こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2018.05.07 「おじさん」展の人気者
開催中の企画展「おじさんのススメ シェアの達人・伊丹十三から若い人たちへ」、もうご覧くださいましたでしょうか?
館内をラウンドしていて「人気あるなあ」と感じるのが、「伊丹十三による正調松山弁シリーズ 一六タルトCMセレクション」。70年代から90年代にかけて伊丹十三が手がけた一六タルトのコマーシャル映像7本を厳選したものです。
古式ゆかしい松山弁のセリフが印象的(というより衝撃的)なコマーシャルで、愛媛県内だけで放送されたローカルCMだったこともあり、愛媛県民の方は懐かしそうに、県外の方はちょっと驚いたご様子で、熱心に見てくださっています。
常設展示室の「CM作家」のコーナーでは、開館以来、成績篇・少年の思い出篇・ど忘れ篇をご紹介してきましたが、今回の企画展では、方言の度合いが強いものを選んで、松山弁・標準語の対照字幕をつけました。
一六タルトCM「タルト一きれ」篇より。
ほかに、成績篇、手洗い篇、贈物篇、どないしたんぞ篇、
花嫁篇、タルト調査篇をご紹介しています。
方言から標準語への変換というのは、辞書的な意味よりもニュアンスのほうが大事なので、"ネイティブ"でない私には難しいところがたくさんあり、松山っ子の玉置館長代行のアドバイスを受けながら作った字幕です。
なお、玉置代行は、このCMの依頼主・一六本舗の社長(当時企画室長)でもありまして、制作経緯を回想して曰く、松山弁を用いるというアイデアは、伊丹万作の三十三回忌に集まった人たちの会話を耳にしたことから生まれたのではないか、とのこと。
依頼から撮影までの間に松山で催された法事には、明治生まれの万作の友人が数多く出席していて、古い古い松山弁が飛び交っていたそうです。(詳細をお知りになりたい方は『伊丹十三の映画』の巻頭インタビューでどうぞ!)
伊丹十三のキャリアの中では、ドキュメンタリー作りに夢中になって日本中をめぐったり、土地土地の人から聞いた話をエッセイに書いたりしていた時期に当たりますから、ちょうど「方言は面白いゾ」というセンサーが鋭く働いていて、ご老人方の松山弁にピーンときたのかもしれませんね。
常設展示室「CM作家」のコーナーには、この一六タルトコマーシャルに関する直筆メモを展示しています。常設展・企画展を通してご覧いただきますと、アイディアメモと完成映像との違いを見比べることもできますので、ご来館の際にはぜひじっくりとご鑑賞ください。
「タルト一きれ」篇の語りメモ。
松山弁についてのメモ。
一六タルトCMシリーズに使用されている単語が
たくさん書き出されています。
一六タルトCMは記念館限定販売のDVD『13の顔を持つ男』にも4本収録されています。
字幕はついていませんが、松山弁が分からなくても、分からなささえ面白い!ご遠方にお住まいでご来館の難しい方は、ぜひこのDVDでお楽しみくださいませ。
学芸員:中野
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