記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2014.12.15 エッセイを読んで

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
早いもので、2014年もあと半月あまりとなりました。仕事や行事ごと、その他諸々で何かと気忙しい時期ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 

さて、ここ記念館には、伊丹さんのエッセイのファンであるという方が多く来館されます。そんなお客様とお話をしていると、 「●●に載っていた○○を試してみた」というふうに、エッセイに書かれていることを実際にやってみたり、真似たりしたことがある方が、結構いらっしゃるようなのです。

 

お客様の体験談を少しご紹介しますと――以前、「いい具合に埃がつもるよう、1ヵ月間、車を車庫に入れっぱなしにして乗らなかった」という男性がいらっしゃいました。 このお客様が参考(?)にされたのは、「猫の足あと」(『女たちよ!』より)というエッセイです。記念館のアプローチ脇にある、ベントレーの車庫にも紹介されている文章ですので、 記憶にある方も多いかもしれません。

(前略)私が自分のロータス・エランを赤にしたのは、こいつなら赤でも目立たない、と思ったからでありますが、さらに念を入れるなら、この車はよごれっぱなしのほうがいい。埃や泥はもちろん、小さな引っかき傷や、軽いへこみも、そのままにしておいたほうがいい。
 私の分類では、こいつは、雨具や履物の部類に属する。仕立ておろしのレインコートや、ま新しい靴というのが、どうにも気恥ずかしいものであると同様、車も、ある程度薄よごれた感じのほうが、私には乗り心地がいい。
 ま、そういうわけで、私は自分のロータスを掃除しないことにしている。昨年の暮れには、ひと月ばかりガレージにいれっぱなしにしておいたから、実にいい具合に埃がつもって、その埃の上に猫の足あとなんかついて、ほとんど私の理想に近い、芸術的なよごれをみせるようになった。

 私は、この埃の上に、指で絵を描こうと思った。そうだ!注連飾りの絵を描いて年始に出よう、と思った。(後略)

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お客様は、もともとピカピカな車より、多少よごれている車のほうが乗りやすい性質だったとのことで、読んだ瞬間に伊丹さんに賛同されたそうです。そこで伊丹さんの理想に近い芸術的なよごれがどんな感じか見てみたくて、実践したのだと仰っていました。通勤に使われていた車だそうですので、1ヵ月もの間乗らずにやりくりするのは大変だったかと思いますが...。
ちなみに、1か月後、埃自体は「いい具合」につもったそうです。ただ、残念ながら近くに猫がおらず自然に足あとがつかなかったため、知り合いに連れてきてもらった飼い猫に車の上を歩いてもらったのだとか。

 

他にも、同じく『女たちよ!』にあるエッセイ「黒豆の正しい煮方」をみながら実際に作ってみた、というお話もうかがったことがあります。お正月準備をはじめるこれからの時期にぴったりですが、さすが伊丹さんというか、なんと作るのに2日かかる本格派!!
でも、お客様曰く、手間をかけたぶんとっても美味しかったのだそうですよ。

 

エッセイを読んだあとにも、こんな楽しみ方があるのですね。
興味を持たれた方は、師走の忙しい合間に、ちょっと伊丹さんのエッセイを開いてみるのはいいかがでしょうか。トライしてみたくなることが見つかるかもしれません。

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スタッフ:山岡