記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2021.05.31 印伝

記念館グッズショップでは印伝(いんでん)を取り扱っています。印伝とは鹿革に漆で模様付けを行う技法で知られる甲州地方の伝統工芸品です。なぜ記念館のグッズショップで印伝の取り扱いをしているかというと、伊丹さんが印伝の愛用者だったからです。

「印傳屋 十三代上原勇七」さんのものです。

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私も印傳屋さんのお財布を使っています。あじさい柄です。

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実は、グッズショップの印伝を発注する際に、印傳屋さんのカタログで見かけたこのあじさいの柄に一目ぼれし、後日、個人でインターネットにて購入した次第です。1年ほど使っていますが、鹿革は軽く柔らかく、大変気に入っています。

現在、グッズショップの店頭にはこの同じあじさい柄の「小銭入れ」が並んでいます。

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かわいい。

伝統工芸品というと何となく古風なデザインのものをイメージする方も多いかと思いますが、印傳屋さんのサイトを拝見しましたところ、昔ながらの伝統的な模様に加え、常に新しい模様の開発がされているということです。ちなみに、伊丹さんはこちら「青海波(せいがいは)」がお気に入りだったそうです。記念館でももちろん取り扱っています。

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展示室内にも伊丹さんが愛用していたこの青海波のペンケースを展示しています。ご来館の際にはお見逃しなくご覧ください。

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【記念館近くの土手に咲いていたあじさいです。
松山では今まさにあじさいが見頃を迎えています。】


スタッフ:川又

2021.05.24 『お葬式』シーン16

5月15日は伊丹十三の誕生日にして開館記念日。おかげさまで14周年を迎えることができました。皆々様のご愛顧とお力添えに心よりお礼申しあげます。

開館記念日というと、初夏らしい好天に恵まれることが多かったように記憶しているのに、どうしたことか、去年・今年と2年連続の雨......

しかも、今年は梅雨入りの日となりました。統計史上、最も早い梅雨入りだとか。

そんなお天気もあいまって今年も静かな開館記念日となりましたが、記念日でなくとも今年でなくても、スタッフ一同ずっとお待ちしております。
状況よろしきまたの機会に、ぜひぜひお越しくださいませ。(宮本館長からの14周年メッセージもどうぞ!)


さて、そういうわけで、雨に関連した話題をひとつ。
伊丹映画には印象的な雨の場面が数々ありますが、監督デビュー作の『お葬式』には"幻"となった雨のシーンが――というお話です。

映画の序盤、主人公の侘助・千鶴子夫妻が揃ってCM撮影に臨んでいる最中に、千鶴子の父・真吉の急逝を報せる電話が入ります。
千鶴子の両親の伊豆の住まいで葬儀を行うことに決めた後、撮影所から帰宅する道々の景色と夫婦の会話が「シーン16」として計画されていました。

本編で言うと、このシーンと

20210524_osoushiki1.png「おいおい、冗談じゃないよ。うちで葬式なんてたまんないぜ」
「三河で親戚の世話になって、気兼ねしながらやるのはいやなのよ、ばあちゃん。
それに、じいちゃんも伊豆が好きだったしね。ね、頼むわよ――」

このシーンの間にあたるところで、

20210524_osoushiki2.png雷雨の中、帰宅

20210524_osoushiki3.png侘助と千鶴子の家。
祖父の死を子供たちに伝える侘助の様子を
支度しながら鏡越しに見守る千鶴子

シナリオには、このように書かれています。


激しい雨。侘助のポルシェと里見のシティが、雨の田園風景の中をひた走る。
次第に市街地へ。
信号で止まる。側溝に溢れる水。傘の群れ。
雨に光る舗道。雨の中の子供たち。
侘助「子供たちはどうするかね」
千鶴子「連れていくしかないでしょ?」
侘助「連中もついに死んだ人を見るわけか」
千鶴子「見せないほうがいいかしら――私は見たことないわよ。だから恐くって。私、死んだ人見るの初めてなんですもの」
侘助「俺は親父が早く死んだからね、そういう意味じゃ、馴れてる」
車、人通りの多い商店街にさしかかっている。
灯ともし頃の商店街は買い物客で賑わい、妙に生き生きと懐かしい。
侘助のポルシェ、人の傘をかきわけるようにしてのろのろと進む。
侘助「子供たち、連れて行こう。死んだ人っていうのも一つの現実だからね、現実を現実として向かいあって悪いわけはない」
千鶴子「あなた、子供たちにちゃんと説明しなきゃ駄目よ」
車、閑静な住宅街に入ってゆく。

親を亡くした夫婦もまた親であり、突然の出来事に親としてどう振る舞うべきか悩む......二人の立場が初めて表されるはずだったこのシーン16は、撮影はされたものの、編集過程で惜しくも削られたのだそうです。


シナリオ段階で2時間を大きく超えることが分かっていながら敢えて書いたとおりに撮影し、つないでみてから刈り込んでいく、というやり方で作られているため、これ以外にも使われなかったシーンやカットはいろいろあったようでして......


