こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2016.12.26 2016年・記念館ショップの人気TOP5
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。2016年も残すところあとわずかとなりました。
さて本日は、年内最後の記念館便りの更新ということで、今年1年、記念館ショップで特にお客様に人気のあった商品TOP5をご紹介したいと思います!
●十三饅頭
何度となく記念館便りでもご紹介してきました、記念館ショップで人気No.1の商品です。宮本信子館長プロデュースのこだわりの一品で、リピートしてお買い求めくださる方も。
記念館限定販売ですので、ご来館の際はぜひどうぞ!
●伊丹十三記念館ガイドブック
こちらもおなじみですね!
伊丹さんの名前にちなんだ「十三」の章で伊丹十三という人物を紹介しています。音楽愛好家、商業デザイナー、俳優、CM作家、映画監督など様々な「顔」を持っていた伊丹さん。読むと新たに発見があるかもしれません。
持ち運びしやすいコンパクトな文庫サイズで、表紙はイラスト版と写真版の2種類ございます。
●ポストカード
伊丹映画のポスター、伊丹さんや記念館の写真、伊丹さんが描いたイラストなどのポストカードです。お土産や旅先からの便りとしてもご好評いただいています。お得なポストカードセットもご用意していますよ。
●マグネット
著書「ヨーロッパ退屈日記」「女たちよ!」で伊丹さん自身が描いた挿絵がプリントされています。冷蔵庫の側面にちょっとしたメモを留める時、マグネットを使っている方も多いのでは。そんなイメージから、イラストは料理や食材にちなんだものを選んでいます。
●手拭い
手拭いというと夏場のイメージがありますが、一年を通して人気のある商品です。伊丹十三が描いたカチンコのイラストが並んでいて、色は伊丹さんの好きな黒をはじめとする3色展開。色違いでそろえるのもおすすめです。
いかがでしょうか。記念館便りをご覧の皆さまの中には、「持ってるよ!」「買ったことあるよ!」という方もいらっしゃるかもしれませんね。
上記は全て記念館オリジナル商品でオンラインショップでもお買い求めいただけます(※オンラインショップでは、ポストカードはセット販売のみとなっております)。ちょっとでも興味を持たれた方、また、「もう一度買いたい」という方も、ぜひチェックしてみてください。
最後になりましたが、本年も多くのお客様にこの伊丹十三記念館をご愛顧いただきましたこと、心より御礼申し上げます。
来年5月15日に、当館は開館10周年を迎えます。
新たな節目の年でもある2017年、皆さまに楽しんでいただける記念館であるよう、宮本信子館長・スタッフ一同より一層励んで参りたいと思います。
来年もどうぞ、伊丹十三記念館をよろしくお願いいたします。
スタッフ:山岡
2016.12.19 大掃除
12月も後半ですね。
記念館では毎年12月恒例の大掃除を少しずつ進めています。日々の清掃に加えて、定期的に手入れの必要な作業に取り組んでいます。
たとえば、伊丹さんの愛車・ベントレーを展示している車庫の木製の手すりや、中庭のベンチ――
――毎日拭き掃除はしていますが、さらにワックスで手入れをします。
受付ロビーやカフェのガラスも――
――日々の清掃に加えて、隅々まで念入りに磨きます。
他にも樋や排水溝等々......手間をかけて掃除を行いますと、建物そのものへの愛着が増すように感じます。何よりも、気持ちよくお客様をお迎えできますことを、とても嬉しく存じます。
記念館は、12月27日(火)から年末年始のお休みに入ります。年内の開館は残り1週間、引き続きお客様をお迎えしておりますので、ぜひいらしてくださいませ。
---------------------------------------------
≪ 『タンポポ』凱旋上映イベントのお知らせ ≫
今年10月に、伊丹十三監督作品『タンポポ』が30年ぶりに全米公開されました(4Kデジタルリマスター版)。ニューヨークで行われた公開初日には宮本信子館長の舞台挨拶もあり、大盛況だったそうです。その時の様子は、宮本信子館長Official Site「タンポポだより」でご覧いただけます。
この全米公開を記念して、『タンポポ』の「一夜限りの凱旋上映」が行われるそうです!既に当サイトの「ニュース欄」でもお知らせしておりますが、上映日は2017年1月13日(金)、劇場は東京・有楽町の「TOHOシネマズ日劇」です(応募締切:1月3日)。貴重な機会ですので、首都圏にお住まいの皆さまなど、応募なさってみてはいかがでしょうか。応募方法等の詳細は、このイベントを運営する「日本映画専門チャンネル」のウェブサイトでご確認ください。
≪日本映画専門チャンネルウェブサイト≫
http://www.nihon-eiga.com/campaign/itami2017/
なお伊丹十三記念館では、1月13日(金)には毎月恒例の「十三日十三時の伊丹映画展示上映」を行います。今回の上映作品は『静かな生活』です。こちらも、皆さまのご来館をお待ちしております。
スタッフ: 淺野
2016.12.12 12月10日(土)、11日(日)宮本館長が出勤しました
師走も半ばに差しかかりました。みなさまお元気にお過ごしでしょうか?
記念館では、12月10日(土)と11日(日)、宮本館長が出勤して、スタッフとともにロビーでお客様をお迎えいたしました。
ホームページや情報紙をご覧になってお越しくださった方、ご存知なくご来館になられて「み、宮本さん!!」「えっ、ホンモノ!?」とビックリなさった方もいらっしゃいましたが、みなさま笑顔でお声をかけてくださり、まことにありがとうございました。
この季節特有の慌ただしさを忘れるような、あたたかな賑いが嬉しい2日間でした。
伊丹さんの作品についての思い出や
展示のご感想もお聞かせいただいた上に
ステキな笑顔も頂戴しました!!
「若い方に伊丹さんを知っていただきたい!」と
いつも願っている宮本館長。
間近にお話を伺えて、とっても喜んでます。
さらにお若い(お小さい)方々とのふれあいも
館長の楽しみのひとつでございます。
照れ屋さん、キメ顔さん、どちらにもメロメロ。
イベント、グッズ、メンバーズカード会員様へのお便りなどなど、打ち合わせもいろいろできました。(各スタッフ、館長に時間ができるのを見計らって「館長~ご相談が~~~」「館長~~私も~~~」「次お願いします~~~」という具合です。館長、お疲れ様でございました。)
グッズショップでは岡本ゆうさんの新作を陳列したり......
来年の新商品のディスプレイを決めたり。
いつもながら光の速さで即決に次ぐ即決!!
館長の出勤日程、記念館の最新情報、このホームページで随時発信してまいります。
ぜひ時々のぞきにいらしてくださいませ。来年は......特に盛りだくさんですヨ!!
学芸員:中野
2016.12.05 記念館オリジナルポストカード
ご自分用として、またお土産用や旅先からの便り用として一年を通してご好評いただいている、ショップの人気商品の一つです。記念館便りをご覧くださっている方の中にも、お持ちの方がいらっしゃるかもしれませんね。
そしてこのイラストには、絵柄面によっていくつか種類があるんですよ。
このポストカードでは左上の切手を貼る部分に
猫のイラストがプリントされています。
お客様の中には「ここに切手を貼ってイラストが見えなくなるのがもったいない!」なんて仰る方もいらっしゃいます。
このようなちょっとしたこだわりも、ご覧になるときは楽しんでみてくださいね。
ニュース欄等でもお知らせしているとおり、いよいよ今週末、宮本館長が出勤いたします!皆さまお誘い合わせのうえ、記念館に足をお運びくださいね。
12月11日(日)11:00頃~13:00頃
2016.11.28 読書
電車やバスでの移動中など、外出先でのちょっとした空き時間に本を読んでいる方を見かけることがあります。短い時間でも意外と読み進めることができて、楽しいものですよね。
本を持って出かける時、私は表紙の折れや汚れを防ぐためにブックカバーをつけるようにしています。布製・革製などブックカバーの素材はいろいろありますが、書店でもらえる紙製のカバーを使っている方も多いように思います。布や革のカバーほど丈夫ではありませんが、紙のカバーには薄くて軽いという良さがあります。
記念館のグッズショップでも、対象書籍をお買い求めくださったお客様に紙製のオリジナルブックカバーをプレゼントしています。
色は記念館の外観を思わせる落ち着いた黒で、伊丹さんが描いたイラストのシールがついています。本を読もうと手に取った時に、記念館の雰囲気をふと思い出していただけるかもしれません。お客様から「素敵ですね」とお声をかけていただくこともあります。
このブックカバープレゼントの対象となる書籍はこちらです↓
● 伊丹十三記念館ガイドブック(表紙「イラスト」「写真」の2種類あり)
● 映画『お葬式』シナリオつき絵コンテノート(表紙タイトル「明朝」「ゴシック」の2種類あり)
● 伊丹万作エッセイ集
おすすめの書籍たちですので、ぜひどうぞ。あわせてブックカバーもお使いいただけましたら幸いです。
――ちなみに、記念館内の入館者専用カフェ・タンポポは読書をするのにおすすめです。店内からご覧いただける中庭が、心を落ちつかせてくれますよ。
中庭の桂の樹はほぼ落葉しましたが、
この時期に中庭から見える空は高くて清々しく、リラックスできます。
多くのお客様がカフェで読書を楽しんでいらっしゃいます。皆さまもいかがでしょうか。
スタッフ:淺野
2016.11.21 12月の映画のご紹介 & 宮本館長出勤情報
少し早いですが......どなた様も師走はお忙しいことと存じますので、12月のお知らせを。
毎月13日の13時から常設展示室で開催している「十三日十三時の伊丹映画」、12月は13日が休館日の火曜日にあたる関係で、14日(水)に行います。
作品は『大病人』(1993年)。
テーマは「死」。終末医療をめぐる、癌患者(三國連太郎さん)と医師(津川雅彦さん)の物語です。
パンフレットの作品解説に、伊丹監督はこんな言葉を寄せています。
病院が舞台になる映画を作ることにして、まず最初に考えたのは、等身大の病院の映画は作らない、ということです。その方向ならテレビのドキュメンタリーに絶対勝てないとわかっているからです。(中略)
――すると映画としての勝負は何なんですか?
二人の男がいます。一人は癌の患者、一人は癌と闘うことを職業としている医師です。患者は自分が癌で助からないことを知らない。医師は知っているけど教えない。医師にとって死は敗北であり、自分の守備範囲外であり、興味もないし、したがって適切に対処する能力もない。さあ、この患者がニッコリ笑って死ぬことができるかどうか。この二人の対立を極限まで高め、人格同士の激しいぶつかりあいの結果、最後には二人がスタートとは全く別の高いレベルにまで成長する、というふうに設計しましてね、観客は、二人と共に苦しみ、喜び、最後は魂が洗われた体験をして映画館を出てもらえばな、と思っています。
性格も立場も異なる「二人の男」が「対立」「ぶつかりあい」を経て「成長」する――
この映画のシナリオがいかにして生み出されたか、伊丹十三がどんな作品を意識していたかがよーく分かる資料を、企画展「ビックリ人間 伊丹十三の吸収術」に展示しています。
映画の封切り直後に出版された著書、『「大病人」日記』(1993年)の直筆原稿です。
278ページもある本のうち、展示でお目にかけている部分はたった8ページ分ですが、「バディ・フィルム」「三幕物」という"定型"への挑戦によって伊丹映画が練り上げられていった過程を、楽しく面白く知っていただけます。
(また、この企画展のテーマでもある「伊丹十三の"異文化体験"」について記されている部分でもありますので、大変に貴重で大変にお得な展示でございます。)
伊丹映画と企画展を併せてお楽しみいただく今年最大のチャンス!
『大病人』は12月14日(水)の13時からです、ぜひお越しくださいませ。
*************
さて、その前の、12月10日(土)、11日(日)には、宮本館長が出勤して、ご来館の皆々様をロビーでお迎えいたします。
記念撮影にも対応させていただきます!
12月10日(土)12:30頃~16:00頃
12月11日(日)11:00頃~13:00頃
※当日の状況により、滞在時間等は変更になることがあります。
年の瀬の慌ただしい季節になりますが、記念館では心地良いひとときを過ごしていただけるように努めてまいります。
師走の小休止に、ぜひいらしてくださいね。館長&スタッフ一同お待ちしております。
学芸員:中野
2016.11.14 お気に入りの一冊
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
寒くなってきましたね!一気に冬を迎えてしまったような今日この頃ですが、体調など崩されていませんでしょうか。
さて先日、ご来館にあたって伊丹さんの著書『問いつめられたパパとママの本』を実際に持ってらっしゃったご夫婦がいらっしゃいました。2歳の息子さんとご一緒で、「この子が生まれる前に一度記念館に来て、その時に買いました」とのこと。以来愛読してくださっていて、ご夫婦で何度も読み返してらっしゃるそうです。今回記念館に行こうということになり懐かしくて持ってきました、とお話しくださいました。
【問いつめられたパパとママの本(中公文庫)】
大人がうまく答えられなかったり、あいまいに答えてしまったりする
子供の素朴な疑問を、やさしく解明してくれています。
親御さんに限らずおすすめです!
実はこのご夫婦のように、ご来館のお客様が、伊丹さんの著書を持ってらっしゃることがあります。初版本、文庫本などお持ちの本は様々ですが、「記念館に行くから」ということで持ってこられ、カフェ・タンポポのドリンクを飲みながら読まれる方、「空いた時間に読みたくて旅行中はいつも持ち歩いています」という方、「引越しで荷物を減らしたい時も、これは手放せませんでした。何度も何度も読み返してぼろぼろになんですけど」と仰って実物を見せてくださった方もいらっしゃいました。
皆さま総じて「お気に入り」の一冊として大切にしてくださっているとのこと。伊丹さんの著書、中には記念館でお買い上げくださった本を気に入って長年大切にしてくださっているのを実際に見ると、嬉しいものですね。もちろん、書籍をお持ちでなくても、伊丹さんの著書を「お気に入り」とお話しくださるお客様はたくさんいらっしゃいます。
残念ながら絶版になっているものもありますが、記念館ショップ・オンラインショップでも伊丹さんの著書や関連本を取り扱っています。夜が長くなるこれからの季節、ご興味がある方は伊丹さんの著書にぜひトライしてみてください。長く読み続ける、お気に入りの一冊になるかもしれません!
最後に、上述のご夫婦がお持ちだった『問いつめられたパパとママの本』から、この時期にぴったりの「冬ニナルトドウシテイキガ白クナルノ?」というエッセイをご紹介します。
(前略)空気は、無制限に水蒸気を含むことはできない。おのずから限度というものがある。そうして、空気が、この限度ぎりぎりいっぱいまで水蒸気を含んだ状態を「飽和状態」というのですね。
(中略)
こういうふうに、飽和状態の空気の温度が下がって、はみだした水蒸気が水滴になることを「凝結」というのです。
さて、ここまでくれば、冬、なぜ息が白く見えるか、もうみなさんおわかりになったことと思います。
つまり、われわれの吐く息は、体内でとらえた水蒸気を多分に含んでいるのでありまして、この水蒸気が冷たい空気に触れて、一時的に凝結する。そうして、この凝結によって作られた水滴が、日光を散乱させて白く見える、ということなのですね。
立ちのぼる湯気、曇った窓ガラス、「汗をかいた」ビール瓶など、すべてこの凝結によって説明できる現象です。
では、しばし、熱いお茶でも飲みながら、立ちのぼる湯気に思いをこらしてくださいまし。
スタッフ:山岡
・・・・・・・・・・・・<年末年始の開館・休館のご案内>・・・・・・・・・・・・
12月27日(火)~1月1日(日)は休館とさせていただきます。
1月2日(月)、3日(火)は開館時間を10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきます。
・・・・・・・・・・・・・
2016.11.07 手帳
早いもので、もう11月ですね。
記念館入口横のヤマボウシが色づいています
この時期は、雑貨店などの店頭に来年の手帳がたくさん並んでいて、見ているだけで楽しくなります。皆さまは、どんな手帳をお使いでしょうか。
私は、ひと月の予定がパッとわかるものが使いやすいため、毎年マンスリータイプのものを選んでいます。カバーデザインにはあまりこだわりませんが、書きやすいサイズ・紙質のものを探すようにしています。使い方も単純で、おおまかな予定を各月のページに記入し、細かいことは手帳の後半にあるノートページに書き留めています。それでも忘れそうな予定は、アラーム機能のあるスマートフォンのカレンダーにメモすることもあります。手帳の選び方・使い方は人によってさまざまですよね。
――ところで、伊丹さんはどんな手帳を使っていたのでしょうか......?
