こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2015.12.21 "ビックリ人間"伊丹十三の吸収術
みなさまこんにちは。
かねてお知らせしておりましたとおり、12月7日(月)「旅の時代」展を終了し、
最終日の私「楽しかったなぁ、名残惜しいなぁ...」
翌日から展示替え作業に入り、
撤収した私「ヒェーっ何もない!」
「ここをまた埋めなくちゃいけないの!?」
新企画展『ビックリ人間 伊丹十三の吸収術』を12月18日(金)に開始いたしました。
オープンです!!
「ビックリ人間」と言っても、世界一背の高い大男とか、体がものすごく柔らかい人とか、髪の毛や爪を長年伸ばし続けている人のことではありません。
「ビックリさせる人」ではなくて、「ビックリする人」、もっと言えば「ビックリするのが好きな人、得意な人」、すなわち――伊丹十三。彼自身の自称でした。
では、何にビックリして自分の中に取り入れるか。
初めて見て、聞いて、知って、「そうなんだ!」と思ったことなら何でも! です。
展示品の一例
本を読んでビックリ、映画を観てビックリ、人や物や出来事にビックリ。結婚して子供が生まれて父親になって、家族にも自分自身にもビックリ。
それから、義父のお葬式でビックリ、人々のラーメンへの情熱にビックリ、税金をたくさん取られてビックリ、海外のスーパーでは食品が安くて(日本の食品の高さに気付かされて)ビックリ......
例えば――
私はラーメン屋にはほとんど行ったことがありません。行ったことがないからこそ驚くのです。人々がなぜかくもラーメンに対して情熱的でありうるのか。私にとっては心からの驚きなのです。
驚きというのは自分の惰性化したイメージに対する一撃です。そうして、この惰性化したイメージに対する一撃こそが想像力と呼ばれるものの力であり、つまり、私が映画を通じて追求している当のものなのです。
映画『タンポポ』パンフレットより
驚きが伊丹さんの創意の源だったんですね。
自分を驚かせるもの、自分の目を開かせるものは何でも「異文化」として見聞し、さらに調べて学んで吸収し、分かりやすく面白く作品化して、楽しんでもらえたら心から喜ぶ。
ということで、今回は、「伊丹十三を驚かせた本、映画、対談や取材に関する所蔵品を一堂に会して、驚いたら何でも吸収してしまうビックリ人間の"感心力"を紹介する展覧会」です。
そういえば、伊丹さんって、エッセイやテレビや雑誌のインタビューで「ビックリした」ってよく言っていたような......
「いやぁ、ビックリした」
「実にたまげました」
「これにはまいりましたねぇ」
多くの方が聞き覚えていらっしゃるであろう伊丹さんのそんな"声"が、この企画展でも聞こえてくるように、と念じながら準備いたしました。
資料がズラリと並んだところを見渡して、いろんな見方ができる展示になったと感じています。ですから、みどころは......(いつも言うことですが)全部です!
思い思いにご自由に、お楽しみいただけましたら何より嬉しく存じます。
ちなみに、この企画展のための作業を終えたところの私はと申しますと、「今すぐ書店や図書館や映画館に駆け込んで、発見したことについて誰かとおしゃべりしたいなぁ」という思いに駆られています。今後のテーマですね。
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さて、早いもので、記念館便りもこれが今年最後の更新です。
伊丹十三記念館は12月28日(月)から1月1日(金)まで年末年始のお休みをいただき、2016年は1月2日(土)から開館いたします。
開館初日には館長のメッセージを記念館便りにアップいたしますので、ぜひアクセスしてください。
今年お越しくださった皆様、ありがとうございました。またお会いできますように。
残念ながらご来館の機会のなかった皆様、来年はぜひお越しくださいませ。お待ちしております。
では、よいお年を!
学芸員:中野
2015.12.14 みかんの季節
みかんの季節になりました!
今や様々な品種があるみかんは1年を通じて食べることができますが、それでもやはりみかんというと、寒い時にあたたかい部屋で食べるというイメージが強いのではないでしょうか。
ありがたいことに、この時期になると我が家は愛媛在住の親戚や知り合い、ご近所の方などからたくさんのみかんを頂きます。また、お店でおいしそうなみかんを見るとつい買ってしまうので、家にみかんがない日がほとんどありません。テレビを見ながら、また風呂上りや食後につい手がのびてしまう、寒い時期の定番デザートになっています。
さてこのみかん、皆さまは食べる時皮をどのようにむいていますでしょうか。
私や家族はヘタの反対側の柔かいところから皮をむいていくのですが、以前一緒にみかんを食べた知り合いは皮ごと4等分にしたり(手が汚れなくていいらしいです)、みかんの周囲に切り込みを入れて皮が器のように上下に開くようにしてみたりしていました。他にむき方があるのかな?とインターネット上で検索してみると、スタンダードなものから面白おかしなものまで多種多様なむき方が紹介されていてびっくりしたものです。中には非常に凝っていて、アートの域に達しているのでは...というものも。興味を持ったものを試してみるのも面白いかもしれませんね。
そして伊丹さんの著書『日本世間噺大系』にも、みかん作りの名人が教えるみかんのむき方が紹介されていますので、以下に少し引用します。
(前略)
タレント ちょっと、このミカン一個貰っていいですか?
名人 ハイ。これうまいですよ、これはうまい。新しい品種「オキツ」です。農林省で造った品種です、食べますか?
タレント ハイ。
名人 どうぞむいてみてください。
タレント (ミカンをむきかける)
名人 あア、そちらからむくんじゃない、センセイ。
タレント こっちですか?
名人 こちらからむいてね――ミカンはこういうふうにむくの。こういうふうにむいて、うしろ側から出すと綺麗にはがれる......ネ?
タレント ア、そうか――ちょっと、カメラ見えるかな?ええと――この緑色のポッチがありますね、これのない方、柔かい方ね、に親指 を入れて、まず――どうするんです?割るんですか?
名人 割るんです。三つにね、三つに割って、で、袋を、置くの方から手前にはがす。
タレント ハハア......
名人 うしろ側から、こうして離してくればです、袋をとるに白いスジがキワメテよくとれる。判りますか?
タレント なんでも正しいやり方ってのがあるんだな(笑い)
名人 あるんです。これがミカンの食べ方。(後略)
(『日本世間噺体系』(新潮文庫)「蜜柑」)
イラスト付きで紹介されていますので、こちらもご興味ある方は試してみてください!
『日本世間噺大系』は味わい深いエッセイをはじめ、上記のような臨場感あふれるインタビュー形式や座談会形式で書かれた「世間噺」が31篇納められています。
読み応え満点ですので、ぜひ読んでみてくださいね。(記念館オンラインショップからもお求めいただけます)
【日本世間噺体系(新潮文庫)。上はミカンのむき方を紹介したページ】
スタッフ:山岡
2015.12.07 伊丹さんから家族への手紙
12月に入り、すっかり冬到来の松山です。いかがお過ごしでしょうか。さて本日7日をもちまして、平成25年の年末から丸2年間ご好評を頂きながら続けておりました企画展「旅の時代―伊丹十三の日本人大探訪―」が終了致します。お客様から「旅の企画展、とてもよかった!」と生のお声をたくさん頂戴しておりましたので、少し淋しい気持ちと、新しい展示が楽しみ!という気持ちが入り混じっています。
ところで、今回の企画展、特に「伊丹さんが家族へ送った手紙がよかった!」という感想を本当に多く頂きました。
仕事で訪れた海外から宮本館長に宛てた手紙や、自身の子どもたちへ宛てたハガキを展示しているものです。家族それぞれへの愛情が感じられるところに感動するのはもちろんのこと、幼児であるわが子に宛てたハガキ1枚にしても、ユーモアと知性が溢れ、伊丹さんのセンスの良さが伝わってくるところが見どころです。多くの人の目に触れる「仕事」でなく、とても私的な部分でもオシャレでカッコよかったのね~と感心してしまいます。
【画像:子どもへ宛てたハガキの中の1枚。】
残念ながら本日の企画展の終了と共に、展示されていた手紙やはがきの実物をご覧頂くことはできなくなりますが、安心して下さい!これらの一部は「伊丹十三の本」(2005 年㈱新潮社)にカラーで掲載されています。今回の企画展でご覧頂けなかった方も、ご覧頂いた上でもう一度ご覧になりたいという方にも、おススメ致します。
【画像:伊丹十三の本】
新しい企画展は12月18日(金)開始です。公開をお楽しみに!
スタッフ:川又
2015.11.30 「旅の時代」展、終了間近です!
ご好評をいただきながら続けてきた「旅の時代―伊丹十三の日本人大探訪―」展も、あと1週間となりました。
12月7日(月)の閉館時間をもって終了です。
ドキュメンタリーの仕事や精神分析との出会いを通して、伊丹十三が独自の日本人論を築いていった過程を、展示資料を入れ替えながら2年かけてご紹介させていただきました。
真面目でいて愉快――ほんとうに、伊丹十三の人柄をそっくり展示室に吹きこんだような企画展でしたので、名残惜しくはありますが、会期終了後は心を鬼にして撤収させていただきます。
それ以降は、どんなに悔し涙を流していただいたとしても、(私としても非常に残念なのですが)お見せすることができません。ぜひ会期中にお越しくださいませ! 直筆原稿の数々、旅先からの手紙、テレビ番組映像など貴重な資料ばかりです!!
そして、次回の企画展もまた、お楽しみいただけるものになるように準備を進めております。公開までしばしお待ちください。
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12月9日(水)~17日(木)は企画展示室を閉室いたします。
この期間中は、入館料:大人500円/高大生300円で常設展示室のみの
ご鑑賞となりますのでご了承ください。
常設展・次回企画展、併せてのご鑑賞は12月18日(金)からとなります。
※12月中の休館日:12月8日(火)、15日(火)、22日(火)
※年末年始の休館:12月28日(月)~1月1日(金)
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突然の寒波到来、びっくりしましたね。皆様、冬支度はできていましたか?(私はできていませんでした!)
くれぐれもお風邪などお召しになりませんように。
伊丹さんの冬アイテムより。セーターとマフラー。
肘のツギアテと袖のカガリに、伊丹さんらしい服への愛情が感じられます。
学芸員:中野
2015.11.23 第7回「伊丹十三賞」記念イベントを開催いたしました
2008年に創設し、今年で第7回目を迎えた伊丹十三賞。恒例となりました秋の記念イベントを、今年は2つ開催させていただきました。
● 受賞者・新井敏記さんによるトークイベント(11月10日/伊丹十三記念館)
● 新井さんと親交が深い沢木耕太郎さんによる講演会(11月9日/松山市民会館)
おかげさまで、ともに盛況のうちに終えることができました。ご来場くださった皆さま、誠にありがとうございました。
本日は、スタッフ・淺野のレポートとして、2つのイベントの様子をお届けさせていただきます。後日、当サイトにイベントの採録を掲載させていただく予定にしております。掲載までにお時間をいただきますが、しばらくお待ちいただけましたら幸いです。
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まずは、11月9日(月)に開催いたしました沢木耕太郎さんの講演会の様子からお届けいたします。
今回は、松山市民に文化の拠点として長く親しまれている「松山市民会館」の中ホールで開催いたしました。
はじめに、ご来場くださったお客様へ宮本館長よりご挨拶。
続いて講師の沢木さん(写真左)と受賞者新井さん(写真中央)にも
ご登壇いただいて、3人でミニトーク。
ミニトークの冒頭、沢木さんを前に、新井さんはこんな風におっしゃいました。
「松山に沢木さん来ていただいて、ほんとに僕自身が一番喜んでいるんです。みなさんもそうでしょうけど、講演をされるということは沢木さんはめったにないので、それを、すごく僕は一番喜んでいます。今日はありがとうございます。」
宮本館長が降壇し、沢木さんと新井さんのミニトークが続きます。
新井さんの受賞について、お二人で10分間ほどお話をしてくださいました。
その後、いよいよ沢木さんのご講演です。
沢木さんから事前に頂戴しておりました今回の講演会のテーマは「縁について」。
その冒頭、沢木さんは一度この講演会の依頼を断ったことを明かされました。そして、一度断ったにも関わらず、なぜ今ここにいるのかについて「これから1時間かけて、その話をするんです」――と、ご来場の皆さまに語りかけるようにお話を始められました。
――ここから先の、沢木さんがお話しくださったエピソードの数々は、後日公開予定の採録ページでご紹介させていただきますね。講演の2日前にテレビで放送された、あるドキュメンタリー番組のお話から始まったのですが......皆さまじっくり聴き入っていらっしゃいました。
"なぜ今ここに沢木様がいらしてくださっているのか"の背景には、たくさんの偶然があったことが講演を通して明かされたのですが、講演会の終わりに沢木さんは――
「僕は、なんていうんでしょう――あんまり頑ななところがないんで、わりと何でも順応できるところがあるんですね。そのある種の順応できるところが、偶然を自分の中に引き寄せる......」
――とおっしゃり、その引き寄せた偶然を柔軟に受け止められることがご自身の特性だとご説明なさいました。さらに――
「偶然というのは、一回で終われば一回性のものだけど、それが細い糸になって『縁』というものになって繋がっていくと、それが一回性のもので終わらなくなる。でも『どうしたら一回性のもので終わらなくなるか』ということですよね。」
――と続け、そうした一回性の偶然を、「努力」と「人間としての力量」で「縁」という糸にまで引き伸ばすことができるのが新井さんなのだとおっしゃり、編集者・経営者としての新井さんの手腕を、あらためて称えていらっしゃいました。
また、「書き手」としての新井さんについても触れ、これまでの肩書にとらわれず「今、目の前でやりたいことがあったらそれをやっていく」「いきいきと生きられるところで生きていきたい」という、沢木さんと新井さんに共通する想いについてお話しなさって、講演を終えられました。
引き寄せた偶然を柔軟に受け止めて、それを「縁」という糸にまで引き伸ばす......素敵なお話でした。謎を解いていくような楽しさもありました。
また、沢木さんの語りかけるような口調はとてもやわらかくて、拝聴しておりますと幸せな気持ちになりました。沢木さん、本当にありがとうございました。
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続いて、翌日・11月10日(火)に開催いたしました新井敏記さんのトークイベントの様子です。
この日は、受賞者・新井さんとご一緒に、聞き手として松家仁之さんにもご登壇いただきました。松家さんは、新潮社で「考える人」「芸術新潮」の編集長をつとめるなどご活躍なさり、新潮社退社後、2012年には長篇小説『火山のふもとで』(読売文学賞)を発表、現在は文芸誌「新潮」で長篇小説『光の犬』を連載なさりながら、雑誌「つるとはな」の編集制作にも携わっていらっしゃいます。
ご来場くださったお客さまにご挨拶をする宮本館長。
まずはじめに、宮本館長はお客さまにこんな想いを明かしました。
「わたしね、夢だったんです。ここで、ほんとうにこの限られた空間で、何かできないかってずっと思ってまして......」
――続けて、雑誌づくりや本について新井さんに深くお話ししていただくには、この空間が合うのではないかと思ったということを宮本館長がお話しして、記念館初のカフェ・タンポポでのトークイベントがスタートいたしました。
新井さん(写真左)と松家さん(写真右)
お二人の後ろにある絵は、映画『タンポポ』製作時に伊丹さんが描いた出演者のデッサンです。
新井さんは、時にご自身のお仕事と重ね合わせながら、伊丹さんについて多くのことを語ってくださいました。その詳細は採録でご紹介するとして、私がとても印象深く感じた部分を、少しだけご紹介させていただきますね。
――――――――――――――
新井さんが中学生の頃、こっそりと御覧になっていたテレビの深夜番組『11PM(イレブン・ピーエム)』の中で、伊丹さん制作出演の短編映像(映像商品化されていないものです)が流れたことをお話ししてくださったのですが、当時の新井さんはその映像に、大変なインパクトを受けたのだそうです。もちろん、それを作ったのが誰なのかを知らずにご覧になったそうですが、とにかく映像として鮮烈に印象に残っているそうで、ご覧になったのは一度きりにも関わらず、ありありと覚えていらっしゃるそうです。
そんな体験をふまえ、伊丹さんの作品がいつまでも新鮮に感じられることについて、新井さんはこんな風におっしゃいました。
「古びることがないっていうのは何だろうなって、ずーっと(記念館を)巡りながら考えていたんですよね。それはまだ分からないんですが、それは、ほんとに自分が好きなことをやっていることの頑丈さなのか、それとも感覚的なものが――それが本質をついているから古びることがないことなのかわからないですけど、それはすごく僕にとっては謎ですよね。それは僕ね、今回記念館に来させていただいて、すごく宿題みたいな感じです。」
トーク内容とカフェの雰囲気がピタリと合って、濃密な空気が流れていました。
また、聞き手の松家さんが、「(伊丹さんは)伝えたいことをどうやって伝えるかということに、ものすごく心をくだいた人じゃないかと思う」とお話しなさった時には、新井さんはこう続けられました。
「伊丹さんのエッセイを読んでいても、その部分はありますよね。だから、どういう生き方をするのかっていうのがまず前提にあって、そのためにどういう一歩を踏み出すのかっていうことを明快にしているような感じがするんですよ。そういう意識も僕はあまりしていなかったんですが、今回、記念館の中を歩いてみて、一個一個それを紐解くような、分け入るような感じがして――ちょっと楽しさと、ちょっと怖さがあったんですよ。それはやっぱりもう一回違う謎を、もう一回僕の中で宿題が課せられた怖さがありましたね。だから『編集者としてお前どうなんだよ』って言われている感じが――伊丹さんの本ってそういう風に絶えずね、問われるんですよ。だからヒリヒリするんですよ。それはね、ほんとにヒリヒリしながら――それがちょっと嬉しかったんですよ。」
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イベントのほんの一部分をご紹介させていただきましたが、いかがでしょうか。
新井さんが熱を込めてお話ししてくださった様子が、少しでも伝わりましたら幸いです。宮本館長のイメージ通り、カフェという空間が今回のお話にピッタリだったように感じました。
最後は、「ここに立てたっていうこともすごく嬉しいし、やっぱり何度も言うように、伊丹さんをもっと知りたいと思いました」とお話しくださった新井さん。ありがとうございました。
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あらためまして、受賞者の新井さん、そして沢木さん松家さん、すばらしいお話をありがとうございました。そして、イベントにお越しくださった皆さまにも心より感謝申し上げます。
皆さま、今後とも伊丹十三賞をどうぞよろしくお願いいたします。
スタッフ:淺野
2015.11.16 記念館のホームページ
すっかり秋になりました。
記念館の木々は、いまちょうど落葉のピークを迎えているものが多く、朝に落ち葉をキレイに掃いても、昼前には朝と同じくらい落ち葉が地面に広がっている...そんなこともたびたびです。
これからどんどん寒くなりますので、皆さま、お体にはくれぐれも気をつけてくださいね。
さて、ここ記念館にお越しいただくお客様から「ホームページを見ました」とお声がけいただくことがよくあります。
記念館ホームページでは、伊丹さんのことや記念館のことを色々なカテゴリで紹介していますが、中には、来館されるにあたって本当に細かなところまでご覧になり、お客様曰く「予習」してお越しくださったり、逆にホームページをご覧になって興味を持ち「行ってみたい」と思ってくださる方もいらっしゃいます。今回はそんな記念館ホームページについて、少しだけご紹介させていただきますね。
【おなじみのトップページ】
トップページの大きな画像の左下にある「伊丹十三という人物」部分をクリックすると、「伊丹十三とは」「俳優としての略歴」「著者としての略歴」「監督としての略歴」「父、伊丹万作」が表示されます。このカテゴリだけでも伊丹さんの色々な「顔」に触れることができ、伊丹さんの父・万作さんについても知ることができます。
続いてお隣の「記念館の展示・建物」では建物の概要のほか常設展や企画展、カフェやショップについて紹介しています。ここをご覧になって展示に興味を持たれ、「実際に見てみたい」とご来館くださる方はたくさんいらっしゃるのです。
また、「伊丹十三賞」カテゴリでは賞の概要やこれまで受賞いただいた方々など「伊丹十三賞」に関する内容を掲載し、「ニュース欄」では記念館やイベントの情報、伊丹さんに関するメディア情報、そして、皆さまから本当にたくさんご質問をいただく「宮本信子館長の次回出勤」情報などをお知らせしています。
他にも「オンラインショップ」や「みなさまの声」、メンバーズ制度のご紹介などなど、伊丹さんや伊丹十三記念館がぎゅっと詰まったホームページになっています。
もしまだご覧になっていない部分がありましたら、ぜひアクセスしてみてくださいね。
【おまけ:この時期、陽が落ちた後の記念館。ライトアップされて昼間とは違う趣です】
スタッフ:山岡
・・・・・・・・・・・・<<記念館からのお知らせ>>・・・・・・・・・・・・
<展示替え期間のご案内>
展示替え作業のため、12月9日(水)~17日(木)は企画展示室を閉室する予定です。
この期間中は、入館料大人500円/高大生300円で、常設展示室のみのご鑑賞となります。
何卒ご了承くださいませ。※12月15日(火)は休館日です。
<年末年始の開館・休館のご案内>
12月28日(月)~1月1日(金)は休館とさせていただきます。
1月2日(土)、3日(日)は開館時間を10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきます。
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2015.11.09 秋におススメのカフェメニューと本
すっかり秋ですね。
温かい飲み物が恋しい季節となってきました。
伊丹十三記念館のカフェでは生姜シロップを使ったホットドリンク「しょうが湯と十三饅頭」「しょうが紅茶」「ソイ・ジンジャー」などが人気です。
生姜シロップは記念館で作っています。スライスした生姜をお砂糖で煮つけて、仕上げにレモン汁を入れます。レモン汁を入ると、生姜シロップの色がパッと鮮やかなピンク色に変わります。
【画像:レモン汁を入れる前】
【画像:レモン汁を入れた後】
紅茶やらジャムやらにレモン汁を入れると「レモンの酸で色が変わる」と言うのはよく知られていることですが、実はこのような現象すら伊丹さんに係るとそんな簡単な説明では終わりません!
