

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2025.04.07 『ヨーロッパ退屈日記』60周年!
記念館には6本のヤマザクラが植えられています。
そのうちベントレーのガレージ脇のヤマザクラが一番に開花して1週間ほど経ったでしょうか、だいぶ葉が多くなってきました。
4月4日撮影
一方、同日同時刻、正面ゲート脇のヤマザクラは――
しーん。
そう離れておらず日当たりなどの環境は変わらないはずなのに、なぜこうも違うのか。ヤマザクラのマイペースぶりには毎年苦笑いしてしまいますが、着々と春本番を迎えつつある松山です。
さて、1965年3月、今からちょうど60年前の春、一冊の書物が刊行されました。
伊丹十三(当時一三)の初の著書、『ヨーロッパ退屈日記』です。
外国映画出演のために渡ったヨーロッパでの体験をあれこれと綴ったエッセイ集は、ポケット文春・単行本・文春文庫・新潮文庫と判型や出版元を変えて読み継がれてきました。
あとがきに
ヨーロッパ諸国と日本とでは風俗習慣はもとより「常識」そのものにさまざまな食い違いがある。わたくしは、これをできるだけ事実に即して書きたかった。
婦人雑誌の広告に、ほら、「実用記事満載!」というのがあるでしょう。わたくしの意図もまたこの一語に尽きるのであります。
とあるように、ためになる話、役に立つ話が続々。ただし、やさしく分かりやすく教えてくれるばかりではありません。
痛烈な批判(これもいわば"ためになる話"ではありますが...)が随所にちりばめられていて、「アイタタ!」となることも。こういう"耳の痛い話"をしてくれるところが著者への信頼を生んで、60年の長きにわたって読者を獲得しているのではないかな、と思います。
『ヨーロッパ退屈日記』さん、還暦おめでとう! でも定年退職しないでくださいね。
企画展示室で開催中の『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』では、4月2日(水)、「私流、伊丹レシピ。」のコーナーに新作スライドショーが登場しました。
伊丹さんが山本嘉次郎監督に捧げた親子丼を、徹底した生産スタイルとおいしさで熱い支持を集めるチーズ農家・吉田全作さんが再現。『遠くへ行きたい「親子丼珍道中」』(1971年放送)へのオマージュです。
伊丹さんの親子丼ってタマネギを使わないんですよね。鶏肉と三つ葉と海苔と卵とお米、そして調味料、だけ。でも厳選したものばかり。吉田さんは、それと同じ産地やメーカーのものを揃えて撮影に臨んでくださいました。
出来あがった親子丼のなんとも魅惑的なこと――ぜひとも展示室でご覧いただきたいので、ここでは伏せておきましょう。ちなみにわれわれスタッフは、全員ノックアウトされました。ご用心のうえご来館ください。お待ちしております!
学芸員 : 中野