記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2026.01.19 『伊丹十三の映画』

2026年になり、はや半月を過ぎましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

私は年末年始に実家へ帰省した際、昨年に続いて地元の映画バーに行ってまいりました。(昨年の記念館便りはこちら)せっかく飲むなら昨年中に観た映画をと思い、『教皇選挙』と公開40周年記念のIMAX版で観た『バック・トゥ・ザ・フューチャー』をいただきました。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、デロリアンがタイムトラベルをする際に炸裂する炎をイメージし、火をつけたお酒を注ぐという粋な演出もあり、とても楽しい時間を過ごすことができました。

 

s-IMG_5748.jpg『教皇選挙』

 

 

s-IMG_5751.jpg 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』

 

昨年は日比谷、池袋と梅田の劇場で伊丹映画10作品が上映される機会があったり、日本映画専門チャンネルで「24時間まるごと 伊丹十三の映画4K」で放送されたりと、伊丹さんの映画を観ていただける機会が多くございました。

ご来館くださるお客様の中にも、昨年の間に伊丹さんの映画を初めて観たことをきっかけに記念館を知り、ご来館くださったという方もたくさんいらっしゃいました。

 

本日の記念館便りでは、そんな伊丹さんの映画の面白さを知ってくださった皆さまにぜひ読んでいただきたい書籍、『伊丹十三の映画』をご紹介させていただきます。

 

s-IMG_8132.jpg『伊丹十三の映画』

 

2007年5月、伊丹十三記念館のオープンとほぼ同時期に発売された『伊丹十三の映画』は、その名のとおり伊丹さんの映画について詳しく知ることができる1冊となっております。

読んでくださっている方も多くいらっしゃると思いますので、簡単に内容をご紹介させていただきますと、伊丹さんが脚本監督をつとめた映画10作品がどのようにして作られていたか、伊丹さんがどんな映画監督だったのかを多面的に知ることができる書籍です。出演されている俳優の方々はもちろんのこと、助監督、撮影、記録、編集などなど、このほかにも様々な形で伊丹さんの映画に関わった総勢43名の方のお話が1冊にまとめられております。伊丹さんの映画に対する情熱やこだわり、映画の裏話など、ここでしか読むことの出来ない内容です。

 

 

「伊丹さんは画面に映る細部までこだわっていた」と書くと簡単に見えますが、ふと映ったように見える店の看板、机の上に広がっている小物や料理、俳優が身に着けている小道具、メイクに至るまで、大変細かいところまでこだわって伊丹さんは映画を作っていました。映画のメイキング映像や『「お葬式」日記』などの伊丹さんの著書でもご覧いただけますが、ひとつの映画を生み出すために、たくさんのその道のプロフェッショナルが携わっていたということを、『伊丹十三の映画』ではそれぞれの視点から知ることができるのです。

 

書籍で出てくる伊丹さんのこだわりエピソードについて、ほんの少しですがご紹介をしたいと思います。

 

こちらは、グラフィックデザイナー佐村憲一さんのインタビューから。

 

 伊丹さんは、どんなに小さなものでも、画面に映るものを決して疎かにはしませんでしたから。「スクリーンに映っているモノはどんな端っこのどんな小さなモノでも、それは全て映画なのだ」、「映像の中に文字があると、人の目がそっちに行ってしまう」って。

(中略)

 クランクインすると、「明後日に喫茶店のシーンがあるんだけど、その看板をデザインしてほしい」とかそんな電話ばっかり(笑)。しかも必ず朝の九時ちょうどに自宅の電話が鳴る。

 他には預金通帳。「マルサの女」のとき、一度に二十冊くらいデザインしました。いかにもありそうな銀行名を考え、それぞれのロゴタイプとマークをデザインし、そして通帳の表紙をデザインしていく訳です。

 

こちらは、スタイリストの小合恵美子さんのインタビュー。『マルサの女』のラストシーンに出てくるハンカチについてです。

 

 それにハンカチ。山﨑努さんがラストシーンで暗証番号を血で書くやつ。百枚近く探したんですよ!

撮影中もずっとハンカチ探し。いくつか持っていっても「うーん」と唸るだけで監督は何も言わない。東京中のデパートはほとんど見尽くしました。

結局、最後に決まったのは、どうってことない一枚(笑)。「これだよ、そう、クロス・ステッチだよ」って。「それなら早く言ってよ!」って思いましたね。しかも理由もわからないし。結局、それどこで買ったか覚えてないんです(笑)。

 

いかがでしょうか。どちらも短い引用ですが、いかに伊丹さんがこだわって映画を作っていたかが分かるエピソードだと思います。あげればきりがありませんが、全編を通して伊丹さんとお仕事をした方々の「苦労はしたけど、それ以上にとても良い映画に参加することが出来た」という強い思いを感じられる、一度は読んでいただきたい書籍となっております。

 

以前は全国の書店にてお取り扱いのあった書籍ですが、現在新品をお手にとっていただけますのは伊丹十三記念館限定となっております。オンラインショップでのお取り扱いもございますので、ぜひご利用ください。

s-IMG_8133.jpgちなみにカフェには見本を置いておりますので、

カフェご利用の際にゆっくりご覧いただくこともできます

 

さて、最後にひとつお知らせがございます。

2月14日(土)15時より、第2回目の開催となります展示室トークを開催いたします。全体で45分程度を予定しておりまして、場所は常設展示室の館長挨拶・特報映像コーナー、ご入館料のみでお気軽にご参加いただけます。

伊丹十三記念館の展示の楽しみ方について、学芸員がお話をさせていただく催しとなっており、初めてご覧いただく方にも、再来館くださった方にも楽しんでいただけますよう準備を進めておりますので、ぜひご参加いただけますと幸いです。

 

学芸員:橘