「紅茶の、あの冴えた赤い色、ほのかな渋みは、タンニンという物質によって作られる。
~略~
さてこのタンニンは、水に溶けるものと、溶けぬもの、というふうにも分けることができる。
~略~
紅茶にレモンを入れるとどうなるか。レモンの酸によって、水溶性のタンニンが、水に溶けない、不溶性のタンニンに変わってしまうのであります。
~略~
つまり、水溶性のタンニンが、不溶性のタンニンの粒子となって水に溶けなくなる。したがって水の中に拡散されている量が減って、色が薄くなる、ということでしょう。」
「問いつめられたパパとママの本」『レモンヲ入レルトナゼ紅茶ノ色ガウスクナルノ?』より
と、言うことらしいです。「問いつめられたパパとママの本」の前書きに「この本を、生まれつき非科学的な人、つまりあなたのために書いた」とありますが、その通りで、この本は全編にわたって難しいことを大変わかりやすく説明してくれています。
というわけで、この秋は記念館カフェで温かいしょうがメニューでもお召し上がりになりながら、読書なんていかがですか。非科学的な人にもそうでない人にも「問いつめられたパパとママの本」をおススメいたします。
【画像:問いつめられたパパとママの本」】
スタッフ:川又
2015.11.02 伊丹映画の正しいすすめ方......
お天気がいいとまだ少し暑いけど、コーヒーの冷める早さに季節を感じるようになりました。今日は、霧雨の松山です。
注目映画の封切りや大規模な展覧会の開催といった話題で、文化系ニュースも秋らしくにぎわっているところ、松山郊外のノンビリとしたこの記念館まで足を運んでくださるお客様が日々いらっしゃり、嬉しくお迎えしています。
世間が慌ただしい師走の空気に包まれる日も近くなりましたから、ここに来たからには今のうちにゆったりしていってくださいね!
ヤマザクラもゆったりと紅葉が進んでいます。
(毎年のことながら、色づき具合も散り具合もマイペースなみなさん)
受付やカフェや展示室で、何となく始まったお客様とのおしゃべりが思いがけず弾むのは、スタッフとしてもとても楽しいものですが、シンプルな直球であるがゆえに、回答に窮するご質問をいただくことがあります。その代表が――
「伊丹さんの映画でおすすめはどれ?」
「ウッッ」
――「全部です!」と言い切れば答えにならないだろうし、かといってどれかひとつを選ぶのは立場上マズい気がするし、「お好みによりますね、どんな映画がお好きですか?」と質問で返すとお客様を困らせることになりかねないし――
と、そんなことを考えて言葉につまりながら、「そうですねぇ~、人気がある作品ということですと......」などと非常に歯切れの悪い反応になってしまいがちです。
(「笑えるのはコレとコレ、泣けるのはコレとコレ、前向きな気持ちになるのはコレとコレで......」となっていって、結局、全作品おすすめしていることも多々あります。)
なにせ、伊丹映画は、テーマいろいろ味付けもいろいろ。それでいて、10作品とも「映画はエモーショナルな体験、一種の異文化体験を楽しんでもらうための娯楽である」をモットーに作られています。だから、「どれを見ても楽しいですよ」とも言えますが「全部味わって!」とも言いたい気持ちも強くあり、それで答えに困ってしまうのだと思います。
はてさて、一体何とお答えするのが正解なのか――やっぱり、まずは本心で「全部です!」と宣言するのがいいのかな――
まぁ、状況に応じて「秋ですから恋愛映画がピッタリでは?」なんて、機転の利いたオシャレな答えができるようにもなりたいですね......そこまでの成長は何年先になるでしょうか......がんばります!
"伊丹式恋愛映画"といえば『あげまん』(1990年)
学芸員:中野
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通常は火曜休館とさせていただいていますが、
明日11月3日(火・文化の日)は開館いたします。ぜひお越しください!
※ 翌11月4日(水)振替で休館させていただきます ※
2015.10.26 読書の秋に
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。朝晩はすっかり冷え込むようになってきましたね。
中庭の桂や入口横のヤマボウシなど、記念館の木々も秋らしく色づいてきています。
【記念館入口横のヤマボウシ】
さて、そんな秋の記念館から、グッズについて1点お知らせです。
記念館のグッズショップでは、対象書籍をお買い上げになった方に記念館オリジナルのブックカバーをプレゼントしております。黒い紙のシンプルなブックカバーで、伊丹さんのイラストをプリントしたシールがついています。現在は「伊丹十三記念館ガイドブック」等5冊の書籍が対象ですが、本日10月26日(月)から11月10日(火)の期間中、対象書籍を11冊に増やしてこのブックカバーをプレゼントいたします!
【対象書籍】
伊丹十三記念館ガイドブック(表紙イラストor表紙写真)/映画『お葬式』シナリオつき絵コンテノート(タイトル明朝orタイトルゴシック)/ヨーロッパ退屈日記/女たちよ!/再び女たちよ!/日本世間噺大系/問いつめられたパパとママの本/哺育器の中の大人[精神分析講義]/伊丹万作エッセイ集
オンラインショップでもお求めいただけます。→こちらをクリック
実は上記期間のうち、10月27日~11月9日は「読書週間」と呼ばれる期間です。書店などで読書週間にちなんだコーナーが設置されたり、イベントがあったりなど、読書にまつわる取り組みが多くみられるので、ご存知の方も多いかもしれませんね。
先週の記念館便りでご紹介させていただいた「問いつめられたパパとママの本」も含め、記念館のグッズショップで取扱い中の書籍はどれも読みごたえのあるものばかりです。この機会にぜひどうぞ!
スタッフ:山岡
2015.10.19 問いつめられたパパとママの本
10月になってからというもの、松山はお天気の良い日が続いています。秋晴れというのでしょうか。雲一つない真っ青な空を見ていると大変気持ちがよいものですが、この青い空を見ていると、伊丹さんのエッセイ「問いつめられたパパとママの本」の中の「空ハナゼ青イノ?」という話を思い出します。突然ですがみなさん、空はなぜ青いかご存知ですか?
伊丹さんのエッセイ「問いつめられたパパとママの本」の中で、その理由を詳しく伊丹さんが教えてくれていますが、結論としましては、
「あのね、お日さまからはね、赤い光と黄色い光と青い光が出ているのよ。赤い光と黄色い光はさきに行っちゃったんだけど、青い光だけがお空で道草して遊んでいるの。わかった?坊や」
ということだそうです。
「どうして赤い光と黄色い光はさきに行っちゃったの?」と、坊やでなくても気になりますね。
是非とも「問いつめられたパパとママの本」を読んでみてください。
「問いつめられたパパとママの本」は昭和43年に中央公論社(現中央公論新社)より単行本が刊行され、昭和51年に同社で文庫本化されました。その後平成23年には同じく中央公論新社で復刊されました。昭和43年の発売から50年近く経つというのに驚きです。もちろん伊丹十三記念館グッズショップでも取り扱っています。
(オンラインショップの「問いつめられたパパとママの本」はこちらから)
伊丹十三と言えば映画監督。芸能人。というイメージが大きい方も多いでしょうが、この本を読むと、それらのイメージとはまた違った知的な部分を知ることになり、伊丹さんという人物の引き出しの多さに感心することでしょう。
「読書の秋」に是非お勧め致します。
スタッフ:川又
2015.10.12 第7回「伊丹十三賞」記念 沢木耕太郎氏 講演会 開催決定!
記念館近くの川辺から、時折虫の音が聞こえてくるようになりました。秋ですね。
記念館の桂の樹も少し色づいています。
さて、第7回伊丹十三賞受賞者・新井敏記さんによる「受賞記念トークイベント」の開催が決定致しましたことは、以前の記念館便りでお知らせさせていただきましたが、おかげさまでお申込みは定員に達し、受付は終了とさせていただきました。皆さまトークイベントを楽しみにしてくださっているようで、スタッフ一同大変嬉しく存じております。
そして!当サイトのトップページでは既にお知らせしておりましたが、第7回伊丹十三賞を記念して、もう一つのイベント開催が決定致しました。
新井さんと親交の深い沢木耕太郎さんをお迎えし、特別にご講演をしていただくことになったのです。
<講演会概要>----------------------------------------------
タイトル : 沢木耕太郎氏 講演会「縁について」
日 程 : 2015年11月9日(月)
時 間 : 19時開演(20時30分終演予定)
※18時15分開場
会 場 : 松山市民会館 中ホール
参加料 : 無料(要参加証・定員550名)
参加方法等の詳細はコチラ
沢木 耕太郎さん
≪沢木 耕太郎さんプロフィール≫
1947年東京都生まれ。横浜国大卒。
1979年『テロルの決算』で大宅壮一ノンフィクション賞、1982年『一瞬の夏』で新田次郎文学賞、1985年『バーボン・ストリート』で講談社エッセイ賞、1993年『深夜特急 第三便』でJTB紀行文学大賞、2006年『凍』で講談社ノンフィクション賞、2014年『キャパの十字架』で司馬遼太郎賞を受賞。ノンフィクション分野の仕事の集大成として「沢木耕太郎ノンフィクション」が刊行されている。
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1つ1つの作品・ご著書に、熱烈なファンの多い沢木さん。
講演会の開催が決定したことを、あらかじめ記念館の受付や当サイトでお知らせいたしましたところ、お客様から「ぜひ参加したい」というお声をお寄せいただいております。
沢木さんは、現在朝日新聞で小説『春に散る』を連載中でいらっしゃいますね。
そんな大変お忙しい中でご講演をお引き受けいただくことができましたのは、新井さんと沢木さんの深いご親交があってこそのことで、関係者一同大変ありがたく存じております。
講演会の冒頭に新井さんもご登壇くださり、沢木さんと少しお話しくださる予定です。とても楽しみですね。
この講演会は、本日(10月12日)より受付を開始致しました。
「先着順(定員に達し次第終了)」での受付とさせていただいておりますので、参加ご希望の方はどうぞお早めに(詳細はコチラ)。皆さまのご参加をお待ちしております。
スタッフ:淺野
2015.10.05 イタミ式ダイエット
夏は代謝が悪くなるんだそうですね。年齢的な代謝力の低下も加わって、かつては「冬に肥って夏痩せる」体質だったのが、「冬に肥って夏も肥る」体質になっていたようです。
そうとは知らずに「夏バテしないように頑張って食べなきゃ」と努力した結果を体重計の数字に見て青ざめた頃、折悪しく秋が到来。
サンマも到来
涼しく快適な季節、頑張らなくとも延々と食べ続けられてしまいます! どうにかしなければ......どうしましょう......伊丹さんに習いましょう!
美味しいものを作るのも食べるのも大好きだった料理通の伊丹十三ですが、ぷくぷくに肥った姿なんて見たことがありません。それもそのはず、伊丹さんはダイエットも趣味として楽しんでいたのです。
映画監督になってからは、撮影の始まる頃をきっかけにしていたようですね。『「お葬式」日記』(1985年)や『「マルサの女」日記』(1987年)を読むと、ところどころにその日の体重が記録されていて、「減らない」「減ってきた」などとコメントが添えられています。
では、具体的にはどんなダイエットをしていたのでしょうか――
【1】まず、気合いが充実してこなきゃ駄目。
「肥って、おなかのあたりのだぶだぶした具合がもういやでいやで、寝ても醒めても不愉快に思っている状態が半年ぐらい続くと、次第に気合いが充実してくる」
【2】すると、ある時カチッと切り換わる。
食べる人から突然食べない人に変わる。(お酒や煙草についても同様)
「いやだいやだと思いながら食べている状態、というのがとことん進行すると、ある日突然ポンと飛んで、全くさばさばと、爽やかな拒食状態が出現する」
【3】1日1食。
ちっちゃいお茶碗で玄米を3膳くらい。おかずは、ひじき・こうなご・海苔・高野豆腐・塩鮭・梅干し・豆腐・納豆などを少量。ほかに、わかめの酢のもの、焼き椎茸、コンニャクの煮ものなど低カロリーのもの。曰く「明治のお婆さんの食生活(笑)」。
【4】徹底する。
「切り換わって」いるので、克己心や意志の力は必要としないが、切り換わったが最後、徹底する。(ヨーロッパロケには玄米のレトルトパックを持参。)
【5】3ヶ月で10キロ痩せる。
最初の4、5日で3キロばかりパッと痩せ、その後10日から2週間ぐらいまではぴたりと体重の変化がとまって何事も起こらなくなる。この時期をもちこたえると、あとは順調に減っていく。
と、いうのが、イタミ式ダイエットの方法と過程だそうです。
今の自分は【1】についてはよく判る状態にきているのですが、【2】の「切り換え」が訪れる気配がまったくありません......というのは伊丹さんによれば当然で、切り換わらない人は切り換わらないそうなんです。
【6】なぜ切り換わるのかは、生育史的な問題
母親・父親との関係、人との関係の取り結び方についての考察が、自分に適したダイエットの「型」の発見につながる。(伊丹十三は「カタストロフィ型」。)
伊丹十三にとっては、ダイエットも精神分析の領域だったのですね。
自分の「型」を見つけるために、私も自分を見つめるよりほかないようです。
以上、【1】~【6】は、『フランス料理を私と』(1987年)の玉村豊男さんとの対談より、抜粋してまとめさせていただきました。対談を収録した時に伊丹さんがダイエットに取り組んでいたので、格好の話題になりました。
絶版のため、ご興味おありの方は古書店でお求めください。
現在3,000円程度が相場のようです。
対談相手の家のキッチンで伊丹十三が本格的なフランス料理を作り、それを食しながら対談する、という趣向の本なのですが、「そんな企画の最中にダイエットだなんてつらかったのでは」......と思いきや、自分があまり食べられない料理であっても、嬉々として作っていたというのですから脱帽です。玉村さんとの対談をしめくくって曰く「もう、楽しくて、楽しくて(笑)」と。自己分析を極めると、こんな境地にまで行けるものなのですねぇ。
それではみなさま、食べるもよし、食べながら省察するもよし、減量を試みるもよし、それぞれに、よい秋をお過ごしください!
