

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2013.11.25 桂の樹
田舎育ちの私の子どもの頃の記憶は、そのほとんどが「山・川・樹・花」とセットになっています。
「田植え前のレンゲ(ゲンゲ)畑でレンゲ草に囲まれていた」のが人生最初の記憶です。3歳頃のことなのですが、花に囲まれながら笑っていたことを、はっきりと憶えています。
今の季節、山々の紅葉を目にすると思い出すのは、秋の里山を駆け回っていた小学生の頃のこと。樹や花に出会うと嬉しくなって、何かのスイッチが入ったかのように そこら中を走り回っていた私は、いつも膝小僧が傷だらけでした。
記念館の中庭の桂の樹も見事に黄葉し、秋の見頃を迎えています。
記念館便りでも何度かご紹介させていただきましたが、並んだ二つの枝が「伊丹さんと宮本館長」を象徴的に表しているこの樹は、記念館になくてはならないものです。
一般的に、桂は樹姿の美しさがよく言われますが、ディテールにもたくさんの魅力がある樹です。
秋は、色づきもさることながら、「葉の香り」が素晴らしいんですよ。
お写真ではお届けできないのが残念ですが、カラメルのような甘い香りがほのかに漂ってきます。鼻にツンとくるような強い香りではありませんので、心穏やかに楽しむことができます。
「カツラ」の名の由来には諸説あるそうですが、「カ」は「香」を意味するという説もあり、桂の葉を抹香の材料にしていた地域もあるのだとか。
桂の葉はハート型
雨上がりは特によく香るように感じます
記念館を訪れたお客様方は、そんな桂をゆったりと眺めてくださっていますが、小さな子どもさんの中には、桂の樹を見た途端にソワソワ......最初はお行儀よくしていても、いつの間にかスイッチが入り(子どもの頃の私と同じですね)、中庭の回廊を走り始めてしまう子もいます。「危ないから走らないでね」と声をかけると、みんな素直に聞いてくれますが、この樹が心に響いているんだなということがわかります。
小さな子どもさんの目線ですと、こんな感じに見えるのでしょうか
空の高さと相まって、桂の樹が一層魅力的に見えるのでしょうね
数年前、野に咲くニワゼキショウを見つけた瞬間に、子供の頃によく遊んだ場所のことを思い出したことがありました。それまですっかり忘れていたことを、野花をきっかけに思い出したのは初めてのことで、とても驚きました。
今、記念館で桂の樹を見上げているお子さまたちが、大きくなってどこかで桂の樹に出会った時に、ふと記念館のことを思い出してくれたら嬉しいなと思っています。
スタッフ:淺野
2013.11.17 「伊丹十三記念館ができるまで」
先月から、記念館の裏手で工事が行われています。来年6月オープン予定の医療施設の新築工事だそうです。今は基礎工事の真っ最中。突如としてサイロのような巨大な円筒形の何かや電柱らしきものが出現する毎日、物珍しさで何かと目を見張ってしまいます。現場の横を通るたびにブルドーザーの見事な働きぶりはもちろん凝視......子供みたいですね。

コンクリートに関係する何かではないかと思います......
建て物部分の工事に入れば、ひとつの建築物が日に日に「育っていく」かのような様子が楽しめるに違いありません。
そんな期待とともに、「この記念館ができていく様子もこの目で見てみたかったなあ! 絶対に面白かったに決まってる!」という思いが日に日に強くなっていきます。開館8ヵ月半後に勤め始めるまで他県に住んでいた私は、噂に聞くことはあっても見ることはできませんでしたから。
伊丹さんの記念館を松山に作る! と宮本館長が決意したのが2004年8月。翌2005年3月に中村好文さんに設計を依頼して、ミーティングを重ね、「伊丹十三記念館」設立を発表したのがその年の12月27日。着工が2006年4月、竣工・開館が2007年5月――
開館の約1年前、2006年5月31日
作ると決めてから完成まで2年10ヵ月、工期は11ヵ月。猛スピードで記念館ができていくあいだの時間の密度、濃度はすさまじいものだったはず。
想像するだけで軽くめまいがいたしますが、そのめくるめく"メイキング・オブ・記念館"の記録映像をご覧いただけるって、ご存知でした? 当館限定で販売しているDVD『13の顔を持つ男』に、特典映像「伊丹十三記念館ができるまで」として収録されているのです......!!

