風穴をあけてくれます。すばらしいお手本。
伊丹十三の夢を妻の宮本信子が体現した、と言ったら美談にしすぎかな、っていう気もしますが、今週、宮本館長が出勤したら、「おじさんになる方法を教えてください!」と口走らないように気をつけたいと思います。
館にいる間、館長はロビーでお客様をお迎えしますので、みなさん、ぜひ会いにいらしてください。お待ちしております。
学芸員:中野
・・・・・・・・・・・・・・・<宮本館長の出勤予定>・・・・・・・・・・・・・・・
8月13日(水)13時~16時30分頃
8月14日(木)11時~16時30分頃
当日の状況により、滞在時間は変更になることがあります。
ご了承くださいませ。
2014.08.04 夏の想い出
いよいよ8月になりました。
近頃夏休みということもあってか普段にもましてご来館のお客様の中にご旅行中の方が多くなってきたように感じます。
毎日、「旅の時代-伊丹十三の日本人大探訪-」を行っている企画展示室を通ったり、ご遠方からご旅行中のお客様とお話をしたりしていると、「旅に出たい~知らないまちとか歩いてみたい~」という気持ちがぐるぐるしています。
先日館長のHPを見ましたら宮本館長は石川県金沢等を旅行されたということで、いろいろと楽しそうな旅の様子がのっていました。
(館長の金沢旅行のブログはこちらからご覧いただけます。)
そういえば私も学生時代、夏の金沢に行ったことがあります。JRの「青春18きっぷ」という普通・快速列車のみ乗り放題になる乗車券を利用して行きました。
普通列車と快速列車しか乗れないので時間はめちゃめちゃかかり、松山駅を朝6時くらいに出発して、岡山、大阪、滋賀、福井あたりを経由して金沢に到着したのは午後10時を過ぎていたと思います。
翌日以降兼六園とか金沢城とかをいろいろと観光して、また京都あたりもうろうろして、数日後、青春18きっぷで夜行列車に乗って朝方松山に帰ってきました。
大人になった今となっては絶対できません。日当をもらっても無理です。
学生時代というのはわけのわからない洋服をわけがわからないほど購入して、でもお金がなくても旅行にも行きたくて、なんとか安くいける方法を探して旅行をして、ということを繰り返していましたが、今思えばあの洋服を数枚買うのを我慢すれば普通に飛行機とかで旅行行けたんじゃないのとか思うのですが、若いころというのは欲深く、なんでも欲しかったし、あっちにもこっちにも行きたかったので、それしか方法がなかったような気もします。それが若さというものですかね。その当時購入したわけのわからない洋服たちの中で今現在使えるものは一つもありませんが、旅の想い出は、青春の1ページと言いますか、確かにその時は結構過酷だったはずですが、今となってはまあどれも良い想い出になっています。その金沢旅行も夏の良い想い出になっています。
皆様も夏の想い出を作りに、旅はいかがですか。もしよろしければ松山へ、伊丹十三記念館へぜひお越し下さい。
【画像:記念館の芝の中に生えたきのこ。ここ数日雨が続いた松山ですが、この時期は雨の日が続くと記念館にはよくきのこが生えてきます。】
スタッフ:川又
2014.07.28 遍路
高知県に、「見残し海岸」と呼ばれる景勝地があります。
私はまだ訪れたことがないのですが、砂岩が波風に浸食されてできた奇岩が続く、美しい岩礁海岸なのだそうです。同じ四国でも、愛媛と高知では海の景色が随分違いますから、ぜひ一度行ってみたいなと思っています。
「見残し」という変わった名前は、
―― 歩いて立ち入ることが困難な難所のため、その昔、四国八十八ヶ所霊場を開いた弘法大師も"見残し"た ――
という言い伝えにちなんでいるそうです(現在は、遊歩道が整備されています)。
今年(平成26年)は、四国八十八カ所霊場開創1200年にあたるそうですが、弘法大師にまつわる言い伝えが、現在も地名として生きているんですね。
そんな四国に住んでおりますと、お遍路さんの姿をよく見かけます。
記念館は遍路みちからそれた国道沿いにあるのですが、お遍路さんがお車で立ち寄ってくださることがあります。最近は、遍路に貸切バスやタクシーを利用する方も多いようですね。なかには、「記念館が松山にあることは知っていたけど、遍路の途中は時間がなくて寄ることができなかったから、結願した後、日をあらためてやって来ました」とお話しくださった方もいらっしゃいました。長い遍路の途中に、記念館を"見残した"と思って心に留めてくださったなんて、ありがたいことだと存じます。
こちらは愛媛・瀬戸内海
遍路みちには、海沿いの道も多いです
ちなみに、記念館から近い札所をいくつか挙げますと......
第49番札所「浄土寺」
第50番札所「繁多寺」
第51番札所「石手寺」
浄土寺の仁王門
いずれも、車で30分ほどあれば記念館までお越しいただけます。遍路みちからはそれますが、お時間に余裕がありましたら、ちょっと記念館まで寄り道いかがでしょうか。
スタッフ:淺野
2014.07.21 手拭いに新色が加わりました
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。蝉の声、そして蒸し暑さが日に日に増してきておりますが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、本日は、グッズショップから皆さまに新商品のお知らせです。
販売開始より多くの方にご好評いただいております黒色・空色のカチンコ柄手拭いに、このたび新色が加わりました!
白色の生地に、伊丹さんが描いた「カチンコ」のイラストが並んだデザインです。そして今回のカチンコは「ピンク色」。もちろん、宮本信子館長こだわりのピンク色です!
どんなふうに仕上がるのだろうと、出来上がったものが届くまでどきどきわくわくしながら待っていましたが、予想以上に可愛らしい手拭いに仕上げていただきました!黒色・空色手拭いと同じく生地は「特岡」、染めは捺染(なっせん)です。オンラインショップからもお求めいただけます(コチラ)。
記念館のグッズショップも、ピンク色が加わったことで一層華やかになりました。
これから夏本番に向けて、出番も多くなってくる手拭い。記念館にお越しの際は、ぜひ手に取ってみてくださいませ。
スタッフ:山岡
2014.07.14 旅の季節
もうすぐ夏休みの旅行シーズン。
ご旅行・ご来館の計画を立ててくださっている方もいらっしゃるであろうこの時期に、「旅の時代―伊丹十三の日本人大探訪―」という展覧会を企画した身で言うのはちょっとはばかられるのですが、わたくし実は、旅が、というか、旅行が苦手です。
帰省でも出張でもない、県外への最新の旅は......
なんと2年も前でした! 広島県福山市。
以前はそんなことなかったのに、いろんなとこに行ったのに、どうしてかな、と考えてみたら、昨今の「早めがお得!」という旅行チケットの売り出しスタイルに乗りきれないとか、安さを優先すると変更・キャンセルできない不自由さが息苦しいとか、予定を立てて行動するのが苦手であるとか、自宅が好きなのでそもそもどこかへ行きたいと思うことがあまりないとか、地図があれば妄想でたいていどこへでも行けてしまうタチであるとか、ミもフタもないことにまで思い当たってしまったのでした。
そうは言っても全く旅行しないわけでもなく、まぁ、行けば行ったで誰よりもハシャいでしまうのですけれど......(←こういう自分の性格がメンドクサいから、旅が苦手なのかもしれません。)
企画展示室入口に映写している伊丹さんの旅名言のひとつ。
旅に距離は関係ない、と伊丹さん。これなら私でも毎日旅人になれます......
そんなわたくしでありますので、この展覧会の準備の最中にふと「あれっ、旅好きでもないのにこんな企画立てちゃったのはなんでだろ」と不思議に思う瞬間がありました。
自分があまり気に留めていないこと、苦手なことや考えたくなくて避けていることの中にこそ「そうか、なるほど」と感心するものがごろごろと転がっているし、発見したときの喜びが大きいからでしょうか。「旅行になんて滅多に行かないのにすみません」と申し訳なく思いつつも、大いに楽しんでいたのです。
(これまで同業の人とそういう話をしたことはありませんが、案外みんなそんなふうに企画を思いついているのかも......そういう視点で展覧会を観てみるのもおもしろそうです。)
伊丹十三は、そのような「みんなが深く考えていない問題」に着目して、考えて、語りかけるように表現する天才だったと思います。
伊丹さんがくれる「なるほど!」の嬉しさをお届けしたいなぁ、みなさんびっくりしちゃうぞ~と想像すると、ニヤニヤ笑いがあふれてきて止まらないことが何度もありました。
「旅なんてありがちじゃないの」「あまり興味ないわね」という方ほど、思わぬオモシロ鉱脈を掘り当てる可能性大!
『遠くへ行きたい』をはじめとするTVドキュメンタリー出演時に
伊丹さんが書いたナレーション原稿をズラリ並べています。
読んでるうちに、伊丹さんと旅をしている気分になれますヨ。
早めに旅行・お出かけの段取りをして、お仕事やお家のことをひととおり片付けて、計画通りに出発できる人のことも、ブラっと出かけるセンスのある人のことも、旅の苦手なわたくしは大変に尊敬しております。
その行き先として、この記念館を選んでくださったお客様に対しては、真実、心の中で合掌しております。距離には関係なく、心から大感謝。
どんなご縁でお越しくださる方にとっても、当館でのひとときがよい「旅」の思い出の場となりましたら幸いです。
学芸員:中野
・・・・・・・・・・・・・・・<!!宮本館長がお盆に出勤いたします!!>・・・・・・・・・・・・・・・
8月13日(水)13時~16時30分頃
8月14日(木)11時~16時30分頃
当日の状況により、滞在時間は変更になることがあります。
ご了承くださいませ。
2014.07.07 伊丹十三記念館からJR松山駅までは意外と時間がかかりますので、お気を付け下さい。
松山には、「松山駅」と「松山市駅」という2つの主要な駅があります。 これらの駅は、名前は似ていても全く別の駅で、松山駅はJR、松山市駅は「伊予鉄道」の駅です。
松山の公共交通機関はほぼ伊予鉄道で成り立っているため、市内どこからでも松山市駅に行くのは簡単ですが、JR松山駅に行く場合は往往にして乗り継ぎが必要になってきます。
都会から来られる方にはなかなかピンと来ないかもしれませんが、バス電車ともにダイヤの少ないここ松山で乗り継ぎをするということは、想像以上に時間がかかることになってしまいます。
受付で「●分発のJRに乗りたいんですけど、バスの時間を教えて下さい」と、出発まで30分を切っているような状態で聞かれることが多々あります。急ぎタクシーを呼ぶ、ということになってしまいます。そうやって慌ててタクシーに乗ってJR松山駅に向かわれた方が皆様、出発に間に合ったのかどうかは正直わかりません。
前置きが長くなりましたが、要はタイトルの通り「地図で見るよりも伊丹十三記念館からJR松山駅までは時間がかかりますので、お気を付け下さいませ~!」ということをお伝えしたかったのです。
と、偉そうに言っている私ではありますが、旅先では失敗を繰り返しています。
電車・飛行機などの時間系のトラブルもありますが、それ以外にも、失敗エピソードがたくさんあります。事前に予約していないと入れない東京の郊外にある美術館に予約せずに行き、入口の前から電話で「四国から来たんです!なんとかなりませんか?」と無理を言ってみたり(もちろん入れない)、高知県にプロ野球のキャンプを張り切って見に行ったにも関わらず、球場に人っ子一人おらず「?」と思いながら家に帰ってスポーツニュースを見て、その日その球団がオフだったことを知ってみたり。といったような具合です。
せめて皆様はそのようなことにならぬよう、ご旅行の際はぜひともお気を付け頂きたいと思いまして、この度ご案内させて頂きました。
受付でお申しつけ下さいましたら、バス・電車のお時間をお調べすることも可能です。また、お電話頂きましたらこちらでわかる範囲ではありますが、乗継その他いろいろとお答えする事も可能です。気になる方はぜひともお問合せ下さい。
先日亀がご来館されました。近くを流れる川から歩いてきたようです。
スタッフ:川又
2014.06.30 記念館のリーフレット
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
早速ですが、皆さまは記念館のリーフレットをご覧になったことはありますでしょうか。
記念館では、入館の受付を終えたお客様に入館チケットとリーフレット、常設展示品リストをお渡しし、簡単にではありますが、展示の見方や順路などをご案内しています。
その際、折りたたまれたリーフレットを開いたお客様から「うわぁ、お洒落!」「遊び心があって面白い」等々、嬉しいお言葉をいただくことがよくあるのです。
この記念館のリーフレットをちょっとご紹介しますと...