学芸員:中野
2015.09.28 常設展示室の引出しの中をお見逃しなく
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
昼間はまだ少し汗ばむこともありますが、特に朝晩はめっきり冷え込むようになってきました。夏の疲れも出てくる時期ですので、体調を崩されないよう、どうぞくれぐれもご自愛くださいね。
さて、記念館にある展示室2つのうちの一つ、常設展示室には、いくつか「引出し」があります。
展示台に据え付けられたこの引出しは、展示コーナーそれぞれに合った取っ手の形や大きさをしており、その中にも、伊丹さんのオリジナル原稿や著書、雑誌、愛用していた文房具や食器類、衣服、エッセイその他で目にしたことのあるイラストなど、様々な展示品が収められています。
実はこの引出し、お客様ご自身で開けたり閉めたりして中の展示品をご覧いただけるスタイルの展示なのです。
「展示なのに触ってもいいんですか?」と仰るお客様もたくさんいらっしゃるのですが、開けるワクワク感も含めて楽しんでいただきたい展示ですので、ご遠慮なく、しっかり手前まで引いて中の展示品をご覧になってください!
どのコーナーに引き出しがあるのかは展示品リスト(受付を済まされたお客様にお渡しします)に記載されていますが、引出しがきっちり閉まっている場合など、取っ手の位置がお分かりになり辛い時はスタッフまでお気軽にお声掛けくださいね。どうぞお見逃しなく!
常設展示室には、他にも手まわし式イラスト閲覧台など引出しと同じくお客様ご自身が触って、動かしてご覧いただく展示がございます。記念館にお越しの際は、じっくりご堪能くださいませ。
スタッフ:山岡
2015.09.21 記念館の入館チケット
伊丹十三記念館のチケットは落ち着いた黒色の厚紙でできており、記念館のロゴと伊丹さんのイラストがデザインされています。まずご来館のお客様に受付でお渡しするのですが、皆様から大変ご好評を頂いております。
大人と高校生・大学生で使われているイラストは異なります。向かって右が高校生・大学生のチケットで左が大人のチケットです。
高校生・大学生のチケットで使用されているイラストは、伊丹さんの人気のエッセイ「女たちよ!」の中の「ハリーズ・バーにて」という話の挿絵です。
クラブ・ハウス・サンドウィッチという大型のサンドウィッチを食べる人の姿が描かれており、イラストには「ベーコンはこまかく切っていれよう。」と書かれています。
「ベーコンの炒ったやつなんかはいっていて、うっかり端を銜えて引っぱろうものなら、ベーコンというやつは決して途中で切れないから、中身が巻添えを食って全部外へ零れてしまったりする。
クラブ・ハウス・サンドウィッチはほんとうは手で食べるものではないので、ナイフとフォークで食べるべきものなのかもしれぬ。私はホテルなんかでは、ルーム・サーヴィスでしかこれを食べない。
(略)
すなわち部屋でなりふりかまわず食べるに限るのだ」
と、本文にはこうあります。豪快な雰囲気が表現されたイラストで、まさに「若者=高校生・大学生」のチケットにぴったりなイラストです。
ちなみに、大人のチケットのイラストは、こちらも伊丹さんのエッセイ「問い詰められたパパとママの本」の中の「ママハイツモオ化粧シテルノニドウシテ肌ガアレテルノ?」という話の挿絵が使われています。
イラストには「奥サマガ眠ッテイル間ニモ三十分ニ一度 濡レタガーゼデ顔ヲフイテヤルヤサシイ夫!」とあります。
何のことやら気になりますね。「問い詰められたパパとママの本」も大変人気のエッセイですので気になる方は是非読んでみて下さい!
スタッフ:川又
2015.09.14 アクセス情報
松山を代表する観光スポットといえば、道後温泉が有名ですね。
「道後温泉を訪れる時に、伊丹十三記念館まで足をのばしてみたい」と、当サイトをご覧になられている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
事前に、道後エリアから記念館までのアクセスをお問合せくださる方もいらっしゃいますので、公共交通機関を使用した移動方法をひとつご案内させていただきますね。市内電車(路面電車)と路線バスを乗り継ぐ方法です。
● 市内電車「道後温泉」電停乗車→「大街道」電停下車
乗車時間約11分
↓
● 徒歩/市内電車「大街道」電停→路線バス「大街道」バス停
約2分
↓
● 路線バス(伊予鉄バス「砥部線」)「大街道」バス停乗車→「天山橋」バス停下車
乗車時間約15分
↓
● 徒歩/路線バス「天山橋」バス停→伊丹十三記念館
約3分
※市内電車「大街道」電停と伊予鉄「大街道」バス停は、松山城ロープフェイ乗り場から徒歩5分程ですので、松山城からの移動のご参考にもどうぞ。
市内電車(路面電車)は、JR松山駅や伊予鉄松山市駅、道後温泉等を結ぶ便利な交通機関で、城下をのんびりガタゴト走る様子がいかにも松山らしく、観光客の方にも人気です。
市内電車「道後温泉」駅舎
「道後温泉」駅構内・市内電車車両
明治時代から松山市民の足として親しまれた蒸気機関車を、ディーゼルエンジンで復元した「坊ちゃん列車」も路面電車と同じ軌道を走っていますので、そちらを目当てになさる方もいらっしゃるようです。
ちなみに現在、道後温泉およびその周辺エリアでは、アートフェスティバル「蜷川実花×道後温泉 道後アート2015」が開催されています(2016年2月29日まで)。この会期に合わせて来松なさる方もいらっしゃることと存じますが、同イベントのアート作品のひとつとして、蜷川さんの写真を路面電車の車両全体にまとった「ラッピング電車」も一部運行しているそうですよ。
松山にいらしたら、観光の合間に、記念館にもお立ち寄りいただけましたら幸いです。
スタッフ:淺野
2015.09.07 戦後70年
だまされたものの罪は、ただ単にだまされたという事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも造作なくだまされるほど批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切をゆだねるようになってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任などが悪の本体なのである。
「だまされていた」という一語の持つ便利な効果におぼれて、一切の責任から解放された気でいる多くの人々の安易きわまる態度を見るとき、私は日本国民の将来に対して暗澹たる不安を感ぜざるを得ない。
「だまされていた」といって平気でいられる国民なら、おそらく今後も何度でもだまされるだろう。いや、現在でもすでに別のうそによってだまされ始めているにちがいないのである。
一度だまされたら、二度とだまされまいとする真剣な自己反省と努力がなければ人間が進歩するわけはない。
「文化的無気力、無自覚、無反省、無責任――私のことかしら」とギクリとして、思わず正座しそうになる文章ですが、書かれたのは終戦翌年の1946年。伊丹十三の父・伊丹万作(1900-1946)が、当時の映画界における戦争責任者追及のあり方に疑問を持ったことから、雑誌『映画春秋』創刊8月号に発表した「戦争責任者の問題」の一節です。
我々は、はからずも、いま政治的には一応解放された。しかしいままで、奴隷状態を存続せしめた責任を軍や警察や官僚にのみ負担させて、彼らの跳梁を許した自分たちの罪を真剣に反省しなかったならば、日本の国民というものは永久に救われるときはないであろう。
原発事故から今年の戦後70年にかけて「現代にも通じる」「今の日本のことを言い当てているようだ」と取り上げられる機会が続きましたので、どこかで目にした方、聞いた方も多いことでしょう。
先日は、朝日新聞(大阪版夕刊、愛媛版等)で紹介していただきました。
朝日新聞デジタル 「だまされる罪」鋭い批評(2015年7月25日)
全20回の連載「1945年 夏を訪ねる」の第6回です。
無料登録で全回読めます。ぜひどうぞ。
「戦争責任者の問題」は、ウェブサイト青空文庫で全文お読みいただけますが、2010年に復刊された『伊丹万作エッセイ集』(ちくま学芸文庫)に収録されていて、よく売れています。
記念館のグッズショップでも販売しています。
グッズショップでお買い上げくださる方から、「知り合いに勧められて」「ネットで知って衝撃を受けました」「手元にいつも置いておきたいと思いました」等、お声掛けをいただくことが多々あり、お客様の真剣な眼差しに「しっかりやっていかねば」と緊張を覚えます。
伊丹万作は、「戦争責任者の問題」を発表した年の秋に、この世を去りました。草葉の陰で「アシが70年近くも前に書いたものがまだ読まれているとは、有難い反面、日本も困ったものじゃのう」と嘆息しながら苦笑しているかもしれません。
これからの戦後80年、90年、100年――年月を経るにつれ、驚きをもって注目されるのではなく、万作の説いた自己反省の精神が、誰にとっても当たり前のことになっていくように心から願いつつ、広く長く伝えていきたいと思います。
学芸員:中野
2015.08.31 宮本館長出勤のご報告&「みなさまの声」
夏休みも終わりに近づいた8月27日、宮本館長が出勤いたしました。
忙しいスケジュールの合間を縫っての1日だけの出勤でしたが、事前に出勤情報をチェックして来てくださった方をはじめ、色々なお客様にご来館いただきました。中にはご存じなく来館され、受付で宮本館長に「いらっしゃいませ!」と迎えられビックリ!という方や、この日以前に来館されて館長の出勤日を知り、当日もう一度お越しくださった方も。
皆さまのご来館に、心より御礼申し上げます。
出勤の際は、お客様とお話をしたり握手をしたり一緒に写真を撮ったりなど、ご来館くださる皆さまを元気にお迎えしている宮本館長ですが、そんな宮本館長が非常に楽しみにしているもののひとつに、当サイトにある「みなさまの声」ページがあります。
「みなさまの声」←クリックするとページに移動します
毎週金曜日に更新しているこの「みなさまの声」では、ご来館のお客様から頂戴した「声」を掲載させていただいています。
スタッフからお渡しする用紙にご記入いただいた記念館への感想などを、お写真もしくは伊丹さんの猫のイラストといっしょにご紹介しています。ご協力いただいたお客様から、「来館の良い記念になります」との嬉しいお声をいただくことも。記念館便りをご覧の皆さまの中にも、受付や中庭のベンチ、カフェで、「感想をお寄せになりませんか」とスタッフよりおうかがいした方がいらっしゃるかもしれませんね。
伊丹さんのこと、展示のこと、グッズショップやカフェのこと、記念館全体のこと等々、お客様の色々な「声」をきくことができるこの「みなさまの声」は、宮本館長はじめスタッフ一同、大変励みになっているのです!
ご来館の際には、ぜひ皆さまの「声」をお聞かせくださいね。
スタッフ:山岡
2015.08.24 作ってみました『キューカンバー・サンドウィッチ』
料理通としてもよく知られた伊丹さんのエッセイには、様々な料理のレシピが出てきます。その中から「女たちよ!」に出てくる「キューカンバー・サンドウィッチ」を作ってみることにしました。
どうしてキューカンバー・サンドウィッチを選んだかというと、「女たちよ!」の中で紹介されているレシピの中で一番簡単そうだったからです。ここでキューカンバー・サンドウィッチとはどんなサンドウィッチかご説明いたします。
「このキューカンバー・サンドウィッチであるが、これは実にけちくさく、粗末な食べ物でありながら、妙においしいところがある。
略
パンは食パン、このサンドウィッチに限り、パンが美味しい必要は少しもない。イギリスや日本の、あのオートメーションで作られた、味もそっけもない食パンというやつ、あれでよろしい。この食パンをうんと薄く切り、耳は落としてしまう。これにバターを塗りつけ、薄く切った胡瓜を並べ、塩を軽く振って、いま一枚のパンで蓋をする。これを一口で食べやすい大きさに切って出す。たったこれだけのものなんだが、不思議とイギリス以外の国ではお目にかかったことがない。」
【伊丹十三エッセイ「女たちよ!」キューカンバー・サンドウィッチより】
要は食パンにバターを塗って胡瓜をはさむサンドウィッチということです。
まず、食パンを切って耳を落とす、ということで、普通の5枚切りの食パンを半分に切って耳を落としました。
パンにバターを塗ります。
薄く切った胡瓜を並べて塩を振ります。
ふたをして食べやすい大きさに切ります。
はいできあがり!!
簡単!
さすが伊丹さんの紹介するサンドウィッチ。こんなに簡単なのにとても美味しかったです。皆様にも是非おススメします。
最後に、「女たちよ!」で紹介されている中でキューカンバー・サンドウィッチと同じくらい簡単そうなレシピがありましたのでご紹介します。伊丹さんが5歳か6歳の頃に発明した「サラダ菜のサンドウィッチ」というものです。どんなサンドウィッチかと言いますと、パンにイチゴジャムを塗りたくって、サラダ菜を挟んで食べる、というものだそうです。伊丹さんはエッセイの中で「このサンドウィッチがいかにうまいか。」と述べています。興味のある方は是非サラダ菜のサンドウィッチにも挑戦してみて下さい。
スタッフ:川又
2015.08.17 トークイベント開催決定!
当サイトのトップページでもお知らせしております通り、第7回伊丹十三賞受賞者 新井敏記さんによるトークイベントの開催が決定いたしました!
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【イベント概要】
日 時:2015年11月10日(火)18時開演
会 場:伊丹十三記念館内 カフェ・タンポポ
登壇者:新井敏記氏(第7回伊丹十三賞受賞者)、松家仁之氏(聞き手/小説家・編集者)
ご案内:宮本信子館長
定 員:50名様(事前申込み・先着順・定員に達し次第受付終了)
参加料:800円(入館料含む・事前支払)
※当サイト内に一般申込み受付専用ページを開設いたします。
※11月10日(火)は、参加証をお持ちのお客様のみご入館いただけます。
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新井さんには、「十代から自主制作の雑誌づくりをはじめ、つくりたい雑誌のためにみずから出版社を立ち上げ、以来三十年にわたり、『スイッチ』をはじめとする雑誌、書籍を手がけ、維持発展させてきた経営手腕、編集手腕に対して」、同賞をお贈りさせていただきました(詳しくはコチラ)。
春の贈呈式のお写真
今回は受賞者である新井さんとご一緒に、松家仁之さん(小説家・編集者)にも聞き手としてご登壇いただきます。
松家さんは、新潮社で「考える人」「芸術新潮」の編集長をつとめるなどご活躍なさり、新潮社退社後、2012年には長篇小説『火山のふもとで』(読売文学賞)を発表、現在は文芸誌「新潮」で長篇小説『光の犬』を連載なさりながら、雑誌「つるとはな」の編集制作にも携わっていらっしゃいます。
お二人がどんなお話をなさるのか、とても楽しみです。
また、これまでの受賞記念イベントは、松山市内のイベントホールで開催して参りましたが、今回は宮本信子館長の発案で、はじめて記念館内の「カフェ・タンポポ」で開催いたします。お席には限りがございますが、イベントホールで開催する講演会・トークショーとはまた違った、居心地の良いカフェならではのトークイベントになるのでは......と存じております。
【カフェ・タンポポ】
イベント当日のカフェ営業はお休みし、
店内のレイアウトを変えてお迎えいたします
なお、一般申込み受付は「先着順(定員に達し次第受付終了)」です。受付開始日になりましたら、詳細をご覧いただける申込み受付専用ページを当サイト内に開設させていただきます。
皆様のご参加をお待ちしております。
スタッフ:淺野
2015.08.10 季刊『25時』伊丹十三特集号のお知らせ
立秋を過ぎ、朝夕の日差しには秋めいた光が混じるようになってきました。
暑さはまだ続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
私はモッサリと伸びた髪を切りに行き、久し振りにごく短くしてみたところ、風通しよく、軽くなってサッパリしました。酷暑対策としておすすめいたします。
さて、本日は、7月下旬に発売になった伊丹十三特集雑誌のお知らせです。
季刊25時 Vol.7 Summer 2015(経堂福島出版社発行)
特集「ぼくたちの大好きな伊丹十三。」
B6サイズ・100ページ / 税込500円
取材の申し込みをいただいたとき、『25時』という風変わりなタイトルに興味津々でいましたら、その後、書面でこんな風にご説明くださいました。
25時。
今日でもなく、明日でもなく。
一日の終わりであり、一日の始まりでもあり。
なにかとたいへんな一日が終わって、大好きな酒場へ立ち寄ったとき、
ちょっとページをめくりたくなる、そんな雑誌があってもいいんじゃないの?
