記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2025.12.22 展示室トーク次回開催が決定!


先月  記念館便り  にてご報告させていただいた『展示室トーク』ですが、初の試みにもかかわらず、ご参加の皆さま方から大変ご好評いただきましたので、早速、次回の『展示室トーク』の開催が決定いたしました!


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写真:11月22日開催の展示室トークの様子


※※※※※ 「展示室トーク」開催要領 ※※※※※

◆日時:2026年2月14日(土) 15時~(45分程度)
◆場所:常設展示室の館長挨拶・特報映像コーナー
◆参加費:無料  ※ご入館料が必要です。

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当館の展示の楽しみ方を学芸員がお伝えする催しとなっております。独自の目線で学芸員が展示についてご案内いたしますので、ぜひご参加ください。

さて、今回が今年最後の記念館便りとなります。今年も伊丹十三記念館をご愛顧いただき、誠にありがとうございました。2026年も伊丹十三記念館をどうぞよろしくお願いいたします。

※※※※※ 年末年始のお知らせ ※※※※※

12月28日(日)~1月1日(木)は休館いたします。
1月2日(金)・3日(土)は開館時間を短縮し、
10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきます。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


スタッフ:川又

2025.12.15 ソイジンジャー

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
2025年も残り半月あまりとなってしまいました。月日が経つのは本当に早いですね。年末年始に向けて忙しい毎日を過ごしている方も多いと思いますので、体調にはくれぐれもお気をつけください。

さて先日、2年ぶりに来館しましたというお客様がカフェをご利用くださいました。

メニュー表をお持ちしてご注文をうかがうと「以前来た時に飲んだ白いホットドリンクが美味しかったから、また飲みたいです!」とのこと。
はるばる遠方から(北海道の方でした)再来館していただいただけでなく、メニューを覚えていてくれて、リピート注文してくださるとは......!大変ありがたいですし、メニューを気に入っていただけたのもとてもうれしいです。
お客様がおっしゃる白い飲み物というのは「ソイジンジャー」という、豆乳をベースにしたホットドリンクです。時期的にもおすすめのメニューですので、改めてご紹介させていただきますね。

20251211-1.jpgソイジンジャー(税込600円)

 

ゆっくりと温めた豆乳に、記念館オリジナルのしょうがシロップを加えたのが「ソイジンジャー」です。豆乳のやわらかい白に、香りづけのために少しふりかけるシナモンの茶色がアクセントにもなっています。

記念館のしょうがシロップは、スライスした生姜を甘く煮込んで作りますが、ソイジンジャーをオーダーしていただくと、そのスライスにグラニュー糖をまぶしたものを添えてお出しします。しょうがの辛みが少し抑えられていますので、合わせて召し上がってみてくださいね。

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しょうがスライスを添えます

 

上述のお客様は前回も冬の寒い日にお越しになり、「温まる飲み物を」ということでソイジンジャーをオーダーしてくださいました。今回も、前ほどではないものの気温が下がりはじめた頃に来られましたので、「美味しくて温まる~」とお飲みくださいました。
ホットの豆乳だけでも体が温まりますが、そこにしょうが効果も加わって、体の内からほかほかします。シロップが入っているぶん少し甘口の飲み物になりますので、甘いものがお好きな方もぜひご賞味ください。

 

本日はソイジンジャーをご紹介しましたが、同じしょうがシロップを使ったメニューとして、しょうが湯と十三饅頭とセットになった「しょうが湯&十三饅頭」、紅茶にしょうがシロップを加えた「しょうが紅茶」もございます。これからの寒い季節、しょうがメニューは特におすすめです。



20251215-4.jpgしょうが湯&十三饅頭(税込500円)

 

20251215-5.JPGしょうが紅茶(税込600円)

ご来館の際は、ぜひカフェ・タンポポで温まってくださいね。

20251215-3.JPGカフェ・タンポポ

※※※※※ 年末年始のお知らせ ※※※※※

12月28日(日)~1月1日(木)は休館いたします。


1月2日(金)・3日(土)は開館時間を短縮し、
10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきます。

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スタッフ:山岡

2025.12.07 美食

12月に入り、最低気温が一桁になって冷え込みが厳しくなってまいりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

今年は残暑が厳しく、10月の頭ごろまでは「暑い暑い」と言って半袖を着ていたはずなのですが、いつの間にやら冬本番。夏の暑さもすっかり思い出せなくなりました。私はマフラーや手袋なども引っ張り出し、重ね着で全身モコモコになりながら通勤をしております。

 

最近の記念館は、中庭の桂をはじめとした木々の落葉がすすみ、すっかり冬の装いです。葉がある時はよく見えない枝も、葉が落ちたことで大きく広げた枝の先まで見ることが出来ます。ぜひご来館の際にはご注目ください。

 


s-IMG_8055.jpg中庭の桂

だいぶ葉が落ちました

 

この11月後半、たまたま外食の日が多かったのですが、日を追うごとに何やら妙な心地になっていることに気が付きました。いざ、食べに行こうとお店を探そうとするのですが、何を食べたいかさっぱり分からないのです。地図アプリで近くの飲食店を検索してはみますが、ピンとくるものがない。昨日は回転寿司、その前はうどん、その前はファストフードという具合に、毎日いろいろなものを食べていると、"食べたいもの"が分からなくなってしまったのです。

さて、『ぼくの伯父さん』に収録されております、「美食について」というエッセイに、次のように書かれております。

 

「一日ニ玄米四合ト、味噌ト少シノ野菜ヲタベ」という、宮沢賢治の詩の一節が、近頃ひどく心にしみる。ひょっとすると、これはただ質素を説いているだけではない、食生活の基本に対する深い洞察を含んだ教えなのではないか。次第にそのような気になり始めた。

 そもそも、朝起きるとパンとバターとミルクと卵で朝食をとり、昼にはラーメン、そうして夜にはカレーライスというような生活は異常なのではないか。これでは朝から晩まで三食全部が美食である。しかもこれが毎日連続するから、ついにはそれが美食であることすら忘れ果てて、今日は何を食べようかといってもはかばかしい知恵も浮かばない。「あなた今夜何にする?」と女房に聞かれて腹を立てぬ男がいない、というのがその浅ましい帰結である。

 つまり、何も食べたくないのである。食べたくないのを惰性で無理に食べる。無理をして、肉を魚を卵を白米を砂糖を食べる。無理をして食べるから少しもうまくない。何という無駄であろうか。

(中略)

食生活の日常をもう一度「玄米ト味噌ト少シノ野菜」という次元に引き戻してごらん。(私はとっくの昔に戻してしまった。ただし、私の場合玄米四合というのは無理である。一日せいぜい一合くらいだろう。)これは実に玄妙にして清浄な世界である。人間の各が一つ上がり、己がにわかに精神的な存在に感じられるばかりではない、月に一度のトーストや、年に一度のカレーライスが、いかに燦然として光り輝く奢りの頂点となることか。日常は粗食に徹すべし。粗食に徹してひたすら血液を浄化し、瘦身を心がけよ。

(『ぼくの伯父さん』より「美食について」)

 

まさに最近の私ではありませんか!

なるほど、確かに美食が続いてしまうと、美味しいもののはずなのに、その美味しさに慣れてしまい、食べたいものが分からなくなってしまいます。やはり美食が連続するような、外食の多い生活はあらためなければならないと反省をいたしました。特にファストフードなどは味が濃く、脂質や糖質が多いものばかりなので、ダイエットのためにもどうにか日常的な自炊を心がけていきたいと思います。


s-IMG_8057.jpg『ぼくの伯父さん』

オンラインショップでも販売中です

 

私はもともと献立を決めるのが苦手で、スーパーで安売りしている商品を眺めながらあれこれ考えていると、何を食べたいのか分からなくなってしまうことが多くあります。美食が続くのとはまた少し違うのですが、献立を考えていると自分が心から食べたい!と思うものが分からなくなってしまうのです。

そんなこんなで、最近はAIチャットを使用したりしています。AIチャットはかなり便利で、たとえば白菜と豚バラ肉が安く買えたとして、「白菜と豚肉を使用したおかずのレシピを考えてほしい。さっぱりしていて、丼もの、ミルフィーユ鍋はなし。体があたたまるもの、他の野菜も追加して良いので栄養価の高いものが良い」などと伝えると、ものの10秒ほどでレシピ案を3つ教えてくれます。いやぁ、何とも便利です。AIに頼りすぎるもの考えものではございますが、食べたいものが思いつかない時や、旅行や帰省前で冷蔵庫の中身をなるべく使い切りたい時などは特に重宝しています。

たまの休みなどには外食もしつつ、食生活の日常を整えて、これからの年末に備えたいと思います。

 

皆さまも年末年始にかけて何かと美食を食べる機会が増えることと存じますが、どうぞお体にお気を付けてお過ごしください。

 

学芸員:橘

2025.12.01 身体のエッセイ

最近、久しぶりに歯医者に行きました。
無意識のうちに歯を食いしばってしまう癖がついているのを自覚して数ヶ月、自分で気を付けてみてもなかなか治らないのです。意識すればするほど悪化していく感じがしたので、「マウスピース作ってもらおう。ついでに、悪いところがあったら手入れしてもらおう」と。

ところが、レントゲン撮影と検査の結果、告げられたのは――

1.まずは、弱くなっている歯グキの治療を4週間
 ↓
2.次に、右上奥の親知らずの抜歯
 ↓
3.その次に、親知らずの隣の歯の虫歯治療
 ↓
4.歯並びが落ち着くのを待ち、マウスピースの型を取る

という長大な計画。


「悪いところがあったらついでに」どころではなかった! マウスピースまでの道のりが長い!

歯医者さんによると、「隣に虫歯がある親知らずを残したままマウスピースを作るべきではない」「抜歯は歯グキに負担をかけるから、今より歯グキの状態を上げないといけない」のだそうです。納得せざるを得ませんね。

だけど......食いしばりによる歯と歯グキの違和感、顎の筋肉の疲労、それと連動しているに違いない首・肩の筋肉の疲労......年内に全部解消したかった......

そんなわけで、わたくしは現在も24時間体制で上下の歯がくっつかないよう細心の注意を払い、それでも気付けば奥歯を噛みしめていたりして、悩ましい日々を過ごしております。身体の感覚が人間に及ぼす影響、侮るまじ。


――と、いうような、わたくしの下手な報告は忘れていただくといたしまして、「身体の感覚に人間が翻弄される様」を見事に作品化した伊丹エッセイがありますので、この機会にご紹介させてください。

「今夜十二時がギリギリ」という〆切の日、一文字も書けないでいる流行作家・青野先生が主人公の、短編小説風エッセイ「背骨の問題」です。

20251201_1.jpg「背骨の問題」は、2025年11月現在、新潮文庫の
日本世間噺大系』でお読みいただけます

 

 書けなくなった原因は、整体術であった。詳しい話は省略するが、整体術というのは、脊椎を正しい姿に矯正して健康を保たんとする医術であるらしい。先生は、一週間前、人に勧められるまま、蒲田のゴミゴミとした町中にある整体術の治療院を訪れ、軀中の節節を、捩じ曲げられ、引き伸ばされ、捏ね廻された揚句の果て、あらゆる骨という骨をボキボキやられて、目が醒めたようになって家に帰ったのである。これが悪かった。

(中略)整体術でボキボキやられたあと
「じゃア、正坐なすってください」
といわれて治療台の上に起き上がった時、先生は自分の脊椎の一箇一箇が、まさに垂直に、真上へ真上へと積み上げられているのを発見したのである。
「アレ、背中が真直ぐに伸びてますな」
 先生は驚きの声をあげた。
「左様、あとこれを持ち堪えていただくのはあなたの仕事です」
 これで先生の筆が止まってしまった。

 物を書くためには背を曲げて原稿用紙の上に屈み込まねばばならぬ。僅か四五分でも背を丸めれば、背骨はまたずるずると元の猫背に戻ってしまうに違いない。折角伸びた背骨を、なんで再び曲げることができよう。
 先生は、机の前に背筋を伸ばして端坐したまま、一箇の文字だにも書く能わずして一週間を過ごしてきたのである。

「背骨の問題」『日本世間噺大系』(文藝春秋・1976年)
※以下の引用も同じ

そうして"先生"は、炬燵の板を斜めに膝に抱いてその上で書いてみたり、腹這いで書いてみたり、書家を真似ればいい姿勢で書けると思いつきお習字を始めてウッカリ夢中になってみたり、背・肩・首を強化せねばと筋トレを始めてみたり――何とも健気な脱線と迷走を重ねていきます。
"先生"の背骨への強烈な意識とそれがためにズレていく行動は滑稽極まりないのですが、「先生の身体が感じていること」の描写が的確なので、我がことのように感情移入させられます。

その後、運動熱が高まった"先生"はウォーキングに出かけたくなり、骨盤が開いた正しい姿勢での歩き方を研究し始めるにいたります。

 直ちに一糸纏わぬ姿になって風呂場の鏡の前に立ち、足のあちこちに力を入れては、骨盤の開き工合の観察にとりかかった。
三十分ばかりあれこれやってみるうちやがて結論が出た。即ち、内股に力を入れ、膝と膝をこすりあわせるようにして、なおかつ、やや内股で歩く時、最も骨盤が開く、というのである。この方法で歩いてみると驚くほど膝のバネが柔かく使えるということも先生は発見した。

 (中略)先生は、骨盤を開く歩き方で、脇目も振らず、ひたすらに歩いた。
 黄昏の春の公園を、股をこすりあわせなよなよと内股で歩く先生の和服姿は、一種異彩を放つものであったが、先生の心は誇りやかであった。

かくして〆切まであと6時間――"先生"の原稿は無事に仕上がるのでしょうか!?
そんなスリルも味わえるエッセイ「背骨の問題」。身体の違和感にお悩みの方がお読みになったら、その違和感をいっとき忘れられるかもしれません。

本日は『日本世間噺大系』を処方させていただきました。

*** 特別展に関するお知らせ ***

本日12月1日(月)、特別展・伊丹十三の「食べたり呑んだり作ったり。」のスペシャル映像コーナーに新作スライドショーが登場!

三谷龍二さん、瀧波ユカリさん、三浦哲哉さん、稲田俊輔さん、山口祐加さん、吉田全作さん、平松洋子さんに続く8人目の出演者、"大トリ"を務めてくださるのは、伊丹十三記念館の設計を手掛けた建築家にして熱烈なる"イタミスト"、建築家・中村好文さん。
中村さんの学生時代からの愛読書、伊丹十三の『女たちよ!』に登場したサンドウィッチをご紹介くださいます。

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お料理そのものはもちろんのこと、年季の入ったイタミストぶり、建築家ならではの流儀、御自らの設計による中村さんの別荘の雰囲気、どれを取ってもお楽しみいただけます。ぜひご来館のうえご鑑賞ください。

≪伊丹レシピ、私流。≫

二本立て展示
2025年12月1日(月)-2026年3月30日(月)

エッセイスト 平松洋子のクレソンのサラダ
建築家 中村好文のキューカンバー・サンドウィッチとバゲット・サンドウィッチ

学芸員 : 中野

2025.11.24 『展示室トーク』のご報告


以前より伊丹十三記念館HPのニュース欄にてお知らせしておりました通り、11月22日(土)、伊丹十三記念館初の試みとなるイベントを開催いたしました。

当館学芸員による『展示室トーク』です。


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当館の展示の楽しみ方を学芸員がお伝えする催しとなっております。

当日は県外にお住まいの当館メンバーズ会員様もお越しくださいました。


常設展示室にて、映像も交えながら中野学芸員が独自の目線で解説をおこないました。


初の試みではありましたが、ご参加のお客様から「良かったよ!」とお声がけをいただき、ご好評いただきましたので、この催しはまた今後も折を見て開催したいと思っております。

今後も日時決定次第、今回同様にHPのニュース欄に告知させていただきますので、みなさま時々伊丹十三記念館HPをチェックしていただき、今後の「展示室トーク」にぜひご参加くださいませ。お待ちしています。

スタッフ:川又

2025.11.17 『タンポポ』鑑賞と「展示室トーク」のご案内

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
いつの間にかすっかり秋めいてまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

さて、皆さまよくご存じの伊丹十三監督作品『タンポポ』。
1985年の11月に封切られましたので、今年2025年は『タンポポ』誕生からちょうど40年になります。

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『タンポポ』(1985年)

国内外問わず根強い人気を誇り、伊丹十三監督作品で特に好きな映画として『タンポポ』を挙げる方はたくさんいらっしゃいます。
先月来られた20代の男性も、つい最近観た『タンポポ』が「ものすごく面白かった!」そうです。『タンポポ』をきっかけにラーメン好きにもなり、映画の中で出てくる「正しいラーメンの食べ方」も試してみたのだとか。
日本のラーメンブームに拍車をかけた作品といわれていますが、影響力は今なお絶大なようですね。

ちなみに、「食べ物の映画を作りたかった」という伊丹さんが、なぜラーメンを題材に選んだのかについてはこんなふうに話しています。

「映画を作る上で一番大切なことは、観客を感情的に巻きこむことです。食べ物の映画を作るにしても、食通が世にも珍しい食べ物を漁るような話では人々の共感を得ることは難かしいでしょう。私がラーメンを題材に選んだのはラーメンなら誰でも参加できるからです。ラーメンの話なら誰でも自分のこととして一と膝乗り出すことができるからです。そして、一度観客が感情的に映画に参加してくれれば、私は映画の流れは観客に預け、自分は裏へ廻って自分の本当にやりたいこと、つまり映画らしい映画を作る、という遊びを遊ぶことができるのです」

※『タンポポ』のプログラムから引用


2025年も残り1か月半ほどになりましたが、「40周年を機に『タンポポ』を観てみよう!」という方にこの後の放送・上映についてご案内しますと――

まずは11月23日(日・祝)20時より、日本映画専門チャンネルで「これで見納め 24時間まるごと伊丹十三の映画4K」が放送されます。

伊丹十三監督作品全10作品が一挙放送され、『タンポポ』も11月23日(日・祝)22時20分から放送です。ご興味のある方はぜひ詳細をチェックしてみてください。

詳細はこちら

また、記念館での「毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」では、次回12月13日(土)に『タンポポ』を上映予定です。

常設展示室に入ってすぐの42インチのモニターで、ベンチに座って気軽にご覧いただくスタイルです。ご自宅で観るのとはまた違う雰囲気で映画をお楽しみいただけますよ。

当日は記念館オリジナルのミニ解説をお渡しします。また、企画展示室には上記の伊丹さんのインタビューが載っている『タンポポ』のプログラムもございますので、映画をご覧になる前後に、合わせてご覧くださいね。

20251117.jpg『タンポポ』のプログラム(企画展示室でご覧いただけます)

そしてもうひとつ、今週末に開催予定のミニイベントについてご案内します!

当館の学芸員が " 伊丹十三記念館の展示の楽しみ方 " をお話しする「展示室トーク」を、下記の要領で行います。

初めて記念館にお越しの方はもちろん、以前ご来館くださったという方も大歓迎です!前回とは違った見方で展示をお楽しみいただけると思います。
「ちょっと聞いてみようかな」という方、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

※※※※※ 「展示室トーク」開催要領 ※※※※※

◆日時:2025年11月22日(土)14時~(45分程度)
   30分程度のトークのあと、ご質問を承ります。


◆場所:常設展示室の館長挨拶・特報映像コーナー


◆参加費:無料  ※ご入館料が必要です。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

0093-1117.jpg常設展示室

スタッフ:山岡

2025.11.10 手拭い

11月も半ばに入ってまいりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

記念館では中庭の桂をはじめとした木々の葉が色づき、ぽつぽつと落ち始めました。今年の夏は長く、9月の終わりごろまで暑かったので、秋はほとんど駆け足に過ぎて冬に向かっています。最近、ご近所の金木犀が一斉に咲いて、甘く華やかな香りが漂うなかで通勤しております。年々秋が短くなっている気がするのですが、過ごしやすいこの時期を少しでも長く楽しみたいと思う今日この頃です。

 

s-IMG_7958.jpg中庭の桂の葉

先の方が色づいています

 

愛媛に移り住んでもうすぐ4年になるのですが、こちらに来て大きく変わった習慣のひとつに、「定期的に温泉に行く」があります。地元にも有名な温泉地はありますが、車で1時間以上移動しなければいけない場所にあり、気軽に温泉に通うことができませんでした。しかし、愛媛は街中にいくつも温泉施設があり、仕事帰りや休日のお出かけのついでに本当にふらっと立ち寄ることができます。昔から温泉が好きだったので、気軽に立ち寄れる温泉がたくさんあることが嬉しく、こちらに移り住んでからはほぼ週に1度のペースで温泉に通うようになりました。

 

はじめは着替えを持参する程度だったのですが、移り住んで半年経つ頃にはお気に入りのシャンプー・リンス、タオル、ドライヤー、スキンケア用品一式も持っていくようになりました。

そんな日々使用している温泉用グッズの中で大活躍しておりますのが、こちらの記念館オリジナルの手拭いです。

 

s-IMG_7959.jpg記念館オリジナルの手拭い

私は空色を愛用しております

 

 

手拭いなので、薄くて軽くて持ち運ぶときにかさばらない。泡立ちが良く、すすいだときの泡切れも良くて便利。湯船につかるときには長い髪をまとめるのに頭に巻いておけますし、体をさっと拭いてから浴室を出ることができる。などなど、大変使い勝手が良いのですっかり温泉のお供です。

 

記念館オリジナルの手拭いは宮本信子館長プロデュースの商品でございます。伊丹さんの描いたカチンコの絵が並んでおりまして、端には「ITAMI JUZO MUSEUM」の文字がございます。さらりとした肌触りで使い心地がよく、黒色・空色・白色ピンク柄の3種展開されておりまして、お土産として大変好評です。

s-IMG_7962.jpg染めは捺染ですので、柄も文字も綺麗です

 

私は温泉に入るときに使用しておりますが、目隠しとして小窓などのカーテン代わりにさげる、日よけや寒さ対策として首に巻く、ペットボトルホルダーの代わりに使う、など様々な用途で使用することができます。以前手拭いをお買い求めくださった方は、「気に入った柄の手拭いは額縁に入れて部屋に飾っています」とお話しくださいました。