まず、一回開くとこんな感じです。宮本館長の言葉(記念館がどんなところかを表している、とてもいい文章です!)と共に、記念館を上から見た イラストが載っています。この写真ではわかり辛いかもしれませんが、ちょうど中庭のところは、その形に紙がくり抜かれています。
こんなふうに、館内の見取り図が現れます。左右には「伊丹十三ってどんな人?」「こんな記念館です......」という文章で伊丹さんと記念館をご紹介。
開く前と後のイラストがリンクしていて、ちょっと面白いと思いませんか?
イラストは、記念館を設計してくださった建築家・中村好文さんが描かれたものですが、中村さんファンに限らず、上述のとおりご来館いただいたお客様に大変ご好評をいただいているのです。
このリーフレットは、観光で多くの方が立ち寄られる場所をはじめ、ホテルや旅館など色々なところに設置していただいています。また、記念館のオンラインショップをご利用いただいたお客様にも、商品といっしょにお送りしています。
どこかでお手に取られましたら、ぜひ開いてみてくださいね!
そして記念館にお越しの際は、リーフレットを片手に、館内をゆっくりのんびり巡ってみてくださいませ。
2014.06.23 『ポテト・ブック』
数年前に家族が趣味で野菜作りを初めてから、春植えジャガイモの収穫時期が楽しみになりました。今年は梅雨入り前に収穫した我が家のジャガイモたち。おいしく平らげたあとで――ふと気づきました。
「食べる前に、『ポテトブック』を読みなおしておけばよかった」
日本語版 『ポテト・ブック』 表紙
表紙イラストは矢吹申彦さん
マーナ・デイヴィス著『ポテト・ブック』。
アメリカで出版されたこの本は、伊丹さんによる翻訳(伊丹さんには翻訳家としての顔もありました)で、1976年に日本でも出版されています(ブックマン社発行/現在は絶版)。
どんな内容か、伊丹さんによる紹介文を引用いたしますと――
ポテトに関して、あなたが知ってなきゃならぬことのすべてを詰めこんだのがこの「ポテト・ブック」であります。プラス、ですな、あなたが知りたかったこと、知らなかったこと、これも入っている。これはただの料理の本じゃないんです。もちろん、「ポテト・ミステリー」なんていう、スパイスの利いたオードブルから、「ポテト・マージパン」と称する楽しい食後のお菓子の作り方まで、載ってはおりますが、これはとてもただの実用書ではない。
肝腎なことはですな、この「ポテト・ブック」という本はやたら面白いんです。二十三人のアーチストたちによるイラストレイションといい、ポテトを使ってのゲイムといい、ポテトによる美容法といい、(ポテトで皺が伸びるっていうんだからね)そして、トゥルーマン・カポウティ氏による、ポテトの唯一の完全なる召し上がり方に関する妥協なきサジェスチョンといい、なんとも面白くて、あなたは絶対にポテト中毒になること確実なのであります(後略)
――ポテト一色の魅力的な本。食べる前に読みたくなりますよね。
「カポウティ氏による(中略)妥協なきサジェスチョン」とありますが、実はこの本、序文をカポーティが書いているんです。豪華です。
『ポテト・ブック』が「やたら面白い」と感じられる理由は、伊丹さんの翻訳にもあると思います。「訳者まえがき」には――
(前略)訳文は、徹底的に日本語化する努力を傾けたつもりです。つまり、文法に囚われた逐語訳を捨て、意味と語り口を伝える方に力点を置いたわけです。結果として、原文の、英語特有のドライな簡潔さを失うことになりましたが、これは避け難いことであると、割り切りました(後略)
――とあります。
原書を見たことがありませんので、たとえば「何をどういう風に訳したのか」まではわからないのですが、自然に言葉が入ってきます。翻訳文にふと感じる違和感はありません。
こちらは9歳のお子さんから寄せられたレシピ
絶版なのがほんとうに残念です。古本を見つけたら、ぜひお手に取ってみてください。
伊丹さんと料理と言えば――
矢吹申彦さん(『ポテト・ブック』の日本語版の表紙を描かれています)が、「ほぼ日刊イトイ新聞」の伊丹十三特集で、伊丹さんの「料理にまつわる思い出」をお話しされています。とっても面白いので、未読の方はぜひ。詳しくはこちら。
また、記念館の常設展示室には、伊丹さんの料理に対するこだわりがギュッと詰まった「料理通」のコーナーがあります。
伊丹さんが実際に使用していた料理道具や器に加え、料理本も一部展示されています(本のタイトルがご覧いただけます)ので、どうぞお見逃しなく。
スタッフ:淺野
2014.06.16 草の季節
例年より早い梅雨入りでしたね。
松山は雨量はそれなり、冷えも蒸し暑さもそれなり、といった日が続いています。
と、油断していると土砂降りに見舞われることもあります。
みなさまもご油断なくお過ごしください。
世の中には(職業上の事情は別にして)雨降りの嫌いな方もいらっしゃるようですが、私は割と好きなほうで、多少の雨なら傘を差さなくても平気で出歩きますし、適度な雨音が聞えてきたりなんかすると非常に気分が落ち着いて、心地よく感じます。
しかし。このところは雨が降ると「草が生えてしまう!!」と気が気ではありません。
昨今「草生える」といえば、「笑っちゃう」という意味のネットスラングなんだそうです(長くなるので由来はここでは割愛させていただきます)けれども、私の「草が生える」はまったく笑えません。
草=雑草です。
4月以降、時間を見つけてはむしってきた記念館の庭や花壇の雑草――固い決意のもとに一掃を目指して一進一退、何とかせめぎあってきた雑草――そのために私は膝を痛めもしたというのに――が雨の恵みを得ると、驚異的なスピードで復活してしまうのです。それがもう、口惜しくて悔しくて......
深夜、雨音を聞きながら目を閉じると、早送りのような速度で生長して増える雑草の様子がまぶたの裏にありありと......
数日もすると......あまりにも多勢に無勢、『大殺陣雄呂血』状態!
「いっそ除草剤をぶちまけて根絶やしにしたい」なんて考えを起こしたりもします。でも、それが一番、伊丹さんの嫌うやり方のような気がするんですよね。
雑草のそよぐ中庭を見て「この景色が伊丹さんらしい」と嬉しそうに言ってくださる方もいらっしゃることですから、まぁ、ボーボーにしない程度に、よからぬ虫の温床にならないように、(しかし膝は痛めないように)ぼちぼち草と付き合っていこうと思います。
それにしても、雑草の生命力にテンテコマイしていると、人間様の事情と所業によってペンペン草も生えなくなったところが地球上のいたるところにあるというのが、何だか信じがたいことに思われます。草を負かすのが目的ではないにしても、生えなくするというのは相当に強烈な破壊の力でないと不可能です。人間、おそるべし。
企画展「旅の時代」では、伊丹十三の直筆ナレーション原稿を入れ替えながらたっぷりと展示しています。現在展示中のものの中に、自然保護の難しさについて端的に的確に分かりやすく語ったものがありますので、ご紹介させていただきます。
埋め立て工事直前の鹿児島県志布志の海岸を訪ねて豊かな自然を紹介した
『遠くへ行きたい』第91回「海は青く地球は緑だった」(1972年7月2日放送)
のために書かれたものです。
自然保護という考え方は、実に説得力を持ちにくいんですネ。
つまり、公害であるとか汚染に関しては誰だって関心を持たざるをえない。
光化学スモッグで子供が病気になった、母乳からPCBが検出された、魚を食べてミナマタ病になった、水道の水を飲んでカシンベック病になった、空気が汚れて紫外線が不足し、子供の骨がたやすく折れる。こういうことには常識のある人人は誰だって反対するにちがいない。
ところが、その同じ人人が今後自分が行くこともないだろうような遠い鹿児島の浜べが滅び去り、そこに住む鳥や魚が絶滅に瀕していると聞いてもさしたる感動もおこさない。
つまり、自然保護ということは被害がまだ起っていないだけに大変訴えにくいテーマなんですね。
しかも自然にはネダンというものがない。
美しい風景にはネダンというものがない。
だから、なにかこう、これによって住民の所得がいくら上るというような、ネダンのある説得には大変対抗しにくいということがある。
一体、われわれはなぜ自然を大切にせねばならぬのか。
このことをようく考えて、地球上の人間の一人一人が、はっきりと自分なりの答えを心の中にたたみこまねばならぬ時が来ているのではないか。
そんなことを考えつつ私はシブシの浜べをいつまでもさまようのでした。
自然にはネダンというものがない。だから、ネダンのある説得には大変対抗しにくい――このコメントの中の「自然」は、いろいろな言葉に置き換えることができそうです。
その貴さを理解し、重んじ、みんなと共有して後世に引き継ぐべきものほど、値段をつけられないものかもしれません。
そういえば「平和」にも「安全」「安心」にも「文化」にも値段はつけられないんだよな......と、そんなことを考える2014年の6月です。
「健康」も値段では語れませんね。ワールドカップで夜更かし&早起きしても、お体はお大事に。
学芸員:中野
2014.06.09 伊丹さんは結構お酒が好きだったみたいです。
記念館にご来館されるお客様の中には生前の伊丹さんと一緒にお仕事をされたことがあるという方も時折いらっしゃいます。 ここ3か月ほどの間にもそういった方に2名ほどお会いしました。生前の伊丹さんに会ったことのない私は、そのようなお客様には必ず最初に「伊丹さんってどんな方でした?」と、印象を伺ってみます。 そうすると、だいたいある共通の話題が出てくるのであります。お酒です。
まず1人目のお客様は、伊丹さんと雑誌の取材のために浜松まで一緒に行かれたという編集のお仕事をされている方でしたが、このようにおっしゃていました。 「待ち合わせ場所の駅にね、缶ビールを持って現れるんですよ。昼間っから。そのビールを飲みながら電車に乗って浜松へ向かいましたよ。昼間っからお酒ですか?と、びっくりしたからよく覚えていますよ」
・・・旅行気分で仕事も楽しくなりそうなエピソードです。
お2人目のお客様は、伊丹さんとCMのお仕事で一緒になり、伊丹さんの当時の自宅にも行ったことがある、という方でしたが、その方は、 「ご自宅に伺うと、昼からお漬物とお酒を出してくれました。」
・・・いいCMのアイディアが浮かびそうです。
伊丹十三記念館のカフェ・タンポポにはそんなお酒好きであった伊丹さんが好んだお酒を厳選して置いています。京都の銘酒「桃の滴」は、行きつけのお寿司屋さんにボトルキープしていたそうですが、飲みきるとなんと自宅から自分で新しいものを持って来ていたそうです。よほど好きだったようですね。
もちろん、この「桃の滴」もカフェ・タンポポでお召し上がり頂けます。持って来なくてもカフェ・タンポポには置いてありますから、伊丹さん!ということで、お漬物はありませんが、柿の種と一緒にお出ししていますので、お車の運転の無い方はぜひどうぞ。「伊丹さんのうちに遊びに行ったら昼間っから伊丹さんに好きなお酒を出してもらった気分」がちょっと味わえること間違いなしです。
スタッフ:川又
2014.06.02 旅先からの便り
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
日中にはぐんぐん気温が上がり、「じりじり」という効果音が聞こえてきそうな日差しが降り注ぐ季節になりました。これからさらに厳しくなる夏の暑さを思い、今からぐったりしている暑がりの私ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
さて、先日、カフェ・タンポポで「どれがいいと思います?」と、60代くらいのご夫婦から尋ねられたことがありました。オーダーされたコーヒーを運んだタイミングでしたが、見ると記念館のグッズショップで販売しているポストカードが5種類、テーブルに並べられています。お話をうかがうと、ご夫婦は旅行中で、旅先からご友人夫婦へ送ろうと思い購入したポストカードのうち、どれを送ろうか悩んでいたのだそうです(最終的には、ご友人が猫好きとのことで猫のイラストのポストカードを選ばれていました)。長期の旅行に行くと、旅先から必ず手紙かポストカードをご友人に送られるのだとか。同じく旅行好きのご友人からも便りが届き、お互いに旅先での様子を報告しあっているそうです。さらに、「現地の郵便局に足を運んで、ご当地切手を貼ることもあるんですよ。それもまた楽しみの一つです」ともお話くださいました。
「旅行」と一口にいっても、色々な楽しみ方があるものですね!送る側だけでなく、受け取る側も何やら楽しそうです。
メール等のやり取りが多くなり、直筆で文章を書くことが少なくなっている方も多いと思います。長期旅行の際は、ご家族やご友人に旅先からお便りを送ってみるのはいかがでしょうか。
記念館のグッズショップにも色々なポストカードをご用意しておりますので、ご来館の際にはぜひご覧くださいね。
【記念館グッズショップのポストカード売り場です】
【おトクなポストカードセットもございます!】
・・・・・・・・・・ 記念館からのお知らせ ・・・・・・・・・・
「とっておき」の番組情報のお知らせです。
記念館HPの「ニュース欄」で告知させていただいているとおり、日本映画専門チャンネルで、ななんと...
