こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2016.08.15 梅干
全国的に厳しい暑さが続いているようですね。夏の疲れが出る頃ではないでしょうか。
わが家では、夏バテ対策として、この時期に「梅ごはん」を作ることがあります。こまかくちぎった梅干をお米と一緒に炊くだけの簡単なものなのですが、さっぱりしていて、食欲が落ちた時にちょうどよいのです。
作るときに、ひとつだけこだわっていることがあります。それは、"自家製の梅干を使用すること" です。
伊丹さんのエッセイに、梅干についてこんな記述があります。
(前略)祖母は梅干作りの名人であった。梅酒を作るのもきわめてうまかった。その作り方を聞いておかなかった。伽羅蕗にしたって、私の祖母の作ったものよりおいしい伽羅蕗を絶えて食べないのだ。その作り方を聞いておくのを忘れてしまった。とりかえしがつかないとはこのことである。(中略)
梅干というのは、これはたいへんに手間がかかる。大体のことをいえば、一晩水につけた梅に塩をまぶして樽に入れおし蓋をする。水が上ったら重石をとり、塩でもんで紫蘇の葉を梅と交互に入れる。土用になったら紫蘇は絞って干し、梅は笊に上げて三日三晩干す。四日目からは昼だけ天日に干し、夜は樽につける。これを一週間つづけたあと密封し秋から食べはじめる。入梅時から秋にかけてこうして祖母が作った梅干には、なんとなく人生の重みとでもいうべきものがあった。(後略)
――「しまった!」『女たちよ!』1968年
わが家では、毎年梅雨の時期になると父がひとりで梅干作りをはじめます。ひとつひとつヘタを取り、笊に均等に並べ、天候に一喜一憂しながら天日に干しては室内に取り込み......と、エッセイに記されているのと同じように、かなり手間がかかっています(家族や親類が食べるだけなのですが)。
天日干し準備中の様子
傍で見ていますと「市販の梅干でも良いのでは」と思ったりもしますが、手間ひまかけて出来あがった梅干で作る夏の梅ごはんは、やはり、ひと味違っておいしいものです。
いまのところわが家では、「梅干は父がひとりで作るもの」ですが、先ほどのエッセイには、こんなことも書かれています。
その人一代で絶えてしまう名人芸は、日頃から伝承しておこう。
――そうですね。これからは「名人芸伝承」のつもりで、作り方のコツを教わってみようかな、と思います。
皆さまにも、それぞれの暑さ対策がおありのことと存じます。涼しくなる頃をたのしみに、どうぞご自愛くださいませ。
・・・・・・・・・・≪お知らせ≫・・・・・・・・・・
明日・8月16日は火曜日ですが、お盆期間中ですので開館いたします。皆さまのご来館をお待ちしております!
スタッフ:淺野
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