様々な使用用途のある手拭い、オンラインショップでもお取り扱いがございますので、よろしければぜひお買い求めください。

 

さて、今週の木曜日は13日となりますので、記念館ではおなじみの「毎月十三日は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」が13時から開催されます。2025年度6本目は『お葬式』。ご入館料だけで映画を全編ご覧いただけますので、13日にはぜひ記念館へお越しください。

学芸員:橘

2025.11.03 収蔵庫ツアーの思い出

今日、11月3日は文化の日。
文化イベントや、博物館・美術館の無料開館にお出かけになる方も多いのではないでしょうか。

伊丹十三記念館はと申しますと、本日までの3日間、「メンバーズカード会員様限定の収蔵庫ツアー」を開催しています。※メンバーズカードの会員様に事前にお申し込みいただいての開催です。ご了承ください。

「収蔵庫ツアー」とは何か。

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記念館の収蔵庫の2階には「展示風収蔵」になっている5つのコーナーがございまして、直筆の原稿・原画、衣類、食器などの愛用品や書籍が収められています。"伊丹邸の一室の再現"もあります。
この5つのコーナーの収蔵品をご覧いただきながら、さまざまなものが宿した「いかにも伊丹さんらしい」あるいは「意外な」エピソードを学芸員が解説する催しです。

 "周年記念イベント"としての開催が毎年春にあり、事前応募制で定員を超えた場合は抽選となります。
そのほか、メンバーズカード会員様には、抽選なしで必ずご見学いただける機会を年2回(2025年11月現在)設けております。

さて、この収蔵庫ツアー、「ご参加のお客様を学芸員がご案内する」というかたちを取っておりますが、ご案内する側である私たちのほうが教えていただくこともたくさんあって、さまざまに勉強を積ませていただいております。

特定の分野にお詳しい方から収蔵品に関する知識を授けていただくこともありますし、素朴なご感想に「そういう見方もありますね!」と新たな視点をいただくこともあります。

あれは何年前だったでしょうか――

収蔵庫をご見学中に「今の10代の子たちに伊丹さんの存在を知ってほしいですね、きっと楽になるんじゃないかな」とおっしゃった方がありました。

なぜそうお感じになったのかお尋ねしたところ、「今の子たちは、かなり早くから将来の道を決めて、効率よく駒を進めていかなくてはいけない。そういう中で育てられているので、とても息苦しいと思うんです。だから、伊丹さんの生き方にふれて『いろいろやっていいんだ』と分かったら、気持ちが楽になるんじゃないかと思ったんです」とのこと。

収蔵庫ツアーは「伊丹十三をより身近に感じていただける催し」を謳い文句にしているのですが、このお客様は「自分にとっての身近」を超えた「他の誰かにとっての身近」をも考えていらしたわけですね。
私がご提供に努めてきた「身近」のあり方は浅かった、と思い知った出来事でした。

と、このように非常に真面目なお話をすることもありつつ、基本的に「ものを見ながらとにかく楽しくおしゃべりする」気軽なイベントです。

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どなた様でもご応募いただける開館19周年記念のツアーは、次回は2026年4月の開催を予定しています。
2月に募集告知をお出ししますので、ご興味のある方、ぜひまたホームページを覗きにいらしてくださいませ。

ご参考:「開館18周年記念収蔵庫ツアー」レポート

学芸員 : 中野

2025.10.27 第17回 伊丹十三賞贈呈式の様子

10月7日(火)に東京都港区六本木の国際文化会館にて開催された、第17回伊丹十三賞贈呈式ですが、数多くのメディアで取り上げていただきましたので、目にされた方も多いかと存じます。


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伊丹十三記念館HPのニュース欄でもお知らせしたとおり、その模様は受賞者山田五郎さんご自身のYouTubeチャンネル「山田五郎 オトナの教養講座」においてその模様が公開されています。


↓↓↓こちらをクリック↓↓↓


【祝 山田五郎、伊丹十三賞 受賞‼️】
贈呈式の様子をほぼ全て公開します
さらに、五郎さんとチャンネルへ特別メッセージも⁉️
【ナント、あの人も登場】圧倒的感✨



本日27日時点で既に11万回再生されています!まだの方はぜひご覧ください。



そして、山田五郎さんの受賞者スピーチ、伊丹十三賞選考委員の南伸坊さんの祝辞の詳細は、前回、前々回の記念館だよりにおけるスタッフのレポートをぜひご覧ください。



伊丹十三記念館HP記念館だよりでの式のレポートは以下をクリック



伊丹十三記念館 記念館便り 第17回伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました[1]

伊丹十三記念館 記念館便り 第17回伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました[2]




スタッフ:川又

2025.10.20 第17回伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました [2]

先週に引き続きまして、贈呈式の模様をお伝えいたします。

いよいよ、受賞者・山田五郎さんのスピーチです!
山田さんは、この度の受賞を「三重に嬉しい受賞になりました」とお話しくださいました。


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受賞者・山田五郎さんのスピーチ


皆さんどうも、今日はお忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
この度、私がこの伊丹十三賞というものを頂戴することになったわけなんですが、南伸坊さんから「大変嬉しい」という言葉がありましたけれども、私も、大変に喜んでおります。

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【※】

私の人生、賞罰とはまるで無縁な66年間の人生でございました。
今までにもらった賞というのは、大学のマスコミ関係者の人がマスコミ関係で活躍した人に贈る『コムソフィア賞』と、友だちのみうらじゅんが、その年に一番よく飲んだ友だちに贈る『みうらじゅん賞』という。
この二つしか受賞したことがない私に、伊丹十三賞という身に余る賞が贈られるようになって、長生きはするもんだなと思っております。

【若い頃「こういう大人になりたい」と思っていた人の名前を冠した賞をいただいたのが嬉しい】

ことのほか嬉しかったのは、この伊丹十三賞という賞は、「伊丹十三」という人――私どもが学生時代からリアルタイムでその活躍を観て来た人なんですね。
その洒脱なエッセイに感心したり、グラフィックに感心したり、あるいは80年代に『mon oncle』(モノンクル)という雑誌を出しておられたりとか。
その後映画を撮られたりという、そういうご活躍を目の当たりにして、面白い人だなと。
若い頃なんかは、「こういう大人になりたいな」というふうに思ったんですね。

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【※】

だから、雑誌のタイトルに使われたモノンクル、ぼくのおじさん――まさに我々の世代にとって伊丹十三という人は、いろんな、学校で教わらないことを教えてくれるモノンクル、お洒落なおじさんだったわけです。
その人の名前を冠した賞をいただいたというのが、とても嬉しい。

芥川賞、直木賞だといっても、生前の芥川龍之介を知りませんし、直木三十五に至っては著作を一冊も読んだことはないわけですよ。(場内笑)
それに比べて、伊丹十三の仕事っていうのは我々たっぷり見てきて、その伊丹十三賞をいただけたということが本当に嬉しいです。

【みんなで一緒に作り上げてきたYouTubeの番組が評価され、一緒に喜ぶことができる仲間がいるということがとても嬉しい】

そして、その授賞理由にYouTubeの番組を選んでいただいたということがとても嬉しいです。

あの番組は、実はコロナ禍にできまして。
私はBS日テレで『ぶらぶら美術・博物館』という展覧会を紹介する番組をやっていたんですけれども、コロナで展覧会がぜんぶ廃止になっちゃって。
私も困ったけれども、番組を作っている制作会社も困ったということになりまして。
そこにおります、当時ADだったワダが企画書を書いて、YouTubeで番組をやることになって。
私はYouTubeのことなんかさっぱりわかりませんから、こんなことをやって何になるんだろうと思いながら始めて。

最初の頃は観る人もいなくて、ワダのご両親が一日中回しっぱなしにして閲覧数を稼ぐっていう。(場内笑)それでも100もいかないわけですよ。
...ということから始まって、それがいま70万人だかになりました。(2025年10月20日現在、チャンネル登録者数は74.8万人)

70万という数字は、私が雑誌編集をしていた時にも達成したことのない数字なんです。自分が担当した雑誌で一番売れたのはたしか62万部なんですね。
まさかここで70万という数字を達成するとは思いませんでした。

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数もさることながら、先ほどの伸坊さんのスピーチのように「あ、こんなによく観てくれてる人がいるんだ」ということに驚いております。
そういう、わたし一人の力じゃなくて、東阪企画という制作会社なんですけれど、そこのスタッフみんなで一緒に作り上げてきたYouTubeの番組が評価された。
つまり、一緒に喜ぶことができる仲間がいるっていうことがとても嬉しいです。

 

【伊丹さんは絵の神童。絵を紹介するYouTube番組を評価されたことが嬉しい】

今回受賞した時に、記念館から『13の顔を持つ男』というDVDと、伊丹十三さんの業績を紹介する本をいただいて、改めて見直したんです。

僭越ながら私が改めて思ったのは、伊丹十三という人は、何よりもまず絵の神童だったと思うんですね。
セザンヌと違って、小さい頃から抜群に絵がうまいんですよ。
絵を描くっていうことは見ることでもあるから、観察眼に繋がって、ああいう洒脱なエッセイや、最終的にその才能の全てを映画というところに集約していったんだなと改めて思いました。
絵の神童である伊丹十三の賞をもらった、絵を紹介するYouTubeの番組を評価されてもらったということが、三番目に嬉しい点です。

そんなこんなで、三重に嬉しい受賞になりました。
宮本信子館長、選考委員のみなさん、ありがとうございます。
そしてお集まりのみなさん、今日はどうも本当にありがとうございます。(場内拍手)


宮本信子館長のご挨拶

今日はお忙しい中、本当にたくさんの方にご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
改めまして、山田五郎さん、本当におめでとうございました。(場内拍手)

受賞のコメントに、「最高の励ましをいただきました」というお言葉が山田さんからございまして、私はちょっと、胸が熱くなりました。

いやいやこちらこそ、もらっていただいて本当に嬉しく、ありがたいと思いました。
ありがとうございました。(場内拍手)

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【※】

山田五郎さんの、このおめでたい受賞に乾杯をします。
そして、山田さんと奥様の礼子さんに、エールを送りたいと思います。

乾杯! (乾杯後、場内拍手)

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【※】左から周防正行さん、酒井順子さん、山田五郎さん、
宮本信子館長、南伸坊さん

 

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【※】正賞・盾を持ってニッコリ

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以上、贈呈式の様子をご紹介させていただきました。

このあとお庭で集合写真の撮影が行われ、お飲み物・軽食をご用意したご歓談の時間となりました。

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【※】お庭にて

今回の受賞について「嬉しい」と何度も口にされていた山田さんのスピーチ、いかがでしたでしょうか。

そんな山田さんを中心に、贈呈式は終始和やかな、それでいてあちこちから楽しそうな話し声の聞こえる、いい式典となりました。

改めまして、山田五郎さん、選考委員の皆さま、ご来場くださった皆さま、関係者の皆さまに心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

今後とも、伊丹十三賞をよろしくお願いいたします。


............というところで毎回レポートを終わらせていただくのですが、今年はなんとですね、お伝えしてきた贈呈式の模様などをYouTubeでご覧いただくことができます!

山田五郎さんと一緒に、今回の授賞理由にもなったYouTube番組を作り上げてこられたスタッフの皆さまが、多くの方々に式典の様子がご覧いただけるよう作成してくださいました。ニュース欄でもご紹介していますので既にご覧になった方もおられると思いますが、まだの方はぜひご覧くださいね。

『山田五郎 オトナの教養講座』(←こちらをクリック)


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【※】の写真は、撮影:池田晶紀さん(株式会社ゆかい)、

撮影協力:株式会社ほぼ日のみなさんです。

スタッフ:山岡

2025.10.13 第17回伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました [1]

去る10月7日(火)、第17回伊丹十三賞を山田五郎さんにお贈りする贈呈式を国際文化会館で開催いたしました。

 

台風が近づいており、お天気に不安があったのですが、開催時間になるころには晴れ間も見え、心地よい秋の陽気の中での贈呈式となりました。

贈呈式につきましては、今週、来週と2回の記念館便りに分けてレポートいたします。

 

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第17回伊丹十三賞をご受賞くださった、編集者・評論家としてご活躍中の山田五郎さんのプロフィールや賞の概要はこちらをご覧ください。

 

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贈呈式は、進行役を務める玉置泰館長代行の挨拶に始まり、この度の受賞者・山田さんと授賞理由が紹介されました。

 

授賞理由は「美術を対話的に掘り下げるインターネット番組「山田五郎 オトナの教養講座」の斬新さ、おもしろさに対して」です。

 

続いて選考委員の3名と宮本信子館長の紹介があり、選考委員の南伸坊さんから祝辞が贈られました。

 

祝辞 選考委員・南伸坊さん

 

山田五郎さん、伊丹十三賞受賞おめでとうございます。

そして受賞ありがとうございます。

 

私は美術番組が好きでテレビでやっていますと大概見てしまいます。見て、大概がっかりします。(場内笑)

最近はYouTubeでも美術番組が増えましたが、テレビとあんまり変わりがない。というより、テレビの美術番組よりもさらにがっかりさせられるようなものばっかりです。

つまり、見ていて発見がない。

作っている側に発見が無いので、見ている方は何でもないまんまです。

 

私は、人間は発見が嬉しいように脳がプログラムされていると考えています。

誰かの言うことに発見があると、それに触発されて、聞いている側にも発見が生まれてくる。つまり、影響されて見ている側にも発見が生まれるのです。

こういう時に人間は面白い。私も人間ですから(場内笑)、山田さんのYouTubeの美術番組にはこの発見があるのです。

 

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「セザンヌは絵が下手だったと考えると色々に腑に落ちることがある」こんなことを言うんですよ。

 

あの、セザンヌ。今までどんな美術番組や美術評を見ても、セザンヌが下手だったなんで聞いたことがない。私の経験では、大橋巨泉さんが放言したくらいしか知りません。

しかし私にもセザンヌがどうしてこんなに尊敬されているんだろうという疑問はありました。どうしてピカソはセザンヌをあんなに持ち上げたんだろうという疑問がある。ピカソがアンリ・ルソーをほめるのはすごく分かる。ものすごく分かります。

でも、それが、「セザンヌが絵が下手だった」といわれて、あっ!と思った。えー!と思いました。

そこに、「この絵見てくださいよ」と言ってセザンヌの学生時代の絵をフリップで出す。お父さんに画家志望の進路を反対されて、自分がいかに絵がうまいか、才能があるかをアピールするために描いて送った絵です。

 

下手なんです。(場内笑)

典型的な素人の絵です。

そうか、セザンヌはピカソにとってルソーとおんなじなんだな。これは面白い発見でした。

 

セザンヌの絵が下手なのは一目でわかった。

じゃあ、なぜピカソはそのセザンヌを尊敬したのか。なぜセザンヌをほめる。

 

セザンヌといえば必ず出てくるのが"多視点"という言葉です。色んな方向から見たところを同一平面に平気で描いてしまう。例えば水差しの口は上から見ているのに、水差しの底は水平から見たように描いてしまう。

これが、絵が下手に見えてしまう典型的な素人の絵の特徴です。

 

プロの画家は視点を動かしません。一点から見る。いつも同じ一点から見るようにしていると、上手な絵が描けます。

上手な絵って何か。それは写真で写したような絵なんです。セザンヌはそのコツがなかなかつかめなかった。一生つかめなかったのかもしれません。で、開き直った。"多視点"から見るっていうのは、下手を開き直ったところで、それを自分の芸風にしたということです。

そのように肝を据えてしまうと、どういうことが起きたか。

自信を持てるようになる。自身を持って描いた絵は魅力的だ、というのは皆さんもお分かりだと思います。

セザンヌの理屈は頑固なだけじゃない。人間はいつも、だってそうやって見てるじゃないか。一点からだけ、片目で何かを見るなんてことはしていない。人間はいつだって"多視点"で見ているわけです。

 

s-_DSC4717.jpg【※】

 

セザンヌは頑固で不器用であったから、普通の器用な画家たちのようにプロのコツを呑み込めないまま下手を温存することになったのですが、その代わり、どんどん自信を持って理屈を言うようになり、すっかり堂々たる絵になって堂々たる画家になった。

 

ピカソは一点から見るコツを身に着けなかったセザンヌにヒントを得て、キュビスムという手を思いついた。

 

キュビスムっていうのは色んなところから見たところを平面に展開してしまう、掟破りの絵です。

しかし、掟とはなんでしょうか。その大もとは写真のイメージです。

西洋の絵はこの写真のイメージに何百年もの間とらえられてきたのでした。

印象派から始まって、イタリア未来派だと、絵画の革命競争になったのは、この写真の呪縛から逃れる足掻きだったんです。というようなことを暴論的部分まで山田さんがおっしゃったわけではありませんが、山田さんの発見がこのように私に影響を与えてくださったということを私は言いたくて、長々と理屈をのべました。

 

こんな美術番組は他にあるか。

私は山田さんの番組の他に、発見を促される番組はひとつしかありません。

伊丹十三さんの「アートレポート」という大昔の伝説的番組だけです。こんなに伊丹十三賞にふさわしい人は、今年は山田五郎さんしかいないじゃないか、と私はおもいました。

そして、私はそれを激しく主張しました。

だから私は、今日、すごく嬉しい。(場内笑)

山田さんが伊丹十三賞をもらってくれて、すごく嬉しいです。

ありがとうございます。(場内拍手)

 

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正賞(盾)贈呈 選考委員・酒井順子さん

 

s-_DSC4726.jpg【※】

 

 

 

副賞(賞金)贈呈 宮本信子館長

s-_DSC4743.jpg【※】

 

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祝辞の中でもお話しくださったとおり、南さんは山田五郎さんを激押しされていたそうでとても嬉しそうに祝辞を述べられていたのが印象的でした。祝辞をじっと聞き入っている山田さんも嬉しそうにしておられ、会場は和やかな雰囲気に包まれていました。

 

来週の記念館便りでは、受賞者・山田五郎さんのスピーチをお届けいたします。

来週もお楽しみに!

 

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【※】の写真は、撮影:池田晶紀さん(株式会社ゆかい)、

撮影協力:株式会社ほぼ日のみなさんです。

 

学芸員:橘

2025.10.06 伊丹映画のメガネ

「"年寄り笑うな行く道だもの"って格言だなぁ」と思うことが年々増える一方、「とはいえ、なってみないと本当には分からないものだなぁ」と妙に感心する場面も増えつつあります。

最近わたくしが「なった」ものは「老眼」。「分かった」ことは、「見えないことがこんなにもストレスだとは」と「老眼鏡がこんなにしんどいとは」。

観念して10日ほど前に購入したのですが、老眼鏡をかけたり外したり、なんとも煩わしいものですね。
日に何度叫びそうになることか。

「老眼鏡のレンズ、猫八さんみたいにパカッとやりたい!」と。

「猫八さんのパカッ」は、伊丹十三の監督デビュー作『お葬式』(1884年)でご覧いただけます。

20251006_1_2.jpg映画『お葬式』より
江戸屋猫八さん演じる葬儀屋の海老原は
サングラスをかけているのですが――

20251006_2.jpgパカッ。
色付きレンズと度付きレンズが二重になっているのです。
ごくたまに、色付きレンズを跳ね上げます。

20251006_3.jpgさらに、つるのない老眼鏡を一番内側に仕込むことが可能。
驚異の三重構造!

