

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2015.11.30 「旅の時代」展、終了間近です!
ご好評をいただきながら続けてきた「旅の時代―伊丹十三の日本人大探訪―」展も、あと1週間となりました。
12月7日(月)の閉館時間をもって終了です。
ドキュメンタリーの仕事や精神分析との出会いを通して、伊丹十三が独自の日本人論を築いていった過程を、展示資料を入れ替えながら2年かけてご紹介させていただきました。
真面目でいて愉快――ほんとうに、伊丹十三の人柄をそっくり展示室に吹きこんだような企画展でしたので、名残惜しくはありますが、会期終了後は心を鬼にして撤収させていただきます。
それ以降は、どんなに悔し涙を流していただいたとしても、(私としても非常に残念なのですが)お見せすることができません。ぜひ会期中にお越しくださいませ! 直筆原稿の数々、旅先からの手紙、テレビ番組映像など貴重な資料ばかりです!!
そして、次回の企画展もまた、お楽しみいただけるものになるように準備を進めております。公開までしばしお待ちください。
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12月9日(水)~17日(木)は企画展示室を閉室いたします。
この期間中は、入館料:大人500円/高大生300円で常設展示室のみの
ご鑑賞となりますのでご了承ください。
常設展・次回企画展、併せてのご鑑賞は12月18日(金)からとなります。
※12月中の休館日:12月8日(火)、15日(火)、22日(火)
※年末年始の休館:12月28日(月)~1月1日(金)
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突然の寒波到来、びっくりしましたね。皆様、冬支度はできていましたか?(私はできていませんでした!)
くれぐれもお風邪などお召しになりませんように。
伊丹さんの冬アイテムより。セーターとマフラー。
肘のツギアテと袖のカガリに、伊丹さんらしい服への愛情が感じられます。
学芸員:中野
2015.11.23 第7回「伊丹十三賞」記念イベントを開催いたしました
2008年に創設し、今年で第7回目を迎えた伊丹十三賞。恒例となりました秋の記念イベントを、今年は2つ開催させていただきました。
● 受賞者・新井敏記さんによるトークイベント(11月10日/伊丹十三記念館)
● 新井さんと親交が深い沢木耕太郎さんによる講演会(11月9日/松山市民会館)
おかげさまで、ともに盛況のうちに終えることができました。ご来場くださった皆さま、誠にありがとうございました。
本日は、スタッフ・淺野のレポートとして、2つのイベントの様子をお届けさせていただきます。後日、当サイトにイベントの採録を掲載させていただく予定にしております。掲載までにお時間をいただきますが、しばらくお待ちいただけましたら幸いです。
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まずは、11月9日(月)に開催いたしました沢木耕太郎さんの講演会の様子からお届けいたします。
今回は、松山市民に文化の拠点として長く親しまれている「松山市民会館」の中ホールで開催いたしました。
はじめに、ご来場くださったお客様へ宮本館長よりご挨拶。
続いて講師の沢木さん(写真左)と受賞者新井さん(写真中央)にも
ご登壇いただいて、3人でミニトーク。
ミニトークの冒頭、沢木さんを前に、新井さんはこんな風におっしゃいました。
「松山に沢木さん来ていただいて、ほんとに僕自身が一番喜んでいるんです。みなさんもそうでしょうけど、講演をされるということは沢木さんはめったにないので、それを、すごく僕は一番喜んでいます。今日はありがとうございます。」
宮本館長が降壇し、沢木さんと新井さんのミニトークが続きます。
新井さんの受賞について、お二人で10分間ほどお話をしてくださいました。
その後、いよいよ沢木さんのご講演です。
沢木さんから事前に頂戴しておりました今回の講演会のテーマは「縁について」。
その冒頭、沢木さんは一度この講演会の依頼を断ったことを明かされました。そして、一度断ったにも関わらず、なぜ今ここにいるのかについて「これから1時間かけて、その話をするんです」――と、ご来場の皆さまに語りかけるようにお話を始められました。
――ここから先の、沢木さんがお話しくださったエピソードの数々は、後日公開予定の採録ページでご紹介させていただきますね。講演の2日前にテレビで放送された、あるドキュメンタリー番組のお話から始まったのですが......皆さまじっくり聴き入っていらっしゃいました。
"なぜ今ここに沢木様がいらしてくださっているのか"の背景には、たくさんの偶然があったことが講演を通して明かされたのですが、講演会の終わりに沢木さんは――
「僕は、なんていうんでしょう――あんまり頑ななところがないんで、わりと何でも順応できるところがあるんですね。そのある種の順応できるところが、偶然を自分の中に引き寄せる......」
