記念館便り ― 記念館からみなさまへ

記念館便り

こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。

2024.04.15 伊丹十三とペタンク


先日「好きな部活」というトークテーマのラジオを聞いておりましたら、「ペタンク部」に所属しているという高校生からのお便りが読まれていました。そのラジオの出演者の方々は「ペタンク」を知らないということでしたが、みなさまはご存知でしょうか。ペタンクとはフランス発祥のスポーツで、「的」により近づけるように鉄の球を投げる球戯です。

伊丹さんファンの方の中にはご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、実は伊丹さんは「(自称)全日本ペタンク愛好家連盟会長」だったそうです。


伊丹さんのエッセイ『ヨーロッパ退屈日記』の『ペタンクと焙り肉』に、ペタンクについて詳しい説明が書かれておりますのでここでご紹介させていただきます。



「南仏の村人達のリクリエイションは、ペタンクという球戯であるが、これは、見る人に少々哀れを催させるほどに単純なゲームである。即ち、まず一人が二個ないし四個ずつの鉄の球を持つ。球の大きさは、野球のボールくらいだろう。
 最初のプレイヤーが、「コショネ」と称する小さな木製の球を投げる。距離は六メートル以上十五メートル以内と定められている。これを標的にして順順に鉄の球を投げ、コショネに一番近いものが勝ち、ということになる。
 仮にきみの球が一番近く、ぼくが二番であったとすると、きみは一点を得点する。
 仮にきみの球Aが一番近く、きみの球Bが二番目、Cが三番目、ぼくの球が四番目であれば、きみの得点は三点である。
 このようにして得点を加え、最初に十五点に達したものが勝利者になって、ワン・ゲームが終わるという、実に素朴なものであるが、単純なだけに、却って複雑な掛引き、高度の技術を要し、その「球趣は尽きるところがない」
 わたくしは、今、四人用の球のセットをフランスから持ち帰って、「全日本ペタンク愛好家連盟会長」を自称しているのである。」



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『ヨーロッパ退屈日記』の表紙のこの右下の丸いもの、これはペタンクの球を描いたものだそうです。

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ヨーロッパ退屈日記の表紙



ペタンクに高校の部活動まであるというのは今回初めて知りましたが、改めて調べてみますと全国各地の市町村に「ペタンク連盟」や「ペタンク協会」が存在しているようです。道具についても伊丹さんはフランスから持ち帰ったということできっと大変だったと思いますが、現代ではお察しの通り今日注文すれば明日明後日には届くようです。是非チェックしてみてください。




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スタッフ:川又