伊丹監督がこの映画の着想を得たのは、前年に経験した義父(宮本信子館長のお父さん)のお葬式。その時の葬儀屋さんがこんなメガネをかけていらしたのだそうです。

『お葬式』ではこんなカットもあります。

20251006_4.jpg霊安室に横たわる"じいちゃん"を
みんなでのぞき込む場面

画面内が見事にメガネだらけ。

実は、伊丹映画はメガネの宝庫なのでありまして、『マルサの女』(1987年)のパチンコ屋のシーンも見ものです。

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ヒロインの税務調査官・パチンコ屋の社長・税理士、それぞれのキャラクターを際立たせるメガネが利いています。伊東四朗さんのメガネにいたっては、笑いを誘うレベルのハマり具合い。

『タンポポ』(1985年)の接待フレンチのシーンでは、サラリーマン6人中5人がメガネをかけていてます。デザインはそれぞれ違うのに、全員ちゃんとサラリーマンらしく仕上がっているのですから、メガネの効果は深い。

20251006_6.jpg20251006_7.jpg

では、伊丹映画のメガネはどのように選ばれているのでしょうか。

こちらは『大病人』(1993年)で看護師・林久子を演じた、木内みどりさんの衣裳合わせの模様。

20251006_8.jpgメイキングビデオ『大病人の大現場』より
「伊丹十三 FILM COLLECTION Blu-ray BOX Ⅱ」の
特典ディスクに収録されています。

俳優一人の一本のメガネのために、これだけ候補を揃えるんですね!
メイキングビデオ『大病人の大現場』では、この直後、木内さんがあれこれとかけてみて、みんなで具体的な"久子像"を探っていく様子が捉えられています。

そして、選ばれたメガネがこちら――

20251006_9.jpg映画『大病人』より

「聡明で頑張り屋で、愛らしくてちょっぴり毒舌だったりもする久子さんには、このメガネしか考えられない!」と感じてしまうほど、メガネが役の一部になっています。

ちなみに、津川雅彦さんは10本ある伊丹映画のうち9本に出演なさっていて、6本でメガネをかけていらっしゃいます。それを見比べてみるというだけでも、「映画の秋」が成立しちゃいますね。いかがでしょうか。

以上、今週の記念館便り、中野がメガネでお送りいたしました。
皆様、よい秋を。

学芸員 : 中野

2025.09.29 『伊丹十三劇場 4K』と『伊丹映画の日』


「日本映画専門チャンネル」で開催中の『伊丹十三4K』ですが、10月は『スーパーの女』と『マルタイの女』の2作品が放送されます。

『スーパーの女』は記念館で開催している『伊丹映画の日-毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!-』においても、目当てにご来館くださる方の多い、人気のある作品となっておりますので、是非みなさまお見逃しなく、ご自宅で楽しんでご覧ください。

日本映画専門チャンネル 『伊丹十三劇場4K


 スーパーの女<4Kデジタルリマスター版>

092901.png


• 10月3日(金)21:00~
• 監督:伊丹十三
• 出演:宮本信子/津川雅彦/三宅裕司



 マルタイの女<4Kデジタルリマスター版><PG-12>

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• 10月17日(金)21:00~
• 監督:伊丹十三
• 出演:宮本信子/西村雅彦/村田雄浩


また、記念館においては、10月の『伊丹映画の日』は10月13日(月・祝)13時から、『マルタイの女』を上映いたします。気になる方は是非記念館にてご覧ください。


今期の『伊丹映画の日』もこれで半分が終了となりますが、後半5作品のスケジュールもチェックしてください。
『伊丹映画の日-毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!-』の詳細は こちら から


スタッフ:川又

2025.09.22 「やあ、いらっしゃい」「ようこそお越し下さいました」

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
秋分の日を明日に控え、ようやく朝晩の暑さが和らいできた感じがしますね。そのぶん日中との気温差が出てきますので、体調にはお気をつけてお過ごしください。

さて、ご来館のお客さまから、記念館の印象について「伊丹さんのお宅にお邪魔したみたい」というお声をよくいただきます。

先日お越しくださった70代くらいのご夫婦からも「あまり博物館や美術館に行かないので少し敷居が高い感じがしていたけど、伊丹さんの家みたいな、気さくな記念館で寛げました」とのありがたいお言葉がありました。
「伊丹十三の家」をコンセプトに作られた記念館ですので、実際にご来館くださった方からそのように感じていただけて嬉しい限りです。

お客様によると展示、建物、桂の木やベンチがある中庭など施設全体の雰囲気からくる印象もそうですが、伊丹さんと宮本館長の「笑顔のお出迎え」もそう感じた理由の一つだったそうです。

そのお出迎えというのは、まずは伊丹さんからの「やあ、いらっしゃい」。

受付を終え、最初に入る常設展示室の扉が開くと、最初に伊丹さんの写真が目に入ります。

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にっこり笑う伊丹さんに「やあ、いらっしゃい」と迎えられて、「伊丹さん、こんにちは!」「お邪魔します!」と思わずほっこりする方が多いとのこと。書籍『伊丹十三の本』(新潮社)の表紙にも使われている、素敵な笑顔です。

そして、入ってすぐ左側のスペースでは、宮本館長の挨拶の映像が流れています。

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「伊丹十三記念館にようこそお越し下さいました」と、モニターに映し出された宮本館長が笑顔でご挨拶。伊丹さんや記念館について話しながら、来館された方をお迎えしています。

 ※ 同じモニターで伊丹監督映画作品の特報映像(映画撮影開始前、または撮影中など作品が完成していない段階で告知を開始するための映像)も再生されています。展示室に入るタイミングによっては特報が流れている場合もありますので、そちらをお楽しみいただき、続けて流れる宮本館長の挨拶映像をご覧ください。モニター前にはペンチを置いていますので、お座りになってご視聴くださいね。

伊丹さんと宮本館長の笑顔に迎えられ、「伊丹さんと宮本館長の家に招き入れられたみたい」「リラックスして展示を見ることができた」というお客様がたくさんいらっしゃいます。

宮本館長の挨拶の中にも「ここは、伊丹十三の家です」とのフレーズが出てきますが、本当にそのような感覚でご来館いただけたら幸いです。
笑顔の伊丹さんと宮本館長がお迎えしますので、友人の家に遊びに行くように、お近くにお越しの際はぜひお気軽にお立ち寄りください。お待ちしております!

****<お知らせ:開館スケジュールにつきまして>****

記念館の休館日は毎週火曜日ですが、明日9月23日は祝日のため「開館」いたします。
翌日の9月24日(水)が振替休館日とさせていただきます。

スタッフ:山岡

2025.09.15 直筆原稿

9月も半ばに入ってまいりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。連日暑いのは変わりませんが、ふと朝の空気がすっきりとしていたり、雲の形や空の色がどこか秋めいてきているのを感じております。季節の変わり目ですので、皆さま体調に気を付けてお過ごしください。

 

先日ご来館くださった方で2時間ほど展示をじっくりご覧くださったお客様がいらっしゃいまして、その方はエッセイがお好きでご来館くださったそうで、「生原稿や原画が見れて本当に嬉しいです。読むところがたくさんあってじっくり見ちゃいました」とお話しくださいました。

記念館では、エッセイの直筆原稿・イラスト原画をはじめ、CMの草案や、編集長をつとめていた雑誌「モノンクル」の原稿、映画の台本や絵コンテ、様々な伊丹さんの直筆で書かれたものを展示しております。ご来館くださったことのある方は、資料の数の多さに驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。かく言う私も、初めて記念館に訪れたときには直筆原稿の多さに驚いたものでした。

 

さて、本日の記念館便りでは、そんな伊丹さんの直筆原稿についてご紹介させていただきます。

伊丹さんが書いた直筆原稿を見るときにぜひご注目いただきたいのは、一般的な400字詰めの原稿用紙を裏返して使用しているというところです。

 

s-IMG_7778.jpg企画展示室に展示中の『フランス料理を私と』の原稿の一部

写真では分かりにくいのですが、よく見るとうっすらと裏面のマスが透けて見えます

 

そして、さらに特徴的なのは裏返した原稿用紙の上半分に文字を書いているというところです。透けているマスを利用して文字数も揃えてあります。下半分は全く使わないのかと思えばそういうこともなく、文章の付け足しや修正などを行っているのです。市販されている原稿用紙ですが、自分の使いやすいように工夫して原稿を書く伊丹さんの自由な発想が分かっていただけるかと思います。

以前、収蔵庫ツアーにご参加くださったお客様から、「腹ばいで原稿を書くから、上半分だけに書くのかもしれないですね」という見解をお聞きしました。確かに、伊丹さんは腹ばいで原稿を書いておりましたので、このような使用スタイルになったのかもしれません。

伊丹さんはこのように独特な原稿の書き方をされておりましたので、用紙の上半分に書くことの出来るオリジナルの原稿用紙を作成し、1984年ごろからはこちらの原稿用紙を愛用していました。

 

s-IMG_7776.jpg「七 料理通」のコーナーより『タンポポ』直筆台本原稿

オリジナルの原稿用紙を使用しております

s-IMG_7777.jpgオリジナルの原稿用紙には上下に猫のイラストもあしらわれています

 

 

ちなみにエッセイの挿絵に使用されたイラスト原画も、原稿用紙の裏に描いているものがございます。こちらも普段から使用していたからこそ、原稿用紙が使用されることも多かったのでしょう。

 

s-IMG_7774.jpg『女たちよ!』に収録されている「ヨメタタキ」のイラスト原画

原稿用紙のマスが透けているのが分かりやすいです

 

伊丹さんが書いた原稿を見ていて思うのは、最近は文字を書く機会が随分と減ったなということです。仕事では日常的にスケジュール帳を使用しておりますが、それ以外ですと人との連絡やスケジュール管理、日記もスマートフォン一台で完結しており、文字を書く機会が随分と減りました。今こうして綴っている記念館便りもパソコンで書いておりますので、伊丹さんのように長い原稿を手書きしたのは高校生までです。

これだけたくさんの文章を手書きするのにどれくらいの時間がかかったのか、そんなことを想像しながら見てみるのも面白いかもしれません。

 

伊丹さんの書く文字は、2Bの鉛筆を愛用していたので色が濃く、でも一文字の大きさは小さめで、少し丸みを帯びたやわらかい文字が特徴的なことが分かります。初めて原稿を見た時は、伊丹さんの書く文章の内容や監督をしている時のイメージとあまり結びつかなかったのですが、少しずつ人となりを知っていくと、このあたたかみのある文字が素敵だなと思います。筆跡をゆっくりご覧いただけますのも、直筆原稿の魅力ですので、実際にご覧になる時にはぜひ一文字一文字じっくりとご覧ください。

 

学芸員:橘

2025.09.08 伊丹十三とインターネット

たえまなく、めざましく進歩し続けること=「日進月歩」。この言葉を私が覚えたのは昭和だったか平成だったか。


時は流れて令和の今、ICTやAIの急速な発展には「"歩"の字で表現できる域を超えている! あまりにも速い! 一年ひと昔!!」と感じられ、もうついていける気がしません。

少し前、「伊丹万作」「俳句」でGoogle検索をしたことがありました。
最近、検索結果の先頭に「AIによる概要」というものが表示されるようになりましたね。便利に感じることも、煩わしく感じることもあるアレですが――

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「いや、そうじゃなくて。芭蕉の俳句を使って万作が手作りしたカルタのことじゃなくて。万作が詠んだ俳句のことを聞いているんですけど」「伊丹万作全集の巻数とかページ番号とか表題とか、それを教えて欲しいわけ。本をめくって探す時間を省略したいんですっ」とパソコン画面に向かって文句をたれ、ワードを増やして検索を続行するうち、ハタ、と気付きました。
「ん? そもそも、インターネット上に"芭蕉カルタ"の情報があって要約の元になっているのは、私が企画展ページや記念館便りにあれこれ書いたり、解説をつけて展示に出したりしているからなのでは......源流は、私?」ということに。その途端、心に芽生えた恐怖心と重圧たるや。

これまでも注意を払ってきたつもりではありますけれども、なおいっそう、責任をもって・正確を期しつつ・楽しんでいただけて・なるべくためになる、そんな情報の提供に努めてまいります。


さて、「インターネットと伊丹十三といえば」というお話になりますが、パソコンやインターネットが一般にはそれほど普及していなかった1990年代半ば、伊丹映画はいち早くホームページを設けて、映画が作られていく過程を発信していました。伊丹監督が大好きなメイキング・ビデオと同じことを、即座に、そして分量や尺(時間)を気にせずに発信し、封切り前に楽しんでもらえる、とくれば、それはもう飛びついたでありましょう。

20250908_2.JPG伊丹十三が愛用したノートパソコンのひとつ、
PowerBook 5300ce。アップル派だったんですね。

『静かな生活』(1995年)では撮影日記の掲載やシナリオの公開を行い、『スーパーの女』(1996年)では動画も用いるようになり、さらには本番撮影を生中継。これは世界的にも前例のない試みでした。しかも、前田米造さんのカメラが撮影している映像(=映画本編で使用される映像)までもがこの生中継中リアルタイムで流れたというのですから、映画界においては二重の大事件であったはずです。
「自分で中継をみられないのが残念だったね」とは伊丹さんらしい一言。

ところで、生中継について考えるたびに心配になることがひとつ。それは、「スタッフやキャストのみなさんは『生中継なんかされたら仕事しづらいなぁ』と戸惑ったのではないかしら」ということです。
これについて伊丹監督曰く「長年かけてチームワークを培ってきたわれわれだからできる」映画作りの現場なのだから、「『おれたちの仕事ぶりを見てみろ!』と、世界に向かって胸を張ることができたわけですよ」

なるほど、誇りがあれば怖くない。
何かにつけて怖気づいてしまう私は、まだまだ修行が足りぬようです。

朝夕は少し涼しくなってきました。今年の秋は「修行の秋」でまいることにいたしましょう。

20250908_3 meigetsuya.jpgこちらが例の、伊丹万作が手作りした"芭蕉カルタ"です。
―名月や 池をめぐりて 夜もすがら―
2025年の中秋の名月は10月6日だそうですよ!

文中のイタリック体は「ENGLISH NETWORK」1996年7月号より

学芸員:中野

2025.09.01 伊丹十三記念館の前庭の現在


6月に工事をおこない、新たな姿に生まれ変わった記念館の前庭ですが、先月もその様子を記念館便りにてご報告させていただきまして、それから更に1ヶ月が経過しました。現在のお姿がこちらです。


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ちなみに1ヶ月前の様子がこちら。


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ちなみにその1か月前、植え付け直後の7月初旬の様子がこちら。


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過酷な夏を、青々と元気に乗り越えた様子がご覧いただけるかと思います。


そして、ここ数日でフェンス沿いに植えられた斑入りヤブランには花が咲きはじめました。

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縁起が良いと評判の植物、『万年青(オモト)』も元気です。


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何故みんなこんなに元気かと言いますと、スタッフが毎日かかさず水遣りをしているからです。


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そのおかげで、前庭以外の木々も全員元気です。


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まだまだ暑い日は続くかと思いますが、9月に入り若干過ごしやすくもなってくるかと思いますので、是非ご来館をご検討ください。その折には前庭もチェックしてみてください。


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スタッフ:川又

2025.08.25 テレビCMの日

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
8月も残すところあと1週間となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

さて今週木曜日の8月28日は「テレビCMの日」なのだそうです。

1953年8月28日、この日に放送開始となった民放テレビで初のテレビCMが流れました。これを受けて、のちに8月28日が「テレビCMの日」として制定されたそうです。

ご存知の方も多いと思いますが、伊丹さんはCM作家としての"顔"も持っていました。
松下電器(現:パナソニック)の冷蔵庫、西友、味の素マヨネーズ、ツムラの入浴剤、宝酒造のタカラCANチューハイ、そして四国名菓一六タルトなどなど――伊丹さんならではのアイデアを盛り込んだ数々のCM作品があります。

常設展示室「十二 CM作家」コーナーでは、そのいくつかを実際の映像でご覧いただけます。「もんたかや」で始まる、おなじみの一六タルトのCMもお楽しみいただけますよ。

同コーナーにはナショナル冷蔵庫のCMの制作メモや一六タルトのCM直筆原稿など、伊丹さんが書いたCMの原稿やメモなども展示しています。実際の映像と見比べると、CMが作られた過程や制作の工夫などが想像できて面白いかもしれませんね。

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【常設展示室「十二 CM作家」コーナー】

0825-2.jpg【CMの直筆原稿やメモを展示】

CM映像をご覧になった方から「見たことある!」「懐かしい」というお声をよく聞きます。何十年も前に放映されたCMにも関わらず多くの方が覚えておられるということは、それだけ印象深いCMだったのですね。

加えて「CM映像をみたら一六タルトを買って帰りたくなりました」という方もおられるという、今もなお、CMとしての効果も絶大のようです。

ご来館の際はぜひお見逃しなく!

伊丹さんが携わったCMは、記念館ショップで販売中のDVD「13の顔を持つ男」でもそのいくつかをご覧いただけます。
ご興味のある方はぜひどうぞ! (オンラインショップはこちら

0825-3.jpg【DVD「13の顔を持つ男」(税込3,300円)】

スタッフ:山岡

2025.08.18 夏ニナルトドウシテ暑イノ?

毎日茹だるような暑さが続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 

記念館では暑さに負けないよう、休憩を適宜はさみながら、日々水やりに取り組んでおります。そのおかげか、中庭の桂をはじめ、植物は元気に青々と茂っています。

 

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 昨年冬に松山市から引越しをして、通勤の際に電車を利用しているのですが、自宅から最寄駅まで歩く時間と、到着駅から記念館まで自転車を漕ぐ時間が、もう暑くて暑くて――始業前から尋常じゃない汗をかきつつ出勤しております。歩きの時間と自転車を漕ぐ時間はどちらも10分間に満たないのですが、これが意外にもしんどいもので、毎日体力を削られているのを感じます。

通勤を快適にするため、最近流行りのネッククーラーと呼ばれる、首に装着することで体温を下げるアイテムも試しましたが、自宅から最寄り駅までの徒歩10分でぬるくなってしまうため、記念館着くころにはただの首飾りになってしまいます。母曰く、「2500円くらいする良いやつを買ったらもちが全然違う」(私が持っているのはその半額以下のもの)とのことなのですが、「結局、大きめの保冷材が一番もつのでは?!」と思ってしまい、最近は保冷剤をタオルで包んでそのまま首にあてながら出勤しております。

 

さて、素朴な疑問ではありますが、夏というものはどうして暑いのか。こちらについては伊丹さんの『問いつめられたパパとママの本』の「夏ニナルトドウシテ暑イノ?」にて詳しく解説されておりますので、こちらをご覧ください。

 

夏が暑いのは、ひとつは日が長いせいであり、いまひとつは、太陽が真上から照りつけるせいであります。

じゃあ、日が長いと、どうして暑いのよ、なんていわないでおくれよ。同じ条件で物を熱するとするなら、十分間熱するより、十五分間熱するほうがよけい熱くなるだろうじゃないの。夏が暑い理由の第一は、だから、日が長いということであった。

では、次に真上から照らすと、なぜ暑いのか、というなら、たとえば懐中電燈を想像していただきたい。

懐中電燈の光を床に当てるとき、まっすぐ床に当てれば、小さいけれども強く明るい光の円ができるだろう。しかるに、それを斜めに当ててみようか。さっきより、ずっと床の近くから照らしても、照らす場所は広くなるかもしれぬが、明るさはずっと希薄になってしまうのが観察されるに違いないのであります。

つまりこの、垂直に照らすということなのだ、太陽がカンカン照るということは。

夏になると、太陽が真上から照らすから(その証拠に、夏の真昼の影は、小さく足元にまつわりついている)、したがって光や熱が強く当たり、冬になると、太陽が斜めに当たるから(その証拠に、冬の日は、真昼でも長く伸びている)、したがって地面を熱する力は弱くなる。

 

と、まあ、右のような二つの理由で夏は暑いわけだが、万全を期すためには、いま少し補わなければならぬことがある。

すなわち、もし右のような理由で夏が暑いとするなら、一番日が長く、かつ太陽が一番真上にから照らす夏至の日が、一年で一番暑くなければなるまいが、事実はそうではない。夏至の日は、梅雨の真最中で、曇や雨の日が多く、年によっては梅雨寒といわれるくらい涼しいこともあるのは皆さまご承知のとおりだが、これはなぜか。

 別の例で説明しよう。同様なことが、一日のうちにも起こるのをあなたはご存じのはずである。

理屈からいうなら、一日のうちで一番暑いのは正午のはずであるはずだろう。太陽が一番真上から照らすのですから、太陽の光は正午が一番強い。

にもかかわらず、気温が一番高いのは二時ごろ、というように少しずれておりますね、これはなぜか。

 

地面というものは、太陽から熱をもらう一方、絶えず宇宙に向かって熱を発散しているわけですが、これを、収入と支払い、というふうに考えてみようか。

夜の間は日が照らないから、つまり収入はゼロであって、支払う一手。完全に冷えきったところで、サテ日が昇ったとしよう。

支払いは依然として多いが、収入は少しずつ確実に増えてゆき、ついに、収入が一致することになり(つまり、宇宙へ失う熱と、太陽からもらう熱が同じになり)、それからあとは、稼ぐに追いつく貧乏なし、収入が支払いを凌駕したのですから、貯金は増える一方だ。すなわち、どんどん、熱がたまってくる。

やがて、一番収入の多い正午を通りすぎ、これをピークとして収入は減り始めるが、しかし減り始めたとはいえ、いまだ依然として収入は支払いより多いから、貯金はまだまだ増える。ただ、その増えかたが次第に衰えてゆくわけですな。

そうして、ついに再び収入が下降して、支払いと一致する時期がやってまいります。貯金の額は、ここで最高に達するが、ここから先は収入が支払いを次第に下回って、つまり赤字がだんだん大きくなり、次の日の朝まで貯金で食いつながねばならん、ということになるわけですね。

 

つまり、一番収入が多い時期と、貯金が一番多い時期とは必ずしも一致するものではない、ということがおわかりいただけたかと思う。

収入が一番多かったのは、つまり日射が一番強かったのは正午であったが、貯金、すなわち、気温が最高になったのは、収入が下降して、支払いと一致する二時ごろであった。

こういうふうに収入と支払いのバランスによって、収入が最高の時と、貯金の額が最高の時とが少しずれる。

こういう現象が、つまり一日のうちでは、正午と二時、ということになって現れるし、一年の間では、夏至、つまり六月末と八月というふうになって現れることになるのであります。

 

ということが理屈ではわかっていても、まあ今日の暑さはどうだ。真夏の太陽が頭のてっぺんから、気の遠くなるほどガンガン照りつけて、ヘッ、あれが収入が次第に減りつつある姿かよ。われながら信じがたく思われる次第であった。

(『問いつめられたパパとママの本』より「夏ニナルトドウシテ暑イノ?」)

 

以上、夏になると暑くなる理由がお分かりいただけたことと思います。最近は最高気温が40度を越えるところもあり、大変暑さが厳しいですが、最後の伊丹さんのぼやきからも分かるように、エッセイが書かれた1960年代の夏も随分と厳しかったようですね。

 

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記念館にいて、特に暑さが厳しいと思う瞬間は、(水やりや草引きなど外での作業中はもちろんですが)真昼間の一番暑い時間帯に蝉が鳴かなくなるときです。

蝉が鳴く気温はおよそ25度~33度の間とされておりますため、34度以上になるともう鳴かないらしいのですね。最高気温が34度を越える日は、午前中は元気な蝉たちも、一日で一番暑い12時過ぎから14時ごろ、長いと15時ごろまではピタリと鳴かなくなります。それまでにぎやかだったのに、急に蝉の声が聞こえなくなるので「ああ、今日も34度を越えたのか...」と暑さが厳しいことを悟る日々です。

 

8月後半に入ったばかりでまだまだ暑い日が続きます。皆さまも熱中症にはくれぐれもお気をつけて、何卒ご自愛ください。

 

学芸員:橘

2025.08.11 夏の苦み

夏は苦みがおいしい季節。ミョウガにゴーヤにズッキーニ。
苦いお野菜を食べると、暑さに疲れた身体がサッパリするような気がします。

伊丹十三の『食べたり、呑んだり、作ったり。』」展のスライドショー「伊丹レシピ、私流。」では、8月1日(金)より新作をお目にかけています。7人目となる出演者はエッセイストの平松洋子さん。ご披露くださるのは、平松さん流クレソンのサラダです。

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クレソンの苦みもいいですよね。無性に食べたくなって買ってくると「苦っ!こんなに苦かったっけ?」ってなるんですけど、また食べたくなるあの味。

サラダに対する日本人の誤った認識を叱り、サラダの本筋を説いた一連の伊丹エッセイでは、クレソンのサラダはこんなふうに紹介されています。

 緑色の野菜というものは、必ず特有のほろ苦さや、辛さや、軽い渋みや、ひりっとした香りを持つものであって、だからこそサラダというものは生き生きとした食べ物なのだ。ドレッシングも生きるのだ。
 あの、白っぽい人造レタスに、罐詰のアスパラガスなんかつけて、しかもこれに瓶詰のマヨネーズをかけた、なんて、こんなものをサラダと思ってもらっては困るんだよ、ほんとに。
 ま、怒ってばかりいてもしようがないから本格的なサラダを、実例によって記そう。

 一例をあげるなら、クレソンのサラダというものがある。クレソンとは水辺や湿地に生える、一種ほろ苦い辛みのある草である。和名をミズガラシという。要するに、ビーフ・ステイクのつけあわせについてくる、太い茎に、小さな丸い葉っぱのついた緑色の植物、あれです。
 このクレソンだけでサラダを作ってみよう。これはかなりヨーロッパの味覚であります。

「西洋料理店における野菜サラダを排す」「サラダにおける本格」『女たちよ!』(新潮文庫)より

 

20250811_cresson2.jpg20250811_cresson3.jpg平松さん「手でちぎってくださいね」。
断面がギザギザになってドレッシングがよく染みるんだそうです。

ドレッシングについては――

 まずオリーヴ油にレモン、これに酢をちょっときかせる。そうして、作る過程で大蒜、胡椒、マスタードの粉、塩、なんぞが少しずつはいる。クレソンのサラダの場合は、砂糖をほんのちょっぴり、隠し味として用いることが有効である。

「サラダにおける本格」『女たちよ!』(新潮文庫)より

――そう、お砂糖をお忘れなく!