そんな思いから企画がめばえ、友人・知人の多大な協力によって生まれた雑誌です。
「今日でもなく、明日でもなく」「大好きな酒場で」「ちょっとページをめくりたくなる」――見本として送っていただいたバックナンバーをめくって、唸りました。軽やかでコンパクトな作りの中に、塩梅よく詰まった、まじめだけど気さくなイイ話......「これは確かに、酒場における25時の理想的な雰囲気!」と。
俳優で放送タレントの松尾貴史さん、コメディーライターの須田泰成さん、コピーライターの西林初秋さんのお三方が編集委員をお務めです。(みなさん手練れのお酒呑みに違いありません。)
読み応えがあり、伊丹さんのいろんな表情が見えてきそうな記事ばかりで、特集を構成してくださいました。
- フードコラムニスト門上武司さんの記念館案内記
- 伊丹映画の音楽プロデューサー立川直樹さんの回想エッセイ
- 辻調理師専門学校・水野邦昭先生&岩井清次先生の『フランス料理を私と』秘話
- 伊丹十三のお酒名言集
酒場を出ての帰り道、「今日は何だかいいお酒だったな」と感じ入る晩を、誰しも経験したことがおありかと存じますが、『25時』の読後感はまさにそんな感じです。伊丹さんゆかりの方々や、伊丹さん本人と偶然に隣席になって、「チョイといいお話を聞けちゃった、明日もいい日になりそうだ」と思えるような、そういう気分を味わっていただけたら幸いです。
『25時』Vol.7は、当館グッズショップのほか、オンラインショップでも販売しています。夏の夕涼みのお供や、親しい方へのちょっとしたプレゼントにぜひどうぞ。
※Amazon.co.jpでは『25時』バックナンバーの取扱いもあります。
詳しくはコチラをどうぞ!
企画展示室の小企画「伊丹万作の人と芸術」コーナー
芭蕉俳句の手作りカルタを入れ替えました。秋の季語シリーズです。
暑さのピークもあと少し。油断なく乗り切りましょう!
学芸員:中野
2015.08.03 夏の課題の参考に
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
梅雨もすっかり明け、暑く...ほんとうに暑くなってまいりました。体調を崩されませんよう、皆さま、水分・塩分を適宜とって健康にお過ごしくださいね。
さて、夏休み中のこの時期になると、学生さんが自由研究などの学校の課題で伊丹さんを選択し、どんな人物なのかを調べるために来館されることがよくあります。毎年、「伊丹さんを課題に選ぶなんてカッコイイなぁ」と感心しながらお迎えしているのですが、そんな学生さんから、「伊丹さんのことを知るのにどんな本がありますか?」と尋ねられることがあります。本日は、そんな時におすすめする書籍をご紹介いたしますね。
まずは、おなじみ『伊丹十三記念館ガイドブック』!
音楽愛好家、商業デザイナー、俳優、CM作家、映画監督など様々な「顔」を持つ伊丹さんを、その名前にちなんだ「十三」の章で紹介している本です。エッセイからの抜粋や、幼少の頃の観察日記や絵、写真、生原稿、猫のイラストなど図版も豊富。ところどころに伊丹さんと縁のある方々の文章も掲載されています。これから伊丹さんを知る、という方に限らず、読むと「伊丹さんにはこんな顔もあったのか」と新たな発見があるかもしれません。
【写真下は伊丹さんが小学校3年生のときの「夏季日記」(記念館ガイドブックより)】
また、新潮社から出版されている『伊丹十三の本』には、伊丹さんの幼少時代からの未公開写真、手がけたCMやテレビ番組、人気のエッセイ、親しかった方々へのインタビュー、愛用品の数々、妻や子に宛てた手紙などが、盛りだくさんで掲載されています。様々な方面で活躍し、様々なことに興味を持った伊丹さんの、その全貌がこの一冊にまとまっています。
他にも、伊丹監督映画作品の出演俳優、関係者、スタッフなど伊丹映画に関わった方々が、当時を思い出して伊丹さんや伊丹映画について語っている『伊丹十三の映画』では、色々なお話を通じて映画監督・伊丹さんの姿を垣間見ることができます。
上記三冊は記念館オンラインショップでも取り扱っていますので、興味を持たれた方はぜひどうぞ!
スタッフ:山岡
2015.07.27 ほぼ日手帳
あっという間に2015年も半分以上が過ぎました。
1月から使用しているスケジュール帳も少しずつ古くなっていき、月日が経つのを感じます。
ところで皆さんはどのような形でスケジュール管理をされていますでしょうか?
今年から伊丹十三記念館では、スタッフで共有するスケジュールの管理を文庫本サイズの「ほぼ日手帳」で行っています。
皆さんは、ほぼ日手帳をご存知ですか?
ほぼ日手帳とは、「第1回伊丹十三賞」の受賞者である、糸井重里さんが主宰されているウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」から販売されている人気の手帳です。
ほぼ日手帳は1日1ページの配分です。日付や時刻が小さく(しかし大変わかりやすく)表示されているため、1ページのほとんどの部分に自由に書き込むことができるところが魅力です。糸井さんが伊丹十三賞を受賞されたことをきっかけに、記念館スタッフや関係者の中にも何人も愛用者がいます。
具体的に伊丹十三記念館でどのようにほぼ日手帳を使用しているかをご説明します。記念館では開館前と閉館後にスタッフが集まりミーティングを行うのですが、その際、シフト表とほぼ日手帳を開き、当日や翌日の予定、伝達事項などを読み上げ、情報を共有しています。
自由に記入できるスペースが多いため、様々な予定はもちろん、ミーティングで伝えることを「忘れないように今のうちに書いとくぞ!」と、遠慮なくどんどん書き込めます。
また、付箋をそのまま貼りつけるのにも十分なスペースがあるため、手帳から離れた場所にいても、付箋に必要事項を書いておき、後から貼りつけることができるため、書き写す手間が省ける点も魅力です。
厚さがありますが、ページを開いた際、180度開き、片手で閉じないように押さえながら書かないといけないというようなこともありません。
細部において使う人のことがよく考えられている逸品であると感じます。さすが第1回伊丹十三賞を受賞された糸井重里さんが運営する「ほぼ日」の人気商品です。来年も是非ほぼ日手帳を使用したいと考えています。
皆さんにもおすすめします。
スタッフ:川又
2015.07.20 夏にピッタリのドリンク
本日7月20日は「海の日」ですね。
いよいよ夏本番。これからしばらく厳しい暑さが続くことを思いますと、涼をとる方法をいろいろと試してみたくなります。
記念館のカフェ・タンポポでは、夏季限定ドリンク「豆乳ブルーベリー」をスタートいたしました。
この「豆乳ブルーベリー」、昨年の夏にも期間限定メニューとして登場し、ご好評いただきました。豆乳のコクとブルーベリーのさわやかな酸味の相性が良く、「豆乳のにおいが気にならなくて、とても飲みやすい」といったご感想をいただいております。
凍らせたブルーベリーをミキサーにかけていますので、スムージーのような飲み口と、ベリーならではのあざやかな色を楽しんでいただけるのもポイントです。
豆乳ブルーベリー
他にもカフェ・タンポポでは、手作りのオリジナルしょうがシロップを使用した「ジンジャーペリエ」や、ほどよい甘さのみかんジュース「清見タンゴール」など、夏におすすめのメニューをご用意して、皆さまをお待ちしております。
ジンジャーペリエ
カフェ・タンポポ
展示をご覧になられた後は、中庭をご覧いただけるカフェで夏にピッタリのドリンクを楽しみながら、ひと休みなさってみてはいかがでしょうか。
スタッフ:淺野
2015.07.13 宣伝マンとしての伊丹十三
早いもので、この記念館でお世話になりはじめて7年以上が経ちましたが、取材対応の難しさというものを痛感している今日この頃です。
年月を重ねるほどに、「タメになることをお伝えしないと!」「でも間違ったことを口走らないように気を付けなくちゃ!」「宣伝になることもお話ししなければ!」と力んでしまうからでしょうか。
先日も、取材に見えた方が自分の拙い回答を実に丁寧にメモしてくださるので、恐縮しつつ「私の話でいいのでしょうか」と焦っていたら、「いろんな人のいろんな意見を読める記事が面白いんですから、大丈夫ですよ」と励ましのお言葉を頂戴してしまいました。お気遣いいただいてすみません。
(取材対応させていただいたということは、記事にしていただけるということで、間もなく世に出る予定のものがいくつかあるのは楽しみです! 今しばらくお待ちくださいませ!)
さて、取材といえば、伊丹十三が「取材する側」としての力量を大いに揮ったことは、専門的な職業人の世界を舞台にした映画の数々から、みなさんよくご存知だと思いますが、「取材される側」になることにも、積極的に力を注いだ映画監督でした。
脚本を書いて監督を務め、しかも製作費は自己資金。ですから、作品を完成させるだけではなくて、映画をヒットさせるための作戦にも、真剣勝負で挑まなければならなかったのです。
本当に効果的な宣伝方法を考えた結果、高額な費用をかけてスポットCMを流す時流には乗らず、テレビ・ラジオに出演し、新聞・雑誌のインタビューを受けることで作品の面白さを自らアピールする、という方法を取りました。なるほど、私が子供の頃にテレビで伊丹さんの姿を見たのは、今にして思うと、映画のパブリシティが多かったように思います。
そんな風なあの手この手の宣伝作戦の中で、私が「へぇ、面白い!そうだったの!」と興味深く感じたのは、「取材される伊丹十三」と「取材する伊丹十三」が、ひそかに共同作業した「ある仕事」なのですが......
一例として挙げましたのは、監督第2作『タンポポ』(1985年公開)のチラシの裏側。冒頭を拡大しますと......
一見、誰か「聞き手」を置いて、監督に質問しているインタビュー文......と見せかけて、実はこれ、「聞き手」も伊丹さん、つまり「架空のインタビュー」を伊丹さんが創作して書いているのです。「伊丹十三が聞かれたがっていること」をいちばんよく理解している人物(すなわち伊丹十三)に質問してもらうための、最適の方法ですものね。
「自分で書けばタダで済むからサ、これも倹約の一環なのヨ」と言いながら、張り切って書いていたであろう伊丹さんの様子がありありと想像できます。
ほかにも「架空アンケート」形式などなど、凄腕宣伝マン・伊丹十三の創意工夫が詰め込まれたチラシの裏側は、ポスター大に引きのばしたものを全作品分、常設展示室でご覧いただけます。
こんな仕掛けで設置しています
「ふうん、昔の映画のチラシね」と素通りしてしまってはもったいない、映画をご覧になったことのある方にも、ご覧になったことのない方にも、楽しんでいただける読み物です。ぜひどうぞお見逃しなく! 読み出したら途中ではなかなかやめられないシロモノですので、お時間と体力をたっぷり確保してお越しくださいませ。
さて、悩める私も日々よく読み直して、宣伝の極意を学びたいと思います。
学芸員:中野
2015.07.06 ウチワデアオグトドウシテ涼シイノ?
先日、扇子で扇ぎながら中庭の回廊を歩いている女性のお客様がいらっしゃいました。
この時期、百貨店をはじめ色々なお店で扇子のコーナーが作られていたり、実際に扇子をお持ちの方をよく見かけたりするので、暑さ対策の一つとして扇子を持ち歩く方が多いんだなぁと感じます。このお客様も「暑がりだから扇子は夏の外出には手放せないの。なかなか涼しいのよ」と仰り、お話をうかがっている最中もパタパタと扇いでらっしゃいました。
さて、そんな涼しそうなお客様をみて、伊丹さんの「ウチワデアオグトドウシテ涼シイノ?」というエッセイがふと心に浮かびました。タイトルに覚えがある方もいらっしゃるかもしれませんね、伊丹さんの著書『問いつめられたパパとママの本』に載っていて、「うちわであおぐとどうして涼しいのか」を科学的に解説してくれているエッセイです。一部ご紹介しますね。
(前略)さて、そこで、うちわであおぐとどうして涼しいのか。風がくる前の皮膚の状態を考えてみると、皮膚からは絶えず水分が蒸発している。すなわち皮膚に接している空気はいくぶん飽和状態に近い状態におかれると考えていいでしょう。つまりわれわれの皮膚は湿っぽい空気に包まれているわけですね。
そこへうちわの風が新しい乾燥した空気を送りこんでくる。すなわち皮膚に接する空気が乾いた空気と入れ替わるわけで、たちまち、皮膚からの蒸発はさかんになり、したがって皮膚は気化熱を奪われる。熱を奪われるからすなわち涼しい、とこういうことになるのであって、まさかみなさん、風が吹いて涼しいというのが、こんなややこしいことだとお思いにならなかったでしょう。(後略)
この本では、上記の他にも「空ハナゼアオイノ?」「オ昼ナノニドウシテオ月サンガ出テイルノ?」などの質問を、ひとつひとつ、やさしく解明してくれています。本のタイトルからわかるように、子どもの素朴な疑問――でも、改めて聞かれると「あれ、どうしてだろう」と大人が答えに困ってしまう疑問ばかりです。
子どもから「問いつめられる」というのは、普段大人があいまいにしていることを理解するいい機会で、そこでしっかりと認識して答えることで大人自身の物の見方もより深まるのかもしれませんね。
興味を持たれた方は、イザ聞かれたときに備えてぜひ一読してみてください!
【挿絵も伊丹さんが描かれています】
最後に、同じく『問いつめられたパパとママの本』からもうひとつ、夏らしく「夏ニナルトドウシテ暑イノ?」というエッセイをご紹介しますね。
「夏はね、太陽が一年中で一番近くなるの。だから暑いのよ。わかった?」
困るなあ、こんなでたらめを教えてもらっちゃあ。
太陽が一番地球に近づくのは一月の初めであります。夏にはむしろ、太陽は遠くにいるのであります。一番遠いのは七月の初めなのである。
太陽の近さと暑さは、まるでなんの関係もない。
夏が暑いのは、ひとつは日が長いせいであり、いまひとつは、太陽が真上から照りつけるせいであります。
じゃあ、日が長いと、どうして暑いのよ、なんていわないでおくれよ。同じ条件で物を熱するとするなら、十分間熱するより、十五分間熱するほうがよけい熱くなるだろうじゃないの。夏が暑い理由の第一は、だから、日が長いということであった。
では、次に真上から照らすと、なぜ暑いのか、というなら、たとえば懐中電燈を想像していただきたい。
懐中電燈の光を床に当てるとき、まっすぐ床に当てれば、小さいけれども強く明るい光の円ができるだろう。しかるに、それを斜めに当ててみようか。さっきより、ずっと床の近くから照らしても、照らす場所は広くなるかもしれぬが、明るさはずっと希薄になってしまうのが観察されるに違いないのであります。
つまりこの、垂直に照らすということなのだ、太陽がカンカン照るということは。
夏になると、太陽が真上から照らすから(その証拠に、夏の真昼の影は、小さく足元にまつわりついている)、したがって光や熱が強く当たり、冬になると、太陽が斜めに当たるから(その証拠に、冬の日は、真昼でも長く伸びている)、したがって地面を熱する力は弱くなる。(後略)
スタッフ:山岡
2015.06.29 中庭
もうすぐ7月ですが、松山は雨の日も多く、梅雨明けはまだ先のようです。
雨と言えば、記念館を手掛けられた建築家・中村好文先生は以前、雨の日の中庭が一番好きだとおっしゃていました。
さて、その中村先生とお仕事で関わりのある方で、お庭関係の専門家の方が先日ご来館下さいました。事前に中村先生より、「庭木関係で気になることがあればお伺いしてみたらいいですよ」というお言葉を頂いておりましたので、ここ数年間ずっと気になっていた中庭の植物のことをお尋ねしてみました。
中庭は開館当初、桂の木の周りにクローバーやタンポポなどを植えていました。その頃撮影された中庭がこちらです。一面クローバーに覆われているのがご覧いただけるかと思います。
【画像:開館当初の中庭。一面の緑色はクローバーです。】
この撮影のすぐ後、クローバーは大発生した虫に喰われるというアクシデントなどがありまして、結局は環境が合わなかったのでしょうか、全滅するに至りました。
最近では、クローバーに取って代わって出てきた「苔」に、ほぼ埋め尽くされており、タンポポや、後に植えた「ヒメツルニチニチソウ」という植物などが、若干生えているという状況となっています。
【画像:最近の中庭】
【画像:タンポポ】
【画像:ヒメツルニチニチソウ】
開館当初とすっかり変わってしまったこの中庭の状態が良いのかどうかずっと気になっていましたので、この機会にとお伺いしてみました。
すると、有り難いことに「このままでいいと思いますよ。手入れをしすぎていなくて、自然な感じでよい状態だと思います。中村先生もお好きな雰囲気ですよね。」というお答えがかえってきました!
何年も心配していたにも関わらず、専門家に褒められた途端、急にいい感じに見えて来るから不思議です。
雨に濡れた敷石もいい感じです。
ご来館の際は、是非とも中庭にも御注目下さい。
スタッフ:川又
2015.06.22 PERCH BENCH
記念館の展示室をご覧になった後にお通りいただく中庭廻廊には、「PERCH BENCH(止まり木椅子)」という名のベンチがあります。記念館を設計してくださった建築家・中村好文先生デザインのベンチです。
「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載された『伊丹十三特集』のコンテンツのひとつ、『やぁ、いらっしゃい―中村好文さんと歩く、伊丹十三記念館』の中で、中村先生はこのベンチについて――
展示をひととおり見学してきた人たちが、
「伊丹さんて、ほんとうに多才な人だったんだね」
みたいな感じで
このベンチに腰かけてあらためて
想い巡らす時間が持てるようにしたんです。
――とおっしゃっています。
中庭をはさんで向かい合うように、2つベンチがあります
腰を下ろしますと、記念館のシンボルツリー・桂の樹が目の前に。
展示観覧後、余韻に浸るには最適の場所です。皆さま、本当によく腰かけていらっしゃいます。座板の奥行が185ミリと大変スリムで、圧迫感の無いデザインであることも、自然と腰を下ろしたくなる理由でしょうか。
「PERCH BENCH(止まり木椅子)」とは、ぴったりの名前ですよね。
もしこのベンチがこの場所になかったら――記念館でお過ごしくださるお客様の時間の流れ方は、今とは違ったものになっていたかもしれません。お客様に優しいベンチだなと思います。
ご来館の折には是非腰かけて、「想い巡らす時間」を楽しんでみてくださいね。
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【お知らせ】
宮本信子館長が記念館へ出勤いたします!
