記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2020.12.21 冬至

本日12月21日は冬至だそうです。
夏の間は19時過ぎまで明るさが残る松山の空も、近頃は18時の閉館時間を前にトップリと暮れるようになりました。

 20201221_gaikan.JPG

日暮れが早いというだけでこんなにも気分が変わるものかと驚きますが、戸締りをして記念館を出ると、やけに物悲しい、うら寂しい、心細い気持ちになることもあり......そんなときは「家に着いたらあったかいものを食べてハッピーになってやる!」というのが、暗くて寒い帰り道の心の支えになりますね。

というわけで、この冬トライしてみたいと思っているホカホカ料理をひとつご紹介。
それは、伊丹エッセイではこのように書かれているのです――

 この間、菊正宗の工場からテレビ中継をするということがあり、その時、おみやげに大量の酒粕をいただいた。その酒粕を睨んでいるうちに、ふと、粕汁を作ってみたいという欲望がむらむらと沸き起こったのである。早速魚屋に電話して新巻きの頭を二つばかり取り寄せて調理にかかる。このとき、圧力鍋を使ったのが勝利の原因であった。私は玄米食者であるから当然圧力鍋を持っている。この圧力鍋で鮭の頭を三十分ほど煮て、粕汁へぶち込んだ。

 一口食べてみて、女房が「アレッ」と言った。私も「オッ」と叫んだ。うまいのである。まさに「ほっぺたが落ちそう」という味なのである。カンヅメの鮭のごとく新巻きの頭が骨までグサグサになっている。グサグサの骨と、とろりとした脂っこい皮! あとは「ウム」とか「エヘ」とか「オッホッホ」とか声にならぬ歓声をあげながら鍋一杯の粕汁を親子三人でむさぼるようにして平らげてしまった。

伊丹十三「正月料理」『ぼくの伯父さん』(つるとはな)より

――ねっ、試してみたくなりますでしょ?


忘年会なし、帰省なし、ションボリとお過ごしの方がたくさんいらっしゃることと思いますが、お家ごはんで「オッホッホ」と言えたら、それはそれで、いい年の瀬になるような気がいたします。

20201221_sakekasu.JPGシロザケの不漁で新巻鮭が手に入りにくくなっているので
エッセイとまったく同じにはできないかもしれない...と思いつつ
酒粕を2種類も購入するなど準備に余念のないわたくしであります(笑)

1年でもっとも夜が長い、ということは、今日を過ぎれば明るくあったかくなる一方、ということでもあります。
夜のあとは朝、冬のあとは春、それならば、災いのあとは福にちがいない! と期待して、2020年の記念館便りのしめくくりとさせていただきます。

みなさま、なおいっそうご自愛・ご用心いただきまして、よいお年をお迎えくださいますように。

学芸員:中野


<年末年始 休館・開館日のお知らせ>

2020年12月28日(月)~2021年1月1日(金)は休館いたします。
1月2日(土)3日(日)は開館時間を10時~17時(最終入館16時30分)とし、
1月4日(月)より通常開館いたします。

2020.12.14 

伊丹さんやその作品に影響を受けたんです、という方が、ここ記念館にはたくさん来られます。考え方であったり生活様式であったりとその内容は様々で、これまでもご紹介させていただいたことがありますが、ちょうど一月ほど前にもそんなお客様が来られました。

ご年配のその男性のお客様が影響を受けたというのは「車」です。
その方が30代の頃、伊丹さんが愛車のスポーツ・カーを走らせているのを実際にみたことがあり、それが本当に本当にカッコよかったのだそうです。そのカッコよさがどうしても忘れられず、「自分もあんなふうに車を走らせてみたい!」と、お金を貯めてご自分もスポーツ・カーを買われたのだとか! (実際に乗られていた時のお写真も見せていただきました。)

こんなお話をうかがう度に、伊丹さんという人物の、影響力の大きさを再認識させられます。

伊丹さんといえばロータス・エラン、MG-TFなど様々な車に乗り、1991年にイギリスのベントレーを購入しました。最後の愛車となったこのベントレーは、記念館敷地内にある車庫に展示されています。来館されたことがある方は、黒い車庫にどっしりとおさまり、お客様をお迎えしているベントレーを目にされたことと思います。

