こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2012.04.22 第4回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました
4月19日(木)、国際文化会館で第4回伊丹十三賞の贈呈式を開催いたしました。受賞者の森本千絵さん、森本さんのご家族・お仲間、そして伊丹十三にゆかりのある方々、当財団の関係者の皆様、約80名様にお集まりいただきました。以下、贈呈式の様子をご紹介いたします。
選考委員・中村好文さんの祝辞
「選考会の直後、森本さんにこの賞を受けていただけるかどうか打診したのですが、そのときの反応はあまりにも愉快。かつ、いかにも森本さんらしいものでした。森本さんは伊丹十三賞の受賞者に選ばれたと聞いて、間髪を入れず『チョーウレシイ!』(場内笑)と言ったそうです。この言葉を聞いたとき、その場に居合わせた人たち全員の顔がパッと笑顔に輝き、あたりが華やかな空気に包まれました。そしてその瞬間、私は森本さんを選んだことが間違いではなかったことを確信したのでした。
今回の授賞理由の中には『子供から大人まで、わかりやすく楽しく、こころの奥にまで届く独自の世界観』という言葉が入っていますが、森本さんの笑顔はまさにわかりやすく心の奥にまで届く笑顔なのです。
伊丹十三は様々なジャンルで才能を発揮し、独自の世界を作りあげた人でしたが、その仕事を眉間にシワを寄せてするのではなく、いつも本人が一番楽しみながらしてきたように思います。森本さんもジャンルという面倒な垣根を軽々と乗り越え、ご本人が誰よりも楽しみながら仕事をしている方だとお見受けします。
森本さん自身もen°報という一種の壁新聞の最新版に伊丹十三賞受賞の言葉として『しばらくまとまることなく、できることをどんどん楽しんでいきたいと思います』と書かれています。そのような発展途上の人、そしてこれから切り開かれるであろう無限の可能性に対して、伊丹十三賞を贈呈できることを選考委員のひとりとして誇りに思います。」
巻紙にしたためられた中村さんのご祝辞は、軽妙なエッセイのようでもあり、森本さんへのラブレターのようでもあり、ワタクシ、キュンとしてしまいました。中村さん、ありがとうございました。
森本千絵さんのスピーチ
「本日は、ほんとうにありがたい賞...チョーウレシイ賞(場内爆笑)をありがとうございます。ここにいらしてくださった方々、学生時代からの仲間であるスタッフ、みんなで分かち合いたいと思います。
私は小さい頃から絵を描くことがほんとうに大好きで、とくに賞を目指してとか広告を目指してということではなく、楽しいほう楽しいほうに流されていって、やることすべてに必然的な出会いがあって、目の前の人と楽しみたくなって、誰かが喜ぶとすごく嬉しくなって、それにお調子者でもあって、それで動いていくとものごとがどんどんカタチになって、知らない間にこういうかたちになっていて、『何屋さんなの?』って聞かれることがよくあるんですけれども、いろんなことをやらせていただいてます。伊丹さんほどではないんですけど(笑)、実際のところは、広告をはじめ絵を描くこと、空間のお仕事、映像のお仕事をやってますが、どれに対しても態度は変わらず、難しさも変わらず、迷惑かけることも変わらず、やらせていただいてます。
伊丹さんは『私自身は空っぽの容れ物にすぎない』とエッセイ(『女たちよ!』前書き)に書いています。私も自分がないというのは変ですが、もしほんとにひとりぼっちだったら自分が楽しいことも見つけられないし、自分がどういうものなのか分からないですけども、ひとりひとり、その人に出会うと、気持ちがドクっと動くものがあって、「あ、こんなことが好きなんだ」、「こんなことがしてみたいんだ」っていうことが見つかっていくので、たくさんのことを今やらせてもらっているのは、それだけたくさんの人に出会ってきたからだと思ってますし、まだまだたくさんの人に出会うかと思うと、自分でも想像したことのないこともこれからやるんじゃないかな、とも思ったりしてます。
かっこいいと思ってる人の賞をもらうのが根本的にめちゃくちゃ嬉しいです。上手い下手とか、正しいとかじゃなくて、かっこよく生きてるな、楽しそうだな、と思う人の作品が好きで、だから伊丹さんの作品も、選考委員のみなさんの作品も『かっこいいなぁ~!』と思って見てきました。
広告とかの肩書きの中にはまった賞をもらったときは『見てろよ~』っていう気持ちが多少あって(笑)真面目にしゃべんなきゃって思うことはあるんですけど、この賞は、人間としてというか森本千絵として、父と母に育てていただいて、たくさんのお友達に出会って、たくさんの仕事をして、肩書きに関係なくみなさんに支えていただいたことが、私はめちゃくちゃ幸せに生きてるなぁというか、捨てたもんじゃないなぁ、というふうに、ほんとうに個人的に、森本千絵として、めちゃくちゃ嬉しいです。ほんとうにありがたい賞だと思ってます。そして、こういうことがあるから『いろいろやってやろう』ってますます思うし、これから流されるまま楽しいこといっぱいあるんだなぁっていうふうな希望も湧いてます。ほんとうにこんなありがたい賞をいただいて、とても嬉しく思ってます。ありがとうございます。」
「肩書きではなく、ひとりの人間としての賞、だから関わった人たちに感謝したい」...賞を差し上げる私たちにとっても、ありがたく光栄なお言葉を頂戴いたしました。
スピーチの合間に「あぁキンチョーする...」、「こんなに汗をかいたのは初めてです(笑)」と仰っていましたが、笑顔を交えて飛び出すライブな表現もとてもチャーミングで、ご来場の皆様もチョーウレシそうでした! 森本さん、伊丹十三賞を幸せな賞にしていただき、ほんとうにありがとうございました。
宮本館長のごあいさつ
「今日はたくさんの方々にお集まりいただき、まことにありがとうございます。森本さんが控え室でものすごく緊張してらして、もう初々しくって可愛らしくて、伊丹さんも、森本さんにこの賞を贈ったことをすごく喜んでいると思います。そして、ますます自由に、いい仕事を、楽しく、そういうことをいっぱいして欲しいって、そう思います。がんばってください。では、みなさんと一緒に、森本さんを祝福したいと思います...」
ということで、館長の「カンパーイ!!!」の音頭とともに祝賀パーティーが始まったのでありました。
ご来場くださった皆様のおかげで、今年もまたあたたかくにぎやかなパーティーにしていただきましたこと、厚くお礼申しあげます。ご取材にお越しくださった皆様、会場の国際文化会館の皆様も、まことにありがとうございました。(来年もどうぞよろしくお願いいたします...!)
学芸員:中野
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