こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2025.01.06 伊丹家のお正月料理
記念館便りをご覧のみなさま、あけましておめでとうございます。2025年も伊丹十三記念館をどうぞよろしくお願いいたします。
1月2日更新の宮本信子館長の記念館便りはご覧になられましたでしょうか。まだの方は是非ご覧ください。
2025.01.02記念館便り 館長・宮本信子から新年のご挨拶
さて、みなさまお正月はいかがお過ごしになられましたでしょうか。おせちやお雑煮などのお正月料理をお召し上がりになられましたでしょうか。
ご家庭それぞれに「ならでは」のお正月料理があると思いますが、伊丹十三さんのお宅ではなんと、「チーズフォンデュ」がお正月料理の一つだったそうです。
『わが家の正月料理が決定した。一つはフォンデュ。スイス料理である。簡単にいうなら、煮立てた白葡萄酒でチーズを溶かしちぎったフランスパンをつけては食べる、というだけの素朴な料理である。発明したのは牛飼いだろう。こいつが滅法うまい。寒い夜親しい友とこれを囲んで、プツプツ煮立つやつをパンにからめとっては口に運ぶと、腹の底から生きる力が沸いてくる。厳格なる自然食主義者の私も、この魅力には抗し難い。ベルンに五日滞在したときは、五日連続でフォンデュを食った。最後の夜などは二人前のフォンデュを食べおわってまだ足りず、さらに二人前注文して、ついにはそれも平らげてしまった。それほど「力」のある料理なのだ、フォンデュというのは。
だから、そのフォンデュを、東京のとあるスーパーの片隅に発見したときの私の喜びをお察し願いたい。いやア、おどろいたですねエ、あったんですよアナタ、フォンデュが。タイガー印とかいって二人前九百円というインスタント・フォンデュを私は発見してしまったのである。早速買い求めて試験してみると、こいつはイケル!スイスで食べるのと全く変わらない。「正月の料理はこれ」と、直ちに決定し、二十箱注文したら、嬉しいじゃありませんか、年末のせいか、九百円のフォンデュが七百四十円に値下げという、まるでボタ餅で、ほっぺたをなでられるような話なんだなア。』
―出展「正月料理」(『伊丹十三の台所』つるとはな)-
フォンデュへの愛と、東京でフォンデュを見つけたときの嬉しさが伝わってきますね。
伊丹家ではフォンデュのほかにも「粕汁」もお正月料理のひとつだったそうです。
詳しくは「伊丹十三の台所」【つるとはな・定価2,600円(税別)】をご覧ください。お正月料理のほかにも伊丹さんや伊丹家の「食」にまつわる情報が満載です。是非。
スタッフ:川又