20250811_cresson4.jpg20250811_cresson5.jpg平松さんは空きビンを活用。材料を入れて、シェイク!

それで、この平松さんのサラダの最重要ポイントはですね......いえ、やはり展示室で驚いていただきたいので、ここでは伏せておきましょう。

少しだけヒントを申しあげますと、甘辛く煮付けたりお味噌汁に入れたりする、大変日本的なあの食品を、平松さんはこんがり焼いてクレソンと一緒に和えていらっしゃいます。
伊丹十三が「かなりヨーロッパの味覚」と表現したクレソンのサラダでありますが、「和! そうきましたか! でもやってみたい!」と唸らせる、平松さんならではのアレンジが効いた一品です。

20250811_cresson6.jpg20250811_cresson7.jpgパンとチーズを添えた盛り付け、カッコイイ!

「エッセイスト・平松洋子のクレソンのサラダ」と「チーズ農家・吉田全作の親子丼」の二本立ては11月30日(日)までお楽しみいただけます。刮目してご来館ください!

学芸員 : 中野

2025.08.04 前庭


先月、記念館便り にてお知らせさせていただいた、宮本信子館長肝いりで生まれ変わった記念館の前庭ですが、あれから1ヶ月が経過しまして、現在のお姿がこちらです。


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ちなみに先月の様子がこちら。


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比べるとクローバーの勢いが凄いです。


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この場所は周りに建物もないため日陰が少なく、この時期には大変過酷な場所でありますが、宮本館長と造園業者NextDoorGardenの玉井さんが二人で綿密な打ち合わせを重ね厳選したユキヤナギやコデマリ、フイリヤブラン等は夏の植え替えにかかわらず全く弱っていません。


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毎日水やりをしているお陰か、ヤマザクラも例年よりも元気そうです。


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宮本館長のオフィシャルサイトでも、「タンポポだより」が更新されています。宮本館長のこの前庭にかける情熱がおわかりいただけることと思いますので必見です。



宮本信子Official Site  タンポポだより
・・・記念館の前庭・・・


ご来館の折には是非ご覧ください。



スタッフ:川又

2025.07.28 ラムネ

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

毎日毎日暑いですね。しかも、聞くところによると10月頃まで暑さが続くとか...。長期戦になりそうですので、水分・塩分をしっかり取って、お気をつけて毎日をお過ごしください。

記念館の中庭では、毎朝元気な蝉の大合唱が聞こえてきます。この時期、桂の木は蝉たちで大渋滞。幹や枝と同化していて分かり辛いのですが、よく見るとそこかしこに蝉がとまっていて、その数の多さに毎年びっくりします。

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中庭の桂(と蝉)。
それぞれの写真に6~7匹ずつ写っています。

さて皆さまは、お祭りに行ったとき、立ち並ぶ屋台で「これはつい買ってしまう」というものはありますでしょうか。

焼きそば、たこ焼き、わたあめ、かき氷、焼きトウモロコシ、チョコバナナ、フランクフルトなどなど、食べ物だけでも書ききれない程たくさん売られていますし、それ以外では射的や金魚すくい、ヨーヨー釣り、お面などもありますね。
ちなみに私は小さい頃、かき氷とりんご飴が定番でした。いつもあれこれ迷うのですが、結局買うのはどちらかだったのを覚えています。

先日来館されたお客様は「お祭りの屋台ではラムネをつい買ってしまうんだよね」という方でした(ここでいうラムネは清涼飲料のことです)。

最近ですとプラスチック容器で売られているのもありますが、このお客様はビー玉が入った、いわゆる昔ながらの瓶のラムネを、お祭りの屋台で買うのが大好きなのだそうです。
そのきっかけが伊丹さんのエッセイだと仰っていましたので、内容を少しご紹介させていただきますね。

 

 私が子供の頃聞いた話ではラムネの壜(びん)は「三田さん」という人によって発明されたものらしい。ラムネの壜は(今の若い人は知らぬだろうが)あれは実に子供心をそそるようにできていたね。
 第一に蓋が表になくて壜の中に内蔵されているというアイディアが奇抜である。壜の首の中ほどにビー玉がはいっている。壜にラムネを詰めるとその炭酸ガスの圧力でビー玉は押し上げられて壜の口を内側から蓋してしまう。ビー玉というアイディアが憎いではないか。ついそこに見えているし、触ったりなどもできるのに決して取れない。これには参りますよ、子供は。
(中略)
 ラムネはたいがい大きな、水を張った金盥の中に沈んでいたり、ブリキの箱の中に氷といっしょにはいっていて、だからラムネの壜は必ず濡れていた。乾いているあいだは口のところに検査証みたいな青い紙の封印がしてあるけど、冷しているうちにたいがい剝がれてしまう。
 そういうラムネを買って、あの独特の「ラムネ蓋開け器」でもって、ラムネの蓋をシュポン!と抜く。ラムネが泡立って、ビー玉がコロコロして、うわあ、いいな。いいな。

 

「悪魔の発明」『女たちよ!』(新潮文庫)より

70代のお客様でしたが、小さい頃に飲んだラムネの記憶そのままが描写されていて、懐かしくて無性にラムネが飲みたくなったそうです。
「水を張った金盥の中で冷えているラムネを買って、瓶についた水滴をふき取りながら渡されて、シュポン!と開けて飲むのがいいんだよね!」ということで、そんなふうに売られているラムネを見かけるたび、エッセイを思い出して買うようになったとか。お祭りの屋台のほか、海水浴場もおすすめだそうですよ。

お客様と話をさせていただいたあとエッセイを読み返し、季節柄私も飲みたくなりました。お客様に倣い、お祭りに行ったときはラムネを探してみようと思っています。
夏にぴったりのエッセイですので、皆さまもよろしければ読んでみてください。おでかけ先でラムネを目にしたら飲みたくなるかもしれません。

20250728-3.JPG『女たちよ!』(新潮文庫)

スタッフ:山岡

2025.07.21 第17回伊丹十三賞の受賞者が決定いたしました!

連日最高気温が30度を越える真夏日が続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

記念館では7月に入って2週間ほどあまり雨が降らず、中庭などの水やりに四苦八苦しておりましたが、先週はまとまった雨が降ったので一安心したところです。

 

さて、本日は嬉しいご報告をさせていただきます。新聞やウェブサイト、記念館のホームページなどをご覧くださり、すでにご存知の方もいらっしゃることと思いますが、7月17日(木)に第17回伊丹十三賞の受賞者を発表いたしました。

 

※「伊丹十三賞」は、" あらゆる文化活動に興味を持ちつづけ、新しい才能にも敏感であった伊丹十三が、「これはネ、たいしたもんだと唸りましたね」と呟きながら膝を叩いたであろう人と作品 " に贈らせていただいている賞です。

 

第17回伊丹十三賞をご受賞くださいましたのは、編集者・評論家としてご活躍されている山田五郎(やまだ・ごろう)さんです!

 

 s-山田五郎様 お写真.jpg

 

【プロフィール】

1958年12月5日、東京都生まれ。上智大学文学部卒業後、講談社に入社し、『Hot-Dog PRESS』編集長などを経て2004年に独立。美術・時計・街づくりに関する執筆・講演活動を続け、『出没!アド街ック天国』(テレビ東京系)はじめTV番組にも出演。美術を解説するYouTube『山田五郎 オトナの教養講座』はチャンネル登録者数72万人(2025年7月現在)。著書に『めちゃくちゃわかるよ!印象派』(ダイヤモンド社)、『闇の西洋絵画史』全10巻(創元社)、『機械式時計大全』(講談社)など。

 

【授賞理由】

美術を対話的に掘り下げるインターネット番組「山田五郎 オトナの教養講座」の斬新さ、おもしろさに対して

 

皆さま、山田さんのYouTube「山田五郎 オトナの教養講座」をご覧になったことはございますでしょうか。

わたくしは、ほとんど拝見したことがなく、今回のご受賞をきっかけに頻繁に動画を見るようになりました。

山田さんのYouTubeチャンネルでは主に美術をテーマに取り扱っているのですが、取り上げられる美術品についてあまり詳しくない人にもわかりやすく説明されており、大変面白い内容になっています。絵画一つの説明でも、技法や歴史的観点、描き手の背景なども押さえているので、なぜその絵画が評価され人気になったかなど、楽しみながら学ぶことが出来ます。

チャンネル名に「教養講座」と入っておりますので少し堅苦しい印象を持ってしまいますが、映像に映る山田さんと画面の外にいるスタッフとのやり取りが頻繁にありますので、一方的に講義を聞いているというよりは、グループディスカッションに混ぜてもらっているような気持ちになり、とても楽しいです。

気になった方はぜひ、山田五郎さんのYouTubeチャンネル「山田五郎 オトナの教養講座」をご覧ください。

 

YouTubeチャンネルはこちらよりご覧いただけます。↓

https://www.youtube.com/channel/UCq1r8Nq3nwI9VhvyiwcpF2w

 

山田さんはこの度の受賞を大変喜んでくださり、下のようにコメントを寄せてくださいました。

 

【受賞コメント】

伊丹十三さんは、私たちの世代にとってまさに"モノンクル"。言葉やデザインや映像で思いを表現して人に伝えることの素晴らしさを楽しく教え、あんな大人になりたいと憧れさせてくれた素敵なおじさんでした。そんな恩人のご尊名を掲げた賞を思いがけず頂戴する栄誉に浴し、驚愕と恐縮に震えております。もはやおじさんならぬおじいちゃんの歳になり、大病と闘う中でのこの受賞は、まだまだ生きて伊丹十三が教えてくれたことを少しでも後代に伝えていけという、最高の励ましとなりました。宮本信子館長と選考委員の皆様に、心から感謝いたします。

 

※伊丹十三賞概要や歴代の受賞者はこちらから↓

 https://itami-kinenkan.jp/award/index.html

※特設ページも是非ご覧ください。↓

 https://itami-kinenkan.jp/award/award17.html

 

贈呈式は秋ごろを予定しております。贈呈式の模様は記念館便りにてレポートさせていただきますので、ぜひ楽しみにお待ちください。

 

学芸員:橘

2025.07.14 呼ばれて読む本

ごく若い頃「名著やで」と聞いてとりあえず読んでみた、読んではみたけど......
そんな本が誰にでもあると思います。

時を経て、ある日突然「あの本、今ならもっと深く理解できるのでないか!」となることも、多くの方がご経験のところであろうと思います。

この現象、いくつかの条件が揃ったときに起こるものらしいので「なぜ今」と考えたくなるのですが、本に"呼ばれる"感覚を優先して、到来した読み時の波に身をゆだねましょう。

さて、2025年夏、わたくしを呼んだ本は――

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野田高梧さんの『シナリオ構造論』。

小津安二郎監督作品のシナリオを数多く手掛けた名脚本家・野田高梧さん(1893-1968)が、古今東西の芸術論を引きながら「映画という"若い"芸術に特有のシナリオというものは、どのように作られているか」を懇切丁寧に具体的に紹介した一冊です。
「学生時代は野田さんの重厚な懇切丁寧ぶりを咀嚼しきれなかったんだなぁ。引用の幅広いこと」などと思い返しながら、楽しく再読しています。伊丹万作のシナリオや映画論も引用されていたはず。どこで登場するでしょうか。


ところで、今、私が読んでいる『シナリオ構造論』は、書店で最近購入したものです。
読みたくなって自分の本棚を探してみましたら、映画の本を並べた段に見当たらなかったのです。

たまたま東京へ行く予定を控えていたので「神保町の古本屋でよく見かけるし、買えばいいか」とお気に入りの古書店を巡ることにしました。
見当をつけていたお店は軒並み在庫なしだったのですが、そのうちの1軒でいいことを聞きました。

「野田さんの『シナリオ構造論』は今も人気で在庫がよく動くのです。やはり、小津さんとの関連でご興味を持たれる方が多いようで」と。

入手できなかったのは残念。でも、名著に需要がある、しっかりと読み継がれている。何とも喜ばしいではありませんか。年季の入った映画ファンだけでなく、今のお若い方も手に取っているといいな。
自分が持っているのと同じ宝文館出版の改版で読み直したい気分だったのですが、古書はあきらめてフィルムアート社の復刊版(2016年)を新刊書店で買い求めました。

古本屋さんではこれを。

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映画プロデューサー磯田啓二さんの著書『熱眼熱手の人 私説・映画監督伊藤大輔の青春』(日本図書刊行会・1998年)。
旧制松山中学で伊丹万作と出会う前の伊藤大輔さんについて長年不勉強を続けており疑問が色々あったので、これは大変勉強になります。劇的で甘美でニヒルな作風の背景にふれて、頷きが止まりません。よい買い物をしました。(『シナリオ構造論』をなくした私、古書店に行った私、ナイス!)


暑い季節と読書は相容れないもののようでいて、涼しいところで大人しく過ごすのに読書はうってつけなんですよね。
エアコンに適宜働いてもらって、身体は快適に、心と脳はワクワクで。この夏も健やかに乗り越えたいものです。皆様もどうぞご自愛を。

学芸員 : 中野

2025.07.07 庭の改修工事


先月下旬、伊丹十三記念館の庭の改修工事をおこないました。


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正面に向かい右手にある「伊丹十三記念館」の看板の前の小さな庭です。


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開館当初からあるヤマザクラはそのままに、フェンスに沿ってユキヤナギやコデマリなどを植栽し、この度、新たな姿に生まれ変わりました。


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道路沿いにはタマリュウを並べました。


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クローバーの種を蒔き、地中にはタンポポの根も植えられています。早速数日でクローバーが芽吹いてきました。


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この庭のレイアウトは全て、当館の宮本信子館長のアイデアによるものとなります。
今年の3月の出勤時に市内の造園業者の方に希望を伝え、その後も東京と松山で電話での打ち合わせを重ね、この度工事が行われました。

植える植物のセレクトも、この場所に適した物や、館長の好みなどを踏まえて重ねて話し合いがなされ、決定したものとなります。



0707-6.jpg0707-7.jpg【2025年3月の打ち合わせの様子】


そして、6月の工事当日の様子がこちら。


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実際に現場に立ち、木を植える位置も造園業者さんとで相談しながら決定しました。


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完成した庭はユキヤナギの緑が黒いフェンスに映えてとても良い感じです。
ご来館の折には館長肝いりで生まれ変わった姿を是非ご覧ください。


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スタッフ:川又

2025.06.30 夏の必須アイテム

記念館便りをご覧の皆さまこんにちは。
6月の時点で真夏日の地域が続出するなど、今年の夏も厳しい、かつ長丁場の暑さになりそうです。食事、睡眠などでしっかり体を整えて、くれぐれもお気をつけてお過ごしくださいね。

さて、そんな暑い暑い夏に欠かせないアイテムのひとつ、Tシャツ。
買い物に出ると、洋服を取り扱っているお店には様々な素材、デザイン、カラーのTシャツが並べられていますね。毎年夏に新調するという方も多いのではないでしょうか。

記念館のショップでもオリジナルのTシャツを販売しています。一年を通じて人気の商品ですが、やはり気温の高くなる5月~10月はお買い求めくださる方がぐんと増えます。

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Tシャツ売り場

伊丹さんが描いたイラストをプリントしたオリジナルのTシャツは、使用するイラストやカラー、Tシャツ素材まで、宮本館長こだわりの商品です。

使用されているイラストは3種類、色違いを含めると5種類のTシャツがあります(各税込3,740円)。
3種類のイラストはいずれも人気の著書に掲載されたエッセイの挿絵ですので、伊丹さんのエッセイが好きな方には特におすすめですよ。お客様から「このイラストが好きなので、このTシャツがあってうれしいです!」との嬉しいお声をいただくこともあります。

20250630-3.jpg『ヨーロッパ退屈日記』(新潮文庫)
収録エッセイ「スパゲッティの正しい食べ方」から。
 カラー:黒と赤

 

20250630-7.jpg『女たちよ!』(新潮文庫)
収録エッセイ「二日酔いの虫」から。
 カラー:白と黒

 

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『問いつめられたパパとママの本』(中央公論新社)
収録エッセイ「ネコノ眼ハナゼ光ルノ?」から。
 カラー:ネイビー

色違い、デザイン違いで複数お買い求めくださる方もいらっしゃいます。
オンラインショップでも取り扱っていますので、気になる方はぜひどうぞ(コチラをクリック)。

お気に入りのTシャツを着るなど、ちょっとでも気分を変えて、暑い夏を乗り切りましょうね!

スタッフ:山岡

2025.06.23 交通標語

6月も半ばに入りましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。松山では6月2週目の終りごろから急激に暑くなり、日中は30度を越える夏日が続いております。皆さまも暑さに気をつけて、栄養をたっぷり取れるものを食べてよくお休みになってくださいね!

 

s-IMG_7500.jpg最近の記念館の様子

 

s-IMG_7496.jpg中庭の桂も葉が青々としております

 

 

3月17日の記念館便りにて、2025年の1番大きな目標は「運転が出来るようになる」と書いたのですが、それから約3か月間で少しずつ練習を重ね、7年目のペーパードライバーだった私も最近では日常的に運転することができるようになってまいりました。山道や海沿いを走ってみたり、高速道路を利用して香川や岡山まで運転してみたりと、だんだん運転をする楽しさが分かってきて、楽しい日々を送っております。

運転を日常的にするようになって気づいたのは、街中の見なければいけない物の多さでした。自転車で移動をしている頃はあまり意識していなかったのですが、街中の道路標識、信号機、電光表示板のなんと多いこと!まだまだ初心者なので、制限速度や一方通行などを認識し、地名や曲がる方向が書かれた青看板を見るのでいっぱいいっぱいなのに、見なければならない物が沢山あって目が足りないと感じます。

特に、渋滞や通行止めなどを知らせる電光表示板なんかに、時折「前を見て運転しよう!」、「事故多発!スピード落とせ!」など書かれておりますが、何か事故などでもあったのかと気にして電光表示板を見ることが多いので、標語だけの看板を見ることで注意力が散漫になってしまう気がするのです。どこを運転していても、危ない、スピード落とせ、歩行者に気を付けよう、という内容の看板や旗、表示板が沢山あって、「結局運転をする限りはどこを走っていても気をつけなければならないから、この標語たちはそんなに重要ではないのでは?」と思ったりもします。

さて、そんな交通標語について、20代の頃から自分で運転をしていた伊丹さんはエッセイの中で下のように書いています。

 

今はどうなっているか知らぬが、京都の市電の停留所を示す琺瑯引きの看板の、その停留所の名を大書した下に小さく書かれていた言葉を思い出す。

人、車

整然と行く

美しさ

というのであるが、この川柳とも詩とも交通標語ともつかぬものを一読するたびに、私は一種奇妙な爽やかさが心をうつのを覚えたものである。

「人、車、整然と行く美しさ。読み人知らず。うん、これはいい」

私は心に呟いたものです。

 第一、この標語は――もしそれが標語であるとしての話だが、何事も主張しておらぬところがいいではありませんか。都大路を、人と車が整然と行き交う美しさ、それがどうした? どうもしないのであって、ただそういう美しさのイメージが示されているだけのものである。こいつはなかなか優雅なものですよ。説教臭が、人を強制しようという趣が露ほども見られない。

 そもそも交通標語というもの、あんなものが些かでも効力を持ち得る、と役人どもは本気で考えているのだろうか。やっぱり考えているんだろうねえ。その証拠に、交通安全運動に関する予算をどう使うという話になると、たいがい、まず交通標語を募集し、当選作を大書した立看板、あるいは例の幔幕風のやつを、都内何千個所とやらに「設置」することになった、というような談話がされるのが常である。つまり、お役人衆の頭には、交通安全というと、まず第一の対策として標語というものが浮かぶ仕掛けになっているらしいのである。

 私はいつも不思議に思うのだが、一体、日本の交通行政を司る役人たちのうち、自分で運転できる人間が何人かでもいるのだろうか。交通安全というので、まず標語を思いつくという感覚は、これ絶対に自分で運転する人間の感覚ではないね。

 自分でハンドルを握る人間なら、交通標語なんていうものが、街を穢くする以外、はっは、糞の役にも立たないことくらい身に沁みて知っているだろうはずだからである。

 一体なんだと思っているのかね、役人どもは。標語を見たとたん、走っているドライヴァーたちが一斉にさっと心を引緊め、スピードを落す、とでも考えているのかね。世の中、そんなに甘くないのだなあ。そういうのを想像力の貧困というのだよ。具体性の欠如というのだよ。だから月給泥棒なんて納税者に馬鹿にされるのだよ。

