こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2026.09.14 第18回伊丹十三賞 贈呈式を開催いたしました [1]
ニュースや記念館のInstagramでご覧くださった方もいらっしゃると思いますが、去る9月7日(月)に第18回伊丹十三賞の贈呈式を、東京・国際文化会館で開催いたしました。
贈呈式当日、関東は前の晩からの大雨の予報のため電車が止まったり、バスにも遅れが出たりと心配な状況でしたが、お足元の悪い中でもたくさんのお客様がご来場くださいました。
贈呈式につきましては、今週、来週と2回の記念館便りに分けてレポートいたします。

第18回伊丹十三賞をご受賞くださった、翻訳家としてご活躍中の岸本佐知子さんのプロフィールや賞の概要はこちらをご覧ください。
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贈呈式は、進行役を務める玉置泰館長代行の挨拶に始まり、この度の受賞者・岸本さんと、授賞理由が紹介されました。
授賞理由は「現実世界をひょいと裏返してみせるような、翻訳とエッセイのオリジナルな仕事に対して」です。
続いて選考委員の3名と宮本信子館長の紹介があり、選考委員の酒井順子さんから祝辞が贈られました。
祝辞 選考委員・酒井順子さん
岸本佐知子さん、この度は伊丹十三賞ご受賞おめでとうございます。
本当に伊丹十三賞にぴったりなご受賞者ということで、すごく嬉しく思っております。
選考委員を代表して一言ご挨拶をさせていただきます。
【※】
翻訳書であれエッセイであれ、"岸本佐知子"という名前が本の表紙にあると「あ、これはもう間違いなし」っていうふうに思う感覚っていうのは、本好きの方だったら誰でも持っているものと思います。
つい最近もミランダ・ジュライの本が出ましたけれども、岸本さんは全てご自身で本を選んで翻訳されているというふうに伺ったことがあります。
その岸本さんの目にかなった作家たち、他にもルシア・ベルリンとかリディア・デイヴィスとか沢山の方がいらっしゃいますけれども、そういう多くの作家を岸本さんのおかげで私は知ることが出来ましたし、全く知らなかった作家でも岸本さんが良いと思われるのであれば絶対に面白いだろうと思いますし、読めば本当に面白いという海外文学の豊かさと奇妙さみたいなものを教えていただきました。

エッセイも唯一無二の存在感で、エッセイってよく「これなら私にも書ける」って思われがちなんですけど、岸本さんのエッセイは「こういうエッセイを書きたい」って思う人はいると思うんですけれども、「書ける」って思う人はいないと思うんですよね。
(書籍を持って)こちらの『あれは何だったんだろう』は、雑誌「ちくま」に連載されたもので、さっき伺ったら20年以上連載が続いているそうです。
その中で4冊目になるんですけれども、雫がゆっくりと一滴ずつ垂れるかのように本が出てくる、そのタイミングを私たちはすごく楽しみにしております。
岸本さんのエッセイを読んでいると、日常のことを書かれているんですけれども、ある瞬間にふとドライブがかかって、何かエッセイの枠というものをぶち壊していくっていう。その様がなんか可笑しいを通り越して怖くなってきます。(場内笑)
翻訳と比べると、自分で考えて書くエッセイはすごく辛いし苦しいって、よくエッセイに書いていらっしゃいますけれども、あと子供のころから作文が苦手だったとも書いておられます。
もし本当にそうなのだとすると、苦手な気持ちの中から垂れてくる、にがりのような汁がですね(場内笑)、文章を固めていくっていうのかな、というふうに私は思っています。

伊丹十三さんもまた翻訳を手掛けていらっしゃって、エッセイの名手としても知られています。
やはり、そこには何かを壊していく力があるように思うんですね。
はじめての著書である『ヨーロッパ退屈日記』、やっぱりそこにも、それまでの随筆にはなかった文体と内容というのがあって、随筆の枠というものをぶち壊していった。当時の若者の心を鷲掴みにした本でした。
そういう本が、日本において随筆をエッセイに変えたっていうふうに言われております。
翻訳でも非常に挑戦的な試みをされていますし、こういう"壊す力"みたいなものが岸本さんと共通しているのかなと思っております。
そんなことで、伊丹十三賞にふさわしい受賞者を選ぶことが出来て、心より嬉しく思っております。
これからも岸本さんに新しい世界を見せていただければ嬉しく思います。
本日は誠におめでとうございました。(場内拍手)
正賞(盾)贈呈 選考委員・周防正行さん

【※】
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本日は、祝辞と正賞である盾の贈呈までご紹介をさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか。
岸本さんはもちろん、ご来場のお客様もとても和やかな雰囲気で酒井さんの祝辞を聞いておられ、声をあげて笑っていらっしゃる方もたくさんおられました。
エッセイストの酒井さんならではの、岸本さんの文章の魅力をふんだんに感じられる祝辞で、私も会場で写真を撮っている手を止めて聞き入ってしまいました。特に、岸本さんのエッセイについて「ある瞬間にふとドライブがかかって、何かエッセイの枠というものをぶち壊していく」とおっしゃられたところで、自分が勝手に抱いていた「エッセイだけどちょっとSFっぽいな、面白いな」という印象と重なるところがあり、印象的でした。

来週の記念館便りでは、宮本館長の副賞の贈呈から、いよいよ受賞者・岸本佐知子さんのスピーチまでお届けさせていただきます。
来週もお楽しみに!
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【※】の写真は、撮影:池田晶紀さん(株式会社ゆかい)、
撮影協力:株式会社ほぼ日のみなさんです。
学芸員:橘
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