こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2024.07.08 小銭貯金
早くも7月の2週目に入ってまいりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。気温が高く、湿気の多いむしむしとした日が続いております。連日、熱中症警戒アラートが発表される地域も多いので、体調を崩さないようにお気をつけてお過ごしください。
記念館の回廊でも暑いと感じるようになってきました。
それでも、風が吹くと少し暑さが和らぎます。
つい先日、新紙幣の発行がされ始めたというニュースがございました。
20年慣れ親しんだお札とは徐々にお別れになるかと思うとなんだか寂しいような、不思議な感覚です。
お金といえば、印象的なエッセイで伊丹さんが100円玉を貯めていたというお話がございます。『再び女たちよ!』に収録されている、「百円玉」です。
私は、実は百円玉をためているのです。
ある日、酔っぱらって家へ帰ってきたら、上着のポケットが百円玉で一杯だったんです。
お釣りにもらった百円玉を使わないで、買物をしたり勘定を払ったりするたびに、次次に新しく千円札を出したんでしょう。気がついてみたら、上着のポケットの中が、ザクザクと百円玉だったんです。
私は台所へいって水を飲み、水を飲んだあとのコップの中へ、百円玉をあけてみました。
ポケットの中で重かった百円玉も、こういうきっちりした円筒形に纏めてみると、案外嵩の小いもので、やっとコップの半ばを満たすだけでしたが、それでも、コップ半分の百円玉というのは、なにがなし宝物めいて見えるものなんですね。私はなんだか金持ちになったような気分で、そのコップを枕元に置いてみました。
ネ? なんとなくいいじゃありませんか。
(『再び女たちよ!』より、「百円玉」)
この後、エッセイでは、何かの折にこの100円玉貯金を使おうとするけれど、不思議に惜しくなって使えない。そして100円玉を貯めているコップが一杯になったので灰皿に変え、今度は灰皿が一杯になったので大きな皿に変え、またもや大きな皿が一杯になったので巨大なガラスの壺に、と100円玉を貯める容器が段々と大きくなるのですが、最終的に使用が出来ないままというエッセイでございます。
やり始めたらとことんやるという伊丹さんの性格が良く表れているエッセイで、惜しくなって使用できないところなどに親近感が湧いてきます。
そんな伊丹さんの100円玉貯金、かなり貯めていたものと読み取れますが、それを使用していると思しき映像が、現在の企画展示でご覧いただけます。それがスペシャル映像コーナーで上映しております、『遠くへ行きたい』第39回「伊丹十三・宮本信子の京都㊙買物情報」ダイジェスト版です。この回では、伊丹さんが支払いの時に100円玉で支払う映像が何度か出てまいります。ダイジェスト版となっておりますので、ご覧いただけるのは上映している映像の中で一か所だけとなっておりますが、ご来館の際にはぜひ、映像をご覧になって探してみてください。
「これだけ持ち歩くとかなり重いのでは......」と思う量の100円玉がさらりと登場しております。
余談ではございますが、私もつい昨年まで500円玉貯金をしておりました。セレクトショップで赤い手のひらサイズの象の貯金箱に一目ぼれしてから、4万円ほどになるまで貯めていたのですが、友人へのプレゼントや家電の購入など、比較的大きな支払いが続いて中身を使いきり、その時から500円玉貯金を辞めてしまいました。
新紙幣が発行されたニュースを見たタイミングで1000円札貯金を始めるか、はたまた500円玉貯金を再開するか、少々迷っております今日この頃です。
この貯金箱はフィンランドで作られています。
北欧で象は「幸福の象徴」なのだそうです。
学芸員:橘
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