 ともかく標語というのをやめてもらいたいと思う。どんな標語を捻り出したって事故はふえるばかりじゃないか。小学校で「学校の中は静かに歩きましょう」なんて黒板に書いてあるけれど、標語の効力はあのへんどまりだと思う。

(中略)

 ともかく、交通行政者諸君よ、今からでも遅くはない。一刻も早く運転免許を取りたまえ。そうして半年でも一年でも運転した上でだな、運転者の意識の上に立脚した、もう少し次元の違った交通対策の発想をおねがいしたいと思う。

 まったくのところ、われわれ車を運転するものどもは、交通行政とか道路行政とか称して、免許も持たぬ素人どもが税金をどぶに捨てているのを見るのにあきあきしているのだ。

「アッあぶない!」

といいたいのはこっちだよ、まったく。

(『女たちよ!』より「アッあぶない」)

s-IMG_7497.jpg「アッあぶない」が載っている『女たちよ!』

 

 

このエッセイを初めて読んだ時には、まだペーパードライバーだったため、「ふうん、そんなもんか」と思っておりましたが、日々運転をするようになると、この伊丹さんのエッセイに強い共感を抱きました。自分で運転をし、運転の仕方も基本を守り、事故の危険性なども心得て注意していた伊丹さんですので、景観を損ねている面も含めて、このような交通標識はあまりお好きではなかったのだろうなと思います。

 

これからの季節、夏休みもあって、海やプール、観光地など、遠出する方も増えてくると思います。住んでいない地域ではどうしても道に迷ったり、道路標識を見落としたりしがちですので、交通標語のような書き方で恐縮ですが、皆さまどうぞお気をつけて運転をなさってください。

私もこの夏は、伊丹さんのように「人、車、整然と行く美しさ」というような言葉を見つけ、「良い看板だったな」と思えるような余裕を持った運転をしたいと思います。

 

学芸員:橘

2025.06.16 食べものの歌

数日前、炊飯に失敗しました。芯の残った硬いごはんが出来あがってしまったのです。
いけなかったのは水加減か火加減か......いや、両方ともダメだったかもしれない......今でも悶々と考えてしまいます。

20250616_pot.jpgマイお釜。元はテイクアウトの釜めしの容器。
一食分を炊くのに最適で、
失敗したことなかったんだけどなぁ~

「こんなことまで失敗するとは」という精神的なショックと、無理に食べたごはんが胃に停滞している感覚が尾を引いて、食べもののことを考えるのがチョッピリつらくなってしまいました(お腹は空くし、何かしらは食べるんですけどね)。
特別展伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」で伊丹さんの食いしんぼうぶりをご紹介しているというのに、なんたることか。

伊丹さんに食欲を分けてもらおうと思い、展示室を歩いてみますと――

20250616_ex1s.jpg伊丹十三の著書から食に関する名言をセレクト、
挿絵とともに壁いっぱいにレイアウトしているコーナーです。

20250616_ex2s.jpg「ロングネック」『ぼくの伯父さん』(つるとはな)より

――ううむ。これは強い。食欲というより執念に近いものを感じます。

さて、伊丹十三の父・伊丹万作もまた、ストイックでありながら食べることに強い興味を持つタイプの人物であったようです。

それは遺された文章のあれこれから察せられるのですが、肺結核で亡くなるまで8年にも及んだ闘病期間は不幸なことに戦中戦後と重なっていました。滋養を取るために食べようにも、楽しみのために食べようにも、とにかく食べものがない世の中。そのような時代に病臥している自身の食欲について、次のように書いています。少し長くなりますが――

平素あまり美味を追わない人でも、たまたま病を得て床に就くと、しきりに何が食いたい、かにが食いたいといい出す傾向があるのは人のよく経験するところである。
 一般に健康人の生活は勤労に追われて、空想や幻想を発展させる余裕にとぼしいが、そういう人たちでも、病床に就いて時間の空白を持てあますようになると、それを埋めるためにいやおうなしに空想家にならざるを得ない。
 この場合、食欲不振の症状のものは別として、食欲に異状さえなければ、その空想力はまず食物に関して働くことが多い。というのは、食欲は最も一般的な欲望であり、しかも、この種の幻想にふけることは何ら特別の才能を必要としないからである。
 ことに自分のように長年にわたって病褥に縛りつけられているものは、食物に対する幻想が非常に強くなる。それにもかかわらず現在のごとく、幻想はどこまでいっても幻想にとどまって、百に一つも満される機会がないという情勢のもとにあっては、食欲の画く幻想に苦しめられながらすごす時間の量はなかなかばかにできないのである。このような時間を切り抜ける手段として自分の作った食欲の歌や詩は少なくないが、その一例は次のようなたわいのないものである。

 

糸づくりいかの刺身は紫のたまりをかけて食ふべかりける
ゆふだちの音にまがひててんぷらの油の煮える音のよろしき
かつれつは豚こそよけれ雪のごとききやべつきざみてうづたかく盛れ
松山のたるとの餡は黒かりき餡多ければ手に重かりき

「静臥饒舌録」『伊丹万作全集』第1巻(筑摩書房)より

叶うことはないと白旗を揚げながら食欲と向き合わねばならぬ時、人はこれほどまでにド直球な歌を詠むものなのか――
食欲って、つくづくと、五感から刺激されるものなんだな、病気で寝ていても――
"たわいもない"と作者自ら言うけれど、四首の歌の力強さには心打たれます。

20250616_echo1s.jpg20250616_echo2s.jpg「松山のたると」の歌は、後年、伊丹十三によって
エコーはがきの広告に仕立てられました。
併設小企画『伊丹万作の人と仕事』に展示中です。

そうだ。今日、6月16日は「和菓子の日」です。
仕事を終えたら一六タルトを買って帰るとしましょう。ちょっと食欲出てきたかも。

日本各地が梅雨入りして、消化機能の低下や食欲不振を起こしやすい季節です。
どなた様も、必要なものと好きなもの、適宜チョイスして栄養補給してくださいね。
そして元気にご来館ください、お待ちしております!

学芸員 : 中野

2025.06.09 『伊丹十三劇場 4K』

 

2月から開催された『日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三 4K映画祭』ですが、5月1日をもって、大盛況のうちに終了いたしました。

20250203.jpg

そして、5月には『24時間まるごと 伊丹十三の映画4K』と題し、5月17日(土)20時から、『日本映画専門チャンネル』にて、伊丹映画10作品を一挙に放送していただきました。

現在はともに終了しておりますが、ご安心ください。祭りはまだ終わっていません。


6月より、『日本映画専門チャンネル』では『伊丹十三劇場 4K』と題し、4Kデジタルリマスター版として生まれ変わった伊丹映画全10作品を月2作品ずつ放送していただいているところです。是非『日本映画専門チャンネル』にて伊丹映画をご覧ください。


日本映画専門チャンネル
伊丹十三劇場 4K』放送予定


『お葬式』   2025年6月6日(金) 21:00(終了)
『マルサの女』 2025年7月4日(金) 21:00
『タンポポ』  2025年6月20日(金) 21:00
『マルサの女2』2025年7月18日(金) 21:00


その他の作品(『あげまん』『ミンボーの女』『大病人』『静かな生活』『スーパーの女』『マルタイの女』)は放送予定が決まり次第お知らせさせていただきます。


『伊丹十三 4K映画祭』では、映画の上映のみならず、たくさんの上映イベントが開催されました。当館の宮本信子館長をはじめ、 テレビドラマ演出家、プロデューサー、映画監督である塚原あゆ子さん、俳優で第16回伊丹十三賞ご受賞の、のんさん、映画監督の山崎貴さん、伊丹映画の音楽を手掛けられた本多俊之さん、伊丹映画にご出演の西村まさ彦さん、佐伯日菜子さん、渡部篤郎さん、などなど、豪華メンバーがイベントに登壇くださいました。


6月6日の『伊丹十三劇場 4K』の『お葬式』では、本編放送後に、2月22日の宮本信子館長と塚原あゆ子さんご登壇の『お葬式』上映記念登壇イベント様子も放送されました。


是非チェックして、伊丹映画も豪華イベントの様子も、お見逃しなくご覧ください。

また、愛媛CATVでは、地域専門チャンネル(たうんチャンネル)にて、特別番組を放送いただいています。

『ふるさと文化探訪 伊丹十三記念館』
当館学芸員の解説を交えながら展示ブースを巡ります。

スケジュールは こちら から

愛媛CATVをご覧いただける方は、こちらの番組も是非ご覧ください。



スタッフ:川又

2025.06.02 タンポポシールの販売を開始いたしました

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
本格的な夏はまだ少し先ですが、だんだん暑くなってきましたね。体調にはくれぐれも気をつけて日々お過ごしください。


さて本日は、5月に販売を開始したショップの新商品をご紹介いたします。


映画『タンポポ』に登場するタンポポのイラストが、シールになりました!
その発案からサイズ・形などのデザインを含め、宮本信子館長のプロデュース商品です!

250602-1.jpg新商品:タンポポシール

 


この「タンポポシール」には丸と四角の2種類の形があり、1シートにはシールが5枚ずつ。ショップ店頭では、この丸と四角が3シートずつ入った計6シートを、一袋税込330円で販売を開始しました。

250602-2.jpgタンポポシール(丸)

250602-3.jpgタンポポシール(四角)

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1袋6シート入りで販売(税込330円)

また、ご存知の方も多いと思いますが、記念館のショップには同じくタンポポのイラストを用いたグッズがあります。その中の「一筆箋」と「封筒」、そして新商品「タンポポシール」をセットにした、「タンポポセット」もご用意いたしました。

宮本信子館長セレクションのセットです!



250602-5.jpgタンポポセット(税込770円)

タンポポセットは「一筆箋1冊、封筒6枚、タンポポシール(丸)1シート、タンポポシール(四角)1シート」が入っていて、税込880円相当を税込770円でご提供するお得なセットです!
商品はもちろん別々にご利用いただけますが、タンポポの一筆箋にメッセージをしたため、それをタンポポの封筒に入れて、タンポポシールで封をする...そんなタンポポづくしの使い方もおすすめです。

新しく加わった「タンポポシール」、それを含めた「タンポポセット」を、ご来館の際はぜひご覧ください。

20250602-7.jpgタンポポシール売り場


20250602-6.jpgタンポポセット売り場

スタッフ:山岡

2025.05.26 開館18周年&総入館者数20万人突破!

5月も残り1週間となりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
九州や沖縄など梅雨入りをした地域もあり、蒸し暑い日も増えてまいりました。季節の変わり目となりますので、皆さま体調などに気をつけてお過ごしください。

去る5月15日は伊丹さんのお誕生日、そして記念館の18回目の開館記念日でございました。館長がお祝いのメッセージをくださり、15日に更新いたしました記念館便りにてご紹介しておりますので、まだご覧くださっていない方はぜひこちらからご覧ください。

おめでたい開館記念日ですが、実は2025年の5月15日は、もう一つ大変おめでたいことが重なった日にもなりました。なんとこの日、2007年のオープンからの総入館者数が20万人を突破いたしました!
ご来館くださったお客さま、当館の活動を支援してくださった皆さまのおかげでございます。誠にありがとうございました。

伊丹さんのお誕生日である開館記念日に、総入館者数が20万人を突破するとは思ってもみなかったので、当日は本当に夢を見ているような心地でした。ご来館くださったお客さまからは「伊丹さん、お誕生日なんですね!おめでとうございます!」「開館18周年おめでとうございます」など、たくさんのお祝いの言葉をいただきながら、20万人目のお客さまをお迎えし、特別な日となりました。

さて、そんなおめでたい開館18周年と総入館者数20万人突破を記念いたしまして、5月15日より数量限定でオリジナルのグッズセットの販売を開始いたしました!

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こちらのグッズセットは売り切れ次第終了となっておりますので、ぜひお早めにお買い求めください。

グッズセットは以下の2種類を販売しております。

① 伊丹十三記念館グッズセット
記念館のオリジナルグッズのセットです。
総額2530円のところを税込み2000円にて販売しております。

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セット内容:ゴム印、クリアファイルA4、一筆箋、封筒、ポストカード映画全10作品セット、マグネット(各1個)

② 館長・宮本信子セレクショングッズセット
宮本信子館長がセレクトした商品のセットです。
総額4400円のところを税込み4000円にて販売しております。
こちらのセットには18周年と20万人突破の特別な記念に、非売品の館長が作った鍋つかみをひとつプレゼントとしてお入れしております。鍋つかみには館長からのメッセージもついておりますので、ぜひご覧ください。

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セット内容:ガイドブック、手拭い、クリアファイルA4、クリアファイルA5、一筆箋、封筒、マグネット、缶バッジ(各1個)

どちらのセットも、絵柄や色など複数の種類がございますゴム印、クリアファイル、マグネット、ガイドブック、手拭い、缶バッジはランダムに封入されておりますので、実際に商品をご覧になってお好きなセットをお選びください。
皆さまのご来館をお待ちしております。

※セット内容は変更になることもございます。店頭にてご確認ください。
※店頭販売のみとなり、オンラインショップでのお取り扱いはございません。

これからも伊丹さんの魅力をたくさんお伝えできるよう努めてまいりますので、19年目の伊丹十三記念館もどうぞよろしくお願いいたします。

学芸員:橘

2025.05.15 5月15日・伊丹十三記念館は18周年を迎えました!

5月15日・伊丹十三記念館は
18周年を迎えました!


1年過ぎるのが年々早く感じます。何のせいとは申しません~~(笑)

開館日は伊丹十三の誕生日、5月15日にこだわりました。
記念すべき特別な日にしたかったからです。

記念館を「伊丹十三の家」にしたい!
気取らない温かい雰囲気、ホッとする穏やかな家。
伊丹さんちに遊びに来たみたいな~~気軽に~~。

私は『みなさまの声』のおっかけです~~(笑)
此の頃、時々書き込まれています。
「ホントウニ~~まるで伊丹さんのお家にお邪魔しにきたみたいねぇ~」
...伊丹さんの笑顔のパネルに向かって仰ったそうです...(男性)
「伊丹さん、コンニチワ!」とか「十三さん、やっと来ました!」

心がほっこりして、私はiPadに向かって連呼するのです!(笑)
ヤッタァ~~ヤッタァ~~(笑)
ありがとうございます。嬉しいです~~!!

   2007-1.jpgwhite.png2025-2.JPG

中庭の桂の木は幹が太くなりどっしりとしてきました。
(左:2007年開館当初 右:2025年)

 

伊丹さんの家へどうぞ遊びにいらして下さいませ。
スタッフ一同、お待ち申しております!


宮本信子

 

2025.05.12 記念館便りの更新につきまして

いつも記念館便りをご覧いただきありがとうございます。

今週の記念館便りは5月15日(木)に更新させていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

2025.05.05 開館18周年記念イベント「収蔵庫ツアー」を開催いたしました

来る2025年5月15日(木)、伊丹さんの92回目のお誕生日、伊丹十三記念館は18回目の開館記念日を迎えます。

「こちらはできて何年経つんですか?」とのご質問に「もうすぐ丸18年になります」と申しあげますと、「ええ~、そんなになるんですか! 見えない!」と驚きのご反応をいただくようになりました。
建物も中身も若々しさを保っていられるのは、何を措いてもお客様方のおかげです。心よりお礼申しあげます。

開館記念日に先立ち、4月11日(金)~14日(月)、4月18日(金)~21日(月)の8日間、各日定員4名様、ささやかながら感謝の「収蔵庫ツアー」を開催いたしました。

記念館の収蔵庫の2階には"展示風収蔵"になっているコーナーがございまして、直筆の原稿・原画、衣類、食器などの愛用品や書籍が収められています。
それらの収蔵品に関する伊丹十三ならではのエピソードを交えながらご見学いただく催しが「収蔵庫ツアー」です。

18th tour_1.JPG"湯河原の家"について説明中の図。
ツアー最終日、4月21日(月)にご参加の皆様です。

昨年の17周年記念の収蔵庫ツアーは、新型コロナウィルスの影響による休止を経て5年ぶりに開催することができ、感慨深い思いでご案内させていただきました。
久しぶりの2年連続開催となった18周年の今回は昨年を大幅に超えるご応募をいただいて「こんなにたくさんの方が開催を楽しみに待っていてくださった!」とまたまた感激いたしました。
県内外からご応募くださった皆様、まことにありがとうございました。

ご参加くださったお客様方から頂戴したご感想と、ツアー中にご紹介した収蔵品の写真でレポートさせていただきます。

* * * * * * * * * * * * *

●いろいろなエピソードが聞けてとても楽しかったです。常設展ではたくさんの収蔵品の中からすべて見られるわけではないのが残念ですが、衣裳など、映画のシーンと一緒にもっともっと見てみたいと思いました。ありがとうございました。

●書架の雑誌コーナーに懐かしいものがたくさんありました。色々なこだわりが詰まった品ばかりで楽しかったです。

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●原稿用紙の使い方やスケッチの実物など、専門家の説明をいただいて、伊丹氏の仕事のスタイル、着想のしかた、思考内容まで深く理解することができました。
着想してから行動に移していくスピード感、時代を先取りするセンスを、あらためて実感できました。機会があればぜひ再訪したいです。ありがとうございました。

●いろいろな話が聞けてよかったです。食器や洋服のこだわり、映画作りの原稿、イラスト、スケッチ、勉強になりました。湯河原のダイニングルームの円卓が印象深く残りました。また映画を見てみたいと思いました。

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●初めて収蔵庫ツアーに参加しました。伊丹十三さんは多才の人ですが、収蔵庫にある書籍や愛用品を見て、様々な情報を得たりこだわりをもったりされたことで発揮されているのだと感じました。また、映画のワンシーンへのこだわりも収蔵品一つ一つから感じ取ることができ、大変勉強になりました。

●どのような方なのか知識がなかったのですが、多才な方で、特に絵の上手さには感心しました。知っていたのは一六タルトのCMぐらいだったので、大変勉強になりました。ありがとうございました。

●伊丹さんの人柄が大変よくわかる収蔵庫でした。赤いヴィトンや中国服に刺子の半纏、伊丹十三にぴったり!! 今後、映画を見る時は、小物や背景に目が行きそうです。


 
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●ひとつひとつの物への"こだわり"が感じられました。古いビンテージものから時代の最先端のものまで取り込む精神、好奇心が衰えることがなかったのが良くわかります。これらが全て作品に投影されているようです。

●伊丹さんのくらしや服、原こうを見れてすごくよかった。伊丹さんについてきょうみをもったから、また映画を見たい。もっと伊丹さんのことを知りたいと思いました。

●まさにそこに伊丹さんがいるようなお気に入りのものたちの空間を体験できました。
身につけるもの、見るもの読むもの、一つひとつに妥協しない、てきとうで済ませない美学と、それを選ぶセンスが感じられて、ますます、やはり特別な人だったんだなぁと思います。
アルマーニのセーター(肘あてをつけて、袖をつくろって大事に着る)のような、ものとの付き合い方、すてきです。
貴重なものをみせていただいてありがとうございました。



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●収蔵庫は本来公開されないと思いますが、自宅の一室を再現したコーナーの窓にディスプレイを設置して、湯河原の森の風景が窓越しに見えたら良いなと思いました。ブラインドの向こうを想像してしまいました。
自筆の原稿から、几帳面な十三さんの一面を知ることができました。
展示室で普段公開されている部分の理解とは違って、より深く十三さんについて知ることができたよい機会でした。周年記念のほかにもこのようなツアーを増やしていただけるとありがたいです。詳しい説明ありがとうございました。


●収蔵庫ツアーという滅多に無い貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。伊丹さんの生き方、こだわり、より深く知ることができ、今日の事を今後の生きるエネルギーにしたいと思います。また、映画で見かけた品々を目の当りにできて感動しました。



●本日の見学ツアーに参加させていただきありがとうございました。京都とのご縁でお邪魔しました。
伊丹十三氏の普段の「お人柄」「生活スタイル」「生活信条」など窺い知ることができました。今の時代に"物を言う文化人"としての伊丹氏の存在が必要だと感じました。

●この度はこのような貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。
青年期の私にトラディショナル(伝統的でホンモノ)は何たるかを教え、時代や世相に左右されないものの見方、考え方、生き方を示していただき、後の私の生き方の羅針盤となっていただいた伊丹十三さんの生涯と生き様を常設・特別展と共に肌で感じる事が出来た気がして、とても感激しました。
グローバル、多文化共生を謳って久しい今日ですが、実際は、真逆に進んでいる現在に伊丹十三さんがおられたならば、きっと伊丹さんらしい生き方で世の中を導いておられたであろうと思うと残念でなりません。伊丹さんのパッションの幾ばくかをならって、微力ながら余生を生き抜きたいと強く感じることができました。重々ありがとうございました。

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●参加させていただきありがとうございました! 非公開エリアがずっと気になっていたので、探検出来てうれしかったです。
映画につかわれているものをたくさん見られたので、もう一度注目して鑑賞したいと思います。絵も味があってとても好きなので、原画を見られて感激しました。
記念館ができて伊丹さんのいろいろなことを知れてすっかりファンになりました。今の時代にいらしたらどんな発言が聞けるのかなあと気になります。

●本日は大変有意義な時間をありがとうございました。伊丹さんの過ごしてこられた歴史を感じさせて頂きました。これからも本や映画など色々と勉強させていただきます。


●『伊丹十三の映画』の本を購入しました。読むのを楽しみにしています。

●いろいろな収蔵品を見せていただき、ていねいな説明で伊丹十三さんがより理解できました。なつかしい思いと、同じ時代も生きたのだなあという思いがあります。

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●自宅の再現や蔵書、愛用品などを見ることができて、また説明もしていただき、貴重な経験をすることができました。また映画を見返したくなりました。ありがとうございました。

●伊丹さんを身近に感じることができて、改めて映画を見直してみたいと思いました。
中学2年の双子の娘と息子も、又の機会に連れて来たいと思います。(今日は声をかけたのですが、断られてしまいました......二人ともあまり知らないので、映画をみて予習してから誘ってみます)