日時:8月27日(木)11時頃~13時頃まで
当日の状況により、滞在時間は変更になることがありますのでご了承ください。
スタッフ一同、皆様のご来館を楽しみにお待ちしております。
スタッフ:淺野
2015.06.15 読書案内のご案内
今年の母の誕生日、プレゼントのリクエストは本でした。
書名も明確に示してくれたので、本屋へ行って難なく探し当て、淀みない流れでお勘定へ。「チーン!」のその瞬間に、「ハテ、自分がただただ読みたいと思った本を、自分のために買ったのはいつだったっけ?」との疑問から、突発的な焦りで頭が真っ白になる、という経験をいたしました。(私が突然固まったので、書店員さんは「手持ちのお金が足りないの?」と心配なさったかもしれません。大変失礼いたしました。)
最近、読書でのインプットを怠っているなぁ、思考の養分が切れてきたなぁ、と自覚はしていたのですが、サボる口実・できない言い訳は泉のようにわいてくるわけで......それに浸かり過ぎていたと反省。新聞の書評欄は面白いけれど、読書をした気になりがちだけど、それじゃ肥やしになりません! ということで、細かいことは何にも考えずに、かねてより気になっていた本、自分の苦手分野だけどこれは読まなきゃと感じていた本を購入しました。
柴谷篤弘『あなたにとって科学とは何か 市民のための科学批判』
(みすず書房・1977年)
1977年――38年前に出版された本なのですが、実は、1980年に書かれた、ある興味深い読書案内が、これを私に「勧めて」くれたのです。
その案内文をご紹介させていただきますと......
(略)ある科学技術、たとえば原子力発電が実施される場合、その恩恵と被害を国民全体が公平に受けるかというと、その答えは「否」である。科学技術は国民を、恩恵を受けるグループと被害を受けるグループの二つに「必ず」分けてしまうという宿命を持つのである。ではこの場合、被害者の側に分けられてしまった人間は抗議することができるだろうか? これは大変むつかしい。抗議するためには科学の土俵にのぼらねばならぬが、科学というのは仮説であるから、原子力発電を是とする科学も、それを非とする科学も同様に作りうるのであって、どちらの科学を正しいとするかは科学の立場からは出てこない。しかも、科学の土俵に上がったとたん、一番肝心の訴え、たとえば先祖から伝えられた土地と暮らしを守りたい、というような人間的な訴えは「非科学的な」ものとして切り捨てられ、争点はいつのまにか原子力発電の安全性の如き「科学的な」問題にすりかえられてしまう。そして、いったんすりかえられてしまえば、科学技術というのは高度に専門的な領域であるから、一般大衆は無知なる多数として発言する術も資格も持たないト――これが「公平無私」にして「客観的」たるべき科学の、大変生臭い政治的状況であるといえよう。
著者はこのような科学の政治性から説きおこして、ついには、いかにして科学を人間の手に取り戻すべきかの大きな展望を描き出す。高度な内容を平易な語り言葉で展開してくれた著者の努力に感謝。
これを書いたのは――もうお察しですね――伊丹十三です。
初出は1980年に朝日新聞で担当していた連載コラム「一週一冊」で、その後、単行本『自分たちよ!』(文藝春秋・1983年)に収録されました。
ついさっき古書店から届いた『あなたにとって科学とは何か』をめくったところでは、「高度な内容を平易な語り言葉で展開してくれ」ている、と伊丹さんが書いているとおり、真面目だけれど気取りのない先生の講義を聞いているかのようにスルスルと頭に入ってきますし、選ばれている語彙や文の展開に、誠実さを感じます。これなら物理も化学もチンプンカンプンだった私でも読破できそうです。
私たちが今まさに大いに困っている問題についてのヒントを30年以上前の本に求めることになり、長年の不勉強が悔やまれてなりませんが、自分と「同い年」の本でもあるので、ここから始められるのは何かのご縁かも、という気がしています。
「一週一冊」では、他にはこんな本が紹介されていました。
伊丹十三『自分たちよ!』(文藝春秋・1983年)
●フロイト『精神分析入門(正・続)』 ●J.P.シャリエ『無意識と精神分析』 ●岸田秀『ものぐさ精神分析』 ●鈴木秀男『幼児体験 母性と父性の役割』 ●M.J.アドラー、C.ヴァン・ドーレン『本を読む本 読書家をめざす人へ』 ●木村敏『自覚の精神病理 自分ということ』 ●ジーン・マリン『ほんとうの女らしさとは』 ●丸山正男『日本の思想』 ●川島武宜『日本人の法意識』 ●森有正『生きることと考えること』 ●山下秀雄『日本のことばとこころ』 ●森有正『経験と思想』 ●佐々木孝次『心の探求 精神分析の日記』 ●山下恒男『反発達論 抑圧の人間学からの解放』 ●宮本常一『私の日本地図』 ●コリン・ウィルソン『殺人百科』 ●吉田敦彦『神話の構造』 ●B.ベッテルハイム『母親たちとの対話』 ●大塚久雄、川島武宜、土居健郎『「甘え」と社会科学』 ●土居健郎『精神療法の臨床と指導』 ●黒田寿郎『イスラームの心』 ●鈴木秀夫『森林の思考・砂漠の思考』
『自分たちよ!』は絶版ですし、上記の本も、古本で探さなければ手に入らないものがほとんどかと思いますが、雨の季節の読書生活のご参考になりましたら幸いです。
学芸員:中野
2015.06.08 カフェ・タンポポの展示もお見逃しなく
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
ここ愛媛も先週梅雨入りし、週間天気予報などを見ると、それらしくすっきりしない天気が続くようですが、皆さまのお住まいの地域はいかがでしょうか。
さて、当館には「カフェ・タンポポ」があります。
伊丹映画のサウンドトラックが流れる店内で、展示をご覧になった後の余韻を楽しむ、お連れ様と語らう...そんな場所ですが、実は展示室だけでなくここカフェ・タンポポにも、ぜひご覧いただきたい貴重な展示があるのです。
まずは1985年に公開された映画『タンポポ』の製作時、伊丹十三さん自身が描いた出演者の似顔絵!
シャープペンシルで、服のシワやラーメンの湯気など細部まで丁寧に描かれています。この絵をもとにグラフィックデザイナー・佐村憲一さんがデザインした映画『タンポポ』のポスターは、店内、また常設展示室でもご覧いただけます。絵をご覧になった後もう一度ポスターを目にすると、また違った感じを受けるかもしれませんね。
【映画『タンポポ』出演者の似顔絵】
【カフェ・タンポポ店内の映画『タンポポ』のポスター】
そのデッサンの横には、伊丹十三さんの父・伊丹万作さんが、息子の誕生を祝って描いた油彩「ハリコノイヌトトラトガナカヨクアソンデヰルトコロ」(1933年)も展示されています。
父の、子を思う気持ちをじんわりと感じられる、そんな優しく、愛らしい絵です。
【ハリコノイヌトトラトガナカヨクアソンデヰルトコロ】
記念館にお越しの際は、ぜひお見逃しなく!展示のご観覧だけでも、お気軽にカフェ・タンポポにお立ち寄りくださいね。
スタッフ:山岡
2015.06.01 伊丹十三記念館がこの場所にある理由
記念館便りをご覧の皆さまこんにちは。
開館から8周年を迎えた伊丹十三記念館ですが、ご来館のお客様から頂くご質問の中に「どうしてこの場所に伊丹十三さんの記念館が建っているのですか?」とか「ここで生まれたのですか?生前この場所に住んでいたのですか?」とか「記念館ができる前はここは何だったのですか?」などという、この土地と伊丹さんの繋がりについて尋ねられるものが多くあります。
まず第一に伊丹さんの両親の出身は松山ですが、伊丹さん自身の生まれは京都で、高校時代、松山にも数年間住んでいたことがありますがこの場所ではありません。そして、記念館ができる前この場所は「一六タルト」で有名な株式会社一六本舗の社員駐車場でした。
ではなぜこの「一六」の土地であったこの場所に伊丹十三記念館があるのかということをご説明させて頂きます。
まず、一六と伊丹さんの関係ですが、松山では「一六」と言えば「伊丹十三」を思い浮かべる人が多いのではないかと思います。それは伊丹さんが一六タルトのCMに出演しており、そのCMが一度見ると忘れられない、大変インパクトの強いものであったからというのが大きな理由です。この一六タルトのCMを、一六本舗の現社長である玉置泰さんが伊丹さんに依頼したことで、一六と伊丹さんとの付き合いがはじまりました。玉置さんはその後伊丹映画を製作する「伊丹プロダクション」の社長を務めることとなり、伊丹十三記念館を運営する当財団「公益財団法人ITM伊丹記念財団」の理事長も務めることとなりました。
さて、この玉置さんと伊丹さんの関係で、誤った情報がいくつかあります。「一六の社長と伊丹さんは高校の同級生」とか「一六の社長と伊丹さんは親戚」というものです。現在でもご来館のお客様にそのように尋ねられることもあります。松山の人々にとって「一六」と「伊丹さん」との関係の始まりが、ビジネスであったというのは信じられないほど、両者の繋がりに強い印象を感じている人が多い証拠ではないかと思っています。
ところで、どうしてこの一六本舗の社員駐車場だった場所に伊丹十三記念館を作ることになったかということですが、伊丹さんご自身が生前、お父さんである伊丹万作さんの記念館をこの場所に建てたいということをおっしゃっていたからなのだそうです。
かなり端折ってご説明させて頂きましたが、詳しいことは「伊丹十三の映画」(新潮社2007年発行)という本の中で玉置さんがご紹介下さっていますので、興味のある方には是非おすすめ致します。
【画像:左が「伊丹十三の本」、右が「伊丹十三の映画」ともに新潮社から出版されています。】
スタッフ:川又
2015.05.25 開館8周年記念イベントのご報告:「ジョイントライブ」編
先週の記念館便りに引き続き、開館8周年記念イベントの様子をお届けいたします。
本日レポートいたしますのは、伊丹さんのお誕生日でもある5月15日(金)の開館記念日当日に開催した「荘村清志・宮本信子ジョイントライブ」です!
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ライブは、記念館の中庭回廊で開催いたしました。
開演は17時――この季節の夕暮れはとっても過ごしやすい――のですが、当日の天気予報は"夕方から雨"。開演30分ほど前には一時小雨が降り心配いたしましたが、その後は雨に見舞われることもなく、無事お客様をお迎えすることができました。
今回のライブにご出演くださったのは――
伊丹さんの従弟で、日本を代表するギター奏者の荘村清志さん!
ジャズシンガーとしても知られる宮本信子館長!
館長のライブで、いつもピアノを担当なさっている板垣光弘さん!
どんなライブになったのかと言いますと――
宮本館長の開演挨拶のあと、館長と板垣さんによるジャズのスタンダードナンバー「All of Me」でライブスタート。館長が「(一緒だと)安心して歌える」という板垣さんとの演奏は計5曲、軽快なナンバーからしっとりしたナンバーまで、お二人の息はピッタリです。合間の館長のトーク(伊丹さんの思い出エピソード)も、盛り上がりました!
――続いて、いよいよ荘村さんの登場です!まずはソロで、ギターの名曲「アルハンブラの思い出」と、「愛のロマンス(映画『禁じられた遊び』のテーマ)」の2曲を演奏してくださいました。
夕暮れ時に中庭で荘村さんのギターを聴けるなんて――こんなに贅沢なこと、なかなかありませんよね......。皆様、じっと聴き入っていらっしゃいました。
ソロ演奏後は、宮本館長とのトーク。ギターが好きで練習熱心だった伊丹さんの話になり、「まるでプロのように練習していて驚いた」と荘村さん。懐かしそうに、笑顔でお話しくださいました。
以前の記念館便りでご紹介させていただいた、伊丹さんがデザインした荘村さんの渡欧記念リサイタルポスターについてもご説明してくださいました。実は、5月15日限定で常設展示室にそのポスターを展示していたんです。
当日限定展示のポスターと一緒に。
ライブ前に、展示室もじっくりご覧くださいました。
楽しいトークの後は、いよいよジョイントです!「蘇州夜曲」(Gt:荘村さん、Vo:宮本館長)と「港町十三番地」(Gt:荘村さん、Vo:宮本館長、Key:板垣さん)の2曲!
「2曲もご一緒してくださるなんて、荘村さん本当に優しいから」と宮本館長。ご参加くださった約100名のお客様の手拍子に包まれて、最後まで大いに盛り上がりました。
スタンディングでご参加いただくフランクなスタイルのライブではありましたが、宮本館長と板垣さんの演奏にはじまり、荘村さんのギターソロ、そして最後にジョイントと、盛りだくさんの45分間でした。
荘村さん、板垣さん、ライブにご参加くださった皆様、本当にありがとうございました!
無事に8周年を迎えることができましたのも、これまでご来館くださったすべてのお客様、いつもお力添えくださる皆さまのおかげでございます。スタッフ一同、心より御礼申し上げます。
9年目をスタートした伊丹十三記念館を、引き続きどうぞよろしくお願いいたします!
スタッフ:淺野
2015.05.18 開館8周年記念イベントのご報告:「収蔵庫ツアー」編
5月15日は伊丹十三の誕生日にして開館年記念日。私たちにとって特別な日です。
今年は、伊丹十三82回目の誕生日で、開館8周年を迎えた日でした。
今年の記念イベントは「無料開館」(4/5)、「収蔵庫ツアー」(5/9~5/11)、そして、今年は特別に「荘村清志・宮本信子ジョイントライブ」(5/15)を開催させていただきました。
ご参加くださった皆様の楽しそうなご様子をどのイベントでも拝見でき、お祝いしていただいているような気持ちでとっても嬉しかったです。ありがとうございました。
本日は、5月9日(土)から5月11日(月)の3日間各日2回、計6回行いました収蔵庫ツアーについてご報告させていただきます。
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「収蔵庫ツアー」とは何か。それをご説明するには、当館の収蔵庫がどんな風であるかをご説明しなくてはなりません。普通の収蔵庫とはチョット違うのです。
伊丹十三は、俳優・映画監督・エッセイスト・テレビマン・商業デザイナーなど、さまざまの仕事に携わりました。多岐にわたる仕事のそれぞれで書いた(描いた)もの使ったもの、それから日々の愛用品の数々が、「展示風」に収められているコーナーが当館収蔵庫の2階に作られているのです。
「展示風」とは言っても、テーマ立てのある展示室でのご鑑賞とはまた異なった趣きで、お客様の見方・視点やお好みによって、より自由に立体的に伊丹十三を感じていただけるスペースとイベントだと思います。
その収蔵庫では、たとえば......
こんなものや――
こんなものですとか――
こんなもの――
を、「ものと伊丹さんとのエピソード」に関するご説明とともにご覧いただきます。
調子よくしゃべりたおしていると、博物館施設にお勤めの方や、映像制作のプロの方や、伊丹さんの高校の同期生の方がいらしていることが分かってヒヤヒヤの汗を流すことになったりもしますが、いつもお客様と楽しい時間をご一緒させていただいています。
今回は27名のお客様にお越しいただきました。ツアー終了後にいただいたご感想、ご紹介させていただきますね。
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記念館には、開館当初に2回と今回、来る度に伊丹氏の才能に舌をまきます。「女たちよ!」を雑誌に書いていられた頃から、内容にも興味があった。『お葬式』、『あげまん』など映画を始められ、更なる才能の開花を喜んだものだった。
伊丹十三(私たちにとっては池内)が使い・作った品々を目近く見ることができて、胸が熱くなりました。<※松山東高の同期生でいらっしゃるそうです>
一般展示では見られないものを見ることができた。何をするにも、深いこだわりがある伊丹十三の性格がよくわかった。才能があるということは、「変っている」という側面もあるのかなと思った。
伊丹さんをとても近くに感じることができました。いつも思うのですが、こちらの記念館は別荘のように落ちつける場所で、今回3回目ですが、毎回機会を作って訪れるのがとても楽しみです。初代Best Father賞受賞されていたのですね。書ききれないので今回はこのへんで、すみません。
伊丹十三記念館には、2010年に初めて足を運んで以来、今回で5回目となります。今日やっと念願の収蔵庫ツアーに参加することができ、感無量でした。伊丹さんのモノへのこだわりや、蔵書の量に圧倒されるとともに、記念館の形としてアーカイヴを見せる形を備えていることが大変すばらしいことだと思いました。DVD『13の顔を持つ男』に記念館のなりたちが映されていて<※特典映像の「伊丹十三記念館ができるまで」>、ここはぜひ観てみたいな、とずっと思っておりましたので、今日は本当に嬉しかったです。
念願の収蔵庫ツアーに参加できてうれしく思います。本棚をもっと目近かで見ることができればもっとよかったです。伊丹十三さんとの距離が少し縮まった気がします。
原稿や原画は別の機会に拝見したことがありましたが、衣裳や私物を間近で見ることができてとても面白かったです。映画を見返して確認しようと思います。オーデコロンいい香りでした。<※ツアー後に伊丹十三愛用のオーデコロンと同じものをお試しいただけます。>
映画を見返すときの楽しみが増えました。衣裳や小物などの私物を見ていると、なんとなく伊丹十三のモノの考え方が伝わってきて、ついニヤニヤしてしまいます。
宮本様 神奈川県から来ました。湯河原へも行きたいです。十三様のバイオリン、ギターの音源があれば聴かせていただきたいです。
夢の収蔵庫ツアーに参加出来、とても幸せでした! 伊丹さんの私物などとても興味深いものがたくさん見れて、ますます伊丹さんを大好きになりました。楽器を奏でている伊丹さんサイコーです!! ぜひ音色を聞きたいと思いました!! レアー映像があればお願いします!!!
