こちらでは記念館の最新の情報や近況、そして学芸員やスタッフによる日々のちょっとした出来事など、あまり形を決めずに様々な事を掲載していきます。
2020.11.23 こんな「読書」はいかがでしょうか
記念館便りをご覧の皆さま、こんにちは。
中庭の桂は日に日に落葉し、葉っぱを楽しめるのもあと少しになりました。冬ももうすぐですね。
さて、スポーツの秋、芸術の秋、食欲の秋...いろいろある「秋」を、「読書の秋」として過ごされている方も多いと思います。
ちょっと気分を変えて、こんな「読書」はいかがでしょうか――ということで今回ご紹介させていただきたいのが、伊丹さんが翻訳を手がけた『ポテト・ブック』です。
マーナ・デイヴィス著、伊丹十三訳、トゥルーマン・カポウティ序
2014年11月に河出書房新社より復刊されました。
一見すると絵本のようなこの『ポテト・ブック』。
その名の通り、ポテトにまつわるあれこれがぎゅぎゅっと凝縮された、一冊まるごとポテトの本です。
伊丹さんの軽やかで味のある訳文で、ポテトの持つパワーやポテトの買い方、貯蔵法、ポテト料理の最初のステップ(ボイルする、蒸す、ベイクする、フライする)が紹介され、そのあとに90種類を超えるポテトを使った料理のレシピが続きます。
「ポテトの石鹸」「インチキ・フレンチ・フライ」「植木鉢のパン」――これらは『ポテト・ブック』で紹介されている料理の名前です。どんな料理なのか、ちょっと気になりませんか?
また、レシピだけでなく、ポテトの歴史やポテトを使ったゲーム、ポテト工芸や健康と美容に関する言い伝えなども載っています。多くのイラストレーターの方々によるユーモラスなイラストレーションも見ごたえがありますよ!
読んで、見て、作って......文庫本等と異なるこんな「読書」も、面白いのではないでしょうか。
「料理の本」ではあるけれど、ただそれだけではないこの『ポテト・ブック』。
伊丹さん自身、「訳者まえがき」でこんなふうに書いています。
私はこの本を訳しながら、片っ端から作ってみましたよ。作っちゃぁ女房子供に食べさせた。これは楽しかったですね。ポテト料理というのは、安直でいながら、しかも想像力を刺戟するところがいいんです。つまり、今までせいぜい、じゃがいもの煮ころがしや、挽き肉とじゃがいもを甘辛く煮たやつや、マーケットのポテト・サラダや、肉屋で買ってくる冷えたコロッケや、どちらかといえば夢のない、いかにもお惣菜風の扱いでしかなかったポテトの彼方に、突如として、広広とした新大陸が出現したんです。ポテト料理とともに、牧畜文化が、大規模農業が、そして、それを生み出した生活のゆとりが、私の周辺に漂ってくると思われた......
と、まあ、そんなわけで、私はこの「ポテト・ブック」を決してただの料理の本とは思ってないんです。いわば、アメリカ文化そのものが、自分の家の台所に出現した、というふうに感じるわけなんですね。この本自体が、私にとってはアメリカの旅なんです。
記念館ではショップ店頭で取り扱っていますので、ご興味のある方はぜひご覧くださいね。
スタッフ:山岡
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