●本で見ていた物やイラストの実物が見られて大変うれしかったです。まだ見ていない映画のお話も興味深く、今度はそれらの映画を見てから来ようと思いました。丁寧にご説明下さいましてありがとうございました。

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●蔵書から、料理・子育てにとても関心があったことがうかがえました。漱石全集は、さすが松山で過ごした方ですね。
おそろいの時計やファッションなど、私なら夫と同じは嫌ですが...仲の良さがとてもよく伝わってきました。ありがとうございました。

●いろいろ希少な品、お話を見聴きさせて頂きありがとうございました。
照明が暗く遠かったので、せめて書籍のコーナーだけでも近くで見られれば有難かったです。

●とても楽しい時間をありがとうございました。どんな本を読まれていたのか興味がありましたので、1部でも題や作者が解るような案内プリントがあれば、もっと嬉しかったです。
ここに来ることができてよかったです。

●久々に、伊丹十三の呼吸を感じることができた。
映画、食事、通常の生活でありながら、深く思慮するとこの域に達するのだ。

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●伊丹十三さんの物への執着(大切に扱う)の凄さ、本当に好きなもの、上質なものへの愛着等、本当に上質な生活が窺える。男としての生き方、生活の楽しみ方の一端を知り得て、非常に"男"としての生き方のヒントとなるものであった。

●絵が描けるってすばらしい。着眼点、集中力、心の広さを感じました。また見に来たいです。説明の方もすばらしい。

●本日は収蔵庫ツアーに参加させていただき、ありがとうございました。
雑誌や伊丹さんのエッセイで見て、夢描いていた物や、本質を知る伊丹さんを作り上げた品々を実際に拝見でき、感無量です。とても貴重な機会を頂き、本当にありがとうございました。

●スタッフならではの話が聞けて、大変楽しくまた勉強になりました。伊丹作品の根源を見聞する事により、改めて映画等を見返し伊丹目線で鑑賞してみたいと思いました。想像しただけでワクワクして来ます。ありがとうございました。

* * * * * * * * * * * * *

好きな作品も世代もさまざまな伊丹ファンから興味津々でご見学くださったビギナーさん、そして、小学生の坊っちゃんまでもがお越しくださり、わたくしどもスタッフも楽しいひとときをいただきました。ご参加の方全員が偶然にも同じ苗字でビックリ、という回もありましたね。

今回の収蔵庫ツアーには定員32名の倍以上となる67名の方からご応募をいただきました。
残念ながらご落選となりました方々、また来年開催いたしますので、めげずに名乗りを挙げてくださいましたら幸いに存じます。

18周年で"新成人"の伊丹十三記念館、今後ともどうぞよろしくお願い申しあげます。

学芸員 : 中野

2025.04.28 『伊丹十三 4K映画祭』と『24時間まるごと 伊丹十三の映画4K』


2月からはじまった「日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三 4K映画祭」ですが、現在はいよいよ最後作品、『マルタイの女』が上映されています。(5月1日(木)まで)

伊丹映画を劇場でご覧いただけるまたとない機会かと思いますので是非スケジュールが合う方は『TOHOシネマズ梅田』か『TOHOシネマズ日比谷』に足を運んでみてください。


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先日4月18日(金)には『スーパーの女』の上映イベントで、第16回伊丹十三賞をご受賞の、のんさんと伊丹十三記念館宮本信子館長の2人で上映記念登壇イベントがおこなわれました。

「あまちゃん」の「夏ばっぱ」と「アキ」のツーショットということでも注目を浴びた様子で、たくさんのニュース記事がありましたので是非検索してチェックしてみてください。

YouTubeにはノーカットの動画もありましたので是非ご覧ください。


また、4月30日(水)には、TOHOシネマズ日比谷の『マルタイの女』の上映後、マルタイの女にご出演されていた俳優の西村まさ彦さんの舞台挨拶も予定されているということです。


『伊丹十三4K映画祭』は木曜日で終了となりますが、日本映画専門チャンネルでは、5月17日(土)20時から、伊丹映画10作品を一挙にご覧いただけます。是非ご覧ください。


日本映画専門チャンネル
24時間まるごと 伊丹十三の映画4K』放送予定

5月17日(土)20:00~『お葬式』
5月17日(土)22:45~『タンポポ』
5月17日(土)深夜0:50~『あげまん』
5月18日(日)06:00~『静かな生活』
5月18日(日)08:40~『大病人』
5月18日(日)11:15~『ミンボーの女』
5月18日(日)13:25~『マルサの女』
5月18日(日)15:40~『マルサの女2』
5月18日(日)17:55~『スーパーの女』
5月18日(日)20:40~『マルタイの女』


スタッフ:川又

2025.04.21 期間限定メニューはじめました

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
新しい年度が始まりましたね!仕事や学校など新しい環境で4月を迎えられた方も多いと思いますが、いかがお過ごしでしょうか。

記念館の中庭の桂は、芽吹いた葉があっという間に大きくなり、木陰を作るほどになりました。

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さて記念館のカフェ・タンポポでは、4月になり、期間限定メニューをはじめましたのでお知らせいたします。


その1:「豆乳イチゴ」

愛媛県産のイチゴを使った「豆乳イチゴ」は、毎年この時期に開始して、ご好評いただいている人気メニューです。
豆乳とイチゴをミックスしたシンプルなドリンクですが、豆乳のまろやかさの中にイチゴの甘みと酸味をしっかり感じていただけます。ピンクのドリンクの上に緑のミントをのせていて、見た目もかわいらしいです。

20250421-3.JPG豆乳イチゴ

 

その2:「アイスコーヒー」「アイスティー」

暑い時期にご提供する定番メニューです。
カフェ・タンポポのアイスコーヒーのグラスには内側に格子状の凹凸があって、ストローでくるくるとまぜると氷が凹凸に触れ、カランコロンとなんとも涼しげな音がします。この音を聞くと「今年も暑い季節がやって来たな~」と思います。
ロンググラスに注いだアイスティーもたっぷりで飲みごたえがありますよ。

20250421-4.jpgアイスコーヒー

 

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アイスティー

また、しばらくお休みしていた「愛媛みかんジュース飲み比べセット」と「タンポポコーヒー」(ともに通年メニュー)も再開いたしました!

20250421-7.jpg愛媛みかんジュース飲み比べセット

 

20250421-8.jpgタンポポコーヒー

「愛媛みかんジュース飲み比べセット」は、3種類のみかんジュース――まろやかな甘さですっきりとした飲み口の「愛媛みかん」、甘さとさっぱり感を兼ね備えた「清見タンゴール」、濃厚な甘みと酸味のバランスが絶妙な「デコタンゴール」――を楽しめるお得なセットです。県外の方のみならず、愛媛県内からのお客様にも人気があるんですよ。

また、「タンポポコーヒー」はタンポポの根っこを焙煎して作られた、見た目はコーヒーそっくりの、でもコーヒーとは異なる"コーヒー風味"のドリンクです。ちょうどいま中庭でタンポポが咲いていますので、それを見ながらタンポポコーヒーを飲んでみるのもいいかもしれません。

ご来館の際は、ぜひカフェにお立ち寄りくださいね。
新年度も、カフェ・タンポポをよろしくお願いいたします。

スタッフ:山岡

2025.04.14 公徳心

4月も半ばとなり、春らんまんという様子の日々ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。


記念館では桂の葉がどんどん芽吹いてきました。中庭ではタンポポが咲き、しばらく春を楽しむことが出来そうです。

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さて、少し前の話になるのですが、今年の2月に長年応援しているアーティストのライブのために福岡県の博多に行ってまいりました。今回はかなり大きな会場での開催で、会場は約4万人が収容されると予想されており、初めて会場に足を踏み入れた時にあまりの広さに素っ頓狂な声をあげてしまうくらいに広い会場でした。老若男女問わず、様々なライブのグッズを身に着けてライブを楽しんでいる人々の満足そうな顔が印象的な1日でした。こんなに多くの人が、このアーティストのために集まったのだと思うと、10年前に行った観客が700人だった頃の小さなライブハウスの頃がなんだか懐かしく思い起こされます。

 

たくさんの人がアーティストを応援することで、大きな会場を回るツアーに参加できるようになったのは大変嬉しいのですが、ライブに参加する人が急激に増え、それに伴って大きな会場になればなるほど、小規模な会場では見なかったようなトラブルが増えました。チケットの転売、撮影禁止の場所での撮影、列への横入り、会場周辺での迷惑行為、アーティストの母校や自宅付近で記念撮影など――。

「赤信号みんなで渡れば怖くない」じゃないですけれども、どうにも集まる人が増えると「禁止されているけどやっている人いるし」「誰も見ていないし」とばかりに、周りに迷惑がかかることをする人が増えるのは大変心苦しいことです。

 

ライブに限らず、社会の中で生活を営んでいく上で、人間は公徳心が必要であるといえるでしょう。公徳心とは、社会生活における道徳を重んずる心です。伊丹さんがエッセイの中で詳しく書いてくださっておりますので、こちらをご覧ください。

 

 公徳心というのはなんであるかと申しますに、客観的である、ということでしょうね、まず。

(中略)

 つまり、他人の眼で自分をながめることのできる人、これがすなわち客観的であるということだ。こういう人は、たとえば不愉快なことがあっても、ブスッとフクレたりしないもんですね。フクレッつらというのが人目にはごくごくみにくいものだということを知っているからで、それゆえさらに一歩を進めるなら、客観性は観察力と想像力によってささえられ、つちかわれている、といってもよろしいかと思う。

 

 つまり、先がヨメる、ということが大事な点でありまして、たとえば会合に幼児を連れてゆく。幼児がむずがって泣き出す。人人はみんな不機嫌になる。しかも露骨にイヤな顔もできないから、慰めてくれたり、子供をあやすのを手伝ってくれたりするだろう、と、まあそういうぐあいに先をヨミまして、そういう迷惑を人に与える権利は自分にはない、従って幼児は断じてきょうの会合にはつれてゆくまい、と決める。これが客観性ということなのですね。

 それゆえ、公徳心とは客観的に物を見ることのできる能力であって、この能力は観察力と想像力によって生みだされる、ということになりますから、従って、引っくりかえしていうなら、公徳心の欠如とは、客観性、観察力、想像力の欠如である、ということになるわけだ。

 つまり「公徳道徳」と呼ばれるものが世の中にはありますわね。これはだれだって知っている。知っているということだけはみんな知ってるのだけど、これを厳密に守る人というのはまず百人に一人もいないでしょう。

 つまり想像力が足りないんだなあ。たとえば、いま花見のシーズンである。島崎敏樹先生がいつか書いておられましたが、昔、花見にいって一枝の花を折ることは「風流」であった。いま「ドッと繰り出す行楽客」が一斉に花を折ったらいったいどういうことになるか。すなわち風流は過去のものであって、現代に生きるわれわれは風流に対する見解を変えねばならぬ、という論旨であったかと思う。こういうふうに想像力を使ってくださいよ。みなさん。わかりきったことじゃないの、あまりにも。みんなが花を折ったらどうなるか、みんなが紙くずを捨てたらどうなるか。いまさら書くことすらバカバカしいよ。次元が低すぎるよ、まったく。

 

 さて、公徳心において重要なことがもう一つありました。想像力を駆使して先をヨンだ。こういうことをしたら人に迷惑がかかりそうだということがヨメた。しかしヨメただけじゃしようがないね。ヨンだ以上断固として踏みとどまるだけの強さ、すなわち自制心というものが是非とも必要になってくる。

 まあ、オレ一人くらい、いいじゃないか。人が見ていないからまあいいやな。みんなやってることだ。オレ一人バカ正直にしたってはじまらない、なんていうのは全部ダメだよ。

 自分には、どんなに厳しくしたって厳しすぎるということはない。人間所詮自分の外へ出られるもんじゃないのです。どうしても天動説の徒なんだよ、われらは。

 以上、公徳心について知るところを述べてみました。あとは実行のみ!

(『ぼくの伯父さん』より「"ひとりぐらい"は禁物」)

 

s-IMG_7100.jpg『ぼくの伯父さん』

記念館のグッズショップ、オンラインショップでお買い求めいただけます。

 

 

私は人がたくさん集まる場所に行くたびに、この公徳心について考えます。

特にライブでは、開催日はほぼ1日中ライブのグッズを身に着けて行動するので、見る人が見れば一目でそのアーティストのライブに来たことが分かるのです。宿泊するホテル、付近のコンビニや飲食店、そしてライブ会場。自分が立ち寄るすべての場所で、自分一人が軽率な行動をしたせいでアーティストの印象が悪くなり、酷いときにはアーティストが会場を借りられなくなったらと考えると気が気ではありません。だからこそ、普段よりも公共のマナーを意識して、ライブに行くことにしております。

普段生活をしていると、なかなか公徳心を意識して行動することも少ないです。しかし、周りの方が当たり前のように公徳心を持ってくださっているからこそ、快適に生活が出来ていることを忘れずにいたいものです。

暖かくなり、ゴールデンウィークも近づいて旅行される方も多くいらっしゃると思います。その際にはぜひ、伊丹さんのエッセイを思い出していただけますと幸いです。

 

学芸員:橘

2025.04.07 『ヨーロッパ退屈日記』60周年!

記念館には6本のヤマザクラが植えられています。

そのうちベントレーのガレージ脇のヤマザクラが一番に開花して1週間ほど経ったでしょうか、だいぶ葉が多くなってきました。

 

44日撮影

 

一方、同日同時刻、正面ゲート脇のヤマザクラは――

 

 

しーん。

そう離れておらず日当たりなどの環境は変わらないはずなのに、なぜこうも違うのか。ヤマザクラのマイペースぶりには毎年苦笑いしてしまいますが、着々と春本番を迎えつつある松山です。

 

 

さて、19653月、今からちょうど60年前の春、一冊の書物が刊行されました。

 

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伊丹十三(当時一三)の初の著書、『ヨーロッパ退屈日記』です。

外国映画出演のために渡ったヨーロッパでの体験をあれこれと綴ったエッセイ集は、ポケット文春・単行本・文春文庫・新潮文庫と判型や出版元を変えて読み継がれてきました。

 

 

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あとがきに

 

ヨーロッパ諸国と日本とでは風俗習慣はもとより「常識」そのものにさまざまな食い違いがある。わたくしは、これをできるだけ事実に即して書きたかった。

婦人雑誌の広告に、ほら、「実用記事満載!」というのがあるでしょう。わたくしの意図もまたこの一語に尽きるのであります。

 

とあるように、ためになる話、役に立つ話が続々。ただし、やさしく分かりやすく教えてくれるばかりではありません。

痛烈な批判(これもいわば"ためになる話"ではありますが...)が随所にちりばめられていて、「アイタタ!」となることも。こういう"耳の痛い話"をしてくれるところが著者への信頼を生んで、60年の長きにわたって読者を獲得しているのではないかな、と思います。

 

『ヨーロッパ退屈日記』さん、還暦おめでとう! でも定年退職しないでくださいね。

 

 

企画展示室で開催中の『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』では、42()、「私流、伊丹レシピ。」のコーナーに新作スライドショーが登場しました。

 

伊丹さんが山本嘉次郎監督に捧げた親子丼を、徹底した生産スタイルとおいしさで熱い支持を集めるチーズ農家・吉田全作さんが再現。『遠くへ行きたい「親子丼珍道中」』(1971年放送)へのオマージュです。

 

 

 

 

伊丹さんの親子丼ってタマネギを使わないんですよね。鶏肉と三つ葉と海苔と卵とお米、そして調味料、だけ。でも厳選したものばかり。吉田さんは、それと同じ産地やメーカーのものを揃えて撮影に臨んでくださいました。

出来あがった親子丼のなんとも魅惑的なこと――ぜひとも展示室でご覧いただきたいので、ここでは伏せておきましょう。ちなみにわれわれスタッフは、全員ノックアウトされました。ご用心のうえご来館ください。お待ちしております!

 

学芸員 : 中野

2025.03.31 伊丹十三 4K映画祭とクリアファイル

 

2月から開催している「日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三 4K映画祭」ですが、折り返しを迎え、現在は10作品の6作品目『ミンボーの女』が上映されています。(4月3日(木)まで)


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3月28日からは、入場者特典第2段として、オリジナルクリアファイルが先着でプレゼントされています。映画祭の詳細や、プレゼントのクリアファイルのイメージは是非日本映画専門チャンネルのHPでご覧ください。この機会に是非伊丹映画をご覧になり、TOHOシネマズ梅田とTOHOシネマズ日比谷でクリアファイルをゲットしてください。



「日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三 4K映画祭」 は こちら から



クリアファイルと言えば!伊丹十三記念館でもA4サイズとA5サイズの全4種類のクリアファイルを販売しています。伊丹さんの描いたイラストでデザインしており、お土産にもいろいろと「ちょうど良い」ようで、ショップの人気商品となっています。お値段も2010年の発売当初から変わらず税別200円です。

s-IMG_7076.jpgs-IMG_7075.jpgs-IMG_7074.jpgs-IMG_7073.jpgs-IMG_7072.jpg裏は透明で右下に小さく伊丹十三記念館のロゴが入っています。

ご来館の折には是非お手に取ってご覧ください。


スタッフ:川又

2025.03.24 宮本館長が出勤いたしました

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
ここのところ一気に春めいてまいりましたね。寒さも和らいで過ごしやすくなりましたが、何かと忙しい毎日を送る時期ですので、体調管理には十分にお気をつけください。


さて、ホームページの告知欄や記念館便りでお知らせしていたとおり、3月20日・21日に宮本館長が出勤いたしました。
両日ともに春らしいあたたかな気温で、お天気にも恵まれました。さすが " 晴れ女 " の宮本館長です!


当日は、出勤情報を知らずに来館され、笑顔の宮本館長に入口で「いらっしゃいませ!」「こんにちは!」と迎えられて「ええ?!」とびっくりされる方、情報を事前にキャッチして宮本館長に会いに来られた方など、多くの皆さまにお越しいただきました。中には大阪府や愛知県、東京都など、県外から出勤に合わせてお越しくださった方もいらっしゃったようです。(本当にありがとうございます!!)

少しですが当日の様子を写真でご紹介します。ご来館のお客様が宮本館長と談笑したり記念撮影をしたりと、記念館での時間を本当に楽しんでくださっているご様子がうかがえます。宮本館長もいつも楽しみにしている、お客様との時間です。

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こんなふうにお客様との楽しい時間を過ごしながら、合間にはスタッフや業者さんと打ち合わせをしたり、カフェやショップ、展示室、庭を見て回ったり――記念館にいる間はとにかく大忙し!の宮本館長でしたが、いつもながら元気いっぱいに館長業務に取り組んでいました。

改めまして、ご来館くださった皆さま、本当にありがとうございました。

次の出勤日が決まりましたらホームページ等でお知らせいたしますので、ぜひ楽しみにお待ちくださいね。

スタッフ:山岡

2025.03.17 運転

3月も後半に入り、日中は春らしくぽかぽかと温かい時も出てまいりましたこの頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 

記念館ではトサミズキやユキヤナギがどんどん花をつけています。中庭ではヒメツルニチニチソウの花が咲いて、春らしい毎日です。

 

s-IMG_6918.jpgトサミズキ

 

 

s-IMG_6926.jpgユキヤナギ

 

s-IMG_6932.jpgヒメツルニチニチソウ

 

 

さて、本日の記念館便りでは運転についてお話したいと思います。

 

私が以前勤めていた会社は普通自動車免許の取得が必須の会社だったので、大学の春休みを利用して免許を取得しました。毎年この時期になると、「あの年の今頃はほとんど毎日教習所に通っていたな」と思い出します。

しかし、せっかく免許を取得したのですが、仕事の日もお休みの日も運転する機会が無く、免許取得後は全く運転をしたことのないペーパードライバーとなってしまいました。そして自転車さえあれば生活の出来る場所に住み続けた結果、ペーパードライバー歴がこの度7年目に突入したところです。

そんな運転をほとんどしたことのない人間ではありますが、昨年引っ越した場所が松山市内より圧倒的に車が必要になる場面が多いことを最近ひしひしと感じております。意外と病院や飲食店、家電用品店などが遠く、移動が大変なのです。今住んでいる場所からだと実家方面に帰る際も車が便利で、なおかつ移動時間も短くなるため、やはり運転は練習せねばと2025年の1番大きな目標は「運転が出来るようになる」となりました。

 

皆さまも日ごろ運転されることがあるかと存じますが、運転をする時に胸にとどめておきたい伊丹さんのエッセイを2つ続けてご紹介させていただきます。

 

 わたくしは、ドライヴァーとして発言するのだが、車というものは実におそろしいものだと自分自身思うのです。車が凶器だ、というのは全く本当だと思う。

 たとえば、雨の夜道なんて、われわれはほとんど何も見えないで運転しているのです。前方から来る車のライトが、アスファルトの上に、光の縞模様を作っている、その上を時たま、かすかな黒い影がちょっとかすめたような気のすることがある。それが歩行者だったり、自転車だったりするのです。

 反対側のトラックとすれ違う時なんか、ヘッド・ライトがちょうどこちらの目の高さを通過するから、ギラギラと輝きながら接近する二つの白い光線を除いて、世界は、一瞬全くの暗黒と化してしまう。

 一瞬とはいっても、車はその間何十メートルも走っているでしょう。しかも、普通、ドライヴァーというものは、車とすれ違う時、本能的にそちらのほうを注意してしまうのです。道路の端の方の暗闇に目を凝らしたりはしない。よしんば目を凝らしたってなにも見えやしない。じゃあ危険じゃないか、というのかね。非常に危険です。危険ならブレーキを踏めばいいじゃないか。ところが絶対に踏まないのです。何故かは知らない、ともかく、すれ違うたびにブレーキを踏むなんて見たことがないのです。

 だから、その暗闇の瞬間、三人くらいの歩行者が肩を並べて歩いていたらどうなるか。運転者には全く見えないんだから、よけもしないではねとばされるよ。

 明るいヘッド・ライトの中にいるから相手には見えているんだろうという考え方、見えれば当然スピードを落とすだろうという考え方、これは、今すぐ、この場で改めてもらいたい。