――とおっしゃり、その引き寄せた偶然を柔軟に受け止められることがご自身の特性だとご説明なさいました。さらに――
「偶然というのは、一回で終われば一回性のものだけど、それが細い糸になって『縁』というものになって繋がっていくと、それが一回性のもので終わらなくなる。でも『どうしたら一回性のもので終わらなくなるか』ということですよね。」
――と続け、そうした一回性の偶然を、「努力」と「人間としての力量」で「縁」という糸にまで引き伸ばすことができるのが新井さんなのだとおっしゃり、編集者・経営者としての新井さんの手腕を、あらためて称えていらっしゃいました。
また、「書き手」としての新井さんについても触れ、これまでの肩書にとらわれず「今、目の前でやりたいことがあったらそれをやっていく」「いきいきと生きられるところで生きていきたい」という、沢木さんと新井さんに共通する想いについてお話しなさって、講演を終えられました。
引き寄せた偶然を柔軟に受け止めて、それを「縁」という糸にまで引き伸ばす......素敵なお話でした。謎を解いていくような楽しさもありました。
また、沢木さんの語りかけるような口調はとてもやわらかくて、拝聴しておりますと幸せな気持ちになりました。沢木さん、本当にありがとうございました。
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続いて、翌日・11月10日(火)に開催いたしました新井敏記さんのトークイベントの様子です。
この日は、受賞者・新井さんとご一緒に、聞き手として松家仁之さんにもご登壇いただきました。松家さんは、新潮社で「考える人」「芸術新潮」の編集長をつとめるなどご活躍なさり、新潮社退社後、2012年には長篇小説『火山のふもとで』(読売文学賞)を発表、現在は文芸誌「新潮」で長篇小説『光の犬』を連載なさりながら、雑誌「つるとはな」の編集制作にも携わっていらっしゃいます。
ご来場くださったお客さまにご挨拶をする宮本館長。
まずはじめに、宮本館長はお客さまにこんな想いを明かしました。
「わたしね、夢だったんです。ここで、ほんとうにこの限られた空間で、何かできないかってずっと思ってまして......」
――続けて、雑誌づくりや本について新井さんに深くお話ししていただくには、この空間が合うのではないかと思ったということを宮本館長がお話しして、記念館初のカフェ・タンポポでのトークイベントがスタートいたしました。
新井さん(写真左)と松家さん(写真右)
お二人の後ろにある絵は、映画『タンポポ』製作時に伊丹さんが描いた出演者のデッサンです。
新井さんは、時にご自身のお仕事と重ね合わせながら、伊丹さんについて多くのことを語ってくださいました。その詳細は採録でご紹介するとして、私がとても印象深く感じた部分を、少しだけご紹介させていただきますね。
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新井さんが中学生の頃、こっそりと御覧になっていたテレビの深夜番組『11PM(イレブン・ピーエム)』の中で、伊丹さん制作出演の短編映像(映像商品化されていないものです)が流れたことをお話ししてくださったのですが、当時の新井さんはその映像に、大変なインパクトを受けたのだそうです。もちろん、それを作ったのが誰なのかを知らずにご覧になったそうですが、とにかく映像として鮮烈に印象に残っているそうで、ご覧になったのは一度きりにも関わらず、ありありと覚えていらっしゃるそうです。
そんな体験をふまえ、伊丹さんの作品がいつまでも新鮮に感じられることについて、新井さんはこんな風におっしゃいました。
「古びることがないっていうのは何だろうなって、ずーっと(記念館を)巡りながら考えていたんですよね。それはまだ分からないんですが、それは、ほんとに自分が好きなことをやっていることの頑丈さなのか、それとも感覚的なものが――それが本質をついているから古びることがないことなのかわからないですけど、それはすごく僕にとっては謎ですよね。それは僕ね、今回記念館に来させていただいて、すごく宿題みたいな感じです。」
トーク内容とカフェの雰囲気がピタリと合って、濃密な空気が流れていました。
また、聞き手の松家さんが、「(伊丹さんは)伝えたいことをどうやって伝えるかということに、ものすごく心をくだいた人じゃないかと思う」とお話しなさった時には、新井さんはこう続けられました。
「伊丹さんのエッセイを読んでいても、その部分はありますよね。だから、どういう生き方をするのかっていうのがまず前提にあって、そのためにどういう一歩を踏み出すのかっていうことを明快にしているような感じがするんですよ。そういう意識も僕はあまりしていなかったんですが、今回、記念館の中を歩いてみて、一個一個それを紐解くような、分け入るような感じがして――ちょっと楽しさと、ちょっと怖さがあったんですよ。それはやっぱりもう一回違う謎を、もう一回僕の中で宿題が課せられた怖さがありましたね。だから『編集者としてお前どうなんだよ』って言われている感じが――伊丹さんの本ってそういう風に絶えずね、問われるんですよ。だからヒリヒリするんですよ。それはね、ほんとにヒリヒリしながら――それがちょっと嬉しかったんですよ。」