『天皇の世紀(TVドキュメンタリー・全26話)』が一挙再放送されます!!
ドキュメンタリー『天皇の世紀』は、大佛次郎の史伝『天皇の世紀』を歴史ドキュメンタリーとして再構築した傑作で、1973年に公開され第11回ギャラクシー賞などを受賞しました。番組ナビゲーターを務める伊丹十三が、激動の幕末へ視聴者を巧みに導き入れていく、今見ても斬新な作品です。
それだけではありません。当時の番組制作関係者などのインタビューを交え『天皇の世紀』の魅力に迫った「ドキュメント"天皇の世紀"をドキュメントする」(全3回)も同時期に放送予定です。より深く『天皇の世紀』を楽しめること請け合いです。
共に本日スタート(放送日時など、詳しくはコチラ)です。ぜひチェックしてみてください!
スタッフ:山岡
2014.05.26 イベントのご紹介
松山を代表する観光スポットといえば、日本最古の温泉といわれる「道後温泉」。
そのシンボルである「道後温泉本館」が、今年4月に改築120年の大還暦を迎えたことを記念して、道後のまちでアートフェスティバルが開催されています。
その名も「道後オンセナート 2014(DOGO ONSENART 2014)」。
"最古にして、最先端。温泉アートエンタテイメント"をテーマに、プレオープン(2013年12月24日)からフィナーレ(2014年12月31日)まで約1年間の会期中、
● 道後温泉本館がアート作品に変貌
● ホテル・旅館の各一室を著名なアーティストたちが手がける、
泊まれるアート作品群「HOTEL HORIZONTAL」が誕生
――などなど、なかなか大がかりなプロジェクトのようです(「HOTEL HORIZONTAL」は2015年1月12日まで)。
また、"昼も夜も、まちを巡りながら道後の魅力を味わえるように"と、道後温泉本館や宿だけではなく、道後エリアに広く体験型アートたちが配置されていているそうですよ。
――というわけで、先日ふらりと道後に立ち寄ってみましたところ、道後温泉本館の風情ある北面がこんな具合に!
蒸気!?――ではなくて、こちらもアート作品の一つなんですね。
人工霧を使った作品を世界各地で発表している中谷芙ニ子さんによる「霧の彫刻」です。
本館各階から、勢いよく霧が流れ出てくるんです(2時間おきに3分間ほど)。この日は、風にのった霧がゆっくりと温泉街に流れていく様子が見られましたよ。
さてこの「道後オンセナート2014」、こういったアート作品が道後のまちに点在しているだけではなく、期間限定のイベントなども企画されているそうなのですが、わたくしからみなさまにお知らせしたいのは、連動イベントの一つとして東京・原宿で開催されるこちら!
『SOUVENIRS FROM MATSUYAMA 』
会場 TOKYO CULTUART by BEAMS(東京・原宿)
会期 2014年5月27日(火)~6月11日(水)
※5月29日(木)、6月5日(木)は定休日
※最終日は18時まで
詳細はコチラ
オンセナートに特別協賛として参加し、道後温泉本館で貸出されている浴衣のプロデュースも行っているBEAMSが、「TOKYO CULTUART by BEAMS(東京・原宿)」を会場として、本館改築120周年を記念したエキシビションを開催するんです。
会期中、松山を題材とした写真作品の展示や、特産品・上質なクラフトなどの展示販売を行う――ということで、当館にもお声掛けいただき、伊丹十三記念館オリジナルグッズたちを展示販売していただくことになりました。
記念館から出張するミュージアムグッズたちの一部です
ガイドブック・ポストカード・手拭い・ゴム印・マグネット!
首都圏にお住まいのみなさまや、会期中に東京へお越しのみなさま、足を運んでみてはいかがでしょうか。
記念館を含めた松山の魅力を感じていただいて、「実際に松山へ、そして記念館にも行ってみよう!」と思っていただけましたら幸いです。
スタッフ:淺野
2014.05.19 開館7周年
2007年5月15日の開館から、早いもので、なんと7年が経ちました。
このところ、メールや文書で「7周年」と書くたび、その「7」の文字が発する時の重みと申しますか、強い存在感に圧倒されてしまうような、ほとんど驚きに近い不思議な気持ちを抱いています。
いろいろあったけどあっという間で、あっという間だったけどいろいろあって......ときどき「ヨイショー!」とがんばって、館長・館長代行・スタッフ一同、みんな元気に7周年を迎えることができたことがとても嬉しく、それというのも、この7年の間にご来館くださった132,697名のお客様のおかげと存じ、厚くお礼申しあげます。
さて、そういうわけで、開館記念ウィークの恒例イベント「収蔵庫ツアー」も7度目の開催となりました。
(ここでまた「7」と書いてつくづく思ったのですが、7度目にもなるというのに、なんで未だに大緊張してしまうのでしょう! 今回も初日の前夜は眠れず、初日は脂汗まみれ!)
俳優・映画監督・エッセイスト・テレビマン・商業デザイナーなど、さまざまの仕事で伊丹十三が書いた(描いた)もの使ったもの、それから日々の愛用品――とにかく、伊丹十三は「ものを捨てずに取っておく人」だったんだそうですよ――の数々が「展示風」に収められているコーナーが当館収蔵庫の2階にあるのです。その収蔵庫で、たとえば......
こんなものや――
こんなものや――
こんなものや――
こんなものや――
こんなものを――
こんなふうに――
1時間ほどご覧いただく催しです。どうです? なかなか楽しそうでしょう?(エヘン!)
収蔵庫ツアーの何が楽しいかというと、伊丹さんについてお客様といろいろお話しできるところです。収蔵品についてのご説明を一方的にお聞かせする「お堅いレクチャー」という雰囲気ではまったくなく(そもそもワタクシにその能力がないという説アリ)、参加者のみなさんとワイワイおしゃべりしながらご案内させていただいています。それぞれの方の心の中にある「伊丹十三像」を感じることができるので、私にとっては毎回毎回がとても貴重な体験の場。
事前にご応募いただいて当選した回の開催日時に合せてご来館いただく、ということで、お客様にお手間をおかけする催しではあるのですが、みなさま笑顔でご参加くださって、まことにありがとうございました。
5月15日(木)から18日(日)の4日間で頂戴したご感想をご紹介いたしますね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
貴重な機会を提供いただきありがとうございました!! 想像以上にステキな"収蔵庫"で一日居ても楽しそうですね。今度宿泊ツアーなんて企画はいかがでしょうか?(笑)
カバンについたちょっとした飾り、再現された食堂にあるどこかの国の小ちゃな民芸品に一番心をひかれました。これらに伊丹さんのお人柄が感じられて見せていただいて感謝いたします。
収蔵庫と呼ぶのがもったいない様な特別な場所が見れてとても楽しかったです。また機会があればぜひ参加します!
とても楽しく、時代というものを感じつつ、伊丹さんの生き方を感じとることができました。ちょっとセレブなイメージで、近寄りがたい伊丹十三さんでしたが、深い知識に裏づけされた仕事人ということも理解できました。知ることは大切です。
記念館開館以来、自宅が徒歩5分のご近所にありながら、いろいろなタイミングをはかっている内に(館長がいらっしゃるときに......など)、結局初めて来館したのが1ヶ月程前。今回初めてツアーに参加させて頂き、多くの愛用品や直筆作品に触れ、ますます伊丹さんの世界にひき込まれました。至る所にこだわりや美意識が感じられ、普段の生活も楽しまれていた様子がうかがい知ることができ、大変良かったです。
ここまでいろいろな面でこだわられていたとは思いませんでした。まわりにまどわされることなく、自分がしっかりされていてとても個性を大事にされていて素敵だと思いました。
昨年度応募して......念願の収蔵庫ツアーに参加できました。まわりから「なんで(福岡から)愛媛に??」「伊丹十三記念館があるから」と一言こたえてます。再現された部屋、どんな本よんでたんだろうと興味津々でタイトルを端々みてしまいました。映画をつくるために関連した本......趣味の本......私も興味がある本があり、探して読んでみます。道具のえらび方、洋服の気に入ったものをついでついで着る感覚が同じ......またさらに親近感をかんじた一日でした。
伊丹十三記念館は2回目ですが、今回収蔵庫ツアーで普段見る事の出来ない物を見ることが出来、伊丹十三という人物の魅力をより理解出来たように思う。職場の人に「何しに愛媛に行くの?」と言われ、「伊丹十三記念館の普段見れない収蔵庫を見に行く」と答えてますが、あまり理解してくれませんでした。しかし帰ったら「一度行けば分かる!」とすすめようと思います。
数々の愛用品を見せてもらって、実際使われているのがすごくいいですね。飾ってしまうだけにしないのがよいです。実際のお家も見てみたいものです。
普段は入れない場所に入って時間を過ごすことができて、心おだやかな気持ちになりました。物を大切にしたり、お気に入りの物がたくさん並んで居たり、自宅は自分にとって居心地のよいところだったのでしょうね。私も居心地のよい場所をつくっていきたいと思いました。今日はたくさんのお話と作品と......ありがとうございました。
こんな機会を体験できて本当にうれしくたのしかったです。貴重な時間でした。人が生きてきたモノを見るだけでこんなに意義深いとは......自分の行き方もまたあらためて考え直すことができました。
あっという間の時間でした。すごく身近な人のように感じましたが、やはり全てにおいて才能があふれ出ているのに驚かされました。今日のこのひと時で、心が清らかになったように思います。これからの私の生き方も、少しは違ったものになるかも知れません。私なりに、こだわって暮らしたいと、改めて思いました。
4711オーデコロン。これが伊丹さんの匂いとのお話、時代の流れを今日この香りとともに拝見致しました。『お葬式』の驚きの映像から伊丹十三さんを好きになり、伊丹万作さんの作品の後を追い、十三さんの活字を再認識し、年一回東京からここへ通うようになりました。5月は桂が緑の風を受け、そのそばで楽しい時間をすごしました。これだけの遺品を良くぞ残して下さった、記念館に感謝。また12月に通って来ます。伊丹さんを知りたければどうぞお越しになることをおすすめします。
あっという間の1時間でした!! 大変貴重な伊丹十三さんの軌跡、たたずまい、姿勢、ひとりでも多くの人にこんなにステキな"アーティスト"という言葉を超えたひとりの人間の存在を知ってほしいです!! 本当に素晴らしい時間でした。きちんと"生きる"ことを考えたいと思いました。生きているうちにこんなステキな人に出逢えるかしら???
