記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2024.08.26 『伊丹十三の本』販売再開!

記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
8月も終わりが近づいてきましたが、暑さはまだ続きそうですね。天気も不安定ですから、皆さまくれぐれも日々お気をつけてお過ごしください。


さて、伊丹さんの素敵な笑顔の写真がトレードマークの書籍『伊丹十三の本』(新潮社)。
在庫がなくなりしばらく販売をお休みしていましたが、このたび増刷され、記念館ショップでも販売を再開いたしました!!

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『伊丹十三の本』

 

 

※内容に変更はありませんが、価格は今回の増刷分より変更され
 税込2,860円となりましたのでご注意ください。

改めて内容をご紹介しますと――2005年に販売開始されたこの『伊丹十三の本』は、" 様々な方面で活躍し、興味を抱いた伊丹十三の全貌がこの一冊にまとまっている "、そんな本です。


幼年時代、少年時代、青年時代の写真にはじまり、映画「お葬式」の舞台になった湯河原の家の写真、伊丹さんの愛用品が数多く掲載されていて、ページをめくるごとにまるで伊丹さんの家のアルバムを見せてもらっているような気になります。
また、書いたエッセイや手がけたCM・TV番組、ポスター・装幀・レタリング、描いたイラストレーションも紹介。その多才ぶりを改めて感じるとともに、伊丹さんにゆかりのある方々のインタビュー、伊丹さんが家族に宛てた手紙からはその人柄が浮かび上がってきます。


伊丹さんがぎゅぎゅっと凝縮された『伊丹十三の本』、この機会にぜひ読んでみてください!

在庫切れになってから増刷されるまで、たくさんのお客様に「買いたいのですが今は販売していないんですか?」とお尋ねをいただき、そのたびに「残念ですが...」とご案内してきました。
また皆さまにお届けできるようになって、本当にうれしいです。



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ショップ売り場

オンラインショップでも取り扱っていますので、ご興味を持たれた方はぜひどうぞ!

スタッフ:山岡

2024.08.19 皿熱は突然に......

頼んだ覚えもないのに毎朝毎朝スマホに届く「今日の天気」情報。


「最高気温35℃(前日比-2℃)」の翌日が「最高気温35℃(前日比-2℃)」その翌日もまた同じ......
「予報、35℃!」「実際は37℃!」「今日こそ35℃予報!」「やっぱり37℃!」を繰り返しているっていうことじゃないですか!!
今日も結局37℃になるんでしょうねぇ、と諦めて家を出ると、あら、空は早くも秋の色。

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伊丹さんの愛用した器や調理器具など200点以上を展示している『伊丹十三の「食べたり、呑んだり、作ったり。」』が昨年7月に始まって以来、お客様方からは、買い集めた物たちへの伊丹さんの愛の深さ、「これでなくっちゃ」という気迫のこもり具合に感嘆のお声をいただいております。

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「もうこいつなしにはわたくしの日々の食生活は成り立ちようがない、とさえ思う」

――という一文は伊丹エッセイにありそうでないのですが(私の創作です)、きっとそう思っていたにちがいない物ばかりが並んでいるので、物を通して伊丹さんの台所や食卓での姿がありありと見えてくる、そんな展覧会になっています。

20240819_3.jpg伊丹家のお蕎麦セット。
季節柄、ツルっといきたくなりますねぇ。

この企画展示室に私のような者が身を置きますと、「ああ、自分はつくづくと、器にせよ調理道具にせよ、物を手に入れるということに関する情熱が薄~い人間なんだなぁ」と反省の念が浮かんでくるのであります。(すでに持っている物への愛着はありますけどね。)
ええっと、最後にお皿を買ったのはいつだったかしら。

そんな私が旅先の高知でお皿を衝動買いしたのですから、これはアナタ、ちょっとした事件というべきではありませんか。

近年全国に知れ渡りつつある「絵金祭り」を目的にした旅行だったので、まさかお皿を買うことになるとは思わなかったのです。
友人たちと高知県香南市は赤岡の地を訪ね、祭りの宵の賑わいを楽しんでおりますと、何とはなしに気になるお店が。

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店構えは「和洋マゼコゼよろず古物屋さん」という雰囲気で、諸外国の古着、ヴィンテージもののインテリアや電化製品が並んだ店先から中を窺うと、いちばん奥のほうに骨董らしき食器類のコーナーが見えました。

ほう、高知の旧家の蔵出し品......
揃いのお皿もバラのお皿もステキなのがいっぱいありますね......
見るのは好きなんです......見るだけ......見てるだけ......

20240819_5.jpg左は直径11cm、左は直径18cm。

......オヤッ!? 気付けば2枚のお皿が手の中に!!

お店の方に「ええの選ぶやん」やら「実は私が欲しかったやつ~」やらと言われてポ~ッとなったせいか産地も値段も忘れてしまいましたが、"目が合った"から連れて帰ってきましたってことで、まぁいいか、と思っています。

というわけで、みなさん、"皿熱"は突然にやってくるもののようです。旅行カバンには若干の隙間を作ってお出かけになることをお勧めいたします。

学芸員:中野

2024.08.12 夏ニナルトドウシテ暑イノ?