現在の企画展「ビックリ人間 伊丹十三の吸収術」の「記録のための愛用品」コーナーに、伊丹さんが愛用していた手帳を展示しています。
「タイムシステム」の手帳で、周りの人にプレゼントするほど気に入っていたそうです。スケジュール管理のフォーマットが独特で、こだわりが感じられる手帳です。また、スケジュール管理だけではなく、同じ手帳の無地リーフには取材メモなどが細かく記してあります。
「何を選び、それをどう使うか」には、その人らしさが出ますよね。
手帳の他にも、伊丹さんらしい愛用品を展示しておりますので、ぜひご覧くださいませ。
スタッフ: 淺野
2016.10.31 いい映画、いい言葉
突然ですが、伊丹エッセイから少々引用を。
子供のころ、お使いに出される時、必ず口上というものを憶えさせられたものだ。
「せんだっては大変結構なものを頂戴いたしましてありがとう存じました。これはつまらないものですがって、そういうのよ。いえる? いってごらん」
という工合であった。
「オバチャン。アノネエ。センダッテハネエ、アノネエ、タイヘンケッコウナモノヲネエ、チョウダイイタシマシテ、アリガトウゾンジマシタ。コレハツマラナイモノデスガッテサ」
「ああら坊や、偉いわねえ、ちゃぁんとお使いできるのねえ。じゃあね、帰っておかあさまにこういってちょうだい。いい? あのね、ええと、とっても結構なものを――」
というようなことであったと思う。
長ずるに及んで勤めに出る。鄭重をきわめねばならぬ、お得意様への電話、なんていうのが自由自在になるには、やはりある程度の期間、敬語の鬼と化するくらい丁寧な物言いに「凝る」ことが必要になってくる。
(中略)子供のころとは違って、もうだれも口移しで口上を教えてくれはしないのだ。
伊丹十三「書き込みのある第一ページ」『再び女たちよ!』より
敬語に限らず、言葉を正しく自由に操れるようになるには、見様見真似が一番のトレーニング。仕事では、職場の先輩方や取引先の方が発する生の言葉を聞きかじっておいて、自分でも使ってみるうちに板についてくる、というのが一般的でしょうか。他社から届いたビジネス文書も非常に勉強になりますね。
もう一歩踏み込んで、先ほど引用した文のように「凝る」ためには、より多くの言葉の、できるだけ多くの用例にふれて、自分だけのコレクションを作っておくことが必要になってきます。自分が生きている場所・時代、勤めている分野以外の言葉も――実際には使うチャンスがなさそうなものでも――とにかくたくさんストックしておくのがいいんじゃないかな、と私は思っています。
小説はもちろんいい教科書ですが、敬語採集のかっこうのカタログとして、それ以上に私がお勧めしたいのが映画。
殊に、名作とされている映画は、必ず、よく練られたシナリオに基いて作られていますから、生きた言葉、極上の言葉が間違いなく詰まっています
古い古い映画で使われている、耳にしなくなって久しいような言葉でも、そのシーン、使われた展開を「いいな」と憶えておけたなら、あるとき(10数年後だったりしますけれど)ポロっと使えたりしますもんね。自分の経験では、紙に書きつけたり暗唱したりする必要はなくて、「いいな」と思っておくだけで結構記憶に残るものみたいです。
伊丹映画は、珍しい業種を取り上げることでいつも話題を集めましたが、それぞれの分野で一生懸命に働く人たちを描いた作品が多いので、「勤め人の言葉」という点でも興味深いセリフがたくさんあります。
毎月常設展示室で行っている「十三日十三時の伊丹映画」、11月の作品は『ミンボーの女』(1992年)。
一言で説明しますと"ある企業の奮闘を描いた、民事介入暴力対策マニュアルにして伊丹式ヤクザ映画"です。
キリリとした女弁護士の緩急の効いた話術には何度も唸らされますし、名門ホテルを舞台とした映画ですから、接客しているときのホテルマンたちの言葉遣いは広く参考になると思います。
もちろん「伊丹式ヤクザ映画」というからには、怖い怖い言葉遣いの方々も多数登場していて、役者さんたちの迫力と魅力のおかげで強烈に印象に残るのですが(監督曰く「映画というものは悪役がよくてはじめて生き生きする」)......コレクションすることはあっても、使う機会のないことを祈ります――
11月13日(日)、13時からです。みなさまぜひお越しくださいませ!!
学芸員:中野
2016.10.24 印伝
この度、記念館ショップで「印伝(いんでん)」の取り扱いを始めました。
印伝(甲州印伝)とは、柔らかな鹿革に漆で模様付けを行う、甲州(山梨県)に400年以上受け継がれてきた伝統工芸品です。
使い続けるほどに独特の風合いが増すことで知られ、年齢を問わず多くの方々に親しまれています。バッグや小物など数多くの商品がありますので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
伊丹さんもこの印伝を愛用していました。
特に「青海波」(せいがいは:半円形を重ねて波のように反復させたもの)と呼ばれる柄を好んで使っていて、常設展示室の「五 エッセイスト」コーナーには実際に伊丹さんが使っていた青海波柄のペンケース、また、「十三 映画監督」コーナーには同じく青海波柄の信玄袋が展示されています。
【常設展示室「五 エッセイスト」コーナーより、青海波のペンケース】
記念館のショップでは、この青海波柄を含む小銭入れと、根付の販売を開始しました(※オンラインショップでの取り扱いはございません)。
小銭入は、そのファスナーの片側が脇の下まで開く仕様で使いやすく、根付はかわいらしいブーツ型をしていてちょっとしたアクセントに最適です。
【印伝商品のコーナー】
【青海波の小銭入】
【ブーツ型根付】
印伝コーナーをご覧になったお客様から「伊丹さんも印伝が好きだったんですね。私も持っています!」「同じ印伝を使っていたなんて、親近感がわきます」というお言葉をうかがうことも。中には小銭入れなど、実際にお使いの印伝の小物をその場で見せてくださる方もいらっしゃいます。
記念館にお越しの際は、ぜひご覧になってみてください!
スタッフ:山岡
2016.10.17 建築の魅力
秋になり、記念館の木々の葉が少しずつ色づきはじめました。皆さまがお住まいの地域はいかがでしょうか。
中庭の桂の樹
桂は黄色く色づきます
記念館便りでも何度かご紹介しておりますが、記念館を設計してくださったのは建築家の中村好文さんです。全国各地から、展示だけではなく建築も楽しみにお越しくださるお客様が、たくさんいらっしゃいます。
記念館の外観・正面
常設展示室の展示デザインも中村さんによるものです
先日、建築のお仕事をなさっているお客様から、「数年前にも来たことがありますが、年数とともに外壁の風合いが変化していて、とても良いですね」とお声をかけていただきました。ご感想をいただいて気づいたのですが、確かにその通りだと存じます。外壁は、幅と厚みの異なる焼き杉板で覆われているのですが、焼き杉板独特の質感が、月日とともに、より表情豊かになっているように感じます。
焼き杉板は、光の当たり具合でも表情が変わります。
こちらは昼間の様子。焼き杉板の「黒」は、非常に存在感があります。
そして、こちらが夕暮れ時の様子です。この日は、やわらかな光の中に樹の影がうつって、とても綺麗でした。
建築の魅力もたくさん感じていただきたく存じますので、皆さま、ぜひ記念館にいらしてくださいませ。
スタッフ: 淺野
2016.10.10 伊丹映画の中の饅頭・打ち出の小槌
伊丹映画を観ていますと、監督デビュー以前の著書にある表現が、そっくりそのまま使われているセリフに出くわすことがあります。
たとえば『大病人』(1993年)。癌と知らずに入院先でワガママ放題の患者・武平(三國連太郎)を担当医・緒方(津川雅彦)がキツーく叱るシーン。
「あんたのように甘ったれた患者は見たことがない。芸術家が聞いて呆れる。たまには自分の苦しみに自分で耐えてみたらどうなんだ。なんです、あんたは。一刻も一人でいられないじゃないか! あんたは半分に引きちぎられた饅頭だ! 中のアンコが剥き出しになって痛くてたまらん、誰でもいい、早く残りの半分になって傷口をふさいでくれと泣きわめいている愛情乞食だ! あんたはみっともない。はた迷惑だ。みんなあんたが嫌いだ!」
津川さんのものすごい剣幕(かつ、ぐうの音も出ない正論)に圧倒されてしまうのと、それに続く三國さんの臨死体験への急展開とで、一言一句を気にする暇なく一気に進んでしまうところなのですが、「マンジュウ......? 津川さん、突然マンジュウって言ってたよね」と後を引くセリフです。
人間を「半分に引きちぎられた饅頭」にたとえる考え方は、伊丹十三が心理学の佐々木孝次教授から学んだもので、二人の共著『快の打ち出の小槌 日本人の精神分析講義』(1980年、朝日出版社)の中に登場しています。
残念ながら現在絶版の書籍です。
ご興味ある方は古書でお求めください。
専門用語が多くいささか難しいので引用はここでは割愛しますが、この「人間=饅頭」論が伊丹十三の中でどのように理解・展開されたのかがよく分かる、こんな文章があります。
(仲のいいお友達とずっと一緒にいないと落ち着かず勉強が手につかない、という高校生からのお悩み相談に対する回答です。)
精神分析の佐々木孝次さんによれば、人間というものは半分に引きちぎられた饅頭のごときものであるというのですが、私も全くそうだと思う。人間というものは半分なんです。半分だから一人では生きられない。残り半分をだれかに埋めてもらわなければ片時も安心できない不安定な存在なのです。
赤ちゃんの時、残り半分を埋めてくれるのはお母さんですが、やがて人間関係が広がるにつれ、お父さんや兄弟や先生や友人がそれに加わるでしょう。さらに長ずれば恋人や仕事仲間や結婚相手や生まれてきた子供たちが、さらには、仕事や趣味や食べ物や酒やたばこも、失われた残り半分を埋めてくれるものとして立ちあらわれることになるでしょう。こうして、いつのまにかわれわれは自分が半分の存在であることを忘れて生きておりますけれども、それは半分から救われたわけではありません。人間は生涯を通じて半分であり続けるのです。
あなたの悩みが大変とりとめなく、説明することも難しく、それでいてあなたを深いところからとらえているのは、あなたの悩みが、あなたが半分であるという、人間の根本的な悩みであるからでしょう。幼いころ、われわれの残り半分は母親によって埋められますが、しかし、人間が大人になるためには、いつまでもお母さんに半分を埋めてもらうわけにはゆきません。かといって、社会に出ていって、だれかれかまわずつかまえて、お母さんの役をやってもらうこともできません。大人同士のつきあいというのは、お互いが半分であることに耐えつつ、あるがままの相手と出会ってゆこうと努力することにあるはずです。
朝日新聞1980年4月26日「わかれ道 親子相談室」
のち『自分たちよ!』(1983年、文藝春秋)に収録
セリフの中のたった一言でも、これだけの背景があって使われているからこそ、印象に残るものなのですね。
また、リアルタイムで伊丹作品にふれていらした方にとっては「ああ、このセリフはあの本のあの部分にあったあれだな」とニヤリとするポイントだったことでしょう。
さて、今月の「十三日十三時」の映画は『あげまん』(1990年)です。
『あげまん』では、さきほど挙げた『快の打ち出の小槌』の題名になったのと同じ意味で"打ち出の小槌"という言葉がセリフに使われています。
一体どんな意味なのでしょうか......!? 芸者さんの世界のお話なので、おめでたい意味のように思えますが、実はとても切なくやるせなく、厳しさもある、名ゼリフです。
10月13日(木)13時から、ぜひお越しくださいませ。
学芸員:中野
2016.10.03 カフェ看板
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。ここ最近、朝晩はびっくりするほど外気が冷たくなってきました。季節の変わり目ですので、風邪など引かれませんようお気をつけくださいね。
さて、企画展示室の出口扉を抜けると中庭の回廊に出ます。そのまままっすぐ進むとカフェ・タンポポの入口ですが、その前に立てている黒い看板をご覧になったことがありますでしょうか。
カフェ・タンポポ内にある伊丹さんのデッサン画もぜひご観覧いただきたいことから、この看板は「順路」のご案内も兼ねていますが、カフェスタッフのおすすめメニューを手書きでご紹介しています(看板に書かれた以外のメニューは、この看板の向こうにあるメニュースタンドやカフェ店内にご用意しているメニュー表でご覧ください)。
夏場にはアイスドリンクをご紹介したり、通年メニューであればみかんジュース飲み比べセット、召し上がっていただけるお饅頭やケーキ類、また、伊丹さんのエッセイをもとに「ミモザ」をご紹介したりしています。「あの○○をください」と看板を指してカフェに入られる方もいらっしゃいます。メニューを決める時の参考にもなりますので、ぜひご覧になってみてくださいね。
皆さまに「オーダーしてみたい」と思っていただけるよう、 今後もおすすめ・ご紹介していきます!
【企画展示室出口側から見たカフェ看板】
そしてもう一つチェックしていただきたいのは、2面ある看板の片方。カフェの入口側から見る面ですが、ここには、記念館からのお知らせやイベントの情報などを書いています。足を止めて看板を見てくださったお客様から、書かれたお知らせなどについてご質問を受けたり補足してご紹介したりすることもしばしばなんですよ。ご興味を持っていただけるような記念館情報をお届けしていますので、こちらも要チェックです!
【カフェ入口から見たカフェ看板】
2日前の10月1日は、「コーヒーの日」でした。コーヒーの新年度が10月からはじまること、また、日本では秋冬にコーヒーの需要が高まるためそれに先立つ日を制定したものだそうです。コーヒーにちなんだキャンペーンやイベントなどが行われているので、ご存知の方も多いかもしれませんね。カフ ェ・タンポポでもコーヒーは1年を通して人気です。オーダーしていただいてからその都度スタッフがドリップして淹れており、豆も挽き立てで香も楽しめます。
展示をご覧になった後は、カフェ・タンポポ入り口の看板をご覧になりつつ、ぜひカフェでお寛ぎください。
スタッフ:山岡
2016.09.26 上映ミニ解説
今年6月13日よりスタートいたしました「毎月十三日十三時の伊丹映画展示上映」は、これまでに4回開催いたしました。おかげさまでご好評いただいております。私どもスタッフも、毎回ワクワクしながらお客様をお迎えしております。
上映にお越しくださった方には、記念館オリジナルの「ミニ解説」をお配りしております。
これまでにお配りしたミニ解説
作品の基本情報に加え、関連書籍の紹介やその作品に関する展示品についてのメモなど、毎回異なった内容を記載した解説です。
たとえば『タンポポ』のミニ解説では、「館内の"タンポポ"」と題しまして、記念館内でご覧いただける「タンポポ」にまつわるあれこれをご紹介いたしました。上映後ミニ解説を手に、あらためて館内を巡ってくださったお客様もいらっしゃったようです。
『タンポポ』のミニ解説
見開くとこんな風になっています
映画とあわせて楽しんでいただける内容ですので、ぜひ多くの方にお手に取っていただきたく存じております。
次回10月13日(木)は、『あげまん』(1990年公開)を上映いたします。もちろんミニ解説もご用意いたしますので、ぜひいらしてくださいませ。
※来年3月までの上映スケジュール等の詳細はコチラ。
※13日が休館日の火曜日に当たる月は、翌14日を上映日としておりますのでお気をつけください。
---------------------------------------------
≪宮本信子館長出勤のご報告≫
先週の記念館便りでもその様子を少しお伝え致しましたが、9月18日・19日に、宮本信子館長が出勤いたしました!今回も、お客様のご様子をお写真でご紹介させていただきます。
皆様さまお話が弾んでいましたね。ご来館いただきまして誠にありがとうございました!
今後も宮本館長の出勤が決まりましたら、記念館ホームページ「ニュース」欄で告知させていただきます。ぜひ定期的にチェックなさってみてください。
スタッフ:淺野
2016.09.19 館長ただいま出勤中 & 初めての月例収蔵庫ツアー開催いたしました
皆様おはようございます。
昨日から、宮本館長が出勤しています。
スタッフと打ち合わせをしたり~
(鬼が爆笑するのを恐れず来年の話もしております)
お客様のお話を伺ったり、記念撮影をしたり。
館長も楽しんでいます!