この収蔵庫ツアーに参加できることを何年も夢見ており、その夢が今日叶ったことを嬉しく思います。伊丹監督の映画は自分が4歳の頃から特に『スーパーの女』が好きで観ていました。歳をとるごとに伊丹監督がどんな方だったのか知りたくなっていました。今回、収蔵庫ツアーに参加できて、一層伊丹監督がどのような方だったのか、直接お目にかかれていませんが、この収蔵庫の空気を肌で感じることで知ることができ、近づくことができたのではないかと感じました。
監督はすべての物に愛着を持ち、様々なことに興味を持つ探検を楽しんでらっしゃったのではないかと考えました。服や万年筆など大切に末長く使うことに愛着を持ったところを見ると、伊丹十三は「愛することを愛した人」だったのではないかと思います。人に対しても愛を持って接していたんだなと分かることで、いかに宮本信子さん、そして息子さんたちを愛していたか、測り知れない愛を垣間見ることができました。様々なことを自分の目で見て、肌で感じて、考察していくという探検の精神は、自分も今後見習っていこうを思います。自分の中に小さな伊丹十三さんがいらっしゃってくれるぐらいになりたいです。
最後に、これからも自分は伊丹映画を愛し一緒に人生を歩んでいくんだろうなと思います。歳をとって分かる、様々なことを知って初めて分かる伊丹映画の新たな魅力に気づいたとき、再び、この伊丹十三記念館を訪れたいと思います。伊丹監督、宮本館長、お二人のことが大好きです。
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当館の開館記念日5月15日は伊丹十三の誕生日です。7周年を迎えた今年、伊丹十三が生きていたら81歳。
「伊丹さんが生きていたら、今の世の中に対してどんな行動を起こしてくれていたかな」と恋しく思うことがありますし、お客様からもそんなお声をよく頂戴しますが、「ちょっとちょっと、80歳を超えたらボクだって楽隠居といきたいよ。君たちがもっと頑張ってくれなきゃ困るナ」と伊丹さんに苦笑されている気がした7周年でした。
庭の桂はまだまだ成長中。
携帯カメラでは写真に納めるのがタイヘンな背丈に~!
伊丹十三の世界を、より多くの方に、より楽しくお伝えできるよう、粛々と勉強してまいります。
これからもどうぞよろしくお願い申しあげます。
学芸員:中野
2014.05.12 タンポポという花
記念館便りをご覧のみなさまこんにちは。
新緑の綺麗な季節になってきました。 記念館の木々にも鮮やかな緑が茂り始めています。
かわいいタンポポも咲き、記念館にとって1年で一番よい時期になってきたと思います。
かわいいタンポポ・・・、そう、タンポポをかわいい花だと思っていた時期が自分にもありました。しかし、記念館で働き、タンポポのお世話をし、タンポポの生態に詳しくなっていく度に、ただかわいいだけではないということを知ってしまったのです。
こちらの画像をご覧下さい。
記念館の庭の一部ですが、この場所にはタンポポがわんさか、いや、うじゃうじゃと生えています。この場所のタンポポは年々、増えてきており、この場所のタンポポが増えまくる量と比例して私の中でのタンポポに対する「かわいい」イメージがどんどん減っていきます。
さらに、タンポポって根っこがまたすごいのです。普通の小さなタンポポも、引っこ抜いてみると、スーパーで売っている「ごぼう」みたいな根っこが生えています。 ですから、このわんさか咲いている場所の地中がどうなっているのかと想像しただけで恐ろしいです。
さて、当館カフェでもお出ししている今話題の「タンポポコーヒー」はそんなタンポポの根を焙煎して作った飲み物です。「からだによい」と話題ですが、タンポポの力強さを知る度に「それはそうだろう、これだけ生命力が強い植物の根っこなんだから、からだにいいに決まっているだろう」と納得するのです。
見た目は普通のコーヒーと変わらない真っ黒な飲み物ですが、味はコーヒーというよりはそれこそごぼうのような、ニンジンのようなどこか「根菜感」、いかにも「からだにいい」お味がします。機会がありましたらぜひ一度ご賞味いただきたいと思います。タンポポのかわいいだけではない一面をきっと感じていただけると思います。
スタッフ:川又
2014.05.05 「限定」のお知らせ!
本日5月5日はこどもの日、ゴールデンウィーク真っ最中ですね。昼間は汗ばむほどの陽気ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
さて、伊丹十三記念館の開館月にあたる今月。グッズショップとカフェ・タンポポから皆さまへ、「限定」のお知らせをさせていただきます!
【グッズショップからのお知らせ】
開館7周年を記念して、グッズお買い上げのお客様にプレゼントをご用意いたしました。
1) 金榮堂ブックカバープレゼント!
伊丹十三がデザインした、小倉の書店・金榮堂のブックカバーです。金榮堂閉店後は「幻のブックカバー」になっていました。その復刻版ブックカバーを、5月1日~31日の期間中、対象商品をお買い上げのお客様にプレゼントいたします!
対象商品:伊丹十三記念館ガイドブック/映画『お葬式』シナリオつき絵コンテノート/伊丹万作エッセイ集※/伊丹十三の本/伊丹十三の映画/万作と草田男-「楽天」の絆
2) 『マルサの女2』缶バッジプレゼント!
映画『マルサの女2』(1988年)公開時にプロモーショングッズとして製作された缶バッジ(非売品)を、対象商品をお買い上げの方にプレゼントいたします。30個限定!なくなり次第終了させていただきます。
対象商品:DVD 13の顔を持つ男-伊丹十三の肖像/伊丹十三の映画
オンラインショップも対象です。この機会にぜひお買い求めくださいませ。
※伊丹万作エッセイ集はオンラインショップでの取り扱いはありません。
【カフェ・タンポポからのお知らせ】
さわやかな新緑の季節にぴったりのドリンク「豆乳イチゴ」を、期間を限定してご提供いたします。
豆乳とイチゴの果肉をミックスしたドリンクで、ミントの葉っぱをのせています。口当たりの良い、さっぱりした甘さのおすすめメニューです!
5月31日までですので、カフェ・タンポポにお立ち寄りの際はぜひご賞味くださいね。
スタッフ:山岡
2014.04.28 第6回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました
4月24日(木)、国際文化会館で第6回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました。
会場の庭園
庭園からは、"東京タワー"も見えました
受賞者のリリー・フランキーさんをはじめ、歴代受賞者・伊丹さんゆかりの方々・当財団の関係者のみなさま、あわせて約80名様にお集まりいただきました。
早速、贈呈式の模様をご報告いたします!
選考委員・周防正行さんの祝辞
普段、人前に出てもあんまりあがらなくなっちゃったんですけれど、「今日は絶対あがるだろう」という予感があったので、きちんと間違えないように書いてきました(場内笑い)。
映画『そして父になる』(13年/是枝裕和監督)を観たとき、さまざまな想いを抱きました。たとえば「生みの親より育ての親」といったような血のつながりについて。もちろん、他にもこの映画にはいろいろなテーマがありました。
ただ、そういったこの映画のテーマとは直接関係なさそうでいて――いや、そうでもなく、実はとても重要なことなのかもしれないんですけども――「今まで映画を観たあと、こんな感想を持ったことは無い」っていう想いがこみあげてきました。そのことに自分でも少し戸惑いました。
それはですね、「僕はこれから先、リリー・フランキーさんに出演をお願いできるような映画をつくることができるだろうか」そういう監督としての自分への問いかけです。なぜ唐突にこんなことを思ったのか。本当のところは、いまだによくわかっていません。要するに、僕が今までつくってきた映画を考えたときに、リリーさんに演じてもらえるような役はなかったし、これから先も、リリーさんに演じてもらえるような役を、映画を、僕はつくれないのではないか――。そんな想いです。
僕はこれから先、たとえば「ジョニー・デップに演じてほしい」という映画を企画をすることはまず無いと思います。ジョニー・デップが出ている映画を観た後で、そういうことを考えたこともありませんので、まぁ無いことでしょう。
でも、『そして父になる』を観たあと、「僕は、リリーさんに出演をお願いするような映画をつくれるのかな。」本当に素朴に、そういう風に考えました。
数多(あまた)いる素敵な役者さん全ての人たちと仕事をすることなど、もともとありえないことですから、リリーさんと仕事ができなくとも、それはそんなに嘆くことではないのかもしれないんですけど、ものすごく自分にがっかりするような気がしました。
それくらい、リリーさんの『そして父になる』という映画の中でのあり方、存在の仕方っていうのに、僕は感銘を受けたんだと思います。
僕が、それまで役者さんに求めていた「映画の中の存在感」といったようなもの、そういうあり方とは全く別のあり方で、リリーさんはあの映画の中にいた。そういう気がしました。
ですので、これから先、僕が「リリーさんに出演をして欲しい」と思える映画を企画することができたら、それは僕の映画の世界を少しでも押し広げることになるのではないかと。そんな風にも思いました。
リリーさんは、『そして父になる』で数々の賞を受賞されました。「当然そうなるだろう」と、映画を観た直後から思っていました。
それは、役者をなりわいとしている人が数多くの賞に輝いたことを以て、「これでようやく一流の役者としてみとめられた」とか、あるいは「性格俳優などという、わかるようでわからない類(たぐい)の、"うまい役者"になった」とか、そういった事情とはちょっと違う匂いを感じました。
うまく言えないんですけど、「役者としてどうなったか」ということではなくて、「リリー・フランキーがリリー・フランキーとして映画の世界で存在することを、ようやくみんなが称えたんだ」っていう、そういう感じだったのかもしれません。
誤解を恐れずに言うと、リリーさんは永遠に役者になれない。いや、なるべきではない。ずっとリリー・フランキーでいるべきだ。そういうことなのかもしれません。
今までの伊丹十三賞の受賞者のみなさんをちょっと思い返していただければわかると思うんですが、誰一人として既成の概念で識別できる職業を持っている人はいませんでした。みなそれぞれが、"コピー・ライター"であるとか、"テレビタレント"であるとか、そういった肩書に収まらずに、まさに「その人本人のお名前こそが職業である」としか言いようのない人たちです。
リリー・フランキーさんにふさわしい肩書きがあるとしたら、それは"リリー・フランキー"っていうことなんだと思います。
僕の中で、リリー・フランキーさんに伊丹十三賞を受賞していただきたいと思った一番の理由がそれでした。
最後に、もし僕がリリーさんに出演して欲しいという映画をつくることになったら、その時はぜひ出演を快諾していただけたら......(場内笑い)。なぜなら、リリーさんに代わりはいないので、出演を断られた時点で映画の企画がなくなってしまうので(場内笑い)。
5月にですね、ある人が言ったそうです。
――あなたの好きなことをしなさい。でも、これからが大変なのだ――
リリーさんには、ずっと大変でいて欲しいと思ってます。
(一呼吸おいて、引き続き周防さんが言葉を続けられます)
――ここまでが、一応祝辞(場内笑い)。
実際にリリーさんを前にしたら、「こういう祝辞は違うのではないか」って思うんじゃないかと思っていたんですけど、実際控室でご本人にお会いして、「あ、やっぱりこの祝辞じゃなかったんだ」って(場内笑い)。他の祝辞を用意していなかったので、読ませていただきましたが......。
僕の中の信じることの一つが、「名物とベストセラーにうまいものはない」。
というわけで、実は『東京タワー』 ※1 も読んでいなかったんですね。伊丹十三賞の選考会の時も、『東京タワー』は読んでなかったんですけど、他にお書きになったエッセイは目にしてるし、もちろん出ている映画もたくさん観てますし、何よりも『そして父になる』という映画があったので、「それほどたいしたことではないだろう」と思って選考会に臨んで、リリーさんに受賞していただくことになったんですけど。さすがに、祝辞を述べる役まで仰せつかっておいて、リリーさんの小説家としての代表作である『東京タワー』を読んでいないのはまずいんじゃないかと思って、読みました。