(中略)

 これで、事故がおきないわけがないのです。にもかかわらず、だれしも初めて事故を起すまでは無事故なわけでしょう。そして、だれしも交通事故を防ぐために運転しているものはいない、目的地へ着くために走っているのです。ということは、今までこの程度の運転で安全だったのだからという安心感から、危険に対する許容度が、かなり甘くなった状態で運転している、ということになるのです。

 実は、今まで安全だったのではない、()()良かった(、、、、)に過ぎないのだ、ということに気づいていないのです。

 要するに、運転者を信頼してはいけない、ということです。車にはだれも乗っていないと思えばよいのです。どんな車でも、だれも乗っていないと同じ状態になり得る時間があり、その一瞬事故が起きるのです。

(『ヨーロッパ退屈日記』より、「注意一瞬、怪我一生」)

 

 だれしも免許を取りたての頃は、ことさらに肘を窓の外に出したりして、いかにも運転馴れしたポーズを作りがちのものであるが、総じて、こういう変則の姿勢というものは、趣味としても初歩の初歩である。

 私はかつてロンドンの街で、ジム・クラークが乗用車を運転しているのを見かけたことがある。ジム・クラークは両腕を一杯に伸してハンドルのいわゆる「十時十分」のところを握っていた。

すなわち、どんなにゆとりのある場合でも正しい姿勢を崩してはならぬのだ。なぜなら、正しい姿勢のもつ真の意味は、突発的なできごとに即座に対処することができるという点にある。だから、自分の運転に責任を持つ人間は、必然的に正しい姿勢をとらざるを得ないのだ。

(中略)

 さて、いまさら申し上げることもあるまいが、自動車というものは危険物であります。これを扱うに当って、男たるもの、どんなに自分自身に厳しくあろうとも、厳しすぎるということはない。いわんや、いいかげんな気紛れや、でたらめは許せないのであります。

 たとえば、運転のさいの履物一つにしても、最も運転しやすい、正しい履物を選ぶべきである。底革の滑りやすい靴や、脱げやすい草履で運転することは断じて許せないのであります。

 これがすなわち「自動車の運転におけるヒューマニズム」というものである。

 そうして、われわれは、巧みに運転する前に、品格と節度のある運転を志そうではないか。

 交差点で自分の前が右折車なんかで塞がれると、すぐ隣の列へ割り込もうとする人がある。というよりむしろ日本人の九十九パーセントまでが左様である。

 思うに車の運転とは、自分自身との絶え間のない闘いであります。人に迷惑をかけてはならぬ、ということは誰でも知っている。知っていながら割り込むというのは、これはすなわち自制心の欠如というものである。

 隣の列がどんどん流れてゆくと、もう矢も楯もたまらない。なんだか莫大に損をしているような気になってくる、

 つまりその瞬間なのだ、運転者の品性が決定するのは。こういう時に、甘んじてその場に踏みとどまっていられるだけの、強い意志の力と、人間としての品位を持つか持たないか。これが、よい運転者と悪い運転者との永遠の別れ道となるのである。

(『女たちよ!』より「スポーツ・カーの正しい運転法」)

 

どちらのエッセイでも、車は大変危険なもので、一瞬の隙や馴れ、気のゆるみで事故がおきてしまうこと、事故を起さない運転をすることの大切さが書かれております。あらためてこの2つのエッセイを読むと、誰かを乗せている時にはその人の命も預かっているも同然ですし、鉄の塊を動かしていることを常に忘れずに運転をせねばと気持ちが新たになります。ジャギュアやロータス・エラン、ベントレーなどの自動車に凝り、48歳で普通二輪免許を取得してバイクにも凝っていた伊丹さんの運転に対する真摯な姿勢が見られるエッセイは、それぞれ『ヨーロッパ退屈日記』、『女たちよ!』で読むことができます。よろしければぜひ、お手に取っていただけますと幸いです。

 

s-IMG_6933.jpgオンラインショップでもお取り扱いしております。

 

1月2月は少しバタバタしておりましたので機会に恵まれなかったのですが、この3月にようやく運転が出来る機会が出来ました(もちろん、運転に慣れている人に助手席に座っていただく予定です)。乗り物好きの伊丹さんのエッセイを胸に、車の練習に励みたいと思います。皆さまもどうぞご安心に。

ぜひ、春のドライブでは記念館にお越しください。伊丹さんの愛車のベントレーとともに、スタッフ一同お待ちしております。

 

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学芸員:橘

2025.03.10 開館18周年記念「収蔵庫ツアー」参加者募集中です!

ヤレヤレ何とか2024年を乗り越えたぞ、と思ったのはついこの間だったはず――気が付けば今度は年度末! ひょっとすると、暦や年中行事というものは人間をアワアワさせるためにあるのではないか――などと考えてしまう今日この頃です。

でも、あたたかな日差しにウキウキしたり、冷たい風が吹く曇天の日に道端の菜の花に心励まされたり、そんな日々の繰り返しで季節の移り変わりを感じるのはちょっと好き、かもしれません。

20250310_onogawa_c.jpg記念館のすぐそばを流れる小野川の夕景です。
黄色ってなんだか元気が出る色ですよね。

さて、周年記念の恒例イベント「収蔵庫ツアー」、開館18周年を迎える2025年も開催するはこびとなりましたので、お知らせを。

記念館の収蔵庫の2階には「展示風収蔵」になっている5つのコーナーがございまして、直筆の原稿・原画、衣類、食器などの愛用品や書籍が収められています。

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「収蔵庫ツアー」はこの5つのコーナーの収蔵品をご覧いただきながら、さまざまなものが宿した「いかにも伊丹さんらしい」あるいは「意外な」エピソードを学芸員が解説する1時間程度の催しです。

ものを通して仕事ぶりや生活ぶりにふれていただくことで、皆様の胸の中にある"伊丹十三像"がより鮮明かつ立体的になること必至。開館1周年の記念イベントとして開催して以来、ご好評いただいております。

伊丹さんについて詳しくない方、全くご存知ない方にも、楽しく生きるヒントのようなものも感じていただけるように......と思いながらご案内に努めておりますので、ぜひこちらで詳細をご確認のうえ、奮ってご応募くださいませ!
ご応募締切は3月24日(必着)です。

*要事前応募・抽選制のイベントでございます。ご了承ください。

<ご参考>
ご参加くださったお客様のご感想を元にしたレポート・ページでツアーの雰囲気を"下見"していただけます。よろしければこちら(昨年分)をどうぞ!

学芸員:中野

2025.03.03 3月の伊丹十三記念館


記念館便りをご覧のみなさまこんにちは。いよいよ3月に突入しました。

記念館では植樹して2年が経過するロウバイの花が咲き始めています。今年の冬は寒い日が多かった影響か昨年より開花が若干遅いように感じます。


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ロウバイ

さて、本日は3月の伊丹十三記念館関連の情報をリマインドさせていただきます。


【宮本信子館長の出勤が決定!】

3月の伊丹十三記念館にとって一番のニュースはやはり『館長出勤』です。
先週の記念館便りでもお知らせしました通り、当館の宮本信子館長の記念館への『出勤』が決定しました。


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館長・宮本信子 伊丹十三記念館 出勤日時
3月20日(木)15時頃~16時30分頃まで
3月21日(金)13時頃~16時頃まで

みなさまお誘いあわせの上ご来館ください。
(状況により、急きょ予定を変更する可能性がございます。何卒ご了承ください。)

【伊丹十三4K映画祭】

先月から引き続き、TOHOシネマズ日比谷と、TOHOシネマズ梅田において『日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三4K映画祭』が開催中です。


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4Kデジタルリマスター版の伊丹十三脚本監督作品が、2月21日(金)より各作品1週間ずつ10作品10週連続で上映されています。

現在は、3月6日(木)までの予定で、伊丹映画の中でも一二を争う大人気作品『タンポポ』(1985)が上映されています。今後の上映予定は以下の通りとなります。

実施日
「タンポポ」   2月28日(金)~3月 6日(木)上映
「マルサの女」  3月 7日(金)~3月13日(木) 上映
「マルサの女2」 3月14日(金)~3月20日(木)上映
「あげまん」   3月21日(金)~3月27日(木)上映
「ミンボーの女」 3月28日(金)~4月 3日(木)上映
「大病人」    4月 4日(金)~4月10日(木)上映
「静かな生活」  4月11日(金)~4月17日(木)上映
「スーパーの女」 4月18日(金)~4月24日(木)上映
「マルタイの女」 4月25日(金)~5月 1日(木)上映

伊丹映画をスクリーンでご覧いただける大変貴重な機会です。是非みなさま劇場でご覧ください。

映画祭についての詳細は こちら をご覧ください。

去る2月22日(土)には上映記念イベントとして、TOHOシネマズ日比谷にて当館の宮本信子館長とテレビドラマ演出家、プロデューサー、映画監督である塚原あゆ子さんによる登壇イベントが開催されました。

たくさんのニュースがネット上にアップされていましたので、是非『伊丹十三4K映画祭 トークイベント』で検索してイベントの様子をご覧ください。

以上、3月の伊丹十三記念館についてお知らせさせていただきました。今月もどうぞよろしくお願いいたします。

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スタッフ:川又

2025.02.24 宮本館長 出勤のお知らせ

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

やっと少し暖かくなってきたと思うとまた寒くなって、気温差の激しい日が続いていますね。体調その他、皆さまくれぐれもお気をつけて日々をお過ごしください。

さてそんな寒い中に、ホットなニュースをお届けいたします。
宮本館長の出勤日が決定いたしました!!

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<宮本館長出勤日と時間帯>

3月20日(木・祝)15時頃~16時半頃まで
3月21日(金)13時頃~16時頃まで

 

※状況により、急きょ予定を変更する可能性がございます。何卒ご了承ください。

ご来館の方から、また、お電話などでもよく「宮本館長は次回いつ来ますか?」とご質問をいただくので、お知らせできて本当に嬉しいです。

当日、宮本館長は私たちスタッフと一緒にお客様をお迎えいたします。
「いらっしゃいませ!ようこそ!」とお声がけして、お話しして――そんなお客様との時間を、宮本館長は本当に楽しみにしています。
今回の出勤日には祝日も含まれていますので、平日はお仕事で来られないという方も、ぜひこの機会に、宮本館長に会いに記念館にお越しくださいね。

宮本館長、スタッフ一同、皆さまのご来館をお待ちしています。

スタッフ:山岡

2025.02.17 料理と後片付け

今年最強といわれる寒波が過ぎ去り、ふと春の匂いを感じるような日も出てきた今日この頃ですが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

先週は少し暖かくなっておりましたが、今週は全国的にも冷え込むとの予報です。体調を崩されないようお体を大事にお過ごしください。

 

記念館では、ロウバイやユキヤナギに花がつきはじめました。少しずつ近づく春を楽しめたらな、と思う毎日です。

 

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s-IMG_6850.jpg 【ロウバイ】

 

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【ユキヤナギ】 

 

さて、わたくしごとではございますが、昨年11月ごろから二人暮らしを始めました。生活は滞りなく営めているのですが、ここ数か月の大きな悩みは食事、そして後片付けについてです。

 

自分一人だと「今日は疲れたしコンビニ弁当にしよう。洗い物も出ないし」のような適当さでも生きていけますが、いかんせん人と暮らすとなると、同居人との食事についてきちんと考えなければなりません。栄養バランスの取れた献立、品数も少なすぎると食卓が味気ないので一汁三菜くらいは頑張りたい、でも夜遅くになると揚げ物などの重たい料理は胃にも悪いし太るし――と日々頭を悩ませています。

 

もちろん、同居人も食事を用意してくれる日があったり、外食やお惣菜で済ませる日もありますので必ずしも毎日料理を作るというわけではありません。ですが、やはり食べるというのは毎日のことですので、帰宅途中は食事のことで頭の中がいっぱいになる日がほとんどです。

 

そして、帰宅してなんとか3品作って食べるころにはシンクに大量の洗い物が。フライパン2つに鍋1つ、おたまに包丁、まな板、菜箸、ボール、大さじ小さじのスプーン。これに2人分の食べ終わったお皿たちが足されると、文字通り洗い物が山のようになってしまうのです。

 

私は家事の中では洗い物が特に苦手でして、食事のこととなると食器などの後片付けまで考えなくてはならないので、日々悩みが尽きないです。

 

このように毎度大荒れになる台所で料理を作りながら「ああ、伊丹さんはこういう惨状を見て、あのエッセイを書いたのだな」と思い起こされるのが、「料理人は片づけながら仕事をする」です。

 

 私が料理を始めた動機というのは、ごく愚劣なものなのです。まあお聞き下さい。

 二年ばかり前、私ども夫婦は半年ばかりロンドンで暮した。ハムステッドにフラットを借りて自炊して暮した。ここの家主というのがフランス料理の大家で、自分の作った料理をひとに食べさせるのがなによりも好きという独り者のうえに、うちの奥さんがそれに輪をかけた料理気違いです。

 それゆえ、私が居間でもってソファーにふんぞりかえって子母澤寛氏の「味覚極楽」なんぞを繙いていると(中略)このドメスティックな二人組は台所で盛んにラルースの「フランス料理大全」なんかをひっくりかえしたり、なにやら討議したり、一人が用ありげに台所から出てきたり、また別の一人がしばらく買い物に出かけたり、そうこうしているうちに、なにやら刻む音、なにやら煮立つ音とともに、予測のつかぬ香ばしい匂いなども漂いはじめ、台所の中の動きがただならぬ具合いにあわただしくなったと思うと、ファンファーレの音高く(もちろん、これは料理人の心の中で鳴り渡っているのだが)本日のスペシャル・メニュー! がしずしずと現われる、という仕掛けの毎日を私は送っていたのです。

(中略)

 このような結構な毎日ではあったが、私には気に食わぬことが一つあった。すなわち、彼らが料理した後の台所は散らかり放題に散らかって、足の踏み場もないのである。

 あらゆる鍋、皿、ボウル、スプーン、包丁、布巾、調味料、野菜の切れ端、使い残しの肉、卵の殻、そういうものどもが、死屍累々という塩梅で台所のあらゆる空間をおおいつくすのであって、どうもこれは気に食わない。仕方がないから、そうだ!身をもって範を垂れよう。本当の料理人は常に片づけながら仕事をする、ということを見せてやろう。

 こうして私は生まれて初めて包丁を持ったのであります。忘れもしない、私はまずカレー・ライスを作ったね。料理の本を読むと、いやあ、便利なものですな、これは。「まず玉葱を紙のように薄く切り、これを大量のバターを使ってとろ火で炒める。狐色に色づいた時玉葱を引きあげ、紙の上に並べて油を切る。二、三分もすると玉葱はパリパリになりますから、これをスプーンの底ですりつぶして粉にする。この玉葱の粉がカレー粉の色と香りの基調になるのでございます」なんぞということが書いてある。なるほどやってみると、その通りになっていく。鶏のぶつ切りを炒め、じゃがいも、人参を炒め、チリー・パウダー、塩を少少、カレー粉を次次に加え、同時に鶏のスープを仕込み、炒めたものにスープを加え、玉葱の粉を一緒に煮込んでいく。いやはや、面白いのなんの。トマトを布巾で絞る、これが酸味。マンゴ・チャトニの瓶詰のドロドロの部分で甘味をつけ、最後にライムを一絞りしぼって味を引きしめる、なんて、まあただで教わるのが勿体ないようなことがすっかり書いてあって、その通りやるとその通りのものができる。これは驚きましたねえ。

 傍ら私はどんどん物を片づけましたよ。それが目的なんだからね。要するに、片っ端から常に片づければそれでいいのさ。汚れ物というものは加速度的に増えるから、一旦溜り始めるともういけない。追いつけなくなってしまう。

 ま、そういうわけで、私の料理の第一日目には今まで食べた最良のチキン・カレーとピカピカに磨き上った台所が同時にできあがったわけで、目出度き事限りなし。そうして物事は初めが大事だ。初めに身についた習性というものは、なかなか抜けるもんではないのでして、今でも女房は台所が汚れてくると私の料理を所望するのです。

(『女たちよ!』より「料理人は片づけながら仕事をする」)

 

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自らも台所に立ち、家族や来客に料理を振舞っていた伊丹さん、なおかつ同時に片付けもしていたとは!とエッセイを初めて読んだ時は驚きました。

レシピに忠実に従いながら料理を作り、片付けも同時進行で行う。簡単なようで意外と難しいと実際に生活をしていてひしひしと感じます。

このエッセイを思い出すたびに、気持ちを新たにして料理と後片付けの同時進行に挑戦しておりますが、毎度あまり上手くはいきません。伊丹さんの言うとおり、「初めに身についた習性というものは、なかなか抜けるもんではない」のですね。精進をしていきたいと思います。

 

さて、今週21日(金)からは、ついにTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて『日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三4K映画祭』が開催されます。22日(土)にはTOHOシネマズ日比谷にて宮本信子館長の登壇イベントもございますので、ぜひぜひチェックしてください!

 

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学芸員:橘

2025.02.10 「映画館で観る映画」はいかにして作られるか

先日開始した告知のとおり、『日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三4K映画祭』が2月21日(金)より東京日比谷と大阪梅田のTOHOシネマズで開催されます。

20250210_4Kfestival.jpg日本映画専門チャンネルさんからタップリお届けいただいたフライヤー、
記念館のロビーで配布中です。どうぞお手に取ってみてくださいませ。

この特集上映のサイトでは「いま劇場で伊丹映画を観る喜び」というお題の、現役映画監督たちによるコメントが紹介されています。ベテラン監督、若手監督とも、短いコメントの中に独特の視点や背景があらわれていますよね。

その中で、「伊丹十三が活躍した時代、映画は映画館で観るから映画だった」に始まる周防正行監督のコメントには、技術の変化に対応しながら、受け手が身を置く鑑賞状況をも意識して、映画作りに努めてこられた周防監督のキャリアについて深く考えさせられました。


さて、「映画館で観る映画」、つまり「大きなスクリーンに映し出される映画」。
これを作るにあたって、伊丹十三監督が大いに腕を揮い、伊丹組の皆さんと数限りない創意工夫を凝らしたことは多くの方がご存知であろうと思いますが、予期せぬ壁にぶち当たることもあったようで――

たとえば、監督デビュー作の『お葬式』(1984年)の撮影初期にはこんなことがあったそうです。

 一時から冠婚葬祭のVTR部分*1の撮影。(中略)VTRの機材は日活学院が使っている学校の備品である。VTRの技術者らしい人は誰もついてこない。一抹の不安はあったが快調に撮影進み、六時終了。(中略)
 衣裳合せ中、撮影部から使いがきて、今日撮影したVTR、画質悪く使用不能という。撮影部へ行ってみると米造氏*2以下深刻な表情。キャメラが家庭用の安直な機械で、到底、大スクリーンに拡大は不可能とのこと。そういえばモニターの画が悪かったが、それはモニターそのものが悪いのだとばかり思っていた。不覚である。スタッフは画が粗いのは監督の狙いだと思っていたよし。(中略)俳優諸君には申し訳ないが、良いリハーサルをやらしてもらったと思うことにしよう。
 細越氏*3、すっかり考えこんで、この分では十六ミリ部分*4も事故があるといけない、あそこも念のために三十五ミリで撮りましょう、といい出す。すでにして教訓は生き始めている。

 

伊丹十三『「お葬式」日記』(文藝春秋、1985年)p.312より

*1 通夜当日の朝、主人公の侘助・千鶴子夫妻が弔問客への対応を予習するために見るマニュアルビデオ / *2 前田米造さん(伊丹映画全10本のうち8本に撮影監督として参加したキャメラマン) / *3 細越省吾さん(『静かな生活』までの8本の製作を担ったプロデューサー)/ *4 作中、映画青年の青木が16ミリカメラで撮影したという設定で流れるモノクロ、サイレントの「ある葬儀の記録」。実際の撮影は淺井愼平さんが担当

「冠婚葬祭のVTR」の映像は、後日、撮影期間の終盤にベータカムという放送業務用の高画質カメラを使用して再度撮影され、無事に本編に組み込まれました。スケジュールに余裕のあった時期の失敗でよかったですねぇ......

それから、編集に関してはこんなことも。

『お葬式』『タンポポ』『マルサの女』では、イタリア製のインターシネという編集機が使われました。(蔵原惟繕監督が所有していたものを借りたんだそうです。)
この編集機は小型のスクリーンがついているのが特徴で、伊丹監督曰く

 普通は編集マンがムビオラで仕事するために監督は非常に不自由な形でしか編集に参加できぬが(ムビオラは一度に一人しか覗けない)インターシネの場合、画面が開放されているため監督は全面的に編集に参加することができる。

 

『「お葬式」日記』p.241より

ということで、撮影された個々のシーンが一本の映画として生き生きとつながるように、編集の鈴木晄さんと監督とで磨きあげていったわけですが、配給会社を経て映画館で上映される映画であるためには長すぎてもいけないので、"削る"(切る、カットする)のも大変に重要な作業でした。

映画編集者から見た監督・伊丹十三について、鈴木さんはこんなふうに証言なさっています。

 どの監督ともそうだけど、初めて一緒にやるときは、監督が編集に何を求めているのか探ります。監督も編集者がどういう編集をするのか気になる。(中略)でも、伊丹さんの間合いはすぐにわかりました。伊丹さんも「鈴木さんはこうつなぐのか。じゃあ、俺はこう撮ろう」と先へ先へ行ってくれるから、非常に楽でしたね。初めて監督する人で、編集のことを考えながら撮影出来る人はなかなかいないですから。
 それに編集に対しての細かい指示もそんなにはなかった。「そのカットは短くね」とか、抽象的な指示だけ。「もうあと何コマ切って」とか、そんな細かいことは一切言わない。「ちょっと切っといてね」の「ちょっと」の部分を感じて、上手に細工のできる感性を要求する人でしたよね。

 ただ、伊丹さんには編集卓のモニターは劇場のスクリーンと違って小さいから、モニターだけを見て判断しては危険ですよ、ということを伝えました。モニターを見た感覚と、完成してスクリーンで見たときの感覚は違う。どうしても、モニターでずっと見ていると、情報量が少ないからたるく感じちゃう。引いたカットの表情なんか特にね。
 伊丹さんも、「つないでみたらかったるい。つまらない」と言って、どんどん編集で切ろうとしていたんだけど、「今、切ったらダメです。もっと完成に近いものを見てからでないと。途中でチョコチョコ切っちゃうと、慌ただしいだけで味がなくなっちゃう」といつもアドバイスしていました。
 普通、監督というのは撮影したものをできるだけ切りたくないわけです。編集者が切ろうとしても、「そこは大事なとこだから」と伸ばそうとする。それなのに伊丹さんは逆。「これは要らない、あれも要らない」って、どっちが編集者かわからない(笑)。僕が必死で「全部つながってから切るようにしましょう」とか「もう一回大きな画面で見てから詰めましょうよ」とか言うわけです。

 

『伊丹十三の映画』(新潮社、2007年)p.113-114より

監督自ら書いたシナリオは、『お葬式』の場合でいえば、そのまま映画にすると2時間半を超えてしまう長さだったため、「どう縮めるか」は撮影前からの課題になっていました。鈴木さんは「書いたものは切れませんが、撮ったものは切れますから(=シナリオを切ってしまって撮影せず、つないだときに素材が足りないとなっては手立てがない)」と伊丹監督を励ましていたそうですが、"切りたがり"な監督との編集卓を前にした攻防が待ちうけていたとは、ベテラン編集者でも予想外だったことでしょう。

20250210_EIGAbook.JPG伊丹組スタッフ・キャストの皆さんのインタビュー満載、
伊丹十三の映画』(税込3,630円)は伊丹十三記念館限定販売です。
「伊丹十三4K映画祭」の予習にも復習にも最適!