本日9月19日(月祝)は11時頃から15時45分頃まで在館し、ロビーでお客様をお迎えする予定です。三連休の最終日、ぜひお越しくださいませ。
*************
先週9月16日(金)には、収蔵庫ツアーを開催しました。
伊丹さんの愛用品、直筆原稿、蔵書などを
5つのコーナーに分類して
"展示風"に収蔵しているスペースです。
ガイダンスでのご説明やツアー中にご案内する内容は、これまで毎年5月に開催してきた「開館○周年記念イベント」とほとんど同じなのですが、月例化して初めてのツアーでしたので、気持ち新たに(?)けっこう緊張いたしました。
聞けば、ご参加くださったお客様も初めてのご来館とのこと。
「記念館があるのは知っていたのですが、これまでなかなか機会がなくて......収蔵庫ツアーの募集告知を見たので、行ってみようと思いました」と伺って、「ツアーを月例化したことで、伊丹十三を心に留めてくださる方がこの世に増えた!」と。いやぁ、とっても嬉しかったです。これからの励みにさせていただきます。
告知にご協力くださったマスコミ各社の皆々様も、ありがとうございました。
ご参加くださった方には、お名前・写真・日付入りの
記念カードを差しあげます。
来月は10月16日(日)開催、9月末日までご応募を受け付けしております。
お気軽にご応募・ご参加くださいませ。初来館、再来館のきっかけにも、ぜひどうぞ。
学芸員:中野
2016.09.12 エッセイのイラスト
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。先週あたりから、記念館中庭の回廊でコオロギなど秋の虫の鳴き声を耳にするようになりました。昼間はまだまだ暑いですが、季節は夏から秋へと少しずつ移り変わっているようです。
さて、ここ記念館のグッズショップは、伊丹さんが描いたイラストを使った商品を数多くご提供しています。
伊丹さんのエッセイの挿絵であるイラストも多く、エッセイを読んだことのあるお客様が「このイラストが好きなので」と、その商品をお買い上げくださることも。本日は、エッセイのイラストとそれを用いた商品を、該当のエッセイといっしょにいくつかご紹介しますね。
スパゲッティの正しい食べ方
著書『ヨーロッパ退屈日記』の「スパゲッティの正しい食べ方」にあるイラストから。
このエッセイには、
まず、イタリーふうに調理したスパゲッティの前にきちんと座る。
スパゲッティとソースを混ぜあわせたら フォークでスパゲッティの一部分を押しのけて、皿の一隅に、タバコの箱くらいの小さなスペースを作り、これをスパゲッティを巻く専用の場所に指定する。これが第一のコツである。
(中略)
さて、ここからが大事なところよ、次に、フォークの先を軽く皿に押しつけて、そのまま時計廻りの方へ静かに巻いてゆく、のです。そして、フォークの四本の先は、スパゲッティを巻き取るあいだじゅう、決して皿から離してはいけない。これが第二のコツである。
などとスパゲッティの食べ方が細かく書かれていて、お客様の中には「実際にこの方法で食べてみた」という方もいらっしゃるようです。このエッセイの挿絵の一つ、フォークを持った手とスパゲッティが描かれ、「スパゲッティを巻くスペースを作る。」と書かれたイラストは、Tシャツとマグネットにプリントされています。
二日酔いの虫
男性がこめかみから何かを引っ張り出しているこのイラストは、著書『女たちよ!』の「二日酔いの虫」の挿絵です。何をしているところのイラストなのか?については、エッセイの本文にこのように書かれています。
「あのね、二日酔いのひどい時にさ、顳顬(こめかみ)んところに小さな腫れ物ができるんだよね。これが実に痒いんだな。痒いから掻き毟る。掻き毟るうちにだね、腫れ物が潰れるだろう。その潰れたところをよく見ると、なにか芯みたいなものがのぞいているじゃないか。ハハーンこいつだなと思ったから 、私はその芯をピンセットでつまんで、そおっと引っぱりましたね。すると出てくるんだよ、それが。ずるずると出てくるんだよ。紐みたいに、というか、干瓢みたいにというか、ともかく引っ張ればいくらでもずるずる出てくる」
このイラストは「スパゲッティの正しい食べ方」と同じくTシャツ、マグネットにプリントされている他、ゴム印にもなっています。Tシャツは白と黒の2カラーありますので、色違いで揃えてみるのはいかがでしょうか。
新しい理髪師
同じく著書『女たちよ!』の「鬚を剃った魚の話」には、「新しい理髪師」という題のイラストが載っています。エッセイにはこんなふうに。
仕方なく、私は大きな魚が白いエプロンをして理髪店の椅子にかけている絵を描いてやった。魚は小さな目で天井のほうを見ている。あるいはうたた寝をしているのかも知れぬ。そうして手前のほうには白い上っ張りを着て、鼻のまわりが妙に黒い、顔の長い猫が革砥で剃刀をといでいるのだ。
このイラストのうち「大きな魚が白いエプロンをして理髪店の椅子にかけている絵」はゴム印に、「白い上っ張りを着て、鼻のまわりが妙に黒い、顔の長い猫が革砥で剃刀をといでいる」イラストは同じくゴム印と缶バッジになっています。
エッセイストであり、イラストレーターであった「伊丹十三」の記念館ならではの オリジナル商品ですので、伊丹さんの著書でイラストをご覧になったことがある方は、ぜひチェックしてみてください。逆に、気に入ったイラストが書かれているエッセイを読んでみるのもおすすめです。ぱっと目にするだけでも味のあるイラストばかりですが、どんなふうに描かれたのか、また、何のイラストかわかると、また違った面白みを感じるかもしれません。
スタッフ:山岡
2016.09.05 しょうが
9月に入り、朝晩は暑さが和らいだように感じますが、日中はまだ気温が高いですね。
どこへ出かけても屋内は冷房が効いていますので、冷え性の私はカーディガンなどの羽織ものが手放せません。映画館や図書館のように数時間過ごす場所では、ひざ掛けがほしくなります。
冷え性を改善する方法として、「しょうがを摂るとよい」という話をよく聞きます。しょうがには、「ジンゲロール」や「ショウガオール」といった成分が含まれていて、それらの働きによって体が温まるそうですね。
記念館のカフェ・タンポポでも、しょうがを使ったドリンクメニューをご用意しております。
しょうが湯(十三饅頭とのセット)・しょうが紅茶・ソイジンジャーのホットメニュー3点と、ジンジャーペリエ・ゆずジンジャーペリエのアイスメニュー2点です。
5点のメニューすべて、記念館で手作りしたオリジナルしょうがシロップを使用しています。
手作りしょうがシロップ
新しょうがを使用すると、ほんのりピンク色のシロップになります
しょうが紅茶
ジンジャーペリエ
どのメニューもご好評いただいております。特にホットメニューは、体の芯から温まるように感じられますよ。
カフェ・タンポポのしょうがドリンクメニュー、夏の冷えが気になる方におすすめです。ぜひ、どうぞ。
スタッフ:淺野
2016.08.29 9月の予定まとめます
9月の催しについて告知の機会をいただけるということで、最近、ご取材を2件お受けいたしました。ラジオとテレビです。
おもに収蔵庫ツアー月例化に関するプレスリリースを元にした収録ということで質問されるであろうことがほとんど決まっていたのと、どちらのご取材でも「こういう番組の中で、このぐらいの時間を使って、こういう順番に編集でつなげますから、ここではこういうお話をしてください」と丁寧に説明していただいたおかげで具体的なイメージを持つことができ、アガリ症の私でも(比較的)安心してお話しすることができました。
ご取材の方も収蔵庫のお下見を楽しんでくださいました
が、ド直球のご質問というものは、「よかった、今回はウロたえることなく終われそう~」と思った頃に、ズバーーン! と投げこまれるもので――
「では、ナカノサンにとって伊丹十三さんはどんな存在の人ですか!?」
「えっっ」
「ナカノサンにとって伊丹作品とは!?」
「ええぇっっ」
最重要事項だと承知していながら、こういった本質的なことほど、不意に尋ねられると身構えてしまいます。お答えするのに15秒ほど考えてしまったでしょうか。
「生放送じゃないから大丈夫ですヨ」と慰めていただきましたが、ひねり出した答えって伝わるものが少ないんだろうなぁ、と悔やみました。これからは、寝起きであろうが、夜道のすれ違いざまであろうが、聞かれたら即答できるようにしておかなくては!
そういえば、1年前には↓こんな投稿をしたのでした。"極意"のなんと遠いこと......
「宣伝マンとしての伊丹十三」
さて、9月の催しは大盛り&イレギュラーですので、予定を以下にまとめます。
イレギュラー日程にご注意ください!
常設展示室で『マルサの女2』(1988年)を観よう!
9月14日(水)13時~
※"十三日・十三時の伊丹映画"シリーズの催しですが、今月は13日が休館日の火曜日にあたるため、翌14日の開催とさせていただきます。
月例収蔵庫ツアー
9月16日(金)11時~/15時~
※8月31日(水)までご応募受付中です。応募者多数の場合は抽選となります。
10月16日(日)開催分は、9月17日(土)から30日(金)に受け付けいたします。
詳しくはコチラをご覧ください。
宮本信子館長出勤
9月18日(日)14時30分頃~16時30分頃
9月19日(月祝)11時頃~15時45分頃
※当日の状況により、滞在時間等は変更になることがあります。
日に日に過ごしやすい気候になってまいりました。みなさま、ぜひお出かけくださいませ。
学芸員:中野
2016.08.22 収蔵庫ツアー
ご存知の方も多いかと思いますが、ここ記念館には「収蔵庫」と呼ばれるスペースがあります。
【記念館のリーフレットに載っている館内の見取り図。
左の方にある「6 収蔵庫」と書かれている部分です。】
文字通り収蔵品が収められている場所ですが、ここ記念館の収蔵庫は、資料をただ収めているだけではありません!
伊丹さんの遺した膨大な資料――原稿やメモ、イラスト原画、愛用品、蔵書、映画衣装等々――を、ジャンルごとに分けて「展示風に」収めており、また、映画『お葬式』のロケ地にも使われた湯河原にある伊丹さんの別荘のダイニングもこの収蔵庫に再現されているのです。
普段はお入りいただけない場所なのですが、この収蔵庫をガイド付きでご覧いただける「収蔵庫ツアー」を、9月16日より毎月1回、16日(16日が休館日の場合は17日)に開催することとなりました!
開館1周年記念イベント以来毎年5月に開催してきたツアーですが、これまで参加された方々から多くのご好評をいただいてまいりました。そこで、より多くのお客様にツアーを通して伊丹さんをより身近に感じていただきたい!ということで、ツアーを月例化いたします。以前ツアーに参加されたことのある方はもちろん、「伊丹さんってどんな人?」という方や「伊丹さんのことをもっと知りたい!」という方、「普段入れないスペースに入るなんて楽しそう」という方まで、奮ってご応募くださいませ。
応募方法など詳細はコチラ
******************宮本信子館長 出勤のお知らせ******************
ニュース欄でお伝えしておりますとおり、宮本信子館長の次回出勤日が決定いたしました!
9月18日(日) 14:30頃~16:30頃
9月19日(月・祝日) 11:00頃~15:45頃
※当日の状況により、滞在時間等は変更になることがあります。
皆さまお誘い合わせのうえ、ぜひ記念館に足をお運びくださいね。
スタッフ:山岡
2016.08.15 梅干
全国的に厳しい暑さが続いているようですね。夏の疲れが出る頃ではないでしょうか。
わが家では、夏バテ対策として、この時期に「梅ごはん」を作ることがあります。こまかくちぎった梅干をお米と一緒に炊くだけの簡単なものなのですが、さっぱりしていて、食欲が落ちた時にちょうどよいのです。
作るときに、ひとつだけこだわっていることがあります。それは、"自家製の梅干を使用すること" です。
伊丹さんのエッセイに、梅干についてこんな記述があります。
(前略)祖母は梅干作りの名人であった。梅酒を作るのもきわめてうまかった。その作り方を聞いておかなかった。伽羅蕗にしたって、私の祖母の作ったものよりおいしい伽羅蕗を絶えて食べないのだ。その作り方を聞いておくのを忘れてしまった。とりかえしがつかないとはこのことである。(中略)
梅干というのは、これはたいへんに手間がかかる。大体のことをいえば、一晩水につけた梅に塩をまぶして樽に入れおし蓋をする。水が上ったら重石をとり、塩でもんで紫蘇の葉を梅と交互に入れる。土用になったら紫蘇は絞って干し、梅は笊に上げて三日三晩干す。四日目からは昼だけ天日に干し、夜は樽につける。これを一週間つづけたあと密封し秋から食べはじめる。入梅時から秋にかけてこうして祖母が作った梅干には、なんとなく人生の重みとでもいうべきものがあった。(後略)
――「しまった!」『女たちよ!』1968年
わが家では、毎年梅雨の時期になると父がひとりで梅干作りをはじめます。ひとつひとつヘタを取り、笊に均等に並べ、天候に一喜一憂しながら天日に干しては室内に取り込み......と、エッセイに記されているのと同じように、かなり手間がかかっています(家族や親類が食べるだけなのですが)。
天日干し準備中の様子
傍で見ていますと「市販の梅干でも良いのでは」と思ったりもしますが、手間ひまかけて出来あがった梅干で作る夏の梅ごはんは、やはり、ひと味違っておいしいものです。
いまのところわが家では、「梅干は父がひとりで作るもの」ですが、先ほどのエッセイには、こんなことも書かれています。
その人一代で絶えてしまう名人芸は、日頃から伝承しておこう。
――そうですね。これからは「名人芸伝承」のつもりで、作り方のコツを教わってみようかな、と思います。
皆さまにも、それぞれの暑さ対策がおありのことと存じます。涼しくなる頃をたのしみに、どうぞご自愛くださいませ。
・・・・・・・・・・≪お知らせ≫・・・・・・・・・・
明日・8月16日は火曜日ですが、お盆期間中ですので開館いたします。皆さまのご来館をお待ちしております!
スタッフ:淺野
2016.08.08 うわあ、いいな。いいな。
暑い日が続きますが、今年も何とか立秋を越えました。残暑お見舞い申しあげます。
過ごしやすい季節になるまでは、まだしばらくの辛抱ですね。くれぐれもご自愛ください。
企画展示室の「伊丹万作の手作り芭蕉かるた」は
暦に応じて秋の季語ものに入れ替えました。
高校時代の思い出が綴られた伊丹エッセイの中に、夏についてのこんな記述があります。
夏の盛りには、時間はほとんど停止してしまう。たぶん一年の真中まで漕ぎ出してしまって、もう行くことも帰ることもできないのだろう、とわたくしはおもっていた。あとで発見したのであるが、人生にも夏のような時期があるものです。
「最終楽章」『ヨーロッパ退屈日記』1965年
途中まで「そうですね、まったくそのとおり、止まってしまいますよね」と頷きながら読み、"おもっていた"(過去形)から先で「ああそうか、自分はもう大人だから"停止"してる場合じゃないんだった」と思い改める――何度も読んでいるはずなのに、毎回このパターンになってしまうのはなぜでしょう?
進歩のすっかり止まったらしい頭にガッカリしつつ、身体だけでも止まらないように、せっせと水分栄養補給をしています。
暑さついでに「夏にまつわるエッセイ」をもう少し――
田舎の葦簀張りの休憩所や、場末の映画館の売店や、そういう場所で、ぼくはずいぶんラムネを飲んだなあ。そうしてラムネを飲んで元気を出した。
ラムネはたいがい大きな、水を張った金盥の中に沈んでいたり、ブリキの箱の中に氷といっしょにはいっていて、だからラムネの壜は必ず濡れていた。乾いているあいだは検査証みたいな青い紙の封印がしてあるけど、冷しているうちにたいがい剥がれてしまう。
そういうラムネを買って、あの独特の「ラムネの蓋開け器」でもって、ラムネの壜をシュポン! と抜く。ラムネが泡立って、ビー玉がコロコロして、うわあ、いいな。いいな。
「悪魔の発明」『女たちよ!』1968年
読んでいるこちらも「うわあ、いいな。いいな」となりますねぇ、そして「ラムネを飲んで元気を"出した"」という表現がすばらしいですねぇ、暑さに挫けた心がちょっと勇気づけられる気がします。
――と、このように伊丹エッセイに登場したラムネは、残念ながら記念館のカフェ・タンポポでは扱っておりませんが、夏のお客様に猛烈にオススメのメニューがございます。
タップリサイズでございます。ごゆっくりどうぞ~
「なーんだ、アイスコーヒーじゃん」と侮るなかれ。たしかに、種も仕掛けもないアイスコーヒーです。さわやかで芳しく、美味。しかし、良いのはお味と香りだけではありません。
グラスに格子状の模様が見えますでしょうか? その格子模様のデコボコは、グラスの外側ではなく、内側にあるのです。ということは......そうです。
アイスコーヒーをストローでクルクルしていただきますと、グラスの内側のデコボコと氷が触れあって、まことに涼しげな、い~い音が、カラカラ、コロコロ~ン、と店内いっぱいに響くのです。
ご来館の際には、カフェにもぜひお立ち寄りください。ときどき納涼しながら秋までがんばりましょう。
※このグラスでご提供するメニューはアイスコーヒー(500円)のほか、豆乳アイスコーヒー(600円)がございます。どちらも夏季限定のメニューです。
学芸員:中野
2016.08.01 伊丹十三記念館オンラインショップ
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
ここ松山は、連日最高気温が30度を超えるなど暑さも本格的になってまいりました。熱中症予防など暑さ対策が必要な毎日ですが、皆さまのお住まいの地域はいかがでしょうか。
さてご存知の方も多いと思いますが、館内には記念館のオリジナルグッズを多数ご提供しているグッズショップがあり、伊丹十三の著書や記念館のガイドブック、イラストを用いた雑貨、Tシャツ等々...「伊丹十三記念館」ならではの商品を取り扱っています。
お越しくださったお客様を中心にご覧いただいていますが、「記念館に行ってみたいけど、なかなか行く機会がない・・・」という方にもオリジナルのグッズから少しでも記念館を知っていただきたい!ということから、インターネットを通じてオリジナルグッズをご注文いただける「伊丹十三記念館オンラインショップ」も展開しています。
記念館ホームページからアクセスしていただけますので(すぐ下の画像の赤丸のところです)、お気軽に覗いてみてください。もちろん、「以前購入したグッズをもう一度購入したい」という方も大歓迎です!