――うまいものがあった!と(場内笑い)。それは......ありがとうございました(場内笑い)。
ひとつこれからは、「名物とベストセラーにうまいものもある」に、ちょっと考え方を改めようかなと。
とにかく、伊丹十三賞を受賞していただいて、本当にありがとうございました。
これからも、「え!こんなことをするんだ」という驚きに満ちあふれた仕事をしてください。
ありがとうございました。
(場内拍手)
※1 リリー・フランキーさんのご著書『東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン~』(05年/扶桑社)。2006年には本屋大賞を受賞し、220万部を超えるベストセラーとなりました。
選考委員・平松洋子さんより正賞(盾)の贈呈
こちらが正賞(盾)です
宮本館長より副賞(100万円)の贈呈
受賞者スピーチ
......本当に現ナマで100万円を渡されて、今、動揺しております(場内笑い)。
最近、賞をいただくことが何度かありまして、いつもすごく恐縮をしておりましたけど、今回、恐縮を通り越して本当に嬉しいです。
周防監督にあんなに褒めてもらえるなんて思ってもみませんでしたし、『変態家族 兄貴の嫁さん』(84年/周防監督デビュー作)の時からビデオでずっと持ってた(場内笑い)、それくらい好きな監督にそんなことを......(場内笑い)。
今日、本当にこんなに褒められると思って来ていなかったので、ちょっと戸惑っておりますけれども。
(自分は)何をしていいのか、たぶんわからなかったんでしょうけど、さまざまな表現――中途半端に過ごしてきている中で、ずっと幅広く精度の高いものを作り続けてきた伊丹十三さんのことが、いつもどこか憧れというか、気持ちの中に有り続けていて。
時々、俳優さんでもミュージシャンの人でも、カメラマンの人でも、僕がそういうことをすると、「あなたは専業じゃないじゃないですか」という風にお叱りを受けることがあるんですけども、でも僕の中にはなにかそういう「伊丹十三的な世界で物をつくりたい」というものがずっとありまして。
この賞をいただいたことで近づけたとは思いませんけれども、自分がずっとコンプレックスに思っていたこととか、「ああ在りたい」「こういう風に物をつくっていきたい」ということが、認めてもらえるようなことだと思っていなかったので、こういう素晴らしい賞を本当に尊敬する選考委員の方々にいただきまして、生まれて初めて褒めてもらって素直に「うれしいな」と思ったような、そんな気分がしています。
欲を言えば、森本千絵よりも先にもらいたかった(場内笑い)。 ※2
......本当にありがとうございました(場内笑い・拍手)。
※2 リリーさんと第4回伊丹十三賞受賞者の森本千絵さんは、武蔵野美術大学の先輩・後輩のご関係でいらっしゃいます。今年の3月には、森本さんのラジオ番組にリリーさんがゲスト出演なさったところでした。贈呈式当日、森本さんは式典前の会場にお祝いに駆けつけてくださいましたが、所用のため贈呈式には出席なさっていません。
宮本館長あいさつ
今日は、お忙しいところいらしていただきまして、ありがとうございます。
それから、リリーさん!本当におめでとうございました。
伊丹さんは、よくね、「僕みたいな人間は、世の中の真ん中にいるような、そういう資質を持ってない"ひねくれもの"だ」と。リリーさんが"ひねくれもの"って言ってるんじゃないんですよ(場内笑い)!ちょっと変わっててね。それで、そういう(世の中の真ん中にいるような)人間じゃないのに、映画を通して自分を知らせてたっていうか――。
リリーさんが書いたものとか、絵本とか、いろいろ拝見して、「リリーさんは"リリー・フランキー"だ」と。周防監督が仰ったけど、「あ、そうなんだ。伊丹十三は"伊丹十三"なんだ!」と、その時に思いまして――。
そして、自由さというか、広がりがどこまでいくかわからない、そういうものをリリーさんがたくさん持っていらっしゃるっていうことを、本当に心から尊敬しています。これからも、ますます自由に......『笑っていいとも!』 ※3 でびっくりしたんですけど(場内笑い)、そういうことも自由で、とても面白かったです(場内笑い)。
どうぞ、よいお仕事を楽しくなさってください。ありがとうございました!
※3 フジテレビ系バラエティ番組。12年10月放送の「テレフォンショッキング」コーナーに、リリーさんが等身大ドールと共に出演し、話題になりました。
このあと、宮本館長による
「第6回伊丹十三賞!リリーさん、本当におめでとうございます!乾杯!!」
の音頭とともに、祝賀パーティーがスタートいたしました――
・・・・・・
――これ以上何も申し上げなくても、周防さん、リリーさん、宮本館長、それぞれのお言葉から当日のなごやかな雰囲気はお分かりいただけることと思いますが......あと少しだけ、スタッフ・淺野の感想込みのレポートにおつきあいください。
リリーさんを最大の賛辞で称えた周防監督のご祝辞は、リリーさんのご著書である『東京タワー』からの引用、
"五月にある人は言った。
あなたの好きなことをしなさい。でも、これからが大変なのだと、言った"
の言葉で結ばれていて、会場全体があたたかな空気につつまれたようでした。
さらに、「名物とベストセラーに、うまいものもある」との周防監督らしい名言が続き、笑いと拍手が自然に湧き起こります。少しずつ会場があたたまっていく様子は、言葉では言い表せない感動がありました。
さぁ、リリーさんはどんなスピーチを......!とワクワクしておりましたら、真摯なお言葉の合間に、リリーさんらしい「笑い」がちりばめられていて(私のつたない書き起こし文では、リリーさん独特の「間」がみなさまに伝わっておりますかどうか心配なのですが......)、本当に素敵なスピーチでした。
そして、宮本館長も周防さんとリリーさんのお言葉を大切に受け取りながら、最後はしっかり「笑い」で結び、さすが館長だなぁ!と。
乾杯の音頭(館長の力強い発声は、聞き惚れてしまいます)までには、すっかりなごやかな雰囲気が出来あがっていて、祝賀パーティーお開きまでの時間は、あっという間に感じられました――。
【パーティーお開き間際の宮本館長とリリーさん】
お二人の表情がすべてを物語っていますよね!
リリーさん、ご出席くださった全てのみなさま、誠にありがとうございました。
厚く御礼申し上げます。
これからも、伊丹十三賞をどうぞよろしくお願いいたします!
スタッフ:淺野
2014.04.21 サラダ名言集
元気な野菜がお店に並ぶ季節になりました。みずみずしくぷりぷりしたお野菜が「アタシ、おいしいのよ!」と語りかけてきます。
「サラダをモリモリ食べちゃうぞ~」とレタスをむしっていると、まぁ、もう、あっちからもこっちからも虫が......虫にとってもおいしいってことですね。
伊丹十三のお料理エッセイというと、スパゲッティの茹で方(アルデンテ)・食べ方、当時の日本ではまだ珍しかった外国の料理や食品を紹介したもの、料理人の技と知識に取材したもの、などが有名どころかと思いますが、今も昔も食卓の一軍レギュラー、サラダについて綴ったものも名文です。
サラダというものは、第一に野趣のあるものでなくてはならない。日を一杯に浴びて育った野菜を、今畑からとってきたという感じでばりばり食べる。これがサラダの根本精神である。日本のサラダにはこの根本精神が欠けている。サラダから、太陽や、野や畑や土が少しも感じられぬ。(中略)あの、白っぽい人造レタスに、罐詰のアスパラガスなんかつけて、しかもこれに瓶詰のマヨネーズをかけた、なんて、こんなものをサラダと思ってもらっては困るんだよ、ほんとに。
「西洋料理店における野菜サラダを排す」『女たちよ!』(1968年)
右:文藝春秋の初版本
左:今でも書店でご入手いただける復刻版・新潮文庫
「サラダなんて特別な料理ではないけれど、誰もが日常的に食べるものだからこそ、誤った認識でいてはいけないのだ!」という気魄を感じますねぇ。
野趣こそサラダの根本精神。というわけで、イキのよい野菜が手に入ったら、ありがたく、可及的速やかに、サラダにしていただくべし。
さて、レタスその他、丁寧に洗ってよーく水を切って、あるものは火を通し、千切って刻んだら......
......問題はここから、ここからが問題なのです。
瓶入りのサラダ・ドレッシングというものがある。
ギクリ...
フランス人が聞いたらきっと腹を立てるだろう。
ですよね...
サラダを作るにあたって、ドレッシングを自分で作らないとするなら、その人のすることはなにもないではないか。そこまで無精になってしまってよいものか?
うッ...
ドレッシングなんていうのはね、あなた、私にいわせれば料理人の個性そのものだと思うよ。
ハイ...
既製品のドレッシングを使う人は、人間も既製品ということだ。
すすすすみません!!
「ベスト・ドレッシング」『女たちよ!』(1968年)
――「人間も既製品」。なんて厳しいひとこと! でも当たってるなぁ、言われちゃったなぁ......
これを読んだ日から、瓶入りのドレッシングを買うのをやめた人、やめないまでも考えるようになった人、あるいは、買うんだけど罪悪感を抱くようになった人は少なくないと想像いたします。これら全部の混合型で、弱い自分に勝ったり負けたりの人もいるかもしれません(私です)。
まぁ、手作りドレッシングと言ったって、そんなに手の込んだものではありません。
・ドレッシングはサラダ・ボウルの中で先に作る(「かける」のではなく「和える」ということです)
・にんにくをボウルの中で潰す、酸味はレモンを主体にしてお酢はちょっときかせる程度
・黒胡椒はミルで挽く
・マスタードと砂糖をちょっぴり。
『女たちよ!』に書かれているポイントはこれだけです。お砂糖はかなり重要ですよ。あとはオリーブ油とお塩ですね。ハーブは具に合わせてお好みで。
伊丹さんにしてみれば、「こーんな簡単なことで、うんと美味しいサラダが食べられるのか!」と知ったときの嬉しさを、みんなに伝えたかったのでしょう。
伊丹さんのレモン搾り。
ドレッシング作りにも使われたかな~?
でもねぇ......近年、瓶入りのドレッシングもだいぶおいしくなりましたものねぇ......カロリー控えめなのもいろいろありますしねぇ......洗い物も減らせますしねぇ......乳化させた油を洗い流すのってけっこう面倒なんですよねぇ......あ、言い訳で「面倒」なんて言うから、私はいつまでたっても「既製品人間」なんだわ......やっぱり手作りで......うーん。
レモン搾りなどの調理器具、食器......
愛用品たくさんの常設展「料理通」コーナー
この界隈のスーパーをご利用のみなさん、ドレッシングの棚をジットリと見つめて悩んだ末、一本引っ掴んでカゴに入れ、コソコソとレジに急ぐ私の姿を見かけても、伊丹さんにはナイショにしといてくださいね。
学芸員:中野
2014.04.14 無料開館と宮本館長の出勤
記念館便りをご覧のみなさまこんにちは。 4月になると記念館は忙しくなります。
5月15日の開館記念日の前後のイベントや、伊丹十三賞の贈呈式の準備などでスタッフはみなフル回転です。あわただしい日が続いています。
さてそんな中、ひとまず二つのイベントが執り行われました。
まず一つ目は今年で三度目の開催となる、「無料開館」です!
一度目は2012年4月に開館五周年のイベントの一つとして実施しました。今年で三度目です。今年も多くのお客様にご来館頂き、とても良い具合に一日賑わいました。
「ちょっと気になってはいるけど...」という方は地元では結構多い様子で、この無料開館がご来館のひとつのきっかけとなったようで、とても嬉しい限りです。
無料開館の翌日、二つ目の大きなイベントがありました。 宮本信子館長の館への出勤です。
今回も忙しいスケジュールをぬっての出勤となり、一日だけではありましたが多くのお客様がご来館下さいました。
平日ではありましたが、春休みだったため、小学生・中学生の若い世代のお客様も多くいらっしゃいました。
以前は若い人ほど(というかお子様ほど)、「宮本信子館長出勤しています!」と受付でお話しても、「?」という感じでご存知ない方もいらっしゃいましたが、昨年大人気だった「あまちゃん」効果でしょうね、館長をひと目見ただけで「きゃっ!!」と大はしゃぎのご様子の若い方をたくさんお見かけしました。
ちなみにこのお写真のお子様たち全員のコメントを4月18日(金)更新「みなさまの声」に掲載します。そちらもぜひご覧下さい。
次回の出勤の日程は未定ですが、決まり次第HPで告知させて頂きますのでお楽しみに!