ハイ、「撮ったのに使われなかったシーンが!?」「そんなの残念すぎる!!」と思ったそこのアナタに朗報。

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記念館オリジナル&限定販売の『映画「お葬式」シナリオつき絵コンテノート』(税込770円)には、そんな"幻"のシーンももれなく収録。ノーカットのシナリオと、全シーンにわたって準備されたという絵コンテを併せてお楽しみいただけます。

お家の中で雨音を聴きながら雨のシーンを"読む"、なかなかの風情と想像されます。
よろしければどうぞお試しくださいませ。

学芸員:中野

2021.05.15 5月15日・伊丹十三記念館は14周年を迎えました!




5月15日・伊丹十三記念館は

14周年を迎えました!




5月15日は伊丹十三の誕生日です。
亡くなって23年、、、生きていたら88歳~~米寿!

皆さまお変わりありませんでしょうか?大丈夫でしょうか?

心を落ち着かせ、バラの香りを胸一杯吸いますと、
まだ普通の日常がある......私は少しの幸せを思います。

もうすぐ!ワクチン接種する所まで辿り着いた!
少しずつよくなる~~絶対!
私は信じています。

今は松山に行けない!
まだ、記念館の受付に立ちお客様をお迎えできない!
ないことばかりで~~(笑) もう笑うことしかありません。

私は希望を持ちます~~もうすぐ~~行けます。

その時には、手がちぎれるくらい握手して~~(笑)
大いに写真撮影をいたしましょう~~ね!

記念館は細心の注意をしております。
桂の木も青々としていて、スックと立ち
風が吹くと葉っぱが喜んでいるようです。

スタッフ一同、お待ちしております。
是非お立ち寄り下さいませ~~。
そして、御自愛下さいますように~~。





感謝

宮本信子


2021.05.10 映画鑑賞の記録に

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。

突然ですが、皆さまの中に、観た映画について記録をしている、という方はいらっしゃるでしょうか。
先日久しぶりに電話で話した友人がこの記録をつけていて(「読書日記」のように「映画日記」というのでしょうか)、そのつけ方がちょっと面白いなぁと思ったので、少しご紹介させていただこうと思います。

「記録をつける」というと、ノートや手帳、スマートフォンアプリなどを思い浮かべるのですが、その友人が記録をつけているものは「映画ポストカード」です。
映画のポスターやチラシ、出演俳優、キャラクターなどがプリントされたポストカードに、その映画を観た日付や状況、感想、好きなセリフなどを書きとめ、飾ったりファイルに綴ったりしているそうです。
ポストカードにこんな使い方があるのか~と感心しつつ、確かにそんな記録でしたら、あとになって自分で見てもわかりやすく、誰かと一緒にそのポストカードを見るのも楽しそうだなぁと思いました。
全部は難しいと思いますが、関連したポストカードがあってそれを入手できる映画であれば、そんな記録の仕方も面白いのではないでしょうか。

ご来館のお客様からよく「伊丹映画が観たく(観返したく)なりました」というお話をうかがいます。
記念館のショップでも、伊丹監督映画作品のポスターがプリントされたポストカード10種類を販売していますので、伊丹映画をご覧になった記録としてこのポストカードに「映画日記」を書いてみるのはいかがですか?

ショップ店頭では10作品それぞれのポストカードの単体やセットをお買い求めいただけます。セットについてはオンラインショップでも取り扱っていますので、ご興味を持たれた方はぜひお試しください。

20210510-1.jpg記念館ショップポストカード売り場

 

20210510-2.jpgポストカードセット(映画ポスター)

 

スタッフ:山岡

2021.05.03 ヤマボウシの魅力

今年もヤマボウシの花が咲き始めました。


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このヤマボウシは、春先に力強く芽吹くところも、その後白い花が咲くところも、紅葉の美しさも、落葉後の枝ぶりまで、1年を通してずっと美しいのです。美しくない時期が一瞬もない!今は上の方から順に花がついてきています。


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聞くところによりますと、植物には朝日が当たり、西日が当たらないという環境が良いそうですが、記念館のヤマボウシは、それと真逆、東側に建物があり朝日は当たらず、西側には遮るものがなく、日が沈むまで西日が当たり続けるという厳しい環境にいながらも、健気に頑張っています。


さて、いくらヤマボウシが美しいと言いましても、やはりシンボルツリーの桂をスルーするわけにはいきません。新緑の美しさには毎年惚れ惚れいたします。何度同じことを記念館便りに書いたかわかりませんが、毎年毎年感心いたします。葉の丸い形、葉が薄いところ、鮮やかな黄緑色、どれをとっても、とにかく美しい。


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一人でも多くの方に見ごろの木々たちをご覧頂きたいと思います。ご来館の際にはお見逃しなくご覧下さい。





スタッフ:川又