本日は、オンラインショップで人気の商品など、いくつかご紹介させていただきますね。
●やっぱり十三饅頭!
その企画から、味、サイズ、パッケージに至るまで宮本館長がこだわりぬいて誕生した「十三饅頭」は、オンラインショップでも人気商品です!
実際に伊丹十三が書いた「十三」という字を焼印にして押し、濃茶と黒のパッケージは記念館の建物の形を模したもの。記念館を象徴する一品ですので、来館されたことのないお客様も、記念館ならではのこだわりや雰囲気を感じていただけるのではないでしょうか。
●人気のDVD・「13の顔を持つ男-伊丹十三の肖像-」
「いかにして伊丹十三は、『あの』伊丹十三になったのか」というオープニングナレーション通り、様々な顔を持つ伊丹十三の生涯を142分にわたり紹介したDVDです。
見ごたえたっぷりの本編に加え、特典映像として「伊丹十三記念館ができるまで」が収録されています。記念館の計画から完成までを記録したこの映像では、記念館が形作られていく様子を見ることができます!
●伊丹十三記念館ガイドブック&絵コンテノートもおすすめ
書籍では、おなじみ「伊丹十三記念館ガイドブック」のほか、「映画『お葬式』シナリオつき絵コンテノート」も好評をいただいています。
伊丹十三の初監督作品となる『お葬式』、その撮影前に全編にわたって描かれた300枚以上の緻密な絵コンテとシナリオが余さず収録されたこの絵コンテノート。「『お葬式』日記」(文藝春秋)に掲載された監督ロングインタビューも読むことができますので、映画『お葬式』好きな方はぜひ!
また、伊丹十三のイラストをプリントした缶バッジやマグネット、手拭いなども人気ですので、ご興味を持たれた方は、ぜひオンラインショップをチェックしてみてくださいね。
スタッフ:山岡
2016.07.25 夏のご旅行に
夏のご旅行に、松山・道後を予定している方もいらっしゃることと存じます。
道後温泉およびその周辺エリアでは、2014年から毎年アートフェスティバルが開催されています。3年目となる今年は、「街歩き旅ノ介 道後温泉の巻 山口晃 道後アート2016」と題して画家・山口晃さんをメインアーティストに迎え、さまざまな作品を展開しているそうです(詳しくはコチラ)。
先日、ちょっと道後の街を歩いておりましたところ、商店街の店先で、こちらをみつけました。
「道後エトランゼマップ」という、山口晃さんが手がけた「私的"迷所"ガイド」で、一味違った道後の見どころが紹介されていました。この夏道後にいらっしゃる方は、お手に取ってみると楽しめるかもしれません。
もちろん、道後にはアートフェスティバル以外にも見どころがたくさんあります。
道後温泉本館の前にあり、四国名菓「一六タルト」などさまざまなお菓子を扱っている「一六本舗」もおすすめです。
こちら、おいしいお菓子の他にもご注目いただきたいことがあります。
道後温泉本館の前に一六本舗の店舗が2つ並んでいるのですが、そのひとつ「道後本館前店」は、記念館を手がけた中村好文さんによる建築なのです。
左:道後本館前店 右:道後店
道後温泉本館の目の前にあります
記念館にいらっしゃるお客様の中には、中村さんの建築を楽しみにお越しくださる方も多く、道後本館前店も中村さんによる建築であることをお伝えしますと、皆さま「それは見たい」とおっしゃいます。
道後本館前店2階のカフェ「一六茶寮」の一角には、伊丹十三記念館を紹介するスペースもございますので、道後にお越しの際に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。そして、記念館にも足を延ばしていただけましたら幸いです。
「一六茶寮」の記念館紹介スペース
スタッフ:淺野
2016.07.18 「十三日十三時」企画・第2回を開催いたしました!
7月13日(水)、「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の第2回、『タンポポ』(1985年)の上映を開催いたしました。
当日の朝は「お出かけやーめた!」となりそうなほどの土砂降りで心配しましたが、徐々にお天気が回復して、昼前ごろからお集まりくださったお客様方と約2時間――
私はすこし離れた後ろのほうにいましたのでお客様の表情は見えなかったのですが、ところどころでみなさんの頬っぺたがキュッと上がるのを拝見して、よきかなよきかな、と嬉しく思っておりました。『タンポポ』、楽しかったですね。
その他、館内にある"タンポポ"ゆかりのアレコレも
お楽しみいただけましたでしょうか~?
「好きな伊丹映画」として『タンポポ』を挙げてくださる方が特に多いのは、観客を強く惹きつけつつ、作者である伊丹十三自身が自由に創造できるように、テーマ設定(食べ物)・モチーフ選択(ラーメン)・シナリオの構成(西部劇を転用)のバランスが上手く練られているところにポイントがあるようです。
しっかりとした土台の上に、ラーメンをはじめとする食べ物、国内外の食文化、食と性、頑張る女と見守る男の恋物語、さまざまな要素が見事に"盛り付け"られていて、豪華でバラエティにとんだ配役も魅力的。まことにいろんな観方、楽しみ方のできる作品です。
「この映画を観たあとは、印象に残ったシーンやエピソードについて語り合ったら、誰とでも、いつまででも、話し続けられそうだなぁ」と改めて思いました。
さて、次回は1987年公開の『マルサの女』。8月13日(土)13時からです。
金銭を通して日本人を描いた
女査察官と脱税者の物語です
9月14日(水)の『マルサの女2』(1988年)と併せて、スケジュール帳にぜひお控えください!
※この催しは、13日が休館日の火曜日にあたる場合には、翌日14日に振替開催となります。
学芸員:中野
2016.07.11 料理通
「伊丹さんを知ったきっかけ」について、ご来館のお客様からお話をうかがうことがあります。
たくさんの「顔」を持つ伊丹さんならではというか、そのきっかけも本当に多岐にわたっていて、お客様からは様々なキーワードが飛び出します。監督映画作品やエッセイをはじめ、俳優時代に演じた役や描いたイラスト、編集した雑誌や手掛けたテレビ番組......松山の方であれば一六タルトのCMなんていう方も。
つい先月には、「料理通」というところから伊丹さんに興味を持った、という男性がいらっしゃいました。
何気なく手に取った伊丹さんの著書『フランス料理を私と』(1987年)を読んだのがはじまりで、もともと料理好きだったお客様は読後すぐに伊丹さんに興味を持たれたそうです(『フランス料理を私と』は伊丹さんが本格的なフランス料理を作り、ゲストと一緒に食べながら対談している構成の本です。残念ながら今は絶版になっています)。
そこから、調理方法、調理器具の使い方、食材や食文化等々について書かれた伊丹さんのエッセイを読んだり、書かれている調理方法を実際に試したりしているうちに、料理に対する伊丹さんの考え方やこだわりに感銘を受け、料理もますます面白くなったのだそうです。
【常設展示室より『フランス料理を私と』】
さて、伊丹さんが料理通であることを、エッセイなどを通して既にご存知の方は多いですが、「記念館に来て、初めて知りました」というお声もたくさん耳にします。
『伊丹十三記念館ガイドブック』の「七 料理通」から、伊丹さんの「料理通」の顔を少しご紹介しますね。
伊丹エッセイを語るときによく登場する話題は、『女たちよ!』の冒頭に収録されている「スパゲッティのおいしい召し上り方」でしょう。スパゲッティの理想の茹で加減を「アル・デンテ」という言葉で私たち日本人に伝えたのは、おそらく伊丹十三が初めてだったのではないでしょうか。英国式「キューカンバー・サンドウィッチ」にしても、オムレツにしても、それぞれの料理を素材にしたエッセイを読み終わると、つい台所に立ちたくなってしまうのが伊丹エッセイのもうひとつの魅力でした。
鰻や寿司、鯛飯......などをおいしく食べさせてくれる店についても、「ああ、それをその店でぜひ食べてみたい」と思わずにはいられない、臨場感溢れる書き方で、私たちの空腹を刺激しました。
料理に本格的に取り組んだのは、「文藝春秋」でのカラー連載「フランス料理を私と」でした。精神分析家、エッセイスト、文化人類学者などの自邸を訪ねて、その家のキッチンを借りてフランス料理に挑戦し、完成した料理を一緒に食べながら、伊丹十三の知的好奇心を軸としたテーマで対談をする、という極めてハイブラウな企画でした。
そうそう、ちょっとチープな「カツパン」の魅力を一度ならず書いていたのも、伊丹さんらしいところでしたね。
料理の"流儀"についてもこんなふうに。
料理をしながら片づけよ
伊丹十三が料理を始めたのは映画出演でロンドンに住んでいた頃。家主が無性の料理好きで御馳走してくれるのはいいが、料理したあとの台所は散らかり放題。ならば、「本当の料理人は常に片づけながら仕事をする、ということを見せてやろう」と、料理本を見ながらチキンカ レーを作ったところ上々の出来。しかも台所はスッキリ片付いている。この満足感に、以後、片づけながら料理をする――というのが伊丹料理の流儀となった。
【『伊丹十三記念館ガイドブック』「七 料理通」】
いかがでしょうか。他にも、このガイドブックには伊丹さんの手料理を食べた方々のお話、伊丹さんの愛用していた料理道具や食器などが紹介されています。ご興味のある方はぜひ読んでみてください。料理という身近なものから、伊丹さんを知るきっかけになるかもしれません。
********* お知らせ *********
そんな「料理通」の顔を持っていた伊丹さんの監督作品の一つ、食べ物をテーマにした映画『タンポポ』(1985年公開)を、明後日7月「十三」日の「十三」時より常設展示室で上映いたします!
詳しくはコチラ
※記念館内のカフェ・タンポポでは、伊丹さん自身が描いた『タンポポ』登場人物の似顔絵やその絵をもとにして作られた映画ポスターが展示されています。また、企画展示では現在、この『タンポポ』のメイキング映像の短縮版をご覧いただけます。合わせてご鑑賞いただくとより映画も楽しめますので、お見逃しなく!
【カフェ・タンポポの展示】
スタッフ:山岡
2016.07.04 雨の日の記念館
松山は梅雨明けにはまだ少し時間がかかりそうですが、皆様がお住まいの地域はいかがでしょうか。
つい気が滅入ってしまう雨ですが、雨の日に記念館にいらしたお客様から、「中庭が綺麗ですね」とお声をかけていただくことがあり、ハッといたします。
桂の葉が雨に濡れて緑が鮮やかに見えるからでしょうか、確かに雨の降る中庭はとても美しく、趣があります。
また、「中庭にいると雨音が心地よくて、リラックスできました」とおっしゃる方もいらっしゃいます。記念館は交通量の多い国道から近いのですが、館の中にお入りいただきますと驚くほど静かで、車の音などは、ほとんど気になりません。雨の日は雨音が中庭に心地よく響きますので、展示の余韻にひたりつつ、自然にクールダウンできるのかもしれません。
あまりにも強い雨は困りますが、お客様から雨の日ならではのご感想を伺いますと、雨も悪くないなと感じます。
≪カフェ・タンポポからのおしらせ≫
毎年ご好評いただいております期間限定ドリンク「豆乳ブルーベリー」を、7月1日よりスタートいたしました。
豆乳のコクとさわやかなブルーベリーが絶妙にマッチした、夏にピッタリのドリンクです。ぜひご賞味くださいませ。
スタッフ:淺野
2016.06.27 常設展示室の映像資料追加企画 第1回ご報告
「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の第1回を、監督デビュー作『お葬式』にて開催いたしました。
作品情報・展示中の映画制作資料・関連書籍の紹介をまとめた
ミニ解説をお配りしました。次回の分も鋭意準備中です。
「上映会」というほどの立派な催しではなく、「日時限定で映像の展示が替わります」という試みなのですが、『お葬式』を目当てにお越しくださった方あり、そうと知らずのご来館で「ラッキ~」と喜んでくださった方あり。
普段は宮本館長のご挨拶映像と伊丹映画の特報セレクションを流しているスペースを利用した簡素な設備での実施にもかかわらず、みなさん最初から最後まで(スタッフ・キャストのクレジットがすべて流れ終わるまで!)、熱心にご鑑賞くださいました。
伊丹十三が手塩にかけた「映画らしさ」=「スクリーン上に起こる事件」に目を見開いたり息を呑んだり、ところどころで笑っちゃったり、登場人物たちの何気ないひとことや死と葬儀をめぐるあれこれに「ウンウン」「分かる分かる」と頷いたり、そんなお客様方のご様子を拝見することができて、私たちスタッフもいい経験をさせていただきました。
「十三日十三時の伊丹映画」情報は、トップページのニュース欄に情報をお出ししておきますので、ご来館スケジュールをご検討中の方は参考になさってください。(↓赤で囲んだところです)
お客様からいただいたご感想も、「みなさまの声」ページに掲載していきますね。(『お葬式』に関するご感想は7月8日(金)アップ予定です。)
DVDやブルーレイソフトで観ても愉快な伊丹映画ですが、他の方と一緒の空間で観ると違った視点に気付くことができたりして、楽しみが増し増しになります! 次回は『タンポポ』、7月13日(水)の13時からです。ぜひお越しくださいませ。
学芸員:中野
・・・・・・・・・・・・・
お知らせ
・・・・・・・・・・・・・
BSプレミアム「プレミアム・カフェ」で伊丹十三に関する番組がアンコール放送されます!
6月27日(月)午前9時~
6月28日(火)午前1時15分~ ≪27日深夜≫
【1】ドキュメンタリー「よみがえる 伊丹十三~ヒットメーカーの知られざる素顔~」(2007年)
【2】「きょうの料理 映画監督の食卓 伊丹十三の親子丼」(2001年)
※両日とも2番組続けての放送となります。
※2015年12月放送分のアンコール放送です。
2016.06.20 新しく「杯」が加わりました
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。梅雨に入り不安定な天気が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
さて、記念館グッズショップで展開中の『宮本信子のお気に入り』スペース。
宮本館長が日々好んで使っているもの、お気に入りのものを紹介したり販売したりするこのスペースに、この度、陶器の「杯」が新しく加わりました。
この杯を制作されたのは陶芸家の岡本ゆうさん(宮本館長と岡本ゆうさんとのご縁はコチラをご覧ください)。以前からこのスペースでは岡本さんの小皿、手付き小鉢、角皿、箸置きをご紹介・販売していますのでご存知の方も多いかと思います。
杯はひとつひとつ手作りで、あたたかな雰囲気はそのままに、お皿や小鉢のようにやわらかい色合いのもの、少し濃いめの色合いのものなどもあります。デザインも全て異なりますので、ご自分だけの「お気に入り」を見つけたり、お知り合いへの贈り物にしたりするのはいかがでしょうか?記念館グッズショップのみの販売となりますので、ご来館の際に手に取ってご覧になってみてくださいね。
そして、上でご紹介した岡本ゆうさんの作陶展が、東京都中央区にある民藝専門店・銀座たくみで開催されます!
期間は今週末の6月25日から6月30日まで。
詳細はコチラから、ぜひチェックしてみてください。
スタッフ:山岡
2016.06.13 遊び心
記念館にお越しいただきましたら、建物にお入りいただく前にまず目に留まるのがこちら、厩舎ふうのガレージです。
正面入口の左手にガレージがあります
ガレージの中には、伊丹さんの愛車・ベントレー(イギリスの高級車)を展示しています。建物に入る前に、このガレージの前に少し立ち止まってみてください。「8」の文字が気になりませんか......?実はここ、常設展示室内にある「乗り物マニア」コーナーの飛び地でして、ここをご覧になってから常設展示室にお入りいただくと、どうして「8」なのかについて、「なるほど!」と膝を打っていただけるはずです。
記念館には、遊び心のある「なるほど」な展示の仕方がいろいろあります。
常設展示室の展示デザインは、記念館を設計してくださった建築家・中村好文さんによるもので、お客様が楽しめるようにと工夫を凝らしてくださいました。
見やすくて楽しい展示デザインは、まさに伊丹十三の世界そのもの。展示物はもちろんですが、「どんな風に展示してあるか」にも、ぜひ注目なさってみてください。
たとえば各展示コーナーの「壁の素材」にも工夫があります。
ぜひご注目ください!
