記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2014.10.27 仕事のできないカメラマン

突然ですがここで、伊丹さんの映画初監督作品『お葬式』の中でわたくしが一番好きなシーンをご紹介します。

お葬式も終盤に差し掛かり、棺桶に蓋をして釘を打というという、故人との最後のお別れの時にも拘らず、大滝秀治さん演じる雨宮正吉がその様子を様々な注文をつけながらカメラで撮影をするシーンです。正吉からの不自然でわざとらしい指示に対して、一同何故だか、素直に従います。みんなで棺桶を囲み、合掌のポーズでカメラ目線をしているシーンが印象的です。伊丹さんの脚本を拝見しますと、「一同、催眠術にかかった如く、晴れやかな顔で指示に従う。」とあります。

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さて、伊丹さんはこのお葬式の公開と同じ年に発売されたエッセイ「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!」の中で、「仕事のできない」カメラマンに関して、「実力のない者に限って注文が多い」と記しています。仕事のできないカメラマンは撮影の際、散らかった机の上の書物を小綺麗に片付けてみたり、持参したバラを活けてみたり、伊丹さんや家族にポーズや目線の指示を出してみたり、挙句「向うの山の方でも指さしてください」などと様々な注文を出してきたそうです。なんともわざとらしい写真が撮れそうですね。

きっとこれらの「仕事のできない」カメラマンとの出会いがこのシーンのヒントになったのでは、と私は思うのですが、いかがでしょうか。伊丹さん。

ちなみにここで紹介したお葬式の絵コンテは、「映画『お葬式』シナリオつき絵コンテノート」にて全編掲載されています。興味のある方は是非どうぞ。

スタッフ:川又