――等々あって生み出された伊丹映画。

その全10作をスクリーンでご鑑賞いただける機会が今回の『伊丹十三4K映画祭』です。

『「マルサの女」日記』(文藝春秋、1987年)のしめくくり近く、「自分の映画を上映している映画館の近所をのんびり歩いている人を見ると『映画館はあっちだ!』と叫びたくなってしまう。スクランブル交差点の中にひしめいている人人を見ると、投網でひっさらって映画館へどさりと投げ込みたくなってしまう」と伊丹十三は綴りました。


伊丹さんに投網でひっさらわれて映画館に投げ込まれた! と思って劇場の客席に身体をうずめるのも一興、かもしれません。

ぜひスクリーンでご堪能ください。

学芸員 : 中野

2025.02.03 【朗報】伊丹映画をスクリーンでご覧いただける大チャンスです!


伊丹十三記念館ホームページの告知欄でもお知らせしております通り、2月21日(金)より、TOHOシネマズ日比谷と、TOHOシネマズ梅田において『日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三4K映画祭』の開催が決定いたしました!


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4Kデジタルリマスター版の伊丹十三脚本監督全が、2月21日(金)より各作品1週間ずつ10作品10週連続で上映されます。

伊丹映画は現在配信サービスではご覧いただくことができない上、劇場でご覧いただける機会も限られている中、スクリーンでご覧いただける大変貴重な機会でございます。伊丹映画の4Kデジタルリマスター版を是非みなさま劇場でご覧ください。

また、上映記念イベントとして、2月22日(土)には TOHOシネマズ日比谷 にて当館の宮本信子館長とテレビドラマ演出家、プロデューサー、映画監督である塚原あゆ子さんによる登壇イベントの開催も決定しているということです。塚原あゆ子さんと言えば、昨年末に放送されたTBS系日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」の演出をご担当されており、同作品でキーパーソン「いづみ」を演じた宮本信子館長と作品の撮影秘話なども語られるのではないでしょうか。


『日本映画専門チャンネルpresents 伊丹十三4K映画祭』
の詳細は こちら をご覧ください。


上記のサイトでは、第16回伊丹十三賞の受賞者である、のんさんや、伊丹十三賞の選考委員をお務めの周防正行監督、映画監督の山崎貴監督、岩井俊二監督、奥山大史監督から「いま劇場で伊丹映画を観る喜び」というテーマでコメントもいただいており、必見です。


さらに5月には日本映画専門チャンネルにおいて、伊丹映画全10作品が一挙放送される予定とのことです。放送情報の詳細は後日発表ということですので、発表されましたら、また改めてお知らせさせていただきます。


この機会に是非、劇場で、そのあとおうちで、4Kデジタルリマスター版の伊丹映画をご堪能ください。



スタッフ:川又

2025.01.27 『伊丹十三DVDコレクション』の販売を開始しました

2024年12月20日より、記念館ショップで『伊丹十三DVDコレクション』の販売を開始いたしました!



20250127-6.jpg伊丹十三DVDコレクション


『伊丹十三DVDコレクション』とは、2004年~2005年に映画『お葬式』の製作20周年を記念して作られた、伊丹十三監督作品のDVD-BOXです。

2004年12月20日(ちょうど20年前ですね)に『伊丹十三DVDコレクション ガンバルみんなBOX』、翌年2月25日に『伊丹十三DVDコレクション たたかうオンナBOX』と題された2つのBOXが発売されました。それぞれに伊丹十三監督映画本編5作品とメイキング3作品が収められ、2つのBOXをセットでご覧いただくと全10作品の映画本編と6作品のメイキング映像を楽しむことができます。

2011年からはBlu-rayでも伊丹映画を楽しめるようになりましたが、DVD化され、ご自宅で伊丹映画を楽しめるようになったのはこの時が初めてでした。しかも伊丹さんの名前にちなんで、作られたのは完全限定生産の「十三,000」セットというこだわりぶり!

この度、その時に作られたDVD-BOXを、数量を限定して皆さまにお届けすることとなりました。

現在ショップで販売中のBlu-rayより前に製造されている先輩(?)ではありますが、実は記念館ショップでの『伊丹十三DVDコレクション』の販売は今回が初めてです。
改めまして、どんな内容かご紹介させていただきますね。


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写真上:「ガンバルみんなBOX」、写真下:「たたかうオンナBOX」

定価は各税込29,925円です。

<<BOX内容>>

『伊丹十三DVDコレクション ガンバルみんなBOX』------

◆本編ディスク(DVD)5枚:『お葬式』(1984)、『タンポポ』(1985)、 『あげまん』(1990)、 『大病人』(1993)、『静かな生活』(1994)
◆メイキング映像(DVD)3枚:『伊丹十三のタンポポ撮影日記』、『「あげまん」可愛い女の演出術』、『大病人の大現場』
◆ブックレット1冊:オールカラー40P

『伊丹十三DVDコレクション たたかうオンナBOX』------

◆本編ディスク(DVD)5枚:『マルサの女』(1987)、『マルサの女2』(1988)、 『ミンボーの女』(1992)、 『スーパーの女』(1996)、『マルタイの女』(1997)
◆メイキング映像(DVD)3枚:『マルサの女をマルサする』、『マルサの女2をマルサする』、『ミンボーなんて怖くない』
◆ブックレット1冊:オールカラー40P

※ショップ店頭のみの販売です。オンラインショップなどの配送対応は行っておりませんのでご了承ください。
※数に限りがございますので、お一人さま1セットまでのご購入とさせていただきます。

BOXの大きさは18センチ×18.5センチ×20センチという存在感のあるサイズです。
そしてDVDが収められているケースは、フィルム缶をイメージした特別仕様になっています。なかなか見ない、凝ったデザインです!

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フィルム缶をイメージしたDVDケース。
ちなみに全部つながっています。


本日はDVD-BOXをご紹介しましたが、Blu-ray BOX(こちらは単品もございます)も同じくショップ店頭で販売中です。
DVDと同じく2つのBOXで伊丹監督映画全作品が楽しめますが、それぞれのBOXの本編の組み合わせや特典が異なりますので、詳しくはこちらをご覧ください。

DVDで、あるいはBlu-rayで、ご自宅で何度でも伊丹映画をご堪能いただけます。
ご興味のある方は、ご来館の際にぜひご覧になってみてください。

スタッフ:山岡

2025.01.20 カクテル

2025年に入り1月も半ばを過ぎましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

インフルエンザなども流行っておりますので、なるべく暖かくしてお過ごしください。

 

皆さまは年末年始、どのように過ごされましたでしょうか。私は久しぶりに地元に帰省し、友人や家族と楽しい時間を過ごしました。

年末のある日、友人と一緒に地元の映画バーなるものに行ってまいりました。この映画バーは、映画のポスターやグッズが所狭しと並び、映画のサウンドトラックが流れ、映画をモチーフにしたカクテルを提供しているお店です。往年の名作から最近の話題作まで、さまざまな映画タイトルのカクテルを楽しめるお店でした。

日本映画もチラホラあるとSNSで拝見しておりましたので、「伊丹さんの映画もあるかも!」とお店で実際にメニューを見て探してみたのですが、『東京物語』や『七人の侍』、『ゴジラ -1.0』など日本映画はいくつかあるものの、残念ながらメニューの中に伊丹さんの映画はありませんでした。

しかし、『ローマの休日』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『タイタニック』など、有名なタイトルがたくさん並んでいて、メニューを見ているだけでも楽しかったです。この日いただいたのは、『ニュー・シネマ・パラダイス』と『羊たちの沈黙』でした。

s-IMG_3017_1.jpg『ニュー・シネマ・パラダイス』

s-IMG_3019_1.jpg『羊たちの沈黙』

 

どちらも映画のイメージにぴったりで、他にもいろいろと飲みたかったのですが、『羊たちの沈黙』の度数の高さ(なんと26%...!)にやられてしまったので、初めての映画バーは2杯のみとなりました。来ているお客さまも映画好きの方ばかりで、マスターを交えて映画を話している常連の方々とのお話もすごく楽しかったです。

映画バーのような、いわゆるコンセプトバーに伊丹さんが行くようなイメージはあまり持てないのですが、お酒が好きな方でしたし、新しいものや面白いものには敏感な方だったので、伊丹さんも「面白いね」と言ってくださるかなと考えながら飲んだ年末でした。

 

ちなみに、『ヨーロッパ退屈日記』の中で伊丹さんはカクテルについて以下のように書いております。

 

 つまり、カクテルというものは、味覚と演出とが五分五分くらいに入り混ったものだ、と思うのです。

(中略)

 本当においしいカクテルを、ミックスできるバーテンダーが、一体東京に何人いるか、おそらく十指に満たないと思うのです。だから、それ以外の場所で、怪しげなマルティニを飲んだ人々は、ことごとく、カクテルに対して偏見を抱くようになってしまう。

 まったく惜しいと思うのです。カクテルというものは、本当は愉しいものなのにねえ。第一、カクテルがないとしたら、晩餐前、夜の早い時間に何が飲めるだろう。ブランディは食後の飲み物だから先ず除外しよう。ビールはおなかが一杯になってしまう。じゃあ、日本酒でも飲むかね。これからステーキでも食べようという時にも日本酒でいってみますか。すると残りはウイスキーとてもいうことになるのだろうが、ご婦人と一緒の場合だってあるんだぜ。君はウイスキーでいいだろうが彼女には何を飲ますかね。

 わたくしは、彼女の、その日の気分や、好み、アルコール許容度、そして服装の色などをおもんぱかって、これ以外なし、というカクテルをピタリと注文する悦びは、男の愉しみとしてかなりのものと考えるのだが、いかがなものであろうか。

(『ヨーロッパ退屈日記』より「カクテルに対する偏見」)

 

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エッセイではこの後、マルティニ、ギムレット、ジン・バックなどのカクテルについて、本格的な作り方が続きます。本物志向である伊丹さんらしいエッセイとなっておりますが、同じ『ヨーロッパ退屈日記』の中には、もっと簡単で親しみやすいカクテルの紹介もございます。以前の記念館便りでもご紹介させていただいたことのあるミモザです。

 

 わたくしは、飛行機に乗ったら、飲物は「ミモザ」ときめている。

 一等なら、シャンパンは全くタダなのだが、わたくしは滅多に一等には乗らない。短い航路ならともかく、ヨーロッパ往復で、二等との差額が二十何万円にもなっては、乗りたくても乗りようがないではないか。

 ところで「ミモザ」の話だが、シャンパンは何も一等と限ったことではないのだ。二等だって、お金さえ払えば、税無しの、素敵に安いシャンパンが飲めるのです。

 ポメリーの半壜が、七百円と少しくらいだったと思う。オレンジ・ジュースはタダだから、自分で半々に割って、ま、気楽に召し上がって下さい。

(『ヨーロッパ退屈日記』より「カクテルに対する偏見」)

 

本格的なものを好んでいた伊丹さんではありますが、心から美味しいと思えるものを綴っておられたのだなと感じることの出来るエッセイとなっております。こちらの2編の他にもお酒に関するエッセイはたくさんございますので、ぜひ『ヨーロッパ退屈日記』をはじめとする伊丹さんの著書をご覧いただけますと幸いです。

 

さて、現在開催中の企画展『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』のスペシャル映像コーナー、「伊丹レシピ、私流。」について嬉しい出来事がございましたので皆さまにもご紹介させていただきます。

 

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昨年12月1日より公開の、「伊丹レシピ、私流。」スライドショーに出演してくださっております自炊料理家の山口祐加さんが、各SNSにてスライドショーのご紹介をしてくださいました。スライドショーの中の一部画像とともに、今回のスライドショー出演について書いてくださっております。

山口さんの投稿は以下のURLよりご覧いただけますので、ぜひご覧ください。

 

【X】https://x.com/yucca88/status/1873678817304432812

【Instagram】https://www.instagram.com/p/DEHdrm3PXip/

【note】https://note.com/yucca88/n/n25461d25eaec

 

山口さんのスライドショーは先月公開されたばかり。まだご覧になったことのない方は、ご来館の際に楽しんでいただけますと幸いです。

 

s-IMG_6784.jpgスペシャル映像コーナーの前には、

座ってご覧いただけるようにベンチのご用意もございます。

ぜひ、腰をおろしてゆっくりご覧ください。

 

学芸員:橘

2025.01.13 パンダ年と青い空

皆様こんにちは、ウン度目の年女・中野です。

幼少の砌――3歳か4歳ぐらいだったでしょうか――「なんでワタシはヘビ年って決まってるの? ヘビ年なんてヤダ! "パンダ年"になるぅ~」と駄々をこね、家族を苦笑爆笑させたことがございました。今なお中野家における語り種となっております。

想像するに「ヘビ=怖いし気持ち悪い」「パンダ=かわいい」という幼児らしい安直な思考から飛び出したひとことだったのでしょうが、家族に理解してもらえないうえに笑われる理由が分からず、ひたすらに恥ずかしく悲しく悔しかったことを鮮明に覚えています。

20250113_diary.jpg今では「いやいや、ヘビってカッコいいじゃん」と
思っている私の今年の手帳はもちろんヘビ柄です。

このように、幼児というのは発想に枷がないため何を言い出すか分かったものではなく、周囲の大人、殊に両親を「ギョッ」「ハッ」とさせる存在である、というのは昭和も令和も変わらぬ家庭の風景だろうと思います。

そして、年を重ねてみるといつの間にやら親との立場が逆転していて、今度は自分が「ギョッ」「ハッ」とさせられる側になっている――これもまた人の世の"あるある"でありましょう。


「ところで、空ってなんで青いんだっけ?」

と母から問いかけられたのは、昨年末から元日にかけての帰省中、わが故郷・三陸の青い青い冬の空に見とれて「美しいなぁ、三陸のキリッとした空気ゆえの青さだなぁ」と感慨に浸っていたときでありました。

20250113_sanrikusky2.JPG

「空はなぜ青いの?」という質問、尋ねられて答えに窮する代表例ですよね。

「せっかくいい気分でいた今、それについて説明するのはめんどくさすぎる...」とチラッと思いはしたのですけれど、実はこれ、伊丹エッセイの読者であれば「よくぞ聞いてくれました!」なネタなのであります。

1968年に刊行されたエッセイ集『問いつめられたパパとママの本』は、「無限の可能性を秘めた子供の好奇心の芽を摘むことなく、正しくいい方向に伸ばすため、大人は科学的な物の考え方、知識に対する憧れと畏れを身につけましょう」という信念に貫かれた一冊で、いわば"子育て中の方のための想定問答集"。
これを紐解きますと、ドンピシャリ、「空ハナゼ青イノ?」と題された項があるのです。

勝利を確信した私が、心の中でガッツポーズをキメながら『問いつめられたパパとママの本』で読み識った答えをひととおり述べ、「以上、ご納得いただけましたでしょ~うか?」と母の顔を覗き込みましたところ――

「えーっと、分かったような、分かんないような......」

予想外の敗北感にうなだれる結果となってしまいましたが、まあ、私の説明も整然としたものではなかったので、(半分くらいは)致し方ありますまい。

さて、では、空はなぜ青いのでしょうか、伊丹センセイにご解説いただきましょう。

 光というものは一種の波でありますが、波には波長というものがある。波長とは、波が高くなって低くなってまたくなる、その山の頂上から頂上までの長さではありますが、赤、だいだい、黄、緑、青、あい、すみれ、七つのひかりのうち、赤いほうほど波長が長い。いや、長いといっても一ミリの千分の一よりまだ小さいような規模での話でありますが、ともかく赤い光のほうが波長が長く、青のほうが短いのです。そうして、太陽光線が空気の中を通過する時、波長の長いもの、つまり赤い光ほど空気の分子によって散乱させられることが少なく、すなわち遠くまで達するのであります。

(中略)するとどうなるか。太陽から出た光は四方八方に向かって遠くまでまっすぐに進むのですから、つまり別の言葉をかりていえば散らばってしまうのですから、私が空を仰いださいに、私に割り当てられた赤い光というのはごくわずかであるということになる。極端なことをいうなら、太陽からまっすぐ私の方に向かって進んできた分だけが私の目にはいる。
 ところが青い光のほうは、空気の分子によって散乱させられるから、つまりこれは青い光を専門にはねかえす小さな鏡が空一面に散らばっているようなもので、それゆえ空のあらゆる隅々から青い光が私の方へ集まってくる。すなわち絶対多数決で空は青く見えるのであります。

 

「空ハナゼ青イノ?」『問いつめられたパパとママの本』(中央公論社、1968年)より

いかがでしょう?
「うん、ちょっとまだよく分かんない」と感じる方のために、続きを少し。これならば分かり易いこと請け合いです。

そこで坊やに説明してください。
「あのね、お日さまからはね、赤い光と黄色い光と青い光が出てるのよ。赤い光と黄色い光はさきに行っちゃったんだけど、青い光だけがお空で道草して遊んでるの。わかった? 坊や」

――子のないわたくしではありますが、目の前の幼児に何かしらの疑問や悩みを示されたときは「そんなこと知らなくても生きていけるよ」「大人になったら分かるよ」などと逃げを打つことなしに、そのときの自分が理に適っていると思える説明をして(答えられない場合にはせめて「一緒に調べてみよ!」と誘って)、彼らの好奇心の芽を育むお手伝いをしたいものだなぁ、と感じた、2025年の年頭でありました。

皆様の2025年、伊丹十三記念館の2025年、よい一年になりますように。

学芸員 : 中野

2025.01.06 伊丹家のお正月料理


記念館便りをご覧のみなさま、あけましておめでとうございます。2025年も伊丹十三記念館をどうぞよろしくお願いいたします。


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1月2日更新の宮本信子館長の記念館便りはご覧になられましたでしょうか。まだの方は是非ご覧ください。

2025.01.02記念館便り 館長・宮本信子から新年のご挨拶



さて、みなさまお正月はいかがお過ごしになられましたでしょうか。おせちやお雑煮などのお正月料理をお召し上がりになられましたでしょうか。


ご家庭それぞれに「ならでは」のお正月料理があると思いますが、伊丹十三さんのお宅ではなんと、「チーズフォンデュ」がお正月料理の一つだったそうです。


『わが家の正月料理が決定した。一つはフォンデュ。スイス料理である。簡単にいうなら、煮立てた白葡萄酒でチーズを溶かしちぎったフランスパンをつけては食べる、というだけの素朴な料理である。発明したのは牛飼いだろう。こいつが滅法うまい。寒い夜親しい友とこれを囲んで、プツプツ煮立つやつをパンにからめとっては口に運ぶと、腹の底から生きる力が沸いてくる。厳格なる自然食主義者の私も、この魅力には抗し難い。ベルンに五日滞在したときは、五日連続でフォンデュを食った。最後の夜などは二人前のフォンデュを食べおわってまだ足りず、さらに二人前注文して、ついにはそれも平らげてしまった。それほど「力」のある料理なのだ、フォンデュというのは。
 だから、そのフォンデュを、東京のとあるスーパーの片隅に発見したときの私の喜びをお察し願いたい。いやア、おどろいたですねエ、あったんですよアナタ、フォンデュが。タイガー印とかいって二人前九百円というインスタント・フォンデュを私は発見してしまったのである。早速買い求めて試験してみると、こいつはイケル!スイスで食べるのと全く変わらない。「正月の料理はこれ」と、直ちに決定し、二十箱注文したら、嬉しいじゃありませんか、年末のせいか、九百円のフォンデュが七百四十円に値下げという、まるでボタ餅で、ほっぺたをなでられるような話なんだなア。』

―出展「正月料理」(『伊丹十三の台所』つるとはな)-




フォンデュへの愛と、東京でフォンデュを見つけたときの嬉しさが伝わってきますね。
伊丹家ではフォンデュのほかにも「粕汁」もお正月料理のひとつだったそうです。
詳しくは「伊丹十三の台所」【つるとはな・定価2,600円(税別)】をご覧ください。お正月料理のほかにも伊丹さんや伊丹家の「食」にまつわる情報が満載です。是非。



スタッフ:川又

2025.01.02 館長・宮本信子から新年のご挨拶

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日々是好日!


心からそうなってほしいと思っております。

何があっても超然としている。


ドシッ!  ドカッ!


いつも笑って私は生きていきたいと思う~~。

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皆様の御来館をスタッフ一同、お待ち申し上げております。


今年も宜しくお願い申し上げます。


館長 宮本信子