グループでいらしたお客様が各々展示をご覧になったあと、皆さんで感想をお話しなさっている時に、「え!そこは気づいていなかった。もう1回観てくる!」とおっしゃっているご様子をお見かけすることがあります。記念館の展示室は、ご入館当日中でしたら何度でもお入りいただけますので、ご安心くださいね。
隅から隅まで楽しんでいただける記念館ですので、じっくりご覧ください。
:::::::::::::::::::::
≪常設展示室 映像資料追加のお知らせ≫
先週の記念館便りでもお知らせいたしましたが、毎月「十三」日「十三」時に、伊丹映画を1作品ずつ、制作・公開順に常設展示室で上映いたします(詳しくはコチラ)。
本日6月13日(月)は、『お葬式』を上映いたします。皆様のご来館をお待ちしております。
スタッフ:淺野
2016.06.06 館長出勤のご報告 & 展示追加(日時限定)のお知らせ
梅雨入り間際の6 月2 日(木)、宮本館長が出勤しました。
出勤して即、新商品を陳列するなどスタッフとの打ち合わせをこなしつつ――
即決に次ぐ即決、電光石火の仕事ぶりを目の当たりにいたしました
ご来館くださったお客様をお迎えして、お話を伺ったり記念のお写真を撮影したり――
赤ちゃんをお披露目にきてくれた育休中のスタッフと憩いのひととき――
赤ちゃんが大好きな館長、メロメロです
ご取材にも対応――
と、大忙しのスケジュールでありましたが、「いろんな方がいらしてくださって、楽しかったワネ!」と疲れも見せずに充実の表情で帰路についた館長でありました。
次回の出勤スケジュールも、決まり次第、このホームページの「ニュース欄」でお知らせいたします。
***
さてお次は――展示の追加のお知らせです。
毎月十三日の十三時、伊丹映画が常設展示室に登場します。
トップバッターは『お葬式』。
1984 年、32 年前のちょうど今ごろの季節、6 月に撮影された伊丹十三の監督デビュー作です。
毎月1 作品ずつ、制作・公開順に常設展示室でお目にかけてまいります。
*** 7月以降のスケジュール ***
7 月13 日(水) タンポポ
8 月13 日(土) マルサの女
9 月14 日(水) マルサの女2
10 月13 日(木) あげまん
11 月13 日(日) ミンボーの女
12 月14 日(水) 大病人
1 月13 日(金) 静かな生活
2 月13 日(月) スーパーの女
3 月13 日(月) マルタイの女
※13 日が休館日の火曜日に当たる場合には
翌14 日の実施といたします。
かつて、伊丹十三は語りました。「われわれは映画を半分しか作れない」「残りの半分の完成を観客の配慮にゆだねるため、観客の自由に対して映画を作る」と――(詳細は開催中の企画展で紹介しています!)
「半分」と「半分」がこの記念館で合わさるのを、スタッフ一同楽しみにしています。
***
ささやかなお知らせですが、このような「館長出勤」や「十三日十三時の伊丹映画」が皆さまのご来館のきっかけになりましたら幸いに存じます。「まだ行ったことないけど......」「また行きたいと思ってるけど......」とタイミングをはかりかねている方々も、このホームページへ最新情報を覗きにいらしてくださいませね。
お客様方の生のお声が記念館の活力です。ご来館の際にはぜひご感想をお聞かせください。
学芸員:中野
2016.05.30 制服
明後日から6月ですね。
6月というと、制服がある学校や会社などでは、冬服から夏服へ一斉に衣替えが行われるところが多いのではないでしょうか。
私も小学校から高校までずっと制服でしたので、この季節は自分も含め学校中が一気に涼しげな装いになって、すがすがしい感じがしたのを覚えています。
さて制服といえば、ここ記念館にも制服があります。ご来館くださったお客様の中には、スタッフが着ていた茶色い制服(ベスト)を記憶されている方もいらっしゃるかもしれませんね。ご覧になったお客様から「記念館ぽくていいね~」というお声をいただくこともあるこの制服をデザインしたのは、宮本館長です。記念館らしさはもとより制服としての着やすさなども考えて作られていて、何より、着ると気持ちが引き締まって「今日もがんばるぞ!」という気持ちになる、そんな制服です。そんな宮本館長こだわりの制服を着込んで、これからもしっかりとお客様をお迎えしたいと思います!
【宮本館長の制服は黒、スタッフは茶色です】
そして最後に、とっておきのお知らせです。
既にチェックしてくださっている方もいらっしゃるかと思いますが、6月2日(木)11時頃~16時頃、宮本館長が出勤します!(当日の状況により、滞在時間は変更になることがありますのでご了承ください。)
当日は、宮本館長は上でご紹介した記念館の制服を着て、私たちスタッフと一緒にお客様をお迎えします。
皆さまお誘い合わせのうえ、ぜひ記念館に足をお運びくださいね。
館長をはじめスタッフ一同、心よりお待ち申し上げております。
スタッフ:山岡
2016.05.23 英語
展示をご覧になったお客様から、「伊丹さんは英語が堪能だったんですね。なんでもできるんだな、と驚きました」とご感想をいただいたことがあります。
常設展示室では、伊丹さんの仕事の一部として、海外の映画に出演したことや、英語の書籍を翻訳したことも紹介していますので、それらをご覧になってのご感想です。確かに、どちらの仕事にも大変な英語力が必要でしょうから、「すごい!」と驚いてしまいますよね。
映画『北京の55日』(ニコラス・レイ監督/1963年)のパンフレット(中央カラー冊子)
伊丹さんは日本人役で出演していますが、セリフは英語です
伊丹さんの代表的な翻訳書も展示しています
伊丹さんのエッセイに、英語についてのこんな記述があります。
(前略)思えば、わたくしが英語を習い始めたのは一九四四年、わたくしが、小学校五年のときである。敗戦が翌年の一九四五年であるから、わたくしは、戦時中に英語を勉強した数少ない小学生であったろうと思う。
わたくしたちのクラスは、特別科学教育学級という、日本の軍部が、将来の科学者を養成するために編成した、一種の天才教育のクラスであって、湯川秀樹、貝塚茂樹先生たちの息子さんたちが、わたくしのクラス・メートであった。(ああ百年の計なるかな)
わたくしが、こういう学級にまぎれ込んだのは、何とも滑稽な過ちであるが、どういうものか英語だけは馬鹿に好きであって、従って成績は全く抜群であった。(後略)
――「この道二十年」『ヨーロッパ退屈日記』(1965年)より
小学生の頃から英語の勉強をはじめて、英語がとてもお好きだったようです。具体的な習得方法として、こんな風にも書いています。
(前略)英語を、ソロバンや、自動車の運転のように気軽に考えましょうではないか。
それには、文法や読み書きではないよ。うまくアレンジされた、日常生活で一番頻度の多い文例、即ち「コレハイクラデスカ」「アナタハイクツデスカ」といった文例を、左様、まず三百、理屈もなにもなしに丸暗記することにつきると思われる。つまり小学校上級でできてしまうことなのです。
――「アイ・アム・ア・ボーイ」『ヨーロッパ退屈日記』(1965年)より
「理屈もなにもなしに丸暗記することにつきる」――やはり楽なことではありませんよね。けれど、「ソロバンや、自動車の運転のように気軽に考えましょう」と言われると、少しホッといたします。さらに文章は続きます。
最近は、テープやレコードの類いが発達したから、こういうシステムで勉強している方も多いことと思われる。まことに結構なことと思うわけですが、最後に一言、忠告めいたことをいわせていただくなら、テープやレコードで会話を練習する場合、必ず、誰かを相手にして、相手の眼を見て練習することが望ましい。それが不可能なら、お宅の猫でも、鏡の中の自分でも、あるいはそこに誰かいると想像してその想像上の相手にでもよい。
ともかく、独り言に陥らぬよう、何かの工夫をしていただきたいと思う。このことは、習った結果を、実際に役立てる際、意外に助けになると思われるので、さし出がましいことながら、一言申しそえました。
――「アイ・アム・ア・ボーイ」『ヨーロッパ退屈日記』(1965年)より
なるほど、言葉ですから「伝える」ということを忘れないように......ということですね。伊丹さんらしいアドバイスだな、と感じます。
ちなみに、伊丹さんの翻訳書のうち、『ポテト・ブック』(マーナ・デイヴィス著/河出書房新社)と『主夫と生活』(マイク・マグレディ著/アノニマ・スタジオ)は、記念館内のグッズ・ショップでもお買い求めいただけます。楽しい2冊ですので、ぜひお手に取ってみてください。
スタッフ:淺野
2016.05.16 開館9周年記念イベント・収蔵庫ツアー
すっかり緑の季節になりました。
この季節の桂は、盛夏の頃の力強い緑とはちがって、若さゆえにちょっぴりはかなげで、日の光を吸い込むような色合いをしています。枝葉が風にそよぐと、これはもう格別の眺めです。
伊丹さんの誕生日にして記念館の開館記念日である5月15日。今年もまた、さわやかな気持ちで特別な日を迎えることができました。
2007年の開館からの9年間にお越しくださったすべてのお客様へお礼申しあげますとともに、こんないい日に生まれてくれた伊丹さんにも感謝です。
開館9周年記念イベントとして、ささやかではございますが、5月13日・14日・15日の3日間、各日2回の計6回、収蔵庫ツアーを開催いたしました。
記念館の収蔵庫の2階は、伊丹十三の愛用品や衣類、蔵書などを"展示風"に収蔵し、自宅の一室の再現コーナーもある、ちょっと変わったスペースなのです。事前にご応募くださったお客様と伊丹さんについておしゃべりしながら1時間ばかりご案内する、そんな催しです。
(たくさんのご応募をいただきましたので、残念ながらご落選となってしまった方もいらっしゃいました。まことに申し訳ありません。またぜひご応募にトライしてください!)
本日の記念館便りは、頂戴したご感想をもとに、一部収蔵品の写真もまじえて、収蔵庫ツアーのレポートをいたします。
*************
楽しかったです。熱中すること、自分のものにすること、自分の生活も見直したいと思いました。もう一度映画を観たいと思います。もっと活躍していただきたかったな、と改めて思いました。
愛用品や私服、自宅の再現等、展示室よりもさらに伊丹さんの生活の様子が分かり、大変興味深かったです。面白く拝見することができました。
初めて入館しました。一六タルトのCMで存じており、監督した映画も知っておりましたが、多趣味でかつ才能があふれている方だったのだと、早逝を残念に思います。展示品の入れ替えに合わせて、再度訪れたいと思います。
初めて訪れ、建築、収蔵庫にあるもの、興味深く拝見しました。
作品はあまり観たことがありませんが、ツアーで拝見した衣装を目に焼きつけたので、近いうちにDVDで鑑賞したいと思いました。
普段は公開されていない収蔵庫の中を見られて本当に感激しました。詳しい説明やエピソードを聞けて楽しかったです。また来年も応募します!
やっとこの収蔵庫ツアーに足を運ぶことができました。今日で来館三度目ですが、いつか朝からどっぶりと浸りにまいります。伊丹さんは私の人生の師。宮本さんは私の憧れの女性です。
初めての来館が収蔵庫ツアー。なんと幸せなことでしょう。松山南高の大先輩である伊丹十三さんは、ずっと気になる素敵な方でした。収蔵庫ツアーで伊丹さんの心意気や暮らしぶりに、少しだけ触れられた気がします。
私自身、家庭の事情で自分の時間がなかなか取れない毎日でしたが、少しずつ時間が増えてきました。またゆっくりと訪れたいと思います。
第二の展示室のように見やすく置かれていただけでなく、自宅のダイニングルームの再現のように、伊丹さん一家の雰囲気も感じることのできる、いい収蔵庫でした。ガラスを隔ててでなく、イラストの原画や直筆原稿や衣装、小物が見られたのも幸いです。
すばらしい収蔵品を見ることができて感激しました。展示の仕方も工夫されていて、見やすかったです。
このツアーに参加することが決まって『ヨーロッパ退屈日記』を読み始めました。まるで伊丹さんがすぐそこで話しているようです。あの時代に書かれたとは、と感心しています。もう新しい映画が観られないのが残念でたまりません。
ひとつひとつの物にすごくこだわってコレクションされていたことが伝わってきました。今回参加させていただいて、又、改めて伊丹先生の人物像を再発見させていただいたと同時に、魅力的な方だなと思いました。伊丹先生の人生に触れることができて本当に嬉しく幸福(しあわせ)でした。又、参加させていただきたいです。
念願の収蔵庫ツアー、非常に楽しませていただきました。知らなかった伊丹氏の生活の一部を覗き見ることができました。想像以上の変人(勿論良い意味で)でした。また訪問したいと思います。
映画、物への愛情が強く感じられました。そしてお父様(万作先生)へも......。気に入ったデザイン、物を使い続けること、見習いたいと思ってもなかなかできない。これからの生活、仕事への心がまえとしていきたいと思います。
p.s.『お葬式』の予告編、シリアスなトルコ映画『路』の上映前で印象に残っています。
今日は、前から来たかった収蔵庫ツアーに来られて、とても、うれしかったです。手回し式のイラスト閲覧台などがある展示室も楽しめましたが、収蔵庫では、伊丹さんの仕事や、作品に対する考え方にふれられて、とてもよかったです。
収蔵庫と言うと、倉庫のようなものだと思っていましたが、全く予想に反して、伊丹さんのテーマパークのような楽しい世界だったので、大変「お得」な気持ちになりました。モノ、本、生活用品の収蔵庫での展示は、展示室とは又違った印象で、より身近に伊丹さんを感じることができました。
今後も伊丹さんに関係する新しい物品等が見つかれば、ぜひ収集して展示していただければ幸いです。
今回のツアーで十三氏の人柄が何となく伝わり、貴重な体験をさせて頂きました。
今回初めて参加させていただきました。「マルチな才能」の一言では足りない、伊丹さんのお人柄にもせまれる貴重な60分でした。来週末はゆっくりと映画のDVDを鑑賞して過ごしたいと思います。
伊丹さんの蔵書が特に興味深かった。料理が大好きな所やこだわりを持つ所など収蔵庫から改めて感じることができた。靴のBefore/Afterが見られたことがとても貴重だった。また、山口瞳さんの本を古本屋で購入してツアーで紹介するスタッフさんから伊丹愛を感じた。
二度目の参加ですが、伊丹さんのことはもっともっと知りたいし、感じたいと思っています。近づくとしんどいだろう、けど、遠くからずっと見ていたい人だと思って記念館に来ています。
松山が好きで引越しして来ましたら、ドライブ中にこの記念館を知りました。そして、今日も親切な案内を受け、楽しみが増えました。
昨年亡くなった母と同年代だったとは......。母も映画を観たりしておりました。一緒に伺えたらと思わずにはいられませんでした。大阪から福岡へ、そして松山での暮らしが始まって3週間です。又、是非伺わせて頂きます。
湯河原のご自宅に伊丹さんがお留守のときにお邪魔したような、とても不思議な気持ちになりました。伊丹さんのこだわった「モノ」のオーラがひしひしと伝わってきました。
*************
開館記念日のたびに開催してきましたので、今年で9回目になりました。(※春と秋にはメンバーズカード会員限定のツアーもございます。)
初めの何年かはお話できることがほんとうに少なくて、伊丹プロダクションの社長でもある玉置館長代行にすがりついてガイドをお願いしたこともありました。
今では、お客様とのひとときを楽しみながら進められるようになりましたし、ある種、年に一度の"成果報告"や"学習発表会"のように捉えて張り切って臨んでいますが、それぞれの方の「伊丹さん像」や「伊丹さんと記念館のどんなところを好いてくださっているか」、それから、自分の勉強不足な分野のことでお詳しい方がいらっしゃったときなどなど、お客様から教えていただくことがたくさんあります。
記念館のごくご近所から、ご遠方から、長年のファンの方、最近伊丹さんに興味を持ち始めてくださった方、初めてのご来館の方、何度もお越しくださっている方、どなた様も、まことにありがとうございました。
今回のツアーの経験は、必ずや、今後のツアーを充実させるための糧にいたします。
これからもジワジワと成長を続けられるようにスタッフ一同励んでまいりますので、10年目の伊丹十三記念館、引き続きどうぞよろしくお願い申しあげます。
記念イベントの無料開館と収蔵庫ツアーは終了いたしましたが、グッズショップ・オンラインショップでの期間限定プレゼントは5月いっぱい続けます!
学芸員:中野
*******お知らせ******
宮本信子館長が"出勤"いたします!