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イベントのほんの一部分をご紹介させていただきましたが、いかがでしょうか。
新井さんが熱を込めてお話ししてくださった様子が、少しでも伝わりましたら幸いです。宮本館長のイメージ通り、カフェという空間が今回のお話にピッタリだったように感じました。
最後は、「ここに立てたっていうこともすごく嬉しいし、やっぱり何度も言うように、伊丹さんをもっと知りたいと思いました」とお話しくださった新井さん。ありがとうございました。
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あらためまして、受賞者の新井さん、そして沢木さん松家さん、すばらしいお話をありがとうございました。そして、イベントにお越しくださった皆さまにも心より感謝申し上げます。
皆さま、今後とも伊丹十三賞をどうぞよろしくお願いいたします。
スタッフ:淺野
2015.11.16 記念館のホームページ
すっかり秋になりました。
記念館の木々は、いまちょうど落葉のピークを迎えているものが多く、朝に落ち葉をキレイに掃いても、昼前には朝と同じくらい落ち葉が地面に広がっている...そんなこともたびたびです。
これからどんどん寒くなりますので、皆さま、お体にはくれぐれも気をつけてくださいね。
さて、ここ記念館にお越しいただくお客様から「ホームページを見ました」とお声がけいただくことがよくあります。
記念館ホームページでは、伊丹さんのことや記念館のことを色々なカテゴリで紹介していますが、中には、来館されるにあたって本当に細かなところまでご覧になり、お客様曰く「予習」してお越しくださったり、逆にホームページをご覧になって興味を持ち「行ってみたい」と思ってくださる方もいらっしゃいます。今回はそんな記念館ホームページについて、少しだけご紹介させていただきますね。
【おなじみのトップページ】
トップページの大きな画像の左下にある「伊丹十三という人物」部分をクリックすると、「伊丹十三とは」「俳優としての略歴」「著者としての略歴」「監督としての略歴」「父、伊丹万作」が表示されます。このカテゴリだけでも伊丹さんの色々な「顔」に触れることができ、伊丹さんの父・万作さんについても知ることができます。
続いてお隣の「記念館の展示・建物」では建物の概要のほか常設展や企画展、カフェやショップについて紹介しています。ここをご覧になって展示に興味を持たれ、「実際に見てみたい」とご来館くださる方はたくさんいらっしゃるのです。
また、「伊丹十三賞」カテゴリでは賞の概要やこれまで受賞いただいた方々など「伊丹十三賞」に関する内容を掲載し、「ニュース欄」では記念館やイベントの情報、伊丹さんに関するメディア情報、そして、皆さまから本当にたくさんご質問をいただく「宮本信子館長の次回出勤」情報などをお知らせしています。
他にも「オンラインショップ」や「みなさまの声」、メンバーズ制度のご紹介などなど、伊丹さんや伊丹十三記念館がぎゅっと詰まったホームページになっています。
もしまだご覧になっていない部分がありましたら、ぜひアクセスしてみてくださいね。
【おまけ:この時期、陽が落ちた後の記念館。ライトアップされて昼間とは違う趣です】
スタッフ:山岡
・・・・・・・・・・・・<<記念館からのお知らせ>>・・・・・・・・・・・・
<展示替え期間のご案内>
展示替え作業のため、12月9日(水)~17日(木)は企画展示室を閉室する予定です。
この期間中は、入館料大人500円/高大生300円で、常設展示室のみのご鑑賞となります。
何卒ご了承くださいませ。※12月15日(火)は休館日です。
<年末年始の開館・休館のご案内>
12月28日(月)~1月1日(金)は休館とさせていただきます。
1月2日(土)、3日(日)は開館時間を10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきます。
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2015.11.09 秋におススメのカフェメニューと本
すっかり秋ですね。
温かい飲み物が恋しい季節となってきました。
伊丹十三記念館のカフェでは生姜シロップを使ったホットドリンク「しょうが湯と十三饅頭」「しょうが紅茶」「ソイ・ジンジャー」などが人気です。
生姜シロップは記念館で作っています。スライスした生姜をお砂糖で煮つけて、仕上げにレモン汁を入れます。レモン汁を入ると、生姜シロップの色がパッと鮮やかなピンク色に変わります。
【画像:レモン汁を入れる前】
【画像:レモン汁を入れた後】
紅茶やらジャムやらにレモン汁を入れると「レモンの酸で色が変わる」と言うのはよく知られていることですが、実はこのような現象すら伊丹さんに係るとそんな簡単な説明では終わりません!