記念館便りをご覧の皆様こんにちは。とにかく暑い日が続く松山です。

先日テレビで言っていたのですが、統計上、1年間で一番暑い日は8月7日なのだそうです。本日は8月12日ですから、暑さのピークは過ぎつつあるということでしょうか。それにしても毎日暑い日が続きます。夏はどうしてこんなに暑いのでしょう。



伊丹さんの著書「問いつめられたパパとママの本」の中に『夏ニナルトドウシテ暑イノ?』というお話があります。ここで夏が暑い理由を伊丹さんが説明してくださっていますので一部をご紹介します。



夏が暑いのは、ひとつは日が長いせいであり、いまひとつは、太陽が真上から照りつけるせいであります。
 じゃあ、日が長いと、どうして暑いのよ、なんていわないでおくれよ。同じ条件でものを熱するとするなら、十分間熱するより、十五分間熱するほうがよけい熱くなるだろうじゃないの。夏が暑い理由の第一は、だから、日が長いということであった。
 では、次に真上から照らすと、なぜ暑いのか、というなら、たとえば懐中電燈を想像していただきたい。
 懐中電燈の光を床に当てるとき、まっすぐ床に当てれば、小さいけれども強く明るい光の円ができるだろう。しかるに、それを斜めに当ててみようか。さっきより、ずっと床の近くから照らしても、照らす場所は広くなるかもしれぬが、明るさはずっと希薄になってしまうのが観察されるに違いないのであります。
 つまりこの、垂直に照らすということなのだ、太陽がカンカン照るということは。
 夏になると、太陽が真上から照らすから(その証拠に、夏の真昼の影は、小さく足元にまつわりついている)、したがって光や熱が強く当たり、冬になると、太陽が斜めに当たるから(その証拠に、冬の日は、真昼でも長く伸びている)、したがって地面を熱する力は弱くなる。』 

「問いつめられたパパとママの本」より



・・・という訳だそうです。しかし、さすがの伊丹さんでもやはり夏の暑さには参っていたようで、最後はこのように締めくくられています。



と、いうことが理屈ではわかっていても、まあ今日の暑さはどうだ。真夏の太陽が頭のてっぺんから、気の遠くなるほどガンガン照りつけて、ヘッ、あれが収入が次第に減りつつある姿かよ。われながら信じがたく思われる次第であった。



ちなみにこの『夏ニナルトドウシテ暑イノ?』の挿絵も素敵なのでご紹介します。もちろん伊丹さんが描いたものです。


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補足の説明もあるのですが、大変わかりやすいので、機会がありましたら是非全文を読んでみてください。暑さの理屈がわかると「それじゃあ仕方ないか、もう少しの我慢だ」と少し気が楽になることと思いますので、是非。


スタッフ:川又

2024.08.05 企画展示室のスペシャル映像コーナーに新たなスライドショーが追加されました

8月に入り、連日暑い日が続いておりますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

記念館には、夏休みに入ったのだろう小学生や中学生の学生さんがご家族と一緒にご来館くださることが増えてまいりました。私も学生の頃は家族で美術館や博物館に行ったものだなぁ、と懐かしく思い出されます。

 

 

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さて、記念館では、8月1日(木)より企画展示室のスペシャル映像コーナーの「伊丹レシピ、私流。」の内容が変更となりました。

 

 

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7月31日(水)までは、マンガ家・エッセイストの瀧波ユカリさんの最期のチャーハン、映画評論家の三浦哲哉さんの満足飯の2本立てでお送りしてまいりました。瀧波ユカリさんの最期のチャーハンに代わり、新たに加わりましたのが料理人の稲田俊輔さんのサラド・ニソワーズです。

サラド・ニソワーズは伊丹さんの著書『女たちよ!』の「サラダにおける本格」に出てくるサラダの一種です。こちらでご紹介をさせていただきます。

 

もっと賑やかなサラダを好む人にはサラド・ニソワーズがよろしかろう。つまりニース風のサラダである。これは実に満艦飾という言葉がぴたりとくるサラダでありまして、まずサラダ菜、胡瓜、トマト、セロリ、玉葱、赤蕪なんぞの野菜に、罐詰の鮪、アンチョビィ少少、それから茹玉子を輪切りにしたものをどっさり入れて、最後に黒いオリーブの実をあしらうのである。

 これはごく鄙びた味わいの、いわば田舎の大御馳走でありますからして、決して茹玉子の輪切りを綺麗に飾りつけたりなどしてはならない。いわんやレタスの葉を下敷きにしてお上品に盛るなんぞは烏滸の沙汰といわねばならぬ。大きな木の鉢の中でドレッシングを作り、そこへ右の材料全部を入れてかきまわす。(ドレッシングというのは野菜の上からかけるものではない。必ず先にサラダ・ボウルの中で作るものと知るべし)これをそのままどんと食卓の中央に据える。こういう精神のものでなければならなりません。

(『女たちよ!』より「サラダにおける本格」)

 

サラド・ニソワーズ、つまりニース風サラダとは、フランスのニース地方(コートダジュール)の伝統的なサラダなんだそう。地元の新鮮な食材をふんだんに使用しており、田舎らしい素朴な味わいでありながら、華やかなサラダです。

 

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サラド・ニソワーズをご紹介くださる稲田俊輔さんは、南インド料理専門店「エリックサウス」の総料理長をされている方です。そんな稲田さん流の細かなアレンジが加えられたサラド・ニソワーズのスライドショーは、暑くて食欲の無くなる夏でも見ているだけでお腹が空いてくるような素敵な映像となっております。

ご来館の際にはぜひ、新しく追加となった稲田さんのスライドショーにご注目ください。

 

【8月1日(木)からの「伊丹レシピ、私流。」スライドショー】(二本立て)

・映画評論家 三浦哲哉さんによる満足飯

・料理人 稲田俊輔さんによるサラド・ニソワーズ

 

また、ご紹介させていただきました『女たちよ!』の中のエッセイ、「サラダにおける本格」では、夏にぴったりの胡瓜のサラダ、トマトのサラダについてもご紹介がございます。こちらもぜひご覧ください。

 

s-IMG_6489.jpg記念館のオンラインショップでもお買い求めいただけます。

 

 

学芸員:橘さくら