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記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2026.11.02 40年前、『マルサの女』撮影快調!

税金を"取る側"の視点で金に翻弄される日本人の姿を描いて大ヒットした『マルサの女』(1987年公開)。

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 ヒロインの板倉亮子(宮本館長)が税務調査官を経て国税局査察部、通称マルサに抜擢され、ラブホテル経営者・権藤英樹(山﨑努さん)の脱税を暴こうと奮闘する物語――

なの・です・が、では、権藤が脱税したお金はどこへ行くのかというと、大部分はあの手この手で隠してあり、一部は政治家への闇献金になっていたりもします。

国会議員が直接かけてきた電話に
「ア、これは漆原先生――議員おんみずから申し訳ありません。
 ハイ、お礼はいずれ折を見まして、いつものルートで」
と応じるや、さっそく準備。

20261102 marusa_1.jpgトランクに詰め込まれる札束。
テーブルの反射で権藤の手元だと分かるのが洒落てますよね。

権藤は蜷川組の事務所を訪れて
「これ議員の漆原に。いつもと同じだ。あっちは例の秘書がくるから」

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と告げ、トンネル役の組長(芦田伸介さん)に託します。
蜷川組長がトランクを運んで"例の秘書"が回収する場面、しばしご覧ください。

 
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夜の坂道での無言の受け渡し、坂の上には国会議事堂――暗くて湿っぽい風景に強い光と弱い光が映えて「犯罪映画を観ている!」という気分を盛り上げてくれるシーンだと思います。

撮影場所は新宿(ゆえに国会議事堂は合成です)、撮影日は1986年11月2日。
すなわち、40年前の今日ですね。

このシーンの撮影にも様々な工夫が凝らされていました。『「マルサの女」日記』(文藝春秋・1987年)の記述を少しご紹介いたしましょう。

 

 

蜷川が国会議員の秘書に闇の政治献金を渡す夜の坂道のシーン。この坂道のロケハンがまだ済んでおらず、パク(白山一城氏)、川崎(隆氏)、(前田)米造さん、桂(昭夫)氏、中村(州志)さんで、夕食そっちのけで場所探し。道、空地、駐車場など見てまわるうち、ふと高速入り口付近の坂道を思い出して全員でそちらにまわる。もろもろの条件ほぼ良好でここに決める。

坂道に車が乗り入れて停車するカット。桂氏、意気ごんで照明にかかるが、いくらやっても画になってこない。逆光気味のライティングなのだが、光強すぎてかえって散漫になり、また秘密めいた雰囲気が出ない。かといってそのままでは暗すぎて写らない。何度も車を乗り入れてみて、結局ヘッドライトが弱すぎるのが原因と考え、ベンツにシネキング(シネマキングライト)をつけてみるように頼む。シネキングは今日の機材に入っておらずにっかつから取りよせることになる。

シネキング到着。オッチャン(落合保雄氏)が心木(3センチ角の角材)と細引きとガムテープなど使ってたちまちベンツの前方にシネキング2基を取りつける。
カメラ坂下に引いて、ベンツ走りこんで停る。坂上に停っていた車にもたれていた男、ヘッドライトの中に歩み出して止まる、まで。
シネキングはやはり映画人が永年愛用した照明機材だけあって、アクセントが強く、いかにも映画らしいヘッドライトとなって男を照らし、その男の巨大な影が遠い建物の壁一杯に出て効果絶大。

 ベンツ、トランクを置いて去り、男、トランクを拾うところまでをワンカットで撮ってしまうことにする。トランクが置き去りになるところへタングステンの光を当て、道全体を水で濡らして撮影。

――いかがでしょうか。
「事前に綿密な計画を立てて撮ったんだろうな」と見えて、実は、当日の現場で作り上げられたシーンだったのですね。伊丹組のみなさんの判断力と行動力のたまもの。
「え~、路面は人為的に濡らしたんだ。そのおかげで、ダークで妖しいあの雰囲気が出ているのね」ということにも唸らされます。ナルホド&イヤハヤ。

そして、このシーンに関してもうひとつ。
映画を観ている間はあまり気にならないであろう点なんですが、闇献金に使われたトランク、ありがちなジュラルミン・ケースとは様子がずいぶん違っていると思いませんか?

「月の石」を地球に運んだことでも有名な、ゼロハリバートンのアタッシュケースです。

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現在は記念館で収蔵しており、春と秋に開催している収蔵庫ツアー(事前応募制・抽選制)で実物をご覧いただけます。
40年前と変わらぬ輝き、性格俳優のような存在感、お客様の目でぜひどうぞ!

学芸員 : 中野

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