「伊丹十三記念館ができるまで」はど~んと30分!
税込3,360円、これはお得です!
来年5月15日には開館7周年を迎える当館を「もの」として見ると、確かに古くなりつつはあります。気がつけば、どこもかしこも新品まっさら! 木の匂いがする! というふうではなくなりました。
古くはなってもイイ味が出てくるように、そして中身も衰えないように、育ち続けられる記念館でありたいと思います。
※「お隣さん」の医療施設の工期は5月31日までだそうです。ご来館の際には何卒ご了承くださいますよう、お願い申しあげます。
2013.11.11 みかんジュース
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
巷ではみかんが少しずつ市場に出回り始めて、冬場のみかんシーズンが始まりつつありますね!
カフェ・タンポポでは、みかんジュースをご用意して、年間を通してお客様に「みかん」を味わっていただいています。
ジュースは愛媛県産の温州みかんのブランド「愛媛みかん」、温州みかんにオレンジを交配した、温州みかんの「甘さ」とオレンジの「さっぱり感」を兼ね備えた「清美タンゴール」、清見にポンカンを交配した、濃厚な甘みと酸味のバランスが絶妙な「デコタンゴール」の3種類ございます。
それぞれ単品でご注文いただくこともできますし、3種類を「飲み比べ」ていただけるセットもございます。この飲み比べセットは、特に愛媛県外からお越しのお客様に大人気です。飲み比べたお客様は「清見タンゴールが一番好き!」「愛媛みかんって飲みやすいですね~」「デコタンゴールは甘くておいしい!」等それぞれお気に入りができ、中には「この間ここで飲んだジュースがおいしくて、そのみかんを買って帰ったのよ~」という方もいらっしゃいました。
(ちなみに私個人としては清見タンゴールが中でも一番好きなのですが、皆さまはいかがでしょうか?)
【写真:みかんジュース飲み比べセット】
そしてもうひとつ、カフェではみかんジュースを用いた「ミモザ」もお楽しみいただけます。
伊丹さんの著書『ヨーロッパ退屈日記』にある同タイトルのエッセイが載っていますので、「ミモザって何?」のご案内も兼ねて一部ご紹介しますね。
飛行機で思い出したが、ヨーロッパの朝食で、一番贅沢な飲み物は何だと思う?
グレープ・フルーツ・ジュース、なんかじゃないよ。グレープ・フルーツは、日本では二、三百円、高い時には五百円なんていう時があったが、ロンドンでは、一等いいやつが一個一シル、即ち五十円だ。
何といっても奢りの頂上は「ミモザ」ということになる。「ミモザ」というのは、シャンパンをオレンジ・ジュースで割ったものだ。
シャンパン、というのは嫌いな人が案外多いものだが、「ミモザ」を作ってすすめると、大概のシャンパン嫌いも、オヤ、という顔をして、どんどんお代りしたりなぞするようである。
わたくしは、飛行機に乗ったら、飲物は「ミモザ」ときめている。...(以下略)
(『ヨーロッパ退屈日記』-ミモザ-)
カフェメニューにはシャンパンがあり、これをオーダーしていただいた方には「ミモザ」用のみかんジュース(先ほどご紹介した3種類の中から、お好きなものをお選びいただけます!)を一緒にお出ししています。
シャンパンそのもの、そしてお好みのジュースで割った「ミモザ」の両方をご堪能いただけます。
お車でお越しでないお客様は、ぜひオーダーしてみてくださいね。
【写真:著書『ヨーロッパ退屈日記』(新潮文庫)とミモザ】
スタッフ:山岡
2013.11.04 「企画展」残すところあとわずか
2010年12月の展示開始から好評をいただいております現在の企画展「父と子 ― 伊丹十三が語る父・伊丹万作の人と芸術 ―」も、残すところあとわずか(2013年12月9日まで)となりました。
生前の伊丹十三は、父万作の遺品を大切に保管し、万作の記念館を設立したいという構想を持っていました(当館はその予定地だった場所にあります)。そんな伊丹十三の意志を実現したとも言える現企画展、まだご覧になられていない方には、是非お越しいただきたいと思っております。
企画展入口で皆様を待っているのは、「伊丹万作」を語る「伊丹十三」の言葉。
フランスのラカンという人によれば
父親の役割は何かというと
父の父の言葉を、子供に伝える "中間"
であるということらしいのね
ボクは、その父の父の言葉をですね
子に伝える役割を持っているわけ
それでまあ、簡単にお話しますが...
伊丹万作は
自分に誠実な人であった
自分に非常に厳しい人であった
自分に嘘のつけない人であった
(1995年、伊丹万作の50回忌に十三が息子たちへ語った言葉より抜粋)
【企画展示室入口カーテン】
これらの言葉が映し出されたカーテンをくぐって、企画展示室内にお入りいただきます。実際のスピーチ音声も室内に流しておりますが、「自分に誠実な人であった 自分に非常に厳しい人であった 自分に嘘のつけない人であった」の部分の語り口はとても印象深く、文字だけでは伝わらない趣があります。是非聞いていただきたいなぁと思います。
こういった展示方法からもお分かりいただけますように、「伊丹十三を通した伊丹万作」に触れることのできるこの企画、当館でなければできないものだと私は感じています。
伊丹十三のルーツを知ることもできますし、伊丹万作の才能・仕事を知ることもできる、けれどもそれだけに止まらない、不思議な広がりを感じる展示です。合わせ鏡をそっと覗いている様な感覚になります。ぐぐっと展示に見入っているお客様のお姿を、日々お見かけしております。
【万作が息子(伊丹十三)の誕生日に、息子に向けて綴った言葉もご覧いただけます】
【もちろん「映画の人」としての万作もお楽しみいただけます】
一部展示品を入れ替えながら展示を続けて参りましたので、何度も足をお運びくださったお客様もいらっしゃいました。ありがとうございました。
現在の企画展は残すところあとわずか、引き続き皆様のご来館をお待ちしております。
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記念館からのお知らせ
【展示替え】
企画展示終了に伴う展示替え作業のため、12月11日(水)~19日(木)は企画展示室を閉室する予定です。
この期間中は、入館料大人500円/高・大学生300円で、常設展示室のみのご鑑賞となります。何卒ご了承くださいませ。※10日(火)・17日(火)は休館日です。
新・企画展につきましても、どうぞご期待ください。
【年末年始】
12月28日(土)~1月1日(水)は休館させていただきます。
1月2日(木)、3日(金)は開館時間を10時~17時(最終入館16時30分)とさせていただきます。
スタッフ:淺野

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