こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2024.11.25 口コミと思い出
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
一気に寒くなってまいりました。特に朝晩はかなり冷え込むようになりましたので、お体にはくれぐれもお気をつけください。
現在の中庭。桂の木もかなり落葉しました。
さてご存知の方も多いと思いますが、記念館のサイトに「みなさまの声」というコーナーがあります。
ご来館のお客様に記念館の感想をうかがって掲載し、当サイトをご覧いただく方に、記念館の雰囲気の一端を感じていただこうというコーナーです。
TOPページ右上をクリック
「みなさまの声」コーナー
ご来館いただくお客様の中には、実際に「みなさまの声」をご覧になり、「雰囲気が伝わってきて、訪れてみたくなりました」という方もいらっしゃいます。カフェのメニューやグッズについて書かれた「声」を読んで、来館時にそのメニューを注文してくださったり、グッズを手に取ってくださったりすることもあります。
これから記念館を訪れる予定がある方、もしくは記念館に行ってみたいと思っている方には、ぜひぜひ見ていただきたい " 口コミ " なんですよ。
一方で、感想をお寄せくださったお客様にとっては、ご来館の"思い出"をご覧いただけるスペースでもあります。
10月の終り頃、「『みなさまの声』を書いたことがあります!」という再来館のご夫婦がいらっしゃいました。5年程前に奥様と当時大学生の息子さんと来館され、「みなさまの声」に写真(撮影・掲載許可をいただいた方のみ)と感想をお寄せくださったそうです。今回はご夫婦おふたりでのご来館でしたが、社会人となった息子さんとたまに見返しては、当時の思い出話などをして、「また三人で行こうね」と話しているそうです。
「みなさまの声」は毎週金曜日に更新(追加)をしており、公開したものは長期間さかのぼってご覧いただけます。紹介されたご自身の「声」をご覧になって、「記念館へ行ってきました」とお知り合いに紹介したり、折にふれて思い出話をしたりするのはいかがでしょうか。
これから来館される方には"口コミ"、来館された方には"思い出"としてご覧いただける「みなさまの声」は、お客様の声を直に聴くことができるとして、宮本信子館長も毎週楽しみにしているコーナーです。
ご来館の際はぜひお声をお聞かせくださいね。
「みなさまの声」シート。こちらにご記入いただいています
スタッフ:山岡
2024.11.18 寝室
11月も後半に差し掛かってまいりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今年は10月を過ぎても暑かったので、秋が大変短く感じました。2024年も残り1か月半、やり残したことを片付けたいなと思う今日この頃です。
最近の記念館の様子。桂など木々の葉がだいぶ落ちてきました。
わたくしごとではございますが、実は近々引っ越しを控えておりまして、新居の掃除をして一部荷物を運んだり、現在の家の片付けをしたりなど少し忙しい日々を過ごしております。現在住んでいる部屋がワンルームで収納も少ないため、あまり物を溜め込んでいるという自覚がなかったのですが、荷物をまとめ始めてみると単身パックの引っ越しでは出来ない荷物の量と発覚いたしました。生活を営むのは意外と物入りなのですね。
伊丹さんは物を捨てない人だったそうですので、長い時間をかけて集まったものであるとは言え、収蔵されている愛用品の数を考えると、引っ越しはとても大変だったのだろうと予想されます。現在の企画展で展示されている調理器具や器だけでもかなりの量がありますので、これをひとつひとつ割れないように包んで箱詰めして...となるとかなりの重労働だったんだろうな、と最近は展示品を見るたびに考えてしまいます。
それぞれ形の違う盃は特に梱包が大変そうです。
部屋の片付けをする中で、自宅は趣味や好みが顕著に出るものだとしみじみ感じ、ベッド周りが特にその傾向が強いように感じました。さて、ベッドに持ち込む物について、伊丹さんが詳しく紹介しているエッセイがございます。それが『ぼくの伯父さん』に収録されている「寝室」です。
コシノ・ジュンコさんがベッドに持ち込む品品は次の通りであるという。(こういう癖がついたのは離婚してからだそうです)
電話・紅茶(ティー=ポットとカップ)・時計・煙草(ハイライト)・灰皿・ライター・鉛筆・消しゴム・水差し・目玉焼き・砂糖・塩・胡椒・ケーキ・テレビ・ノート・原稿用紙・レコード=ジャケット・爪切り・ポートレート・(アンティク=マーケットで売ってたやつ)・人形・マンガ・(たとえば『はじめ人間ゴン』)・本(たとえば『あの日暑くなければ』)・スケジュール表
これだけの物を持ち込んでしまうと、何か忘れ物があってももうベッドを出る気はなく、この上はただただ小間使いが欲しいとか......