面白い人、何でもできるマルチな才能を持った稀有な人材としか思っていませんでした。今回、収蔵庫を見せて頂いて、ますますの不思議感がつのりました。世の中にこんな人が存在したのだということが驚きです。それが才能のみでなく、不断な努力に根ざしているのだということに納得しました。ほんっとにすごい人です。同郷の人間として誇りに思います。面白かったです。
好きな子の実家に行って、お茶を取りに彼女が行っている間に、その子の部屋をジロジロ見る感じ。何でも見れて少しドギマギする。
今日は楽しい時間をありがとうございました。普段見ることの出来ない貴重な品々に興奮してしまいました。本当にこだわりの人なんだなと実感し、余りにも早すぎた死が残念でなりません。特に、十三さんから信子さんに宛てたカタカナ書きの手紙が私は好きです。(ここには、本当の十三さんが見てとれると思うからです。)よくぞ捨てないでくれたと思います。<※この「手紙」は収蔵庫ツアーではご案内しておりませんが、新潮社『伊丹十三の本』に掲載されているものについてご感想をお聞かせくださいました。>
初めての伊丹十三記念館、そして収蔵庫ツアーの参加でした。前々から伊丹十三ファンでしたが、ツアー中、沢山のことを説明していただき、より一層、伊丹十三のことを理解し、好きになることができました。これを機会に時々、記念館を訪れたいと思います。
あまり意識していませんでしたが、自分の若かりし頃に大切にしていた時間が伊丹さんとつながっていたのだなあと楽しく過ごさせていただきました。
伊丹十三さんと宮本信子さんの生活が目に浮かぶようですごく心地よい気分になりました。説明を聞いた後、又、常設展示も改めて時間を取って観させてもらいたいと思います。気遅れする所があって来ること自体も迷っていたのですが、参加させていただいて本当に良かったです。
愛用品の食器などは、使い勝手の良さそうな器ばかりだなあと感じました。再現のブースの湯河原の家は、間取りとかがあればわかりやすいかなと思いました。収蔵庫にはまだまだたくさんの資料があるようですので、今後の企画展示が楽しみになりました。
今回、バックヤードツアーがあるということで初めて来館しました。愛用品や蔵書をみせてもらってよかったです。ちゃんと作った民芸品がいっぱいあって、それらを選んでいたのだとかんじました。選ぶの・みつけるのも楽しかったのでしょうね。写真ではわからない本人の想いに少しふれられて、来てよかったです。大切に残してください。
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収蔵庫ツアーは、開館1周年記念のときに初めて開催して以来、毎年続けているイベントですので、もう8回目になるのですね......と感慨深くも自分の成長ののろさに驚いてしまいます。
亀の歩みながら「年中行事として担当してきたことで、『その1年間で伊丹十三について自分はどういうことを考えてきたのか』をまとめるいい機会になっているな」と気付きましたし、今回もまた、お客様方とご一緒させていただくうちに、さまざまの「伊丹十三像」を勉強させていただきました。ありがとうございました!
伊丹さんのサイン本をご持参くださった
お客様もいらっしゃいました!
わ、あのサインと同じフレーズですね!!
8周年ともなりますと、「10」の区切りが非常に現実的なものとして視野に入ってきてつい興奮してしまいますが、この記念館に足を運んでくださるお客様と収蔵品を日々大切にして、いい日を重ねていけるように過ごしたいと思います。
これからも伊丹十三と伊丹十三記念館をどうぞよろしくお願いいたします。
※収蔵庫ツアーは毎年3月下旬から4月下旬にかけて参加者を募集しています。
ご興味おありの方は、来年の春にぜひこのホームページを覗きにいらしてくださいませ。
学芸員:中野
2015.05.11 グッズショップからのお知らせ
記念館グッズショップから、期間限定プレゼントと新商品のお知らせです。
期間限定プレゼント:復刻版・金榮堂ブックカバー ※期間5月1日~5月31日
伊丹十三がデザインした、北九州市小倉の書店・金榮堂のブックカバーです。
金榮堂が閉店した後は「幻のブックカバー」となっていましたが、金榮堂書皮復刻製作委員会よりご提供いただいた復刻版ブックカバーを、期間中(5月1日~5月31日)、対象商品をお買い上げの方にプレゼントいたします!
対象商品:伊丹十三記念館ガイドブック/映画『お葬式』シナリオつき絵コンテノート/伊丹万作エッセイ集※/伊丹十三の本/伊丹十三の映画/万作と草田男-「楽天」の絆
※万作エッセイ集はオンライショップでの取り扱いはございません。
新発売:「伊丹さんの言葉」のしおり
記念館グッズショップで、「伊丹さんの言葉」を載せたしおりの販売を始めました。
紙製のしおり1枚につき1つの言葉が載っており、言葉はすべて宮本館長が選びました。それぞれに伊丹さんの描いたイラストを添え、全部で3種類。3つの言葉をご紹介しますと...
○やぁ、いらっしゃい
...常設展示室に入ってすぐ、伊丹さんのパネルにある「やぁ、いらっしゃい」。
伊丹さんの手書き原稿からの言葉です。
○骨が折れまする。
...伊丹さんがよく口にしていた言葉だそうです。宮本館長ならではのセレクトですね。
○「要するにプなんだよ、プ」
...ご存知の方も多いかもしれません。伊丹さんの著書『日本世間噺大系』にある、タイトル「プ」というエッセイからの引用です。
3種類各1枚ずつ入って1セット.。記念館内のグッズショップで販売中です(※オンラインショップでの取り扱いはございません)。文庫本にもお使いいただけるサイズですので、記念館にお越しの際は手に取ってご覧になってみてください。
スタッフ:山岡
2015.05.04 第7回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました!
4月23日(木)、第7回伊丹十三賞を新井敏記さんにお贈りする「贈呈式」を開催いたしました。
会場の国際文化会館。毎年お世話になっております。
六本木ヒルズ森タワーが見えますねえ。
新井さんのご関係者のみなさま、そして、歴代受賞者、伊丹十三ゆかりの方々に当財団の関係者のみなさま、合わせて150名様を超える方々がにぎやかな集まりにしてくださいました。今回は、その贈呈式の模様をご報告いたします。
選考委員・中村好文さんの祝辞
新井敏記さん、このたびは、第7回伊丹十三賞受賞おめでとうございます。
伊丹十三賞は、イラストレーター、グラフィックデザイナー、俳優、エッセイスト、映画監督などなど、さまざまな分野で類まれな才能を発揮した伊丹十三の足跡と業績を称え、伊丹十三さんと同様に、さまざまな分野ですぐれた仕事をしている方にお贈りする賞です。
今回は、雑誌編集者でノンフィクション作家でもある新井敏記さんに受けていただくことになりましたが、実を言いますと、伊丹十三さんが才能を発揮した様々な分野の中に、ちゃんと、雑誌編集者という項目も入っていますから、このたびの新井敏記さんは、伊丹十三賞にまさにぴったりの選択だったと思います。そういう意味では、どこからか「選考委員の面々、よくやった」という声が聞こえてきても悪くはない......ような、気がします。まだ聞こえてこないので(場内笑)、多分、パーティーの席で追い追い聞こえてくるんじゃないかと思います。
「面々」の南伸坊さん、平松洋子さん、周防正行さん、そして宮本館長
わたくしごとになりますが、私が34、5歳の頃に、伊丹十三さんのお父さんで、映画監督だった伊丹万作さんの全集が筑摩書房というところから出版されました。(※1982年『伊丹万作全集』新装版)
一時期、私は、この全集が面白くて繰り返し読みふけっていたことがあります。そしてこの全集の中の昭和19年7月20日の日記の中で、私自身を励まし、勇気づけてくれる素敵な言葉に出会い、胸の奥に深く留めてきました。言ってみれば、私はその言葉を座右の銘にしてこれまで生きてきたことになります。せっかくですから、ここでその言葉をご紹介します。
才能とは努力ではない。それは、一つの事を長い年月にわたって愛しつづけてあきない熱情である。
「静身静心録」伊丹万作全集 第2巻
この言葉こそ、新井さんの才能の中身を見事に言い当てたものだと思います。また、長年にわたる雑誌への取り組みとその成果に、ぴたりと重なり合うものだと思います。そしてこの言葉は、今回の新井さんの受賞に対する、またとない祝福の言葉になっていると思うのです。
「束ねられた状態の紙がほんとに小さい頃から好きで、
高校時代、活版印刷屋に原稿を持ち込んで雑誌を自主制作したとき
印刷機の音、インクのにおいに心が躍った」という
新井さんのインタビュー記事を読んで
「この人は筋金入りの編集者だ」と確信し推挙した、と中村さん。
新井さん、紙の束に目を見張り、活版印刷機の音に胸をときめかせた少年の日から今日にいたるまで抱きつづけた雑誌への熱情をどうか衰えさせることなく、これからも、私たち読者の目を見開かせ、心を躍らせ、時には力強く鼓舞してくれる、すばらしい雑誌を出し続けてください。
このたびの新井敏記さんの伊丹十三賞受賞を心よりお祝い申しあげます。
――えっと、ここまでが......あいさつなんですけど、このあとちょっと付録があります。
最後に余談をひとつ。
新井さんに第7回の賞をお贈りしようと決めたときに、選考会の進行役をしてくださっている松家仁之さんがポツリともらされた言葉がとても印象的でした。
というのは、ある作家の方――有名な作家で『スイッチ』で何度か特集号も出してらっしゃる方なので、みなさんもよくご存じの方ですけれども、えー......その方が新井さんを評して語った言葉が傑作だったのです。えー......
――新井君は、"味方にまわすと"怖い人だ。
神妙な面持ちから一転。
場内からも笑いが...あっ、拍手まで......
なんとなく新井さんのキャラクターとか、編集者としての辣腕ぶりというのを言い当てているような気がして、私は妙に納得してしまいました。
私は新井さんとは、つい先ほど控室でお目にかかるまで面識がありませんでしたけれども、今回のこの会が縁になって、もしも......味方についたりしたら......怖いことになるなぁ、と今はビクビクしています。(場内笑)
ここにいらっしゃる方も、新井敏記さんを味方につけるときはくれぐれもご用心ください。(場内笑)
受賞者スピーチ
今日はほんとうにありがとうございます。「味方にすると怖い男」の新井です(笑)。
3月の半ばぐらいに玉置さん(館長代行・財団理事長)から電話をいただいて、「伊丹十三賞というものがありまして......」という話をされたときに、「あ、また事務方の手伝いをやれっていうふうに言われるのかな?」と思って聞いていたら、「今回、賞を受けていただけますか?」とおっしゃったんですが、自分は今まであんまり経験したことがないので、間髪を入れず「はい」ってお答えしたんです。そしたら、玉置さんがもう一度「授賞を、受けていただけますか?」「はい」って念押しで(笑)。
それほど、僕にとっては賞というものは無縁でした。
中学時代、親友が作文コンクールで県知事賞を受賞。
朝礼で表彰され、作文を立派に披露した親友の姿を見て嬉しくも違和感。
放課後の号令台に立って「ごっこ」を試みたことがおありだそうです。
今回、授賞の理由として、「『スイッチ』を30年続けてきたこと」という言葉をいただきました。
32、3年前、フジパシフィック音楽出版で働いていた友人から、新しく立ち上げるレーベルのPR誌をやらないかと言われて「やるやる!」と受けて、友人と考えていろいろ浮かんだ名前の中で「スイッチ」というのが妙に語呂がよくて、ちょっと調べたら、「変わる」とか、「しなやかな枝」とか、あと「根源」っていう意味があって、僕たちがこれから歩む音楽としても活字としてもふさわしいんじゃないかな、と思って『スイッチ』と名前をつけました。
そのときに、まだ、海のものとも山のものともつかないものに応援していただいたフジパシフィックにお礼を言いたいと同時に、8ページぐらいのタブロイドペーパーだった『スイッチ』をタダで配るのが嫌で、100円の定価をつけて本屋さんに持ってったんです。本屋さんは売れないから困るんですが、そのときある本屋さんのおやじさんに「絶対つぶすなよ」ってことを言われたんです。そのおやじさんの言葉は、僕の中でひとつの思いとして、「雑誌を長く続けなきゃいけない、長く続けないと雑誌というものはほとんどゴミになる」っていうのと同じぐらいすごく胸に残りました。
『スイッチ』は1990年に伊丹十三さんにインタビューさせていただいたんですが、そのとき伊丹さんはちょうど『あげまん』の公開のときで、「人の希望に寄り添うこと、自分の希望に寄り添って、そのふたつをすりあわせること」というのをお話しされたのが記憶に残っています。それは僕にとって、雑誌の編集の「これだ!」という思いを伝えるまたとない機会のひとつになったと思います。
伊丹さんが20代の頃に携わった雑誌『漫画読本』で、輸入漫画の
「ブロンディ」や「意地悪爺さん」を5、6歳にしてご愛読!!
彼が1981年に創刊した『モノンクル』には、インタビューの見事な原稿が掲載されていて、「人に会って話を聞くこと」を伊丹さんに教わったような気がします。
『スイッチ』もインタビュー雑誌として30年経っていますが、その、「人の気持ちに寄り添う」ということを、今さらながらに、この賞を誉れとして、ある種の叱咤激励として受けました。
さっき中村好文さんから紹介のあった「ある作家」の方が、僕は15歳の頃から好きで、当時の日記には「その人になりたい」と書いてたんです。その人の文章からこれから自分が生きていくことへのすごく大きな励ましみたいなものを得たので、まず「その作家になりたい」というかたちがあって、と同時に「その作家がどういうことを考えてるのか、インタビューを通してひとりでも多くの読者に知って欲しい」という思いがあって、雑誌を続けています。
スイッチ・パブリッシングは、今、『スイッチ』(カルチャー雑誌)、『コヨーテ』(旅の雑誌)、『モンキー』(文芸雑誌)、と、3つの雑誌をやってるんですが、その変わらぬ思いの根幹として、人の気持ちに寄り添いながら......ときどき「味方にすると怖い」って言われるんですが、それともうひとつ、基本的に「ドロ舟に乗った気持ちで!」(場内爆笑)っていうのが僕のモットーなので、それを軸として、これからもがんばっていきたいと思います。
今日はありがとうございました。
館長あいさつ
新井さん、ほんとうにおめでとうございます。
こんなにたくさんの、大勢のみなさまにいらしていただいて、お会いできて嬉しゅうございます。
『スイッチ』の創刊30周年のこの2015年、おめでたい年に伊丹十三賞が重なっているというのは、偶然だとは思いますが、ほんとに嬉しく思っております。
新井さん! すごくお若いと思うんですけど、ほんとにお体大切になさって、いっぱいいっぱい、たくさんたくさん、お仕事なさってください! 応援しております!
カンパーイ!
館長の乾杯の音頭で、贈呈式は終了。つまり、お楽しみのパーティーの始まり~! なの・です・が......
主役の新井さんは、ご取材にお越しくださった記者のみなさんに、丁寧に、熱心に、語りかけるように、たっぷりと時間をかけてご対応くださっていました。
(以下、新井さんのお背中を眺めながらのわたくしの回想です。)
思えば、カルチャー雑誌を意識的に手に取るようになった学生時代、大学生協や書店に並ぶ数多の雑誌の中で、『スイッチ』は「近所の(あるいはちょっとした遠縁の)おもろい兄ちゃん」のような存在でした。伊丹さんの雑誌が「ぼくのおじさん」(mon oncle)なら、『スイッチ』は「わたしの兄ちゃん」だったな、と。
たまに会うと、「お前、知ってるか、こんなおもろい人に会ったんだけどさ!」と、おもろい兄ちゃんがさらにおもろい人のことを語りだして、止まらないのなんの。「世の中は広くて面白いのだなあ」と相槌を打つうちに気付けば夜更けに――という具合に、雑誌の重みも構わずに夢中で読むうち、私の腕と肩はカチカチになったものでした。
という例え話を同世代の人にすると、みんな「分かるわ~」と頷いてくれるので、私はちょっと得意な気分でいたのですが、今回、新井さんとお仲間のみなさまにお目にかかって「この方々がみんなの"兄ちゃん"の正体なのね」と感慨深く、心の中で手を合わせた次第です。
<↑ クリックで拡大表示されます ↑>
第1回受賞者・糸井重里さん、第3回受賞者・内田樹先生も
お越しくださってとっても嬉しかったです。
スイッチ・パブリッシングのみなさんもありがとうございました!!
今年もまた「よい会でした」「楽しかった」とのお言葉をたくさん頂戴いたしましたが、お客様方にこそ、気さくであたたかくて愉快な集まりにしていただいている伊丹十三賞です。
年度明けのお忙しいウィークデーにご来場くださったみなさま、まことにありがとうございました。
そして、7回目ともなりますと、「今度の十三賞はどんなイベントにつながるのかな?」と今から楽しみにしてくださっている方も大勢いらっしゃることと思います。
企画発表まで......しばらく......そのまま楽しみに......お待ちくださいませ!
