記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2023.06.26 蝋梅の植樹


記念館便りをご覧の皆さまこんにちは。
去る5月30日、松山が梅雨入りした翌日に、伊丹十三記念館の庭に蝋梅(ロウバイ)を植樹いたしました。

蝋梅とは、この辺りでは、ちょうどお正月ごろに黄色い花を咲かせる落葉樹です。
その名の通り、蝋で作ったような質感の花が咲きます。
雨の中、トラックの荷台に乗せられ、全長3、4メートル程ある立派な蝋梅が記念館に到着しました。

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植え付けする位置は伊丹十三記念館の設計を手掛けて下さった中村好文先生と、当館の宮本信子館長の二人が以前来館した際に相談し、決まっていたのです。

記念館の玄関のすぐ正面の南側の場所です。現場で細かい位置や向きを決定しました。


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遠くからも確認をして決定したのち、


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その場所の土を掘り起こして


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掘った穴の底には水はけを良くするパーライトを敷き詰めます。


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そうして、掘り起こした土に土壌改良効果のあるバーク堆肥を混ぜ...


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その後、掘った穴に蝋梅を入れ...


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バーク堆肥と混ぜた土を戻し...


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無事、植樹が完了しました。

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ちなみに植樹の1時間ほど前の記念館。


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植樹後の記念館。


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全体で見ると、植えたばかりとは思えない、16年前からここにあったような佇まいです。

足元も表面の芝をまるでパズルのように綺麗に元に戻してくださっており、違和感0です。


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後日、晴れた日の蝋梅。


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実もついててかわいいです。


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蝋梅の花言葉は「先導」「先見」「慈しみ」「優しい心」「愛情」「慈愛」「ゆかしさ」だそうです。花が咲く冬が来るのが楽しみです。
ご来館の際には新入りの蝋梅も是非ご覧ください。





6月27日(火)から7月14日(金)まで、
伊丹十三記念館は 臨時休館 いたします。





スタッフ:川又

2023.06.19 企画展の終了と臨時休館につきまして

あれはたしか記念館の裏手で、先週末のことだったでしょうか――
私の頭上を一匹の虫がバタバタと飛んで行くのを見て「ああ、セミだな」と思いました。「気の早いこと、まだ梅雨も明けないうちからセミの合唱を聞かされるのか」とも。
しかしそれから声は聞かれず......ハテ、あれをセミと思ったのは見間違いだったのか、ウッカリと早すぎる羽化をやらかしてしまった一匹のセミとの、たまさかの邂逅であったのか......

毎年夏、館の庭じゅうの木に「セミの縦列駐車」がこしらえられるのは、ひそかな記念館の風物詩。ですが、2階建ての建築の真ん真ん中にある中庭の桂までもがセミでいっぱいになるのは不思議でなりません。セミって案外と高く飛べるものなんでしょうかねえ。

20200817_cicada.JPGこちらはセミの"羽化ラッシュ"の模様です
(2020年7月下旬・記念館の中庭にて)

さて皆さん、ニュース欄や開館カレンダーでご案内しておりますが、本日はあらためて重大なお知らせを申しあげます。

「男も女も1億総おじさん化!」を目標に続けてきた『おじさんのススメ ― シェアの達人・伊丹十三から若い人たちへ ―』展、ちょうど1週間後の6月26日(月)が最終日となります。

「おじさんとは何ぞや」「おじさんになることの素晴らしさ」をまだご存知ない方、まだ「おじさん化」できていない方、「おじさん度」がまだちょっと足りていない方――稀代のおじさん・伊丹十三に学ぶことができるのは、あと1週間でございますよ。
ぜひぜひ、ぜ・ひ、会期中にお越しくださいませ!!