私がベッドへ持ち込む品品
(例、昨夜)
原稿用紙・4B鉛筆・ペリカン消しゴム・明解国語辞典・新潮国語辞典・用字便覧・電気鉛筆削り・サントリー=オールド・氷・ミネラル=ウォーター(フジ)・タンブラー・オールド=ファッションド=グラス・おつまみ(竹輪、茹で玉子、里芋の煮ころがしの残り物)・書物(『古墳の話』『まぼろしの邪馬台国』『倩笑至味』)
大体以上のようなものだが、以前には煙草を吸っていたから、この上にロスマンズ二た箱・時計印マッチ・錫の灰皿(落しても割れない)が加わっていた。これだけの物を持ち込むと、私は安心のあまり、あっという間に寝てしまうことが珍しくないのである。
私の場合こういう癖は結婚してからついた。
(『ぼくの伯父さん』より「寝室」)
いかがでしょうか。原稿用紙や辞典は腹ばいで原稿を書く点からしても伊丹さんらしい物に思います。また、ウイスキーやグラスと書くのではなく、「サントリー=オールド」、「オールド=ファッションド=グラス」と書くのにこだわりが見られます。個人的には、竹輪と茹で玉子はともかく、里芋の煮ころがしの残り物まで持ち込んでいるのが、しっかり晩酌をしようという意気込みが感じられてとても好きなポイントです。(エッセイ内に箸が書かれていなかったのですが、伊丹さんもしかして素手で食べていた可能性もあるのかしら?)
皆さまもこのエッセイを読まれた後にベッド周りを見ていただきながら、伊丹さんに思いをはせていただけますと幸いです。
『ぼくの伯父さん』
オンラインショップでも販売中です。
さて、蛇足ではございますが、ベッドサイドテーブルに雑然と置かれておりました私が日ごろベッドに持ち込む物たちをご紹介したいと思います。たった数行でも、人となりがなんとなく分かるので面白いものですね。
読書灯・読みかけの本(『うたかたの日々』『きまぐれ博物館』『地下室の手記』『小さな名画の本』『哀れなるものたち』)・スケジュール帳兼日記帳・カラフルなボールペン数本・シールやコラージュ素材の入ったクッキー缶・常用薬やサプリ・蒸気で温めるタイプの使い捨てアイマスク・Switch・iPad・iPhone・各種充電器
学芸員:橘
2024.11.11 『お葬式』誕生40周年! その2
6月24日の投稿で「2024年は伊丹十三の監督デビュー作『お葬式』の制作・公開から40年のアニバーサリー・イヤー」とご紹介しました。
そしていよいよ、今週末の11月17日(日)は『お葬式』封切りから丸40年、「ハッピー・バースデー、『お葬式』!!」なのであります。("お葬式"の"バースデー"とは何とも妙な取り合わせですねぇ。)
ここでチョイと豆知識。
1984年10月、映画『お葬式』は、まだ一般公開されていなかったにもかかわらず、第8回山路ふみ子賞を獲得するという快挙を成し遂げています。
伊丹監督本人も「8月13日に完成してから、この一カ月くらい、ずっと試写をしていたので、公開されてるっていうことになったのかなぁ」(※)と若干戸惑った様子のコメントを発しましたが、前評判・期待値の高まる中、封切り日を迎えたのでした。
※1984年10月27日付毎日新聞より
さて、1億円強の制作費で完成した『お葬式』が"元"を取るには、上映用フィルムのプリント費用や宣伝費、映画館の取り分なども勘定に入れると、3億円分のお客さんを集めてやっとトントン。
このトントンのラインまでたどりつくためには、500人以上の客入りの映画館が10軒ある状況を6週間持続しなければならない、との試算(※)をしていたそうです。
そもそも上映予定館が10~14館と限られていた『お葬式』には、相当のハードルだったと言えるでしょう。
※『「お葬式」日記』p.319-320より。上映館と動員数の一覧表もp.321 に掲載されています
『「お葬式」日記』(文藝春秋、1985年)