伊丹十三賞、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
【謝辞】
池田晶紀さん、「ほぼ日」のゆーないとさん、
笑顔あふれるお写真をたくさんご提供くださり
ありがとうございました!
学芸員:中野
2015.04.27 記念館のお土産
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。もうすっかりあたたかくなりましたね。
今年2月に、新しく記念館の一員となった記念館入口の桂もしっかりと芽吹き、ご来館くださるお客様をさわやかな新緑でお迎えしています。
カレンダーを見ますと、もうすぐGW(ゴールデンウィーク)!お出かけの計画を立てている方も多いのではないでしょうか。ここ記念館にも、メールやお電話などで「GWに記念館に行きたいのですが、開館しますか?」などの嬉しいお問合せをいただいています。記念館は毎週火曜日を休館日とさせていただいていますが、GW中の5月5日火曜日・こどもの日も開館いたしますので、ぜひ皆さまお越しくださいね(開館カレンダーはコチラ。※画面を下げて右下をご覧ください)。
そして、じっくり展示をご覧になった後は、館内にあるカフェ・タンポポ、グッズショップで、より記念館をお楽しみください。
今回はグッズショップで人気のお土産を少しご紹介します。
●十三饅頭
当館のお土産人気ナンバーワンの「十三饅頭」。
甘さ控えめ・あっさりしたこし餡で食べやすく、季節を問わない人気商品です。そして、ここ記念館だけの限定販売!(売り切れの場合は何卒ご容赦ください。)お饅頭には実際に伊丹さんが書いた「十三」という字を焼き印にして押し、記念館の外観をイメージした箱に入っています。
お饅頭をほおばりながら、お土産話に花を咲かせるのはいかがでしょうか?
●ポストカード
伊丹監督映画作品のポスター、伊丹さんの描いたイラストなどなど、たくさんのポストカードをご用意しております。「○○さんにはコレ、△△さんにはコレ...」と相手の方をイメージしながらお土産に選んだり、ご家族・お知り合いへの、旅先からのお便りにもご利用いただけます。お得なポストカードセットもございます!
●マグネット
伊丹さんのエッセイにあるイラストを印刷したマグネットです。マグネットというと、ご家庭では、冷蔵庫の外側にメモ留めなどとしてお使いになる方も多いのではないでしょうか。イラストも、料理や食べ物にちなんだものです。
ご紹介した以外にも、記念館ガイドブックをはじめとする書籍やA4・A5サイズのクリアファイル、ゴム印、手拭いなどなど、たくさんのグッズを取り揃えております。
記念館にお越しの際はご家族ご友人へのお土産に、また、ご来館の思い出に、ぜひ記念館グッズをどうぞ。
スタッフ:山岡
2015.04.20 メンバーズカード会員制度
記念館の中庭にタンポポが咲いています。4月も中頃を過ぎ、菜種梅雨も落ちつく頃だからでしょうか、このところ、より一層元気に咲いているような気がいたします。
さて、現在記念館の受付には、5月のイベント案内や宮本館長出勤のお知らせを設置しています。皆さま興味をお持ちくださり、「宮本館長はよくいらっしゃるんですか?」「イベント情報はどこで確認できますか?」といったご質問をいただきます。
館長出勤のお知らせやイベント情報は、決まり次第ホームページ「ニュース欄」に掲載いたしますが、「伊丹十三記念館 メンバーズカード会員」の皆さまには、それらの情報を、記念館からその都度メール等でお知らせしております。
そんな便利な「メンバーズカード会員制度」とは......
「記念館受付で年会費(5,000円と3,000円の2つのコースがあります)を添えてお申込みいただくと、1年間入館料無料で、何度でもご来館いただける制度」なのですが、
● 館長出勤・イベント・展示替えなどの情報を、ご希望の方にお知らせする
という会員様特典があるんです。会員の皆さまは、しっかりこのお知らせをチェックしてくださっていて、イベント等にもよく参加してくださっています。
他にも、さまざまな会員様特典があります。
● 会員様限定「収蔵庫ツアー」開催
普段は公開していない収蔵庫を学芸員がご案内する人気イベント「収蔵庫ツアー」。毎年5月に開催し(一般応募制)、多くのご応募を頂戴しておりますが、「会員様限定収蔵庫ツアー」を、年に2回(2~3月頃、9月~10月頃を予定)開催しています。
● 記念館主催イベントの優先的なご案内
例えば「伊丹十三賞受賞者による講演会」など、抽選が行われる人気イベントを、優先的にご案内いたします。
● カフェ・タンポポのみのご利用
通常、ご入館料を頂戴した方に限りご利用いただいておりますが、カフェのみでもご利用いただけます。
会員の皆様は、これらの特典を上手に利用しながら記念館を楽しんでくださっています。
2つのコースの違いなど、詳しくはコチラをご覧ください。
こちらが「メンバーズカード」
お申込みいただきましたら、その場でご用意いたします
記念館受付でお申込みいただけますので、ご入会希望の際にはスタッフまでお声をおかけくださいませ。
スタッフ:淺野
2015.04.13 包丁と使い方
すっかり春ですね。伊丹十三記念館の開館月の5月も近づいて参りました。もうすぐ開館から8周年ということで、8年も経つと、家電製品などは順番に壊れはじめたりして、開館当時に購入したものに関して新調を考えたり、改めて見つめ直したりすることが増えました。
例えば開館当初からカフェで使用しているこちらの包丁!購入金額ずばり100円!
最近では生姜シロップ作りなどに使用しています。しかし近頃(というか割と前から)大変切れ味が悪く、使うたびにストレスが溜まります。切れ味を確認するため持参したトマトもやっぱり切れません!
そこで、こちらも持参した「包丁研ぎ」で包丁を研いでみました。
再びトマトを切ったところ良く切れました!
写真からはわかりにくいかもしれませんがが、大変切れ味が良くなりました。まだまだ使えそうです!
さて、伊丹十三記念館で使用している包丁の様子はお伝えした通りですが、料理通としても知られた伊丹さんご自身は、やはり調理道具にも大変こだわりを持たれていたようで、大変良い包丁をお使いでした。出刃包丁、刺身包丁など、種類も多く揃えてたのですが、包丁そのものだけでなく包丁の使い方にも伊丹さん流薀蓄があったようです。
「包丁を持つときには刃の根元近くにある重心を握り、人さし指を包丁の峰の上に乗せる。まな板に対してからだを斜めに構え、包丁とまな板を直角に使う。」
文章ではちょっとわかりづらいですが、伊丹さんのイラストで表すとこのような感じです。
さて、伊丹十三記念館の常設展示室には伊丹さんが愛用していた包丁の展示もしております。一部ではありますが計5点、かの有名な「有次」のものもあります。それだけ揃っていれば料理も捗りそうですね。
ご来館の際は是非ともお見逃しなく!
・・・・・・・・・・・・
第6回伊丹十三賞受賞記念
「リリー・フランキー × 周防正行トークショー」採録ページ公開中!!
詳しくは こちら
スタッフ:川又
2015.04.06 期間限定メニューはじめました
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
ここ記念館では中庭の桂の木も芽吹き始め、すっかり春めいてまいりました。この時期はお仕事や学校関係などで特に忙しくされている方も多いと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、カフェ・タンポポでは、今年も期間限定メニューをはじめました!
まずは豆乳イチゴ。昨年春に始めた新メニューですが、たくさんのお客様からご好評をいただき、一気に人気メニューとなりました。愛媛県産のイチゴと有機大豆を使用した豆乳をミックスしており、口当たりのよいさっぱりした甘さが特徴です。上にミントの葉っぱをのせて、見た目もさわやかです。早速お試しくださったお客様からは、たくさんの「おいしい」の言葉をいただいているんですよ。
そして、暑い季節の定番中の定番・アイスコーヒーやアイスティー、甘口でお子様に喜ばれるマンゴージュースもスタートしましたので、コチラもぜひどうぞ!
【期間限定メニュー:豆乳イチゴ】
また、1年を通してご提供しております、オリジナルしょうがシロップを使った「ジンジャーペリエ」や「ゆずジンジャーペリエ」、3種類のみかんジュースの味の違いを楽しめる「みかんジュース飲み比べセット」などの冷たいお飲み物も、これからの季節は特におすすめです。
記念館にお越しの際はぜひカフェ・タンポポへお立ち寄りくださいね。
・・・・・・・・・・・ 記念館からのお知らせ ・・・・・・・・・・・
宮本信子館長の出勤日が決定いたしました!
当日は、私どもスタッフと一緒にお客様をお迎えいたします。皆さまお誘い合わせのうえ、ぜひご来館くださいませ。
日時:5月16日(土)11時頃~13時頃まで
※当日の状況により、滞在時間は変更になることがございますので予めご了承ください。
スタッフ:山岡
2015.03.30 第7回伊丹十三賞の受賞者が決定いたしました!
すっかり春の恒例行事となりました伊丹十三賞。恒例になるほど続いていることに感慨を覚えますが、この賞を喜んだり楽しんだりくださる皆様のおかげと存じます。ありがとうございます。
今年もすてきな方がご受賞くださることになりました。
第7回伊丹十三賞の受賞者は新井敏記さんです。
佐藤秀明氏撮影
新井さんは、編集者でノンフィクション作家、そして出版社の経営者でもあります。
カルチャー誌「SWITCH」、旅をテーマにした雑誌「Coyote」、文芸誌「MONKEY」。
書店で見かけると独特のたたずまいに惹かれて手に取ってしまう、「ああ、毎号毎号そそる特集を組んでるなぁ!」と唸ってしまう。そんな経験をお持ちの方は多いのではないかと思います。新井さんはその三誌を発行するスイッチ・パブリッシングの代表で、そのうち「SWITCH」「Coyote」二誌の編集長なのです。
野村佐紀子氏撮影
十代から自主制作の雑誌づくりをはじめ、つくりたい雑誌のためにみずから出版社を立ち上げ、以来三十年にわたり、「スイッチ」をはじめとする雑誌、書籍を手がけ、維持発展させてきた経営手腕、編集手腕に対して
という選考委員による授賞理由をお伝えしましたところ、
今までの人生、罰こそあれ、賞とはまったく無縁でした。
全文はこちらでどうぞ
とのコメントをくださいました。賞をお受けになるのは初めてでいらっしゃるそうです。
「罰こそあれ」というのもまた驚きですが......それでも長年お仕事を続けて、多くの方に刺激を与えていらっしゃいます。「SWITCH」は今年で創刊30周年だそうです。(伊丹十三の『タンポポ』と同年なんですね。)
赤阪友昭氏撮影
贈呈式は4月下旬に東京で開催いたします。新井さんやご関係者の方々のお人柄にふれ、より詳しいレポートができると楽しみにしております。皆様も楽しみにお待ちください!
記念館のヤマザクラ咲きました~。春です。
学芸員:中野
2015.03.23 荘村清志・宮本信子 ジョイントライブ
既に当館ホームページ「ニュース欄」でお知らせさせていただきましたが、今年の開館記念日(5月15日)に、開館8周年記念イベントの1つとして「荘村清志・宮本信子 ジョイントライブ」を開催することになりました。
記念館中庭の回廊で開催するスタンディングライブです。
日本を代表するギター奏者の荘村清志さんが宮本館長とご一緒なさるということで、楽しみにしてくださっている方も多いことと存じます。
ところで皆さま、荘村さんと伊丹さんのご関係をご存知でしょうか。
荘村さんのご活躍はよくご存知でも、「伊丹さんとのご関係」はご存知ない方もいらっしゃるかと存じますので、本日はその点をご紹介させていただきますね。
実は、荘村さんと伊丹さんは従兄弟同士――荘村さんのお母様のお兄様が伊丹万作(伊丹十三の父)――なのです。
お二人が初めて会ったのは1963年。荘村さんが中学3年生(伊丹さんはその14歳年上)の時のことでした。
その年に来日したナルシソ・イエペス氏(ギター奏者・作曲家)に認められた荘村さんは、翌年からスペインへ渡ってイエペス氏に師事することが決まっていました。そこで、渡欧を記念した荘村さんのリサイタルを開催することになったのですが――その時、荘村さんのお父様が伊丹さんにリサイタルのポスターデザインを依頼なさったそうなのです。
挨拶のため、初めて伊丹さんの自宅を訪れた荘村さんは、勉強していたバッハの「シャコンヌ」を伊丹さんの前で演奏なさいました。それを聴いた伊丹さん、ヴァイオリニストのカール・フレッシュが解説しているシャコンヌの本を取り出して、荘村さんにプレゼントしたそうですよ。
才能あふれる従弟が奏でるシャコンヌを聴いて、伊丹さんはどんな想いを抱いたのでしょう。完成したリサイタルのポスターは、美しい伊丹明朝でデザインされています。
伊丹さんがデザインした
荘村さんの渡欧記念リサイタルポスター
その後、留学を終えて帰国してからも、荘村さんはときどき伊丹さんに会われたそうです。その頃のエピソードは、『伊丹十三記念館 ガイドブック』に、荘村さんご自身による文章が掲載されていますので、ご興味のある方は是非ご覧ください。
5月15日に開催されるライブ、荘村さんは宮本館長とご一緒にどんな演奏をお聴かせくださるのでしょうか。とっても楽しみです。
ご参加いただくには、当日配布の整理券と入館料が必要です(先着150名様)。
配布方法・注意事項などの詳細はこちらをご覧ください(中庭でのライブのため、悪天候の場合は中止となります。何卒ご了承くださいませ)。
なお、開館8周年記念イベントは他にもございます。
● 4月5日(日) 無料開館
● 5月9日(土)~11日(月) 収蔵庫ツアー(応募制)
皆さまのご来館を、スタッフ一同お待ちしております!
スタッフ:淺野
2015.03.16 時計
こんにちは。記念館の周りの土手には一面の菜の花が広がり、いよいよ春到来の予感です。
さて、今回は伊丹十三記念館で使用している「時計」のご紹介をさせて頂きます。
売店とカフェにそれぞれ設置しているこちらの時計です。
スタッフが使用している事務所や会議室にも同じものを取り付けています。
実はこの時計、生前伊丹十三が自宅で使用していたものと同じものなのだそうです。記念館では日々「伊丹十三記念館は伊丹十三の家です!」とご案内させて頂いておりますが、まさしく!ですね。
E.A.COMBS(コームス)社という英国の老舗時計メーカーの製品です。
無駄の無いシンプルなデザインが記念館の雰囲気とマッチしていると感じますが、デザインだけでなく、非常に視認性が高いところも魅力です。文字盤のシンプルさや秒針のみ赤いところなど、時計を見て一瞬で「何時何分何秒」を判別できます。時計を見るというのは一日に何度も行う行為ですが、それがストレスフリーで行えるというのは、実は大変有難いことだと感じます。さすが伊丹十三が選んだ時計!
というわけで、ご来館の際は是非この時計にもご注目頂き、より一層伊丹十三のおうちに遊びに来た!という雰囲気を感じて頂ければ幸いです。
スタッフ:川又
2015.03.09 ありがとうの日
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
まだ寒い日は続いていますが、草木からは少しずつ春を感じられるようになってきました。ここ記念館でも、入り口横のユキヤナギが白い花をつけたり、トサミズキのつぼみが膨らんできたりと、小さな春が訪れています。
【ユキヤナギ(上)とトサミズキのつぼみ(下)。記念館入り口横で皆さまをお迎えいたします】
さて、来る5月15日、記念館は開館8周年を迎えます。
これまでご来館くださったお客様をはじめ、本当に色々な方々に支えられての8年。宮本館長をはじめとする記念館スタッフ一同、感謝の気持ちでいっぱいです。
(ちなみに「感謝」といえば・・・本日3月9日は数字の3(サン)と9(キュウ)の語呂合わせで「サンキュー」、そこから「感謝の日」もしくは「ありがとうの日」と言われることもあるそうですね!)
そこで、皆さまの日頃のご愛顧への「ありがとう」を詰め込んで、下記イベントを開催いたします!
・・・・・・・・・・・開館8周年記念イベントのお知らせ・・・・・・・・・・・
① 無料開館
2012年から毎年4月の恒例イベントとして皆さまにご好評いただいております無料開館を、今年も開催いたします!ひとりでも多くの方に当館を楽しんでいただきたいと思っておりますので、お誘い合わせのうえお越しくださいませ。
もちろん「また行きたい!」という方のご来館も大歓迎です!
② 収蔵庫ツアー
開館記念イベントとしてご好評いただいている収蔵庫ツアーを今年も開催いたします。
直筆原稿などの仕事や、衣類、食器、楽器などの愛用品が収められている収蔵庫は普段は公開していません。伊丹十三をより身近に感じる絶好の機会です。
熱い伊丹ファンも「伊丹さんってどんな人?」という方も、奮ってご応募ください。
③ 荘村清志・宮本信子 ジョイントライブ
宮本信子館長から、伊丹さんのお誕生日でもある開館記念日にお越しくださる皆さまへ、ミニライブのプレゼントです!
ジャズシンガーとしても知られる宮本館長と、伊丹さんの従兄弟であり、実力、人気ともに日本を代表するギター奏者である荘村清志さんの、スペシャルなジョイントライブ!
伊丹十三記念館だからこそお届けできる、貴重なトーク&ライブは必見です!
日程その他、イベント詳細は↓↓↓をクリックしてください。
①無料開館/②収蔵庫ツアー/③荘村清志・宮本信子 ジョイントライブ
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スタッフ:山岡
2015.03.02 次の冬に向けて
松山では日差しに春らしさが感じられるようになってきました。
と同時に、花粉情報や黄砂情報からも目が離せない季節のはじまりですが、みなさまお元気でお過ごしですか?