『おじさん』展を終了後は、6月27日(火)から7月14日(金)まで全館臨時休館の期間を頂戴いたしまして、次期企画展への展示替え工事を行わせていただきます。

「展示替え」と聞いて思い浮かべるのは、色々なドキドキワクワクもさることながら、終了した展覧会の陳列資料を撤去して空になった部屋に立った時の、目が回るほどの焦燥感です。

たとえば、『旅の時代』展を終えて――

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こんなふうに企画展示室がカラっぽになったときも、

その次の『ビックリ人間』展を終えて――

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再び企画展示室がカラッポになったときも、
この部屋をまた展示品でいっぱいにしなくてはならないとは!!
自分の構想した展示空間に仕上げるなんてことが果たして可能なのだろうか!!
と心の臓がバクバクしたものでした。

現在の『おじさんのススメ』展

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も、終わればまたカラッポになるわけですが、今回はもっとバクバクしております......

なにしろ、今ある展示台も壁面も全撤去(あ、併設小企画「伊丹万作の人と仕事」コーナーは残ります、ご安心ください)、これまで以上にカラッポにして次の展覧会を作ることになっているのです。

ということは、ですよ、7月15日(土)からはガラリと様変わりした企画展示室をお楽しみいただけるようになる、ということ――そうなるように、鋭意準備を進めております。
(が、主催館の学芸員としては、半ば更地のようになった企画展示室の景色を見るのがちょっぴり楽しみなような...怖いような......)

次期企画展の詳細は追ってお知らせいたします。ゴージャスなお知らせになること必至、お楽しみにお待ちくださいませ!

わたくしは心臓を鍛えるべく、ハツを食べて頑張ります――!

学芸員:中野

2023.06.12 洗車

6月も3週目、四国地方は梅雨真っ只中となっておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

 

記念館では先週、ベントレーの洗車を行いました。普段から埃や虫を払ってはおりますが、カーシャンプーを使用しての洗車は汚れがしっかり落ちるのでとても綺麗になります。ワックスもかけて艶々になったベントレー。ご来館の際は是非ご注目ください。

 

 

 

s-IMG_4583.jpg洗車したベントレー

 

 

s-IMG_4584.jpgエンブレムもぴかぴかです

 

 

 

定期的に洗車をしておりますベントレーですが、その度に思い出してしまうエッセイがございます。それは、ガレージにも書かれております、「猫の足あと」です。

 

s-IMG_4592.jpgガレージに書かれているエッセイ

 

 

 

 私がロータス・エランを赤にしたのは、こいつなら赤でも目立たない、と思ったからでありますが、さらに念を入れるなら、この車はよごれっぱなしのほうがいい。埃や泥はもちろん、小さな引っかき傷や、軽いへこみも、そのままにしておいたほうがいい。

 私の分類では、こいつは、雨具や履物の部類に属する。仕立ておろしのレインコートや、ま新しい靴というのが、どうにも気恥ずかしいものであると同様、車も、ある程度薄よごれた感じのほうが、私には乗り心地がいい。

 ま、そういうわけで、私は自分のロータスを掃除しないことにしている。昨年の暮には、ひと月ばかりガレージにいれっぱなしにしておいたから、実にいい具合いに埃がつもって、その埃の上に猫の足あとなんかついて、ほとんど私の理想に近い、芸術的なよごれをみせるようになった。

 私は、この埃の上に、指で絵を描こうと思った。そうだ!注連飾りの絵を描いて年始に出よう、と思った。

(『女たちよ!』より「猫の足あと」p203~204)

 

 

ご存知の方も多くいらっしゃると思いますが、伊丹さんは汚れた状態の車が好きだったそうです。猫の足あとがつくほど埃がつもっていることを、「ほとんど私の理想に近い、芸術的なよごれ」と称したくらいですから、このエッセイのロータス・エランはよほど気に入った状態だったのでしょう。

そして、このエッセイにはまだまだ続きがあるのです。

 

 

 ところが、だめだったのだな、これが。大晦日の午後、ガレージの扉をあけてみて、私は愕然となった。だれかがガレージを掃除したらしい。すっかり洗いきよめられた、すがすがしいガレージの中に、これまたぴかぴかに磨き上げられた赤いロータスが置いてあった。

 心なき業にこそ! 私は、今またロータスの埃が積もるのを待っている。

 だから、正月になってから、まだ一度も車に乗っていない。

(『女たちよ!』より「猫の足あと」p204)

 

 

なんと、洗車して綺麗になった車には乗らなくなってしまったのです!