最後になりましたが、5月に7周年を迎える伊丹十三記念館をどうぞ宜しくお願いいたします。
スタッフ川又
2014.04.07 春!
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。赤や黄色、ピンクや紫など、色とりどりの花が咲き誇る、色彩豊かな季節となりました。新しい環境で4月を迎える方も多いと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。
【記念館中庭のタンポポです】
ここ記念館の中庭の桂も先月終わりから芽吹き始め、日に日に葉っぱが大きくなってきています。ところどころタンポポも咲き始めました。
タンポポといえば記念館ではおなじみの花ですが、本日はそのタンポポを用いた、春らしいグッズをご紹介しますね。
まずは一筆箋です。映画『タンポポ』で登場したタンポポの絵が3つ並んでいて、シンプルでおしゃれな一筆箋としてご好評いただいております!厚手で質のよい「アラベール」という紙を使用しており、二つ折りにしてカードのようにもご利用いただけるんですよ。インクの乗りもよく、罫線があるものとないもの、2タイプご用意しています。
また、同じく「アラベール」で作った封筒もございます。
【一筆箋:罫線あり・なし2タイプあります】
ゴム印にもタンポポ柄がございます。SサイズとMサイズがあり、ちょっとした手紙やメモに可愛らしいアクセントを付けられます。また、封筒のとじ目に押して、ちょっと変わった封緘(ふうかん)としてお使いいただくのもおすすめです!
【ゴム印:SサイズとMサイズ】
【封筒のとじ目に押してみました】
この季節におすすめのグッズをご紹介してみました。ぜひ試してみてくださいね。
スタッフ:山岡
2014.03.31 第6回伊丹十三賞 受賞者決定!
春到来、今年もまた「伊丹十三賞」受賞者発表の季節がやってまいりました。
伊丹十三賞の授賞対象は、伊丹さんが才能を発揮した分野 ― エッセイ・ノンフィクション ・翻訳・編集・料理・映画・テレビ番組・CM・俳優・イラストレーション・デザインなど ― と多岐にわたりますが、これらの分野において、
1. びっくりした
2. おもしろい
3. 誰にでも分かる
そんなお仕事をなさっている方にお贈りするのが特徴です。
※詳しくはこちらを御覧ください↓
宮本信子館長 Official Site「タンポポだより」
弊館ホームページ「伊丹十三賞概要」
そして! 第6回目となります今回の受賞者は、イラストレーター・作家・俳優などとしてご活躍の、リリー・フランキーさんに決定いたしました!
(C)HIROSHI NOMURA
まさしく、「びっくりした」「おもしろい」「誰にでも分かる」お仕事をなさっていて、唯一無二の存在感がおありですよね(リリー・フランキーさんのお仕事は、公式WEBサイトで紹介されています)。2013年は、映画『凶悪』『そして父になる』での俳優としてのご活躍が印象的でした。
そんなリリー・フランキーさんの、「イラストレーター、作家、俳優など、さまざまなジャンルでリリー・フランキーという存在を確立し、自身をひとつの表現媒体にした独自の才能にたいして」、第6回伊丹十三賞をお贈りさせていただくこととなりました。
贈呈式は、4月に東京都内で開催いたします。当日の様子は、後日あらためて「記念館便り」でご報告させていただきますので、皆さまどうぞお楽しみに。
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【記念館からのお知らせ】
● 4月6日(日)無料開館
5月の開館記念日に先立ちまして、本年は、4月の第1週目の日曜日を無料開館日といたします。多くの皆さまに記念館を楽しんでいただきたいと思っておりますので、お誘い合わせの上、お越しくださいませ。
※駐車スペースに限りがございますので、館内および駐車場の状況により入館を制限 させていただく場合がございます。公共交通機関をご利用の上、お越しください。
● 4月7日(月)宮本館長出勤
13時頃~16時頃、宮本館長が出勤いたします。スタッフ一同、皆さまのお越しをお待ちしております。
※当日の状況により、滞在時間は変更になることがございます。
スタッフ:淺野
2014.03.24 「十三」万人ありがとう
賃貸集合住宅暮らしが長いせいか、他人様のお家の庭木で季節を楽しむ習慣がついてしまいました。通勤の道々、あるいはお買い物への道すがら、あちらのお家ではツバキを、こちらのお家ではコブシを、そちらのお家ではスイセンを、などなど、通りがかりにチョイと拝見することで、春を感じているという具合です。
記念館の近くには道路に面してアーモンドを植えているお家があって、これがすばらしい。「梅は咲いたが桜はまだかいな」という絶妙のタイミングで開花するので、「いよいよ春が来ますよ」と知らせてくれる、ちょっと嬉しいお花です。今年もまた、可憐で健やかな可愛い花が咲いたのを通るたびに見てはニンマリしつつ、このお家の方に心の中で「ありがとうございます」と合掌しています。
アーモンドの花。バラ科サクラ属だけあって、サクラと似てます。
大きさはソメイヨシノの3倍ぐらいでしょうか。
あれ......でも......この前ここのお家のアーモンドの花を見て「春だねぇ」と思ったのは、つい数日前のことだったような......一年前? 数日前? 一年前は数日前!?
と、月日の過ぎるスピードのあまりの速さに呆気に取られ、キツネにつままれたような気分で3月下旬を過しております。皆様はいかがおすごしでしょうか?
2007年5月15日に記念館がオープンして、これもまたあっという間の6年10ヵ月でございましたが、2014年3月22日、開館以来の入館者数が13万人を突破いたしました!
13万人......十三万人......「十三」......そう、これは当館にとって特別な記録なのです!!
"あと100人"を切ってから「十三」万人達成までの記念品として、
ご来館のお客様に当館名物の十三饅頭をお贈りいたしました。
「特別」とはいえ(2000本安打や200勝を達成した野球選手のように)「節目ですから」というクールな感想を持つのだろうと想像していましたが、いやぁ、嬉しいものですね。
そして、これまでの開館日をずーっとさかのぼって行って、ご来館くださったお客様ひとりひとりの手を握って「ありがとうございます!ありがとうございます!!」とお礼申しあげたいほど、感謝の思いでいっぱいです。
十三万人目のお客様は、東京からお越しくださった若いご夫婦でした。なんとなんと、新婚旅行だそうで、「おめでとうございます!」と申しあげましたら、「いえいえ、みなさんもおめでとうございます」とおっしゃってくださって、お互いエヘヘとなっちゃいました。
ご感想のご記入用紙に描き添えてくださった
あたたかいイラスト&コメントです。キュン!
おふたりからの素敵でそして光栄なコメントと
館長の喜びの声を特設ページでぜひご覧ください。
これまでご来館くださったすべてのお客様、お力添えくださった方々に厚くお礼申しあげます。
伊丹さんのお家に遊びに来たみたいに、くつろいだ心愉しいひとときをご提供できる記念館でありつづけられるよう、この喜びを今後への糧として、スタッフ一同精進してまいります。末永く、どうぞよろしくお願い申しあげます。
よそ様のお庭を気にしているうちに
記念館の桂もだいぶ芽吹いていました......!!
学芸員:中野
2014.03.17 サンドイッチ
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
いまだ寒さの名残が感じられる今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
少し前の話になりますが、小学校低学年くらいのお孫さんを連れた男性(伊丹さんのエッセイの大ファンだそうです)が記念館にお越しになり、「伊丹さんのエッセイにサンドイッチの話があるでしょう。読むと無性にサンドイッチを作って食べたくなるんですよ。それもあって、よく孫とサンドイッチを作って、天気がよければそれを持ってピクニックに行くんです」と話してくださいました。
大きく口を開けないと食べられないくらいの大きなサンドイッチを作るのだとか。お孫さんはおじいちゃんのサンドイッチが大好きなのだそうです。
お客様が仰っていたエッセイは、おなじみ『女たちよ!』でございます。サンドイッチについて書かれた話の、一部を引用してご紹介しますね。
いろんな料理に、飽き飽きして、なにを食べていいかわからない、という時にダッグウッド・サンドウィッチはまさに好適のものであります。
サラダ菜、胡瓜、トマト、ロース・ハム、やわらかく作ったスクランブルド・エッグ、オイル・サーディン、バター、ジャム、マヨネーズ、マスタード、こういうものを食卓の上に賑ぎにぎしく取り揃えて、片っ端からパンにはさんで食べる。少くとも厚さ四、五センチのサンドウィッチを作って、行儀にかまわず食べる。これがダッグウッド・サンドウィッチの神髄であります。...(以下略)(『女たちよ!』-ダッグウッドの悦び)
【お客様の仰るとおり、「読むと食べたくなる」お話です】
お客様からお話をうかがったのは寒い寒い1月でした。あれから2ヶ月が経ち、巷では少しずつ春を感じられるようになってきました。
お話をしてくださったお客様も、もうお孫さんを連れてピクニックに行かれているかもしれませんね。
さて、ここ記念館でも花がほころび始めておりますが...
【記念館入口横のユキヤナギ】
【記念館入り口横のトサミズキ】
そんな春の訪れと共に、館長・宮本信子が出勤いたします!
◇◇出勤日時◇◇
4月7日(月)13時~16時頃まで
※当日の状況により、滞在時間は変更になることがありますのでご了承ください。
限られた時間ではございますが、皆さまお誘い合わせのうえ、ぜひ記念館にお越しください。
スタッフ一同心よりお待ちしております。
スタッフ:山岡
2014.03.10 「ニュース」欄をお見逃しなく
2月23日(日)・24日(月)、記念館に宮本館長が出勤し、両日とも多くのお客さまで賑わいました。ご来館くださった皆さまに、心より御礼申し上げます。
【ほんの一部ですが、館長出勤時の様子です】
館長出勤情報も含め、記念館から皆さまにお知らせしたい最新情報は、記念館HPの「ニュース」欄に掲載しています。
「宮本館長が出勤すると聞いたんだけど......」ですとか、「イベントが開催されると聞いたんだけど......」といったお問い合わせのお電話をいただいた際には、お電話口で直接お答えするのと同時に、「よろしければ記念館HPの『ニュース』欄もご覧くださいね」とお伝えしております。と言いますのも、「ニュース」欄には、随時「記念館からお伝えしたい最新情報」を掲載しておりますので、是非ご覧いただきたいんです。
【記念館HP】
赤丸の部分が「ニュース」欄です
「記念館便り」でもお客さまに向けた情報を発信しておりますが、月曜ごとにエントリーが増えていきますから、「あれ?この間のイベント情報は、何月何日の記念館便りに掲載されていたかな......?」ということにもなりますよね。
その点、「ニュース」欄の情報は「パッと見てすぐわかる」。最新情報をすばやくご確認いただくのには、最適です。
ちなみに、3月10日(月)現在のニュース欄には――
・入館者数「十三」万人記念イベント
伊丹十三の名前にちなんだ記録を記念した、「十三饅頭プレゼント」のお知らせ
・開館7周年記念イベント
恒例の「4月6日(日)無料開館」と「収蔵庫ツアー」のお知らせ
耳より情報が盛りだくさん、皆さまご存知でしたでしょうか......?