日時:6月2日(木)11時頃~16時頃
当日の状況により、滞在時間は変更になることがありますのでご了承ください。
館長&スタッフ一同、皆様のご来館を楽しみにお待ちしております。
2016.05.09 グッズショップよりお知らせ
5月15日は、伊丹さんの誕生日であり、ここ伊丹十三記念館の開館記念日です。
2007年にオープンして以来、たくさんのお客様や関係者の皆さまに支えられ、今月15日には9周年を迎えます。
いつ・何度お越しくださっても楽しんでいただける記念館であるよう、スタッフ一同より一層励んでいきますので、今度とも伊丹十三記念館をよろしくお願いいたします。
さてそんな5月の記念館から、グッズショップをご利用のお客様に、ささやかながらプレゼントをご用意いたしました。
1) 復刻版・金榮堂ブックカバー
惜しまれながら1997年に閉店してしまった北九州市小倉の老舗書店「金榮堂」。
いまだに根強いファンの方も多いこの名書店のブックカバーは、実は伊丹さんがデザインしたものです。
実際に金榮堂に行かれたり本を買ったりされた方は、入浴しながら読書をしている男性、背中に猫を乗せて読書をしている男性が描かれたブックカバーをご存知の方も多いかもしれませんね。
書籍「伊丹十三の本」(新潮社)でも紹介されているこのブックカバー(復刻版)を、5月1日~30日の期間中、対象商品をお買い上げのお客様にプレゼントいたします。
対象商品:
伊丹十三記念館ガイドブック/映画『お葬式』シナリオつき絵コンテノート/伊丹万作エッセイ集/伊丹十三の本/伊丹十三の映画/万作と草田男-「楽天」の絆
2) 『マルサの女2』缶バッジ
伊丹十三監督映画『マルサの女2』(1988年)公開時にプロモーショングッズとして製作された非売品です。スタッフがベストにつけているのを見て「あれは販売してないの?」と尋ねられることもあるこの缶バッジを、対象商品をお買い上げの方お一人につきおひとつプレゼントいたします。数に限りがありますので、20個限定とさせていただきます。お早めに!
対象商品:
DVD13の顔を持つ男/伊丹十三の映画/伊丹十三監督映画作品Blu-Ray※
※伊丹十三監督映画作品Blu-rayはオンラインショップでの取り扱いはありません。
オンラインショップでのお買い上げも対象です。この機会にぜひどうぞ!
スタッフ:山岡
2016.05.02 シェイヴド・フィッシュ
記念館で販売しておりますオリジナルグッズに、伊丹さんのイラストを用いたゴム印があります。どれも遊び心のあるイラストで、人気があります。
S・M・L 3つのサイズがあり、デザインもさまざまなのですが(オンラインショップでご覧いただけます)、Mサイズのこちらの2点は、伊丹さんのエッセイ「鬚(ひげ)を剃った魚の話」(『女たちよ!』に収録)の挿絵を使用しています。
お客様から「猫と"ねずみ"ですよね?」と聞かれることがあります。小さなゴム印ですので、猫と並べると一瞬ねずみかなと思ってしまう左のイラスト、よくご覧いただきますと「えら」がありますよね。「魚」なのです。
お客様から、「このイラストが挿絵のエッセイって、どんな内容ですか?」とご質問いただくことがございますので、簡単にご紹介させていただきますね。
――伊丹さんがロンドンにいた頃、日本の商品を豊富に扱う食料品店を利用していたことから始まるエピソードです(以下、エッセイの一部引用です)。
(前略)ロンドンのわが家の台所は、常に日本の食料品で潤っていた。
うちの家主はデリク・プラウスといって日本へもきたことがある評論家であるが、相当な日本通であるからして、うちの台所には常に好奇の目を光らせている。
梅干や葉唐辛子の瓶を手に取って永い間小首をかしげていたりする。
彼の趣味は、日本の商品に印刷してある英文の解説を読むことであった。その怪しげというか奇想天外というか、不思議千万の英文を熟読玩味するのが趣味なのである。(中略)
ある時、彼がごく不思議そうな顔で、これはなんだという。見ると手に「削り節」の箱を持っている。
つまりそれは固く干しかためたマッカレルを機械で削ったものさ、と説明すると彼はいきなり気が狂ったように笑い出した。
「だって、この箱には鬚を剃った魚と書いてあるぜ」
そういってますます笑い転げるのである。私も仕方なく少し笑ったが、つまりこういうことなのだ。
英語で、鉋(かんな)の削り屑を「シェイヴィング」という。鉋で削ることを「シェイヴ」という。それ故に――と鰹節屋の大学生の息子は考えたに違いないのだ――削られた魚は「シェイヴド・フィッシュ」であるに違いない、と。
語学において三段論法を適用する過ちはここにある。「シェイヴド・フィッシュ」はあくまでも鬚を剃った魚であって「削り節」にはならない。
強いていえば「フィッシュ・シェイヴィング」でもあろうか。これでも魚の鬚剃り、という印象を免れない。
「シェイヴド・フィッシュ」は彼によほど強い印象を与えたに違いない。彼は私に「シェイヴド・フィッシュ」の絵を描いてくれと子供のようにせがむのであった。(後略)
――「鬚を剃った魚の話」『女たちよ!』(1968年)より
――というわけで、「カミソリをといでいる理髪師の猫」と「理髪店の椅子に座っている魚」の絵を伊丹さんが描いたんですね。とても伊丹さんらしい絵だなと思います。
このエッセイをお客様にご紹介いたしますと、「じゃあ、2つのゴム印をセットで買わなきゃね」とおっしゃっていただくことがあります。確かに、並べると一層楽しいですね。
ゴム印以外にも、グッズショップで販売している缶バッジやシールにこのイラストを使用しています。
エッセイ『女たちよ!』とあわせてお買い求めくださるお客様もいらっしゃいます。皆様も、ぜひどうぞ。
スタッフ:淺野
2016.04.25 第8回伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました!
4月14日(木)、第8回伊丹十三賞を是枝裕和さんにお贈りする贈呈式を国際文化会館で開催いたしました。
祝辞、受賞者スピーチを中心に、レポートさせていただきます。
祝辞 選考委員・周防正行さん
是枝さん、伊丹十三賞を受賞していただいて、ほんとうにありがとうございます。
委員のみなさんと一生懸命に議論をし、「この方に賞をいただいてほしい」と決めたときに、その方に受賞を喜んでいただけると、こんなにも嬉しいものかと。選考する側になって、自分が賞をいただいたときに持っていた気持ちとはこんなに違っていたのかと、選考委員になって初めて感じました。
我がことのように嬉しいんですね。「我がこと」なんですけどね、選んでるのは自分なので(笑)。ほんとうに嬉しいです。ありがとうございます。
左から、選考委員・中村好文さん、周防正行さん、受賞者・是枝裕和さん、
伊丹十三記念館・宮本信子館長、選考委員・平松洋子さん、南伸坊さん
実は、伊丹十三賞発足の頃から「映画の分野でこの賞にふさわしい方を選ぶというのはできるのだろうか」と、プレッシャーでした。伊丹さんのやってこられた活動の中で、映画作品は特別な重みを持っていると思うんですけど、8回目にして初めて、映画監督の方に受賞していただくことになりました。
同業者ということもあって、4人の選考委員の中で、映画監督について一番厳しい目を向けていたのは僕じゃないかと思います。ようやく、自信をもって「この人がいい」と言えたのが、すごく嬉しかったです。だから、ひとつ荷が下りた感じです(笑)
是枝さんが大学を卒業してテレビマンユニオンに参加なさった頃、
伊丹映画のメイキングビデオやテレビドラマの監督として
同じテレビマンユニオンでお仕事をしていた周防さん。
当時抱いた「是枝さんといえば、非常に映画好きで真面目な好青年」
という印象は、今も変わらず続いているそうです。
映画監督として作品を発表される前からその存在を知っていて、監督した作品のほとんどを見ている監督は、実はそう多くはありません。その中でも、是枝さんは、いつも非常に気になる映画監督として、羨望も含め嫉妬も含め、ときに身内気分で「あぁ~、そこはそうするところじゃないのでは」とか思いながら(笑)、ずっと見ていました。いや、逆もあるんですよ、「ああっ、やられちゃった!」とドキッッとするようなことも多々ありました。
僕が、是枝さんについて強調したいのは、授賞理由にありましたように、現在の日本映画界において、映画作りの環境に正面から向き合って、自分が作りたい映画を作り続ける、その姿勢です。
僕自身も、自分の作りたいものを作り続けようという気持ちでやってきましたが、是枝さんの「自分の作りたいものを一生懸命作る」という姿勢が、やはり一番好きです。
伊丹十三さんは、今ほど日本映画の興行成績がよくなかった頃に、日本映画に対するイメージをガラリと変えて、日本映画の注目度をとても大きなものにしました。伊丹プロダクションは、その当時の独立プロにとって目指すべきひとつのかたちというものを示してくれたと思います。企画・宣伝・配給まで――配給会社と対等な力関係の中で、ご自分の作品を発表していく、そういう意味において、伊丹さんはあの時代に、僕らが目指すべきひとつのかたちを作りあげたと思います。
今の日本の映画界では、メジャー映画は一見活況を呈しているようですが、多様性が失われて、似たような企画が並んで、似たような配役と似たような宣伝で、ハッキリ言うと、大人の鑑賞にたえうるようなものが少ないな、と僕は思ってます。
その中で、是枝さんは映画制作へのアプローチをさまざまに工夫して、自らも制作会社を立ち上げて、意欲的に作品を発表し、また、表現するテーマによって、いろんなサイズの作品を作られています。また、プロデュースということに関しても、若い監督と一緒に意欲的に取り組まれていて、多様な表現を模索しつづけている姿勢がとてもすてきだなと思っています。
このように、今、是枝さんが示しているかたちが、多くの若い日本の映画人の、ひとつの目指すべきスタイルのひとつになってほしい。
もちろん作品の内容があってこそですが、「どう作り上げていくか」ということ、作家というよりは興行的なことも含めてご自分で考えていらっしゃるところが、伊丹十三賞に一番ふさわしいのではないかな、と僕は思いました。
それから、選考会のときには言いませんでしたが、是枝さんのお仕事ですごいなと思うのは、ウェッブサイトで、放送と公権力についてのお考えなどを、きちんと発信されてるんですね。今の時代にあって、是枝さんは、その原動力を「怒り」だとおっしゃっています。そのように表現者としてきちんと物を言うところも、すてきだなと思ってます。
ほんとうにおめでとうございます。そして、受賞してくださってほんとうにありがとうございました。
正賞(盾)贈呈 選考委員・中村好文さんより
『海街diary』について、駅のホームですずちゃんが
「...行きますっ!」と言うところがお気に入りだという中村さん。
「あのシーン、あのせりふが、『海街diary』を象徴したんだと思います。
そういうすばらしいシーン、せりふのある映画はいいなあ、と思いました」。
ちょっぴり真似て「盾を...あげますっ!」と贈呈してくださいました。
副賞(賞金)贈呈 宮本館長より
受賞者スピーチ
えーー......めったに緊張しないんです、僕。でも、なんでこんなに緊張するのかな。
やはりそれはですね、「伊丹十三」という名前が、僕にとっては特別大きな、意味のある名前であるっていうことが、すべての原因ですね。
アシスタントディレクター時代の周防さんとの出会いや
その後の交流について、是枝さんもエピソードをご披露くださいました。
監督第1作の『幻の光』(1995年)に反省ばかりこぼしていたら、
「映画監督は、ほんとは失敗したと思っていても
出てくれたキャストと関わってくれたスタッフのことを考えて
10年は失敗したとは言ってはいけない」とたしなめられ、
「監督は、作品を作ったことの責任をこのように取るものなんだな」と
長く印象に残ったそうです。
伊丹さんの名前に関して言うと、ふたつ、大きなものがあります。
ひとつはやはり『お葬式』。
『お葬式』という映画が公開されたとき(1984年)僕は大学生で、実は、初日の伊丹さんの舞台あいさつに駆けつけました。
そのときに、伊丹さんが「新しい日本映画を作る」――作品だけではなくて、「作り方を含めて新しいムーブメントを起こしていくんだ」っていう気概に満ちて、すごく輝いていました。当時ももちろん、いろんなかたちでいろんな映画が作られつづけていたと思うんですけど、大学生の自分にとって、魅力的な、ある指針になるような作り手というのはなかなか出にくい状況がありました。そのときに、伊丹さんが突破口を開いたことを、明らかに感じました。
その後、僕はストレートに映画に向かうという道を選びませんでしたが、伊丹さんがああいうかたちで日本の映画界に道を拓かれて――周防さんがおっしゃられたように「映画に監督がトータルにかかわっていく」というスタイルを見せていただいたことは、その後、自分も映画を作るようになってから、とてもいい目標になりました。
もうひとつは、テレビマンユニオンの今野勉さんが、伊丹さんと一緒に作られた、1970年代のさまざまなテレビ番組。
ご来場くださったテレビマンユニオンのみなさん。
後列右から3人目が今野勉さんです。
『遠くへ行きたい』も『天皇の世紀』も、ドキュメンタリーとドラマを融合させるようなもので、カメラがまわっているその瞬間に起きた面白いことを、そこに立ち会ったスタッフ・キャストが反射神経と動体視力でどう面白がるか、それが結実したもの、もしくは、そのプロセスが番組になっていくというような、非常に新しい作品と作家の捉え方をした番組でした。70年代に伊丹さんとテレビマンユニオンが出会ってできたその作品、番組を、テレビマンユニオンに入ってから見直したことが、「テレビは面白い」「テレビにもっと深くかかわりたい」と思ったきっかけでした。
たぶん、漠然とですが、僕は、いつか映画監督になるための腰掛けとしてテレビマンユニオンに入ったような側面があったんですね。だから、アシスタントディレクターの仕事に身が入らずに、腰が据わらずに、半ば逃げてたとこがあったと思います。そういう時期に、テレビをほんとうに面白がっていて、映画にコンプレックスのない、70年代の伊丹さんたちのテレビ番組群に触れたことが、その後、僕がテレビマンユニオンに長く残り、自分なりに、あくまで自分なりに、ですけど、「テレビでできることは何なのか」、「テレビのオリジナリティというのはどこにあるのか」と考えていく――先ほどウェブでのコメントにも触れていただいて嬉しいですが、放送というのはどういうものなのかを自分が考えていく、大きな指針でありました。
そういうわけで、やはり、「伊丹十三」は、映画監督としてもテレビ人としても、自分にとって大きな目標であり、自分が向かっていく先を示してくれた名前です。
その名前がついた賞をいただくということが、たぶん、この緊張を生んでいます(笑)
そして、若い作り手たちと一緒に「分福(ぶんぶく)」という制作者のグループを作り、いろんなサポート、パートナーシップに支えられながら、何とかそこから映画を発信していく、監督が作りたいものを作っていく、そのためのチームを作っていく出発点を、と模索を始めました。今日、仲間がみんな来てくれてます。
分福のみなさんもご来場ありがとうございました。
お若い! そしてイキイキしてます!!
授賞理由の中で、そういう志も含めて評価の対象にしていただけたことが、とても嬉しいです。
独立してまだ2年ちょっとなので、その活動をどういうふうに広げていくか、何を目指していくかというのはまだまだ手さぐりですが、今回の受賞が、これからの取り組みへの大きな励みになることは間違いないと思っております。
歴代の受賞した方たちの名前を見ますと、やはり背筋が伸びますし、今後自分がその賞に恥じないように――「あんな映画作っちゃって」と言われないように、オリジナリティある、自分が作りたいものを作りつづけていけるように、がんばりたいと思います。今日はどうもありがとうございました。
宮本館長ご挨拶
私は、勝手に、テレビマンユニオンのことは親戚みたいな気がしていまして、その中で育っていった是枝さんと、伊丹が一生懸命作っていた時代のテレビマンユニオンの、そういうご縁をね、すごく感じています。
ほんっとに伊丹さん、喜んでると思います。是枝監督、どうも、おめでとうございます!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「では、カンパ~イ!!」の館長の音頭でパーティーがはじまりましたところで、このレポートをお読みのみなさんに少々補足を――
お話の中に何度も登場しました「テレビマンユニオン」は、日本初の独立テレビプロダクションで、例えば......『遠くへ行きたい』や、『世界ふしぎ発見!』を作っているところです、とご説明すると、みなさんご存知、おなじみですね。
是枝さんは大学卒業後からこのテレビマンユニオン参加し、2014年に分福を立ち上げて独立されました。
伊丹十三について申しますと、『遠くへ行きたい』は、1971年からレポーターとして出演することでテレビの面白さに開眼し、『天皇の世紀』(73~74年)、『欧州から愛をこめて』(75年)、『古代への旅』(77年)など多くの番組に携わり、仕事の幅を大きく広げ、作り手としてのテーマを深めていくことになった、きっかけの番組です。
制作者のための「メンバーシップ」という独自の組織論にも共鳴して76年には準メンバーとして加わりました――というように、テレビマンユニオンは伊丹十三ともゆかりの深い会社なのです。
※テレビマンユニオンと伊丹十三の仕事については、記念館の常設展示室、
DVD『13の顔を持つ男』、ガイドブックでもご紹介しています。
そういうわけで宮本館長が「親戚」と呼ぶ方々がたくさんお集まりくださいました。
是枝さんのお仲間のみなさま、それから、伊丹十三賞と財団をいつも支えてくださっている方々も、ご来場ありがとうございました。池田晶紀さん、「ほぼ日刊イトイ新聞」ゆーないとさん、あたたかいご撮影にお礼申しあげます。
さて、お名残り惜しゅうございますが......館長、恒例の一本締め、お願いします。
いよ~ォ!
