こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2021.03.29 中庭のベンチ
先週、先々週と春の記念館をお届けしていますが、この時期、ご来館のお客様にお試しいただきたいのが「中庭の回廊にあるベンチに座ること」です。
奥行きの浅い「PERCH BENCH(止まり木椅子)」と呼ばれるこのベンチは、記念館を設計された建築家・中村好文さんのデザイン。中庭をはさんで向かいあうように2つ設置されています。
座ると桂の木が自然と目に入るなどオールシーズンおすすめの場所ではあるのですが、特に今の時期――冬が終わり春を迎えるこの頃は、過ごしやすい気温も手伝って、おだやかな陽射しや吹く風が本当に心地よく感じられるんです。雨の日も、冬場と異なりどことなくやわらかい印象を受けます。
「日に日に」という言葉がぴったりなくらい、黄緑色の葉っぱが次々に芽吹く中庭の桂をご覧いただけるのもこの時期ならではです。タンポポも咲きはじめましたので、おひとりで、またはお連れ様と一緒にベンチに座って、ゆっくりと寛いでいただきたいなぁと思います。
実際3月になってから、このベンチに腰掛けるお客様の姿を目にすることが多くなってきました。
記念館にお越しの際は、ぜひ座ってみてくださいね。
スタッフ:山岡
2021.03.22 春の伊丹十三記念館
3月17日の水曜日に出勤しましたら、ベントレーのガレージそばのヤマザクラが咲いていました。
15日の月曜日に見た時は咲いていなかったというのに。
そして19日の金曜日にはほぼ満開になっていました。
先週の記念館便りでもお伝えした通り、伊丹十三記念館にもいよいよ春がやってきました。
ヤマザクラの足元には、所々赤ちゃんヤマザクラの姿も見えます。
ユキヤナギも満開です。小さな白い花と葉の黄緑色がとにかく可愛い。
そして今年も、桂の下に、ユキヤナギ。
そしてトサミズキの下にも、やっぱりユキヤナギ。
植えたのは一か所ですが、自力でどんどん陣地を増やしています。
しかしトサミズキの下のユキヤナギも、桂の下のユキヤナギも、あまりにも可愛すぎてどうも刈り取る気にはなりません。
私以外の記念館スタッフも同じ考えのようで、誰も刈り取る様子がありません。
「結局、美人は得をするようになっているんだわ」と、ユキヤナギを見ると感じます。
記念館の周りの土手の菜の花も見事です。
皆様もご来館の際には美人のユキヤナギに、満開のヤマザクラ、菜の花、そして芽吹き始めたシンボルツリーの桂など、伊丹十三記念館の春をご堪能下さいませ。
あと、つくしも生えていました。
スタッフ:川又
2021.03.15 菜虫化蝶(なむしちょうとなる)
3月も半ばに入り、寒さもずいぶん緩んできました。
先日友人から届いた便りに「山笑う」の文字があり、「あぁほんとうに」とうなずきました。身近にある里山のあちこちで花が咲きはじめ、眠っていた山は確かに笑いはじめています。皆さまがお住いの地域はいかがでしょうか。
冬枯れの景色にも味わいがありますが、春を告げる花々が順々に開いていくよろこびと心弾む感覚は、寒さで縮こまった体と心をほぐしてくれるようでほんとうにありがたい、歳を重ねるごとにそう感じるようになりました。今年も、梅・万作・寒桜・木蓮・木瓜......移ろう花とともに春を実感しています。
先日、季節の変化を表す「七十二候」をなにげなく見ていましたら、毎年3月10日~14日頃は「桃始笑」、文字通り桃の花が咲きはじめるころとありました。七十二候は一年を72に分けてひと区切りを約5日とする短いものですが、天候や植物の移ろいをピンポイントで示してくれるのが楽しく、いまの時期はなんだろうとつい調べたくなります。
そういえば、わたしは今年まだ桃の花を見ていません。咲いている場所へ行ってみたいものです。
記念館の庭木からも春を感じます。こちらは、正面入り口前のユキヤナギとトサミズキ。
ユキヤナギ
トサミズキ
どうぞ、展示とあわせて刻々と姿を変える庭木たちにも会いにいらしてくださいませ。折々の庭木の表情をご覧いただけることと存じます。
ところで、この記念館便りの公開日(3月15日)は七十二候では「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」、虫が蝶に羽化するころ。二十四節季でいう「啓蟄」の結びですね。
偶然にも、手紙に「山笑う」と記してくれた友人への返事に菜の花のそばを蝶が舞う絵葉書を選んだところでした。家庭菜園をなさる方からは、野菜の葉を食べてしまう菜虫はやっかいだと聞きますが、毎春あちこちの家庭菜園を舞う蝶の軽やかな姿に思わず目を奪われてしまうわたしです。
スタッフ : 淺野
2021.03.08 アンソロジー
伊丹十三のエッセイを収録したアンソロジーが、2月、3月と立て続けに刊行されました。
『作家の手料理』と『作家と猫』。どちらも平凡社からの刊行です。
