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記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2026.10.12 トロリと青い

10月に入り2週間ほどとなりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

最近は日が短くなり、朝晩もかなり冷え込むようになってまいりました。ご近所では金木犀の花が咲いており、柔く甘い香りを嗅ぎながら通勤をしている今日このごろです。

 

大変個人的なお話しで恐縮なのですが、近々イタリアへ新婚旅行に行くことになっておりまして、当日まで指折り数えている最中となっております。結婚して1年半ほど経つので、もう"新婚旅行"というには少し遅い気がするなと思いつつ、一生の思い出になるだろうとツアーに申し込みました。人生初のヨーロッパへの旅行です。

 

さて、ヨーロッパといえば、皆さまはもちろん『ヨーロッパ退屈日記』が思い浮かぶことでしょう。

伊丹さんは『北京の55日』の撮影のためにヨーロッパに長期滞在しました。ヨーロッパで過ごした日々がつづられたエッセイ「ヨーロッパ退屈日記」が、1963年に雑誌『洋酒天国』に掲載されます。こちらの記事をきっかけに雑誌『婦人画報』にて連載がはじまり、書籍『ヨーロッパ退屈日記』が刊行される運びとなります。

ご存じのとおり、『ヨーロッパ退屈日記』では、映画、ファッション、車、お酒、食など多岐にわたるエッセイがまとめられております。イタリアが関係するエッセイとしては、やはり「スパゲッティの正しい調理法」や「スパゲッティの正しい食べ方」が有名ではないでしょうか。「スパゲッティの正しい調理法」ではスパゲッティの茹で加減として"アル・デンテ"という言葉が出てまいりますが、日本で一番初めに"アル・デンテ"をという言葉を紹介したのは伊丹さんではないかという説もございます。

 

s-IMG_9127.jpg常設展示室にて展示中のエッセイ「ヨーロッパ退屈日記」が掲載された

雑誌『洋酒天国』

 

そんな『ヨーロッパ退屈日記』の中で、イタリアに関するエッセイで特に好きなものがこちらの「イタリーびいき」です。

 

イタリーは美しい国である。旅行案内書ふうにいうなら、「風光明媚」である。

イタリーを思うことは、たとえば、遠く過ぎ去った夏を思うに似ている。常に陽がさしているのだ。底抜けに明るい陽の光が、いつもいつも満ち満ちているのです。空が、トロリと青い。風が吹いて、樹々の葉がきらきらと光る。葡萄の畑、オリーヴの丘がなだらかに、ゆるやかに起伏する。いかにも「粛然」という面持ちで、くろぐろと直立しているのは、あれは糸杉である。

家々の、クリーム色の古い壁、その浅い屋根の、煉瓦色のつらなり。しんとした村の広場には背の高い、四角な塔が濃い影を投げているだろう。黒ずくめの老婆がひとり、杖にすがって、日の中を渡って行くのだって見ることができるに違いない。

(『ヨーロッパ退屈日記』より「イタリーびいき」)

 

s-IMG_9128_1.jpg『ヨーロッパ退屈日記』

 

映画や旅番組を見ていて思うのは、イタリアには一年を通して温かな陽ざしや青い空であるイメージが私の中に強くあるということです。日本の夏も同じく青い空のイメージがありますが、「空が、トロリと青い。」と伊丹さんがエッセイで書いているとおり、イタリアは何故だかその青が「トロリと」している気がするのです。

最近はすっかり秋模様となり、日本とあまり変わらない緯度に位置するイタリアも朝晩が冷え込んでいるそうですので、空の青さも少し柔らかく霞んでいると思われます。ですが、できることなら、映画やテレビで見たあの特徴的な空の青さを、実際に見ることができればなあと思っております。

 

さて、ニュース欄でも告知を開始しておりますが、12月5日(土)14時より、第3回目の展示室トークを開催いたします。

記念館の展示の楽しみ方を学芸員がお話しする催しとなっており、常設展示室に入ってすぐ、館長挨拶・特報映像コーナーにて行います。ご入館料だけで気軽にご参加いただけるようなスタイルとなっておりますので、お立ち寄りの際はぜひご参加いただけますと幸いです。

 

学芸員:橘

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