企画展示室・伊丹万作手作り芭蕉カルタ
春の季語のものに入れ替えました。
ふきのとう! 春ですねぇ~
寒さに震えていた頃は、あたたかい日差しを恋しく思って「春よ来い早く来い」と毎日念じていたのに、風やお水の冷たさがおだやかになってくると、急に、冬らしいこと、冬しかできないことを「あれもこれもまだやってない!」と思い出し、冬将軍をお引きとめしたくなってしまいます。
冬らしいことの代表に鍋料理がありますね。春を前に「あと何回お鍋できるかな」「お鍋するなら寒いうちね」とお献立の組みかえを図る方もいらっしゃるのではないでしょうか。
鍋料理といえば土鍋。長年、土鍋のある生活に憧れていながら、購入に踏み切れないまま今に至り、そして、やはり今季も買わずに終わってしまいそうです。
たまに「これなら手を打ってもいいかな」というものに出くわすこともあるのですが、検討しているうちに、心に浮かぶ伊丹エッセイのこんな一節――
そういえば、そろそろ土鍋の季節であった。冬になって、いかにも羨ましい具合いに使いこまれた土鍋が出てくる家庭というものは、なんとも奥床しいものである。その家の食生活の長い年輪を感じるのである。われわれ若僧の所帯は、いつになっても土鍋が変に真新しくて、ま、いっても詮ないことだが、興味半減なのですな。
私は土鍋は京都で買うことにしている。現在六つくらいの土鍋でローテイションを組んで、なるべく均等に使うようにしているから、古びてゆく速度はおそろしくのろいのだが、私はこの土鍋を全部京都の窯元で買った。窯元で買うと、土鍋なんていうものはなんとも安いものである。(中略)
窯元で聞いた新しい土鍋を使う上の注意は、使う前に底に墨を塗る。火にかける時、外側が決して濡れていてはいけない。使い馴れるまでは瓦斯(ガス)にかけないなどであった。
『女たちよ!』「サムの土鍋」より
ガスにかけずに炭火で馴らす!? という点からして挫けてしまいますが、ここに書かれている以外にも、たとえば目止めですとか、洗う時は洗剤を使ってはいけない、熱いうちに水につけてはいけないなど、注意点が結構あるのが土鍋というものだそうで。
素材の性質にまで気を配り、手間を払い続け、「食生活の長い年輪」が出るほどに土鍋を"育てる"ことができるのは、大人のわざのように思われて、まだまだヒヨッコの自分には過ぎた道具だと退散してしまうのです。
来季こそ、土鍋のある冬を......過ごせるようになっていると、いいなぁ......
すっかり菜の花が満開になった館の前の土手を眺め、そんな夢を見ている今日この頃であります。
寒さの続く地域もあることと存じますが、どなた様もよい春をお迎えください。
学芸員:中野
2015.02.23 メガネ
コンタクトレンズをやめて、メガネを使い始めてから10年ほどになります。10年にもなると、「メガネは顔の一部」になっています。
であるにもかかわらず、先日、自分の不注意でメガネを壊してしまいました。つるがポキリと折れてしまい修復は不可能。
落ち込みそうなところなのですが、視力低下を機に慌てて購入したフレームで、かけ心地の悪さに悩んでいましたので、「しょうがない」と諦めがつきました。
こだわって選んだものではなかったために、無意識のうちにぞんざいに扱ってしまっていたのかもしれません。メガネ好きとしては、大反省の出来事でした。
――ところで、伊丹さんの映画、登場人物がかけているメガネが印象に残りませんか?
キャラクターをよく引き立てている印象的なメガネたち。繰り返し映画を観ていますと、つい注目してしまいます。
伊丹さんは、映画で使用する衣装や小道具に大変こだわったのだそうです。
『「マルサの女」日記』(1987)には、
ハンカチといえどもアップになる瞬間は大俳優と同じく主役の扱いである。おろそかに決めるわけにはゆかない。
とあります。伊丹さんらしいこだわりですね。
現在、記念館の常設展示室「映画監督」のコーナーには、映画で小道具として使用されたメガネたちを数点展示しています。
ぜひお近くでご覧になってみてくださいね。
スタッフ:淺野
2015.02.16 桂の植え替えと剪定
記念館のシンボルツリーである、桂の木。
記念館には、正面に2本と中庭に1本の合計3本植えています。
この度、枯れてしまった正面南側の桂の木の植え替えを行いました。
水遣りは他の木と同じようにしていたのですが、ここ数年いよいよ元気がなく、葉もほとんどつかないという状態が続いていたのです。
「開館から今までどうもありがとう!」と、お礼を言ってお別れをしました。
というわけで、この度、新しい桂がやってきました。
同じ愛媛県内で、タオルや焼き鳥、「バリーさん」等で有名な今治市から。 とても元気の良さそうな木です。
枝も多くて、葉がついたら綺麗なのではないかと想像しています。
また、中庭の桂は、一部剪定を行いました。 下のほうの枝を少し落としました。
剪定を行うにあたって、伊丹さんのとあるエピソードを教えて頂きました。
伊丹さんが住んでいた湯河原のお家に、みかんの木があったそうです。
その枝を植木屋さんが木にとって良いように剪定して下さったそうですが、木にとっては良くても、伊丹さんにとっては気に入らなかったようで、「もう湯河原の家には帰らない!」と言って、しばらく帰って来なかったそうです。
という訳で、造園会社の方と私とで、枝を一つ落としては遠くから眺めてチェックして、一つ落としてはまたチェックして、ということを繰り返し、仕上げました。
お陰様ですっきりいい感じに仕上がり、きっと伊丹さんも気に入って下さっているはず!
桂の木に葉がつきはじめるのは、毎年3月末頃です。
小さい葉が日に日に成長をして、毎朝「昨日より成長している!」という感じで4月中にぐんぐん伸び、記念館の開館記念日である5月15日ごろにはとても綺麗な黄緑色の丸くてかわいい葉が茂って、見頃を迎えます。
機会がありましたら是非見にいらして下さい。
スタッフ:川又
2015.02.09 館長出勤について
立春の2月4日、宮本館長が2015年初めての出勤をいたしました。
なお今回、翌日5日にも出勤を予定しておりましたが、当日の悪天候による搭乗便変更のため、やむなく出勤を中止させていただきました。
楽しみにしてくださっていた皆さまには、この場をお借りして心よりお詫び申し上げます。
出勤は1日のみとはなりましたが、私たちスタッフと一緒に、この日たくさんのお客様をお迎えしました。ほんの一部ですが、お写真にて様子をご紹介させていただきますね。
お客様をお迎えする以外にも、スタッフから業務に関する報告や相談を受けたり、打ち合わせをしたり......記念館にいる間、宮本館長は館長業務に大忙し!でした。
お越しくださった皆さま、本当にありがとうございました。次回の出勤は決まり次第、当ホームページ等でお知らせさせていただきます。
スタッフ:山岡
2015.02.02 新展示品のご紹介
展示品を一部入れ替えました。
常設展には初展示の資料あり――
書き直しがウッスラ見えたりするのも
原画ならではの楽しみですね
絵コンテは絵コンテでも......さて何の絵コンテでしょう!?
"復活"資料あり――
以前展示していたものは見せ方にちょいと工夫を......
ズレてる? いいえ、ズラしているのです。
見ていただきたいところがウラにも内側にもあって大変!
解説リストにもマメ知識をところどころ加えていってますので、リピーターのお客様も「何度も来てるから今日は要らないよ」とご遠慮なさらず、ぜひ受付でお受け取りくださいね。
企画展も、展示資料とテレビ番組映像を計20点ほど入れ替えました。
TVドキュメンタリー『天皇の世紀』ナレーション原稿。
幕末のあの有名人についてのひとこと!
テレビ番組映像は、『遠くへ行きたい』第114回「旅のイロハのイ」(1972年)。
この回の見どころはひとことでは言い尽くせませんが、伊丹さんは出演は少なめで、演出者としてクレジットされています。伊丹さんがあまり出ていないなら誰が出ているのかというと、ナント、宮本館長が出演しているのです。
宮本館長は、旅の神様・宮本常一先生(!)から風景の読み方を学ぶ(!)、いわば「生徒役」(!!)なのですが、「あっ、分かったワ!」というときの反応がすばらしい。心に弾力のある若い人がこんな風にイキイキと話を聞いてくれたら、嬉しくてどんどん話しちゃうだろうなぁ、と。
そんな様子も楽しい映像をたっぷり番組1本分、4月下旬までご覧いただけます。
春のお出かけは記念館へ。お待ちしております。
学芸員:中野
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<宮本館長の「出勤」情報>
2月4日(水)11時頃から16時頃まで
2月5日(木)11時頃から13時頃まで
※当日の状況により滞在時間は変更することがございます。ご了承ください
2015.01.26 『主夫と生活』関連イベントのおしらせ
エッセイ『主夫と生活』(マイク・マグレディ著・伊丹十三翻訳)が、昨秋新装復刊されたことは、以前の記念館便りでお知らせさせていただきました。
記念館グッズショップの書籍コーナー
もちろん、記念館グッズショップでも販売を開始しております。
今回の復刊版には、内田樹さんによる解説が新たに収録されていることも大きな魅力です。『主夫と生活』が生まれてから時を経て、「いま」読むことの面白さを教えてくれます。この解説を読んで、「過去に読んだことがある」という方にも、ぜひ復刊版を手に取っていただきたいな、と感じました。
さて、この『主夫と生活』の新装復刊をてがけた出版社「アノニマ・スタジオ」が、2月7日・8日に、本好きのためのブックフェア「BOOK MARKET」を東京で開催するそうなのですが――そのブックフェアイベントのひとつに、伊丹さんをテーマにしたトークイベントがあるのです。
イベントタイトルは、「とんでもなく偉大なおじさん、伊丹十三のこと」。
ご出演なさるのは、伊丹さんの著書のデザインや伊丹映画のアートディレクターを担当なさったグラフィックデザイナー・佐村憲一さん(『主夫と生活』のエディトリアルデザインを務めていらっしゃるのも、佐村さんです)。
開催地は東京・蔵前とのこと。ご興味がおありの方は、イベントを主催する出版社「アノニマ・スタジオ」のホームページで詳細をご確認くださいませ(参加には事前予約が必要です)。詳細はコチラ。
ところで、佐村憲一さんといえば――細部までこだわってデザインなさった伊丹映画のポスターが、当館の常設展示室でご覧いただけます。
間近で楽しめる可動式パネルになっていますので、ぜひ記念館でご覧くださいね。
スタッフ:淺野
2015.01.19 宮本信子館長の出勤が決定しました!
皆さま、お待たせいたしました! 宮本信子館長の記念館への出勤が決定致しました!
今回は、2月4日(水)2月5日(木)の連続2日間の勤務です!
●2月4日(水)11時頃から16時頃まで
●2月5日(木)11時頃から13時頃まで
(当日の状況により、滞在時間は変更することがございます。ご了承ください。)
館長の出勤時にはこれといった特別なイベント等はありませんが、私達スタッフと色違いの制服を着用し、受付でお客様をお迎えしたり、写真撮影をしたり、お客様とお話をしたり、と、館長がいる間、受付は館長を囲むお客様で賑わいます。事前に情報を得られ、予定を合わせて来て下さるお客様も、ご存知なく、来てみてびっくり!のお客様も、とにかくお客様がみなさん大変喜んで下さいます。
実はスタッフは、「今日館長さんいらっしゃいますか?」とか、「次に館長さんいらっしゃるのはいつですか?」とか、毎日のようにお客様に尋ねられているのです。 ついに次の出勤のご案内ができる!ということで私たちも大変嬉しく思っています。
皆さま当日はお誘いあわせの上、ご来館下さいますよう、宮本館長はじめスタッフ一同、心よりお待ち申し上げております!
スタッフ:川又
2015.01.12 DVD『13の顔を持つ男』
年末年始、皆さまはどのように過ごされましたでしょうか。
ご自宅で過ごされた方の中にはゆっくり映画鑑賞という方も多かったのではないかと思います。年明けに記念館にお越しくださったお客様にも、年末年始に伊丹映画を観たという方が何名かいらっしゃいました(面白おかしく映画の感想を話してくださるお客様もいて、年明け早々、ついつい仕事を忘れて(?)聞き入ってしまうこともありました)。
そして、伊丹十三記念館限定販売のDVD『13の顔を持つ男-伊丹十三の肖像』をご覧になったという方も。やはり年末年始のお休みを利用して観賞されたそうで、「観たらここに来たくなってしまいました」とうれしいお言葉をいただきました。記念館グッズショップとオンラインショップ限定の販売にも関わらず、根強い人気を誇るこの『13の顔を持つ男-伊丹十三の肖像』。ちょっとご紹介します!
『13の顔を持つ男-伊丹十三の肖像』
オープニングとそれに続く第1章・「少年・池内岳彦 この父にしてこの子あり」から始まり、142分にわたって伊丹十三の生涯を紹介しています。
その特長はなんといっても、デビュー当時の映像や人気のCMの数々、ドキュメンタリー番組に出演していた際の映像など、今では貴重な映像が数多く収録されていること!
さらに、伊丹さんにゆかりのある方々総勢18名が「あの日の伊丹十三」「知られざる素顔」を語っています。
常設展示室の展示映像も一部収録されています
また、本編とは別に特典映像もおさめられています。題して"伊丹十三記念館ができるまで"。
ナレーション曰く、「その計画から完成までを見つめてきた記録」です。
私がこの記念館でお仕事をさせていただくようになったのは2012年秋からでしたので、オープンまでの様子を垣間見ることができるこの映像は、本当に興味深く貴重なものでした。建物をはじめ少しずつ出来上がっていく「伊丹十三記念館」にワクワクしながら、この記念館が伊丹さんの、そして伊丹さんへの思いがたくさん詰まった場所なのだと再認識するのです。
興味を持たれた方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
スタッフ:山岡
2015.01.05 50周年
あけましておめでとうございます。2015年、いかがおすごしですか?
元日、岩手から愛媛に戻る途次、
新幹線車内から岩手山が見えました。
ありがたきかな。
「今年は"20十三"年ですね!」と書いたのが、昨年ですらなく一昨年、という事実に気付いて驚愕しております。ついこの間のことのように記憶しているのに......なんということでしょう。
昨年は、とくに大きな声では申しあげませんでしたけれど、『お葬式』公開すなわち伊丹十三映画監督デビュー30周年でした。
今年2015年は、『お葬式』の翌年に公開された第2回監督作品『タンポポ』から30年、ということになるのですが、映画監督以前からの仕事である文筆業でいいますと、初エッセイ集『ヨーロッパ退屈日記』刊行から50年、なのであります。
左:ポケット文春、右:B6判
ポケット文春の頃は、伊丹「一三」(いちぞう)でした。
1965年にポケット文春シリーズから出た『ヨーロッパ退屈日記』を1974年にB6判へ改めたときでさえ、若かった自分の書いた文章について「われながら青臭く、うとましく、恥ずかしさのみが先に立つ」とあとがきに綴った伊丹さんですから、こんなにも長く読み継がれることになるとは、想像もしていなかったことでしょう。
その後、文春文庫になり(1976年)、新潮文庫になり(2005年)、多くの方に読まれ愛され続けて半世紀――イヤハヤ!
長く読まれてきたエッセイは(たとえば『枕草子』のように千年以上の時を経たものでも)、書かれている内容・出来事・情報が面白いとかタメになるとか歴史を学べるとかいうことを超えて、著者のするどい着眼点のありよう、もっといえば、世界に対するすぐれた皮膚感覚を、力強く、しかし心地よく、いきいきと、私たちに追体験させてくれる、そういう魅力があると思います。書き手の「発するもの」や「発し方」ばかりではなくて、その手前にある、ものごとの「受け方」に感銘を受ける、といいますか。
読み終えて顔を上げると世界がちょっと違って見えるような不思議な感じが、『ヨーロッパ退屈日記』を初めて読んだときも、しましたっけ。あの感じは、ほんとうに愉快なものですね。
未読の方、どこかでこの本を(もちろん他の伊丹エッセイでも!)見かけたら、ぜひお手に取ってみてください。ちょっぴり伊丹十三になることができ......るかもしれません!
出版から絶版へのサイクルがどんどん速まっているこのご時世にもかかわらず、たくましく50周年を迎えようとしている伊丹十三の初エッセイ集を眺めながら、「このホームページや展示でいい発信をするために、私も受ける力を鍛えて磨かなくちゃ」と、そんなことを考えている年頭です。
本年もどうぞよろしくお願い申しあげます。
学芸員:中野
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<おしらせ>
日本映画専門チャンネルの戦後70年企画「ある日本映画史~長門裕之と津川雅彦の場合」で、津川さんの代表的出演作として『あげまん』が放送されます。津川さんのインタビューもたっぷりの特別番組と併せてお楽しみください! 伊丹万作脚本の『無法松の一生』(子役時代の長門裕之さんが出演)も放送されますヨ!!
(※受信契約の必要な有料チャンネルです。新規契約の場合、機器のご入手・設置に日にちのかかることがあるようですので、ご興味おありの方はお早めにご検討を!)
2015.01.02 館長・宮本信子から新年のご挨拶
現在の企画展「旅の時代-伊丹十三の日本人大探訪-」を、一部新しく致しました。
私の若い頃出演した「遠くへ行きたい」の映像を御覧いただけます。
すっかり忘れていましたので、改めて見ました!
あまりの若い自分にのけぞり~、懐かしさ一杯になりました!
今年もよろしくお願い致します。
スタッフ一同、心よりお待ち申しております。
宮本信子
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