エッセイの中では赤のロータス・エラン、記念館で展示しているのは黒のベントレーと、色も車種も全く違うのですが、洗車をしていると「あぁ、こんなに綺麗になってしまったら、伊丹さんは埃が積もるまで乗らないんだろうな...」だなんて考えてしまいます。

 

 

s-IMG_4593.jpg洗車の際はガレージの床まで洗います

伊丹さんのいう「洗いきよめられた」状態です

 

 

 

それでも、洗車をした車体は艶々していて、とても綺麗で...。やっぱり、お客様にはぴかぴかの状態でご覧いただきたいと思うのです。心の中で伊丹さんに謝り倒しながら洗車したベントレー。記念館で実際にベントレーをご覧いただいた際には、エッセイも一緒に思い起こしていただけますと幸いです。

 

 

 

s-IMG_4595.jpg企画展示室出口付近にございます

『ミンボーの女』プログラム

 

 

 

さて、今週は「記念館で伊丹十三の映画を観よう!」の開催がございます。今月は13日が火曜日で休館日のため、翌日14日の水曜日の開催となります。常設展示室にて13時より『ミンボーの女』を上映いたしますので、ぜひご覧ください。

皆さまのご来館をお待ちしております。

 スタッフ:橘

2023.06.05 ご来館の記念に

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

先月5月15日の開館記念日に、宮本信子館長の開館記念メッセージをこの記念館便りに掲載いたしました。

「5月15日・伊丹十三記念館は16周年を迎えました!」

お客様から「宮本館長のメッセージ読みました!16周年おめでとうございます」と、直に嬉しいお言葉をいただくということもありましたが、そのメッセージの中にこんな言葉があります。

" 私はなかなか行けませんが、何より楽しみにしておりますのが
「みなさまの声」です。
パソコンの文字に挨拶をし、
ありがとう!と返事をしています~~~(笑)大きな声で~~~(笑)"

この「みなさまの声」について、少しご紹介させていただきますね。

記念館を訪れてくださった皆さまに記念館の感想をお聞きし、記念館サイトをご覧の方々に記念館の雰囲気の一端を感じていただけるよう、サイト内に設けられたコーナーのことです。TOPページからアクセスしてご覧いただけます。

0605_1.pngTOPページ右上のところをクリックしてください。

 

 

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「みなさまの声」コーナー

 

スタッフがお渡しする「みなさまの声」用紙に記入していただき、記念館のカメラで撮ったお客様のお写真(撮影・掲載許可をいただいたお客様に限ります)、もしくは伊丹さんの描いた猫のイラストと並べてご紹介しています。
記念館便りをご覧の皆さまの中にも、書いたことがあるという方がいらっしゃるかもしれませんね。

0605_3.jpg「みなさまの声」記入用紙

お寄せいただくお言葉は本当にいろいろで、展示、建物、中庭、カフェで感じたこと、来館したきっかけ、どのように伊丹さんを知ったか――中には伊丹さんを実際に見かけたり話したりしたことがあるなど、伊丹さんに関するちょっとしたエピソードを書いてくださる方もいらっしゃいます。

スタッフがお声がけして書いていただくことが多いのですが、「みなさまの声」のことをもともとご存知で「ぜひ書きたい!」と逆にお申し出いただくこともあります。
皆さまが書いてくださった「みなさまの声」が、別の方の来館のきっかけになることも少なくないんですよ。大変嬉しい " 口コミ " です!

宮本館長はもちろんのこと、関係者・スタッフも楽しみにしている「みなさまの声」を、ご興味のある方はぜひご覧ください。
そしてご来館の際は、ぜひお客様のお声をお聞かせくださいね。

スタッフ:山岡