6月のクランクインから8月の湯布院映画祭までの詳細な記録と
構想から公開までを微に入り細に入り解説した監督インタビュー、
『お葬式』のシナリオで構成されています。古書でお求めください。
が、11月17日の土曜日に封切られるや、上映館には老若男女が詰めかけ連日長蛇の列。立ち見客があふれて扉が閉まらない映画館もあったとか。そして客足は衰えることなく"3億円のハードル"は年末までにクリア、年明けからは全国展開――最終的に12億円もの配給収入(※)を上げ、大ヒット作となりました。
※配給収入:各映画館は興行で得た収入(=観客の鑑賞料金、興行収入)から配給会社に上映料金を支払います。この配給会社の収入を配給収入と言い、かつては映画の興行成績の指標として用いられていました。(2000年以降、興行成績の指標には「興行収入」が用いられています)
この大入り・大ヒットには"口コミ"が大きく影響したそうですが、SNSに感想を投稿したり評価サイトに☆をつけたりといった方法がなかった1984年、人々は「これは面白い!」「ぜひ見て!」という思いをどうやってやり取りしていたのでしょうか......
1980年代の口コミ事情をあれこれと想像すると、誰でもウェブサイトに書き込めるのが当たり前になった現代よりも、情熱的なものを感じずにはいられません。
映画の出来の良し悪しに売れたコケたはあまり関係ないと考えていますが、『お葬式』のヒットに関しては、公開当時の観客の面白い映画を渇望する思い、熱気が伝わってくるので「ああ、その熱狂の場を経験したお客さんたちが羨ましいなぁ」とため息をつくばかりです。
『お葬式』Blu-ray 税込5,170円
記念館グッズショップで販売しております!
そういうわけで、今年の11月17日、帰宅したら「40年前の映画館にいるつもり」に浸りながら『お葬式』をBlu-rayで鑑賞してみようと思います。
みなさまもぜひ。
学芸員:中野
2024.11.04 メンバーズ会員制度と収蔵庫ツアー
記念館便りをご覧のみなさまこんにちは。ここのところ随分涼しくなってきましたがいかがお過ごしでしょうか。
さて、今月はメンバーズ会員様限定の収蔵庫ツアーが開催される予定です。
まず、メンバーズ会員制度とは、1年間入館料無料で何度でも伊丹十三記念館にご来館いただける制度です。さまざまな特典をご用意しています。
メンバーズ会員制度について詳しくは こちら から
そして、収蔵庫ツアーとは、普段はご覧いただけない収蔵庫を学芸員がご案内する催しです。もともと収蔵庫ツアーはメンバーズ制度関係なく、開館記念の4月か5月に開催されるイベントでもありますが、大変人気のあるイベントでご応募が多く毎度抽選となってしまいます。
収蔵庫全体
しかし、メンバーズ会員様にはこれとは別に「メンバーズ限定収蔵庫ツアー」を設けており、収蔵庫ツアーにご参加いただけるようになっているのです。
収蔵庫には、数多くの伊丹さんのコレクション、原稿などがあり、どれも見応えがありますが、さりげないところにも伊丹さんのセンスの良さが垣間見えるモノが置いてあったりして、我々も入る度に発見があります。
記録撮影のために同行した収蔵庫ツアーにおいて、思わず撮影してしまったゴミ箱
是非みなさまにも伊丹さんの世界に触れていただき、伊丹さんらしさを発見していただきたいと思います。
今月行われる秋の「定期開催ツアー」は締め切りが終了しておりますが、4月、9月21日~翌年3月の期間中のお好きな日をご自由に選んでお申し込みいただける「自由申込ツアー」もございますので、気になる方は是非メンバーズ会員へのご入会をご検討ください。
スタッフ:川又
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