『作家の手料理』のほうには「スパゲッティの正しい調理法」(『ヨーロッパ退屈日記』新潮文庫)、『作家と猫』には「わが思い出の猫猫」(『再び女たちよ!』新潮文庫)が、さまざまな作家の名エッセイとともに収録されています。
どちらも何かと取り上げていただくことの多いエッセイなので、伊丹十三の著書以外で読んだことあるよ、という方もいらっしゃるかもしれませんが、ごく一部を抜粋してご紹介しますと――
これは断じてスパゲッティではないのです。これをスパゲッティだという人は、銀座あたりにあるアメリカ人目当てのスーヴェニア・ショップに行ってもらわねばならぬ。そして絹のキモノ・ドレスとかいうものを買っていただく。そして、それを着て、ハイ・ヒールで街を歩いてもらおうじゃないか。わたくしはそう思います。
しからば、真のスパゲッティとはどういうものなのか。
「スパゲッティの正しい調理法」『ヨーロッパ退屈日記』(1965)より
猫の意識において、猫という種族は人間とまったく対等の種族なのである。いや、ことによると、猫は自分を人間であると思っているのかも知れぬ。
そういえば時に猫は、はしゃぎまわる小児のようであり、時に猫は、哲学的な瞑想に耽る老人のようでもある。
「わが思い出の猫猫」『再び女たちよ!』(1972)より
ところで、エッセイのアンソロジーというと、学生の頃に本屋さんでよく見かけた、作品社の『日本の名随筆』シリーズ(1982-99年刊行)を思い出します。
最近あまり見なくなったように思いますが、なにしろ本巻・別巻で全200巻の一大シリーズ、統一されたデザインで書棚にズラリと並ぶ光景、背表紙の編者名は大作家ばかり。それはそれは迫力がありました。
心惹かれながらついに一冊も買えなかったんですけど、そんなことも含めて懐かしく、また、「もしや...」と調べてみましたら、伊丹十三のエッセイ「猫」と「鯉コク」の2篇がこのシリーズに収録されていました。テーマはそれぞれ『猫』(編者:阿部昭さん)と『肴』(編者:池波正太郎さん)。
そしてさらに調べますと、伊丹万作のエッセイも2篇、市川崑さん編『顔』と、天野祐吉さん編『広告』にありました。
ああ、やっぱり、あの時、少しずつでも手に取っていたら、もう少し早く――ほんの数年ではあるけれど、もう少し早く、伊丹万作・十三父子の文章に出会えていたのに。
一冊も買えなかった理由を思い返してみるに、書棚に鎮座する巨大シリーズにおそれをなした、とか、大人の読み物に思えた、とか、単なる懐具合ということもありますが、たぶん、一番には「アンソロジーって、おいしいとこ取りのツマミ食いみたいじゃない? それってちょっと虫がよすぎない?」というような考えが邪魔をしていたのだと思います。
若さゆえの潔癖症、と言えば通りがいいかもしれませんが......なんと愚かで損な考えかと悔やまれます。(20年前にタイムスリップして、当時の自分をトッちめたいですね!)
幾年月が過ぎて今、伊丹十三とさまざまな作家のエッセイが編み込まれたアンソロジーを読んで感じるのは「友達の家に遊びに行って、友達のお母さんのごはんをご馳走になる」のと非常に近い気持ちです。
「まったく知らない材料や調理法にビックリ、とかはなかったんだけど、自分ちではやらないお料理がいろいろあって、ちょっと世界が広がった」というあの感じ。つまり、楽しいではありませんか!
そればかりか、巻末の出典情報なんかも熟読したりして「次に本屋さんに行ったらこれ買うぞ」と、楽しみが数珠つなぎになるではありませんか!
そういうわけで、アンソロジーもおすすめです。書店でお見かけになられましたら、ぜひお手に取ってみてくださいませ。
※伊丹十三記念館のグッズショップおよびオンラインショップでは販売しておりません。何卒ご了承ください。
学芸員:中野
2021.03.01 イチゴのメニューのご案内
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
本日は、カフェ・タンポポよりイチゴのメニューをご案内いたします。
◆豆乳イチゴ
春に登場する期間限定の人気メニュー「豆乳イチゴ」。今年は本日3月1日よりスタートいたします!
愛媛県内産のイチゴに豆乳をミックスしたこのドリンクは、イチゴの甘みと酸味、豆乳のまろやかさが程よく合わさり、さっぱりした甘さで幅広い世代の方にご好評いただいています。ピンク色のドリンクにミントの葉っぱの緑がアクセントとなって、見た目にも可愛らしいメニューです。
◆イチゴのタルト
時期により使う果物が変わる季節のケーキは、現在「イチゴのタルト」をお出ししています。イチゴがお好きな方はこの時期にぜひオーダーしてみてください。口当たりの良い甘さで食べやすく、小さめサイズですので、「ちょっと何か食べたいな」というときにもピッタリですよ。
記念館にお越しの際はぜひカフェ・タンポポにお立ち寄りくださいませ。
スタッフ:山岡