「紅茶の、あの冴えた赤い色、ほのかな渋みは、タンニンという物質によって作られる。
~略~
さてこのタンニンは、水に溶けるものと、溶けぬもの、というふうにも分けることができる。
~略~
紅茶にレモンを入れるとどうなるか。レモンの酸によって、水溶性のタンニンが、水に溶けない、不溶性のタンニンに変わってしまうのであります。
~略~
つまり、水溶性のタンニンが、不溶性のタンニンの粒子となって水に溶けなくなる。したがって水の中に拡散されている量が減って、色が薄くなる、ということでしょう。」
「問いつめられたパパとママの本」『レモンヲ入レルトナゼ紅茶ノ色ガウスクナルノ?』より
と、言うことらしいです。「問いつめられたパパとママの本」の前書きに「この本を、生まれつき非科学的な人、つまりあなたのために書いた」とありますが、その通りで、この本は全編にわたって難しいことを大変わかりやすく説明してくれています。
というわけで、この秋は記念館カフェで温かいしょうがメニューでもお召し上がりになりながら、読書なんていかがですか。非科学的な人にもそうでない人にも「問いつめられたパパとママの本」をおススメいたします。
【画像:問いつめられたパパとママの本」】
スタッフ:川又
2015.11.02 伊丹映画の正しいすすめ方......
お天気がいいとまだ少し暑いけど、コーヒーの冷める早さに季節を感じるようになりました。今日は、霧雨の松山です。
注目映画の封切りや大規模な展覧会の開催といった話題で、文化系ニュースも秋らしくにぎわっているところ、松山郊外のノンビリとしたこの記念館まで足を運んでくださるお客様が日々いらっしゃり、嬉しくお迎えしています。
世間が慌ただしい師走の空気に包まれる日も近くなりましたから、ここに来たからには今のうちにゆったりしていってくださいね!
ヤマザクラもゆったりと紅葉が進んでいます。
(毎年のことながら、色づき具合も散り具合もマイペースなみなさん)
受付やカフェや展示室で、何となく始まったお客様とのおしゃべりが思いがけず弾むのは、スタッフとしてもとても楽しいものですが、シンプルな直球であるがゆえに、回答に窮するご質問をいただくことがあります。その代表が――
「伊丹さんの映画でおすすめはどれ?」
「ウッッ」
――「全部です!」と言い切れば答えにならないだろうし、かといってどれかひとつを選ぶのは立場上マズい気がするし、「お好みによりますね、どんな映画がお好きですか?」と質問で返すとお客様を困らせることになりかねないし――
と、そんなことを考えて言葉につまりながら、「そうですねぇ~、人気がある作品ということですと......」などと非常に歯切れの悪い反応になってしまいがちです。
(「笑えるのはコレとコレ、泣けるのはコレとコレ、前向きな気持ちになるのはコレとコレで......」となっていって、結局、全作品おすすめしていることも多々あります。)
なにせ、伊丹映画は、テーマいろいろ味付けもいろいろ。それでいて、10作品とも「映画はエモーショナルな体験、一種の異文化体験を楽しんでもらうための娯楽である」をモットーに作られています。だから、「どれを見ても楽しいですよ」とも言えますが「全部味わって!」とも言いたい気持ちも強くあり、それで答えに困ってしまうのだと思います。
はてさて、一体何とお答えするのが正解なのか――やっぱり、まずは本心で「全部です!」と宣言するのがいいのかな――
まぁ、状況に応じて「秋ですから恋愛映画がピッタリでは?」なんて、機転の利いたオシャレな答えができるようにもなりたいですね......そこまでの成長は何年先になるでしょうか......がんばります!
"伊丹式恋愛映画"といえば『あげまん』(1990年)
学芸員:中野
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通常は火曜休館とさせていただいていますが、
明日11月3日(火・文化の日)は開館いたします。ぜひお越しください!
※ 翌11月4日(水)振替で休館させていただきます ※

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