先日の宮本館長出勤に合わせてご来館くださったお客さまの中にも、この「ニュース」欄をチェックしてお越しくださっていた方がいらっしゃいました。
皆さま、「記念館便り」とあわせて「ニュース」欄もお見逃しなくご活用くださいませ。
スタッフ:淺野
2014.03.03 伊丹さんの砥部焼
さて、前回からの続きです。
1994(平成6)年8月、伊丹十三は愛媛県久万高原町にある町立久万美術館を訪ねました。
父・万作が1927(昭和2)年に描いた『櫻狩り』という絵を見るためです。
1989(平成元)年に開館した久万美術館の所蔵品は、井部栄治(よしはる)氏のすばらしいコレクションが中心となっているのですが、この『櫻狩り』は、伊丹万作の松山中学時代からの友人だった宮内一乗氏が、万作から贈られて以来、ずっと大切になさっていた作品です。
若 き日に松山で開業したおでん屋「瓢太郎」に失敗して無一文になった万作が、家に迎えてくれるなどして親身に支えてくれた宮内さんへのお礼に描いたものだそ うで、宮内さんが1991(平成3)年に亡くなられた後、久万美術館が寄贈を受け、多くの人々に愛される作品になっています。
宮内さんがごくプライベートな宝物として居室に飾り続けていたこともあり、久万美術館に収蔵されていることを伊丹プロダクション社長の玉置泰氏から聞かされるまで、伊丹十三もこの絵の存在を知りませんでした。
伊丹十三は一家で愛媛へ来て初対面を果たすと、じーっと見入り、そして、父・万作らしいユーモアあふれる表現を大変に喜んだそうです。
ところで......この時、伊丹さんが密かに目に留めたものがありました。
出されたお茶の入った、白い湯呑茶碗。上の写真で、テーブルの奥側に寄せられたお茶碗です。砥部焼春秋窯の工藤省治氏の作と知り、伊丹さんは砥部町に工藤さんを訪ねて湯呑茶碗や飯碗や小鉢を注文。
久万美術館で伊丹さんを迎えた松岡義太元館長は後日それを知って、開館時に松岡さんが強い思いを持って「これ」と決めた来客用のお茶碗の美しさに、伊丹十三も心を動かしたことを嬉しくお思いになられたそうです。
慌ただしい旅の最中でも出会いのセンサーを働かせ、ひとたび出会ったらチャンスを逃さない、実に伊丹十三らしいエピソードです。この時手に入れた伊丹さんお気に入りの湯呑茶碗は、現在開催中の『旅の時代』展でご覧いただけます。
そしてビッグニュース!
なんと、この絶好のタイミングで工藤省治さんの作陶の軌跡をたどる展覧会『現代砥部焼の原点 工藤省治の仕事と昭和のデザインプロジェクト』が3月15日(土)~30日(日)、愛媛県美術館で開催されます。
55年にわたる工藤さんのお仕事をめぐる展示もまた、「旅」のようなすばらしい体験を与えてくれるに違いありません。お楽しみに。そしてお見逃しなく。
2014.02.24 記念館の建物
「車に乗っていたら黒いハコ型の建物が見えたから、何かな~と思って寄ってみたんですよ」
つい先日、ドライブ中にお立ち寄りくださったご夫婦のお言葉です。
ここ伊丹十三記念館は、たくさんの人が行き交う「国道33号線」沿いにあります(周辺地図はコチラをご覧下さい)。その道すがら、冒頭のご夫婦のようにふと記念館に目をとめ「あの黒い建物はなんだろう?」と思って記念館に立ち寄って下さる方は、決して少なくありません。
そんなお客様から「こんな素敵な場所があったんですね」「建物につられて寄ったけど、来て良かった」などとお言葉を頂戴することもしばしば。建物が与えてくれる嬉しいご縁です。
そして、そんなステキな建物は、実はこんなところにも表されているんです。
下の二つの写真は、当館のショップで販売しているお土産人気ナンバーワンの「十三饅頭」と、安産と子育ての縁起物として、産前産後の贈り物に最適な「張り子の犬」です。
【十三饅頭。甘さ控えめのこし餡で、上品な味わい。「十三」のロゴが入っています。】
【張り子の犬。パッケージのイラストも伊丹さんが描いたものです】
それぞれのパッケージを見て「あれ?」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そうです、どちらも、記念館の建物を模したパッケージになっています。
くり抜いた部分は中庭、黒い部分は記念館の外壁に使われている焼き杉板をイメージしているんです。
そして、次の写真はカフェ・タンポポで召し上がっていただけるチョコレートケーキです。フランス製のチョコレートを使用し、真ん中にはミントの葉っぱを乗せています。
いかがでしょうか。まさに記念館!ですよね。
【カフェ・タンポポのチョコレートケーキ。目でも舌でも楽しめます!】
建物がパッケージやケーキで表せてしまうとは!
最初に知ったときは非常に驚き、それ以上に愉しい気分になりました。
このユーモア、遊び、そしてこだわり。「伊丹十三」記念館ならではだと思います。
そんな伊丹十三記念館に、お近くにお越しの際はぜひ立ち寄ってみてくださいね。
【記念館入口横のユキヤナギ。つい先日、白い花をつけました。
小さな春の訪れです】
スタッフ:山岡
2014.02.17 祝日の過ごし方
月曜日に記念館にお越しくださったお客様から、「月曜日だから休館日かなと思ったんだけど、開館していてよかった!」とお声をかけていただくことがあります。
そうなんです。ミュージアムは月曜休館のところが多いのですが、当館は火曜日を休館日としておりまして、月曜日は開館しております(保守点検日や年末年始は除きます)。
月曜日と言えば、仕事や学校がお休みになることも多いですよね。
国民の祝日の一部を月曜日に移動させた「ハッピーマンデー制度」がスタートしてから10年以上経ちましたし、学生のみなさまは、月曜日が学校行事の振替休日になることもありますよね。
そんな「お休みの月曜日」には、記念館にいらっしゃいませんか?
「連休明けは仕事が山積みだから、連休最終日に出かけるなら人ごみに巻き込まれずにゆっくりできるところがいい」という声を聞いたことがあります。自分のペースで静かに過ごせるミュージアムは、祝日や振替休日の月曜日に訪れるのに、ちょうど良いかもしれませんよ。
さらに、2014年は火曜日の祝日が多いんです。
2月11日 建国記念の日
4月29日 昭和の日
9月23日 秋分の日
12月23日 天皇誕生日
計4日もあります。ハッピーマンデー(成人の日・海の日・敬老の日・体育の日の計4日)と同じ回数ですね。
火曜祝日だと飛石連休になってしまって損した気分......という声も聞こえてきそうですが、平日の間の小休止、こちらもまたミュージアムを訪れるのにはお勧めです。
火曜日を休館日に設定している当館も、祝日の場合は開館しておりますのでご安心ください(その場合、翌水曜日を振替休館日としておりますので、お気をつけくださいませ)。
※記念館の詳しい開館スケジュールは、ホームページトップの開館カレンダーでご確認いただけます。
昨年12月にスタートした企画展は、旅をテーマにしています。記念館にいながら旅する気分を味わえますから、翌日に仕事や学校が控えているお休みの月曜日や飛石連休の火曜日に、気分転換としていかがでしょうか。
記念館前の土手には、もう菜の花が咲いています。
春にかけてしばらく楽しめますので、ご来館の折にはぜひご覧ください。
皆様のお越しをお待ちしております。
スタッフ:淺野
2014.02.10 オリンピックイヤーと伊丹映画
ソチオリンピックが始まりました。「ちょっとがんばって起きたままでいれば見られる」という程度の時差のおかげで、連日寝不足の方も多いかと思います。
話がそれてしまいましたが、オリンピックというのは、大会そのもの、競技そのものだけでなく、ごく私的なことや世相とセットになって記憶にしまわれるもののようです。映画にもそういうところがありますね。
それでフと気になったものですから、オリンピックイヤーの伊丹十三監督作品について書き出してみました。
サラエヴォ五輪・ロサンゼルス五輪と"同い年"!
1984年
<五輪>
第14回冬季五輪 サラエヴォ(ユーゴスラビア)
第23回夏季五輪 ロサンゼルス(アメリカ)
<伊丹映画>
『お葬式』で監督デビュー。8月湯布院映画祭出品、11月公開。
1988年
<五輪>
第15回冬季五輪 カルガリー(カナダ)
第24回夏季五輪 ソウル(韓国)
<伊丹映画>
1月『マルサの女2』公開。
2月『マルサの女』日本アカデミー賞最優秀作品賞・監督賞・脚本賞など受賞。
1992年
<五輪>
第16回冬季五輪 アルベールヴィル(フランス)
第25回夏季五輪 バルセロナ(スペイン)
<伊丹映画>
5月『ミンボーの女』公開。
1994年
<五輪>
第17回冬季五輪 リレハンメル(ノルウェー)
1996年
<五輪>
第26回夏季五輪 アトランタ(アメリカ)
<伊丹映画>
6月『スーパーの女』公開。
近代オリンピックは1984年のロサンゼルス大会から商業主義に大きく舵を切って、スポンサー料など莫大なお金の動くショービジネスになった、と言われています。
報道を通して正体不明の愛国心やグローバリズムを目くらまし的に植えつけられているような気持ちになったりするのも、この商業化・大規模化の延長にあることのような気がします。
そのようなオリンピックの激変の年に監督デビューして、エンタテインメント性で多くの観客を惹きつけながら、日本人論をテーマとする映画を作り続けたことに、あらためて伊丹十三の功績を思い、「うーむ」と唸らずにはいられません。
(実際のところの伊丹さんは...たとえば1984年、サラエヴォ大会期間中は『お葬式』の準備稿台本を刷って制作資金集めに奔走していた頃で、ロサンゼルス大会期間には『お葬式』の編集作業を終えて録音・ダビングにかかりきりだったので、オリンピックに目をくれる暇もなかっただろうとは思うのですが...)
