記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2020.09.28 『あげまん』と特報のご紹介

暑さ寒さも彼岸まで、とはよく言ったもので、やっと秋らしくなってきました。


毎月十三日の十三時は記念館で伊丹十三の映画を観よう!」、10月の作品は"イタミ式恋愛映画"こと『あげまん』(1990年)です。

「十三日の十三時~」と銘打ちつつ、13日が休館日の火曜に当たる月には翌14日に開催しております。来月は10月14日(水)が開催日となりますのでご注意ください。

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絢爛豪華な芸者の世界を舞台に描かれるのは、日本における「男と女」の関係性。
「男は女房を母親にして自分の不快を解決してくれる打出の小槌として扱う一方、女は夫を坊や扱いにすると気分がいい」――佐々木孝次さんとの共著『快の打ち出の小槌』(1980年、朝日出版社)などの例もあるように、この問題は監督デビュー以前からのテーマでした。

なんだかドロっとしたお話になりそうなテーマですが、これを一大エンタテインメントに仕立て上げるのが伊丹映画。

宮本館長と津川雅彦さんの名演技(監督曰く「絶好調のマストロヤンニとジャンヌ・モローで映画撮ってる気分でした」)が織りなす男と女の恋模様、豪華キャスト陣の存在感、たっぷりと堪能できる作品です。

10月14日(水)13時、常設展示室でお待ちしております!

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常設展示室での伊丹映画本編のご紹介は月一度ですが、「特報」映像は毎日ご覧いただけます。

映画館で上映が始まる前、今後の公開作の宣伝、すなわち予告編が流れますよね。その中でも、予告編の素材となる本編映像がまだないうちから告知を開始するためのものを「特報」と言います。
イメージカットや静止画に「タイトル」「メインスタッフとメインキャスト」「封切日」がバーンと出る、というふうに、短くシンプルなのが一般的な特報の作りなんですが、伊丹映画の特報では「監督自らが"出演"して、観客に語りかけながら最新作のテーマやツボを紹介する」という、大胆にして何とも伊丹十三らしい手法が用いられていました。

たとえば、『あげまん』の場合は――

ageman_tokuho1.pngこんにちは伊丹十三です。
今日はOLのマツノヨシコさんを芸者さんにしてみようと思います。

 
ageman_tokuho2.pngまず、羽二重をかぶせて白塗りのお化粧に紅をさし、

 
 
ageman_tokuho3.pngageman_tokuho4.png引き着を着せ帯は柳に結び、
高島田をのっけて芸者さんのできあがり
――やはり日本の伝統の女はよいなぁ!

 
ageman_tokuho5.png次回作『あげまん』は、芸者の世界を描く純愛物語でございます。
(ヨシコさんに)アナタも出るか
(ヨシコさん)ハイ!

伊丹映画の特報はBlu-ray(単品各4,700円+税 / BOXセット2種各23,000円+税)にも収録されていますので、お家でのご鑑賞の際には特典映像もぜひぜひご覧ください。

BOXセットⅠ・Ⅱ封入の「特典ディスク」ではなく、各作品のディスクのコンテンツとしてその作品の特報映像が収録されています。

ちなみに......監督が出演する『あげまん』特報は2種類作られていて、上記のものは3~9月、別バージョンのほうは10~2月に常設展示室でご覧いただけます。(『あげまん』Blu-rayには両方とも収録されています。)

特報映像を見ていると、宣伝にも工夫を凝らして楽しんだ、伊丹十三の監督ぶりが伝わってきます。どうぞお見逃しなく!

学芸員:中野