ポン!!
是枝裕和監督の最新作『海よりもまだ深く』は5月21日より全国公開です。楽しみですね。
日本映画専門チャンネルの「日曜邦画劇場」では、これから5月にかけて『海街diary』(2015年)と『歩いても 歩いても』(2008年)が放送されます。まだの方、ぜひご覧ください!
正賞の盾です
学芸員:中野
2016.04.18 カフェのアイスドリンク
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。冬の間はやわらかかった日差しが日に日に強くなり、気温もだんだん上がってきました。ここ記念館にお越しのお客様も、日中は上着を羽織った方より手に持っている方のほうが多くなってきたように思います。(館内にいらっしゃる間、上着は受付でお預かりできますのでお気軽にお声がけくださいね。)
さて記念館のカフェ・タンポポでは、これからの暑い季節に向けて、夏季メニューのアイスドリンクを開始しました。
期間を限ってご提供するのは、毎年多くの方にオーダーしていただくアイスコーヒーやアイスティー、特にお子様に人気がある甘口のマンゴージュースです。加えて、これらのメニューに豆乳を合わせたアイスドリンクの豆乳コーヒーや豆乳紅茶、豆乳マンゴーも同時にスタートしましたので、こちらもぜひお試しください。
【アイスコーヒーとアイスティー】
もちろん夏季メニューだけでなく、3種類のみかんジュースが楽しめる飲み比べセットや、手作りしょうがシロップとペリエを合わせたジンジャーペリエ等々、通年メニューのアイスドリンクもこれからの季節にはより一層おすすめです。
また、季節の果物を使った「季節のケーキ」は、今は「イチゴのタルト」をお出ししています。ドリンクとあわせてどうぞ!
【イチゴのタルト】
中庭の桂はいま新緑の時期を迎え、鮮やかな黄緑色で皆さまをお迎えしています。回廊で足を止めて中庭を写真に納めたり、ベンチに座って桂を見上げたりするお客様も多くなってきました。
カフェから新緑の中庭を眺めてみるのはいかがでしょうか。
スタッフ:山岡
2016.04.11 クリアファイル
記念館のグッズショップでは、宮本信子館長プロデュースのオリジナルグッズを販売しており、ご好評いただいています。そのグッズの一つに、クリアファイルがございます。
A4サイズが2種類、A5サイズが1種類です。
お買い求めくださるお客様から、「すぐに使うので、包装袋は要りませんよ」とレジでお声をかけていただくことがあります。ご入館時に受付でお渡しした展示品解説リストを、ご購入なさったクリアファイルに入れてお持ち帰りくださるお客様がいらっしゃるんですね。大切そうにファイルにおさめてくださっているご様子を拝見しておりますと、とても嬉しくなります。
展示品解説リストは、A4サイズのクリアファイルにぴったりおさまります。
春休み期間中にお越しくださった中学生や高校生の方々が、「このクリアファイル、学校で使おう!」と手に取ってくださっていたのも嬉しい光景でした。
クリアファイルのイラストは、もちろん伊丹さんが描いたものです。そして、イラストの背景になる表面のベースカラーは白にしています。
なぜ白なのかといいますと......伊丹さんは原稿用紙の裏に絵を描くことがよくあったそうで、「伊丹さんが紙に描いた雰囲気を再現したい」という宮本館長のアイデアからなのです。使うのが楽しくなりますよね。
ちなみに裏面は透明ですので、ファイルの中身もしっかり確認できます。
オンラインショップでもお買い求めいただけますので、皆さま、ぜひどうぞ。
スタッフ:淺野
2016.04.04 新年度
みなさま、"新年度"明けましておめでとうございます。
あちこちでお花が開いて景色が色とりどりになっていく様は、目にも心にも楽しいものです。やはり、新年度・新学期というものは、自然の勢い感じながら、春に迎えるのがいいような気がします。
とはいえ、風情に疎い私ですから、お花の名前もよく知らず「何かいいなぁ」とウキウキしているだけなのですが、先日、近所を歩いていて、それと分かる植物に出くわしました。これは大変に珍しいことです。
「あのツル、あの白いお花! 知ってる、エンドウマメよ!」と歓喜の叫びを発しましたね、心の中で。
なぜそれに目が留まり、エンドウマメだと気付いたのか、なぜやけに嬉しいのか、自分でも不思議......
そうか、常設展示室「池内岳彦」のコーナーにある、これのおかげなのでした。
『豌豆の観察』(1944-1945)
小学5年生の秋から6年生の春まで、少年時代の伊丹十三がつけたエンドウ豆の観察記録です。なんと全長76cm!
発芽から実りにいたる各段階の詳細なスケッチに、具体的な解説が添えられています。
「茎は丸味を帯びた四角」
「こんな形の葉の外側へ出た茎はつるになり、内側から出た茎にはつぼみが出来る」
「花は孔雀型」
子供ってよく見てるんだなぁ、と感心することは多々ありますけれど、いつの間にか、70年前の少年にエンドウマメのあれこれを教わっていたみたいです。
ものを見ることや記録することに好きなだけ時間をかけられるなんて、子供時代はすばらしい、と最近つくづく思います。
新一年生のみなさんおめでとう、学校でもお家でも、お勉強をタップリ楽しんでくださいね。
※常設展示室では、この観察日記のほか、野菜の絵、夏休みの日記、昆虫観察ノートなどもご覧いただけます。さらに多数の絵や日記帳を掲載しているガイドブックも、ぜひ店頭でお手に取ってみてください。(オンラインショップでの取扱いはコチラです。)
学芸員:中野
2016.03.28 春の記念館より
まだ少し肌寒い時もありますが、日差しにあたたかさを感じるようになった今日この頃、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
記念館の中庭では先週の水曜日、タンポポが咲きました。
朝出勤して中庭を見るとスタンプを押したように黄色い花がひとつ、ぽんと咲いていたのですが、その日は天気が良かったこともあって、昼過ぎにはさらに2つ3つと開いたタンポポが増えていました。
おなじみ桂の木も、芽吹きの準備を始めているようです。
そんな春の記念館から、5月に迎える開館9周年を記念したイベントのご案内をさせていただきます。
◆◆◆◆いよいよ次の日曜日!無料開館◆◆◆◆
次の日曜日・4月3日に、無料開館を行います!
「記念館は初めて」という方には、伊丹十三記念館を知っていただくきっかけになれば幸いですし、「また行きたい!」と思っていただければスタッフ一同本当に嬉しく思います。もちろん以前お越しくださった方のご来館も大歓迎です。
入館された方専用のカフェ・タンポポもご利用いただけますので、伊丹映画のサウンドトラックが流れる店内で、春の中庭を眺めながらゆっくりとお寛ぎください。
詳細はコチラ
◆◆◆◆参加者募集中!伊丹十三記念館・収蔵庫ツアー◆◆◆◆
当館の収蔵庫は通常の倉庫とはちょっと異なり、資料の数々を「展示風」に収めたスペースがあります。この収蔵庫ツアーでは、そんな風にジャンルごとに分けられた伊丹さんの直筆原稿や衣類、食器、楽器などの愛用品を実際にご覧いただくことができるのです!伊丹さんをより感じてみたい方には特にお勧めの、見所満載のツアーです。
応募方法など詳細はコチラ
応募締切は4月18日です。奮ってご応募ください!
スタッフ:山岡
2016.03.21 第8回伊丹十三賞の受賞者が決定いたしました!
伊丹十三記念館より、毎年春恒例のお知らせをお届けいたします。
すでにメディアでも報じられていますので、ご存じの方もいらっしゃることと存じますが、第8回伊丹十三賞を、映画監督・テレビディレクターの是枝裕和様にご受賞いただくことになりました!
今年も素晴らしい方にご受賞いただけましたことを、関係者一同、大変嬉しく存じております。
是枝監督のご活躍は皆様ご存じの通りですが、あらためてプロフィールをご紹介させていただきます。
≪プロフィール≫-------------
1962年6月6日、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、テレビマンユニオンに参加。主にドキュメンタリー番組を演出。14年に独立し、「分福」を立ち上げる。主な監督作品に、主演の柳楽優弥がカンヌ国際映画祭で史上最年少の最優秀男優賞(柳楽優弥)を受賞した『誰も知らない』(04)、『歩いても 歩いても』(08)、自身初の連続ドラマ『ゴーイング マイ ホーム』(12)、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した『そして父になる』(13)、同映画祭コンペティション部門に正式出品された『海街diary』(15)など。最新作『海よりもまだ深く』5月21日全国公開予定。
--------------------------
映画監督としてご活躍なさりながら、映像作品の企画・制作・プロデュースなど様々な活動を行っている制作者集団「分福」を立ち上げていらっしゃいます。
伊丹十三賞選考委員会によります「授賞理由」もご紹介いたします。
「映画監督が映画産業のなかのひとつの役割にすぎなくなりつつある時代に、みずから独立したシステムをつくり、構想、脚本、キャスティング、演出、編集までを一貫して手放さない、映像作家としての姿勢、その成果に」
――この授賞理由をお伝えしましたところ、是枝様よりお心のこもったコメントを頂戴いたしました。
≪受賞コメント≫-------------
伊丹十三という名前は僕にとっては特別なものです。伊丹さんご自身もその志に共感して深く関わられていたテレビマンユニオンに僕も27年在籍していましたし、伊丹さんがそこで今野勉さんたちと作られたテレビ史において特筆に値する斬新で、軽妙で、それでいてテレビの本質を鋭くえぐった番組群は、僕自身がテレビについて考える上で最大の指針になりました。
今回、その特別な名前のついた賞を頂けるのは大変光栄ですし、作品そのものだけではなく、それと向き合う姿勢や、組織のあり方も含め評価を頂いたのが、何より嬉しいことで、周りのスタッフも共に喜んでくれると思います。
本当にありがとうございました。
--------------------------
素敵なコメントをいただきまして、関係者一同、あらためて大変光栄に存じております。
コメントで触れてくださっていますが、伊丹さんは、1971年にテレビマンユニオン制作のテレビ番組『遠くへ行きたい』に出演して以来、テレビマンユニオンとともに番組制作に取り組んでいた時期がありました。記念館の常設展示室 九「テレビマン」のコーナーでもご紹介しております。ぜひご覧になってみてください。
常設展示室 九「テレビマン」のコーナー
贈呈式は、4月に東京で開催いたします。
当日の様子は、あらためて記念館便りでご報告させていただきますので、楽しみにお待ちいただけましたら幸いです。
スタッフ:淺野
2016.03.14 基本の春
最近、伊丹十三の著書と関連書籍を一から読み直しています。
これらはすべて、今でも書店・インターネットで
お求めいただける"現役"の書籍です。
「ここらでしっかり基本に戻らねば」と感じていたところへ、読み直してから取りかかるべき仕事が生じたので、これ幸運と取り組んでおります。
「基本に戻らねば」――というのも、先日、ほかでもない私の母が、本屋で目に留まった『伊丹十三の本』(新潮社)を買って読んだそうで、買った理由も「何も買わないと本屋さんに悪いから」という消極的なものだったらしいのですが、ある日の電話で開口一番「伊丹さんって面白い人だったのねぇ~!」と言ったのですね。
あれがよかったこれがよかったと報告してくれる母の話に相槌を打ちながら「そうか、こういうことを面白がってもらえる本なんだなぁ。自分は何度も読んでいて『知ってて当然のこと』と思い込んでしまっていたかもなぁ」と反省したのです。
(「何年も前に私が差し出した時には、素気なく辞退したじゃないの!」とも思いましたけどね、ちょっとだけね。)
母曰く「インタビューが全部いい、語り手の皆さんがすばらしい。
伊丹さんとの関係がすばらしい」。
殊に、岸田秀さんの「伊丹さんはあの頃育児に"凝って"いて」
という表現がツボにはまったようでした。確かに(笑)
記念館ができてもうすぐ9年になります。自分も周りのスタッフも勤続年数が長くなってきますと、「お互いにわざわざ話題にしない基本情報」が増えるせいもあってか、記念館便りでも、展示の中でも、お客様とのおしゃべりでも、ついつい小ネタに走ったり、「誰も知らなさそうな伊丹十三」を紹介しなきゃと力みがちになっていたような気がします。
伊丹十三の著書は館でも家でもすぐ傍にあるのに、引用元として確認するためや、印刷のゲラチェックで写し間違いがないか照らし合わせるためなど、"資料"として使うばかりになっていました。お恥ずかしい限りですが、字引のように開く以外に、最後に、純粋な一読者として手に取ったのはいつだったかしら――
伊丹十三のエッセイデビュー作『ヨーロッパ退屈日記』(1965)
山口瞳さんがつけた名キャッチフレーズ
今一度、伊丹エッセイに「ニヤッ」としながら基本をしっかりおさらいし、より多くの方々にお勧めできるようになって、10年目に入りたいと思います。
学芸員:中野
・・・・・・・・
5月15日、伊丹十三記念館は開館9周年を迎えます。
記念イベントを下記のとおり開催いたしますので、ぜひご参加くださいませ。
○無料開館...4月3日(日)
○収蔵庫ツアー...5月13日(金)~15日(日)※事前応募制・4月18日(月)必着
詳しくはコチラ
2016.03.07 開館日のご案内
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
幾分寒さもやわらいできましたね。記念館前を流れる川の土手は、今ちょうど満開の菜の花の黄色で覆われていて、なんとも春らしい景色になっています。
さてこの時期になると、「ゴールデンウィークは開館していていますか?」というお問い合わせをよくいただきます。
ゴールデンウィーク前にも、土日が休みの方は3月19日からの3連休がありますし、学生の方なら春休みに入ります。
暖かく過ごしやすくになってきたこの頃から、ご家族やご友人とのご旅行や外出を計画される方が多くなるのですね(ご予定の中に記念館を組み込んでくださってありがとうございます!)。
そこでゴールデンウィーク前後の開館日をちょっとご案内いたしますと・・・
通常、当館は火曜日を休館日としており、火曜日が祝日の場合は開館して翌日水曜日が休館となりますが、今年のゴールデンウィークは、5月3日憲法記念日はもちろん翌日水曜日も5月4日みどりの日で祝日となりますので、開館いたします!
4月26日(火) : 休館
4月27日(水)~ 5月9日(月) : 開館
5月10日(火) : 休館
「お休みにどこへ行こうかな」とお考え中の皆さま、ぜひ記念館に足を運んでみてくださいませ。
ゴールデンウィークも含めて、記念館の開館日はホームページにある「伊丹十三記念館 開館カレンダー」でご確認いただけます。現在今年8月まで掲載していますので、チェックしてみてくださいね。
また、県外からお越しの方など、当ホームページ内の「ご利用案内→入場料・アクセス」で松山空港や松山市駅、道後からのアクセス方法をご案内していますので、そちらもご参考になさってください。
皆さまのお越しを、スタッフ一同心よりお待ちしております。
スタッフ:山岡
2016.02.29 猫好き
2月22日は、猫の鳴き声にちなんで「猫の日」だったそうですね。
当日は、「猫の日」がニュースでも大きく取り上げられていて驚きました。なんでも、近年家庭で飼われているペットの数は、犬が減っているのに対して猫は増加しているなど、猫ブームなのだとか。
実は、伊丹十三記念館の常設展示室には「猫好き」という展示コーナーがございます。
常設展示室は「十三」の名前にちなんで13のコーナーに分かれており、伊丹さんの仕事や趣味をご紹介しているのですが、その10番目のコーナーが「猫好き」。猫がお好きだった様子を、伊丹さんの描いた飼い猫の絵などでご覧いただけます。
「猫好き」という一つの展示コーナーができてしまうほどに、猫がお好きだった伊丹さん。
どうしてそんなにお好きだったのでしょうか。ご本人は、エッセイ『再び女たちよ!』の中で――
「どうして猫が好きなの?」
と、いわれても、それは困る。
私が猫を好きなのは、なにか理由があってその結果好きだというのではない。理由などあれこれ考えるより以前に、すでに好きだという事実が厳存しているのであって、いわば好きだから好きだ、とでもいうよりしようがなかろう。
(伊丹十三著『再び女たちよ!』―わが思い出の猫猫―より)
――とおっしゃっています。猫がお好きな方は、記念館の「猫好き」コーナーをのぞいてみたくなりませんか......?