ところで、リレハンメル大会が開催された1994年は、『大病人』と『静かな生活』の間の年で、監督作品を発表していません。が、1989年にロサンゼルスに設立したITAMI FILMSを拠点にハリウッドでの映画作りの準備中だったため(残念ながら実現にはいたりませんでしたが)、なかなかに忙しかったようです。
そうした中、伊丹さんはある目的のために愛媛を訪れていました。その時に手に入れた砥部焼を企画展に展示しています。
それでは、寒さと睡眠不足でお風邪など召されませんよう、どなた様もくれぐれもご自愛ください。
2014.02.03 大豆
本日2月3日は節分です。
2週間くらい前からでしょうか、スーパーへ行くと節分コーナーが設けられていて、炒り大豆や鬼の面がたくさん並べられています。おいしそうな恵方巻が載っているチラシもよく見ますよね。
このような行事がある時、面白いなぁと思うのが、それぞれのご家庭や地域で色々なやり方があることです。
我が家の節分では、恵方を向いて無言で恵方巻にかぶりついて、「鬼は外、福は内」と言いながら豆を撒いて、年の数だけ豆を食べます(ただこの「年の数だけ豆を食べる」は、数年前に還暦を迎えた両親にはキツイらしく、毎年早々にギブアップしてしまいます。私は自分の年齢の数をはるかに超えた豆を、ただひたすらぽりぽりと食べ続けます...)。
ご家庭や地域によっては、落花生やお菓子を撒いたり、掛け声が「鬼は内、福は内」であったりするそうですね。けんちん汁や節分そばを食べる場合もあるのだとか。
皆さまのご家庭ではいかがでしょうか。
【撒いたあとの残りはおいしくいただきます】
さて大豆といえば、様々な食品に加工されて、食卓には欠かせない食材ですよね。
納豆、豆腐、きな粉、ゆば、おから、味噌、醤油...等々。考えてみると、大豆食品って本当にたくさんあるのですね!今更ですがびっくりしてしまいます。
その中の一つ、豆乳。ご存知の方も多いと思いますが、良質なタンパク質や脂質を含んでカロリーが低く、悪玉コレステロールを下げる効果もあるそうですね。
巷では豆乳を使ったレシピが数多くありますが、記念館のカフェ・タンポポでも、この豆乳を使った飲み物をご用意しております。
特にホットの豆乳メニューは、寒くなるとじわじわとオーダー数を伸ばしてくる、冬のおすすめメニューでございます。
【写真は豆乳コーヒーです。豆乳紅茶もございます。
豆乳コーヒーはカフェオレ風に、豆乳紅茶はチャイ風になります】
【ソイジンジャー。手作りのオリジナルしょうがシロップを使っています】
お好みのメニューはどれでしょうか。
カフェ・タンポポにお立ち寄りの際には、ぜひオーダーしてみてくださいね。
スタッフ:山岡
2014.01.27 辞書
エッセイ集『再び女たちよ!』(伊丹十三著)の中に、「辞書」という一遍があります。
"(前略)「ゆるす」という字の中では「赦す」という字が一番慈悲深いように思えるし、「飲む」「食う」という字からは格別の印象を受けないのに「呑む」「啖う」などには鮮やかなイメージを感じるのである。
(中略)
知識をひけらかそうというんじゃ毛頭ない。その漢字の持つイメージに対する愛着が、その字を使わせてしまうのです。
だから私は、たとえば「沈む」のほかに「淪む」「湎む」を使った。「赤い」のほかに「朱い」「紅い」「赫い」「丹い」「赭い」「緋い」を使った。(後略)"
伊丹さんの、漢字への深い愛情が窺えますね。同じエッセイの中で、漢字に凝っていた高校時代の話として、
"漢文の授業は、漢字と、その惹きおこすイメージの無限の宝庫であった"
とも記しています。
そんな伊丹さんですから、日本語の用法にもこだわりを持ち、辞書を好んで使用していたそうです。
実は私、先日新しい辞書を1冊購入しました。日本語表記のルールをまとめた辞書です。
池上さんの講演を「音声」から「文章」に書き起こすにあたり、「漢数字と算用数字の使い分け」といった、表記上のルールを把握しておこうと思い、購入しました。参考書のようなつもりでその辞書を引いていたのですが、これがなかなかおもしろく、知りたい項目以外のページもついつい読んでしまいました。「へ~なるほど!」と何度つぶやいたことでしょう。
自分が知りたいこと以外の項目も目に入るのは、紙の辞書ならではのよさですよね。調べ物はサーチエンジンに頼ってばかりだったのですが、書き起こし作業をきっかけに、思いがけず紙辞書の魅力を再発見することができました。
ところで「音声の書き起こし」と言えば――伊丹さんは「聞き書き」の名手でもありました。
取材で得た人々の肉声をたくみに文章化していく手法は、『小説より奇なり』や『日本世間噺体系』といった著書でお楽しみいただけます(残念ながら『小説より奇なり』は絶版です)。
聞き書きならではの臨場感、おもしろいですよ。
【『小説より奇なり』の装幀ラフデザイン】
『小説より奇なり』は、装幀にもご注目を。旧漢字を駆使したデザインで、伊丹さんの漢字・ことばへのこだわりがいっぱいです。直筆ラフデザインを常設展に展示しておりますので、是非ご覧くださいませ。
スタッフ:淺野
2014.01.20 冬のお知らせ(インドア派のみなさまへ)
寒い日が続いていますがみなさまお元気でお過ごしでしょうか。今年も冬将軍は横綱相撲ですねぇ。年末年始には長めの休みをもらって郷里の岩手へ帰省したわたくし、元日に松山に戻ってから数日の間は「松山は暑いぐらいですね」なんて勝ち誇ったように言っていたこの口で、毎日「寒い寒い」とこぼしています。夏には暑いと文句を言い、冬には寒いと文句を言い......まことに申し訳ありません。
(すみません、他家の子です...)
20代の頃はまだやせ我慢がきいていて、袖や裾の長い肌着を着ずに過ごせていたのに、今ではブクブクに着ぶくれております。
フと隣の同僚・淺野を見ると、彼女はいつもスッキリシャキっとしていることに気付き、「パッチとかはいてないの? まぁ、パッチっていうか今風に言えば"レギンス"だけど」と尋ねると、「はいてません、はきませんねぇ」と言うではありませんか! シンジラレナーイ!
「えぇっ、それで冬を過ごせるものなの!?」、「だからこれ(愛用の大判ひざ掛けを掲げて)が欠かせないんです」、「行き帰りは? 寒いでしょ!?」、「はい、寒いですよ~!(ニッコリ)」
なんて辛抱強いのでしょう......同僚が偉大な人物に見えて、思わず拝みそうになりました。
そんな淺野がパッチもはかず、寒さに震えながら夜なべで書き起こした池上彰さんの講演録ページがこのほど完成、公開を開始いたしました!
●第5回伊丹十三賞受賞記念・池上彰氏講演会 採録
→http://itami-kinenkan.jp/award/award05_01.html
それから、インドア派向けにお知らせをもうひとつ。
俳優・伊丹十三の出演作品が2月に日本映画専門チャンネルで放送されます。
●『家族ゲーム』(1983年)
...森田芳光脚本監督。松田優作演じる大学生を次男の6人目の家庭教師として迎える沼田家のヘンテコきわまりないお父さん役で出演。目玉焼きの黄身に吸い付いて「(しっかり焼かれると)チュウチュウできないじゃないか」と苦言を呈するなどの名演技は必見です。
●『居酒屋兆治』(1983年)
...降旗康男監督、山口瞳原作。高倉健さん演じる主人公英治の営む居酒屋「兆治」の常連役で出演。酔っぱらってクダを巻く演技は絶妙に憎たらしくて最高です。(個人的には、居酒屋兆治の向かいにある、ちあきなおみの小料理屋「若草」に行ってみたいです。)
どちらも『お葬式』で監督デビューする前年の出演作ですね。
この2作品では「怪演系」伊丹さんの演技を見ることができますが、これらと同時期の『細雪』(1983年・市川崑監督)、『瀬戸内少年野球団』(1984年・篠田正浩監督)では、渋い日本の男を演じています。キネマ旬報賞助演男優賞・報知映画賞助演男優賞を受賞し、高い評価を受けた俳優・伊丹十三の演技、機会があれば映画館やテレビ放送、DVDでぜひご覧ください。
屋内にこもりがちなこの季節は、じっくりと心の栄養補給。インドア派のみなさまも冬を楽しくお過ごしくださいね。
もちろん、当館の新企画展『旅の時代 ― 伊丹十三の日本人大探訪 ―』も猛烈におすすめいたします! 当館までの道中の寒さにちょっとだけ堪えてお越しいただければ、展示室にいながらにして、日本中、世界中、古代にだって行けちゃいますよ。お待ちしております。
(その後淺野はパッチデビューを果たし、革命的に暖かい冬を過ごしておるようですのでご心配なく! わたくしはといえば、実のところ、毛糸のレッグウォーマーをも着用しておりますが、これは淺野にはまだ明かしておりません。ヒミツですヨ......え、ズボンの裾からハミ出してバレてた......?)
2014.01.13 正装
寒中お見舞い申し上げます。
仕事始めや新学期を迎え、巷では少しずつ日常に戻りつつある今日この頃ではございますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
私事ですが、毎年年始には干支にちなんだものを部屋に飾るようにしており、今年2014年も、干支・午の置物を元旦に飾りました。また新たな気持ちで今年も精一杯努めますので、本年もどうぞよろしくお願いいたします。
【部屋に飾った、幼いころに初詣に行った神社で買い求めた午の置物。今年の主役です!】
さて、本日1月13日は「成人の日」ですね。
成人式を行う日は地域によって異なるそうですが、それでもこの時期は、スーツ姿や振袖姿、羽織袴姿の成人の皆さまをよく拝見します。一番よくお見かけするのは振袖姿の方々でしょうか。
本当に華やかで見ていているだけでも楽しいですが、それを着ている成人の方の表情や佇まいに、いつもきりっとした印象を受けて、ほほえましく思います。
かくいう私も、かなり前のことになりますが、振袖を着て成人式に出席いたしました。華やかだったかどうかはアヤシイところですが、私の日常ではあまり多くない「正装」のひとつでした。もちろん、普段着慣れないぶん若干そわそわしてしまう面はありましたが、背筋がピンとなり、ちょっと誇らしいような気持ちになったことを覚えています。
こんな時、服装が気持ちに影響を及ぼすことはあるんだなぁと、実感してしまいます。
伊丹さんの著書『ヨーロッパ退屈日記』に、「正装」に関するエッセイが記載されていますので、一部ご紹介しますね。
正装する、ということは愉しいことである。社会の掟に、進んで身をまかせ、自らを縛する、というところに、一種の快い、引緊った安堵がある。タクシードを着て凛々しい快感を覚えぬ男があるだろうか。
(中略)
わたくしとても、最初から正装を好んだわけではない。仕方なく着せられて味をしめたに過ぎない。正装というものは、そういうものである。着れば必ず味をしめるのである。やはり本来的なもの、正統なものには、誰しも共感するのである。...(以下略)(『ヨーロッパ退屈日記』-正装の快感-)
これを読んだときは、たまには機会を作って「正装」して出かけるのもいいかもしれない...そう思いました。皆さまはいかがでしょうか。
最後になりましたが、成人の皆さま、誠におめでとうございます。
今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます!
***********************************************************
【館長・宮本信子出勤のお知らせ】
◇◇出勤日時◇◇
2月23日(日)14時頃~16時頃まで
2月24日(月)11時頃~13時頃まで
※当日の状況により、滞在時間は変更になることがありますのでご了承ください。
皆さまお誘い合わせのうえ、ぜひ記念館にお越しください。
スタッフ一同、心よりお待ちしております。
スタッフ:山岡
2014.01.06 2014年スタート
あけましておめでとうございます。
皆さま、よき新春をお迎えのこととお喜び申し上げます。
20「十三」年は幕を下ろしましたが、2014年は記念館の総入館者数が「十三」万人を突破する見込みで、今年もまた記念すべき一年となりそうです。
本年も皆さまのご期待にお応えできますよう、スタッフ一同精一杯努めてまいりますので、引き続きのご愛顧をお願い申し上げます。
さて、私事ではありますが、地元松山では「お椿さん」の通称で親しまれている神社「伊豫豆比古命神社」に初詣に行ってまいりました。
楼門が門松と提灯で彩られています。
拝殿に参拝し、おみくじを引きましたところ......
大吉でした!
1月3日の勤務を終えた帰り道、「今日もたくさんお客様がお越しくださったな」と、記念館のことを考えながら立ち寄った初詣で引いたおみくじです。これまでに記念館にお越しくださったお客さまや「記念館に行ってみようかな」と記念館便りをご覧くださっている方々にお届けしよう!と思い、ご報告させていただきました。2014年が皆さまにとって「大吉」でありますように。
そしてこちらは...
我が家の庭のサザンカです。寒空の下、元気に咲いています。
日々の寒さに、春までの道のりがずいぶん遠く感じられる寒の内、「大吉」と「寒さに負けずに咲くサザンカ」で、少しでも元気をお届けできましたら幸いです。
******************************************
【お知らせ】
「ほぼ日刊イトイ新聞」様より展覧会のお知らせをいただきました。
『「ほぼ日」が、働くことを考える。「はたらきたい展。OSAKA」』
会期:2013年12月28日(土)~2014年1月19日(日)
時間:10:30~21:00(入場は閉場時間の30分前まで)
※12月31日(火)~1月3日(金)は20:00閉店・閉場。
会場:梅田ロフト7階 ロフトフォーラム
入場料:一般500円、学生・電子マネー400円、ロフトカード300円、小学生以下無料
タイトルを見てお気づきの方もいらっしゃることと思いますが、この展覧会は、昨年6月に渋谷パルコミュージアムで開催された『「ほぼ日」が、働くことを考える。「はたらきたい展。」』の大阪巡回展です。
第一回 伊丹十三賞を糸井重里さんにご受賞いただいたことをきっかけに組んでいただいた「ほぼ日」の『伊丹十三特集』の中で、糸井さんと宮本館長が対談をしています(『伊丹さんに。宮本信子×糸井重里』)。その中で話題にのぼった伊丹さんならではの一言を、『99の「はたらく人」のことば。』の一つとして渋谷『はたらきたい展。』でご紹介いただいておりましたが、大阪巡回展でも引き続きご紹介いただいております。
会期中に大阪にいらっしゃる皆さん、ぜひ足を運んでみてくださいね。
スタッフ:淺野
2014.01.02 館長・宮本信子から新年のご挨拶
A HAPPY NEW YEAR
新企画展は伊丹十三の「旅」がテーマです。
私が大切にしていた、とってもプライベートな
品物を展示に出しました・・・エピソード付き!
今年もよろしくお願い申し上げます。
宮本信子
記念館便り BACK NUMBER
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