20201214-1.jpg

そして、エッセイストでもあった伊丹さんは、車や運転法に関するエッセイをいくつも書いています。
上述の男性はそれらのエッセイも愛読されていて、『女たちよ!』(新潮文庫)に掲載されている「スポーツ・カーの正しい運転法」が一番のお気に入りだとか。伊丹さんの運転へのこだわりが感じられて、今でもよく読み返すそうですよ。
一部引用してご紹介させていただきますね。

 

 さて、いまさら申し上げることもあるまいが、自動車というものは危険物でもあります。これを扱うに当って、男たるもの、どんなに自分自身に厳しくあろうとも、厳しすぎるということはない。いわんや、いいかげんな気紛れや、でたらめは許せないのであります。
 たとえば、運転のさいの履物一つにしても、最も運転しやすい、正しい履物を選ぶべきである。底革の滑りやすい靴や、脱げやすい草履で運転することは断じて許せないのであります。
 これがすなわち「自動車の運転におけるヒューマニズム」というものである。
 そうして、われわれは、巧みに運転する前に、品格と節度のある運転を志そうではないか。
 交差点で自分の前が右折車なんかで塞がれると、すぐに隣の列へ割り込もうとする人がある。というよりもむしろ日本人の九十九パーセントまでが左様である。
 思うに車の運転とは、自分自身との絶え間のない闘いであります。人に迷惑をかけてはならぬ、ということは誰でも知っている。知っていながら割り込むというのは、これはすなわち自制心の欠如というものである。
 隣の列がどんどん流れてゆくと、もう矢も楯もたまらない。なんだか莫大に損をしているような気になってくる、
 つまりその瞬間なのだ、運転者の品性が決定するのは。こういう時に、甘んじてその場に踏みとどまっていられるだけの、強い意志の力と、人間としての品位を持つか持たないか。これが、よい運転者と悪い運転者との永遠の別れ道となるのである。

「スポーツ・カーの正しい運転法」『女たちよ!』(新潮文庫)より

『女たちよ!』にはほかにもいくつか車に関するエッセイが掲載されています。日常で車を利用している方など、「なるほど~」と思う箇所があるかもしれません。ご興味がある方はぜひ読んでみてくださいね。

20201214-2.jpg

スタッフ:山岡

2020.12.07 映画館で映画を観た話


何年ぶりでしょうか。映画館で映画を観てきました。

観たのは『STAND BY ME ドラえもん2』です。
なぜならば、のび太君のおばあちゃんの声を当館の宮本信子館長が担当しているからです。

「あんたのお嫁さんを一目見たくなっちゃったねぇ」というおばあちゃんのセリフをCMでお聞きになった方も多いのではないでしょうか?

あのセリフだけで「ドラ泣き」できるくらいのインパクトがありましたが、実際映画館で全編を観たらそれはもうすごく感動しました。

のび太君の声の妻夫木聡さんが初日舞台挨拶で「おばあちゃんの声が素晴らしすぎて」とおっしゃっていましたが、本当におっしゃる通り!でした。

皆さんはもうご覧になりましたか?
まだご覧になっていない方は是非!


さて、本当に久しぶりの映画館だったのですが、映画館というのはもうロビーに行くだけでテンション上がりますね。


1206-1.jpg

以前に比べると家にいながら映画を観られる環境が整ってきて、
個人的にも家で映画を観ることが増えてきましたが、
やっぱり上映前にポップコーンを注文したり新作映画の予告編を見たりしている時のあのワクワク感は映画館でしか味わえない感覚だなと感じました。



コロナ禍の日々に鬱々とした部分もありましたが、すごく贅沢な時間を過ごせて大変良い気分転換になりました。
これからは積極的に映画館で映画を観たいと思います。



最後になりましたが、『STAND BY ME ドラえもん2』をまだご覧になっていない方はぜひ「映画館で」ご覧になってください。
おススメ致します。


1206-2.JPG1206-3.JPG

【画像:のび太君のおばあちゃんが繕った
クマのぬいぐるみが売店に売っていたので
記念に購入してみました。】






スタッフ:川又