常設展示室「十 猫好き」コーナー
この展示コーナーだけではなく、記念館のグッズショップには伊丹さんが描いた猫のイラストを用いたオリジナルグッズもあり、オンラインショップでも一部お買い求めいただけます。
オリジナルグッズの一部
猫好きの方は、ぜひどうぞ。
スタッフ:淺野
2016.02.22 再入場につきまして
美術館や博物館で展示を見ている最中に「ここは順路のうちのどのあたりなんだろう?」「このペースで見ていて時間内に見終れるかな?」と気になったり、「さっき見たのをもう一度見たくなっちゃった、戻っていいのかしら?」と心配になったりすること、ありませんか?
出口に「再入場できません」と表示のある施設だと、展示室を出るのにちょっと勇気が要りますね。「そうキッパリ言われると......後悔のないように、私はしっかり鑑賞しただろうか」と。
というのは私が極度の貧乏性だからかもしれませんが、自分が鑑賞者として初めて訪ねるところでは特に、「最初にザッと展示室の様子を把握できると安心だなぁ、ペース配分を決めてからひととおり見てまわり、最後にまた気になったものや気に入ったものをジックリ見る、っていう順に過ごせるといいなぁ」と思っています。
考えてみれば、よほど行き慣れている施設でない限り、何の不安も戸惑いもなく過ごせることってなかなかないかもしれません。
この記念館へお越しくださるお客様に対しても、そういうことを念頭に、丁寧なご案内を心がけたいと思います。
ということで、今回、私が声を大にして言いたいテーマは、
「(ご入館当日中は)何度でも再入場していただけます!!」ということです。
むしろ、
「何度もぐるぐるしていただけると嬉しいです!!」と思っています。
※なぜ「再入場」が「ぐるぐる」なのかと言いますと、
展示室の出口の扉は外側からは開かないので
展示室入口から再入場していただくことになるからです。
お手数おかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
そして、この際
「常設展示をまた見たくなるように企画展示を構成しています!!」ということも申しあげておきましょう。
回廊のベンチやカフェ・タンポポでひと休みののち展示室へまたお入りいただくのはもちろん、ご昼食などで館外へお出かけいただいての再入館も歓迎です。
外出後の再入館時はチケットのご提示をお忘れなく!
どちら様もお忙しいこのご時世、せっかくご来館いただきましたならば、お好きなペース、お好きな順にお楽しみいただけますのが何よりです。展示室2部屋の小さな記念館ではありますが、原稿や解説の文章・映像展示・音声展示など、ご鑑賞にお時間の要る展示品が数々ございます。
ご滞在のお時間が限られていても、あますところなくご覧になって、お気に入りのものがひとつでも......できればたくさん見つかりますように。
≪両の手に桃と桜や草の餅≫
伊丹万作の手作りかるたは「春の句」を展示中です。
学芸員:中野
2016.02.15 愛用品
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。寒いと思ったら暖かくなったり、暖かいと思ったら寒くなったり・・・気温差の大きな今日この頃ですが、体調等崩されておりませんでしょうか。年度末に向けて忙しくなる方も多いと思いますので、くれぐれもご自愛くださいね。
さて、皆さまは普段「愛用しているもの」がありますでしょうか。
ご存知の方も多いかと思いますが、ここ記念館には、伊丹さんが仕事や日常生活で愛用していた品々が展示されています。
こだわりやその人独自の感覚で選ばれ愛用されていた品々はそれを使う人を表しますが、伊丹さんならではの感性で選び使っていた愛用品はまさにその通りで、「さすが伊丹さん!」というような、伊丹さんの人となりを大いに感じられるものばかりです。「伊丹十三記念館ガイドブック」や「伊丹十三の本」などの書籍でも紹介されていますが、記念館では愛用品の一部を実際にご覧いただけるんですよ。
お馴染みの愛車・ベントレーをはじめ、常設展示室にあるヴァイオリンや調理に使う道具類や食器類。また、昨年12月より開催中の企画展「ビックリ人間 伊丹十三の吸収術」でもシステム手帳や万年筆、シャープペンシル、アップルのノートパソコン等々の伊丹さんお気に入りの品々が展示されています。
ご覧になったお客様の中には「自分が使っていたものと同じものを伊丹さんが使っていたと知り、親近感がわきました」という方や、「使いやすそうなので、自分も使ってみたい」という方も。また、伊丹さんが「有次」の包丁(上の写真にも写っています)を愛用していたことを知り、実際に購入して使っているという方もいらっしゃいました。今ではその方の立派な愛用品になっているそうですよ。
そんな伊丹さんの愛用品を、記念館にお越しの際はぜひお見逃しなく!
最後に。
記念館近くの椿神社では、昨日14日から明日16日までの3日間「椿まつり」が開催されています。「伊予路に春を呼ぶまつり」として多くの人に親しまれているお祭りで、この椿まつりが終われば暖かくなると言われています。お祭り前に少し暖かい日がありましたが、今日明日は寒くなりそうですので、行かれる方はしっかり着こんでお出かけくださいね。
スタッフ:山岡
2016.02.08 ●度目の伊丹十三記念館
記念館便りをご覧の皆さまこんにちは。
まだ2月ということで冬真っ盛りの松山ですが、先日記念館の前を流れる川の土手で菜の花を見つけました。
思えば2007年春、開館の準備をしている頃、初めてこの場所いっぱいに菜の花が咲いているのを見て、大変感動したことをよく覚えています。数えてみるとあれからなんと10回目の春がやってこようとしています。
さて、先日「記念館に歴史あり!」と思うことがありました。
ある時期から毎年来館している、というお客様方がご来館下さったのですが、その方々が「来館は7回目です!」とおっしゃっていたことです。
そのお客様方はなんと毎年同じ時期に同じ場所をご旅行されているそうです。幼馴染同士で現在はそれぞれ大阪と岡山にお住まいということですが、毎年1月末に松山へ旅行するということのみならず、宿、松山で訪れる場所も毎回同じコースを取っていらっしゃるというのだからビックリです。
ちょうど1年前にご来館下さった際、たくさんお話をさせて頂いていたためそのお客様方のことをよく覚えていたのですが、まさか毎年来て下さっているとは知らず!しかも7年連続ということで更に驚きました。ありがたい話です。
旅行の計画を立てるとき、まず「行ったことがない場所」を考える方も多いと思いますが、一度訪れて「ヨカッタ!」と思った場所へもう一度行ってみる、という旅の仕方もあるのですね。目から鱗が落ちました。
確かに、開館9周年を前にして「来館は2回目です」とか「もう何度も来ています」とおっしゃって下さるお客様も年々増えてきているように感じます。
ご来館のお客様の中には「一度伊丹さんの映画を観たことがあるけど、記念館に来て、もう一度観たくなった、帰ったら観ます」とおっしゃる方が多くいらっしゃるのですが、「伊丹十三記念館に行ったことがある」という方にもぜひもう一度ご来館いただきたいと思います。ご自身のみならず、記念館も日々進化!していますので、新たな発見をしていただけること間違いなしかと思います。
スタッフ:川又
2016.02.01 桃の滴
記念館のカフェ・タンポポは、企画展示室を出てすぐ右手にございます。
展示をご覧になった後に一息ついていただける入館者様専用のスペースで、伊丹さんがお好きだったお酒も召し上がっていただけます。
その中の一つに、日本酒『桃の滴』があります。酒どころとして知られる京都・伏見の銘酒です。
展示の余韻に浸りながらゆっくり召し上がっていただきたいと存じておりますので、アルコール類はすべてお一人様一杯までとさせていただいております。そのため、『桃の滴』も可愛らしい180mlボトルでご用意しております。
そのボトルのラベルにご注目ください。中央には、大きな桃が描かれているのですが、その左横に大黒さまがいて、なにやら文字を掲げています。その文字は――
「わが衣に ふしみの桃の 雫せよ」
――松尾芭蕉の俳句です。
芭蕉が、伏見にある西岸寺に任口上人を訪ねた際に詠んだものだそうで、当時、桃が伏見の名物であったことをふまえて、「上人の徳にあやかりたい」という心を詠んでいるのだとか。この句をもとに、『桃の滴』と名付けられたお酒なのですね。
お客様からは、「ほのかな香りが良い」といったご感想を伺います。伊丹さんは、このお酒をどんな風に感じていらっしゃったのでしょうか。そんなことを想像しながら味わうのも、楽しいかもしれません。
「運転しないし、お酒も大丈夫」というお客様は、ぜひどうぞ。カフェからは中庭もご覧いただけますので、きっとおいしく召し上がっていただけることと存じます。
スタッフ:淺野
2016.01.25 「お得」です!!
開始から1ヶ月が経ちました『ビックリ人間 伊丹十三の吸収術』展、ご好評いただいております。
お客様からのご感想では、「刺激を受けました」というお声を多く頂戴しています。
「ヨーシがんばるぞ」という気持ちになれたとか、「伊丹さんが観た映画、今度観てみよう」と楽しみができたとか、あるいは「伊丹十三の読書の仕方が参考になった」という実用的なものもあるかもしれませんし、具体的なところはお客様によっていろいろだと思いますが、刺激を受けるということは、広く解釈いたしますと、この先への活力が湧く、ということになるでしょうか......そうだとしたら、なんとも光栄なことです。
伊丹十三の本棚にあった洋書もご紹介しています
喜んでいただけている手応えがあると、取材対応もウキウキとした気分で臨めるようになるもので、先日お受けしたご取材では、お客様のご反応も含めてあれこれと楽しくお話しするうちに、あっという間に時間が過ぎていきました。「では、最後に、この企画展への中野さんの意気込みを」とシメの言葉を求められて、ひととおりのことをお答えしてもまだ言い足りません。
それで、「文章であれ映像であれ、伊丹作品には『これ誰かに話したい』『自分もやってみたい』と受け手が思うような情報が必ず込められていたので、この展示でも、『いいこと知ったぞ、得したな』と感じていただけると嬉しいですね」と付け加えたところ、後日、バッチリ記事に......
「展覧会の記事で"得してほしい"なんて、そんな学芸員のコメント見たことないよ! もっとカッコいいこと言えばよかった!」としばらく頭を抱えたのですが、私の偽らざる思いが記者さんの心に響いたということでしょうし、サービス精神の塊・伊丹十三にならって、この際、自信を持ってどんどん追求・推進したいと思います。
暖冬との当初の長期予測はどこへやら、大寒波に震える冬になりましたが、寒さに負けずにご来館くださるお客様方のおかげで、あたたかい気持ちで過ごしております。
スタッフ一同でお待ちしておりますので、お気をつけてお越しくださいね。
学芸員:中野
2016.01.18 伊丹映画
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
冬らしく寒い日が続いていますが、お風邪などひかれていませんでしょうか。
さて、新しい年が明けてはや半月程が経ちますが、ここ記念館の年明けには、年末年始の休みに映画鑑賞をして過ごされ、その際ご覧になった伊丹映画がきっかけで「ちょっと記念館に行ってみよう」と足を運ばれるお客様がよくいらっしゃいます。
つい先日も、この年末年始に、伊丹映画をなんと10作品全部ご覧になったというご夫婦がいらっしゃいました。たまたま観た映画「タンポポ」が面白く、休みを利用して一気に鑑賞されたのだとか。お客様曰く「伊丹監督の人物像を知ると、また違った目で映画を観られて楽しいかなぁと思って」ご来館くださったそうです。
【上記のお客様もお持ちだった伊丹十三 FILM COLLECTION Blu-ray BOX Ⅰ/Ⅱ】
確かに、映画を制作した監督自身のこと、そのこだわりや考えを知ることは、映画自体の面白さとはまた違うワクワク感がありますよね。
それに伊丹さんは映画監督以外にも色々な「顔」を持っていますので、それがどう映画に反映されているのか、改めて映画を観返しても面白いかもしれません。
伊丹映画をご覧になった方、もちろんこれから観ようと思っている方も、ぜひ記念館にお越しいただき、「伊丹十三」記念館ならではの展示を通して様々な伊丹さんの「顔」に触れてみてください。伊丹映画をより深く楽しんでいただけると思います!
他にも、出演俳優、関係者、スタッフなど、伊丹映画に関わった方々総勢43名が伊丹十三や伊丹映画について語っている「伊丹十三の映画」(新潮社)でも、伊丹映画を違った角度から感じることができておすすめですよ。
ご興味のある方はぜひどうぞ!
【伊丹十三の映画(新潮社)。オンラインショップでも取り扱っています】
スタッフ:山岡
2016.01.11 ビックリと言えば!
記念館便りをご覧の皆さま、明けましておめでとうございます。今年は2016年ですね。
ついこの間2015年を迎えたような気がしますが、大人の1年はあっという間ですね。時が経つのは早いと、お正月が来る度にビックリしています。
さて、ビックリと言えば!先月から新しい企画展「ビックリ人間 伊丹十三の吸収術」がスタートしました。ご来館のお客様から大変ご好評を頂いております。様々な異文化に驚き、その驚きをどんなふうに自分のものにしていったか。伊丹さんみたいな人がどうやって出来上がったのか。興味はありませんか?新しい企画展をご覧になれば、きっと何か感じ取って頂けることと思います。
話は変わりますがみなさん、去年は映画を何本観ましたか?
伊丹さんは1983年、映画監督としてデビューする前年ですが、なんと1年間でのべ200本以上の映画を観たそうです。本人も後に「毎日映画館にいた」と言っていたそうですが、他の仕事もあっただろうに、すごい数ですね!
新しい企画展では1983年に伊丹さんが観た映画のメモが展示されています。そのメモを見ていると「あ、この映画観たことある!懐かしい!」とか「これ前の月も観てるのにまた観てる!」とか、「意外!こんな映画も観ていたの?!」とか、いろいろ発見があって面白いですよ。お見逃しなく!
最後になりましたが、今年も伊丹十三記念館をどうぞ宜しくお願い致します。
スタッフ:川又
2016.01.04 2016年スタート
謹んで新春のお慶びを申し上げます。
皆さま、新しい年の始まりをいかがお過ごしでしょうか。
2016年の伊丹十三記念館は、5月15日に開館9周年を迎えます。
本年も、多くの皆さまに良いお知らせをお届けできますよう、スタッフ一同励んでまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、2015年末の記念館便りでもお知らせいたしました通り、新企画展『ビックリ人間 伊丹十三の吸収術』がスタートいたしました。
今回の企画展では、「異文化にぶつかってビックリするのが好き」という伊丹さんが、「何に驚き、どう吸収したのか」を紹介しています。
伊丹さんが驚いたもの。それは書物や映画、育児などの日常生活......と、実にさまざまなのですが、「驚いた」だけではなくて、「どのように感心し、自分のものとして吸収したのか」までを、具体的な資料でご覧いただけるようになっています。
伊丹さんの蔵書や直筆原稿・メモなど、貴重な資料がたくさん残っているからこそ実現できた企画ですね。
伊丹さんの直筆メモの一部。
「手書きの文字」だからこそ伝わってくることもありますよね。
個人的には、伊丹さんが「驚き、感心し、吸収した様子」を辿ることで、丁寧に物事を見ることの楽しさに気づくことができました。展示を御覧になったお客様からも、「刺激を受けました」というご感想をいただいております。
貴重な音声資料を聴いていただけるコーナーもあります。
ぜひ多くのお客様にご覧いただきたく存じております。
本年も皆さまのご来館を、スタッフ一同楽しみにお待ちしております。
スタッフ:淺野
2016.01.02 館長・宮本信子から新年のご挨拶
桂の木が大きくなって年月を感じます。
本当に綺麗な中庭です!
神経が、ゆっくり溶けていくのが分ります。
是非 遊びにいらして下さいませ!
記念館、今年もよろしくお願い致します。
スタッフ一同、御来館お待ち申し上げます。
館長・宮本信子
追伸:2016年1月3日(日) 午後21時~23時30分
フジテレビ放送 「坊っちゃん」
私は清の役で出演します。
記念館便り BACK NUMBER
- ●2024年10月
- ●2024年09月
- ●2024年08月
- ●2024年07月
- ●2024年06月
- ●2024年05月
- ●2024年04月
- ●2024年03月
- ●2024年02月
- ●2024年01月
- ●2023年の記事一覧
- ●2022年の記事一覧
- ●2021年の記事一覧
- ●2020年の記事一覧
- ●2019年の記事一覧
- ●2018年の記事一覧
- ●2017年の記事一覧
- ●2016年の記事一覧
- ●2015年の記事一覧
- ●2014年の記事一覧
- ●2013年の記事一覧
- ●2012年の記事一覧
- ●2011年の記事一覧
- ●2010年の記事一覧
- ●2009年の記事一覧
- ●2008年の記事一覧
- ●2007年の記事一覧